JP2761138B2 - 車両用無段変速機の制御装置 - Google Patents

車両用無段変速機の制御装置

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JP2761138B2
JP2761138B2 JP30467591A JP30467591A JP2761138B2 JP 2761138 B2 JP2761138 B2 JP 2761138B2 JP 30467591 A JP30467591 A JP 30467591A JP 30467591 A JP30467591 A JP 30467591A JP 2761138 B2 JP2761138 B2 JP 2761138B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、車両用動力伝達装置
として用いられる無段変速機(CVT)の制御装置に関
するものである。
【0002】
【従来の技術】車両においては、内燃機関と駆動車輪間
に変速装置が介在している。変速装置は広範囲に変化す
る車両の走行条件に合致させて駆動輪の駆動力と走行速
度とを変更し、内燃機関の性能を充分に発揮させてい
る。変速装置の一種として無段変速機があり、これは回
転軸に固定された固定プーリ部片とこの固定プーリ部片
と接離可能に回転軸に装着された可動プーリ部片とを有
するプーリの両プーリ部片間に形成される溝部の溝幅を
増減することにより、プーリに巻掛けられたベルトの回
転半径を減増させて動力を伝達し、ベルトレシオ(変速
比)を変えるものである。この無段変速機は、例えば特
開昭57−186656号公報、特開昭59−4324
9号公報、特開昭59−77159号公報、特開昭61
−233256号公報に開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ベルト式無段変速機の
変速比は、車両の運転状態で決まる目標エンジン回転数
に実際のエンジン回転数が一致するようにフィードバッ
ク制御され、また目標値に対する追従性を満たすために
各制御ゲインが決められるが、急加速や急減速に伴なう
偏差の一時的な急増で操作量過大となり、無段変速機の
追従限界を越えると、ベルトスリップが生じるという課
題があった。又、この過渡的なベルトスリップを防止す
るために、常時必要以上のベルト挟持力を加えること
は、ベルトの寿命や燃費の悪化を招いた。
【0004】この発明は上記のような課題を解決するた
めに成されたものであり、ベルトスリップや過大挟持力
によるベルト寿命の劣化を防止することができるととも
に、追従性を損うことなく変速制御をすることができる
車両用無段変速機の制御装置を得ることを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】ベルトスリップが発生す
るのは、可動側プーリ部片に供給される圧力によって生
じるベルト挟持力とベルト張力の関係によってであり、
変速比がほぼ一定の平衡状態では一般に下式によって示
すことができる。1次側(エンジン側)が駆動で2次側
(車輪軸側)が被駆動の場合、入力軸側=1次側の挟持
力F1 は数1となり、
【0006】
【数1】
【0007】出力軸側=2次側の挟持力F2 は数2とな
る。
【0008】
【数2】
【0009】ここで、A=exp(μ・φ/sin β) Teff : 実効ベルト張力=M1 /R1 1 : 1次側トルク α1 ,α2 :ベルト接触角 β : シーブ半頂角 R1 : 1次側のベルト半径 μ : プーリとベルトとの摩擦係数 φ : プーリとベルトとの接触部位におけるベルト
張力が最大から最小まで変化する角度
【0010】φ≦α1 またはα2 であればベルトスリッ
プは発生せず、反対にφ>α1 またはα2 であればベル
トスリップが発生する。(1),(2)式で各第1項は
ベルトスリップが発生しないための最低ベルト挟持力で
あり、{ }内の値はそれに対する安全率と考えられ
る。一方、変速比RC =R2 /R1 (R2=2次側のベ
ルト半径)は、各挟持力(各軸推力)F1 ,F2 の比
(即ち安全率の比)と安全率で決まる。この関係を示す
例が図2である。即ち、図2は1次及び2次側安全率S
1 ,SF2 と変速比RC の関係を示す。
【0011】通常、無段変速機においては、ベルトスリ
ップが発生しないように制御されたライン圧で第2挟持
力F2 を確保するとともに、目標エンジン回転数になる
