JP2792871B2 - 金属イオンの除去方法およびそれに用いる溶液 - Google Patents

金属イオンの除去方法およびそれに用いる溶液

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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は、一般に種々の診断および治療技術に有用な
抗体および抗体断片の金属結合結合体に関する。とりわ
け本発明は、改良された金属イオン/キレーター/抗体
結合体の水溶液の調製法に関する。
(従来の技術および発明が解決しようとする課題) 近年、放射性同位体および他の金属イオンとモノクロ
ーナル抗体との結合体からなる医薬を得ようとする努力
の中で重大な進歩がなされてきている。モノクローナル
抗体が選択された抗原性エピトープに極めて特異的に結
合することができることにより、特定の金属イオンを標
的の組織に選択的に向けることができる手段が提供され
る。放射性同位体金属イオンと、腫瘍や他の疾患関連抗
原に選択的に結合することができるモノクローナル抗体
との結合体は、癌などの病的状態の診断および治療のた
めの診断画像化および放射線治療に用いるのにとりわけ
有用である。
抗体/金属イオン結合体を細胞毒性放射線の治療学的
送り出し(delivery)のために用いる場合には、金属は
一般にイットリウムのようなβ粒子放出体から選択す
る。オーダー(Oder)らのInt.J.Radiation Oncology B
iol.Phys.,12、277〜81(1986)には、90イットリウム
をキレート化した抗フェリチンポリクローナル抗体を用
いた肝細胞癌の治療が記載されている。ブックスバウム
(Buchsbaum)らのInt.J.Nucl.Med.Biol.,Vol.12、No.
2、79〜82頁(1985)には、CEAに対するモノクローナル
抗体を88イットリウムで放射標識することが開示されて
おり、これを用いて結腸直腸癌を位置決めし治療する可
能性が示唆されている。ニコロッティ(Nicolotti)ら
のEPO出願第174,853号明細書(1986年3月19日公開)に
は、金属イオンと抗体断片とからなる結合体を開示され
ている。その開示によれば、サブクラスIgGのモノクロ
ーナル抗体を酵素的に処理してFc断片を除き、H鎖を結
合しているジスルフィド結合を還元的に開裂する。つい
でインビボの診断または治療に使用するために、放射性
核種金属イオンに結合させたキレート化剤にFab′断片
を結合させる。
抗体結合体を診断的放射性画像化(ラジオイムノシン
チグラフィー)の目的に用いる場合には、γ線放出性放
射性同位体を選択するのが好ましい。ゴールデンバーグ
(Goldenberg)らのN.Eng.J.Med.,298、1384〜88(197
8)には診断的画像化実験が開示されており、そこでは
知られた腫瘍関連抗原である癌胎児性抗原(CEA)に対
する抗体を131ヨウ素で標識し、これを癌患者に注射し
ている。48時間後、患者をγシンチレーションカメラで
スキャニングし、γ線の放出パターンにより腫瘍の位置
決めを行ってある。ガンソー(Gansow)らの米国特許第
4,454,106号明細書には、インビボ放射性画像化診断法
にモノクローナル抗体/金属イオン結合体を用いること
が開示されている。
ガンソーらの米国特許第4,472,509号明細書には、放
射性金属をモノクローナル抗体に結合させるためにジエ
チレントリアミン五酢酸(DTPA)キレート化剤を用いる
ことが開示されている。この特許はとりわけ、非結合お
よび不定に(adventitiously)結合した(キレート化し
ていない)、すなわち非キレート結合により結合した金
属を放射性医薬から除くための精製技術に関するもので
あるが、放射性同位体医薬の調製のための技術分野で標
識された手順の説明となる。そのような一般的な手順に
よれば、標的組織関連抗原に特異的に反応する抗体を、
タンパク質結合官能性および金属結合官能性を有する選
択された多量の2官能性キレート化剤と反応させてキレ
ーター/抗体結合体を得ている。抗体をキレーターと結
合させる場合に過剰量のキレート化剤を抗体と反応させ
るが、その特定の比は試薬の性質および抗体当たりのキ
レート化剤の所望の数により異なる。ガンソーらは、キ
レーターの抗体に対する比が100:1〜600:1であること
が、1分子当たりに約0.5〜1.5個のキレート化剤を結合
させるためのシステムに特に有用であることが開示され
ている。しかし、該文献ではまた、抗体の免疫活性に悪
影響を与えないように、1抗体当たり余りにも多くのキ
レーターを加えないように注意しなければならないと忠
告されている。キレーターを抗体に結合させた後、反応
混合物を精製して過剰の分解キレーターを除く。ガンソ
ーらの文献には、ゲル樹脂(1ml)とともにクエン酸塩
(50mM)および塩化ナトリウム(200mM)を含む溶液を
3回代えたものに対して48時間にわたり透析することに
より結合体混合物を精製することが開示されている。該
文献にはまた、任意の第一透析工程が開示されており、
この工程は、「キレートまたはタンパク質上に存在して
いるかもしれない残留鉄を除くために」アスコルビン酸
(30mM)およびエチレンジアミン四酢酸(EDTA)キレー
ト化剤(5mM)の希釈溶液に対して行ってよい。
ついで精製キレーター/抗体結合体は、活性金属標識
に結合させるかまたは後で使用するときまで貯蔵してお
く。金属標識の溶液は、知られた方法に従って放射性同
位体発生剤または促進剤などから得ることができる。つ
いで金属キレート化は、抗体の生物活性または特異性を
損なわないように一般に約3.2〜約9の範囲のpHの水溶
液中で行う。クエン酸やグリシンのような弱キレート化
酸および塩基は、バッファーとして用いる。金属イオン
は一般に金属のハロゲン化物、硝酸塩または過塩素酸塩
のような金属塩のかたちで導入されるが、塩化物が特に
好ましい。該文献はまた、金属塩は実行可能な限りでき
るだけ高い濃度で使用すると示唆しているが、また放射
性の金属を用いるときには健康および安全性の点での考
慮からキレート結合部当たり1金属当量未満の金属濃度
を使用することを勧めている。
ガンソーらは、一般にこうして調製した金属イオン/
キレーター/抗体結合体は、遊離のおよび非キレート結
合により結合した金属を除くためにインビボでの投与に
先立って精製する必要があると述べている。その特許に
は、イオン交換とゲル濾過クロマトグラフィーとの組合
わせを含む種々の方法が開示されている。好ましい手順
には、結合体を含有する水溶液を2層クラマトグラフィ
ーに通すことが含まれ、この2層のうち第一の層はアニ
オン交換樹脂、カチオン交換樹脂およびキレートイオン
交換樹脂よりなる群から選ばれたものであり、第二の層
はサイジングマトリックスである。そのような手順から
は、2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)
(20mM)および塩化ナトリウム(200mM)からなるバッ
ファー(pH6.0)に対して透析したときにインジウム損
失が6%未満である溶液が得られる。
抗体および抗体断片を金属キレート化残基で共有結合
的に標識することについて、上記開示の一般法の多くの
変法が知られている。そのような方法には、標識が、ク
レジュカレク(Krejcarek)らのBiochem.Biophys.Res.C
ommun.,77、581(1977)に開示されているように混合酸
無水物により行なわれるもの、フナトビッチ(Hnatowic
h)らのJ.Immunol.Methods、65、147(1983)に開示さ
れているように2環式無水物により行なわれるもの、ま
たはパックストン(Paxton)らのCancer Res.,45、5694
(1985)に開示されているように活性エステルにより行
なわれるものが含まれる。
そのような金属キレート標識抗体は種々の研究におい
て患者に投与され、ある種の特性がヒトにおけるこれら
の結合体の所作の特徴として技術分野において認識され
るに至っている。最も一般的に観察されていることは、
金属キレート標識抗体が、131ヨウ素のような非金属同
位体で標識した抗体に比べて肝臓に集積する度合が大き
いということである[ラーソン(Larson)らのNucl.Me
d.Biol.,15、231(1988)参照]。この現象は、肝臓に
おける腫瘍の沈積の検出をしばしば妨げるので、金属標
識抗体の臨床学的有用性を制限するもののうち最も重要
なものとなっている。なお肝臓は、多くのタイプの癌が
転位拡散の最も主要な部位である[ラーソンらの上記文
献;ベッティ(Beatty)らのCancer Res.,46、6494(19
86);ベッティらのJ.Surg.Onc.,36、98(1987);およ
びアブデル−ナビ(Abdel−Nabi)らのRadiology、16
4、617(1987)参照]。他の特徴は、金属キレート標識
抗体の薬動学に関するものである。一般的に観察されて
いることは、抗体が2相血清クリアランス動力学を示す
ことであり、注入した投与量の一部の放射能が比較的急
速に消失し(α相)、ついで残る放射能のはるかに遅い
クリアランスが続く(β相)[フナトビッチらのJ.Nuc
l.Med.,26、849(1985);マレー(Murray)らのCancer
Res.,48、4417(1988);およびマレーらのJ.Nucl.Me
d.,28、25(1987)参照]。注入した放射能の分布容量
は患者の血漿容量を上回り、血清クリアランス
(t1/2)および分布容量はともに投与した抗体の投与
量に依存する[マレーらのCancer Res.,47、4417(198
8);およびカラスキロ(Carrasquillo)らのJ.Nucl.Me
d.,29、39(1988)参照]。腫瘍部位の検出の感度も同
様に投与量に依存することが示されている[カロスキロ
らのJ.Nucl.Med.,29、39(1988);およびアブデル−ラ
ビらのRadiology、164、617(1987)参照]。これらの
データは、注入した標識免疫グロブリンが血漿区画にの
み留どまるものではなく(この場合には単一相血清動力
学および血漿容量に近似する分布容量が期待される)、
むしろ他の別の区画にも分布して、肝臓のような非標的
器官へ抗体が非特異的に蓄積することを示している。こ
れらの区画はある場合には飽和できるものであるので、
投与量への依存が観察される。抗体のヒト生体内分布の
多区画動力学モデルが構成されている[イーガン(Ega
n)らのCancer Res.,47、3328(1987)参照]。
