JP2801347B2 - フォトクロミック成形体 - Google Patents

フォトクロミック成形体

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JP2801347B2 JP4953290A JP4953290A JP2801347B2 JP 2801347 B2 JP2801347 B2 JP 2801347B2 JP 4953290 A JP4953290 A JP 4953290A JP 4953290 A JP4953290 A JP 4953290A JP 2801347 B2 JP2801347 B2 JP 2801347B2
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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は、フォトクロミック作用の耐久性の優れたフ
ォトクロミック成形体に関する。
(従来技術) フォトクロミズムとは、ここ数年来注目をあつめてき
た現象であって、ある化合物に太陽光または水銀灯の光
のような紫外線を含む光を照射すると速やかに色が変わ
り、光の照射をやめて暗所におくと元の色にもどる可逆
作用のことである。この性質を有する化合物は、フォト
クロミック化合物と呼ばれ、従来から様々な構造の化合
物が合成され、提案されてきたが、その構造には特別な
共通の骨格は認められない。
本発明者らは、一連のフォトクロミック化合物につい
て研究の結果、クロメンの骨格を有する新規なクロメン
誘導体の合成に成功し、該クロメン誘導体が優れたフォ
トクロミック作用を有することを見出し、既に提案した
(特願昭63−220387号,特願平1−141206号及び特願平
1−143011号)。
(発明が解決しようとする課題) さらに、本発明者らは、上記したクロメン誘導体を熱
硬化性樹脂中に分散させ、フォトクロミックレンズに代
表されるフォトクロミック成形体を製造することについ
て研究を続けた。その結果、上記したクロメン誘導体の
樹脂中への存在のさせ方によってはクロメン誘導体のフ
ォトクロミック作用の耐久性が向上することを見出し
た。
したがって、本発明の目的は、耐久性の優れたフォト
クロミック成形体を得ることである。
(課題を解決するための手段) 本発明は、 下記式[A] 但し、R1及びR2は、夫々同種又は異種のアルキル基であ
り、これらが一緒になって置換されていてもよいノルボ
ルニリデン基又は置換されていてもよいビシクロ[3.3.
1]9−ノニリデン基を構成していてもよく、R3及びR4
は夫々同種又は異種の水素原子、アルキル基、アリール
基、アラルキル基又は置換アミノ基であり、 は置換されていてもよい芳香族炭化水素基又は置換され
ていてもよい不飽和複素環基であり、R1及びR2がアルキ
ル基のときは、 は、炭素数6〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアルコ
キシ基、−R5−S−R6及び (但し、R5はアルキル基又はO−R8 (但し、R8
アルキレン基であり、nは正の整数である。)であり、
R6及びR7は、夫々同種又は異種のアルキル基であり、X
は−N<,−P<, である。)よりなる群から選ばれた少なくとも1種の置
換基を有する二環系芳香族炭化水素基又は二環系不飽和
複素環基である。
で示されるフォトクロミック化合物 を含む樹脂層が熱硬化性樹脂の表面に被覆されてなり、
さらにその上に有機ケイ素化合物の加水分解物からなる
層が被覆されてなるフォトクロミック成形体である。
また、本発明は、 下記式[A] 但し、R1及びR2は、夫々同種又は異種のアルキル基であ
り、これらが一緒になって置換されていてもよいノルボ
ルニリデン基又は置換されていてもよいビシクロ[3.3.
1]9−ノニリデン基を構成していてもよく、R3及びR4
は夫々同種又は異種の水素原子、アルキル基、アリール
基、アラルキル基又は置換アミノ基であり、 は置換されていてもよい芳香族炭化水素基又は置換され
ていてもよい不飽和複素環基であり、R1及びR2がアルキ
ル基のときは、 は、炭素数6〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアルコ
キシ基、−R5−S−R6及び (但し、R5はアルキル基又はO−R8 (但し、R8
アルキレン基であり、nは正の整数である。)であり、
R6及びR7は、夫々同種又は異種のアルキル基であり、X
は−N<,−P<, である。)よりなる群から選ばれた少なくとも1種の置
換基を有する二環系芳香族炭化水素基又は二環系不飽和
複素環基である。
で示されるフォトクロミック化合物 が熱硬化性樹脂の表面に含浸されてなり、その上に有機
ケイ素化合物の加水分解物からなる層が被覆されてなる
フォトクロミック成形体である。
本発明におけるフォトクロミック化合物は、前記一般
式[A]で示されるクロメン誘導体である。
前記一般式〔A〕中、R1及びR2は、夫々同種又は異種
のアルキル基である。アルキル基の炭素数は特に制限さ
れるものではないが、前記一般式〔A〕で示される化合
物のフォトクロミック性の点から、炭素数は1〜3であ
ることが好ましく、特に1であることが好ましい。アル
キル基を具体的に示せば、メチル基、エチル基、n−プ
ロピル基、i−プロピル基等が挙げられる。
また、前記一般式〔A〕中のR1およびR2は、一緒にな
って環を形成し、置換されていてもよいノルボルニリデ
ン基または置換されていてもよいビシクロ〔3.3.1〕9
−ノニリデン基を構成していてもよい。
ノルボルニリデン基は、下記式 で表わされ、また、ビシクロ〔3.3.1〕9−ノニリデン
基は、下記式 で表わされる。これらノルボルニリデン基またはビシク
ロ〔3.3.1〕9−ノニリデン基は、上記式の水素原子が
置換基により置換されていてもよい。置換基の数は1個
またはそれ以上であってもよく、好ましくは1〜3個で
ある。置換基を有する場合、その種類、数および位置
は、目的および用途によって選択すれば良い。また、複
数の置換を有する場合、同一の置換基であってもよく、
また異種の置換基であってもよい。
上記のノルボルニリデン基またはビシクロ〔3.3.1〕
9−ノニリデン基の置換基としては、例えば、フッ素、
塩素、シュウ素等のハロゲン原子;ヒドロキシル基;シ
アノ基;ニトロ基;カルボキシル基;メチル基;エチル
基、プロピル基、ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル
基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ
基等の炭素数1〜4のアルコキシ基;トリフルオロメチ
ル基等の炭素数1〜4のハロゲノアルキル基;フェニル
基、トリル基、ナフチル基等の炭素数6〜10のアリール
基;フェニルオキシ基、トリルオキシ基、ナフチルオキ
シ基等の炭素数6〜10のアリールオキシ基;ベンジル
基、フェネチル基、フェニルプロピル基等の炭素数7〜
10のアラルキル基;ベンジルオキシ基、フェネチルオキ
シ基、フェニルプロピルオキシ基等の炭素数7〜10のア
ラルコキシ基;メチルアミノ基、エチルアミノ基等の炭
素数1〜4のアルキルアミノ基;ジメチルアミノ基、ジ
エチルアミノ基等の炭素数2〜8のジアルキルアミノ
基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の
炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基等を挙げること
ができる。
これらの置換基の好ましい例は、ハロゲン原子、シア
ノ基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアル
コキシ基、炭素数1〜4のハロゲノアルキル基、炭素数
6〜10のアリール基、炭素数7〜10のアラルキル基、炭
素数2〜8のジアルキルアミノ基である。
前記一般式〔A〕におけるR3およびR4は、それぞれ同
一または異なり、水素原子、アルキル基、アリール基、
アラルキル基または置換アミノ基である。
ここで、置換アミノ基は、アルキルアミノ基、ジアル
キルアミノ基、または、少くとも1個の窒素原子を含む
かまたは窒素原子と酸素原子若しくはイオウ原子とを含
む4〜7員環の単環飽和複素環から導かれる1価の基が
挙げられる。上記の4〜7員環の単環飽和複素環は、下
記式で表わされる。
上記式において、R9はテトラメチレン基、ペンタメチ
レン基などの炭素数3〜6のアルキレン基; 、−CH2OCH2CH2−、−CH2CH2OCH2CH2−−CH2O(CH2
−、などの炭素数3〜6のオキシアルキレン基;−CH2S
CH2CH2−、−CH2S(CH2−、−CH2CH2SCH2CH2−など
の炭素数3〜6のチオアルキレン基; などの炭素数3〜6のアゾアルキレン基等が好適に採用
される。
R3およびR4で示される各基を具体的に例示すれば、メ
