JP2777299B2 - 燃料電池積層体の水素−水回収機構 - Google Patents

燃料電池積層体の水素−水回収機構

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は固体高分子電解質型燃
料電池積層体の水素−水回収機構に関し、詳しくはアノ
ード排ガスの水素と水を回収するための積層体の構成及
び機構に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、固体高分子電解質型燃料電池積層
体の水分を回収する方法としては、特開平2−8607
1号公報に開示された方法があった。それは酸素ガスの
圧力によりカソード側に発生した水を多孔性部材に吸収
させた後燃料電池外に排出するもので、カソード側の水
分を回収するには有効であったが、アノード排ガスの水
分の回収については考慮されていなかった。
【0003】一方、プロトンとともに数分子の水がアノ
ード側からカソード側へ移動するために、例えば特開平
1−40562号公報に開示された方法などを用いて、
常にアノード側を加湿する必要があった。さて、ここで
アノードガスとして純水素を用いる場合には、アノード
ガスをすべて再循環させることによりアノード側の水分
を再利用することができる。ところが、メタノールなど
の改質ガスを用いる場合には、アノード排気ガスとし
て、多くの水分と低濃度の水素をそのまま外部へ排出す
ることになり、それだけアノード側の加湿必要量が増す
という欠点があった。また、排出する水素の量を少なく
するために燃料の利用率を上げると、水素分圧の低下に
より特性が下がって発電量が少なくなったり、アノード
が腐食するなどの危険性があり、燃料の利用率を90%
以上にまで高めることはできなかった。従って、ある程
度の水素は外部に排出せざるを得なかった。ところが、
固体高分子電解質型燃料電池の主な用途であるメタノー
ル改質型電気自動車においては、例えばガレージや駐車
場で水素を外部へ排気することは危険であった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従来の固体高分子電解
質型燃料電池は以上述べたように、メタノールなどの改
質ガスを用いる場合、アノード側の加湿必要量が増すと
ともに、燃料の利用率に限界があり、水素を排出せざる
を得ず、電気自動車の場合など安全性に問題があった。
【0005】この発明は上記のような問題点を解消する
ためになされたもので、アノードの排気ガスから水素と
水を回収してアノード入口側へ戻し、アノードガスとし
て再利用することにより、燃料を効率よく利用でき、ア
ノード側の加湿必要量を減らせ、また外部へ排出する水
素量を少なくして排気の危険性を減らし安全性を向上で
きる固体高分子電解質型燃料電池積層体の水素−水回収
機構を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】この発明の燃料電池積層
体の水素−水回収機構は、固体高分子電解質型燃料電池
積層体の発電集電板の外側に、水素−水回収セル、ガス
分離板及び回収セル集電板を配設し、アノード排ガスを
上記水素−水回収セルに供給し、上記発電集電板と回収
セル集電板の間に電流を流すことにより、水分を含む純
水素を発生させ、これをアノード入口側へ戻すようにし
たものである。
【0007】発電集電板と回収セル集電板間を電気的に
短絡し、上記両集電板間に補助燃料電池を配設し、この
補助燃料電池で発電した電力により水素−水回収セルを
駆動し、アノードの排気ガス中の水素と水を回収するよ
うにしたものである。
【0008】そして、アノード排気ガスの水素−水回収
セルへの供給、及び上記水素−水回収セルで回収した水
素と水の上記アノードの入口側への供給流路は、発電集
電板、上記水素−水回収セル及びガス分離板を貫通する
穴によって構成されている。
【0009】
【作用】この発明における水素−水回収セルは電流を流
すことによりアノード排ガスから水素と水を回収して水
分を含む純水素を発生する。そしてこれをアノードガス
として再利用するので、アノード側の加湿必要量が減
り、また、外部へ排出する水素量が少なくなる。
【0010】また、補助燃料電池を設けており、この自
己発電により水素−水回収セルの電力をまかなうので、
外部電流が不要となる。
【0011】さらに、アノード排気ガス及び回収した水
素と水の供給流路を発電集電板、上記水素−水回収セル
及びガス分離板を貫通する穴によって構成しているの
で、外部マニホールドが不要となり、構成を著しく簡単
にできる。
【0012】
【実施例】
実施例1.以下、この発明の一実施例を図について説明
する。図1はこの発明の一実施例の固体高分子電解質型
燃料電池積層体の水素−水回収機構の構成を示す模式正
面図である。図において、1は一方の発電集電板、2は
他方の発電集電板、3は回収セル集電板、4は両面に白