ガンソーらの方法は、技術分野の他の研究者達の方法
のように、インビボ投与のための金属イオン/キレート
化剤/抗体結合体の調製に関連して幾つかの純度に関す
る懸念により抑制されている。標的組織に送り出される
活性金属(結合体溶液中に遊離の非キレート結合により
結合したものかまたはキレート化した形での存在する他
の金属不純物とは区別されるものとして)の量を最大に
することは自明である。非標的組織へ送り出される活性
金属の量が最小になるようにすることも同様である。診
断的画像化手順においては、バックグラウンドシグナル
を最小にしたいとの要求からこのことは当てはまる。細
胞毒性放射線治療手順においては、このことは非標的組
織への細胞毒性効果に関連した懸念によるものである。
他の別の懸念は、タンパク質が生体内に導入された場合
の抗原作用を最小にするために、これらの手順において
抗体結合体の量を最小にしたいとの要求に関するもので
ある。
活性金属の最大量を標的組織に向けようとする目的
は、多くの因子により影響を受ける。これらの因子の中
でまず第一に挙げられるのが抗体の特異性および活性で
ある。結合体の基礎となる抗体または抗体断片は、標的
組織に対する高い結合活性および選択性を有していなけ
ればならない。さらに抗体により特異的に標的とされる
抗原は、他の組織に対し標的にした組織に高い特異性を
有するように選択されなければならない。
抗原が標的組織に対し高度に特異的であり抗体がその
抗原に対し高い活性および選択性を有するとするなら
ば、結合体を構成している抗体の免疫活性が、キレータ
ー/抗体結合体の生成工程または金属キレート化工程中
に起こるある種の化学的変化によって弱められないこと
が次の関心事となる。免疫活性の部分的または全喪失と
なる化学的変化は、高い温度、極度に酸性またはアルカ
リ性のpHまたは他の化学的処理の結果として起こる。そ
のような変化は、極端な場合は抗体分子の変性となる。
変性よりもひどくない変化は、2官能性キレート化剤の
タンパク質結合基が、抗体の特異的結合領域が変化され
または立体的に妨害されるような仕方でアミノ酸残基ま
たは抗体上の糖鎖と反応し結合する場合に起こる。ある
一定のキレーター/抗体系においてキレーターの抗体へ
の置換レベルが高くなればなるほど、そのような免疫活
性の喪失が起こる可能性は高くなる。
活性金属の標的組織への送り出しを最大にしたいとい
うことは、活性金属の非標的組織への送り出しを最小に
したいということである。事実は、標的組織に行った活
性金属は、キレート化剤によりその組織に特異的な抗体
にほとんど常に結合する。これとは対象的に、非標的組
織に送られる活性金属の大部分は遊離の金属、標的組織
に送り出されなかった抗体に共有結合的に結合した金
属、または生体内で抗体から遊離していく非キレート結
合により結合した金属である。溶液中で非キレート結合
により結合しているかまたは遊離の活性金属は、患者に
投与されるや否や速やかに血清トランスフェリンに結合
し、その後主として肝臓および骨髄に分布するようにな
り、放射性金属の非標的部位への有害な蓄積となるのが
しばしばである。インビボ投与のための放射性同位体調
製物中に遊離の金属が存在することは、そのような金属
が肝臓や他の非標的器官に蓄積することにより毒性作用
がそのような放射性同位体医薬を使用することの主要な
制限となっている場合にとりわけ懸念となる。
インビボ投与のためのすべての調製物に関して、ある
量の活性金属を送り出すのに利用した抗体の量を最小に
することが特に望まれている。このことは、活性金属を
送り出すために使用した抗体および抗体断片の抗原性の
および医薬調製物それ自体に対する免疫反応の可能性に
関する懸念からくるものである。各抗体に結合した金属
イオンの量を増加させることにより導入抗体の量を最小
にしようとする努力は、キレート化剤の置換レベルが高
められると抗体の特異的結合活性が変性もしくは喪失さ
れる傾向にあることにより制限される傾向にある。
上記種々の懸念において重要な因子は、キレーター/
抗体結合体との結合に利用できる放射性金属調製物中に
極めて高濃度の不純物が認められることに関するもので
ある。本発明に関係があるものとしてフナトビッチらの
J.Immunol.Methods、65、147(1983)の開示があり、そ
の開示によれば、キレーターの抗体に対する比が1:1で2
5mCi/mgという臨床学的に用いられる一般的な特異活性
レベルまで標識した抗体/キレーター組成物は、利用で
きるキレート化部位のわずか4%が111インジウム原子
より占められるにすぎない。放射性金属調製物中で高め
られたレベルで存在する金属不純物は、キレーター/抗
体結合体上の結合部位に対して活性標識金属と有効に競
合する。そのような不純物が存在することにより、一定
量の純粋な金属標識を単にキレート化するのに必要なも
のよりはるかに多量のキレーター/抗体結合体を使用す
ることが必要となる。特定量の活性金属のキレート化を
確実にするために金属溶液の増加量を加える必要がある
ということは望ましくない。なぜなら、そのようにする
ことで遊離のおよび非キレート結合により結合した金属
の存在量が大きくなるからであり、一般にこれら金属は
生体内に投与する前にキレート化するかまたは結合体溶
液から除かなければならない。充分な標識をキレート化
するために非常に増加した量のキレーター/抗体結合体
を使用することもまた、投与量の抗原性が増加すること
から望ましくない。
結合体溶液でキレート化するに先立って放射性金属の
溶液を精製する努力は、キレーター/抗体結合体中の遊
離のキレーター基が標識前にキレート化する程度を小さ
くする努力として開示されている。メアーズ(Meares)
らのAnal.Biochem.,142、68(1984)には、基質反応性
基としてイソチオシアネートおよびブロモアセトアミド
誘導体を有する2官能性EDTA類似体の調製が開示されて
いる。キレーター/抗体結合体は111インジウムおよび
他の金属イオンで標識されていた。該文献にはまた、結
合体生成およびカップリング手順を行うときに金属の混
入が最小になるように入念な注意が開示されている。そ
のような注意には高純度の水、金属を含まないバッファ
ー塩および酸で洗浄したガラス器具を使用することが含
まれ、混入する金属の濃度を制限するのに有用である。
混入する金属はキレート化部位について所望の金属と競
合する。該文献にはまた、市販の111InCl3溶液をアニオ
ン交換クラマトグラフィーで該溶液中に存在する混入金
属の多くの除くことにより精製することが開示されてい
る。
一つの手順に従って、メアーズらは、EDTAのブロモア
セトアミド類似体の調製および10:1のモル比でのマウス
モノクローナル抗トランスフェリレセプター抗体溶液と
の反応を開示している。37℃で2時間インキュベートし
た後、反応混合物を除き、0.1Mクエン酸アンモニウム
(pH6)で調製したセファデックスG−50−80遠心分離
カラムに加え、ゲル濾過工程を行って未結合のキレータ
ーを除いた。精製したキレーター/抗体生成物の濃度は
9.5×10-5Mであり、これからキレーター/抗体比が1.3:
1でキレーター濃度が1.25×10-エー4Mであった。
担体を含まない111インジウム貯蔵溶液を、クエン酸
アンモニウムバッファー溶液に111InCl3溶液を加えるこ
とによって調製した。111InCl3溶液は、2M HClで平衡化
したBio−Rad AG1−X4アニオン交換カラム中で処理する
ことによって精製しておいたものである。111インジウ
ム溶液の二つの10μアリコートをEDTA/抗体溶液の5
μアリコートと混合し、5〜80分間インキュベートし
た。遊離または非キレート結合により結合した金属を結
合体溶液から除くために、インジウム/キレーター/抗
体結合体の試料に対してEDTA攻撃手順を行った。結合体
溶液の1μアリコートを、Na2EDTA攻撃溶液(10mM)
の5μアリコートと接触させた。このように処理した
溶液をついで薄層クロマトグラフィー(TLC)手順にか
け、それによって抗体結合金属を遊離およびキレーター
結合金属から分離し非特異的に結合したインジウムの量
を決定した。該文献の報告するところによれば、TLCプ
レート上を移動していった未結合インジウムの量はわず
かに全インジウムの3〜5%であり、従って金属キレー
ト化手順の放射化学的収率は95〜97%であった。
メアーズらは、金属イオンの添加を抗体/キレーター
結合体を調製した後に最後にすべきである手順におい
て、添加金属イオンが急速かつ定量的に結合することが
できるように、タンパク質結合キレート化基の濃度は10
-5Mよりも大きいのが好ましいと述べている。該文献に
はまた、15mg/ml(10-4M)を超過する抗体濃度で好まし
い条件が達成されると述べられている。
グッドウイン(Goodwin)らのJ.Nuc.Med.,26、493〜5
02(1985)には、、ミアレスらの後続の仕事が開示され
ており、上記ミアレスらの方法に従ってブロモアセトア
ミドベンジル−EDTAをマウスの主要組織適合抗原遺伝子
複合体同種抗原IAkに特異的なマウスモノクローナル抗
体に結合させた。抗体は1.5×10-4Mの濃度で存在し、こ
れからキレーターの抗体に対する比が3.3:1でキレータ
ー濃度が5×10-4Mであった。
抗体/キレーター結合体の小さな(10〜50μ)アリ
コートを精製クエン酸111インジウムの50μアリコー
トとpH5.0で組み合わせることにより放射性標識を行っ
た。キレーター/抗体結合体へのインジウムのキレート
化は、5分以内に完了すると述べられていた。該文献は
また、EDTAでの1000倍以上の攻撃によってもインジウム
標識を該結合体から除くことはできないことを指摘して
いた。標識の有効性および放射化学的収率をメアーズら
のEDTA攻撃/薄層クロマトグラフィー手順により測定し
たところ、85〜95%の範囲の放射化学的収率を示した。
幾つかの実験においては、未結合金属をEDTAにて追跡し
ながら錯体形成した(complexed)。他の実験において
は、未結合金属を含むインジウム/キレーター/抗体溶
液を、0.1%ヒト血清アルブミン、0.1Mクエン酸ナトリ
ウムおよび0.01M EDTA(遊離の金属を結合したが静脈注
射の前には除かなかった)を含むリン酸バッファー通常
生理食塩水中で希釈した。未結合キレーターを溶液に加
えることの背後にある理論は、そのような試薬が遊離ま
たは非キレート結合により結合した金属とキレートを生
成し、得られたキレートが生体内に投与されたときに循
環系から腎臓を通って速やかに排出されることであるこ
