JP2794715B2 - 多気筒2サイクルエンジンの燃料噴射装置 - Google Patents

多気筒2サイクルエンジンの燃料噴射装置

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Description

【発明の詳細な説明】 〔発明の目的〕 (産業上の利用分野) この発明は、多気筒2サイクルエンジンの各シリンダ
へ流入する新混合気について、その空燃比にばらつきが
生じないようにする多気筒2サイクルエンジンの燃料噴
射装置に関する。
(従来の技術) 一般に、2サイクルエンジンでは、クランク室に開口
された吸気ポートに吸気通路が連通される。また、シリ
ンダ周壁に掃気ポートおよび排気ポートが開口され、こ
の排気ポートに排気通路が連通される。また、掃気ポー
トには、上記クランク室に連通した掃気通路が設けられ
る。これらの掃気ポートおよび排気ポートをピストンに
より所定のタイミングで開閉し、吸気ポートからクラン
ク室へ吸入された新混合気をピストンの下降により圧縮
して掃気ポートからシリンダ室へ圧送するとともに、排
気ポートから排気を排出するようになっている。
ところが、このような2サイクルエンジンでは、エン
ジン中低回転域において、クランクケース内に流入した
新混合気がピストンに押されてキャブレタ方向へ逆流す
る吹き返し現象が生ずることがある。
第6図に示す多気筒2サイクルエンジンにおいても同
様であり、各吸気通路1A,1B,1Cには、クランクシャフト
の1回転に1度の圧力変動(脈動)が生じ、これに伴い
新混合気の流れ(吸気流2)も変動する。この変動が大
きくなると、新混合気が破線3に示すように吸気通路1
A,B,C内を逆流する吹き返し現象が生ずる。このため、
多気筒2サイクルエンジンでは、各気筒間へ流入する新
混合気の空燃比にばらつきが生じるおそれがある。な
お、図中符号4はリードバルブであり、符号5はスロッ
トルバルブである。
(発明が解決しようとする課題) 多気筒2サイクルエンジンでは、第7図に示すよう
に、各シリンダに連結された吸気通路1A,B,Cにおけるリ
ードバルブ4の上流側に、キャブレタの代りに燃料イン
ジェクタ6が設置されたものがある。
このようなエンジンでは、エンジン中低回転域におい
て各燃料インジェクタ6から同時に燃料を噴射した場
合、多気筒のうちの任意の気筒(シリンダ)において、
燃料インジェクタ6からの噴射時期と逆流発生時とが一
致してしまうことがある。この場合には、逆流時と燃料
噴射時とが一致したシリンダ(例えば、吸気通路1Bに連
通したシリンダ)から燃料噴射時と整流時とが一致した
シリンダ(例えば吸気通路1Aに連通したシリンダ)へ向
って燃料および空気が流れてしまう。第7図中の実線矢
印は燃料の流れを、白抜き矢印は空気の流れをそれぞれ
示す。
エンジン中低回転域では燃料噴射時間が短いので、上
述のように空気および燃料が各気筒へ均一に流れなくな
ってしまうと、例えば吸気通路1Aに接続されたシリンダ
では新混合気が濃く、また吸気通路1Bに接続されたシリ
ンダでは新混合気が薄くなってしまう。エンジン中低回
転域の他の回転数では、別のシリンダに接続された吸気
通路1A,1B,1Cのいずれかにおいて、燃料インジェクタ6
の噴射時期と逆流時とが一致することになる。このよう
に、エンジン中低回転域において、エンジン回転数毎に
各気筒へ流入する新混合気の空燃吹がばらついてしま
い、エンジンに不調を来すおそれがある。
このような現象は、リードバルブ4の後流側に燃料イ
ンジェクタ6が設置された場合についても生じ得る。
この発明は、上記事実を考慮してなされたものであ
り、特にエンジン中低回転域において各気筒へ流入する
新混合気の空燃比を均一化できる多気筒2サイクルエン
ジンの燃料噴射装置を提供することを目的とする。
〔発明の構成〕
(課題を解決するための手段) この発明に係る多気筒2サイクルエンジンの燃料噴射
装置においては、上述した課題を解決するために、スロ
ットルバルブの下流に吸気マニホールドを配置し、この
吸気のマニホールドの各吸気通路がそれぞれリードバル
ブを介して各気筒のクランクケースに接続し、上記リー
ドバルブの上流近傍に各気筒毎に燃料インジェクタを配
置し、この燃料インジェンクタの作動を燃料噴射制御ユ