金触媒を有する固体高分子電解質膜からなる水素−水回
収セルで、一方の発電集電板1と回収セル集電板3の間
に回収セルのガス分離板5を介して複数積層して配設さ
れる。6は固体高分子電解質膜を挟んでカソードとアノ
ードを有する単セルで、この単セル6と燃料電池のガス
分離板7を順に積層し、両端部に発電集電板1,2を配
設して燃料電池積層体を構成している。8はアノードガ
ス入口側マニホールド、9はアノードガス出口側マニホ
ールド、10は排気ガスマニホールド、11は回収水素
−水マニホールド、12はカソードガス出口側マニホー
ルド、13は絶縁板、14は押さえ板、15はアノード
ガス入口、16は水素−水回収ガス出口、17は水素−
水回収ガス入口である。
【0013】カソードガス入口側マニホールドがカソー
ドガス出口側マニホールド12の裏側に取り付けられて
おり、発電集電板1,2間の単セル6に対して、アノー
ドガスとカソードガスが直交するように外部マニホール
ド8,9,12を用いて供給されている。
【0014】次に動作について説明する。固体高分子電
解質型燃料電池積層体の発電原理については特開平2−
86071号公報や特開平1−140562号公報に詳
細に記述されているので、ここでは言及しない。固体高
分子電解質膜としてはDupont社のナフィオン11
7やナフィオン115、Dow社の膜などが用いられ
る。単セル6にはガス分離板7を用いてアノードガスと
カソードガスが供給される。アノードガスとしてはメタ
ノールの改質ガス、カソードガスとしては空気が一般的
に用いられ、アノードガスは何らかの手段により加湿さ
れる。アノードガスの排ガスはアノード出口側マニホー
ルド9を通って回収セルのガス分離板5から水素−水回
収セル4に供給され、発電集電板1と回収セル集電板3
の間に外部電流を流すことによって水分を含む純水素
(CO2 を含まないガス)を発生し、このガスは回収水
素−水マニホールド11で集められ、水素−水回収ガス
出口16、水素−水回収ガス入口17を通ってアノード
ガス入口側マニホールド8に供給され、アノードガスと
して再利用される。水素と水が回収され、殆ど炭酸ガス
のみとなった水素−水回収セル4の出口ガスは排気ガス
として排気ガスマニホールド10から外部へ排出され
る。
【0015】図2は水素−水回収セル4の作用を説明す
る模式説明図である。図において18は固体高分子電解
質膜で、厚さは 0.2mm以下である。19と20は白金触
媒層であり、アノードの排ガス1中の水素は白金上でプ
ロトンに置き換わり電解質膜18を通って対極に達し、
ここで再び水素に変換される。白金上での水素の酸化還
元反応は殆ど過電圧を要さないので極めて効率よく図2
の反応を起こさせることができる。プロトン1個に対し
て数分子の水が一緒に移動することが知られており、プ
ロトンとともにその数倍の水分子を回収することができ
る。従って、回収されたガス24は水分(水蒸気または
液体)を含んだ純水素となり、炭酸ガスを含まず、アノ
ードガスとしては最も適した組成となっている。一方、
回収セルの排ガス22は大部分が炭酸ガスとなる。な
お、回収する水素及び水の量は外部電流の電圧によりコ
ントロールすることができる。
【0016】この発明では、水素−水回収セル4に電流
を流すことによりアノード排ガスから水素と水を回収し
て水分を含む純水素を発生させ、これをアノードガスと
して再利用しており、アノード側の加湿必要量が減り、
燃料を効率よく利用できる。また、外部へ排出する水素
量が少なくなり、排気の危険性が減り安全性が向上す
る。
【0017】実施例2.この発明の他の実施例において
は、図1に示す発電集電板1と回収セル集電板3との間
を短絡するとともに、両集電板1,3間に補助燃料電池
を挿入している。そして水素−水回収セル4への電力の
供給はこの補助燃料電池によってまかなわれる。水素−
水回収セル1セルあたりに必要な電圧は0.1〜0.2V程度
なので、水素−水回収セル数セルに対して1セルの補助
燃料電池で充分に電力がまかなわれる。なお、この場
合、外部マニホールド8,9,12は発電集電板1及び
補助燃料電池を含む形に配置される。補助燃料電池は単
セル6と同一の仕様であってもよい。
【0018】実施例3.また、この発明のさらに他の実
施例においては、アノード排気ガスの水素−水回収セル
への供給及び水素−水回収セルからアノード入り口側へ
の配管は発電集電板1、水素−水回収セル4及びガス分
離板5を貫通する穴によって構成している。従って外部
マニホールドが不要となり、構造が簡素化される。セル
やガス分離板を貫通する穴を用いて反応ガスを供給する
方法は、例えば特開平2−86071号公報に詳細に記
述されており、容易に構成することができる。
【0019】なお、固体高分子電解質型燃料電池におい
ては、このような穴を用いて反応ガスなどの配管を行う
ことがむしろ一般的である。この実施例においては、単