とが理解できる。該文献は、インジウム/キレーター/
抗体結合体について動物の生体内分布の研究を開示して
いる。24時間後の器官分布の研究により、抗原陽性マウ
スでは脾臓での取り込みが器官1g当たり約100%投与量
を越えていたが、抗原陰性マウスおよび結合体が正常な
マウスIgGからなる系では脾臓での取り込みはより低い
ものであることが示された。該文献は、インジウムキレ
ートが放射性ヨウ素に比べて安定性を増加させること、
およびそのような安定性により標的濃度が増加するだけ
でなく非特異的な血液および肝臓活性が高くなることを
言及していた。
本発明に関係があるものとしてゾグビ(Zoghbi)らの
Invest.Radiol.,21、710(1986)があるが、これは111
インジウムの精製手順に関するものである。該文献は、
市販のインジウムの純度に大きな変化性があること、お
よびDTPA(リガンドの能力をはるかに下回る)のような
キレーターによりキレート化したインジウムの量に変化
性があることは亜鉛、鉄およびアルミニウムのようなカ
チオン性の汚染物が市販のインジウム調製物中に存在す
ることおよびキレーターがインジウムに特異的でない事
実によって説明できると言及している。該文献の報告に
よれば、該文献に開示された溶媒抽出手順に従って精製
した111インジウムは、精製しなかった111インジウムに
比べて111In−DTPA−モノクローナル抗体の活性におい
て3倍以上の増加を示す。
ガンソーらの後の文献には、インジウム/キレーター
/抗体結合体溶液のための種々のキレート化工程後精製
手順が開示されている。ブレクビール(Brechbiel)ら
のInorg.Chem.,25、2772(1986)およびエステバン(Ea
teban)らのJ.Nucl.Med.,28、861(1987)には、モノク
ローナル抗体B72.3から未結合の111インジウムを除くた
めの幾つかの異なる手順が比較されている。ブレクビー
ルらは、(1)グッドウインらのEDTA追跡法、(2)ゲ
ルカラムクロマトグラフィー、(3)高速液体クロマト
グラフィー(HPLC)および(4)ゲルカラルクロマトグ
ラフィーとHPLC精製の組合わせを比較している。該文献
には、局在化および腎臓を通過させることによりすべて
の未反応111インジウムを除くには遊離のEDTAを混合物
に単に加えるだけでは不充分であり、金属は肝臓に局在
化する傾向があると述べられている。結合体溶液の精製
のために好ましい方法は、セファデックスG−50カラム
に通しついでTSK−3000サイジングカラム上でHPLC精製
することであると述べられていた。架橋キレート化残基
のような「高分子量」凝集体を除くにはHPLCで処理する
ことが唯一の方法であると述べられていた。該文献は、
可能な最も強力なキレート化剤を穏やかなカップリング
法および最良の精製法を組み合わせて用いることを勧め
ている。
エステバンらのJ.Nucl.Med.,28、861(1987)は、ガ
ンソーらの追加精製および生体内分布の研究の記載にB7
2.3モノクローナル抗体を提供した。2官能性DTPAおよ
びEDTAを用いたキレーター/抗体結合体を種々の置換比
で生成した。抗体−キレート免疫活性はモル比により有
為に変化し、結合体は非修飾IgGに比べたときに1:1の比
で免疫活性を100%保持することがわかった。キレータ
ーの抗体に対する比が3:1かまたはそれ以上になると免
疫活性の50%以上が失われる結果となった。生体内分布
の研究は、キレーターの抗体に対する比が1:1のインジ
ウム標識結合体を用いて行った。該文献は、過剰のEDTA
を用いると結合体溶液中の遊離の金属をキレート化し
て、この不充分な精製では腫瘍の肝臓に対する比が1.6:
1未満であるのに対して、HPLCで精製した標識結合体を
用いると腫瘍の肝臓に対する比が4.6:1の結果となると
いうブレクビールらの文献の言及を確かなものにした。
本発明に関係があるのは、各抗体分子中に導入するこ
とのできるキレート化基の最大数を系統的に確立しよう
とする努力に関する文献である。ペイク(Paik)らのJ.
Nucl.Med.,24、1158(1983)およびJ.Nucl.Med.,24、93
2(1983)には、それぞれ2環式DTPA無水物のモノクロ
ーナル抗体への結合の最適化、およびヒト血清アルブミ
ンに対するモノクローナル抗体へのDTPAの混合無水物結
合の最適化が開示されている。しかしながら、111イン
ジウムは担体遊離の形で容易に得られるので、抗体1分
子当たり1キレート化基を越える置換レベルを導入する
ことに関し、一般に当業者はほとんど必要性を感じなが
った。
金属イオン溶液の標識前精製または標識後追跡または
金属イオン/キレーター/抗体結合体溶液の精製を含む
これら種々の手順は時間がかかり、ヒトに使用する注入
可能な放射性医薬にとって最も重要な立方性および非発
熱性を保持するような条件下で行うことは困難である。
さらに、そのような抗体放射性標識手順が日常的に行な
われるべき場所は一般に病院の核薬局であるが、そのよ
うな施設は、HPLCおよびゲルクロマトグラフィーのよう
な最も好ましいが最も複雑な後精製法を行う装置も訓練
された人員も共に不足していることがしばしばである。
(課題を解決するための手段) 本発明は、ラジオイムノシンチグラフィーに用いる金
属イオン/キレーター/抗体結合体溶液を調製するため
の方法、組成物およびキットに関する。本発明の方法お
よび組成物は、ラジオイムノシンチグラフィーに関連し
て使用することに限られることなく、インビボ細胞毒性
放射線治療などを含む種々の応用に用いることも考える
ことができる。とりわけ本発明は、遊離もしくは非キレ
ート結合により結合した金属イオンを5%未満含み、ラ
ジオイムノシンチグラフィーに用いるためのインビボ投
与に適した111インジウム/キレーター/抗体結合体水
溶液の調製方法をも提供する。この方法は、インジウム
ラジオイムノシンチグラフィー剤の調製に用いるのに特
に有用であり、この方法によればインビボ投与に適した
試薬とするためにキレート化後の精製工程が必要でな
い。この方法によれば、インジウムイオンのキレート化
のために選択された条件下で下記溶液をインキュベート
し、その際、下記第一の溶液の下記第二の溶液に対する
容量比を5:1よりも大きくし、インキュベートを30分間
未満行う。
(i)キレーターの濃度が10-4Mよりも大きく、下記手
順により製造される第一の溶液 (a)キレーター/抗体結合体の溶液を、弱キレート化
バッファー中での濃度が0.01Mよりも大きい濃度の未結
合キレート化剤の溶液に12時間以上接触させ、(b)該
未結合キレート化剤の溶液からキレーター/抗体結合体
を分離し、ついで(c)抗体に結合したキレート化基の
濃度を10-4Mよりも大きくなるように調節する、および (ii)放射能が30mCi/mlよりも大きいことを特徴とする
市販の111インジウム塩の第二の溶液。第一の溶液の第
二の溶液に対する容量比は、5:1から20:1が好ましく、
7:1から15:1が最も好ましい。上記方法により調製した
111インジウム/キレーター/抗体結合体溶液は、ヌー
ドマウスへの静注後48時間で該マウスの肝臓、脾臓およ
び腎臓の組織1g当たりわずかに10%のインジウムを送り
出すに過ぎないという能力により特徴付けられる。
本発明はさらに注入可能なインジウム標識抗体溶液の
調製のための「熱」キットをも提供する。本発明の熱キ
ットは、(i)第一の金属イオン溶液を第二のキレータ
ー/抗体結合体溶液でキレート化することにより得ら
れ、該第二のキレーター/抗体結合体溶液は遊離もしく
は非キレート結合により結合した金属イオンを5%未満
含みキレート化後の精製の必要のない金属イオン/キレ
ーター/抗体結合体の滅菌非発熱性水溶液;その際、該
第二のキレーター/抗体結合体のキレーター溶液は濃度
は10-4Mよりも大きく下記手順により製造される、 (a)キレーター/抗体結合体の溶液を、弱キレート化
バッファー中での濃度が0.01Mよりも大きい濃度の未結
合キレート化剤の溶液に12時間以上接触させ、 (b)該未結合キレート化剤の溶液からキレーター/抗
体結合体を分離し、ついで (c)抗体に結合したキレート化基の濃度を10-4Mより
も大きくなるように調節する、および (ii)上記溶液の滅菌状態および非発熱性を保持させ、
標識抗体を無菌的に除くための装置を備えている容器を
含む。
(発明の構成および効果) 本発明は、ラジオイムノシンチグラフィーおよび放射
性免疫治療に使用する金属標識放射性医薬を調製するた
めの方法、組成物およびキットを提供する。本発明は、
キレーター/抗体結合体の溶液からの遊離の、非キレー
ト結合により結合した、およびキレート化した金属イオ
ンを除去するための金属除去手順を提供する。本発明の
方法は、遊離の金属および非キレート結合により結合し
た金属が低レベルであり遊離のキレーターが高レベルで
ある結果として金属標識結合能が向上したキレーター/
抗体結合体が得られる。キレーターの濃度が10-4Mを越
えるキレーター/抗体結合体溶液は、本発明の方法に用
いたときに予期しない向上した性質を示す。得られたキ
レーター/抗体結合体溶液は、高い金属結合能で特徴付
けられ、放射性金属の溶液とともにキレート化条件下で
インキュベートしたときに遊離の金属イオンを速やかに
キレート化して高い放射化学的収率を達成することがで
きる。このようなキレーター/抗体結合体溶液は、一般
に有意のレベルの金属不純物を含むものである。
本発明の一実施態様に従って、キレーターの濃度が10
-4Mよりも大きく本発明の方法を適用したキレーター/
抗体結合体溶液は、市販の塩化インジウム組成物ととも
にキレート化の条件下で30分またはそれ未満の時間イン
キュベートしたときに放射化学的収率が95%を越えるイ
ンジウム/キレーター/抗体結合体の溶液を得ることが
できることがわかった。そのような組成物は、一般にヒ
トのインビボ投与に適したものとするためにさらに精製
する必要がない。キレーターの濃度が10-4Mを越えるキ
レーター/抗体結合体を選択したのは、以下の発見に基
づくものである。まず第一に、一定の条件下で標識した
いかなるキレーター/抗体結合体についても、その条件
下でキレーターの臨界濃度が存在し、その濃度を下回る
と有効な放射性標識を行うことができず、その濃度を上
回ると満足な放射性標識収率が達成される。この閾値濃
度範囲は予期に反して狭く、抗体結合キレート化基の濃
度が2倍相異することが完全に許容できる放射化学的収
率(>90%)と完全に許容できない収率(20〜30%)と
の相異に対応することがしばしばである。第二に、さら
に一層予期に反することであるが、この結合キレーター
