JP2803294B2 - 撥水性ガラスの製造方法 - Google Patents

撥水性ガラスの製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は車両などに使用される撥水性ガラスの製造方
法に関する。
[従来の技術] 従来、撥水性ガラスはガラスの表面にシリコーン系の
撥水剤の皮膜が形成されている。この撥水皮膜は、撥水
性を有するシリコーン系の撥水剤をガラス基板に塗布
し、塗膜を焼付け硬化させて形成される。しかし、この
撥水皮膜とガラス基板との間の接着が必ずしも充分でな
く、使用時に剥離や撥水性の部分的低下が生ずる不具合
がある。
この撥水皮膜のガラスとの接着性をより高めるために
特開昭60−231442号には、ガラス基板側には接着性成分
の多い塗膜が形成され、表面側には撥水性成分の多い塗
膜が形成された2層の皮膜をもつ撥水性ガラスの開示が
ある。この2層皮膜は、接着性成分としてシロキサン結
合を有する有機珪素化合物の重合体を、撥水性成分とし
て接着性成分の有機珪素化合物より炭素の組成割合が大
きいか、酸素の組成割合が少ない有機珪素化合物の重合
体、またはフッ素化合物の重合体とから構成されてい
る。
[発明が解決しようとする課題] 上記の撥水皮膜では、撥水性は疎水性の炭化水素系の
有機基に基づいて形成されている。したがって撥水性の
耐久性は接着の度合が同じであれば膜厚の大小には関係
無く、膜の表面部分の疎水性基の耐劣化性の度合に左右
されることになり、疎水性基が劣化すると撥水性も劣化
する。そこで表面の劣化によっても撥水性を維持できる
ような耐久性を付与することが望まれる。
本発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、優れた
耐久性をもつ撥水性ガラスとすることを目的とする。
[課題を解決するための手段] 本発明の撥水性ガラスの製造方法は、ガラス基板の表
面を研磨粉を用いて研磨洗浄をおこなう前処理工程と、
ポリジアルキルシロキサンのアルキル基の水素を5%以
上フッ素原子に置換したシリコーン系撥水剤を前処理さ
れたガラス基板に塗布して塗布膜を形成する塗布工程
と、該塗布膜を硬化させてガラス基板に密着し膜厚が0.
1〜2μmの撥水性硬化皮膜を形成する硬化工程と、か
らなることを特徴とする。
本発明は、シリコーン系撥水剤にフッ素結合を形成し
たものを使用して耐久性のある撥水皮膜をガラス基板上
に形成することにある。
シリコーン系撥水剤のポリジアルキルシロキサンは、
アルキル基の水素が少なくとも5%はフッ素原子に置換
されたものが使用される。アルキル基の水素の少なくと
も5%をフッ素原子で置換したシリコーン系撥水剤を使
用すると形成される撥水皮膜は、フッ素の特性に基づき
撥水性特に耐久性が向上する。さらにアルキル基の水素
を100%フッ素原子に置換すればより一層撥水皮膜の耐
久性が向上する。アルキル基の水素のフッ素原子置換が
5%未満ではポリジアルキルシロキサンと同じで撥水性
の耐久性が向上しない。
前処理工程では、ガラス基板と撥水皮膜との密着性を
高めるために、アルミナ、酸化セリウムなどの微細な研
磨粉を用いて研磨洗浄する。この研磨洗浄により撥水塗
膜は、まずガラス表面に存在するシラノール基と反応し
て密着皮膜を形成し、次いで表面の厚み方向への硬化を
進行させることができる。
塗布工程では、ポリジアルキルシロキサンのアルキル
基の水素をフッ素素子で置換された重合体を有機溶媒な
どに稀釈して、浸漬法、ロールコート法などの通常の方
法でガラス基板上に塗布される。この塗布は特にガラス
表面に擦り込むようにおこなうことがガラス表面から硬
化反応を進行させるために好ましい。
硬化工程では、ガラス基板に塗布された塗布膜を乾燥
