JP2798370B2 - 銅酸化物超伝導材料 - Google Patents

銅酸化物超伝導材料

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JP2798370B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は超伝導体に係り、特
に、第2種超伝導体の臨界電流を大きくするような構造
に関する。
【0002】
【従来の技術】超伝導は種々の物質についての知られて
いる現象であり、1911年に最初に発見されている。
この超伝導現象とは特定の温度で電気抵抗が突然に消失
し、またこのような超伝導状態においては外部磁界の影
響が排除されるという現象である。超伝導は種々の物質
中で生じ、ここで言う種々の物質には周期律表中の約4
分の1の元素、1000種を越す合金及び多成分系物質
が含まれる。一般に、超伝導は物質の金属状態における
特性の1つであると考えられる。というのは、既知の全
ての超伝導体は超伝導状態下では金属状態だからであ
る。少数の非金属物質が非常に高い圧力下で超伝導を示
すが、このような場合も、その非金属物質が超伝導を示
す前に高圧によって金属に変化されている。
【0003】種々の超伝導体が知られているが、各物質
を特徴付けるのは超伝導状態に変化する温度Tcであ
り、これは臨界温度といわれる。臨界温度Tcより上の
温度では超伝導現象は現われない。以前には、最も高い
臨界温度Tcを示す物質はNb3Geであると考えられ
ていた。その臨界温度Tcは大気圧下で約23Kであっ
た。しかしその後、J.G.BednorzとK.A.Muellerは、ある
種の金属酸化物が23Kをはるかに超えた臨界温度Tc
を示すことを発見した。これらの物質は「高Tc超伝導
体」といわれる。BednorzとMuellerの最初の発見以来、
世界各地で多くの研究開発が、より高い臨界温度Tcを
示すこの種の物質を求めるとともにその超伝導の仕組を
理解するために、進められている。BednorzとMuellerは
銅酸化物の混合物質中における超伝導現象を最初に報告
した。この物質は、典型的には希土類元素及び/または
希土類と類似の元素及びアルカリ土類(例えばLa、B
a、Sr等)を含み、ペロブスカイト構造を有してい
る。BednorzとMuellerのこのような最初の報告の後に、
他の研究者等により、圧力を加えることにより臨界温度
Tcを上昇させることが可能であり、更に、Y−Ba−
Cu−O系では臨界温度Tcを100Kにし得ることが
報告された。
【0004】P.Chaudhari等のPhysical Review Lette
rs、58、2684、June 1987に掲載の「YBa2
Cu37-X化合物のエピタキシャル・フィルムの臨界電
流値の測定」と題する論文には、この種の超伝導体にお
いて問題とされる欠点の1つは臨界電流が小さい点であ
ることが報告されている。実際、この報告以前では、こ
の種の超伝導体の臨界電流の最も大きい値は、他の良く
知られている超伝導体に比べて、極めて小さく、77K
で約103A/cm2である。臨界電流の大きさによって超
伝導体の利用可能な範囲が決定されるため、臨界電流が
小さいということは、この種の超伝導体の利用範囲につ
いての大きな障害となる。Chaudhari等は前記論文中
で、77Kにおける臨界電流が105A/cm2を超えるよ
うなこの種のエピタキシャル超伝導フィルムを報告して
いる。この種の物質が種々の応用を可能とするような十
分に大きい臨界電流を示し得ることを報告したのはこれ
が最初であった。
【0005】よく知られているように、この種の超伝導
材料は第2種超伝導体である。第2種超伝導体では、超
電流の存在により磁束がトラップされて超伝導体中に循
環電流が発生し、磁束線の渦(磁束渦)の発生がみられ
る。この磁束渦は第2種超伝導体中の超電流の流れを防
げることが知られている。この磁束渦は臨界電流と呼ば
れるところの、超伝導状態を失うことなく超伝導体中に
通じさせることのできる超電流の最大値(即ち、臨界電
流値)を制限する。
【0006】臨界電流を最大限度にするためには、磁束
渦をピンニング(ピン止め)して超伝導体中で磁束線の
渦が動くことのないようにしなければならない。このピ
ンニングは、超伝導体中に粒子及び欠陥を導入して磁束
渦をつかまえて特別な場所に捕捉しておくことにより実
行され得る。例えば、そのような欠陥として超伝導体の
構造中に取り込まれ得るのは転位や空格子であり、これ
らは磁束線の渦をピンニングし得る。また、不純物元素
を超伝導体中に加えることにより、局部的に超伝導が失
なわれた場所や完全に失なわれないまでも少なくとも超
伝導が狭い温度範囲に亘ってしか生じない場所を形成さ
せることが可能である。そのような不純物による磁束渦
の捕捉場所は、超伝導の温度依存性に影響を与えるが、