の臨界閾値濃度は、キレーター/抗体結合体を調製する
のに同じキレーターを用いたとしても抗体結合体毎に変
わる。従って、いかなる抗体系にも適用できる一般的手
順から満足のいく放射化学的収率を確かに得るために
は、種々の抗体について観察されるキレーターの臨界濃
度の範囲から大きくはみ出る抗体結合キレーターの濃度
を選択しなければならない。本発明者らの行った研究に
基づいて、10-4Mがキレーターのそのようなモル濃度を
構成するものと思われる。
キレーター/抗体結合体溶液をインジウム金属塩溶液
と1工程で反応させてヒトへのインビボ投与に適したイ
ンジウム/キレーター/抗体結合体溶液を得ることがで
きるということは、複雑で費用と時間がかかる標識後の
精製工程およびヒト投与に適したものとするため従来は
必要とされていた除去キレーターの添加を省くことがで
きるという点で従来技術に比べて大きな利点がある。さ
らに本発明のキレーター/抗体結合体溶液は、インジウ
ム金属塩化物の溶液と反応させたときに、生体内への投
与において注入した試験動物の肝臓、脾臓および腎臓に
送り出すインジウムレベルが低いインジウム/キレータ
ー/抗体結合体を生成させることができる。
本発明は、本発明の抗体/キレーター/金属イオン調
製物の調製方法におけるいくつかの限界の認識に基づい
ている。その一つの限界は、非キレート結合により結合
した金属イオンによる汚染を防ぐために標準的な注意を
して調製した抗体−キレーター組成物に関するものであ
り、可能な最良の注意を行っても結合体の生成工程にお
いて金属汚染を完全に除くことはできないという所見に
集約される。従って、本発明の一実施態様は、調製後の
抗体/キレーター組成物から残留する金属汚染物質を除
くための手順に関する。
本発明はまた、調製中にできた金属汚染物質を抗体−
キレーター組成物中にキレート化基が完全に含まないよ
うにしたときでさえも、塩化111インジウムのような多
くの市販の放射性金属調製物中に非放射性金属の量が利
用できるキレート化部位に対して有効に競合し得るほど
のものであるという観察に基づいている。そのような競
合は1抗体分子当たりキレート1個の置換レベルで充分
に激しいものであるので、しばしば不良な放射化学的収
率となる。
本発明により調製したキレーター/抗体結合体の溶液
は、111インジウム以外の金属イオン調製物とともにイ
ンキュベートしたときも向上した性質を示すであろうこ
とが予期される。特定のキレーターの濃度および必要な
インキュベート時間は特定のキレーターの金属結合親和
性および異なる金属イオン調製物中に存在する金属不純
物の同一性および濃度により変わるかもしれないが、本
発明のキレーター/抗体結合体溶液が他の金属との結合
過程で向上した放射化学的収率を示すであろうことが予
期される。
金属を含まないキレーターの濃度が高いキレーター結
合体溶液は、高い放射性結合収率を達成できることのみ
ならず、特定量の活性金属を送り出すのに必要な抗体ま
たは抗体断片の量を最小にすることができることからも
有用である。そういったことは、外来のタンパク質に繰
り返し接触させることが有害な免疫応答を引き起こしや
すい場合に重要な関心事となる。
遊離のキレーター濃度が高い本発明のキレーター/抗
体結合体溶液は、抗体活性および特異性を保持しなが
ら、溶液中のキレーター/抗体結合体の濃度を最大に
し、1抗体当たりのキレーターの置換レベルを可能な限
り最大にすることにより調製することができる。キレー
ター/抗体結合体濃度およびキレーターの置換レベルが
最大になったときでもキレーター/抗体結合体溶液を金
属除去工程に付す必要があり、これにより該溶液および
キレーター/抗体結合体が実質的に金属を含まないよう
にすることができる。結合体濃度の最大化は主として抗
体の溶解性に依存しており、一般に最大濃度は10-4Mに
近づく。しかしながら、正確な濃度は抗体およびキレー
ター系の特定の性質に依存する。キレーター/抗体結合
体の濃度を最大とするならば、一般に1抗体当たりのキ
レート化残基の平均数も最大にする必要がある。しか
し、抗体の置換レベルを最大にするに際して、抗体の活
性および特異性が保持できるよう特別の注意を払わなけ
ればならない。
キレート化基による化学的修飾のあいだでの免疫活性
の失い易さは抗体により非常に異なり、従って抗体の免
疫活性を失うことなしに導入し得る金属結合基の最大数
も抗体毎に変わるであろうことは当業者には認識される
であろう。にもかかわらず、上記で示した制約内におい
てすべての抗体組成物についてある種の態様が好ましい
といえる。好ましい組成物には、1抗体分子当たり平均
2〜15のキレート化基を含有するものが含まれ、抗体当
たり3〜5のキレーターを含有する組成物が特に好まし
い。そのような組成物は、標識を容易にするために弱キ
レート化バッファー中、高い抗体濃度で保持される。好
ましい組成物は、0.01〜0.1Mクエン酸バッファー(pH6.
0)中で5mg/ml〜20mg/mlの濃度の抗体または抗体断片を
含有する。
抗体 本発明に有用な抗体には、IgA、IgD、IgE、IgGおよび
IgMを含む種々のタイプのものが含まれる。これらの抗
体は、腫瘍抗原、組織適合性抗原および他の細胞表面抗
原、細菌、真菌、ウイルス、酵素、毒素、医薬および他
の生物学的に活性な分子を含む種々の抗原決定基に対し
て向けられてよい。本発明の重要な側面は腫瘍の検出お
よび治療に関するものであり、腫瘍関連抗原に特異的に
反応する抗体は本発明に特に関係の深いものである。抗
体が特異的に反応する腫瘍関連抗原にはザルクベルク
(Zalcberg)およびマッケンジー(MacKenzie)のJ.Cli
n.Oncology、Vol.3、876〜82頁(1985)に記載の抗原が
含まれ、たとえば癌胎児性抗原(CEA)、TAG−72のよう
なムチン、ヒト乳脂肪小球体(humanmilk fat globul
e)抗原およびIL−2レセプターやトランスフェリンレ
セプターのようなレセプターが含まれるが、これらに限
られるものではない。そのような抗原を認識する抗体は
モノクローナルまたはポリクローナルであってよく、ま
たモリソン(Morrison)らのProc.Nat.Acad.Sci.U.S.
A.,81、6851〜55(1984)に記載されているような組換
え技術により製造されてよい。
本明細書において「抗体」とは抗体分子の断片をもい
うものであり、半抗体やFab、Fab′またはF(ab)
片を含む。ニコロッティらのEPO特許出願第147,583号明
細書(1986年3月19日公開)には、全抗体を処理して2
本のH鎖の部位特異的開裂を行い、H鎖のカルボキシル
末端のFc部分を除く方法が開示されている。
1分子当たり平均2〜5のキレート化基を収容するこ
とができる抗体が本発明に使用するのに適しているが、
抗体は1分子当たり平均2〜15ものキレート化基を含む
ことができなければならない。好ましい抗体には、抗体
の免疫活性に有害な作用を及ぼすことなく1抗体当たり
平均3〜5のキレーターを収容することができるものが
含まれる。
キレート化剤 広範囲のキレート化剤を本発明の組成物中に組込み、
本発明の方法に用いることができる。特定のキレート化
剤の選択は結合させる金属イオンの同一性を含む多くの
因子に依存するが、一般に数多くのキレート化剤が本発
明に用いるのに適している。そのようなキレート化剤は
結合効率の高いものでなければならず、ジエチレントリ
アミン五酢酸(DTPA)およびエチレンジアミン四酢酸
(EDTA)の2官能性誘導体が含まれる。p−アミノフェ
ニル置換基がポリアミン骨格のメチレン炭素に付着した
DTPAの2官能性誘導体がブレクビールらのInorg.Chem.,
25、2772〜81(1986)に記載されている。p−アミノフ
ェニルタンパク質反応性置換基を有する2官能性誘導体
がサンドバーグ(Sundberg)らのJ.Med.Chem.,17、1304
(1974)に記載されている。DTPAおよびEDTAの特に好ま
しい2官能性誘導体が、本発明者らの共願にかかる米国
特許出願第014,517号明細書(1987年2月13日出願)に
記載されている。
本発明に有用と思われる他のキレート化剤には、環状
キレート化剤のシクロヘキサン−1,2−trans−ジアミン
四酢酸[クロール(Kroll)らのNature、180、919〜20
(1957)参照];6−(p−ニトロベンジル)−1,4,8,11
−テトラアザシクロテトラデカンN,N′,N″,N−四酢
酸(p−ニトロベンジル−TETA)などの大環状キレート
化剤[モイ(Moi)らのAnal Biochem.,148、249〜253
(1985)参照];6座配位子のN,N′−ジピリドキシル−
エチレンジアミン−N,N′−二酢酸(PLED)[クリーン
(Green)らのInt.J.Nucl.Med.Biol.,12、381〜86(198
5)参照]およびN,N′−エチレン−ビス[2−(o−ヒ
ドロキシフェニル)グリシン](EHPG)およびN,N′−
ビス(2−ヒドロキシベンジル)エチレンジアミン−N,
N′−二酢酸(HBED)[タリアフェルロ(Taliaferro)
らのInorg.Chem.,23、1188〜92(1984)参照]が含まれ
る。
本発明に用いるに好ましいキレート化剤には、8−ヒ
ドロキシキノリンキレート化単位に基づく多座キレータ
ーおよびトリス(2−アミノエチル)アミン(TREN)に
基づく骨格構造を有する多座キレーター[本発明者らの
共願にかかる米国特許第100,390号明細書(1987年9月2
4日出願)参照]が含まれる。
基質反応官能性 本発明に有用な2官能性キレート化剤は、標識しよう
とする抗体分子中に存在する少なくとも1個の官能基と
の特異的な結合反応に関与し得る基質反応性残基を含ん
でいる。基質反応性残基は、ポリペプチド骨格を構成し
ているアミノ酸の側鎖基と反応してよい。そのような側
鎖基には、アスパラギン酸およびクルタミン酸残基のカ
ルボキシル基、リジン残基のアミノ基、チロシンおよび
ヒスチジンの芳香族基およびシステイン残基のスルフヒ
ドリル基が含まれる。
抗体によって与えられるカルボキシル側鎖基は、可溶
性カルボジイミド反応によって2官能性キレート化剤の
アミン基質反応性残基と反応してよい。抗体によって与
えられるアミノ側鎖基は、イソチオシアネート、イソシ
アネートまたはハロトリアジン基質反応性残基と反応し
てキレーターのポリペプチドへの結合を行ってよい。別
法として、抗体上のアミノ側鎖基は、ジアルデヒドやイ
ミドエステルのような2官能性試薬によりアミン基質反
応性残基を有する2官能性キレート化剤に結合させても
