JP2812914B2 - 繊維物の真空処理方法およびそれに用いる装置 - Google Patents

繊維物の真空処理方法およびそれに用いる装置

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、処理槽内を真空引
きした状態で処理液を循環させて繊維物に対し染色,精
練,漂白その他の処理を施す際、処理槽内を、循環処理
液の液温に対応した真空度に制御する繊維物の真空処理
方法およびそれに用いる装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来から、繊維物に対し、染色,精練,
漂白等の処理を行う場合において、処理槽内を真空引き
し、真空下で処理液を循環させることが行われている。
このような処理装置として、例えば、図2に示すような
装置が用いられている。すなわち、この装置は、密閉可
能に構成された処理槽40と、この処理槽40内に装填
されるキャリア41とを備えている。そして、上記処理
槽40の底部には、循環ポンプ42を介して処理液を循
環させる循環路43が連通し、処理液を処理槽40の底
部から吸い込んで上記キャリア41内に吐出して循環さ
せるようになっている。また、上記処理槽40内には、
熱交換器44が取り付けられ、循環処理液を加熱するよ
うになっている。そして、上記処理槽40の上部には、
真空ポンプ45が接続された排気パイプ49が連通して
いる。図において、47は処理槽40の蓋であり、46
は真空仕切り弁である。また、48は循環路43に処理
液を導入する導入ポンプである。
【0003】上記装置を用い,繊維物の処理は、つぎの
ようにして行われる。すなわち、まず、キャリア41に
チーズ巻きの綿糸等の繊維物を搭載し、このキャリア4
1を処理槽40内に装填して、蓋47により密閉する。
ついで、真空仕切り弁46を開けるともに真空ポンプ4
5を稼働させ、処理槽40内を真空引きする。つぎに、
導入ポンプ48を稼働させて循環路43を介して処理槽
40内に所定量の処理液を導入する。そして、真空ポン
プ45による真空引きを続けながら、循環ポンプ42を
運転して処理液を循環させるとともに、熱交換器44で
その循環処理液を加熱することにより、上記繊維物を処
理することが行われる。
【0004】上記装置を使用し、処理槽40内を真空引
きしながら、加熱処理液を循環させて繊維物を処理する
ことにより、繊維物中の空気が除去され、空気が障害
になることによる処理むらが生じない,処理液の浸透
性が向上し、処理時間が短縮される,浸透剤等の薬剤
を減少させて、薬剤の使用量を削減できる,減圧下で
処理液を加熱するために沸点が下がり、沸騰状態に近い
状態で処理されて風合いや処理具合等の処理品質が向上
する,等の利点がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
方法では、真空ポンプ45で真空引きを続けながら処理
を行うため、処理槽内の圧力がしだいに低下し、処理液
の沸点が下がる。また、その状態で循環処理液を加熱す
るため、ついには液温が沸点を超え、処理液が沸騰し始
める。しかも、その沸騰状態で処理液が循環されると、
循環ポンプ42の吸い込み力によってポンプ吸込側の液
圧が下がり、そこに気泡が生じていわゆるキャビテーシ
ョンが起こる。このようにキャビテーションが生じる
と、循環ポンプ42内に上記気泡を巻き込んでポンプ性
能が極端に低下し、処理液の循環が不可能になり、処理
装置の運転ができなくなるという問題が生じる。したが
って、上記のようなキャビテーションを起こさないよう
に装置を運転する必要のため、結局大気圧に近い条件下
で運転しなければならず、上述したような真空処理の利
点が半減してしまう。このように、キャビテーションを
起こさないで正常運転ができ、しかも、真空処理の利点
を充分に活かすことのできる装置は、現在のところ開発
されていないのが実情である。
【0006】本発明は、このような事情に鑑みなされた
もので、キャビテーションを起こさないで正常運転で
き、しかも、真空処理の利点を充分に活かすことのでき
る繊維物の真空処理方法およびそれに用いる装置の提供
をその目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
め、本発明の繊維物の真空処理方法は、処理槽内に繊維