チル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル
基、オクチル基、デシル基等の炭素数1〜20のアルキル
基;フェニル基、トリル基、ナフチル基等の炭素数6〜
10のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、フェニル
プロピル基、フェニルブチル基等の炭素数7〜10のアラ
ルキル基が挙げられる。また、置換アミノ基としては、
メチルアミノ基、エチルアミノ基等の炭素数1〜4のア
ルキルアミノ基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基
等の炭素数2〜8のジアルキルアミノ基;ピロリジン
環、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環、チア
ゾリジン環等の少くとも1個の窒素原子を含むかまたは
窒素原子と酸素原子若しくはイオウ原子とを含む4〜7
員環の単環飽和複素環から導かれる1価の基などが挙げ
られる。
これらの中でも、R3およびR4は、水素原子、炭素数1
〜20のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数
7〜10のアラルキル基、炭素数2〜8のジアルキルアミ
ノ基、2個までの窒素原子を含むかまたは窒素原子1個
と炭素原子若しくはイオウ原子のいずれか1個とを含む
5員環または6員環の単環飽和複素環から導かれる1価
の基が好ましい。R3又はR4の各基を選択することによ
り、一般式〔A〕の化合物の退色速度を変えることがで
きる。例えば、R3及びR4がアルキル基の場合、恐らく、
その発色状態のトランス型をとりにくくなる為だと思わ
れるが、速い退色速度が得られる。又、R3が置換アミノ
基の場合は、発色状態のトランス型が共鳴によって安定
化され、濃い発色濃度が得られる反面、退色速度が少く
遅くなるという特徴がある。さらに、R3及びR4がともに
水素原子である化合物は特に濃く発色し、しかも退色速
度が速いという特長を有する。
次に、本発明における前記一般式〔A〕において、 は、それぞれ置換基を有していてもよい2価の芳香族炭
化水素基または2価の不飽和複素環基である。芳香族炭
化水素基としては、炭素数6〜18個好ましくは炭素数6
〜14個を有するものである。特に、ベンゼン環1個また
は、その2〜4個の縮合環から導かれる2価の基が好ま
しい。このような芳香族炭化水素基を形成する環の例と
しては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナン
トレン環等が挙げられる。
また、不飽和複素環基としては、窒素原子、酸素原
子、イオウ原子を1〜2個含む5員環または6員環の単
環複素環基、またはこれらにベンゼン環が縮合した縮合
複素環基が示される。このような不飽和複素環基を形成
する環としては、例えば、ピリジン環、キノリン環、ピ
ロール環などの含窒素複素環;フラン環、ベンゾフラン
環などの含酸素複素環;チオフェン環、ベンゾチオフェ
ン環などの含イオウ複素環が挙げられる。
上記した で示される芳香族炭化水素基または不飽和複素環基に
は、多くとも5個、好ましくは3個までの置換基が含有
されていてもよい。このような置換基の例としては、フ
ッ素、塩素、シュウ素等のハロゲン原子;ヒドロキシル
基;シアノ基;ニトロ基;メチル基、エチル基、プロピ
ル基、ブチル基等の炭素数1〜20のアルキル基;メトキ
シ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等の炭素
数1〜20のアルコキシ基;フェニル基、トリル基、ナフ
チル基等の炭素数6〜10のアリール基;メチルアミノ
基、エチルアミノ基等の炭素数1〜4のアルキルアミノ
基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等の炭素数2
〜8のジアルキルアミノ基;トリフルオロメチル基等の
炭素数1〜4のハロゲノアルキル基;チエニル基、フリ
ル基、ピロリル基、ピリジル基等のイオウ原子、酸素原
子、窒素原子を1〜2個含む5員環または6員環の単環
複素環基、さらに、後述する−R5−S−R6または などを挙げることができる。
上記したR1およびR2が一緒になって環を形成し、置換
されていてもよいノルボルニリデン基または置換されて
いてもよいビシクロ〔3.3.1〕9−ノニリデン基を構成
している場合は、 は、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ
基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコ
キシ基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数2〜8のジ
アルキルアミノ基、炭素数1〜4のハロゲノアルキル基
及び単環複素環基よりなる群から選ばれた少くとも1個
によって、それぞれの場合に置換されていてもよい2価
の芳香族炭化水素基または2価の不飽和複素環基である
のが好ましい。
また、上記 は、上記した各置換基の1〜3個によってそれぞれの場
合に置換されていてもよいベンゼン環、若しくはベンゼ
ン環2〜4個の縮合環から導かれる2価の基、または、
酸素原子、イオウ原子、窒素原子を1〜2個含む5員環
若しくは6員環の単環複素環またはこれらにベンゼン環
が縮合した縮合複素環から導かれる2価の基であること
が好ましい。
さらにまた、 は、上記した各置換基の1〜3個によってそれぞれの場
合に置換されていてもよいベンゼン環、ナフタレン環、
フェナントレン環、ピリジン環、キノリン環、ピロール
環、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾ
チオフェン環であることが好ましい。
前記一般式〔A〕において、R1およびR2がアルキル基
のときは、 は、炭素数6〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアルコ
キシ基、−R5−S−R6および (但し、R5はアルキレン基またはO−R8 (但し、
R8はアルキレン基であり、nは正の整数である。)であ
り、R6およびR7は、夫々同種または異種のアルキル基で
あり、Xは、−N<,−P<, である。)よりなる群から選ばれた少くとも1種の置換
基を有する二環系芳香族炭化水素基または二環系不飽和
複素環基である。
二環系芳香族炭化水素基または二環系不飽和複素環基
の置換基である炭素数6〜20のアルキル基としては、ヘ
キシル基,ヘプチル基,オクチル基,ノニル基,デシル
基,ウンデシル基,ドデシル基,トリデシル基,ペンタ
デシル基,オクタデシル基,エイコシル基等が挙げられ
る。
さらに、二環系芳香族炭化水素基または二環系不飽和
複素環素の置換基である炭素数6〜20のアルコキシ基と
しては、ヘキシルオキシ基,ヘプチルオキシ基,オクチ
ルオキシ基,ノニルオキシ基,デシルオキシ基,ウンデ
シルオキシ基,ドデシルオキシ基,ペンタデシルオキシ
基,オクタデシルオキシ基,エイコシルオキシ基等が挙
げられる。
さらにまた、二環系芳香族炭化水素基または二環系不
飽和複素環基の他の置換基は、−R8−S−R6及び (但し、R5はアルキレン基又はO−R8 (但し、R8
はアルキレン基であり、nは正の整数である。)であ
り、R6及びR7は、夫々同種又は異種のアルキル基であ
り、Xは−N<,−P<, である。)である。これら二つの置換基のR5及びR8で示
されるアルキレン基は、炭素数に特に制限されず、一般
には1〜20の範囲から選ばれるが、得られるクロメン誘
導体のフォトクロミック材としての耐久性を勘案する
と、その炭素数は6〜20の範囲であることが好ましい。
アルキレン基の具体例としては、メチレン基,エチレン
基,プロピレン基,トリメチレン基,テトラメチレン
基,ペンタメチレン基,ヘキサメチレン基,ヘプタメチ
レン基,オクタメチレン基,ノナメチレン基,デカメチ
レン基,ウンデカメチレン基,ドデカメチレン基,トリ
デカメチレン基,ペンタデカメチレン基,オクタデカメ
チレン基,エイコサメチレン基等が挙げられる。また、
R5で示されるO−R8 のnは正の整数であればよい
が、一般にはO−R8 で示される鎖の炭素数が1〜
20、好ましくは6〜20となるように選択することが好ま
しく、このためには、nは一般には1〜20の範囲から選
択される。
さらに、R6及びR7で示されるアルキル基の炭素数は特
に制限されないが、得られるクロメン誘導体のフォトク
ロミック材としての退色速度の点からは1〜4の範囲で
あることが好ましい。
上記した各種の置換基は、二環系芳香族炭化水素基ま
たは二環系不飽和複素環基に最大6個まで置換し得る
が、製造の容易さ等の理由により、通常は1〜3個の範
囲で置換していることが好ましい。
上記した各種の置換基で置換される二環系芳香族炭化