よい。抗体により与えられる芳香族基は、ジアゾニウム
誘導体によりキレート化剤に結合させてよい。抗体分子
上のスルフヒドリル基は、マレイミドまたはヨードアセ
トアミドのようなハロアルキル基質反応性基と反応させ
てよい。そのような反応に適した遊離のスルフヒドリル
基は、免疫ブロブリンタンパク質のジスルフィド結合か
ら得ることができ、または化学的誘導体化によって導入
することができる。免疫グロブリンのH鎖領域内で得ら
れた遊離のスルフヒドリル基への結合は、免疫グロブリ
ンの抗原結合部位を妨害するものではないが、抗体が補
体を活性化できないようにするかもしれない。
ポリペプチド骨格を介して抗体/キレーター結合を生
成するための別の方法は、ロッドウエル(Rodwell)ら
の米国特許第4,671,958号明細書に記載されたような方
法に従って糖タンパク質の炭水化物側鎖と共有結合を形
成することである。従って、抗体の炭水化物側鎖を選択
的に酸化してアルデヒドを生成し、ついでこのアルデヒ
ドがアミン基質反応性基と反応してシッフ塩基を生成す
るか、またはヒドラジン、セミカルバジドもしくはチオ
セミカルバジドと反応してそれぞれ対応するヒドラゾ
ン、セミカルバゾンもしくはチオセミカルバゾンを生成
してよい。
前以て酸化する必要なく炭水化物または多糖に結合さ
せるのに有用な他の基質反応性残基はジヒドロキシボリ
ル残基である。この残基は1,2−cis−ジオールを含有す
る基質と反応性で5員環のホウ酸エステルを生成し、従
ってこの基を含有する炭水化物、多糖および糖タンパク
質と用いるのに適している。
本発明の方法に従ったキレート化剤に有用な基質反応
性残基には、アミノ(−NH2)、ジアゾニウム(−N
H+)、イソチオシアネート(−NCS)、イソシアネート
(−NCO)、ヒドラジン(−NHNH2)、セミカルバジド
(−NHCONHNH2)、チオセミカルバジド(−NHCSNHN
H2)、クロロアセトアミド、ブロモアセトアミドおよび
ヨードアセトアミドを含むハロアセトアミド(−NHCOCH
2X)、アジド(−N3)、カルボキシレート(−CO2H),
アミノアルキル尿素(−NHCONH(CH2)nNH2)、アミノ
アルキルチオ尿素(−NHCSNH(CH2)nNH2)、カルボキ
シアルキル尿素(−NHCONH(CH2)nCO2H)およびカルボ
キシアルキルチオ尿素(−NHCSNH(CH2)nCO2H)、マレ
イミド、クロロトリアジン、ブロモトリアジンおよびヨ
ードトリアジンを含むハロトリアジンおよびメタ−(ジ
ヒドロキシボリル)フェニルチオ尿素(−NHCSNHC6H4B
(OH))が含まれる。キレート化剤を抗体に結合させ
るのに適した他の反応性残基には、ジスルフィド、ナイ
トレン、スルホンアミド、カルボジイミド、塩化スルホ
ニル、ベンズイミデート、−COOH3、および−SO3Hが含
まれる。本発明の特定の適用のために好ましい基質反応
性残基は、抗体の性質および一定の結合を形成した結果
としての生物学的活性の失い易さにより選択される。
本発明に有用な基質反応性残基は種々の手段により与
えられてよいが、フェニル基上のメタ位、好ましくはパ
ラ位に配向しているときに特に効果的であることがわか
っている。フェニル基は、本発明のキレート化剤骨格に
脂肪族スペーサー基により付着している。スペーサー基
は1〜10個の炭素原子からなっていてよく直鎖または分
枝鎖のアルキル基または置換アルキル基であってよい。
ただし、そのような分枝鎖または置換基は金属結合部位
または基質反応性基を妨害するものであってはならな
い。にもかかわらず、直鎖アルキルリンカーが好まし
く、C1アルキルリンカーが特に好ましい。
上記方法に従い、抗体をキレート化剤の基質反応性残
基と反応させる。各抗体は1個より多くのキレート化剤
と結合しているのが好ましく、キレーターの抗体に対す
る比は2:1〜5:1であるのが好ましく、3:1〜5:1であるの
が特に好ましい。しかしながら、抗体上の置換の最大限
は、糖鎖の性質または抗体分子上の反応性アミノ酸側鎖
の数および位置により制限される。結合体タンパク質は
その生物学的活性を保持していることが望ましいので、
置換の程度は標的の糖鎖または抗体の一次配列および三
次配列の両方におけるアミノ酸の性質および位置ならび
にそれらが抗原結合部位に関与する程度に従って制限さ
れるであろう。
金属捕捉(スカベンジング)工程 本発明は、抗体/キレーター結合体溶液の放射性標識
に先立って、遊離の金属イオン、および非キレート結合
により結合し、キレート化している金属イオンを該結合
体溶液から除去する方法を提供するものである。本発明
方法は、抗体−キレーター結合体溶液を、弱キレート化
バッファー系中で、高濃度の未結合(結合体を形成して
いない、遊離の)キレート化剤に接触させて混在する金
属イオンを除去し、キレート形成部分を金属標識溶液中
の金属と結合し得るようにする工程を含む。結合体を形
成していないキレート化剤に接触させた後、キレーター
/抗体結合体を未結合キレート化剤から分離する。
キレーター/抗体結合体溶液を未結合キレート化剤に
接触させる工程の間中、結合体溶液中の金属イオン、ま
たは意図的に導入された抗体の特異的なキレート化部
位、または本来、金属との結合性を有する免疫グロブリ
ン分子の結合部位のいずれかを介して抗体と非キレート
結合により結合している金属イオンが、キレート化剤と
低分子量の結合体を形成することにより、捕捉され得る
ような条件を選ぶ。次いで、分子の大きさの相異等に基
く適当な方法でこれらを抗体−キレーター結合体から分
離する。
好ましい態様では、除去と分離の両方が行なわれる便
利な手段として、遊離のキレート化剤のバッファー溶液
に対する透析を採用するが、上記の目的には、ジアフィ
ルトレーション(diafiltration)またはサイズ排除ク
ロマトグラフィーのような他の方法を用いることもでき
る。
スカベンジャーとして用いられるキレート化剤は、そ
れが抗体と結合したキレート形成基と有効に競合し得る
よう、充分な熱力学的および動力学的安定性を有する金
属結合体を形成するものでなければならない。不純物金
属の性質は通常、不明であるために、抗体と結合してい
るキレート化剤と同じスカベンジャーを用いる方法が好
ましい。即ち、EDTA−抗体結合体の場合には、スカベン
ジャーとして遊離のEDTAを用い、DTPA−抗体結合体の場
合には、遊離のDTPAを用いる、等々である。
混在する金属の、抗体−結合キレート形成基部位から
非結合体化キレート化剤への移行効果を最大にするため
には、後者の未結合キレート化剤を大過剰に用いること
が好ましい。スカベンジャーキレーターの有用な濃度は
0.01M〜5Mまたはそれ以上である。金属イオンの除去に
十分な熱力学的能力を得るために、未結合キレート化剤
溶液の濃度は、結合体のキレーター濃度の次数より少な
くとも1次、高次数であることが好ましく、2次、高次
数であることがより好ましい。未結合キレート化剤の濃
度が高いほど、遊離の、または非キレート結合により結
合した金属を結合体溶液から迅速に除去し得る。未結合
キレート化剤の最高濃度は、キレート化剤の溶解度によ
ってのみ制限される。しかしながら、同時に、未結合キ
レート化剤の濃度が高くなる程、結合体溶液の未結合キ
レート化剤溶液からの分離が大層で時間のかかる工程と
なる。従って、実用性を考慮し、未結合キレート化剤の
最高濃度は制限される。未結合キレート化剤溶液の濃度
は、0.05M〜1Mの濃度域であることが好ましく、0.1Mが
最も好ましい。
キレーター/抗体結合体を未結合キレート化剤に接触
させる抽出工程の好適な作用時間は、未結合キレート化
剤溶液の濃度に依存する。低濃度の未結合キレート化剤
溶液の場合には、長時間、キレーター/抗体結合体溶液
に接触させる必要があるが、抽出時間は短くてすむ。高
濃度の未結合キレート化剤溶液の場合には、キレーター
/抗体結合体溶液からの遊離の、および非キレート結合
により結合した金属イオンを一掃するのに必要な時間は
短くなるが、抽出工程に長時間を要する。未結合キレー
ト化剤溶液の濃度が1Mまたはそれ以上である場合には、
キレーター/抗体溶液の溶液を未結合キレート化剤溶液
に接触させることからなる一掃工程は、12時間程度で行
われる。未結合キレート化剤の濃度が濃度範囲の低い方
の値である場合には、一掃工程は、72時間またはそれ以
上を要するであろう。本発明方法においては、濃度0.1M
の未結合キレート化剤溶液を用い、該溶液をキレーター
/抗体結合体に48時間接触させることが好ましい。
金属捕捉工程は、弱キレート化バッファー系で行なわ
れる。そのようなバッファー系は、金属イオンを沈殿さ
せずに溶液中に維持するのに十分なキレート化強度を有
する必要があるが、未結合キレート化剤と金属イオンを
競合する程、強力であってはならない。EDTAおよびDTPA
キレート化系に用いるのに好ましいバッファーは、通
常、金属結合形成定数が106から1012の範囲のものであ
り、形成定数が109から1012であることが特に好まし
い。キレーター/抗体結合体の形成、あるいは未結合キ
レート化剤一掃溶液の作成に用いたキレート化剤が、本
発明の米国出願と同時になされた米国特許出願第100,39
0号明細書(1987年9月24日出願)に開示のキレーター
のように、形成定数が非常に高いキレーターである場合
には、弱キレート化溶液は高い形成定数を有していても
よい。EDTAおよびDTPAキレート化剤と一緒に用いるのに
特に好ましい、弱キレート化バッファーには、クエン
酸、酢酸、ニトリロトリアセテートおよびグリシンが含
まれる。そのようなバッファーにとって適切な濃度は、
0.01Mから0.5Mの範囲であり、0.01から0.1Mの範囲であ
ることが特に好ましい。溶液のpHは4〜10の範囲であっ
てよいが、特に好適なpHは、反応工程中に存在する成分
の実体に依存して変化し、当業者ならばそれを決定する
ことができる。
金属捕捉工程は、2℃から45℃の高温の間で行うこと
ができるが、抗体の生物学的活性の変性と損失を避ける
ために、低い温度で行うことが好ましい。2℃から8℃
の温度域で処理することが特に好ましい。
未結合キレート化剤溶液に接触させてキレーター/抗
体結合体溶液を一掃した後、未結合キレート化剤溶液か
らキレーター/抗体結合体を分離する必要がある。この
分離工程は、当業者に既知の様々な方法で行うことがで
きるが、透析法が好ましい。クロマトグラフィーによる
方法、およびその他の、分離にサイズの相違を利用する
方法で代用することもできる。必要とされる分離の程度
は、ある程度、キレーター/抗体結合体を接触させた未
結合キレート化剤の濃度に依存する。分離に透析を用い
