JP2814741B2 - 垂直磁化型磁気抵抗素子とそれを用いた磁気抵抗効果型磁気ヘッド - Google Patents

垂直磁化型磁気抵抗素子とそれを用いた磁気抵抗効果型磁気ヘッド

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、新しい構造の磁界センサ及びこれを用いた
磁気ヘッドに関するものである。更に、詳しく述べれ
ば、膜面に垂直な磁化を利用した磁気抵抗効果素子と、
その磁気抵抗効果素子を感磁部に用いた磁気記録用の磁
気ヘッドに関する。
〔従来の技術〕
高保磁力薄膜媒体と磁気ヘッドの組み合せで、情報を
媒体内の磁化の方向の変化として記憶/再生する磁気記
録方式は、コンピュータの外部記憶装置やビデオテープ
レコーダ,デジタルオーディオテープレコーダの記録再
生方式として広く用いられている。近年、コンピュータ
の性能が向上し、取り扱うデータの範囲が単なる文字情
報から画像,音声のようなマルチメディアに進展するに
及び記憶すべきデータ量が膨大になってきた。また、コ
ンピュータのパーソナル化にともない、外部記憶装置の
一層の小型化が望まれている。そのために、記録密度の
増大が必須である。動画像を記憶するビデオテープレコ
ーダにおいても同様で、装置の小型化、取り扱う画像の
高精細化にともない、データの記録密度の増大が求めら
れている。
この様な磁気記録における磁気ヘッドは、電磁誘導型
の磁気ヘッドが最もよく用いられている。電磁誘導型磁
気ヘッドでは、媒体内の磁化反転パタンから発生する磁
束を磁気ヘッドの軟磁性コアパタンに導き、ヘッドと媒
体の相対運動により生じる磁束の時間変化をコアパタン
のまわりに設けたコイルの両端に生じる誘導起電力で検
知することにより磁化反転パタン情報を再生する。
外部記憶装置に用いられる磁気ディスク装置の小型化
は、磁気ディスク径の小型化によって行われる。ディス
ク径が小さくなるとヘッドと媒体との相対速度が小さく
なり、ヘッド内の磁束の時間変化が小さくなり再生出力
が小さくなる。また、記録密度が高くなるにつれて、記
録トラック幅の減少並びに記録波長の減少による再生出
力の低下が問題になる。
この再生出力の低下を改善するために、磁気抵抗効果
素子を感磁素子とする磁気抵抗効果型磁気ヘッドが提案
されてきた。以下では、簡単のためにこのタイプの磁気
ヘッドをMRヘッドと略称する。磁気抵抗効果素子は、一
般にNiFeの如き強磁性体の異方性磁気抵抗効果を示す薄
膜パタンを利用した感磁素子である。この感磁素子は、
強磁性薄膜パタンに電流を印加し、電流の印加方向と薄
膜パタンの磁化方向のなす角により電気抵抗が変化する
現象を用いている。通常は、強磁性薄膜パタンの磁化方
向は、薄膜の膜面に垂直な反磁界が極めて大きいため、
膜面内に存在している。
一般にMRヘッドでは、シールド型MRヘッドとヨーク型
MRヘッドが知られている。前者は、媒体に面したヘッド
ギャップ内にMR素子を設けたヘッドである。後者は、ヘ
ッドのリターンヨークの途中にMR素子パタンの巾程度の
ギャップを設け、そのギャップ内もしくはギャップ上に
MR素子を設けるヘッド形状をしている。いずれの形状で
も、ヘッド/媒体相対速度にかかわらず、高再生出力が
得られることが知られている。
〔発明が解決しようとする課題〕
従来のシールド型MRヘッドは、MR素子パタンが媒体に
面したヘッドギャップ内に設けられている。このため、
VTRヘッドやフレクサブルディスク用ヘッドのように、
ヘッドが媒体面と摺動する場合には、摩擦熱のために熱
雑音が生じる問題点及びヘッドギャップが深さ方向に磨
耗して、MR素子も共に磨耗減耗する問題点がある。