ように1次側油圧即ち第1挟持力F1 を加減して変速比
を制御する。
【0012】図3は変速に関係する油圧回路図を示す。
この図における関係式は次の通りである。遠心油圧を無
視すると各挟持力は F1 =P1 ・S1 (3) F2 =P2 ・S2 (4) 又、第1油路30の流量Q1 、第2油圧室24への流量
2 は連続の式より、数3、数4となる。
【0013】
【数3】
【0014】
【数4】
【0015】又、ダウンシフト時の制御弁と管路抵抗よ
り、数5、数6が得られる。
【数5】
【数6】
【0016】ここで、 x1 ,x2 :1次及び2次側可動プーリ部片8,14の
軸方向位置 P1 ,P2 :第1及び第2油圧室22,24の圧力 S1 ,S2 :1次及び2次側可動プーリ部片8,14の
受圧面積 V1 ,V2 :第1及び第2油圧室22,24の容積 B :作動油の体積弾性係数 L1 ,L2 :第1及びライン油路30,32の等価管路
長 A1 ,A2 :第1及びライン油路30,32の等価断面
積 ρ ,ν :作動油の密度及び動粘度 Aa,Ca:1次側油圧制御弁34のポートaの開口面
積及び流量係数であり、開口面積Aaは平衡状態のデュ
ーティ(=実中立値)とデューティの差の関数であり、
デューティが実中立値のとき零であって差が大きくなる
と開口面積Aaも大きくなる。 Pl :ライン油圧 である。
【0017】プーリ移動速度dx/dtは、平衡条件式
(1),(2)より外れた両挟持力F1 ,F
2 ((3),(4)式)の差に比例すると考えられる。
従って、ある条件下では(1)式から(8)式までの関
係よりdP1 /dt≒0となる。操作量であるデューテ
ィに対する1次油圧P1 の実機でのダウンシフトのステ
ップ応答例を図4に示す。変速制御では、新たな平衡点
に達するか位置的限界に達するかしてdx/dt=0と
なる。新平衡点に達した場合は、1次油圧P1
(1),(3)式で決まる第1挟持力F1 になるような
値となる。位置的限界に達した場合は、1次油圧P1
零となっていくが、ストッパからの反力で挟持力が確保
される。
【0018】速い変速比の変化速度が要求されるほど、
即ち実中立値−デューティが大きいほど過渡の(プーリ
移動中の)1次油圧P1 は低くなり、(1)式の最低ベ
ルト挟持力が確保されない場合にベルトスリップが発生
する。従って、ベルトスリップを発生させないために
は、ダウンシフト中の1次油圧P1 が(1)式の最低ベ
ルト挟持力を確保できる値以上になるように、操作量の
デューティを制限することであるが、ドライバビリティ
の悪化は避けなければならない。
【0019】従って、この発明に係る車両用無段変速機
の制御装置は、固定プーリ部片と、この固定プーリ部片
に接離可能に装着された可動プーリ部片と、この可動プ
ーリ部片に設けられた油圧サーボを有する一次側プーリ
及び二次側プーリの夫々の両プーリ部片間の溝に駆動ベ
ルトを巻掛けベルト式の無段変速機を備え、上記何れか
一方のプーリの油圧サーボに、油圧源が発生する油圧を
調整したライン圧を供給することにより、上記駆動ベル
トの第2挟持力を発生させると共に、上記何れか他方の
プーリの油圧サーボにはライン圧を選択的に供給するこ
とにより変速油圧を作って上記駆動ベルトの第1挟持力
を発生させることで上記両プーリ部片間の溝幅を増減し
て両プーリに巻掛けられる上記駆動ベルトの回転半径を
増減させ変速比を制御する車両用無段変速機の制御装置
において、運転状態検出手段の情報から決定された目標
ライン圧に制御するライン圧制御手段と、上記情報から
決定された目標変速比又は目標エンジン回転数に制御す
る変速制御手段と、伝達トルクと上記一次側プーリ及び
二次側プーリの実効径の比実効ベルト張力より最低ベ
ルト挟持力値を演算する第1演算手段と、上記ライン圧
と第1演算手段の出力より第2挟持比を演算する第2演
算手段と、上記第2演算手段の出力と変速比より変速比
が一定である平衡状態での第1挟持比を演算する第3演
算手段と、この第3演算手段の出力に応じて上記変速制
御手段の操作量を制限する制限手段と、上記変速制御手
段の操作量制限が行われている場合は無段変速機の入力
トルクを減少する入力トルク補正手段とを備えたもので
ある。
【0020】
【作用】この発明においては、2次油圧=ライン油圧と
入力トルクで決まる第2挟持比と変速比との関係から決
まる平衡状態での第1挟持比と、予め求められた実中立
値ーデューティと1次油圧減衰率即ち第1挟持比の減衰