る場合、未結合キレート化剤を十分な程度にまで除去す
るのに、通常、最低24時間を要する。キレーター/抗体
結合体を0.1Mの未結合キレート剤に接触させて一掃した
場合、未結合キレート化剤から結合体溶液を分離するの
に24時間から144時間が必要である。
本発明の1実施態様においては、キレーター濃度が10
-4M以上であることを特徴とするキレーター/抗体結合
体溶液を、以下の工程に従って調製する。(a)キレー
ター/抗体結合体溶液を、弱キレート化バッファー中
で、濃度0.01M以上の未結合キレート化剤溶液に12時間
以上接触させ、(b)未結合キレート化剤の溶液から、
キレーター/抗体結合体を分離し、次いで、(c)抗体
結合キレート化剤基の濃度を10-4M以上に調節する:こ
こに、捕捉段階は、透析により行うことが好ましい。こ
れは、(a)で処理されたキレーター/抗体結合体溶液
のキレーター濃度が10-4M以上の好適なものであること
を特徴とする場合に関する。そのような場合には、通
常、抗体キレート形成基の濃度を10-4M以上に調節する
必要がない。しかしながら、接触および分離段階に他の
手段を用いる場合には、抗体と結合したキレート化基の
濃度が10-4M以下になるような希釈度で接触および分離
段階を行うことが好ましい。そのような場合には、本発
明にかかる、予想外の改善された性質を示す溶液を得る
ために、結合体溶液の濃度を10-4M以上に調節する必要
があろう。
金属イオン類 本発明の方法、およびその教示に従って調製される、
金属との結合能力の高いキレーター/抗体結合体溶液
は、様々な、診断、治療、あるいは他の応用分野で、広
範な金属との結合に用いることができる。本発明の結合
体溶液の金属結合活性および特異性は結合体を形成して
いる特定のキレート化剤に依存しており、一般に、本発
明の結合体と結合し易い金属は3価またはそれ以上の金
属である。その理由は、1価または2価金属は、一般に
本発明の目的に適う、十分に安定な結合体を形成しない
からである。
本発明は総体的に放射性金属イオンのキレート化に関
連しているが、本発明の物質は様々な非放射性金属との
結合にも用いることができることはいうまでもない。本
発明に従って結合体を形成する放射性金属イオンには、
診断用シンチグラフィーに有用なガンマ線放射性同位元
素が含まれる。半減期2.8日の111インジウムがとりわけ
好ましいが、その他の適当なガンマ線放射体には、67
リムウ、68ガリウムおよび99mテクネチウムがある。放
射性治療用の細胞毒性物質として用いられるガンマ線放
射体も本発明方法にとって有用である。そのような放射
体には、46スカンジウム、47スカンジウム、48スカンジ
ウム、67銅、72ガリウム、73ガリウム、90イットリウ
ム、97ルテニウム、100パラジウム、101mロジウム、109
パラジウム、153サマリウム、186レニウム、188レニウ
ム、189レニウム、198金、212ラジウム、および212鉛が
含まれる。本発明に有用な他の金属イオンには、212
スマス等のアルファ線放射体、68ガリウムや89ジルコニ
ウムのような陽電子放射体、テルビウムやヨーロピウム
のようなランタニド元素系列の蛍光性元素、ルテニウム
のごとき遷移元素、およびガドリニウムや鉄等の常磁性
物質が含まれる。
本発明の、高濃度に遊離のキレーターを含有する結合
体溶液は、高い結合収率で金属溶液と速やかに結合体を
形成し、溶液中に低濃度の遊離金属を残存させるという
点において、極めて有益である。本発明の結合体溶液
は、このようなものであるために、相当、低純度の111
インジウムの放射化学溶液(市販品から入手可)と30分
またはそれ以下の間インキュベートすると、95%以上の
放射性結合収率を日常的に達成することができる。イン
ジウム以外の金属との特異的結合は、当然、この金属の
場合とは異なるであろう。加えて、おそらくより重要な
点であるが、そのような他の金属の溶液中には、市販品
から入手し得る111インジウム溶液とは異なる金属不純
物が異なる程度に含有されているであろう。その結果、
放射性金属溶液が高濃度に金属不純物を含有している場
合には、95%以上の放射化学的収率で放射性標識された
キレーター/抗体結合体を生産する方法を実施するに
は、遊離キレーター基がより高濃度の結合体溶液が必要
となるであろう。
金属イオンの結合体形成 キレート化剤/金属イオン結合体の形成法は、当業者
に周知である。一般に、キレート化剤と金属イオンとの
錯体は、キレート化剤/基質結合体と金属イオンとを、
結合体が物理学的に安定なバッファー溶液中でインキュ
ベートすることにより形成される。適当なバッファーに
は、クエン酸、酢酸またはグリシン等の、金属と弱い結
合性を有するものが含まれる。基質の弱い結合部位では
なく、キレート化官能基に確実に金属イオンが結合する
のに適当な濃度、温度およびpHは、当業者が選択し得る
であろう。全ての溶液が金属不純物を含有していないこ
とが特に望ましい。
本発明はまた、金属標識抗体または金属標識抗体断片
の注射液を調製するためのキットを提供するものであ
る。そのようなキットは、抗体あたりのキレート形成基
数が最大であり、該抗体の免疫反応性および特異性を保
持しており、不純物金属を含まない、滅菌した、非発熱
性の抗体−キレーター結合体溶液を含有するものであっ
て、該結合体を、弱いキレート形成性の、弱酸性バッフ
ァーに高濃度で溶解すると共に、該溶液に無菌状態で塩
111インジウムを導入した後、該111インジウムで標識
された抗体または抗体断片を無菌状態で取り出すのに適
した、滅菌した非発熱性容器内に入れて提供されるもの
である。
本発明には、ポリクローナルまたはモノクローナル等
あらゆる抗体を用いることができ、また、その方法が抗
体の免疫反応性を損なわない限り、当業者既知の任意の
方法で調製された抗体−キレーター結合体を用いて実施
することができる。即ち、キレート形成基が、混合無水
物反応、活性エステル反応または環状無水物手順のいず
れかの方法により、抗体と結合(カップリング)したDT
PAのアミド誘導体である組成物は、キレート形成基が、
抗体と、対応するイソチオシアナート誘導体との反応で
調製された、EDTAまたはDTPAのベンジルチオウレア誘導
体である組成物と同様に用いられる。本明細書に記載の
概念、方法および工程はまた、広範囲に及ぶ他のタンパ
ク質および生物学的に活性な基質を111インジウムおよ
び他の金属および放射性金属により、高い放射化学的収
率で放射活性に標識することにも適用し得ることは、当
業者にとって明らかである。従って、以下の実施例は異
なる例示にすぎず、本発明を限定することを意図したも
のではない。
つぎに本発明を実施例に基づいてさらに詳しく説明す
るが、本発明はこれらに限られるものではない。
実施例1 この実施例では、癌胎児性抗原(CEA)に対するモノ
クローナル抗体をキレーターDTPAのベンジルイソチオシ
アネート誘導体で高レベルのキレーター置換まで誘導体
化した。得られた抗体−キレーター結合体を精製し、混
在する金属を除去し、111インジウム標識する組成物を
形成した。この組成物により達成された111インジウム
標識化された抗体の放射化学的収率を、3種類の市販源
から得られた塩化111インジウムを用いて繰り返し標識
化することにより評価した。
本明細書において引用する米国特許出願第014,517号
(出願日:1987年2月13日、出願係属中)の詳述にした
がって、CEAに対するIgG1マウスモノクローナル抗体
と、DTPAのベンジルイソチオシアネート誘導体であるN
−(カルボキシメチル)−N−(2−アミノエチル)−
N′−(カルボキシメチル)−N′−(2′−ビス(カ
ルボキシメチル)アミノ)エチル)(4−イソチオシア
ネートフェニル)アニリン・三塩酸塩とを反応させた。
得られた結合体を0.05Mのクエン酸塩バッファーに溶解
したDTPAの0.1M溶液(pH6.0)に対して約2℃〜約8℃
で24時間、さらに0.05Mのクエン酸塩(pH6.0)に対して
24時間、透析した。次いで、結合体溶液の濃度を5mg/ml
に調製し、酸で洗浄したガラス製バイアルに微量採取
し、各々、ゴム栓により密封した。前述の係属中出願明
細書に開示された方法により結合体の1つのアリコート
を分析したところ、抗体1分子当たり平均13のDTPA基を
含み、誘導体化されていない抗体の免疫反応性を全て保
持していることが示された。
抗体/キレーター結合体を含有するバイアルを2〜8
℃で貯蔵し、その後146日間にわたり、バイアルを貯蔵
庫から定期的に取り出し、3つの入手源:ニュー・イン
グランド・ニュークリア(New England Nuclear)、ビ
ラリカ、マサチューセッツ(NENと略記する)、メディ
+フィジックス(Medi+Physics)、リッチモンド、カ
ルフォルニア(MPと略記する)、およびアトミック・エ
ナージー・オブ・カナダ・リミテッド(Atomic Energy
of Canada,Ltd.)、カナダ、オンタリオ(AECと略記す
る)のうちの1つから入手した塩化111インジウム(本
明細書の全実施例において用いる場合、約30〜100mCi/m
lの濃度範囲)5mCiを注射器により入れて標識化した。
このバイアル中で、室温で30分間インキュベートした
後、メアーズ等(アナリティカル・バイオケミストリー
(Anal.Biochem.)、第142巻、第68頁、1984年)による
記載にしたがって、DTPA追跡後、薄層クロマトグラフィ
(TLC)により、111インジウム標識化された抗体の収率
を測定した。このように全部で14の標識化を行った。結
果を第1表に示す。
14の標識化にわたり、111インジウム標識化された抗
体の平均放射化学的収率は97.3%(SE=1.6%)であ
り、米国特許出願第014,517号(出願日:1987年2月13
日、出願係属中)の実施例10に記載のELISA試験は、標
識化されたいずれの製造物においても免疫反応性の損失
を示さなかった。
実施例2 この実施例では、特異性および特性がシュロム等(イ
ンターナショナル・ジャーナル・オブ・キャンサー(In
t.J.Cancer)、第29巻、第539頁、1982年)により詳述
されているモノクローナル抗体B72.3を、DTPAのベンジ
ルイソチアシアネート誘導体により誘導体化し、精製し
て現在する金属を除去し、111インジウム標識化に適し
ている組成物を形成した。実施例1にしたがって、111
インジウム標識化を繰り返し行い、次いで、平均放射化
学的収率を測定した。
米国特許出願第014,517号(出願日:1987年2月13日、
出願係属中)の実施例13に詳述されている方法にしたが