物を装填して密閉し、上記処理槽内を真空引きしたのち
処理液を導入し、真空下において上記導入処理液を加熱
しながら外部循環ポンプで循環させ、上記繊維物に対し
て染色,精練,漂白等の処理を行う繊維物の真空処理方
法であって、上記循環処理液の液温を経時的に検知し、
上記処理槽内の真空度が、その液温下において外部循環
ポンプの吸込側に気泡が発生しない限界真空度以下とな
るよう処理槽内の真空度を制御するようにしたことを要
旨とする。
【0008】また、本発明の繊維物の真空処理装置は、
開閉蓋により密閉可能に構成され内部に繊維物が装填さ
れる処理槽と、この処理槽内を真空引きする真空ポンプ
と、上記処理槽内に処理液を導入する処理液導入手段
と、その導入処理液を外部循環ポンプを介して循環させ
る循環路と、循環処理液を加熱する加熱手段と、その循
環処理液の液温を経時的に検知する液温検知手段と、処
理槽内の真空度を経時的に検知する真空度検知手段と、
処理槽内の真空度を調節する圧力調節手段とを備え、上
記液温検知手段によって検知される液温と、上記真空度
検知手段によって検知される処理槽内の真空度とを対比
し、上記処理槽内の真空度が、その液温下において外部
循環ポンプの吸込側に気泡が発生しない限界真空度以下
となるよう上記圧力調節手段に指示を与える真空度制御
手段が設けられていることを要旨とする。
【0009】すなわち、本発明は、循環処理液の液温を
経時的に検知し、上記処理槽内の真空度が、その液温下
において外部循環ポンプの吸込側に気泡が発生しない限
界真空度以下となるよう処理槽内の真空度を制御する。
このようにすることにより、真空処理中の処理液の沸点
が液温以上を保つようになり、液温が沸点を超えること
がないため、真空処理中に処理液が沸騰しなくなる。し
たがって、沸騰状態で処理液が循環されることがなく、
循環ポンプ吸込側の液圧が下がったとしても、そこに気
泡が発生せず、キャビテーションが起こらない。このた
め、従来のように運転不可能になることがなく、循環ポ
ンプは、常に正常に循環を続けるようになる。このよう
に、キャビテーションを起こさず正常運転を行って、真
空処理を行うことができるようになるのである。
【0010】さらに、本発明では、処理液の液温と処理
槽内の真空度との両者を経時的に検知して真空度を制御
するようにしている。このため、処理液の加熱により液
温が変化しても、その変化に追従した最適の真空度で処
理することができ、真空処理の利点を最大限に活かした
処理を行うことができるようになる。
【0011】ここで、限界真空度とは、例えば、真空下
において処理液を加熱しながら循環させる際に、循環ポ
ンプにキャビテーションを起こさない範囲の最大の真空
度をいう。この限界真空度の値は、一般に、図3に示す
ように、液温の上昇に伴って徐々に上昇して変化するも
のであり、また、目的に応じた処理液の種類によって、
あるいは、循環ポンプの容量等の装置自体の固有特性に
よっても異なる値をとるものである。
【0012】
【発明の実施の形態】つぎに、本発明の実施の形態を詳
しく説明する。
【0013】図1は、本発明の一実施の形態例の繊維物
の真空処理装置を示す。図において、10は密閉可能な
蓋12を備えた竪型円筒状の処理槽である。この処理槽
10の底部側方に処理液吸込配管15が連通し、この処
理液吸込配管15が循環ポンプ16を介して処理槽10
の底部中央に連通する処理液流入配管9と接続され、処
理液循環路17が形成されている。
【0014】上記処理槽10の内部には、底部側に熱交
換器11が配設され、また、底部中央から上記処理液循
環路17の処理液流入配管9が立設している。この処理
液流入配管9の上部は、内槽受け台14になっており、
この内槽受け台14には、底面中央部に穴を有した有底
円筒状の内槽26が装填されるようになっている。この
内槽26は、底面中央部から立設する内筒13を有し、
この内筒13と内槽26の周壁に、多数の処理液流通孔
27が分布穿設されている。7は上記処理液流入配管9
の上端部から立設して上記内筒13の中空部を軸方向に
挿通するシャフトであり、この上端部に、内槽26の上
面開口を蓋する押さえ蓋6を固定する押さえねじ7aが
ら合するようになっている。そして、処理槽10内に導
入された処理液は、処理槽10底部の処理液吸込配管1
5から吸い込まれ、処理液循環路17を循環して処理液
流入配管9から内槽26の内筒13内に導入される。そ