ヨーク型MRヘッドでは、MR素子信号磁束の帰還経路中
にギャップを設けている。一般に、MR素子の厚さは数十
nmで、ヨークパタン厚さに比べて極めて薄い。従って、
ヨークパタン〜MR素子〜ヨークパタンの部分の磁気抵抗
が増加して、コア効率が低下する。また、非磁性基板間
にコア材料として金属磁性積層膜を挟み込む積層型ヘッ
ドでは、非磁性基板材料が障害となって、コア磁性層の
近傍にMR素子を設置することは極めて困難である。
本発明の目的は、上記の諸問題点を解決した垂直磁化
型磁気抵抗素子を提供することにある。
本発明の他の目的は、この垂直磁化型磁気抵抗素子を
用いた磁気抵抗効果型磁気ヘッドを提供することにあ
る。
〔課題を解決するための手段〕
第1の軟磁性磁気ヨークと第2の軟磁性磁気ヨークを
対置し、前記ヨークの対置部に間隙を有する磁気回路を
有し、前記間隙内に磁気回路の磁束通過方向に垂直な膜
面を有する異方性磁気抵抗効果薄膜と、磁気抵抗効果薄
膜とヨーク端面間を非磁性電気絶縁薄膜を設けたことを
特徴とする垂直磁化型磁気抵抗効果素子であり、前記異
方性磁気抵抗効果薄膜の膜厚と前記間隙の差と、異方性
磁気抵抗効果薄膜の膜厚との比が0.1以下であることを
特徴とする垂直磁化型磁気抵抗効果素子を、MR素子とし
て用いることが、上記の問題点を解決する手段である。
〔発明の原理〕
次に、この垂直磁化型磁気抵抗効果素子の構成原理を
簡単に述べる。従来型のMR素子は第2図に示すように、
異方性磁気抵抗効果薄膜1の面内の長手方向に電流2が
印加されているときに、外部から3で示す磁界Hexが薄
膜1の面内で電流方向と垂直に印加されると、磁化11が
電流印加方向から角度θの方向を向く。磁界Hexの大き
さが変化したときの磁気抵抗薄膜の抵抗値Rは、第4図
に示されように形状磁気異方性により電流方向に磁化が
揃った時の最大抵抗R‖から電流方向と垂直に磁化が揃
った時の最小抵抗R⊥まで変化する。このとき比ΔR/
{(1/3)R‖+(2/3)R⊥}は磁気抵抗比であり、磁
気抵抗効果薄膜の材料固有の物性値である。
一方、第3図に示すように、3で示す外部磁界Hex
磁性薄膜に垂直に印加する垂直磁化型MR素子では基本的
には第4図の様な磁界−電気抵抗曲線(R−H曲線)を
示すが、薄膜の膜厚方向の反磁界係数が大きいために、
弱い外部磁界では膜厚方向にはほとんど磁化することが
できない。したがって、単に、印加磁界方向を膜面に垂
直するだけでは、垂直磁化型MR素子は実現しない。
この、垂直磁化型MR素子を第5図に示す様に軟磁性ヨ
ーク41,42のギャップ内に設ける。MR素子薄膜の膜厚を
t,素子幅をd,ヨークと素子の間隙をsとする。このMR素
子を偏長楕円体と近似すると、第6図に示す磁束の還流
経路を得る。なお第6図中、1′,1″は鏡像を示してい
る。この時の等価磁気回路は第7図に示すようになる。
この等価回路を計算することにより、膜厚方向の反磁界
係数Nは、以下のように表される。
N=2S/{2S(1+1/D)+1} …(1) ただし、S=s/tはギャップ比、D=d/tは幅比である。
式(1)を幅比(D)をパラメータとして、反磁界係
数Nとギャップ比(2S)の関係をプロットして第8図に
示す。ギャップ比2Sが大きいと、反磁界係数NはMR素子
の幅比Dを反映した値となっている。ギャップ比2Sは小
さくなるにつれて、幅比の大小に拘わらず反磁界係数N
は小さくなる。ギャップ比が0.1以下になると、反磁界
係数Nは幅比にほとんど依存せずギャップ比2Sに等しく
なる。換言すれば、どのような幅のMRを持ってきても、
ギャップ比2Sが0.1以下になると反磁界係数Nはギャッ
プ比2Sのみで規定できる自由度が生じることになる。反