水素基又は二環系不飽和複素環基は、前記した芳香族炭
化水素基又は不飽和複素環基の中で、5員環または6員
環が2個縮合したものが採用される。就中、縮合の位置
として、クロメンの7,8位に芳香環が縮合したクロメン
誘導体は、特に発色濃度が濃いためにフォトクロミック
材として好適に用いられる。
二環系芳香族炭化水素基または二環系不飽和複素環基
の置換基が炭素数6〜20のアルキル基又は炭素数6〜20
のアルコキシ基を含む場合には、得られるクロメン誘導
体は耐久性に優れたフォトクロミック材となる。一方、
二環系芳香族炭化水素基または二環系不飽和複素環基の
置換基が −R5−S−R6又は を含む場合には、得られるクロメン誘導体は退色速度の
速いフォトクロミック材となる。
本発明における前記一般式〔A〕で示されるクロメン
誘導体は、一般に黄〜赤に発色する。従って、本発明の
フォトクロミック成形体を装飾品等の用途に用いる場合
には前記一般式〔A〕の化合物を単独で用いてもよい。
また、本発明のフォトクロミック成形体をサングラス等
の用途に用いる場合には、発色色調が一般にブラウンや
グレーが好まれているため、他のフォトクロミック化合
物と併用して色調を調整することが好ましい。他のフォ
トクロミック化合物としては、一般にフルギド化合物ま
たはフルギミド化合物と呼ばれているものが、前記一般
式〔A〕の化合物との併用によりブラウンやグレーの色
調に調整可能であるために本発明において好適に用いら
れる。上記フルギド化合物またはフルギミド化合物の使
用量は、必要とする色調に応じて適宜選べばよく、一般
にブラウンやグレーの色調とするためには、一般式
〔A〕の化合物100重量部に対して0.01〜10000重量部、
好ましくは0.05〜200重量部の範囲から選択するのがよ
い。
上記のフルギド化合物は、下記式 で示される製造を有し、フォトクロミック性を有する化
合物が何ら制限なく採用される。また、フルギミド化合
物は、下記式 で示される構造を有し、フォトクロミック性を有する化
合物が何ら制限なく採用される。
本発明においては、フルギド化合物又はフルギミド化
合物としては、下記式で示される化合物が一般に用いら
れる。
式中 は、それぞれ置換基を有していてもよい2価の芳香族炭
化水素基または2価の不飽和複素環基 R1は、それぞれ置換基を有していてもよい1価の炭化水
素基または1価の複素環基 は、それぞれ置換基を有していてもよいノルボルニリデ
ン基またはアダマンチリデン基 Xは、酸素原子、 基−NR2 基−N−A1−B1−(A2 (B2 nB3 基−N−A3−A4または 基−N−A3−A4を示す。
前記一般式〔I〕において、 の基は、芳香族炭化水素基または不飽和複素環基であっ
て、これらの基は多くとも5個、好ましくは3個までの
置換基を有していてもよい。芳香族炭化水素基として
は、炭素数6〜20、好ましくは炭素数6〜14個を有する
ものであり、かかる芳香族炭化水素環を形成する環の例
としては、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナンスレン
環が挙げられる。
また、不飽和複素環基としては、窒素原子、酸素原子
および硫黄原子の如きヘテロ原子の少なくとも1種を1
個含む5員環または6員環の単環複素環基或いはこれら
にベンゼン環またはシクロヘキセン環が縮合した形の縮
合複素環基が示される。かかる複素環基を形成している
環としては、例えばピロール環、ピリジン環、キノリン
環、イソキノリン環などの含窒素複素環;フラン環、ベ
ンゾフラン環、ピラン環などの含酸素複素環;チオフェ
ン環、ベンゾチオフェン環などの含硫黄複素環が挙げら
れる。
前述したように、 で示される芳香族炭化水素基または不飽和複素環基に
は、多くとも5個、好ましくは3個までの置換基が含有
されていてもよい。かかる置換基の例としては、フッ
素、塩素、臭素、沃素の如きハロゲン原子;ヒドロキシ
ル基;シアノ基;ニトロ基;アミノ基;カルボキシル
基;メチルアミノ基;ジエチルアミノ基の如き炭素数1
〜4のアルキルアミノ基;メチル基、エチル基、プロピ
ル基、t−ブチル基の如き炭素数1〜4の低級アルキル
基;トリフルオロメチル基、2−クロロエチル基などの
ハロゲン原子を1〜3個有するハロゲン化低級アルキル
基;メトキシ基、エトキシ基、t−ブトキシ基の如き炭
素数1〜4の低級アルコキシ基;フェニル基、ナフチル
基、トリル基の如き炭素数6〜10のアリール基;フェノ
キシ基、1−ナフトキシ基の如き炭素数6〜14のアリー
ルオキシ基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニル
プロピル基の如き炭素数7〜15のアラルキル基;ベンジ
ルオキシ基、フェニルプロポキシ基の如き炭素数7〜15
のアラルコキシ基および炭素数1〜4のアルキルチオ基
などが挙げられる。これらの置換基は、同種であっても
異種であってもよく、また位置は特に制限されない。
上記 は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、炭
素数1〜4のアルキルチオ基、炭素数1〜4のアルキル
基及び炭素数1〜4のアルコキシ基よりなる群から選ば
れた原子または基の少なくとも1個によって、それぞれ
の場合に置換されていてもよい2価の芳香族炭化水素基
または2価の不飽和複素環基であるのが好ましい。
また、上記 が、上記した各置換基の1〜3個によってそれぞれの場
合に置換されていてもよい炭素数6〜14のアリール基ま
たは窒素原子、炭素原子及び硫黄原子を1個含有する5
員環または6員環の単環複素環基或いは該複素環基にベ
ンゼン環またはシクロヘキセン環が縮合した縮合複素環
基であるのは一層好ましい。
さらに上記 が、2価のベンゼン環、複素原子を1個含有する5員環
または6員環の単環複素環またはこの複素環にベンゼン
環或いはシクロヘキセン環が縮合した形の縮合複素環で
あるものが好ましい。これらベンゼン環、単環複素環ま
たは縮合複素環には、前記した置換基が1〜2個含まれ
ているものも同様に好ましい態様である。
前記一般式〔I〕におけるR1は、それぞれ置換基を有
していてもよい1価の炭化水素基または1価の複素環基
である。
かかるR1の炭化水素基としては脂肪族、脂環族または
芳香族炭化水素のいずれであってもよいが、具体例とし
ては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基の如
き炭素数1〜20、好ましくは1〜6のアルキル基;フェ
ニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基の如き炭素
数6〜14のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル
基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基の如き炭素
数1〜10、好ましくは1〜4のアルキレン基を有するア
ラルキル基が好適である。
またR1の複素環基としては、窒素原子、酸素原子およ
び硫黄原子の如きヘテロ原子の少なくとも1種を1〜3
個、好ましくは1または2個含む5員環または6員環の
単環複素環基或いはこれにベンゼンが縮合した縮合複素
環基が好ましい。かかる複素環基の具体例としては、前
の定義において説明した不飽和複素環基の例示の他にさ
らに飽和のピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン
環、ピロリジン環、インドリン環、クロマン環などの飽
和複素環基を挙げることができる。
前記したR1の炭化水素基または複素環基には置換基を
有していても特に差支えない。かかる置換基は、炭化水
素基または複素環基に対し、多くとも5個、好ましくは
3個まで含有することが好ましく、置換基の具体例とし
ては、前記 において説明したものと同じ置換基を例示することがで
きる。
上記R1として好ましいのは、ハロゲン原子、炭素数1
〜4のアルコキシ基またはフェニル基で置換されていて
もよい炭素数1〜20のアルキル基;ハロゲン原子または
炭素数1〜4のアルコキシ基で置換されていてもよい炭
素数6〜10のアリール基;または窒素原子、炭素原子及
び硫黄原子を1〜3個、殊に1個含有する5員環または
6員環の単環複素環基或いは該複素環基にベンゼン環が
縮合した縮合複素環基、殊に単環複素環基である。
さらに上記R1として特に好ましいのは、炭素数1〜6
のアルキル基、炭素数7〜10のアラルキル基または炭素
数6〜10のアリール基である。
本発明における前記一般式〔I〕において、 は、それぞれ置換基を有していてもよいノルボルニリデ
ン基またはアダマンチリデン基を意味する。ここでノル
ボルニリデン基は下記式 で表わされ、またアダマンチリデン基は下記式で表わさ
れる。
上記式は、いずれも置換基を有さないノルボルニリデ
ン基およびアダマンチリデン基の骨格構造を示したもの
である。これらノルボルニリデン基またはアダマンチリ