って、IgG1にマウスモノクローナル抗体B72.3と、実施
例1のDTPAのベンジルイソチオシアネート誘導体とを反
応させた。カップリング反応に用いられた抗体に対する
キレート化剤のモル比は7.5:1であった。得られた結合
体を0.05Mのクエン酸塩バッファーにDTPAを溶解した0.1
M溶液(pH6.0)に対して2〜8℃で24時間、次いで、さ
らに、0.05Mのクエン酸塩(pH6.0)に対して24時間、透
析した。次いで、結合体溶液の濃度を5mg/mlに調整し、
バイアル1つ当たり1.0mlの試料を、酸で洗浄したガラ
ス製バイアルに採取した。次いで、このバイアルをゴム
栓で密封し、2〜8℃で貯蔵した。得られたB72.3組成
物の1つのバイアルの分析は、抗体1分子当たり平均5
つのDTPA基を含有し、前述の係属中出願に記載されたEL
ISA法により測定すると、誘導されていないB72.3の免疫
反応性の約60%を維持していることを示した。
製造後58日間にわたり、定期的に貯蔵庫からバイアル
を取り出し、塩化111インジウム(AEC)5mCiを注射器に
より入れることにより、この組成物を試験した。室温で
30分間インキュベーションした後、メアーズ等の方法に
したがって、抗体に一体化された111インジウムの量を
測定した。このように全部で9つの標識化を行った。結
果を第2表に示す。
111インジウム標識化されたB72.3の平均放射化学的収
率は95.5%(SD=1.5%)であり、ELISA試験は、予備標
識化(prelabelling)値に対する標識化された製造物の
抗体免疫反応性の損失を示さなかった。
実施例3 この実施例では、実施例2の組成物を、抗体1分子当
たりキレーター5の置換レベルで明らかな免疫反応性の
わずかな損失を避けるために、さらに最適化した。
反応に用いられた抗体に対するキレーターのモル比が
5:1であった以外は実施例2の記載にしたがって、モノ
クローナル抗体B72.3と、DTPAのベンジルイソチオシア
ネート誘導体との結合を行った。実施例2の方法にした
がって、得られた結合体を精製し、バイアルに採取し
た。引き続き分析を行ったところ、この組成物が抗体1
分子当たり平均3つのDTPA基を含有し、誘導されていな
いB72.3の免疫反応性の100%を維持していることが示さ
れた。実施例2の記載にしたがって塩化111インジウム
により標識化した場合、メアーズ等の方法にしたがって
試験すると、この組成物の放射化学的収率は94〜97%で
あった。
実施例4 この実施例では、111インジウムにより実施例3の組
成物を標準化し、精製せずに、ヒト結腸直腸癌細胞株LS
174Tの異種移植片を施されたヌードマウスに注射した。
次いで、注射後48時間の111インジウム活性の生体内分
布を測定し、これらのデータを、抗体と結合していない
111インジウムを除去するために標識化後に精製を行っ
111インジウム標識化B72.3組成物を用いて得られた文
献値と比較した。
この実施例で用いたマウスは、コルチャー(Colche
r)等(キャンサー・リサーチ(Cancer Res.)、第44
巻、第5744頁、1984年)および前述の係属中特許出願に
記載されている。111インジウム標識化した、比活性1
μCi/μgの実施例3のB72.3組成物のアリコートを、マ
ウス1匹当たり抗体1μgの投与量で、皮下LS174T腫瘍
を施されたヌードマウスの尾部静脈に注射した。48時間
後、マウスを殺し、ガンマーカウンターで計数すること
により、種々の組織の放射活性を測定した。これらのデ
ータを第3表に示す。
第3表のデータから、本発明の111インジウム標識化B
72.3組成物は、標識化後精製を広範に行う技術として知
られている111インジウム標識化B72.3組成物により得ら
れた生体内分布に匹敵するかまたはそれよりも優れてい
る生体内分布を呈することがわかった。血液レベルは3
つの組成物の全てが同等であり、腫瘍摂取値は、標準偏
差値において示されるようにこのような腫瘍に固有の高
い可変性を有する。細網内皮細胞系の器官(主として、
肝臓および脾臓)内への摂取は本発明の組成物が最も低
く、これらの器官内への高い摂取量はシンチグラフィ研
究において厳しいバックグラウンド問題を生じるので、
本発明の組成物は優れている。両方の従来技術組成物に
見られる比較的高い腎臓活性の原因は不明瞭であるが、
これは、抗体から分離され、内因性金属イオンの再吸収
に通常含まれる機構により腎臓に保持されているインジ
ウム活性を示しているのかもしれない。
実施例5 この実施例では、免疫反応性を損失せずに、この個々
のIgG分子に導入され得るキレート化基の数を最適にす
るため、腎細胞癌に存在する抗原を認識する、ベセラ
(Vessella)等(キャンサー・リサーチ、第45巻、第61
31頁、1985年)に詳述されているモノクローナル抗体A6
Hと、DTPAのベンジルイソチオシアネートとを、モル比
を変化させて反応させた。得られた結合体から混入して
いる金属を除去し、次いで、111インジウム標識化組成
物を形成した。次いで、結合体の、111インジウム標識
化A6Hの受容可能な放射化学的収量を数値化するため、
標識化試験を行った。
0.1MのKH2PO4/0.1MのNaHCO3バッファー(pH8.5)中、
IgG1マウスモノクローナル抗体を、DTPAのベンジルイソ
チオシアネート誘導体の量を変化させながら、37℃で3
時間反応させた。次いで、得られた抗体−DTPA結合体
を、0.05Mのクエン酸塩バッファーに溶解したDTPAの0.1
M溶液(pH6.0)に対して2〜8℃で48時間、次いで、0.
05Mのクエン酸塩(pH6.0)に対して2〜8℃で6日間、
透析した。各結合体の濃度を5mg/mlに調整し、次いで、
メアーズ等(アナリティカル・バイオケミストリー、第
142巻、第68頁、1984年)の57コバルト結合アッセイに
よるIgG1分子当たりのキレーターの平均数の評価、およ
び固定された腎細胞癌細胞を施した微量力価プレート上
でのELISAアッセイによる免疫反応性の評価により、各
調整物を評価した。また、実施例1の方法にしたがっ
て、塩化111インジウム(AEC)による標準化試験を行っ
た。これらのデータを第4表に示す。
抗体に対するキレーターのモル比が25:1および50:1で
得られた結合体はいずれも、次に精製せずに用いること
のできる組成物を提供することが明らかである。
実施例6 この実施例では、実施例5に記載の最適な方法によ
り、ヒト肺腺癌細胞株CALU−3に対して産生されたIgG1
マウスモノクローナル抗体を採取した。0.1MのKH2PO4/
0.1MのNaHCO3バッファー(pH8.5)中、抗体を、DTPAの
ベンジルイソチオシアネート誘導体の量を変化させなが
ら反応させた。得られた抗体−DTPA結合体を、0.05Mの
クエン酸に溶解したDTPAの0.1M溶液(pH6.0)に対して
2〜8℃で48時間透析した。次いで、各結合体の濃度を
5mg/mlに調整し、各々、57コバルト結合アッセイ法、固
定化されたCALU−3細胞を被覆したプレート上でのELIS
Aアッセイ法、および実施例1の方法にしたがった塩化
111インジウムによる標識化試験によって評価した。抗
体に対するキレーター結合体(6.0:1)の放射化学的収
率を、メアーズ等の方法にしたがって測定した。これら
のデータを第5表に示す。
実施例7 この実施例では、CEAに対するIgG1マウスモノクロー
ナル抗体のF(ab′)断片を、実施例1にしたがって
抗体の全てを標識化するのに用いたDTPAのベンジルイソ
チオシアネート誘導体により誘導体化した。得られた断
片結合体を精製し、混入する金属を除去し、高い放射化
学的収率の111インジウムによる標識化に適している組
成物を形成した。
0.1MのKH2PO4/NaHCO3バッファー(pH8.5)中、濃度5m
g/mlの断片と、ベンジルイソチオシアネート誘導体とを
モル比40:1で、37℃で3時間反応させた。次いで、得ら
れた断片−DTPA結合体を、0.05Mのクエン酸塩バッファ
ーに溶解したDTPAの0.1M溶液(pH6.0)に対して2〜8
℃で48時間透析した。次いで、キレーター−抗体断片結
合体の濃度を5mg/mlに調整した。分析の結果は、結合体
が自然の(すなわち、非誘導体化)断片の免疫反応生の
全てを維持し、F(ab′)21分子当たり平均8つのキレ
ート化基を含むことを示した。実施例1に記載の条件
下、塩化111インジウムによる標識化試験の結果、メア
ーズ等のTLC法にしたがって試験すると、111インジウム
標識化断片の放射化学的収率は95%であった。
実施例8 この実施例では、実施例3の記載にしたがって製造し
たB72.3−DTPA組成物を、111インジウム標識化B72.3を
含む注射溶液調製用「冷」キットに形成した。ここで、
冷キットとは、それ自体は放射活性がないが、患者に注
射をする直前に適切な放射生同位元素と混合される組成
物を意味する。
実施例3の結合組成物は、非発熱化した(depyrogena
ted)バッファーおよびガラス器具を用いて無菌条件下
で製造した。得られた溶液を、無菌条件下、酸洗浄し、
ベイクし、オートクレイブ中で殺菌した容量5mlのガラ
ス製バイアル中に充填した。充填量はバイアル1つ当た
り0.6mlであり、結合体の濃度は10mg/mlであった。次い
で、水酸化ナトリウム溶液により洗浄することにより非
発熱化し、オートクレイブ中で殺菌したゴム栓により、
各バイアルを密封した。次いで、このゴム製の栓を金環
によりバイアルに密封した。次いで、放射性同位元素販
売主により得られる塩化111インジウムとの結合に用い
る場合、このようにして製造された各バイアルは、111
インジウム標識化B72.3の単回投与用製剤に適している
冷キットを構成した。
3か月にわたり、11個のキットで111インジウム溶液
の5mCi試料を用いて、標識化試験を行い、メアーズ等の
方法にしたがって、放射化学的収率を測定した。これら
のデータを第6表に示す。
放射性同位元素供給器は、実施例1に略記されてい
る。11個の標準化の全てにおける111インジウムB72.3の
平均放射化学的収率は96.5%(SD=2%)であった。各
111インジウム標識化された投薬剤を、USPウサギ発熱試
験により発熱性を、物質の微量試料を培養することによ
り無菌性を、試験した。11個の製剤の全てが無菌性であ
り、非発熱性であることがわかった。
実施例9 この実施例では、実施例1の記載にしたがって製造さ
れたDTPAイソチオシアネート誘導体との抗−CEAモノク
ローナル抗体結合体を、111インジウム標識化抗−CEAの
注射溶液を得るための「熱」キットに調製した。ここ
で、熱キットとは、放射活性型で使用者に提供される放