磁束線の渦をピンニングして大きな臨界電流を可能にす
る。しかしながら、そのような不純物の使用及びその超
伝導性に与える影響は臨界電流の増加に対して均衡を持
つものでなければならない。このようなものとして、例
えば、高磁束超伝導体磁石(強磁界超伝導磁石)が既に
知られている。NbTeのような磁石ワイヤ物質におい
ては、不純物が超伝導性を破壊する傾向を有することが
知られていながら、磁束線の渦をピンニングする欠陥を
形成するために不純物が用いられている。これらの物質
(超伝導体)は液体ヘリューム温度で動作するため、ま
たそのような合金(超伝導体)の臨界温度は約20Kに
近いため、前記ワイヤを流れる臨界電流が増大するとき
には、超伝導性の損失は許容範囲内のものとなり得る。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、磁気
的なピンニング作用が臨界電流値を増大させるために利
用されている銅酸化物超伝導体を提供することである。
【0008】他の目的は、高Tc銅酸化物超伝導体の組
成を改変して、超伝導を示す温度範囲に対して好ましく
ない影響を与えることなく、電流搬送能力を向上させる
ことであり、特に、窒素の沸点である77Kで104
/cm2を超える臨界電流を示すように銅酸化物超伝導体
の電流搬送能力を向上させることである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明により、銅酸化物
超伝導体における臨界電流値を制限する磁束線の渦をピ
ンニングするための改良された技術が提供される。更
に、本発明は、BednorzとMuellerによって最初に報告さ
れた型の高Tc超伝導体だけでなく、他の第2種超伝導
体にも適用できる。更に、本発明は臨界電流が磁束線の
渦で制限されるような全ての超伝導体に適用できる。そ
のような超伝導体とは、コヒーレンス長さが十分に短い
超伝導体である。本発明では、コヒーレンス長さは超伝
導体の原子の寸法程度の小さなものである。本発明は超
伝導体におけるピンニング作用を利用している。ピンニ
ング作用を実行させる最も直接的な方法は、銅酸化物超
伝導体中に、磁束渦による磁界と相互作用する磁気モー
メン卜を有する原子を導入して磁束線の渦を最小のエネ
ルギーにし、超伝導体中に導入された原子によって占め
られる位置における渦をピンニングしようとするもので
ある。導入する原子の例としては、BednorzとMuellerに
より最初に報告されたタイプの金属酸化物超伝導体に対
しては、磁気希土類原子が最も適している。
【0010】高Tc超伝導酸化物中に磁気元素を導入す
ることは知られている。例えば、P.H.Hor等はP
hys.Rev.Lett.58、1891(198
7)で超伝導体GdBa2Cu3を報告している。し
かし、このような物質の臨界電流Icは超伝導体YBa
2Cu3と概ね同程度である。従って、Yの全部に代
えての磁気元素Gd存在は、磁束線のピンニング作用の
増大につながらず、臨界電流を増大させることにならな
い。今日まで、このような高Tc超伝導酸化物における
ピンニング作用や他の第2種超伝導体におけるピンニン
グ作用を実現できる者はいないと信じられていた。しか
しながら、これに反し、本発明者等は高Tc金属酸化物
超伝導体において磁気的なピンニングがどのようにして
臨界電流を増大させるために用いられ得るかを発見し
た。
【0011】簡単にいえば、本発明は、 銅と、酸素
と、付加元素(具体的には、希土類元素およびアルカリ
土類元素)とを含み、臨界電流が磁束渦の発生によって
制約される機構を有する銅酸化物超伝導材料である。本
発明の銅酸化物超伝導材料においては、付加元素のうち
の少なくとも1つの元素と置換することができる特性を
有し、かつ前記磁束渦によって発生する磁界と相互作用
して前記磁束渦をピン止めするように作用する磁気モー
メントを有する原子が、少なくとも前記1つの元素の一
部のサイトを占めるように無秩序に分散されており、7
7°Kで少なくとも10000A/cm2の臨界電流値
を有する。好ましくは、前記磁気モーメントを有する原
子は、Cu2+の磁気モーメントよりも大きい磁気モーメ
ントを有する原子である。
【0012】他の目的は、磁束線の渦をピンニングする
ことを通じて大きな臨界電流値を示すような第2種超伝
導体を提供することである。
【0013】他の目的は、高Tc金属酸化物超伝導体の
組成を改変して超伝導を示す温度範囲に対して好ましく
ない影響を与えることなく電流搬送能力を向上させるこ
とである。
【0014】他の目的は、窒素の沸点である77Kを超
える温度で超伝導を示す超伝導体の臨界電流を向上させ
るための技術及び超伝導材料を提供することである。
【0015】他の目的は、23Kを超える臨界温度の金
属酸化物超伝導体の電流搬送能力を向上させることであ