デン基は、上記式の水素原子が置換基により置換されて
いてもよく、その数は1個またはそれ以上であってもよ
い。置換基を有する場合、その種類、数及び位置は、目
的および用途によって任意に選択される。また複数の置
換基を有する場合、同一の置換基であってもよく、また
異種の置換基であってもよい。
上記ノルボルニリデン基またはアダマンチリデン基の
置換基としては、例えば、ヒドロキシ基;メチルアミノ
基、ジエチルアミノ基等の炭素数1〜4のアルキルアミ
ノ基;メトキシ基、エトキシ基、tert−ブトキシ基等の
炭素数1〜4のアルコキシ基;ベンジルオキシ基等の炭
素数7〜15のアラルコキシ基;フェノキシ基、1−ナフ
トキシ基等の炭素数6〜14のアリールオキシ基;メチル
基、エチル基、t−ブチル基等の炭素数1〜4の低級ア
ルキル基;フッ素、塩素、シュウ素等のハロゲン原子;
シアノ基;カルボキシル基;エトキシカルボニル等の炭
素数2〜10のアルコキシカルボニル基;トリフルオロメ
チル基等の炭素数1または2のハロゲン置換アルキル
基;ニトロ基;フェニル基、トリル基等の炭素数6〜10
のアリール基;フェニルエチル基、フェニルプロピル基
等の炭素数7〜9のアラルキル基等が挙げられる。
これら置換基の好ましい例としては、ハロゲン原子、
ヒドロキシ基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜
4のアルコキシ基、炭素数2〜10のアルコキシカルボニ
ル基、炭素数7〜9のアラルキル基または炭素数6〜10
のアリール基である。
本発明における前記一般式〔I〕においてXは、酸素
原子(−O−)、基N−R2、 基N−A1−B1−(A2 (B2 nR3、 基N−A3−A4または基N−A3−R4を示す。
また、一般式〔I〕において、Xが 基N−A1−B1−(A2 (B2 nR3、 基N−A3−A4または基N−A3−R4、特に 基N−A3−A4または 基N−A1−B1−(A2 (B2 nR3(但し、R3はハロ
ゲン原子、シアノ基およびニトロ基よりなる群から選ば
れた1〜3個の原子又は置換されていてもよい炭素数1
〜10のアルキル基である。)であるのが、得られる化合
物のフォトクロミック性の耐久性の点からより好まし
い。
一般式〔I〕中のXが、上記した 基N−A1−B1−(A2 (B2 nR3のうち、R3がナフ
チル基またはナフチルアルキル基である場合、および基
N−A3−A4である場合は、R3又はR4で示されるナフチ
ル基とイミド基(N−)との間にはさまれた主鎖の原
子数が3〜7個の範囲であることが、フォトクロミック
作用の耐久性に優れた化合物が得られるために好まし
い。
次に、上記XにおけるR2、R3、R4、A1、A2、A3、A4
B1、B2、mおよびnの定義について詳細に説明する。
R2は、水素原子、アルキル基またはアリール基を示
し、該アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル
基、プロピル基、n−、iso−またはtert−ブチル基、
ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基などが
挙げられるが、これらの中で炭素数1〜20のもの、さら
に炭素数が1〜10のものが好ましい。また該アリール基
としては、例えばフェニル基、トリル基またはナフチル
基等の炭素数6〜10のものが挙げられる。
A1、A2およびA3は、互いに同一であってもよく異なっ
ていてもよく、アルキレン基、アルキリデン基、シクロ
アルキレン基またはアルキルシクロアルカン−ジイル基
であることができる。これらの具体例としては、例え
ば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン
基、トリメチレン基、テトラメチレン基または2,2−ジ
メチルトリメチレン基などの炭素数1〜10のアルキレン
基;エチリデン基、プロピリデン基またはイソプロピリ
デン基などの炭素数2〜10のアルキリデン基;シクロヘ
キシレン基の如き炭素数3〜10のシクロアルキレン基;2
−メチルシクロヘキサン−α、1−ジイル基 4−メチルシクロヘキサン−α、1−ジイル基 の如き炭素数6〜10のアルキルシクロアルカン−ジイル
基が挙げられる。A1およびA2としては、特に炭素数1〜
6のアルキレン基、炭素数2〜6のアルキリデン基、炭
素数3〜6のシクロアルキレン基、炭素数6〜7のアル
キルシクロアルカン−ジイル基が好ましい。
B1およびB2は、互いに同一であってもよく、また異な
っていてもよく、下記群の7つの結合基から選ばれる。
mおよびnは、それぞれ独立して0または1を示す
が、0を示すときはA2 またはB2 は、結合手
を意味する。また、mが0の時はnも0を表わす。
R3は、それぞれ置換基を有していてもよいアルキル
基、ナフチル基またはナフチルアルキル基を示す。上記
のアルキル基の炭素数は特に制限されないが、1〜10で
あることが好ましく、また、ナフチルアルキル基のアル
キル基の炭素数は1〜4が好ましい。
上記した各基の置換基は特に制限されないが、上記ア
ルキル基は、ハロゲン原子、シアノ基およびニトロ基よ
りなる群から選ばれた1〜3個の原子または基で置換さ
れていてもよく、また上記ナフチル基またはナフチルア
ルキル基はハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素数
1〜3のアルキルアミノ基、炭素数1〜3のアルキル基
及び炭素数1〜3のアルコキシ基よりなる群から選ばれ
た1〜3個の原子または基で置換されていてもよい。上
記のR3で示されるアルキル基としては、前記R2において
例示したアルキル基と同様のものを使用することができ
る。またナフチルアルキル基としては、ナフチルメチル
基、ナフチルエチル基、ナフチルプロピル基またはナフ
チルブチル基等を挙げることができる。
A4は、置換基を有していてもよいナフチル基を示す。
置換基の種類は特に制限されないが、該ナフチル基はハ
ロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜3のアル
キルアミノ基、炭素数1〜3のアルキル基および炭素数
1〜3のアルコキシ基よりなる群から選ばれた1〜3個
の原子または基で置換されていてもよい。またR4はハロ
ゲン原子、シアノ基またはニトロ基を表わす。
前記したR3およびA4の定義において、ハロゲン原子と
してはフッ素、塩素または臭素を挙げることができる。
前記のフォトクロミック化合物を含む樹脂層として
は、被覆される熱硬化性樹脂の表面に強く密着し、フォ
トクロミック化合物が均一に分散するものであれば、熱
可塑性樹脂および熱硬化性樹脂の別なく用い得る。一般
には、後述する有機ケイ素化合物の加水分解物の被覆を
熱硬化性樹脂の表面に形成させるにあたり、有機ケイ素
化合物の加水分解物の被覆と熱硬化性樹脂との密着性を
向上させる目的で使用されるプライマーが何ら制限され
ずに使用し得る。このようなプライマーとしては、例え
ば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノール
F型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹
脂、脂環式エポキシ樹脂等の一分子中に2個以上のエポ
キシ基を有するエポキシ樹脂系プライマー;トスプライ
ムA、トスプライムB、トスプライムC、トスプライム
D、トスプライムEやYP9341(以上、東芝シリコーン社
製:商品名)などのシラン系プライマー;ポリゾールF3
61、ポリゾールF341、ポリゾールFF−450、コーガムHW
−7(以上、昭和高分子社製:商品名)、セビアンA51
7、セビアンA4716、セビアンA46701、セビアンA4635、
セビアンA4730、セビアンA45000、セビアンA4171(以
上、ダイセル化学工業社製;商品名)、ニカゾールFL−
3000、ニカゾールME−702、ニカゾールFX−201、ニカゾ
ールFX−322、ニカゾールFX−329、ニカゾールTS−44
4、ニカゾールTS−501、ニカゾールTS−517、ニカゾー
ルTS−542、ニッセツPC−501、ニッセツPE−115、ニッ
セツPE−118、ニッセツPE−121(以上、日本カーバイド
工業社製;商品名)などのアクリル樹脂系プライマーを
挙げることができる。また、ポリビニルアルコール、ポ
リ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリアク
リロニトリル、セルロース系天然高分子などの親水性樹
脂も、上記のフォトクロミック化合物を分散させる樹脂
として使用することができる。
これらの樹脂に含有させるフォトクロミック化合物の
量は、得られるフォトクロミック成形体の発色濃度に応
じて決定すればよく、一般には、樹脂100重量部に対し
て、フォトクロミック化合物を0.001〜60重量部、特に