して溶媒を除去し加熱してガラス面に密着した皮膜を膜
厚が0.1〜2μmの硬化皮膜になるように硬化させる。
すなわち、ガラス面から硬化させるため加熱温度と重合
時間を適宜選択しておこなうことができる。たとえば、
第1図に示す範囲内の条件であれば所定の膜厚の硬化膜
が得られる。
硬化皮膜の膜厚を0.1〜2μmの範囲とすることが撥
水性の耐久性を高めるのに必要である。膜厚が1μm未
満であると摩擦などによる耐久性が不十分となり好まし
くない。また膜厚が2μmを超えると皮膜が脆くなり耐
久性が低下するので好ましくない。すなわち、第1図に
示す様に堅牢度試験後の接触角が小さくなり撥水性が低
下する。また硬化後の皮膜の表面に未硬化のシリコーン
重合体が残存する時は、たとえば、稀釈溶媒を含浸した
紙または布で拭きとり除去する。この硬化皮膜は所定の
膜厚でガラス表面に密着して形成されているので、拭き
取りの際に硬化皮膜の表面が不均一となったり膜厚が変
化したりすることはない。
[作用] 本発明の製造方法においては、ポリジアルキルシロキ
サンのアルキル基の水素の少なくとも5%をフッ素原子
に置換したシリコーン系撥水剤を用いてガラス基板上に
塗布し、0.1〜2μmの膜厚を有する硬化皮膜が形成さ
れた撥水性ガラスが得られる。この方法で得られる撥水
皮膜にはポリジアルキルシロキサンのアルキル基の水素
がフッ素原子に置換されているので、膜中にフッ素原子
が存在している。このフッ素原子が撥水性を発揮するた
め表面層が摩擦などにより削れてアルキル基のみの場合
よりも撥水性が向上するものと推定される。また膜厚が
0.1〜2μmと薄くてもガラス表面とシロキサンとが結
合して密着するため付着性が確保され剥離などが防止さ
れる。
[実施例] 以下、実施例により具体的に説明する。
(実施例1) (前処理工程) 撥水皮膜を形成するるガラス基板としてはソーダライ
ムガラスを用い、1μm以下の酸化セリウム粉末を研磨
剤として用い表面を水研研磨洗浄した後、80℃のオーブ
ンで乾燥して皮膜形成の表面とした。
(塗布工程) 撥水剤にはポリジメチルシロキサンのメチル基の水素
がフッ素に100%置換されたフロロアルキルシロキサン
(信越化学工業(株)製 FL100 粘度10,000cs)を用
い、メチルエチルケトンで稀釈して5重量%の溶液とし
た。この溶液を用いガラス基板に10μm以上の膜厚にロ
ールコートで塗布した。
(硬化工程) 撥水剤が塗布されたガラス基板を加熱炉中で加熱して
稀釈溶媒を揮発させた後、250℃で約1時間重合硬化さ
せた。この重合硬化により膜厚が1μmの硬化皮膜を形
成した。なお、硬化前の塗膜の膜厚が10μm以上であれ
ば第1図のグラフの範囲の重合条件でおこなえば、硬化
がガラス面から始まり塗布膜厚に関係なく0.1〜2μm
の硬化皮膜が得られる。
硬化皮膜の表面に残存している未硬化のフロロアルキ
ルシロキサンは、メチルエチルケトンを浸した塗布紙に
より拭きとり除去した。
この撥水皮膜の水に対する接触角は105゜である。
撥水剤にポリジメチルシロキサンのメチル基の水素を
約60%フッ素に置換したものを用いて、上記と同様な方
法で撥水皮膜を形成した。この撥水皮膜の水に対する接
触角は105゜であった。
比較のために撥水剤にポリジメチルシロキサンを用い
て実施例と同様に撥水皮膜を形成した。この撥水皮膜の
水に対する接触角は98゜であるが、堅牢度試験10000回
後の接触角が70゜となり低下が著しく本発明に比べて耐
久性が乏しい。
上記の3種の撥水皮膜について堅牢度試験(堅牢度試
験は、大栄科学精器製作所製 学振型平面摩耗試験機を
用いて、摩擦子をネル布#300で覆い負荷荷重1200gで撥
水性皮膜の表面を1000回)後の転落角の比較した。結果