り、更には、77Kで104A/cm2を超える臨界電流を
示すような金属酸化物超伝導体の電流搬送能力を向上さ
せることである。
【0016】他の目的は、コヒーレンス長さの小さい超
伝導体についての改良を行い、その組成を改良して磁束
線をピンニングすることにより大きな臨界電流値を示す
超伝導体を提供することである。
【0017】ここで、本発明の概要について説明する
と、本発明は、臨界電流値が増大した銅酸化物超伝導材
料に関しており、臨界電流値は磁気的ピンニング作用を
利用することによって超伝導体中の磁束線の渦が効果的
にピンニングされて増大させられる。この磁気的ピンニ
ングは、超伝導体中の磁束線の渦をピンニングするよう
な磁気モーメントを有する原子を超伝導体中に導入する
ことにより実現される。しかし、本発明は磁気モーメン
トを有する原子をただ単に導入するだけでなく、多くの
磁束線の渦のピンニングを可能にするそのような原子の
特別な利用技術を提供する。本発明を理解する上で特に
重要な事とは、磁気のピンニングを行う原子は超伝導体
中に無秩序な組成比で分布されていることである。もし
超伝導体中で磁気原子(磁気的ピンニングを生じさせる
原子)の分布状態に組成比上の秩序が生じている場合に
は、大きな臨界電流が得られるように磁束線の渦がピン
ニングされるような事はない。この点については、後の
実施例で更に詳しく述べるが、ここで一例を挙げれば、
ピン止めを行う原子の適当量は、既知の高Tc金属酸化
物超伝導体においては希土類あるいは希土類と類似の元
素の約50%を置換する程度の量であると考えられる。
もし、化合物YBa2Cu3Ox中のY原子が磁気モーメ
ントを有する原子で全て置換されたとすれば、磁束線の
ピンニング作用は生起せず、臨界電流は増大しない。こ
のような場合には、磁気原子は超伝導格子に配列される
ことになり、格子中の全てのY元素のサイトに位置する
原子が何であるかが予想可能となり、組成上の無秩序性
が生じないことになる。
【0018】磁束線の渦を磁気的にピンニングするため
に超伝導化合物中に含ませ得る原子は、磁束線の渦と相
互作用するような磁気モーメントを有する全ての原子で
ある。また、大きな磁気モーメントを有する原子は温度
が上昇した時にも大きな臨界電流の超伝導性を与えるこ
とが知られている。希土類あるいは希土類に類似の元
素、アルカリ土類元素、銅、酸素を含むような高Tc金
属酸化物超伝導体の場合には、磁束のピンニングを行わ
せるための磁気モーメントを有する適切な置換原子とし
てはYb、Er、Gd、Dy、Tb等の磁気希土類元素
が挙げられる。この他には、Cu2+及びTi2+が挙げら
れ、同様に、Fe、Co、及びNiが挙げられる。しか
し、Fe、Co、及びNiについては、高Tc金属酸化
物超伝導体の超伝導性を損い易いので、あまり好ましい
とは言えない。
【0019】高Tc金属酸化物超伝導体においては、超
伝導が利用される応用例にとって超伝導性が損なわれる
ような影響を受けるのではない限り、磁気モーメントを
有する原子の配置位置(分布位置)についての厳格さは
要求されない。従って、これらの磁気原子は希土類ある
いはアルカリ土類の位置に存在することが可能であり、
また、超伝導性に寄与する銅の位置の大多数が好ましく
ない影響を受けるものでない限り、銅の位置の幾つかに
存在することも可能である。磁束渦のピンニングに必要
な磁気元素の数についての式や磁気原子の組成上の配合
の適切な無秩序性についての式が後に示されている。
【0020】本発明は高Tc金属酸化物超伝導体に利用
されることが特に適するが、コヒーレンス長さが十分に
短いような全ての第2種超伝導体に利用されることにも
適している。これらの物質中では、磁束線の渦中に大き
な局在磁場が生成し、本発明はそのような磁束線の渦を
ピンニングするように用いられ得る。本発明は、多くの
超伝導体では約3乃至約30オングストロームであるユ
ニット・セルの寸法と同程度の長さのコヒーレンス長さ
を有する第2種超伝導体に適用できる。
【0021】
【発明の実施の形態】本発明は超伝導体の臨界電流量を
増大させるために磁束線の渦に対する磁気的ピンニング
作用を利用している。一実施例では、磁束線の渦に対す
る磁気的ピンニング作用は、高Tc酸化物超伝導体に適
用される。高Tc酸化物超伝導体では、磁気モーメント
を有する原子が物質の超伝導性に悪影響を与えずに存在
できることが知られている。特に、磁気原子は物質の超
伝導性に寄与していないサイトに存在することができ、
従って、磁気原子は超伝導性を破壊しない。本発明で
は、磁気原子が高Tc超伝導材料に加えられ、多数の磁
束線の渦がピンニングされる結果、臨界電流が増大す
る。後述のように、磁気原子の含有量はどのようなもの
であってもよい訳ではない。例えば、もし磁気原子の含
有量が極めて微かであったり、超伝導物質中の他のある
原子と100%置換されたりする場合には、高臨界電流