ニットが制御する多気筒2サイクルエンジンの燃料噴射
装置において、上記燃料噴射制御ユニットは、エンジン
回転数検出センサからの信号を入力し、前記各燃料イン
ジェクタの噴射時間と燃料噴射モードを制御する計算機
とを有し、上記燃料噴射モードは、クランクシャフトの
1回転中に燃料を各燃料インジェクタから複数回に分割
して同時噴射する第1噴射モードと、クランクシャフト
の1回転中に燃料を上記燃料インジェクタから1回同時
噴射する第2噴射モードとを有し、前記計算機は、エン
ジン回転数が所定値以下の場合には第1噴射モードを選
択し、所定値以上の場合には第2噴射モードを選択制御
するとともに、選択された噴射モードに合せて噴射時間
を制御したものである。
(作用) この発明に係る多気筒2サイクルエンジンの燃料噴射
装置によれば、計算機がエンジン回転数が所定値以下の
中低速回転域では第1噴射モードを選択して燃料インジ
ェクタからクランクシャフトの1回転中に複数回燃料を
同時噴射させ、噴射時間を制御するので、任意の気筒に
おいて吹き返し現象発生時が複数回のうちの1回の燃料
噴射時とが仮に一致しても、他の燃燃料噴射時には吹き
返し現象が発生していないので、この気筒へ流入する新
混合気の空燃比は、他の気筒における新混合気の空燃比
と著しく相違することがない。その結果、エンジン回転
数が所定値以下の場合、すなわちエンジンの中低速回転
域において多気筒へ流入する新混合気の空燃比を均一化
できる。
(実施例) 以下、この発明の実施例を図面に基づいて説明する。
第1図はこの発明に係る多気筒2サイクルエンジンの
燃料噴射装置の一実施例を示すシステム構成図である。
多気筒2サイクルエンジン例えば6気筒2サイクルエ
ンジンの各シリンダには、吸気マニホルドが分岐して接
続され、これら吸気マニホルドの各分岐部分に燃料イン
ジェクタ10がそれぞれ設置される。各燃料インジェクタ
10は、燃料噴射制御ユニット11の6個のトランジスタ12
にそれぞれ接続される。燃料噴射制御ユニット11は、こ
れらのトランジスタ12の他、計算機としてのマイクロコ
ンピュータ13を有して構成される。
マイクロコンピュータ13には、水温・吸気温センサ1
4、大気圧センサ15およびエアフローセンサ16等の各種
センサが接続される。このうち、エアフローセンサ16
は、吸気空気量を電圧変化として検出し、この信号をマ
イクロコンピュータ13へ出力する。また、水温・吸気温
センサ14は、吸入空気の温度を検出するとともに、エン
ジン冷却水温を検出するセンサである。
また、マイクロコンピュータ13は、点火時期制御ユニ
ット17のピックアップ信号処理回路18に接続される。こ
のピックアップ信号処理回路2には、複数例えば3つの
ピックアップコイル19が接続される。これらのピックア
ップコイル19は、フライホイールマグネット式発電機の
マグネットロータ20の回転を、回転角60゜置きに検出す
る。
ピックアップ信号処理回路18は、ピックアップコイル
19にて検出されたパルス信号を処理し、点火パルス信号
21としてマイクロコンピュータ13へ出力する。この点火
パルス信号21は、マグネットロータ20がクランクシャフ
トに直結しているので、このクランクシャフト1回転の
うちに6回のパルスを発生する信号となる。マイクロコ
ンピュータ13はこの点火パルス信号21を入力することに
より、クランクシャフトの回転数を認識する。したがっ
て、上記ピックアップコイル19およびピックアップ信号
処理回路18が、エンジン回転数検出センサを構成する。
なお、点火時期制御ユニット17には、ピックアップ信
号処理回路18の他、進角演算回路22、信号分配回路23、
コンデンサ24および複数例えば6個のサイリスタ25等を
有して構成される。
各サイリスタ25には、イグニッションコイル26を介し
て点火プラグ27がそれぞれ接続される。コンデンサ24
は、フライホイールマグネット式発電機のコンデンサチ
ャージコイル28およびサイリスタ25に接続され、コンデ
ンサチャージコイル28に発生した交流電気がコンデンサ
24に蓄電される。進角演算回路22は、ピックアップ信号
処理回路18およびギアカウントコイル29に接続され、ピ
ックアップ信号処理回路18からの点火プラグ信号21とギ