こから処理液流通孔27を通過して内槽26内に投入さ
れた繊維物8の隙間を通り、内槽26の処理液流通孔2
7から処理槽10内に戻るようになっている。図におい
て、28は処理液循環路17に設けられた循環仕切弁で
あり、29は給水弁、30は排水弁である。
【0015】一方、上記処理槽10の蓋12には、圧力
調節弁20を介して真空ポンプ18と接続された真空配
管19が連通している。また、上記処理槽10内の底部
側に、温度検知器21が配設されるとともに、上部側に
圧力検知器22が配設され、これら温度検知器21およ
び圧力検知器22の検知信号が、制御装置23に送られ
るようになっている。そして、この制御装置23の指示
により、上記圧力調節弁20の開度が調節されて、処理
槽10内の圧力が調節されるようになっている。図にお
いて、25は処理槽内に導入する薬液を貯留する薬液槽
であり、薬液供給ポンプ31を介して薬液を処理液循環
路17の循環ポンプ16吸込側に供給するようになって
いる。
【0016】上記構成の繊維物の真空処理装置を用い
て、繊維物の真空処理はつぎのようにして行われる。
【0017】まず、処理に先立って、限界真空度曲線を
得る。すなわち、当該処理装置において、処理目的に用
いる処理液(例えば、水,染色液,過酸化水素水等)
を、真空下において加熱しながら循環させ、その際、循
環ポンプ16の吸込側に気泡(すなわちキャビテーショ
ン)が生じない限界真空度を測定する。この限界真空度
の測定を、上記液温を変えて複数回行い、その測定値か
ら、液温と限界真空度との相関関係を座標上にプロット
し、曲線として示すことにより、限界真空度曲線(図3
参照)を得る。そして、この限界真空度曲線を、上記制
御装置23に予め入力しておく。この制御装置23は、
温度検知器21からの処理液の液温の検知信号により、
上記限界真空度曲線に基づいて、圧力検知器22で検知
される真空度が、その液温における限界真空度以下にな
るように、圧力調節弁20に指示を与え、処理槽10内
の真空度を制御するようになっている。
【0018】上記限界真空度の測定と、それにより得ら
れた限界真空度曲線の制御装置23への入力ののち、繊
維物8の処理を行う。
【0019】まず、繊維物8が投入された内槽26を処
理槽10内に装填し、蓋12をして密閉する。ついで、
真空ポンプ18を運転して処理槽10内を真空引きし、
所定の真空度に達したのち、給水弁29を開けて所定量
の水を導入する。つぎに、薬液槽25から薬液を供給し
てからさらに給水し、処理槽10および処理液循環路1
7内を所定量の処理液で満たす。この給水中にも上記真
空ポンプ18は作動を続けている。
【0020】ついで、熱交換器11に熱媒体(スチー
ム)を通し、処理液の加熱を行いながら、循環ポンプ1
6を稼働させて処理液を循環させて繊維物の処理を行
う。このとき、処理液の液温を経時的に温度検知器21
で検知するとともに、処理槽10内の圧力を経時的に圧
力検知器22で検知し、その検知信号を制御装置23に
送る。そして、温度検知器21で検知した液温と、圧力
検知器22で検知した真空度とを対比して、予め入力さ
れた限界真空度曲線に基づいて、処理槽10内の圧力
が、その液温における限界真空度以下になるように、圧
力調節弁20に指示を与えて開度を調節し、真空度を調
節する。この真空度制御により、常に、循環ポンプの吸
込側にキャビテーションが生じない真空度になるように
調節される。そして、液温がさらに上昇すると、その液
温を経時的に検知して、上述と同様にして処理槽10内
の真空度を調節する。そして、所定時間の処理ののち、
排出弁30から処理液を排出して一連の真空処理が終了
する。
【0021】このように、上記繊維物の真空処理装置に
よれば、真空処理中の処理液の沸点は、常に液温以上を
保ち、液温が沸点を超えることがない。このため、真空
処理中に処理液が沸騰せず、循環ポンプ16にキャビテ
ーションが起こらない。しかも、処理液の液温と処理槽
10内の真空度との両者を経時的に検知し、常に、循環
ポンプ16にキャビテーションが生じないように真空度
を制御するため、液温が変化しても、それに対応した最
適の真空度で真空処理することができるようになる。
【0022】なお、上記実施の形態例では、制御装置2
3に、予め測定した限界真空度曲線を入力しておき、こ
の限界真空度曲線に基づいて液温に対する真空度の制御