をもたらすような磁束線ピンニングは得られない。更
に、磁気原子が存在するサイトは組成比において無秩序
でなければならない。つまり、特定のサイトに磁気原子
が存在するか否かについて確実に予測できるものであっ
てはならない。このように、臨界電流を増大させるよう
な磁束線の渦の十分なピンニングがおこなわれるために
は条件がある。
【0022】第2種超伝導体中の磁束線の渦は物質中で
移動し得ること及び磁束線の渦は当該物質を流れる超電
流の方向に対して一般に直角に移動することが知られて
いる。本発明に従って磁束線の渦が磁気原子の導入によ
ってピンニングされると、原子の磁気モーメントと磁束
線の渦による磁場との間には相互作用が働く。これらの
磁場が整列されときには、渦は最小エネルギー状態で存
在し、ピンニングされる。また、このような磁束渦のピ
ンニングは物質中の最大超電流の流れをもたらす。磁気
原子は、約1000オングストロームかそれより短い間
隔で配置しているような互いに近接した渦に対してピン
ニングを行い得る。
【0023】本発明によれば、高Tc超伝導体の超伝導
性に悪影響を与えることなく磁束線の渦のピンニングを
行うことができる。磁束渦に作用する非常に大きなピン
ニング力が磁気原子によって得られるが、臨界電流を増
大させるには、磁気原子は超伝導体中に組成が無秩序な
状態で配合(分布)されていなければならない。磁気原
子は、超伝導体中の格子上に化合物の成分比通りに整列
して配置されていてはならない。希土類元素、アルカリ
土類元素、銅、及び酸素を含むような高Tc酸化物超伝
導体の場合には、磁気原子は希土類サイト、アルカリ土
類サイト、あるいは銅サイトにさえ存在し得る。しか
し、これらの物質では高Tc超伝導性に対して銅サイト
の幾つかが寄与しており、もし、かなりの量の磁気原子
が銅サイトの中の超伝導性に寄与している銅サイトに存
在することになれば、その物質の超伝導性は悪影響を受
けることになる。しかし、もし、磁気原子が希土類サイ
ト、アルカリ土類サイト、あるいは銅サイト中の超伝導
性に寄与しない銅サイトに存在するのであれば、その物
質の超伝導性に悪影響を与えることなく磁束渦のピンニ
ングが生じ得る。
【0024】臨界電流の増大につながるような磁気原子
の導入は高Tc超伝導体の全てに適用でき、超伝導体が
バルク(塊)状かフィルム状かに依らず、あるいは、ワ
イヤ状か板状かというような形状にも無関係に適用でき
る。更に、適用する超伝導体は単結晶でも多結晶でもよ
い。磁気原子は一般に超伝導体の形成プロセス中に導入
される。
【0025】高Tc酸化物超伝導体においては、十分な
量の磁気原子を導入することは磁気原子を化合物内で無
秩序に配合することにつながり、この無秩序な配合状態
が十分な磁束線ピンニング、即ち十分な臨界電流Icの
増大に寄与する、これは、磁気原子が希土類サイトに存
在しても、アルカリ土類サイトに存在しても、あるい
は、銅サイトに存在してさえも生起する。磁気原子が存
在するサイトによって磁気原子の原子価が決まる。例え
ば、Tiがピンニング原子(磁気原子)として導入され
るときに、Tiが銅サイトあるいはアルカリ土類サイト
に存在する場合にはTiの原子価は2+であり、希土類
サイトに存在する場合は3+である。磁気モーメントを
有し高Tc超伝導体に導入されて磁束渦のピンニング効
果に適するような他の代表的な原子にはGd、Tb、Y
b、Dy、Er、La、Eu、Lu等の磁気希土類が含
まれる。これらの元素のうちの幾つかにおいては、占め
るべきサイトについて厳しい条件がある。例えば、E
u、Lu、及びLaの場合には、これらの原子がYのよ
うな希土類の元素のサイトに置換されるときには、これ
らの原子は原子価が3+になる。原子価が3+のとき、
これら3種の元素に関する磁気モーメントは零である。
これは、これら3種の原子が希土類サイトに置換される
場合には、これら3種の原子は磁束渦のピンニングに有
用ではないことを意味する。また、もし希土類サイトに
置換した磁気原子あるいは他の磁気原子の磁気モーメン
トが磁束線の渦の磁界によってではなく結晶内電場によ
って整列されているときには、それらの磁気原子のピン
ニング作用は効果的ではない。
【0026】既述のように、Fe、Co、及びNiのよ
うな磁気元素を用いることができるが、本発明の目的に
は必ずしも十分に適しているとはいえない。特に、これ
らの原子は高Tc酸化物超伝導体中の銅サイトに存在し
ようとする傾向があり、従って、超伝導性に直接的に影
響を与える傾向がある。このため、これらの原子は既し
て少量だけ存在すべきであり、多量に存在すると、高臨
界電流に必要なだけの磁束の渦のピンニングが行われな
いことになる。
【0027】高Tc酸化物超伝導体において磁気的ピン
ニングを行うためにCu2+を利用することも可能であ
る。高Tc酸化物超伝導体においては、一般に2ユニッ