セル6のガス分離板7のアノードガス出口側の穴を集電
板1、水素−水回収セル4及びガス分離板5を貫通させ
て各々の水素−水回収セルの触媒層19に供給し、水素
−水回収セルの他方の触媒層20から発生した水分を含
む純水素を別の穴で集電板1、水素−水回収セル4及び
ガス分離板5を貫通させてアノードガス入り口側の穴に
つなげることにより、容易に図1の外部マニホールドに
よる配管と同様の機能を構成することができる。ただ
し、セル面積が大きい場合には外部マニホールドを用い
た方が構造が簡単な場合も考えられる。
【0020】
【発明の効果】以上のように、この発明の燃料電池積層
体の水素−水回収機構によれば、固体高分子電解質型燃
料電池積層体の少なくとも一方の発電集電板の外側に回
収セル集電板を設けるとともに、上記発電集電板と回収
セル集電板との間に 両面に白金触媒を有する固体高分
子電解質膜からなる水素−水回収セルをガス分離板を介
して少なくとも1セル以上積層して配設し、アノードの
排気ガスを上記水素−水回収セルに導き、上記発電集電
板と回収セル集電板間に電流を流して上記アノードの排
気ガス中の水素と水を回収して上記アノードの入口側へ
戻すようにしたので、燃料を効率よく利用でき、アノー
ドガスの加湿必要量を低減でき、また排気ガス中の水素
量を低減でき、安全性が向上する。
【0021】また、補助燃料電池を挿入することによっ
て、外部電流によらず自己発電で水素−水回収セルの電
力をまかない水素と水の回収を行うことができる。
【0022】さらに、アノードの排気ガスを水素−水回
収セルに供給し、上記水素−水回収セルで回収した水素
と水を上記アノードの入口側へ供給する流路を、発電集
電板、上記水素−水回収セル及びガス分離板を貫通する
穴によって構成しているので、外部マニホールドが不要
になり、構造が簡素化できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施例の燃料電池積層体の水素−
水回収機構を示す模式正面図である。
【図2】この発明に係わる水素−水回収セルの作用を説
明する模式説明図である。
【符号の説明】 1 発電集電板 2 発電集電板 3 回収セル集電板 4 水素−水回収セル 5 ガス分離板 6 単セル 8 アノード入口側マニホールド 9 アノード出口側マニホールド 10 排気ガスマニホールド 11 回収水素−水マニホールド 12 カソード出口側マニホールド
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平5−13094(JP,A) 特開 昭61−114478(JP,A) 米国特許4671080(US,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) H01M 8/04 - 8/06

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 固体高分子電解質膜を挟んでカソードと
    アノードを有する単セルを複数積層し、両端部に上記複
    数の単セルから電流を集電する発電集電板を配設した固
    体高分子電解質型燃料電池積層体、この燃料電池積層体
    の少なくとも一方の上記発電集電板の外側に回収セル集
    電板を設けるとともに、上記発電集電板と回収セル集電
    板との間に 両面に白金触媒を有する固体高分子電解質
    膜からなる水素−水回収セルをガス分離板を介して少な
    くとも1セル以上積層して配設し、上記燃料電池積層体
    のアノードの排気ガスを上記水素−水回収セルに導き、
    上記発電集電板と回収セル集電板間に電流を流して上記
    アノードの排気ガス中の水素と水を回収して上記アノー
    ドの入口側へ戻すようにした燃料電池積層体の水素−水
    回収機構。
  2. 【請求項2】 発電集電板と回収セル集電板との間に固
    体高分子電解質膜を挟んでカソードとアノードを有する
    単セルを1セル以上有する補助燃料電池を配設し、上記
    発電集電板と回収セル集電板間を電気的に短絡し、上記
    補助燃料電池で発電した電力により水素−水回収セルを
    駆動し、アノードの排気ガス中の水素と水を回収して上
    記アノードの入口側へ戻すようにした請求項1記載の燃
    料電池積層体の水素−水回収機構。
  3. 【請求項3】 燃料電池積層体のアノードの排気ガスを
    水素−水回収セルに供給し、上記水素−水回収セルで回
    収した水素と水を上記アノードの入口側へ供給する流路
    が、発電集電板、上記水素−水回収セル及びガス分離板
    を貫通する穴によって構成されている請求項1または2
    記載の燃料電池積層体の水素−水回収機構。
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