を行うようにしたが、限界真空度曲線の代わりに、処理
液の飽和蒸気圧線図を用いることもできる。このような
飽和蒸気圧線図の一例を図4に示す。この図は、水およ
び過酸化水素水の液温と飽和蒸気圧との関係を示す線図
であり、限界真空度曲線と同様に、液温の上昇に伴い右
上がりの曲線を示している。また、水と過酸化水素水と
では傾斜が異なる。この飽和蒸気圧曲線は、ある液温
で、外圧をその液温における飽和蒸気圧以下にするとそ
の液体が沸騰し始める臨界を示しており、本発明の制御
において、上記限界真空度曲線の代わりに簡易的に使用
することができるものである。上記限界真空度曲線は、
上述したように、装置自体の固有特性によって固有の値
をとるため、装置のスペックによって、それぞれ処理液
毎に測定を行って求めなければならないが、飽和蒸気圧
は、処理液の種類によって異なるだけであるため、装置
のスペックが変わっても、測定し直さなくてもよく、測
定が簡略化されるという利点がある。すなわち、本発明
において、限界真空度曲線とは、上述のような飽和蒸気
圧曲線も含む趣旨である。
【0023】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、真空処
理中の処理液の沸点が液温以上を保つようになり、液温
が沸点を超えることがないため、真空処理中に処理液が
沸騰しなくなる。したがって、沸騰状態で処理液が循環
されることがなく、循環ポンプ吸込側の液圧が下がった
としても、そこに気泡が発生せず、キャビテーションが
起こらない。このため、従来のように運転不可能になる
ことがなく、循環ポンプは、常に正常に循環を続けるよ
うになる。このように、キャビテーションを起こさず正
常運転を行って、真空処理を行うことができるようにな
るのである。
【0024】さらに、本発明では、処理液の液温と処理
槽内の真空度との両者を経時的に検知して真空度を制御
するようにしている。このため、処理液の加熱により液
温が変化しても、その変化に追従した最適の真空度で処
理することができ、真空処理の利点を最大限に活かした
処理を行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態例の繊維物の真空処理装
置を示す説明図である。
【図2】従来例の真空処理装置を示す説明図である。
【図3】限界真空度曲線の一例を示すグラフ図である。
【図4】水と過酸化水素水の飽和蒸気圧を示すグラフ図
である。
【符号の説明】
8 繊維物 10 処理槽 16 循環ポンプ

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 処理槽内に繊維物を装填して密閉し、上
    記処理槽内を真空引きしたのち処理液を導入し、真空下
    において上記導入処理液を加熱しながら外部循環ポンプ
    で循環させ、上記繊維物に対して染色,精練,漂白等の
    処理を行う繊維物の真空処理方法であって、上記循環処
    理液の液温を経時的に検知し、上記処理槽内の真空度
    が、その液温下において外部循環ポンプの吸込側に気泡
    が発生しない限界真空度以下となるよう処理槽内の真空
    度を制御するようにしたことを特徴とする繊維物の真空
    処理方法。
  2. 【請求項2】 開閉蓋により密閉可能に構成され内部に
    繊維物が装填される処理槽と、この処理槽内を真空引き
    する真空ポンプと、上記処理槽内に処理液を導入する処
    理液導入手段と、その導入処理液を外部循環ポンプを介
    して循環させる循環路と、循環処理液を加熱する加熱手
    段と、その循環処理液の液温を経時的に検知する液温検
    知手段と、処理槽内の真空度を経時的に検知する真空度
    検知手段と、処理槽内の真空度を調節する圧力調節手段
    とを備え、上記液温検知手段によって検知される液温
    と、上記真空度検知手段によって検知される処理槽内の
    真空度とを対比し、上記処理槽内の真空度が、その液温
    下において外部循環ポンプの吸込側に気泡が発生しない
    限界真空度以下となるよう上記圧力調節手段に指示を与
    える真空度制御手段が設けられていることを特徴とする
    繊維物の真空処理装置。
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