トセル当り約1個の原子がCu3+であり、残りはCu2+
である。Cu3+とCu2+はCuサイトに無秩序に分配さ
れ、Cu2+を増加させることは磁束ピンニングにつなが
る。しかしながら他の原子(Cu以外の原子)はCu2+
よりも大きな磁気モーメントを有するので磁束渦のピン
ニングに関して一層効果的作用を行う。
【0028】既述のように、磁気的ピンニングを行う原
子(磁気ピンニング原子)の存在する位置は超伝導体格
子中に無秩序に分布されていなければならない。もし、
それらの位置がある程度順序正しくされているときには
磁束渦は効果的にはピンニングされず、もし、完全に順
序正しくされているときには、ピンニングは生起しな
い。更に、強力なピンニング力に加えて大きな磁気モー
メントを備えた原子は、超伝導体の臨界電流の温度依存
性にも役に立つことが発見された。例えば、磁気ピンニ
ング原子が化合物中に無秩序構成で配合されている高T
c酸化物超伝導体において、臨界電流を温度に対してプ
ロットすると、磁気原子が大きな磁気モーメントを有す
るときには臨界電流の増大がより広い温度範囲に亘って
生じることが分かる。例えば、Cu2+よりも1原子当り
の磁気モーメントが大きなGdのような元素を導入した
場合、Cu2+の場合よりも温度範囲に亘って臨界電流値
が増大する。
【0029】本発明は高Tc酸化物超伝導体に特に適す
るが、コヒーレンス長さの小さい第2種超伝導体の全て
にも適している。コヒーレンス長さは物質中で超伝導が
拡がる範囲の尺度であり、多くの非酸化物第2種超伝導
体では大きな値である。しかし、超伝導体のコヒーレン
ス長さが小さいのであれば、磁束渦中の局在磁場の強さ
は非常に大きくなり、磁気原子による磁束渦のピンニン
グ作用が働いて大きな臨界電流が得られることになる。
このような第2種超伝導体中で磁気的ピンニングが働く
ためには、コヒーレンス長さはその超伝導体の原子の寸
法と同程度でなければならない。すなわち、コヒーレン
ス長さは超伝導体のユニットセルの長さと同程度でなけ
ればならず、それは例えば約3乃至約30オングストロ
ームである。
【0030】高Tc超伝導体中への磁気ピンニング原子
の導入は、超電流を搬送するプレーン中の無秩序性をも
発生させ、それによってコヒーレンス長さの減少化及び
磁束渦中の磁界の増大化を引き起こさせる。これもまた
磁束渦のピンニングを目的としている。
【0031】図には臨界電流を増大させるために磁束ピ
ンニングが利用される代表的な超伝導体が示されてい
る。図中、超伝導体10には電極12A及び12Bが接
続され、これらの電極12A及び12Bには可変抵抗R
及び電流源14が接続されている。磁束渦のピンニング
個所(サイト)は無秩序に分散された点16で示されて
いる。超伝導体10が超伝導を生じる温度よりも低い温
度に置かれ且つ電流が流されると、臨界電流Icは磁気
モーメントを有する原子の無秩序配置状態の存在によっ
て増大化される。磁気モーメントを有する原子の数は超
伝導体10中の磁束の渦の十分な数をピンニングするに
十分なものである。超伝導体10はバルク状でもフィル
ム状でもよいし、単結晶でも多結晶でもよい。冷却装置
は図中には示されていないが、YBa2Cu3のよう
な高Tc酸化物超伝導体については液体窒素冷却が適し
ており、77Kより低い臨界温度を有する第2種超伝導
体については液体ヘリウム冷却が用いられる。
【0032】製造方法 磁束渦のピンニングを行う磁気原子はバルク状の物質中
にもフィルム状の物質中にも容易に取り入れられる。例
えば、希土類あるいは希土類に類似の元素、アルカリ土
類元素、銅、及び酸素からなるバルク状の高Tc超伝導
体を製造する場合には、磁気原子を含む粉末が、バルク
状超伝導体を形成するために混合された後に加熱される
粉末中に導入される。特に、Y−Ba−Cu−O酸化物
超伝導体を製造する例では、出発原料としてGd酸化物
の粉末のような磁気原子の粉末を用いることができる。
Gd原子は物質中のYサイトに侵入し易く、その結果G
dで置換されたY−Ba−Cu−O酸化物超伝導体が製
造される。一般に、磁気希土類は、磁気原子(前記磁気
希土類をさす。)が原子価3+になる傾向を有するとき
には、希土類サイトに侵入し易く、磁気希土類が原子価
2+になる傾向を有するときにはアルカリ土類サイトに
侵入してBaを置換する。
【0033】フィルム状の高Tc酸化物超伝導体中への
磁気原子の導入も同じく容易である。例えば、YBac
Cu3の薄いフィルムがSrTiO3の基板上にエピ
タキシャル成長されたものを利用してYBa2Cu3
超伝導フィルム中に磁気原子を導入させたものを製造で
きる。この製造法では、前記薄フィルムと基板との結合
体を加熱して基板の一部を分解させて薄いフィルム中に
侵入させる。これによりTi原子が超伝導フィルム中に
侵入してYサイトあるいはBaサイト、同様にCu2+
イトに入り込む。Ti原子は超伝導フィルム中に無秩序