磁界係数が0.1以下であるということは、MR素子の飽和
磁化4πMsが80000e程度であるので、このMR素子を垂直
に磁化する飽和磁界は強度8000e以下で十分であること
を示している。飽和磁界を2000e程度にするには、ギャ
ップ比2Sを0.025程度にすれば良いことが図から直ちに
判明する。
以上に述べたように、垂直磁化型MR素子は、素子の膜
厚とヨークギャップの比を適当に選ぶことにより、垂直
磁化の飽和磁界強度を任意に設定することが出来る。す
なわち感度の調整が容易である特徴を持っている。
〔実施例〕
(実施例1) 第1図に第1の実施例を示す。Mn−Znフェライト等の
軟磁性体の磁気ヘッドコア半体43及び44をつき合わせて
なる磁気ヘッドにおいて、磁性媒体に面して記録再生波
長と記録再生トラック幅を規定するフロントギャップ51
に対して逆側にリアギャップ52がある。リアギャップ52
には、MR素子1が設けられている。MR素子はNiFe薄膜で
ある。膜厚は2μmである。MR素子とコア半体からなる
ヨークのギャップ52は2.2μmであり、MR素子はその中
央に設置されている。このときのギャップ比2Sは0.1と
なっている。MR素子薄膜とヘッドコア半体間は、0.1μ
m厚さのSiO2で絶縁されている。
(実施例2) 第9図に第2の実施例を示す。磁気コア半体43及び44
は非磁性の基板45及び46に挟まれた軟磁性コア40から構
成されている。具体的には基板材料はMnO−NiOセラミッ
クである。軟磁性コア材料は、スパッタセンダスト膜
(厚さ5μm)を0.1μmSiO2を介して4層の積層体で構
成されている。スパッタセンダスト積層膜をコア材料と
しているのでこの磁気ヘッドは、実施例1に比べて記録
能力が高い特徴がある。MR素子1は、リアギャップ52に
設けられている。MR素子の幅は、コア材料の積層幅に等
しい。MR素子膜は厚さ2.5μm,幅20μmで形成されてい
る。MR素子とコア半体間は厚さ0.1μmのSiO2で絶縁さ
れている。この場合の、ギャップ比2Sは0.08であり、再
生感度の向上が図られている。
実施例1及び2において、磁気回路的に見れば、リア
ギャップはMR素子で実質的に埋め込まれているので、記
録ヘッドとしてもコア効率の低下はほとんどない。
(実施例3) 本発明はいわゆる薄膜ヘッドに適用した第3の実施例
を第10図に示す。非磁性基板6はアルミナ−チタカーバ
イドのセラミックである。この上にまず下ヨーク膜とし
てNiFe膜を蒸着法もしくはスパッタ法にて成膜し、下ヨ
ークパタン(下ポール)70を形成する。0.1μmのアル
ミナ絶縁膜71を介して、Cuのコイルパタン72を作製す
る。コイルパタンを樹脂等で平坦化する。再度絶縁膜73
を設ける。次に、MR素子パタンとして厚さ2μmのNiFe
薄膜パタン1をリアギャップ部52に作製する。次いで、
0.1μmのアルミナ絶縁膜73を付与し、NiFe薄膜にて上
ヨークパタン(上ポール)74を形成する。このとき、ギ
ャップ比2Sは0.1となっている。
本実施例では、MR素子がリアギャップ内にあるため、
フロントギャップ51はMR素子の有無に拘わりなく設定す
ることができ、MR素子の設置による記録再生分解能の低
下は生じない。
(実施例4) 第11図(a)を用いて本発明の第4の実施例を説明す
る。軟磁性体ヨーク41及び42のギャップ部5の内部にNi
Fe薄膜の垂直磁化型MR素子1を設ける。更に、MR素子1
に接して垂直磁化膜15としてCoCr薄膜を設ける。CoCr薄
膜の保磁力は10000e程度に設定しておく。MR素子の薄膜
は2.5μm、CoCr垂直磁化膜の膜厚は0.1μmであり、2.