0.1〜40重量部の範囲とすることが好ましい。
フォトクロミック化合物を含む樹脂層の厚みは、得ら
れるフォトクロミック成形体の発色濃度に応じて決定す
ればよいが、一般には0.5〜10μmの範囲が好ましい。
一方、熱硬化性樹脂の表面にフォトクロミック化合物
を含浸させる方法としては、一般に用いられるフォトク
ロミック化合物を融点以上に加熱し、溶解させその中に
熱硬化性樹脂を1〜60分浸漬し、化合物を含浸させる方
法が用いられる。また、特開昭61−501145号公報に示さ
れているような、高沸点不活性液体にフォトクロミック
化合物を溶解させ、その中に熱硬化性樹脂を浸漬する方
法も採用できる。ここで高沸点不活性液体としては、シ
リコーン油やパーフルオロ油などが用いられ、フォトク
ロミック化合物を0.1〜50重量%の濃度で高沸点不活性
液体中に溶解させて用いればよい。さらに、特開昭60−
112880号公報に示されているような市販ラッカー中にフ
ォトクロミック化合物を分散させ、これを熱硬化性樹脂
へ塗布し、100〜250℃で1〜60分加熱することにより、
表面に含浸させる方法も採用される。このときの市販ラ
ッカー中のフォトクロミック化合物濃度は、0.1〜50重
量%が好ましい。
本発明においては、上記した方法で熱硬化性樹脂の表
面又は表面近傍にフォトクロミック化合物を含む層を形
成させ、さらにその上にフォトクロミック性の耐久性を
向上させるために有機ケイ素化合物の加水分解よりなる
層の被覆が行なわれる。
有機ケイ素化合物の加水分解物には、上記したフォト
クロミック化合物を含む樹脂層あるいはフォトクロミッ
ク化合物の含浸後の熱硬化性樹脂表面との強い密着性が
求められる。さらにフォトクロミック化合物の耐久性及
び成形体としての表面硬度を考えると、この加水分解物
層の被膜は均一で、かつ、その膜厚は、0.2〜10μmで
あることが好ましい。
このような被膜の形成には、有機ケイ素化合物、表面
硬度向上剤、及び硬化触媒よりなるコーティング剤が好
適に用いられる。
まず、上記コーティング剤の第1成分である有機ケイ
素化合物としては、下記式〔II〕及び/又は〔III〕 (ただし、R5はビニル基、メタクリロイルオキシ基、メ
ルカプト基、エポキシ基、グリシドキシ基及びアミノ基
よりなる群から選ばれた少くとも1種の基を有する炭化
水素基であるか、またはアルキル基、アリール基、ビニ
ル基であり、R6は、アルキル基で、nは0または1、R7
はアルキル基、アセチル基または、アルコキシアルキル
基である。)で示されるオルガノアルコキシシラン化合
(ただし、Aは主鎖が直鎖状に少くとも4個以上の原子
から成る2価の炭化水素基、R8及びR9は同一または異種
のアルキル基またはアルコキシアルキル基、R10及びR11
は同一または異種のアルキル基、l及びmは0または1
である)で示されるジシラン化合物 が好適に用いられる。
上記の一般式(II)で示されるオルガノアルコキシシ
ラン化合物は、特にR6の炭素数が1〜4、R7の炭素数が
1〜4のものが一般に使用される。具体的には、メチル
トリメトキシシラン、ジメチルメトキシシラン、メチル
トリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、フェ
ニルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、
ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラ
ン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリスメトキ
シエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメト
キシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキ
シシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメト
キシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラ
ン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリ
メトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラ
ン等が挙げられる。
また、上記一般式(III)で示されるジシラン化合物
のAで表現される2価の炭化水素基の代表的な具体例
は、−CH2CH2CH2CH2−、 などのアルキレン基; −CH2CH2OCH2CH2−、−CH2CH2CH2OCH2CH2CH2−などの一
般式CH2pO[(CH2qC](CH2 (ただし、
p、qは2あるいは3、rは0あるいは以上の整数)で
表わされるエーテル基; (ただし、pは2あるいは3)で示されるスピロ基; などで示されるエポキシ基を含有する基; などの一般式 (ただし、RはCH2CH2OまたはCH2CH2CH2Oで、sは0〜
4の整数である。tはs=0のときは0で、s=1〜4
のときは1である。)で示されるカーボネート基などで
ある。
さらに、上記の有機ケイ素化合物に加えてネオペンチ
ルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジ
オールジグリシジルエーテル、o−フタル酸ジグリシジ
ルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジ
グリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポ
リグリシジルエーテル等の一分子中に2個以上のエポキ
シ基を有する有機化合物を併用することもできる。
上記コーティング剤の第2成分としては、下記式 Si(OR12 (IV) で示されるテトラアルコキシシラン化合物(ただし、R
12は、アルキル基またはアルコキシアルキル基である)
を加水分解して得られる成分、コロイドシリカより選ば
れた少なくとも一種が推奨される。一般式(IV)で示さ
れるテトラアルコキシシラン化合物はR12の炭素数が1
〜4のものが一般に使用される。具体的には、テトラメ
トキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキ
シシラン、テトラブトキシシラン等が挙げられる。ま
た、コロイドシリカとしては、従来公知の種々の方法で
製造されている粒径1〜100mμのシリカ微粉体をそのま
まあるいはこれを極性溶媒に分散させたコロイド溶液の
状態で使用可能である。本発明においては、該コロイド
シリカを極性溶媒、例えば水やメタノール、イソプロパ
ノール等のアルコール系溶媒に分散させたコロイド溶液
は、弱酸性に調整したものが好ましい。
前記コーティング剤の第3成分の硬化触媒は、被膜の
硬化温度の低下や硬化時間の短縮を図るために用いら
れ、有機ケイ素化合物の加水分解における硬化触媒とし
て公知の化合物、例えば塩酸、硫酸、酢酸/酢酸ナトリ
ウム混合物、塩化錫、過塩素酸、過塩素酸アンモニウ
ム、過塩素酸亜鉛、過塩素酸マグネシウムなどの過塩素
酸塩、アルミニウムアセチルアセトナート等のアセチル
アセトナート金属塩、ナフテン酸金属塩、p−トルエン
スルホン酸、安息香酸、リン酸アルカリ金属塩、チオシ
アン酸ナトリウム等を使用することが好ましい。
さらに、上記した成分の他に、得られる被膜の平滑性
を向上させ、次の無機硬質物の均一な被膜を形成させる
ためにシリコン系やフッ素系の界面活性剤を加えること
が可能である。また、その他の各種添加剤、例えば紫外
線吸収剤、酸化防止剤、染料や顔料あるいはゲル化防止
剤として蟻酸、酢酸等の有機カルボン酸類も使用可能で
ある。
これらコーティング剤の各成分の配合量は、第1成分
100重量部に対して第2成分10〜100重量部、第3成分1
〜10重量部であることが好ましい。
本発明において用いられる熱硬化性樹脂としては、エ
チレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコー
ルジメタクリレート、エチレングリコールビスグリシジ
ルメタクリレート、ビスフェノールAジメタクリレー
ト、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシエトキシフ
ェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−メ
タクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン等の多
価アクリル酸及び多価メタクリル酸エステル化合物;ジ
アリルフタレート、ジアリルテレフタレート、ジアリル
イソフタレート、酒石酸ジアリル、エポキシコハク酸ジ
アリル、ジアリルフマレート、クロレンド酸ジアリル、
ヘキサフタル酸ジアリル、ジアリルカーボネート、アリ