に分布され、Ti原子の数が十分であれば、たとえ臨界
温度に近い温度であっても磁束渦のピンニングが十分に
行われて大きな臨界電流が得られる。
【0034】SrTiO3上にエピタキシャル成長され
たYBa2Cu3を用いての磁束ピンニング作用を得
る方法の例として、約950℃での1乃至2秒間のポス
ト成長フラッシュ・アニール法を用いることができる。
この後、約925℃で数分間のアニールを行って熱的平
衡をはかる。続いてファーネス中で冷却して適切な量の
酸素を吸収させて高温での超伝導転移を得るようにす
る。磁気モーメントを有する原子を基板から導入する
方法として、エピタキシャル成長過程の最中に磁気原
子を導入させることも勿論可能である。例えば、YBa
2Cu3の薄フィルムを磁気原子の蒸発源の存在下で
成長させてもよい。このような超伝導フィルムの製造方
法においては、成長させようとする超伝導フィルムを構
成する種々の金属は酸素雰囲気中でスパッタあるいは蒸
発されて基板へ向かう。この他のソースは磁気原子であ
る。これらのソースに分配される電子ビーム・エネルギ
ー及び金属の蒸発時間に依って、磁気原子は成長する超
伝導フィルム中に直接的に導入されることになる。
【0035】定量的な解析 次に磁気的ピンニングのメカニズム及び磁束の渦をピン
ニングして臨界電流を増大させるために必要な磁気イオ
ンの数を決定するための式を示す。計算は高Tc酸化物
超伝導体、特に、良く知られたYlBa2Cu3に関
するが、ここでの考察はコヒーレンス長の小さい他の第
2種超伝導体にも適用できる。
【0036】もしピンニングのソース(原子)が無秩序
に分布されている場合には、即ち、全ての磁束渦がピン
ニングされているのではない場合には、渦当りのピンニ
ング力は減じられている。これは渦の相互作用がFij
=−Fjiであるような配列の場合について簡単に示さ
れる。ここで、FijはJ番目の渦によってi番目の渦
に作用する力である。もし電流が力Fを及ぼし、K番
目の渦が力FP.Kによってピン止めされているならば次
式が成立する。
【0037】
【数1】
【0038】これからiについて次式が得られる。
【0039】
【数2】
【0040】但し、電流分布は均一なものとする。
【0041】もしほんの一部の渦がピンニングされる
と、その結果、配列のピンニング作用はその一部のため
に減じられる。ピンニング効果を完全にするためには、
ピンニングが可能な全ての渦をピンニングすることが望
ましい。アブリクソン格子の格子パラメータは約1、0
75(Φ/B)1/2に等しい。ここで、Φは磁束量子で
あり、Bは超伝導体内部の磁束である。BをHclに等
しく設定すると、渦中の平均間隔は300Å程度であり
磁界の増大に伴って減少する。
【0042】高Tc超伝導体の顕著な特性の1つはコヒ
ーレンスの長さが短いことである。この超伝導体のコア
の内部の磁界の強さは大きく、強磁性体内の分子磁界の
強さよりもわずかに小さい強さに相当する程である。も
しコア中に磁気イオンが存在すると、その結果に生じる
相互作用力はコアエネルギーを(ΦN・gJ・MB・B
(X))/2Πだけ減少させる。ここで、Nは単位容積
当りの磁気イオンの数であり、gJはイオン当りのモー
メントであり、MBはボーア磁子であり、B(X)はブ
リユアン関数であり、その因数Xは(2gJ・MB・H
c2/kT)である。kはボルツマン定数、Tは温度で
ある。磁気モーメントが1に等しいと仮定した磁気原子
が単位セル当り数パーセント含まれているとした場合、
このエネルギーは典型的には通常のコアエネルギーの数
パーセントである。このことは磁気イオンを加えること
によりこれらの超伝導体のHclが低下することを示唆
している。
【0043】磁束の渦は柔軟性があり磁束の渦が横切る
磁気原子の数の変動によってピンニングされると考えら
れている。この変動は原子の無秩序分布により生じる。
もし磁気原子(磁気モーメント)が原子サイトに順序正
しく配列されているとしたら、サイトにおけるモーメン
トの大きさにかかわりなく、ピンニングは起きない。ピ
ンニングを生じさせる上で重要な変動の大きさはコヒー
レンス長さによって定まる。コヒーレンス長さが小さい
ほど、この変動の大きさは大きくなる。このような考え
を用いて以下では臨界電流の近似計算を行っている。
【0044】単位セルの容積v当りの磁気原子の数をN
とし、各原子のモーメントをgJとする。簡単のためた
だ1種のモーメントがピンニングに寄与すると考える。
コヒーレンス長さξで特定される容積中の磁気的に活性
な原子の数NbはA4πξ3/3vである。もし平均値
Npからの変動が小さいときは、通常分布であり、1つ
変動を見つける確立が1であるような容積Vは次式で与
えられる。
【0045】
【数3】V〜(π/e-1/π)(A4πξ3/3V)(4
πξ3/3) 変動間の平均間隔はV1/3である。コヒーレンス長さで
