JP2803110B2 - 中空糸型血獎成分分離膜 - Google Patents

中空糸型血獎成分分離膜

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JP2803110B2 JP63287368A JP28736888A JP2803110B2 JP 2803110 B2 JP2803110 B2 JP 2803110B2 JP 63287368 A JP63287368 A JP 63287368A JP 28736888 A JP28736888 A JP 28736888A JP 2803110 B2 JP2803110 B2 JP 2803110B2
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【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] この発明は、血液中の血漿成分を分離するために用い
られる中空糸型血漿成分分離膜に関するものである。
[従来の技術] 血漿交換療法は、血漿分離膜や遠心分離器を用いて、
患者から取出した血液より血漿を分離し、代わりに新鮮
凍結血漿やアルブミン製剤等を、血球成分とともに患者
の体内に変換する治療法である。これにより、血漿中に
含まれている免疫複合体や抗体等の病原高分子蛋白質が
除去され、高粘度血症、悪性リウマチ、全身性エリトマ
ト−デスなどの、自己免疫疾患や難治性疾患等の治療に
効果を上げている。しかしながら、1回の治療に3〜5
リットルの大量の新鮮凍結血漿やアルブミン製剤を必要
とするため、治療費が高価であり、また近年血漿製剤使
用によるエイズや肝炎などの発病が大きな問題となって
いる。この解決策として、分離された血漿を血漿成分分
離膜で処理を行ない、有用なアルブミン成分を回収する
方法が検討されている。
[発明が解決しようとする課題] しかしながら、これまで開発された血漿成分分離膜
は、分離効率が悪く、免疫複合体除去能が十分でなく、
また目詰まりによる経時劣化が激しい等の問題点があ
り、実用上の満足な性能は得られていない。
それゆえに、この発明の目的は、血漿分画性能が高
く、経時的劣化の少ない中空糸型血漿成分分離膜を提供
することにある。
[課題を解決するための手段および作用] 本発明者等は、このような従来の欠点を改善するた
め、血漿分画性能の向上と経時的劣化の防止について鋭
意研究を重ねた結果、血漿成分の分離効率と経時的劣化
は、中空糸膜の表面構造に大きく依存していることを見
出した。つまり、中空糸膜の内表面および外表面の細孔
構造を制御することにより、膜内の目詰まりによる経時
的劣化を減少させ、血漿成分の分離効率を長時間高く保
つことが可能であることを見出してこの発明を完成する
に至ったものである。
すなわち、請求項1の発明は、セルローストリアセテ
ートからなり、純水のろ過係数が50〜2000ml/m2・hr・m
mHgであり、血漿ろ過におけるアルブミンのふるい係数
が0.5以上で、かつアルブミンとグロブリンのふるい係
数比が1.5以上である、中空糸型血漿成分分離膜であ
る。
請求項1の発明において、純水のろ過係数とは、一定
圧力(150mmHg)の膜間圧力を分離膜の内面にかけたと
き、分離膜の内面から分離膜の外部へ流れ出る純水の透
過速度を37℃で測定して求めた値である。
またふるい係数(SC値)は、抗凝固剤を添加した牛血
漿を用い、0.01m2の膜面積を有する中空糸型血漿成分分
離膜のモジュールにより、血漿成分を分離した際、モジ
ュール内に供給される血漿中の血漿成分の濃度Cin、モ
ジュール出口側での血漿中の血漿成分の濃度Coutおよび
モジュールを透過した血漿中の血漿成分の濃度Cfil
ら、次式により求められる値である。
SC値=2×Cfil/(Cin+Cout) 請求項1の発明において、アルブミンとグロブリンの
ふるい係数比とは、血漿成分としてのアルブミンおよび
グロブリンのそれぞれの上記ふるい係数(SC値)の比率
である。ここで、グロブリンの濃度は、血漿中の総蛋白
質濃度から、血漿中のアルブミンの濃度を差し引いた値
として定義されるものである。