射性医薬を示す。したがって、使用者によって放射性核
種により標識化しなければならない冷キットとは違っ
て、熱キットは、核薬局による患者への投与の最小限の
操作を含む。一般に熱キットは中央で大規模に製造さ
れ、要求に応じて末端消費者に分配されるであろう。こ
れは逆に、放射性標識化物質が、適度な期間、貯蔵され
るのに充分な安定性を有していることを必要とする。貯
蔵寿命7日間に製造物が約3回の半減期による放射活性
減衰を被るので、111インジウム熱キットの適度な生産
計画としては、1週間に1ロットの製造が適当である。
したがって、標識化後7日間にわたり、免疫反応性およ
びインジウム標識の結合安定性を維持する111インジウ
ム標識化抗−CEAのホットキット製剤化を改良すること
が目的である。
この研究に用いた抗−CEA−DTPA結合体は抗体1分子
当たり平均4つのDTPA基を含んでいた。この結合体を、
0.05Mのクエン酸/0.1Mの重炭酸ナトリウムバッファー
(pH6.0)中に透析し、濃度5mg/mlに調整した。次い
で、塩化111インジウムの添加および室温で30分間のイ
ンキュベートにより、この結合体を111インジウムによ
り標識化した。得られた111インジウム標識化抗−CEA製
剤を、充填量1.0ml/バイアルで、バイアルに微量採取し
た。初期比活性は抗体5mg当たり22.32mCiであった。熱
キットが高い初期比活性を必要とし、111InCl3の添加量
を増大させると結合溶液に対する酸性度が上昇するの
で、pHの低下の結果として生じる免疫活性の損失を防止
するため、結合体溶液中に重炭酸ナトリウムバッファー
を合わせることが必要であった。メアーズ等のキレータ
ー攻撃/TLCアッセイ法およびELISA法により、各々、標
識化直後ならびに1日、2日、3日、5日および7日後
の、抗体に特異的に結合した111インジウムの割合およ
びその免疫反応性を測定した。これらのデータを第7表
に示す。
この調整物の標識化効率および免疫反応性は、溶液
中、2〜8℃で7日間保存しても変わらないままであっ
たので、ならびに7日後の比活性(4.01mCi/5mg)は許
容範囲内のままであったので、本実施冷の製剤は注入用
量の111インジウム抗−CEA抗体を供給するための実行可
能な熱キットを構成している。
実施例10 この実施例においては、DTPAのベンジルイソチオシア
ネート誘導体との抗−CEA結合体を調製し、混入する金
属イオンを除去し、放射性金属標識化用の組成物に配合
した。次いで、得られた組成物をガンマ線を放出する放
射性核種、67ガリウムで標識した。
抗−CEA−DTPA結合体を実施例1記載のようにして調
製し、精製した。得られた物質は、IgG1分子あたり平均
5個のDTPA基を含んでおり、本来の抗−CEA抗体の免疫
反応性のすべてを保持していた。この結合体の溶液0.1m
lを0.5mCiの67ガリウムと混合し、得られた溶液を室温
でインキュベートすることにより、結合体[0.05Mクエ
ン酸バッファー(pH6.0)中、5mg/mlの濃度で]を塩化
67ガリウム(New England Nuclear)で標識した。この
溶液の一部を標識化の1時間後および24時間後に取り、
111インジウム標識の結合体を試験する際に用いたと同
じキレーター攻撃/TLC法を用いて67ガリウム標識した抗
体の放射化学的収率を測定した。これらの結果を第8表
に示す。
標識化の24時間後に得られる95%の放射化学的収率
は、Bio−Rad TSK250サイジングカラムのHPLCで確認し
た。許容性の67ガリウム標識した抗−CEA組成物が得ら
れ、この組成物は標識化後にさらに精製することなく使
用するのに適していると結論づけられる。
実施例11 この実施例においては、111インジウム標識した抗体
の放射化学的収率に及ぼす抗体結合したキレート化基の
濃度の影響を、B72.3と、および抗−CEA抗体とDTPAのベ
ンジルイソチオシアネート誘導体によって得られる結合
体について測定した。抗−CEAおよびB72.3結合体は、そ
れぞれ実施例1および2の記載のようにして調製し、精
製した。抗−CEA−DTPA結合体は、IgG1分子あたり平均
5個のDTPA基を含んでおり、0.05Mクエン酸バッファー
(pH6.0)中、初期濃度5mg/mlであった(DTPAのモル濃
度=1.56x10-4M)。B72.3−DTPA結合体は、IgG1分子あ
たり平均3個のDTPA基を含んでおり、0.05Mクエン酸バ
ッファー(pH6.0)中、初期濃度10mg/mlであった(DTPA
のモル濃度=1.88x10-4M)。0.05Mクエン酸塩(pH6.0)
を希釈液とし、それぞれの結合体の連続2倍希釈を行っ
た。得られた溶液からそれぞれ0.1mlずつ取り、塩化111
インジウム(NEN)を加え、室温で30分間インキュベー
トすることによって111インジウム標識した。塩化111
ンジウムの添加量は、B72.3については9μ(1.2mC
i)、抗−CEA抗体については4.5μ(0.6mCiの111イン
ジウム活性を使用)であった。次いで、それぞれの濃度
で得られる放射化学的収率をキレーター攻撃/TLC法で測
定した。これらの結果を第9表および第10表に示す。
標識した抗体の収率が劇的に低下する狭い限界のキレ
ーター濃度範囲がそれぞれの結合体について存在すると
いうのは注目すべきことである。また、この限界濃度
が、B72.3のもの(約2×10-5M)と抗−CEA抗体のもの
(約4×10-6M)とでは有意に異なるというのも注目す
べきことである。この相違がそれぞれの結合体に加えた
111インジウム量(1.2mCiと0.6mCi)のわずかな差異に
由来するとはまず考えられない。
以上のことから、個々の用法に適合させるための本発
明の種々の変化および変形は、当業者には理解されるで
あろう。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI G01N 33/536 G01N 33/536 E 33/574 33/574 E // C07M 5:00 (56)参考文献 特開 昭59−46227(JP,A) 特開 昭61−72723(JP,A) Analytical Bioche mistry,142,P.68−78, (1984) The Journal of Nu clear Medicine,26 (5),P.493−502,(1985) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C07K 16/00 C09K 3/00 A61K 39/395 G01N 33/536 G01N 33/574

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】遊離もしくは非キレート結合により結合し
    111インジウムイオンを5%未満含み、キレート化後
    の精製の必要のないラジオイムノシンチグラフィーに用
    いるためのインビボ投与に適した111インジウム/キレ
    ーター/抗体結合体水溶液の調製方法であって、インジ
    ウムイオンのキレート化のために選択された条件下で下
    記溶液をインキュベートし、その際、下記第一の溶液の
    下記第二の溶液に対する容量比を5:1よりも大きくし、
    インキュベートを30分間未満行うことを特徴とする方
    法; (i)キレーターの濃度が10-4Mよりも大きく、下記手
    順により製造される第一の溶液 (a)キレーター/抗体結合体の溶液を、弱キレート化
    バッファー中での濃度が0.01Mよりも大きい濃度の未結
    合キレート化剤の溶液に12時間以上接触させ、 (b)該未結合キレート化剤の溶液からキレーター/抗
    体結合体を分離し、ついで (c)抗体に結合したキレート化基の濃度を10-4Mより
    も大きくなるように調節する、および (ii)放射能が30mCi/mlよりも大きいことを特徴とする
    市販の111インジウム塩の第二の溶液。
  2. 【請求項2】キレーターがジエチレントリアミン五酢酸
    およびエチレンジアミン四酢酸の誘導体よりなる群から
    選ばれたものである特許請求の範囲第(2)項記載の方
    法。
  3. 【請求項3】抗体がB72.3および癌胎児性抗原に特異的
    なモノクローナル抗体よりなる群から選ばれたものであ
    る特許請求の範囲第(1)項記載の方法。
  4. 【請求項4】特許請求の範囲第(1)項記載の方法によ
    り得られた111インジウム/キレーター/抗体結合体水
    溶液。
  5. 【請求項5】キレーターがジエチレントリアミン五酢酸
    およびエチレンジアミン四酢酸の誘導体よりなる群から
    選ばれたものである特許請求の範囲第(4)項記載の
    111インジウム/キレーター/抗体結合体水溶液。
  6. 【請求項6】抗体がB72.3および癌胎児性抗原に特異的
    なモノクローナル抗体よりなる群から選ばれたものであ
    る特許請求の範囲第(4)項記載の111インジウム/キ
    レーター/抗体結合体水溶液。
  7. 【請求項7】金属標識抗体の注入可能な溶液を調製する
    ためのキットであって、 (i)第一の金属イオン溶液を第二のキレーター/抗体
    結合体でキレート化することにより得られ、遊離もしく
    は非キレート結合により結合した金属イオンを5%未満
    含みキレート化後の精製の必要のない金属イオン/キレ
    ーター/抗体結合体の滅菌非発熱性水溶液;その際、該
    第二のキレーター/抗体結合体のキレーターの濃度は10
    -4Mよりも大きく下記手順により製造される、 (a)キレーター/抗体結合体の溶液を、弱キレート化
    バッファー中での濃度が0.01Mよりも大きい濃度の未結
    合キレート化剤の溶液に12時間以上接触させ、 (b)該未結合キレート化剤の溶液からキレーター/抗
    体結合体を分離し、ついで (c)抗体に結合したキレート化基の濃度を10-4Mより
    も大きくなるように調節する;および (ii)上記溶液の滅菌状態および非発熱性を保持させ、
    標識抗体を無菌的に除くための装置を備えている容器 からなることを特徴とするキット。
  8. 【請求項8】第一の溶液が111インジウムを含み、その
    放射能が30mCi/mlよりも大きく、第一の溶液の第二の溶
    液に対する比が5:1よりも大きい特許請求の範囲第
    (7)項記載のキット。
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