特定される容積中の原子の数の変動は(Np)1/2で与
えられると仮定すると、ピンニング・エネルギーは(2
Hc2gJMB(x))√Npであり、渦をピンニング
させないために必要な平均的力は値を1で割ったもので
ある。この値が臨界電流密度Jcにより生じて渦に作用
する力に等しいとすれば、次式が得られる。
【0046】
【数4】
【0047】または
【数5】 Jc(amps/cm2)=3.37x10-21(α/V)-1/6(gJB(X)ξ-9/2
【0048】YlBa2Cu3化合物(1−2−3化
合物という。)においては磁気モーメントはCu2+イオ
ンと関連する。無秩序な分布状態が幾つかのCu3+イオ
ンの存在によって発生する。従って、次のように設定す
る。gJ=1及びA=1/2。後者の値はCu3+サイト
に関連すると一般に信じられてキャリアの数に相当す
る。低温でのコヒーレンス長さは約30オングストロー
ムである。これらの値を数式5に代入すると、ξ=30
〜20オングストロームに対して、Jcの値は2×10
5〜1×106A/cm2である。計算で求めた臨界電流の
値は実験で観測した値と一致する。
【0049】臨界電流の温度依存性はコヒーレンス長さ
の温度依存性にだけ由来するのではなく、ブリユアン関
数にも由来する。臨界温度Tc附近ではブリユアン関数
の因数は1より小さく、コヒーレンス長さの温度依存性
について汚れが制限されている近似を利用すれば、Jc
について以下の式が得られる。
【0050】
【数6】Jc(amps/cm2)〜1.13X10-20(gJB(X))h-1ξ-3 但し、hは非常に薄いフィルムの厚さである。
【0051】しかしながら多くの温度範囲についてブリ
ユアン関数を用いて近似され得るものではない。従っ
て、近似式ではなく既知のパラメータを用いた完全式を
用いて臨界電流の値が計算され得る。この値を単結晶に
おける実測データと比較したところ、極めて良く一致し
た。
【0052】SrTiO3基板上のYBa2Cu3
超伝導エピタキシャルフィルムについて考察する。この
超伝導化合物をアニールしている最中にSrTiO3
1−2−3化合物(YBa2Cu3をさす。)中に溶
解する。Sr原子及びTi原子の両方が超伝導体中に導
入される。超伝導体中のこれらの原子の正確な存在位置
は分からないが、Ti原子はTi2+としてもTi3+とし
ても存在すると考えられる。両ケースにおいて、Cu2+
の磁気モーメントの少なくとも2倍の磁気モーメントが
発生する。高温度ではブリユアン関数は1に近づき、温
度依存性はそれ程強いものではなくなる。エピタキシャ
ルフィルムについての実験データとも非常に良く一致す
る。このような実測値との一致によって、高Tc超伝導
体において臨界電流を増加させるために磁気原子を無秩
序な分布状態で導入することにより磁束のピン止めを行
い得るという考え方が支持される。
【0053】既述のように、磁束モーメントを有する原
子を適切に導入することによって超伝導体の磁束の渦を
うまくピンニングすることができ、十分なピンニングが
行われる温度範囲は単位原子当りの磁気モーメントの強
さに依存している。
【0054】超伝導体中に導入させるために必要な磁気
原子の数は十分なピンニングを行わせるに足るだけの量
(即ち、臨界電流Icを増加させる量)であり、磁気ピ
ンニング原子が組成上無秩序に分布するようなものであ
る。これは、例えば高Tc酸化物超伝導体中の希土類あ
るいはアルカリ土類原子が100%置換されてはならな
いし、また、たとえ磁気ピンニング原子は無秩序に分布
されていてもピンニングされる渦の数が少なくては臨界
電流が増大することにならないので、磁気ピンニング原
子の数が少なすぎてはならない。即述のように、希土類
サイト上に、存在する原子あるいはアルカリ土類サイト
上に存在する原子の約50%が磁気モーメントを有する
原子で置換されると、十分な数の渦がピンニングされて
臨界電流が増大する。無秩序に分布されて磁束渦をピン
ニングする磁気原子の数を更に詳しく求めるには数式5
を用いればよい。
【0055】本発明によれば、超伝導体の単位セルと同
程度の小さなコヒーレンス長さを有する第2種超伝導体
が、磁束渦に対して磁気ピンニングを行うサイトを与え
る原子を導入することによって性質が変化させられる。
これらの磁気ピンニングを行うサイトは超伝導体中に無
秩序に分布されて組成が無秩序な超伝導体が形成される
ものでなければならない。また、これらの磁気ピンニン
グを行うサイトは、無秩序分布が実現されるに足る量
(強さ)だけ存在しなければならないと同時に磁束渦ピ
ンニングが十分に行なわれるに足る数でなければならな
い。勿論、いかなる量の磁束ピンニングであっても臨界
電流Icを増加させるが、ピンニングされる磁束渦の数
が増加する程、臨界電流Icの大きさは増大する。
【0056】磁束渦ピンニングは超伝導性を大きく損な