75μmの間隙を持つヨークギャップ5の内部に設置され
ている。
この素子の膜面に垂直に外部から強い磁化を印加し、
CoCr膜を一方向に磁化する。この磁化から発生する磁界
がバイアス磁界としてMR素子薄膜に印加される。MR素子
にバイアス磁界が印加されると、第11図(b)に示すよ
うに抵抗−磁界曲線の動作点が移動して、磁界Hex変化
に対する抵抗変化の直線性が改善される。
〔発明の効果〕
以上に述べたように、本発明は従来のMR素子と異な
り、膜面に垂直に磁化が回転するモードを用いている。
また、MR素子とヨークの間隙が十分小さく、ヨーク〜MR
素子〜ヨークの磁気回路の磁気効率は低下しない。
更に、本発明のMR素子をVTR型ヘッドのリアギャップ
内で用いたときには、テープによるヘッドの摩耗はMR再
生出力には影響を及ぼすことはない。薄膜ヘッドのリヤ
ギャップに本発明を適用することにより、フロントギャ
ップを十分に小さくすることが可能となり記録再生の記
録密度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の第1の実施例を示す図、 第2図は従来のMR素子を示す図、 第3図は垂直磁型MR素子を示す図、 第4図はMR素子の電気抵抗の印加磁界依存を示す図、 第5図は本発明の原理を説明する図、 第6図は反磁界計算説明図、 第7図は本発明の等価磁気回路図、 第8図は反磁界係数のポールギャップ依存を示す図、 第9図は本発明の第2の実施例を示す図、 第10図は本発明の第3の実施例を示す図、 第11図は本発明の第4の実施例を示す図である。 1……磁気抵抗効果素子 1′,1″……MR素子の鏡像 2……電流方向 3……外部磁界 5……ギャップ部 6……基板 11……磁化方向 15……垂直磁化バイアス膜 40……軟磁性体 41,42……ヨーク 43,44……コア半体 46……非磁性基板 51……フロントギャップ 52……リアギャップ 70……下ポール 71……絶縁層 72……コイルパタン 73……絶縁層 74……上ポール

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】第1の軟磁性磁気ヨークと第2の軟磁性磁
    気ヨークを対置し、前記ヨークの対置部に間隙を有する
    磁気回路を有し、前記間隙内に磁気回路の磁束通過方向
    に垂直な膜面を有する異方性磁気抵抗効果薄膜と、この
    磁気抵抗効果薄膜とヨーク端面間に非磁性電気絶縁薄膜
    を設け、前記異方性磁気抵抗効果薄膜の膜厚と前記間隙
    の差と、前記異方性磁気抵抗効果薄膜の膜厚との比が0.
    1以下であることを特徴とする垂直磁化型磁気抵抗効果
    素子。
  2. 【請求項2】第1の軟磁性磁気ヨークと第2の軟磁性磁
    気ヨークを対置し、前記対置部に間隙を有する磁気回路
    を有し、前記間隙内に磁気回路の磁束通過方向に垂直な
    膜面を有する異方性磁気抵抗効果薄膜と、この異方性磁
    気抵抗効果薄膜に接して膜面に垂直異方性を有する高保
    磁力薄膜を設け、更に、前記磁気抵抗効果薄膜と前記ヨ
    ーク端面間に非磁性電気絶縁薄膜を設けたことを特徴と
    する垂直磁化型磁気抵抗効果素子。
  3. 【請求項3】軟磁性からなる一対のコア半体を付き合わ
    せてなる磁気ヘッドにおいて、 リアギャップ内に膜面がこのギャップ面に平行になるよ
    うに異方性磁気抵抗効果薄膜を設け、前記ギャップ面と
    前記異方性磁気抵抗効果薄膜間を非磁性電気絶縁薄膜で
    分離し、前記リアギャップの間隙と異方性磁気抵抗効果
    薄膜の膜厚との差と、前記異方性磁気抵抗効果薄膜の膜
    厚との比が0.1以下であることを特徴とする磁気抵抗効
    果型磁気ヘッド。
  4. 【請求項4】コア半体が、非磁性基板間に積層された金
    属磁性薄膜または金属磁性薄膜積層体からなることを特
    徴とする請求項3記載の磁気抵抗効果型磁気ヘッド。
  5. 【請求項5】非磁性基板の上に、下ヨーク、絶縁膜、薄
    膜コイル、絶縁膜及び上ヨークを順次積層してなる薄膜
    ヘッドにおいて、 フロントギャップとは反対にある下ヨークと上ヨークの
    接合部に間隙を設け、この間隙内に異方性磁気抵抗効果
    薄膜を設け、前記間隙と前記磁気抵抗効果薄膜の膜厚の
    差と、前記磁気抵抗効果薄膜の膜厚との比を0.1以下に
    保つことを特徴とする磁気抵抗効果型磁気ヘッド。
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