以下、請求項1の発明に係る血漿成分分離膜を製造す
るのに適した方法を工程順に説明する。
紡糸原液調製工程: 重合体としてセルローストリアセテートを用い、非プ
ロトン性溶媒および非溶媒を用いて、紡糸原液を調製す
る。非プロトン性極性溶媒としては、150℃以上の沸点
を有するものが好ましい。このようなものとして、たと
えば、N−メチルピロリドン(沸点202℃)、ジメチル
ホルムアミド(沸点153℃)、ジメチルアセトアミド
(沸点164℃)およびジメチルスルホキシド(沸点189
℃)等が挙げられる。
非溶媒としては、水と相溶性を有するエチレングリコ
ール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコー
ル、グリセリン、ポリプロピレングリコール等の多価ア
ルコールや、メタノール、エタノール等のアルコール
類、あるいは水などを用いることができる。しかしなが
ら、これらのものに限定されるものではない。このよう
な非溶媒を使用する目的は、分離膜に十分な透水性を与
え、かつ所望の細孔を有する膜構造を形成するためであ
る。
以上のようにして、セルローストリアセテートを溶媒
および非溶媒に混合して溶解させ、紡糸原液を調製す
る。
吐出・凝固工程: 上記のようにして調製した紡糸原液は、加熱処理、脱
泡処理、ろ過処理を施して、2重管ノズルの環状孔から
吐出する。この紡糸原液の吐出とともに、2重管ノズル
の中央孔から内液を吐出する。内液は、紡糸原液と同種
の溶媒および非溶媒を用いた水溶性の凝固性液体が好ま
しい。さらに、溶媒および非溶媒の濃度を50重量%を越
える値に設定することが好ましい。
吐出した後、凝固浴中に導かれて中空糸膜として凝固
される。この凝固浴中の溶媒および非溶媒も、内液と同
様に、紡糸原液と同種の溶媒および非溶媒であることが
好ましい。さらに、溶媒および非溶媒の濃度が50重量%
を越える値であることが好ましい。
凝固浴ならびに内液の溶媒および非溶媒の濃度が50重
量%を越えることが好ましいとしている理由は、これら
の濃度が50重量%以下になると、膜を形成する際の凝固
速度が速くなり過ぎ、中空糸の表面が非常に緻密になっ
て、十分な血漿透過量が得られなくなるからである。
さらに、請求項2の発明における最大の特徴は、内液
中の溶媒および非溶媒の濃度C1と凝固浴中の溶媒および
非溶媒の濃度C2とが、式C1−C2<10重量%の関係を満た
すよう設定されていることである。この理由は、C1−C2
≧10重量%の場合には、中空糸の外表面の凝固速度が速
くなりすぎて、中空系の外表面が内表面に比べて、緻密
になり、血漿ろ過の際に血漿蛋白質が目詰まりを起こし
やすくなって、経時的に安定した血漿成分分離膜を得る
ことができないからである。
水洗・親水化工程: この工程には、この発明における特徴がなく、したが
ってこの工程によりこの発明は限定されるものではな
い。従来からの一般的な本工程を説明すると、上記の凝
固工程を経た中空糸は、引き続き水洗工程に付され、余
分の溶媒、非溶媒を除去した後、適度な熱処理が施され
る。さらに、この後工程または前工程において、グリセ
リン等の多価アルコール等による親水化処理が施され、
いわゆる濡れ性が付与されることが望ましい。
以上のようにして得られた中空糸型血漿成分分離膜
は、血液適合性に優れた接着剤(たとえばウレタン系の
接着剤)等により、通常の方法でモジュールに作製され
る。さらに、このモジュールは滅菌処理が施され、最終
製品として使用される。
[発明の効果] 請求項1の発明の分離膜は、純水のろ過係数が50〜20
00ml/m2・hr・mmHgであり、血漿ろ過におけるアルブミ
ンのふるい係数が0.5以上で、かつアルブミンとグロブ
リンのふるい係数比が1.5以上である、高い血漿分画性
能を示す。
また、この分離膜は、血漿蛋白質による膜細孔の目詰
まりが発生しにくく、ろ過開始初期の処理量が長時間保
たれるという特性を示す。
[実施例] 以下、実施例により請求項1の発明を説明する。な
お、以下に示す%は重量%を示している。
実施例1 重合体としてセルローストリアセテート、溶媒として
N−メチルピロリドン(NMP)、非溶媒としてポリエチ