ルジグリコールカーボネート、トリメチロールプロパン
トリアリルカーボネート等の多価アリル化合物;1,2−ビ
ス(メタクリロイルチオ)エタン、ビス(2−アクリロ
イルチオエチル)エーテル、1,4−ビス(メタクリロイ
ルチオメチル)ベンゼン等の多価チオアクリル酸及び多
価チオメタクリル酸エステル化合物;ジビニルベンゼン
等のラジカル重合性多官能単量体の重合体:又はこれら
の各単量体とアクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン
酸等の不飽和カルボン酸;アクリル酸メチル、メタクリ
ル酸メチル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェ
ニル、2−ヒドロキシエチルメタクリレート等のアクリ
ル酸及びメタクリル酸エステル化合物;フマル酸ジエチ
ル、フマル酸ジフェニル等のフマル酸エステル化合物;
メチルチオアクリレート、ベンジルチオアクリレート、
ベンジルチオメタクリレート等のチオアクリル酸及びチ
オメタクリル酸エステル化合物;スチレン、クロルスチ
レン、メチルスチレン、ビニルナフタレン、ブロモスチ
レン等のビニル化合物等のラジカル重合性単官能単量体
との共重合体:さらにはエタンジチオール、プロパント
リオール、ヘキサンジチオール、ペンタエリスリトール
テトラキスチオグリコレート、ジ(2−メルカプトエチ
ル)エーテル等の多価チオール化合物と前記のラジカル
重合性多官能単量体との付加共重合体:ジフェニルエタ
ンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、p
−フェニレンジイソシアネート等の多価イソシアネート
化合物とエチレングリコール、トリメチロールプロパ
ン、ペンタエリスリトール、ビスフェノールA等の多価
アルコール化合物又は前記した多価チオール化合物との
付加重合体等があげられる。これらの単量体は1種又は
2種以上を混合して使用できる。
本発明のフォトクロミック成形体中のフォトクロミッ
ク化合物を分散して含む樹脂層に紫外線安定剤を配合す
ることにより、又、フォトクロミック化合物を含浸させ
る時に紫外線安定剤をともに含浸させることにより、フ
ォトクロミック性の耐久性をさらに向上させることがで
きる。紫外線安定剤としては、各種プラスチックに添加
されている公知の紫外線安定剤が何ら制限なく使用し得
る。
本発明において、フォトクロミック化合物の耐久性の
向上を勘案すると、各種の紫外線安定剤の中でも、一重
項酸素消光剤、ヒンダードアミン光安定剤、ヒンダード
フェノール酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤が好適に使
用される。これらの紫外線安定剤をより具体的に例示す
るとシアソーブUV1084、シアソーブ3346(以上アメリカ
ンサイアナミド社製)、UV−チェクAM101、UV−チェクA
M105(以上フェロコーポレーション社製)、イルガスタ
ブ2002、チヌビン765、チヌビン144、キマソーブ944、
チヌビン622、イルガノックス1010、イルガノックス245
(以上チバガイギー社製)、ライレックスNBC(デュポ
ン社製)、シアソーブ3346(アメリカンサイアナミド社
製)、サノールLS−1114、サノールLS−744、サノールL
S−2626(以上、三共(株)社製)、スミライザーGA−8
0、スミライザーGM、スミライザーBBM−S、スミライザ
ーWX−R、スミライザーS、スミライザーBHT、スミラ
イザーTP−D、スミライザーTPL−R、スミライザーTP
S、スミライザーMB(以上、住友化学社製)、マークAO
−50、マークAO−20、マークAO−30、マークAO−330、
マークAO−23(以上アデカ・アーガス社製)、アンチオ
キシダントHPM−12(S.F.O.S社製)等があげられる。
尚、上記の名称はいずれも商品名である。
(効果) 本発明のフォトクロミック成形体は、フォトクロミッ
ク化合物の樹脂中への存在のさせ方によってフォトクロ
ミック化合物の耐久性が向上するものである。
本発明のフォトクロミック成形体は、広範囲の分野に
利用でき、例えば、銀塩感光材料に代る各種の記録記憶
材、複写材料、印刷用感光体、陰極線管用記録材料、レ
ーザー用感光材料などの種々の記録材料として利用でき
る。その他、本発明のフォトクロミック成形体はフォト
クロミックレンズ材料、光学フィルター材料、ディスプ
レイ材料、光量計、装飾などの材料としても利用でき
る。
(実施例) 以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明する
が、本発明はこれらの実施例に限定されるものではな
い。実施例中の「部」は「重量部」である。
尚、以下の実施例における記号は次の化合物を示す。
・BMDBP:2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシエトキ
シ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン ・Cl−St:クロルスチレン ・TMP−TAC:トリメチロールプロパントリアリルカーボ
ネート ・BADBP:2,2−ビス(4−アリルカーボネイトエトキシ
−3,5−ジブロモフェニル)プロパン ・ADC:アリルジグリコールカーボネート ・DAP:ジアリルフタレート ・St:スチレン ・DCIPF:ジ(2−クロルイソプロピル)フマレート ・EGDMA:エチレングリコールジメタクリレート ・PETTP:ペンタエリスリトールテトラキス(β−チオプ
ロピオネート) ・DME:ジ(2−メルカプトエチル)エーテル ・DVB:ジビニルベンゼン ・XIC:キシリレンジイソシアネート ・HPA:3−(2,4−ジブロモフェノキシ)−2−ヒドロキ
シプロピルアクリレート ・MMA:メチルメタクリレート ・DEGDMA:ジエチレングリコールメタクリレート ・TBBM:3,4,5−トリブロモベンジルメタクリレート ・HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート ・BMA:ベンジルメタクリレート ・パーブチルND:t−ブチルパーオキシ−2−ヘキサネー
ト ・PVA:ポリビニルアルコール ・PHEMA:ポリヒドロキシエチルメタクリレート ・PAN:ポリアクリロニトリル 製造例1 1−ヒドロキシ−2−アセトナフトン10g(0.054mo
l)ノルカンファー6.6g(0.06mol)とピロリジン8g(0.
113mol)とをトルエン300ccに溶解した溶液を調製し
た。この混合物を10時間沸騰させ、水を分離した。反応
終了後、トルエンを減圧下で除去し、残ったクロマノン
化合物をアセトンで結晶化させた。次いで、このクロマ
ノン化合物をメタノール200ccに溶解させ、水素化ホウ
素ナトリウムを徐々に添加して、クロマノール化合物に
した。このクロマノール化合物7.47gを二酸化炭素気流
中で無水硫酸銅4.5gと共に150〜160℃で10分間加熱し、
茶色の粘稠な液体をシリカゲル上でのクロマトグラフィ
ーにより精製することにより、下記式のクロメン誘導体
6.3gを得た。
この化合物の元素分析値は、C86.93%、H6.89%、O6.
18%であって、C19H18Oに対する計算値であるC87.02
%、H6.87%、O6.12%に極めてよく一致した。また、プ
ロトン核磁気共鳴スペクトルを測定したところ、δ7.2
〜8.3ppm付近にナフタレン環のプロトンに基づく6Hのピ
ーク、δ5.6〜6.7ppm付近にアルケンのプロトンに基づ
く2Hのピーク、δ1.2〜2.5ppm付近にノルボルニリデン
基のプロトンに基づく10Hの幅広いピークを示した。さ
らに13C−核磁気共鳴スペクトルを測定したところ、δ2
7〜52ppm付近にノルボルニリデン基の炭素に基づくピー
ク、δ110〜160ppm付近にナフタレン環の炭素に基づく
ピーク、δ80〜110ppm付近にアルケンの炭素に基づくピ
ークが現われる。上記の結果から、単離生成物は、上記
の構造式(1)で示される化合物であることを確認し
た。
製造例2 1−アセチル−2−ナフトール10g(0.054mol)とビ
シクロ〔3.3.1〕ノナン−9−オン8.29g(0.006mol)と
モルホリン8.7g(0.10mol)とをトルエン300ccに溶解し
た溶液を調製した。この混合物を5時間沸騰させ、水を
分離した。反応終了後、トルエンを減圧下で除去し、残
ったクロマノン化合物をアセトンで再結晶させた。次い
で、このクロマノン化合物をメタノール200ccに溶解さ
せ、水素化リチウムアルミニウムを添加して、クロマノ
ール化合物にした。このクロマノール化合物6.49gを二
酸化炭素気流中で無水硫酸銅と共に170〜180℃で10分間
加熱し、茶色の粘稠な液体をシリカゲル上でクロマトグ
ラフィーにより精製し、下記式のクロメン誘導体5.8gを
得た。
この化合物の元素分析値は、C86.81%、H7.62%、O5.