アカウントコイル29からの信号とに基づき点火プラグ27
の点火時期を決定し、この信号を信号分配回路23へ出力
する。信号分配回路23は、この信号を分配して各サイリ
スタ25へトリガーパルス信号を出力する。各サイリスタ
25は、信号分配回路23からのトリガーパルス信号がサイ
リスタ25のゲートに印加されてON状態となる。これによ
り、コンデンサ24に充電された電力が放電されて、イグ
ニッションコイル26の一次コイルへ流れ、イグニッショ
ンコイル26の二次コイルに高電圧が生じて、点火プラグ
27に火花が飛ぶ。
さて、燃料噴射制御ユニット11のマイクロコンピュー
タ13は、エンジン回転数に応じて燃料インジェクタ10の
燃料噴射モードを切り換えるよう制御する。この燃料噴
射モードは、第4図(A),(B)に示すように2通り
あり、1つはエンジン高回転域において、点火パルス信
号21の6パルス毎つまりクランクシャフト1回転毎に燃
料インジェクタ10から燃料を1回噴射させるモード(1
回転1回同時噴射モード)であり、このためにマイクロ
コンピュータ13は噴射パルス信号30を出力する。また、
燃料噴射モードの他の1つは、エンジン中低回転域にお
いて、点火パルス信号21の3パルス毎に燃料インジェク
タ10から1回燃料を噴射させるモード(1回転2回同時
噴射モード)であり、このためマイクロコンピュータ13
は、噴射パルス信号31を出力する。
噴射パルス信号30および31のそれぞれの噴射時間30W
および31Wは、各々次式で決定される。
(噴射時間30W) =(有効噴射時間)+(無効噴射時間) (噴射時間31W) =(有効噴射時間)/2+(無効噴射時間) ここで、有効噴射時間とは、吸気量およびエンジン回
転数に基づいて作成されたメモリマップによる噴射時間
に、吸気温および大気圧等の補正を施すことにより決定
される噴射時間である。また、無効噴射時間とは、燃料
インジェクタ10が噴射パルス信号30,31を入力してから
実際に作動する迄の遅れ時間である。また、上記噴射時
間30W,31Wは、クランクシャフト1回転中における最低
噴射時間および最低噴射休止時間よりも短くならない範
囲で設定される。
上記1回転1回同時噴射モードと、1回転2回同時噴
射モードとの切換回転数は、第3図に示すように、N
1(rpm)とN2(rpm)との2つである。切換回転数がN1
だけの場合には、この切換回転数N1付近でスロットルバ
ルブを一定の開度にしておいても、エンジン回転数が僅
かに変動すると燃料噴射モードが切換わってしまい、エ
ンジン回転数が変動してしまうことが多い。そこで、モ
ード切換回転数をN1(rpm)とN2(rpm)の2つに設定し
た。1回転2回同時噴射モードの場合にはN2(rpm)に
おいて1回転1回同時噴射モードへ切換わり、1回転1
回同時噴射モードのときにはN1(rpm)において1回転
2回同時噴射モードへ切換わる。
次に、第2図のフローチャート等を参照して作用を説
明する。
エンジン中低回転域では、マイクロコンピュータ13は
1回転2回同時噴射モードによって燃料インジェクタ10
の噴射時期を制御する。エンジン回転数が上昇しそのと
きの現在の回転数がN2(rpm)より大きくなると、マイ
クロコンピュータ13は1回転1回同時噴射モードを選択
し、エンジン高回転域においてこのモードに基づき燃料
インジェクタ10を制御する。
エンジン高回転域にあるときは、現在のエンジン回転
数がN1(rpm)以下になったときに、マイクロコンピュ
ータ13は1回転2回同時噴射モードを選択し、エンジン
中低回転域においてこのモードに基づき燃料インジェク
タ10を制御する。
したがって、この実施例によれば、マイクロコンピュ
ータ13がエンジン中低回転域において1回転2回同時噴
射モードによって燃料インジェクタ10を制御するので、
任意の気筒において吹き返し現象の発生時と2回のうち
の1回の燃料噴射時とが一致しても、他の燃料噴射時に
は吹き返し現象が発生しないので、その気筒へ流入する
新混合気の空燃比は、他の気筒における空燃比と著しく
相違することがなくなる。その結果、各気筒へ流入する
新混合気の空燃比を均一化することができる。
なお、上記実施例では、エンジン中低回転域において
クランクシャフト1回転中に燃料インジェクタ10から2
回燃料が噴射されるモードの場合を述べたが、クランク