を第2図に示す。すなわち、ガラス基板を傾けて撥水皮
膜上の水滴が何度の角度で転落したかを調べた。小さい
角度で水滴が転落するのが撥水性が良い。第2図に示す
ように中央の位置の60%フッ素で置換されたフロロアル
キルシロキサンは、転落角が小さく、接触角も大きく左
端のポリジメチルシロキサンより優れている。
(実施例2) 実施例1と同様の方法でフッ素置換ガスが70%のポリ
フロロアルキルシロキサンを用いて硬化工程を、硬化温
度を一定にし重合時間を変えて、膜厚を0.05〜2.5μm
に変化させた撥水皮膜をガラス基板に形成して、その撥
水皮膜の堅牢度試験をおこなった後の水に対する接触角
を調べた。結果を第1表に示す。
堅牢度試験は、大栄科学精器製作所製 学振型平面摩
耗試験機を用いて、摩擦子をネル布#300で覆い負荷荷
重1200gで撥水性皮膜の表面を1000回、5000回、10000
回、15000回摩擦し、その後の接触角を調べその耐久性
を比較した。
なお、接触角は協和界面科学(株)製 接触角計CA−
A型を用いて測定した。
第1表に示す様に1000回摩擦した後の接触角が105゜
で膜厚に関係なく同じであるが、それより回数を増すと
接触角に差ができ撥水性の耐久性に優劣が認められる。
すなわち、膜厚が本発明の0.1〜2.0μmの範囲では、15
000回摩擦しても、接触角は95゜を保持し低下の度合が
少ない。膜厚が薄い0.05μmの場合は、5000回摩擦した
後の接触角が90゜となりさらに続けて15000回摩擦した
後では80゜と小さくなり撥水性の耐久性に劣る。一方、
膜厚が 厚い2.0μmの場合は15000回摩擦した後での接触角が90
゜とやや小さくなり、さらに、2.5μmと膜厚が厚くな
ると15000回摩擦した後では接触角が80゜と小さくなり
撥水性の耐久性が不十分となることを示している。
したがって、硬化皮膜の膜厚が0.1〜2μmの範囲に
あることが耐久性を高めるために必要である。
[効果] 本発明の製造方法によれば、撥水剤にポリジアルキル
シロキサンのアルキル基の水素をフッ素原子に少なくと
も5%置換したものを用いてガラス表面に強固に密着し
た膜厚が0.1〜2μmの硬化皮膜を形成する。この撥水
皮膜は膜中にフッ素が存在するので表面が摩擦で削られ
ても撥水皮膜は撥水性の耐久性を示す。またこのポリジ
アルキルシロキサンはガラス表面のシラノール基と反応
するので特に接着製に富む成分と撥水性に富む成分との
2層に分ける必要がなく1層の皮膜で目的を達成するこ
とができる。
また塗布された塗膜の膜厚に左右されずに、硬化条件
を規定することにより所定の膜厚とすることができ、未
硬化物が表面に残存していても容易に除去して所定の膜
厚を保持することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は硬化条件の範囲を示すグラフであり、第2図は
実施例の接触角および転落角がポリジアルキルシロキサ
ンのフッ素置換量との関係を示すグラフである。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ガラス基板の表面を研磨粉を用いて研磨洗
    浄をおこなう前処理工程と、ポリジアルキルシロキサン
    のアルキル基の水素を5%以上フッ素原子に置換したシ
    リコーン系撥水剤を前処理されたガラス基板に塗布して
    塗布膜を形成する塗布工程と、該塗布膜を硬化させてガ
    ラス基板に密着し膜厚が0.1〜2μmの撥水性硬化皮膜
    を形成する硬化工程と、からなることを特徴とする撥水
    性ガラスの製造方法。
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