57%であって、C21H22Oに対する計算値であるC86.90
%、H7.59%、O5.52%に極めてよく一致した。また、プ
ロトン核磁気共鳴スペクトルを測定したところ、δ7.2
〜8.3ppm付近にナフタレン環のプロトンに基づく6Hのピ
ーク、δ6.0〜7.0ppm付近にアルケンのプロトンに基づ
く2Hのピーク、δ1.2〜2.5ppm付近にビシクロ〔3.3.1〕
9−ノニリデン基のプロトンに基づく14Hの幅広いピー
クを示した。さらに、13C−核磁気共鳴スペクトルを測
定したところ、δ27〜55ppm付近にビシクロ〔3.3.1〕9
−ノニリデン基の炭素に基づくピーク、δ110〜160ppm
付近にナフタレン環の炭素に基づくピーク、δ80〜110p
pm付近にアルケンの炭素に基づくピークが現われる。上
記の結果から、単離生成物は、上記の構造式(2)で示
される化合物であることを確認した。
製造例3 下記式で示されるクロマノン化合物3.06g(0.01mol) を無水エーテル50ccに溶解し、0℃までその溶液を冷
し、無水エーテル50cc中で新たに調製したグリニャール
試薬CH3MgCl,(0.012mol)をその溶液中に約1時間を要
して滴下した。滴下終了後、室温でさらに2時間撹拌し
た後、冷水中にそのエーテル溶液を静かに注ぎ、エーテ
ルで生成物を抽出し、硫酸マグネシウムでその溶液を乾
燥後、減圧下でエーテルを除去し、クロマノン化合物を
クロマノール化合物に変えた。次いでこのクロマノール
化合物を二酸化炭素気流中で無水硫酸銅と共に200℃で
約10分間加熱し、茶色な粘稠な液体をシリカゲル上でク
ロマトグラフィーにより生成し、下記式のクロメン誘導
体2.47gを得た。
製造例1と同様に元素分析、プロトン核磁気共鳴スペ
クトル、13C−核磁気共鳴スペクトルの測定によって、
この化合物が、上記の構造式(3)で示される化合物で
あることを確認した。
製造例4 1−アセチル−2−ナフトール10g(0.054mol)とノ
ルカンファー6.6g(0.06mol)とモルホリン8.7g(0.10m
ol)とをトルエン300ccに溶解し、15時間沸騰させ、水
を分離した。反応終了後、トルエンを減圧下で除去し、
残った生成物をアセトンで再結晶させ、下記式で示され
る化合物7.53gを得た。
次いで、この化合物7.53gをメタノール100ccに溶解さ
せ、ヨウ化メチルと反応させることにより、下記式で示
されるクロマノン化合物6.95gを得た。
次いで、この生成したクロマノン化合物を製造例3と
同様にして、クロマノール化合物に変え、脱水反応を行
ない、分離、精製後、下記式のクロメン誘導体5.84gを
得た。
製造例1と同様に、元素分析、プロトン核磁気共鳴ス
ペクトル、13C−核磁気共鳴スペクトル測定によって、
この化合物が、上記の構造式(4)で示される化合物で
あることを確認した。
製造例5 5−n−オクチルオキシ−1−ヒドロキシ−2−アセ
トナフトン10g(0.0318mol)とアセトン2.77g(0.0477m
ol)とピロリジン1.13g(0.0159mol)をトルエン100ml
に溶解した溶液を調製した。この混合物を10時間沸騰さ
せ、水を分離した。反応終了後、トルエンを減圧下で除
去し、残ったクロマノン化合物をメタノール100mlに溶
解させ、水素化ホウ素ナトリウムを徐々に添加してクロ
マノール化合物にした。このクロマノール化合物6.0gを
二酸化炭素気流中で無水硫酸銅4.0gと共に150〜160℃で
10分間加熱し、茶色の粘稠な液体をシリカゲル上でのク
ロマトグラフィーにより精製することにより、下記式の
クロメン誘導体3.8gを得た。
製造例1と同様に、元素分析、プロトン核磁気共鳴ス
ペクトル、13C−核磁気共鳴スペクトルの測定によっ
て、この化合物が上記の構造式(5)で示される化合物
であることを確認した。
製造例6〜14 製造例1〜5と同様にして第1表に示したクロメン誘
導体を合成した。
得られた生成物について、製造例1と同様な構造確認
の手段を用いて構造解析した結果、第1表に示す構造式
で示される化合物であることを確認した。
製造例15 下記式の3−チエニルエチリデン−2−アダマンチリ
デンこはく酸無水物3.4g(0.01mol) と下記式のグリシン−メチルエステル17.8g(0.02mol) をトルエンに溶解し、窒素雰囲気下で50℃で2時間加熱
した。反応後、溶媒を除去して塩化アセチルに溶解し、
1時間還流し環化した。得られた化合物をO−ジクロル
ベンゼン中で6時間還流することにより、下記のフルギ
ミド化合物(1)に転位した。この化合物は、溶離液と
してベンゼンとエーテルを用いてシリカゲル上でのクロ
マトグラフィーにより精製され、クロロホルム及びヘキ
サンからの淡黄色針結晶として27%の収率で得られた。
この化合物の元素分析値はC66.78%,H6.09%,N3.36%,O
15.8%,S7.96%であって、C23H25O4NSに対する計算値で
あるC67.15%,H6.08%,N3.41%,O15.6%,S7.79%に極め
てよく一致した。また、プロトン核磁気共鳴スペクトル
を測定したところ、δ7.0〜8.0ppm付近にアロマティッ
クなプロトンに基づく2Hのピーク、δ2.7ppmにC−CH
3結合のプロトンに基づく3Hのピーク,δ3.7ppm付近に 結合のメチル基のプロトンに基づく3Hのピーク,δ1.2
〜2.5ppmにアダマンチリデン基のプロトンに基づく14H
のピーク,δ3〜5ppmに1〜5転位したプロトンとN
−CH2−結合に基づく3Hのピークを示した。
さらに13C−核磁気共鳴スペクトル(13C−NMRを測定
したところ、δ27〜70ppm付近にアダマンチリデン基の
炭素とメチレン鎖の炭素に基づくピーク、δ15.6ppm付
近にメチル基の炭素に基づくピーク、δ110〜160ppm付
近にチオフェン環の炭素に基づくピーク,δ160〜170pp
m付近にC=0結合の炭素に基づくピークが現われ
る。
上記の結果から、単離生成物は、下記の構造式で示さ
れるフルギミド化合物(15)であることを確認した。
製造例16 下記式のフルギミド化合物3.4g(0.01mol) をテトラヒドロフランに溶解し、これに金属カリウム1g
を室温で反応させ、下記式のイミドカリ3gを得た。
これと下記式のブロモアセトニトリル1.2g(0.01mol) BrCH2CN をジメチルホルムアミド中で反応させることにより、下
記のフルギミド化合物(16)を得た。この化合物は、溶
離液としてクロロホルムとヘキサンを用いてシリカゲル
上でのクロマトグラフィーにより精製され、ヘキサンか
らの淡黄色結晶として57%の収率で得られた。この化合
物の元素分析値はC69.81%,H5.80%,N7.44%,O8.50%,S
8.46%であって、C22H22N2O2Sに対する計算値であるC6
9.84%,H5.82%,N7.41%,O8.47%,S8.47%に極めてよく
一致した。また、プロトン核磁気共鳴スペクトルを測定
したところ、δ7.0〜7.5ppm付近にチオフエン環のプロ
トンに基づく2Hのピーク、δ4.5ppm付近にN−CH2CN
結合のプロトンに基づく2Hのピーク,δ3.7ppmb付近に
1.5転位したプロトンに基づく1Hのピーク、δ2.7ppm付
近に−CH3結合のプロトンに基づく3Hのピーク、δ1.3〜
2.5ppm付近に−CH2−結合のプロトンのアダマンチリデ
ン基に基づくプロトンの14Hのピークを示した。
さらに13C−核磁気共鳴スペクトル(13C−NMR)を測
定したところ、δ27〜70ppm付近にアダマンチリデン基
の炭素に基づくピーク、δ15.6ppm付近にメチル基の炭
素に基づくピーク,δ110〜160ppm付近にチオフエン環
の炭素に基づくピーク、δ160〜170ppm付近にC=0
結合の炭素に基づくピークが現われる。
上記の結果から、単離生成物は下記の構造式で示され
るフルギミド化合物(16)であることを確認した。
実施例1 (1) 熱硬化性樹脂の製造 クロルスチレン70部、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4
−メタクリロイルオキシエトキシ−フェニル)プロパン
30部からなる組成物にラジカル重合開始剤としてパーブ
チルND1部を添加し十分混合した。この混合液をガラス
板とエチレン−酢酸ビニル共重合体とから成るガスケッ
トで構成された鋳型の中へ注入し、注型重合を行った。