シャフト1回転中の最低噴射時間および最低噴射休止時
間の限度を超えないようにすれば、第5図に示すよう
に、エンジン中低回転中において3回以上燃料を噴射さ
せるように制御してもよい。
〔発明の効果〕
以上に述べたように、この発明に係る多気筒2サイク
ルエンジンの燃料噴射装置によれば、スロットルバルブ
の下流に吸気マニホールドを配置し、この吸気マニホー
ルドの各吸気通路がそれぞれリードバルバを介して各気
筒のクランクケースに接続し、上記リードバルブの上流
近傍に各気筒毎に燃料インジェクタを配置し、この燃料
インジェクタの作動を燃料噴射制御ユニットが制御する
多気筒2サイクルエンジンの燃料噴射装置において、上
記燃料噴射制御ユニットは、エンジン回転数検出センサ
からの信号を入力し、前記各燃料インジェクタの噴射時
間と燃料噴射モードを制御する計算機とを有し、上記燃
料噴射モードは、クランクシャフトの1回転中に燃料を
各燃料インジェクタから複数回に分割して同時噴射する
第1噴射モードと、クランクシャフトの1回転中に燃料
を上記燃料インジェクタから1回同時噴射する第2噴射
モードとを有し、前記計算機は、エンジン回転数が所定
値以下の場合には第1噴射モードを選択し、所定値以上
の場合には第2噴射モードを選択制御するとともに、選
択された噴射モードに合せて噴射時間を制御した構成と
したので、エンジン回転数が所定値以下の場合には、第
1噴射モードと各燃料インジェクタの噴射時間とを選択
制御し、1燃焼に必要な燃料を複数回に分けて同時噴射
できるので、エンジン回転数が所定値以下の中低速回転
域において、各気筒へ流入する新混合気の空燃比バラツ
キを抑えて均一化できる等の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
第1図はこの発明に係る多気筒2サイクルエンジンの燃
料噴射装置の一実施例を示すシステム構成図、第2図は
第1図のマイクロコンピュータの作動を示すフローチャ
ート、第3図は燃料噴射モードとモード切換回転数との
関係を示す図、第4図(A),(B)は1回転1回同時
噴射モードと1回転2回同時噴射モードとのそれぞれに
おいて点火パルス信号と燃料パルス信号との関係を示す
図、第5図は他の実施例における燃料噴射モードとモー
ド切換回転数との関係を示す図、第6図および第7図は
吸気マニホルドにおける吹き返し現象を示す図である。 10……燃料インジェクタ、11……燃料噴射制御ユニッ
ト、13……マイクロコンピュータ、14……水温・吸気温
センサ、15……大気圧センサ、16……エアフローセン
サ、17……点火時期制御ユニット、18……ピックアップ
信号処理回路、19……ピックアップコイル、21……点火
パルス信号、30,31……噴射パルス信号。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】スロットルバルブの下流に吸気マニホール
    ドを配置し、この吸気マニホールドの各吸気通路がそれ
    ぞれリードバルブを介して各気筒のクランクケースに接
    続し、上記リードバルブの上流近傍に各気筒毎に燃料イ
    ンジェクタを配置し、この燃料インジェクタの作動を燃
    料噴射制御ユニットが制御する多気筒2サイクルエンジ
    ンの燃料噴射装置において、上記燃料噴射制御ユニット
    は、エンジン回転数検出センサからの信号を入力し、前
    記各燃料インジェクタの噴射時間と燃料噴射モードを制
    御する計算機とを有し、上記燃料噴射モードは、クラン
    クシャフトの1回転中に燃料を各燃料インジェクタから
    複数回に分割して同時噴射する第1噴射モードと、クラ
    ンクシャフトの1回転中に燃料を上記燃料インジェクタ
    から1回同時噴射する第2噴射モードとを有し、前記計
    算機は、エンジン回転数が所定値以下の場合には第1噴
    射モードを選択し、所定値以上の場合には第2噴射モー
    ドを選択制御するとともに、選択された噴射モードに合
    せて噴射時間を制御したことを特徴とする多気筒2サイ
    クルエンジンの燃料噴射装置。
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