レングリコール(PEG)400を用いて、血漿成分分離膜を
製造した。
23〜24.5%のセルローストリアセテートを、51.3〜5
5.4%のNMPおよび21.6〜24.6%のPEG400に混合し、加熱
して溶解し紡糸原液である紡糸用ドープとした。次に、
この紡糸用ドープを脱泡・ろ過処理し、2重管ノズルの
環状孔から吐出した。この吐出とともに第1表に示す組
成の内液を2重管ノズルの中央孔から吐出した。これを
第1表に示す組成の凝固浴に導き、凝固させて中空糸膜
を得た。
このようにして得られた中空糸膜を、さらに水洗し、
余分な溶媒および非溶媒を除去した後、121℃のオート
クレーブ処理により膜を安定化させた。次に、グリセリ
ン処理を施して親水化させ、その後乾燥させて最終的な
中空糸型血漿成分分離膜とした。
実施例2 第2表に示す内液および凝固浴の組成とした以外は、
実施例1と同様にして、中空糸型血漿成分分離膜を製造
した。
比較例 第3表に示すような内液および凝固浴の組成を用いた
以外は、実施例1と同様にして、中空糸型血漿成分分離
膜を製造した。
なお、この比較例では、内液中の溶媒および非溶媒の
濃度C1と凝固液中の溶媒および非溶媒の濃度C2とは、式
C1−C2<10%の式を満たしていない。
これらの実施例1,2および比較例で得られた血漿成分
分離膜の内径、膜厚および透水速度を第4表に示した。
なお、ここで、透水速度は上述した純水のろ過係数と同
じ意味を有しており、一定圧力(150mmHg)の膜間圧力
を、分離膜の内面にかけたとき、分離膜の内面から分離
膜の外部へ流れ出る純水の透過速度を37℃で測定して求
めたものである。
さらに、抗凝固剤を添加した牛血漿を用い、0.01m2
膜面積を有する中空糸型ミニモジュールを用いて、血漿
成分の分離試験を行なった。第4表にその結果を併せて
示す。
なお、血漿の透過速度とは、膜間圧力差を100mmHgと
して、分離膜の内部から分離膜の外部へ流れ出る血漿の
透過速度を37℃で測定して求めた値である。また、ふる
い係数SC値は既に説明したとおりである。なお、SCA
アルブミンのふるい係数を示しており、SCGはグロブリ
ンのふるい係数を示しており、SCA/SCGはアルブミンと
グロブリンのふるい係数比を示している。
第4表から明らかなように、実施例1,2と比較例は透
水性能においてほぼ同様であるが、血漿の透過特性にお
いては著しく異なっていた。実施例1,2は、5分値から3
0分値まで安定した透過量と選択率を示し、耐ファウリ
ング性、血漿分画性に優れていた。一方比較例の分離膜
は、透過性能が大きいにもかかわらず、血漿透過量およ
び選択率共に著しく低く、血漿成分分離膜としては全く
実用に供し得ないものであった。
実施例1,2および比較例により得られた分離膜の表面
を走査型電子顕微鏡で観察したところ、実施例1,2で
は、膜の内表面および外表面共に、ほぼ同じ数で同じ径
の細孔が認められた。これに対して比較例では、外表面
に比べて、内表面の細孔が著しく大きいことが認められ
た。比較例の膜において、血漿分画特性が著しく劣って
いる原因は、このような内表面と外表面とにおける細孔
の数および大きさの違いに起因するものと考えられる。
これに対し、実施例1,2では、内表面と外表面とが数お
よび径においてほぼ同一の細孔を有しており、このよう
な細孔構造が、優れた血漿分画特性を付与するものと思
われる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) B01D 71/16 B01D 69/08 A61M 1/34 500 D01F 2/28

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】セルローストリアセテートからなり、純水
    のろ過係数が50〜2000ml/m2・hr・mmHgであり、血漿ろ
    過におけるアルブミンのふるい係数が0.5以上で、かつ
    アルブミンとグロブリンのふるい係数比が1.5以上であ
    る、中空糸型血漿成分分離膜。
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