重合は、空気炉を用い、30℃から90℃で18時間かけ、徐
々に温度を上げて行き、90℃に2時間保持した。重合終
了後、鋳型を空気炉から取出し、放冷後、重合体を鋳型
のガラスからとりはずした。
(2) プライマー塗液の調製および塗布硬化 市販のプライマー溶液セビアンA46701(ダイセル化学
工業社製;商品名)300部(樹脂濃度は、90重量%にな
るように調製した)に製造例1のクロメン誘導体3.24
部、製造例15のフルギミド化合物1.62部を加え、十分撹
拌しながら溶解した。このプライマー溶液を1μの孔の
メンブランフィルターでロ過し、(1)で得られた基材
に浸漬法で塗布し、引き上げ速度を調整し、硬化後のプ
ライマー膜厚が1μになるようにした。塗布後、60℃で
1時間乾燥することで、良好な外観のフォトクロミック
性基材を得た。
(3) コーティング剤の調製および塗布硬化 ビス(γ−トリエトキシシリルプロピル)カーボネー
ト20重量部、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシ
ラン10重量部、コロイドシリカ(日産化学社製メタノー
ルゾル)30重量部、メチセロ30重量部、0.05規定塩酸10
重量部、硬化触媒として過塩素酸アンモニウム0.25重量
部よりなるコーティング剤中に(2)で得られたフォト
クロミック性基材を浸漬して被覆し、これを室温で充分
風乾した後、130℃で1時間硬化した。
このようにして得られた成形品のフォトクロミック特
性を以下のようにして測定した。スガ試験機株式会社製
のキセノンロングライフフェードメーターFAL−25AX−H
Cにより疲労寿命を測定した。
また、目視により色調の変化を観察した。疲労寿命
(T1/2)は、クロメン誘導体に基づく最大吸収波長に
おける吸収度が初期(T0)の吸光度の1/2に低下するの
に要する時間で表わした。但し、T0及びT1/2の吸光度
は、クロメン誘導体に基づく最大吸収波長における未照
射フィルムの吸光度を引いた値であり、また、T0の吸光
度は光照射後60秒経過後に測定した。
結果を第3表に示した。
また、熱硬化性樹脂の最表面の有機ケイ素化合物の加
水分解物よりなる被覆の性能を次のようにして行なっ
た。
(1) 密着性試験 先端が鋭利なカッターナイフで試料の表面に1mm×1mm
のマス目を100個つけた後、市販のセロテープを貼り付
けて、次いで素早く剥した時の被膜の剥れ状態により剥
れの全くないものを○、一部が剥れたものを△、全部が
剥れたものを×と表示した。
(2) 耐擦傷性試験 福田機械工業株式会社製の耐擦傷性試験器に#0000の
スチールウールを取り付け、1kgの荷重下で試料表面を1
0回往復させた後の表面の傷つき度合を目視により観察
し、全く傷つかなかった状態をA、そしてポリメチルメ
タクリレート生地の非常に傷つき易い状態をEとして、
A〜Eの5段階で評価した。
(3) 耐熱水性試験 沸騰水中に2時間放置し、被膜の外観を目視により観
察した。被膜にひび、剥れ、ふくれ、白化などがなくて
外観の良好な場合は○、不良な場合は×とした。また、
上記の密着性試験を行い、同じ基準で評価した。
結果を第3表に示した。
実施例2〜14 実施例1において用いた熱硬化性樹脂、フォトクロミ
ック化合物、プライマーおよび有機ケイ素化合物を含む
コーティング剤を第3表に示したものにかえた以外は、
すべて実施例1と同様に行なった。結果を第3表に示し
た。尚、有機ケイ素化合物を含むコーティング剤の種類
は第4表に示した。
比較例1 有機ケイ素化合物の加水分解物による被膜を形成させ
なかったこと以外は実施例1と全く同様に行ない、その
結果を第3表に併記した。
実施例15 アリルジグリコールカーボネート100部にラジカル重
合開始剤としてジイソプロピルパーオキシカーボネート
3部を添加し十分混合し、実施例1と同様にして重合
し、熱硬化性樹脂を得た。製造例8で得たクロメン誘導
体5部と製造例25で得たフルギミド化合物1部をシリコ
ーンオイル100部中に分散させ、上記で得たポリ(アリ
ルジクリコールカーボネート)の板の表面に200℃、1
時間で含浸させた。その後、この板を冷水で冷却し、メ
タノールとアセトンで洗浄し、実施例1と同様にして、
この板の表面に有機ケイ素化合物の加水分解物よりなる
被膜を形成させた。また、フォトクロミック性能の評価
及び加水分解物よりなる被膜の膜性能評価は、実施例1
と同様にして行なった。
結果を第5表に示した。
実施例16〜24 実施例15において、用いた熱硬化性樹脂、フォトクロ
ミック化合物、含浸油及び有機ケイ素化合物を変えた以
外はすべて実施例15と同様にした。
結果を第5表に示した。
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平3−252493(JP,A) 特開 平3−252492(JP,A) 特開 平3−115385(JP,A) 特開 平3−121188(JP,A) 特開 平3−76784(JP,A) 特開 平2−69471(JP,A) 特開 平3−11074(JP,A) 特開 平3−11075(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C09K 9/02 G03C 1/73 G03C 1/76 REGISTRY(STN) CA(STN)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】下記式[A] 但し、R1及びR2は、夫々同種又は異種のアルキル基であ
    り、これらが一緒になって置換されていてもよいノルボ
    ルニリデン基又は置換されていてもよいビシクロ[3.3.
    1]9−ノニリデン基を構成していてもよく、R3及びR4
    は夫々同種又は異種の水素原子、アルキル基、アリール
    基、アラルキル基又は置換アミノ基であり、 は置換されていてもよい芳香族炭化水素基又は置換され
    ていてもよい不飽和複素環基であり、R1及びR2がアルキ
    ル基のときは、 は、炭素数6〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアルコ
    キシ基、−R5−S−R6及び (但し、R5はアルキル基又はO−R8 (但し、R8
    アルキレン基であり、nは正の整数である。)であり、
    R6及びR7は、夫々同種又は異種のアルキル基であり、X
    は−N<,−P<, である。)よりなる群から選ばれた少なくとも1種の置
    換基を有する二環系芳香族炭化水素基又は二環系不飽和
    複素環基である。 で示されるフォトクロミック化合物 を含む樹脂層が熱硬化性樹脂の表面に被覆されてなり、
    さらにその上に有機ケイ素化合物の加水分解物からなる
    層が被覆されてなるフォトクロミック成形体。
  2. 【請求項2】下記式[A] 但し、R1及びR2は、夫々同種又は異種のアルキル基であ
    り、これらが一緒になって置換されていてもよいノルボ
    ルニリデン基又は置換されていてもよいビシクロ[3.3.
    1]9−ノニリデン基を構成していてもよく、R3及びR4
    は夫々同種又は異種の水素原子、アルキル基、アリール
    基、アラルキル基又は置換アミノ基であり、 は置換されていてもよい芳香族炭化水素基又は置換され
    ていてもよい不飽和複素環基であり、R1及びR2がアルキ
    ル基のときは、 は、炭素数6〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアルコ
    キシ基、−R5−S−R6及び (但し、R5はアルキル基又はO−R8 (但し、R8
    アルキレン基であり、nは正の整数である。)であり、
    R6及びR7は、夫々同種又は異種のアルキル基であり、X
    は−N<,−P<, である。)よりなる群から選ばれた少なくとも1種の置
    換基を有する二環系芳香族炭化水素基又は二環系不飽和
    複素環基である。 で示されるフォトクロミック化合物 が熱硬化性樹脂の表面に含浸されてなり、その上に有機
    ケイ素化合物の加水分解物よりなる層が被覆されてなる
    フォトクロミック成形体。
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