うことなく行なわれなければならない。例えば、超伝導
体の性質がかなり低下してしまい超伝導性が実現される
温度範囲が影響を受けると、たとえ大きな臨界電流値を
示すことになっても、超伝導温度範囲が容易に実現され
且つ維持されるのでなければ、その物質は特に有用性あ
るということにならない。
【0057】前記実施例以外にも、磁気モーメントを有
する2種以上の原子を超伝導体中に導入できる。それら
の磁気モーメントの大きさは種々であってよい。勿論、
原子が大きな磁気モーメントを有するときに広い温度範
囲に亘って効果的なピンニングを得ることができる。他
方、超伝導性に寄与するサイトを占める傾向のある非常
に大きな磁気モーメントを有する原子は材料の超伝導性
を損なわせる可能性がある。
【0058】本発明の基本概念は無秩序分布された磁気
ピンニング力は臨界電流Icを増大させるという事であ
る。本発明は多結晶にも単結晶にも、また、板状、ワイ
ヤ状の種々の形状の超伝導体にも適用できる。
【0059】また、本願発明は世界で初めて酸化物系超
伝導材料において実用域である77°Kにおける臨界電
流値として10000A/cm2を達成したものであ
る。発明の実施の態様においては磁気モーメントを有す
る原子によって材料体中に生じる磁束をピンニングする
機構を用いたが、この機構による臨界電流値の向上は課
題を達成するための一つの手段に過ぎない。本願発明の
意義は臨界電流値が高くないために実用性が疑問視され
ていた酸化物系超伝導材料の実用性を実証した点にあ
る。従って、新規な発明の範囲としては単に上記手法を
用いた酸化物超伝導材料に限定されるものではなく、上
記特性を有する酸化物系超伝導材料全般に及ぶものと考
える。
【発明の効果】
【0060】本発明は、高Tc酸化物超伝導体に適して
おり、77Kを超える臨界温度Tcを有する銅酸化物超
伝導体に特に適しており、この場合、77Kで104A
/cm2を超える臨界電流を示すことになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図には本発明に係る超伝導体の一実施例に超
電流を通じさせる手段が適用された状態が示されてい
る。
【符号の説明】
10 超伝導体 12A、12B 電極 16 無秩序分布されたピンニング・サイト
フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭64−14814(JP,A) 特開 昭64−18919(JP,A) 特開 昭63−319245(JP,A) 特開 昭63−314719(JP,A) 特開 昭63−307112(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C01G 1/00 - 57/00 H01B 12/00 H01L 39/00 - 39/24

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】希土類元素と、アルカリ土類元素と、銅
    と、酸素とを含み、臨界電流が磁束渦の発生によって制
    約される機構を有する銅酸化物超伝導材料であって、 前記希土類元素およびアルカリ土類元素のうちの少なく
    とも1つの元素と置換することができる特性を有し、か
    つ前記磁束渦によって発生する磁界と相互作用して前記
    磁束渦をピン止めするように作用する磁気モーメントを
    有する原子が、少なくとも前記1つの元素の一部のサイ
    トを占めるように無秩序に分散されており、77°Kで
    少なくとも10000A/cm2の臨界電流値を有する
    銅酸化物超伝導材料。
  2. 【請求項2】前記磁気モーメントを有する原子がCu2+
    の磁気モーメントよりも大きい磁気モーメントを有する
    ことを特徴とする、請求項2記載の銅酸化物超伝導材
    料。
  3. 【請求項3】銅と、酸素と、付加元素とを含み、臨界電
    流が磁束渦の発生によって制約される機構を有する銅酸
    化物超伝導材料であって、 前記付加元素のうちの少なくとも1つの元素と置換する
    ことができる特性を有し、かつ前記磁束渦によって発生
    する磁界と相互作用して前記磁束渦をピン止めするよう
    に作用する磁気モーメントを有する原子が、少なくとも
    前記1つの元素の一部のサイトを占めるように無秩序に
    分散されており、77°Kで少なくとも10000A/
    cm2の臨界電流値を有する銅酸化物超伝導材料。
  4. 【請求項4】前記磁気モーメントを有する原子がCu2+
    の磁気モーメントよりも大きい磁気モーメントを有する
    ことを特徴とする、請求項3記載の銅酸化物超伝導材
    料。
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