率との関係から、過渡状態での第1挟持比が求められ、
第1挟持比が所定値を下回らないようなデューティに変
速制御手段の操作量を制限する。又、操作量制限の結
果、偏差が大きくなると判断される場合は、この操作制
限を緩和させるためにCVT入力トルクを所定量だけ低
減する。
【0021】
【実施例】
実施例1 以下、この発明の実施例を図面とともに説明する。図1
はこの実施例による車両用ベルト式無段変速機の制御装
置の構成を示し、2はベルト式無段変速機、2Aはベル
ト、4は1次側プーリ、6は1次側固定プーリ部片、8
は1次側可動プーリ部片、10は2次側プーリ、12は
2次側固定プーリ部片、14は2次側可動プーリ部片で
ある。このように、1次側プーリ4は回転軸16に固定
された固定プーリ部片6と、回転軸16にその軸方向に
移動可能でかつ回転不可能に装着された可動プーリ部片
8を有し、2次側プーリ10も同様の構成となってい
る。
【0022】1次側可動プーリ部片8と2次側可動プー
リ部片14にはそれぞれ第1、第2ハウジング18,2
0が装着され、第1及び第2油圧室22,24が形成さ
れる。第2油圧室24内には、その拡大方向に第2ハウ
ジング20を付勢するばね等からなる付勢手段26を設
ける。回転軸16には油圧ポンプ28を設け、オイルタ
ンク94内に還流した作動油をストレーナ96を介して
吸い込み、ライン油路32に圧送する。ライン油路32
は第2油圧室24と連通すると共に、第1三方電磁弁4
2により第2油路40を介して制御される1次側油圧制
御弁34と連通し、1次側油圧制御弁34は第1油路3
0を介して第1油圧室22と連通する。
【0023】又、ライン油路32は、第3三方電磁弁5
8により第4油路56を通して制御されるクラッチ圧制
御弁52を介してクラッチ油路64と連通する。クラッ
チ油路64には、その油圧検出用に第6油路66を介し
て油圧センサ68が設けられている。ライン圧Pl は、
第2三方電磁弁50により第5油路48を通して制御さ
れるライン圧制御弁44によって調圧(例えば、6〜2
5kg/cm2)される。ライン圧制御弁44は第7油路46
を介してライン油路32と連通する。第3油路60の油
圧はライン圧を減圧する調圧弁38によって制御用一定
圧(例えば4.2kg/cm2)に保たれ、制御弁34,44,
52及び三方電磁弁42,50,58に導かれる。
【0024】又、無段変速機の回転速度測定のために、
第1ハウジング18の外側に1次側回転検出歯車70と
1次側回転速度検出器72を設け、第2ハウジング20
の外側に2次側回転検出歯車74と2次側回転速度検出
器76を設ける。この実施例では、1次側回転速度N1
はエンジン回転数Neに等しく、また変速比Rc=N1
/N2 で算出される。又、油圧式発進クラッチ62の出
力側に伝達用歯車78を設け、この伝達用歯車78は前
後進切替装置、減速歯車、差動機、駆動軸、タイヤとつ
ながる。伝達用歯車78の回転速度計測用にクラッチ出
力回転速度検出器80を設け、クラッチ出力回転速度N
3 を得る。N3 は車速に相当する。又、(N2 −N3
はクラッチスリップ回転数となる。
【0025】さらに、図示してない気化器のスロットル
開度、エンジン回転数、車速、各スイッチ信号等の車両
の運転状態や、油圧、油温等の情報を制御部82に入力
する。制御部82は三方電磁弁42,50,58にデュ
ーティ出力することにより、ライン圧、クラッチおよび
変速の制御を行なう。
【0026】図5は制御部82の構成を示し、この図5
を用いて制御の流れを説明する。まず、クラッチ制御に
おいて、目標クラッチ圧決定手段104の動作をモード
別に述べると、遮断モードではクラッチ圧を零とし、ホ
ールドモードではクラッチ圧をクラッチが係合を始める
程度の油圧にする。次に、発進モードではスロットル開
度センサ114によって検出されたスロットル開度θ、
クラッチ出力回転速度検出器80により検出されたクラ
ッチ出力回転数N3 =車速V、1次側回転速度検出器7
2により検出された1次側回転数N1 =エンジン回転数
Ne、2次側回転速度検出器76により検出された2次
側回転数N2 =クラッチ入力回転数、及びその他の車両
運転状態115が入力され、目標クラッチ圧決定手段1
04は目標クラッチ圧を決定する。一方、発進クラッチ
62の油圧Pcを油圧センサ68で検出し、目標クラッ
チ圧と油圧Pcは減算器111に入力され、その偏差が
クラッチ圧制御演算手段109に入力され、クラッチ圧
制御演算手段109は操作量であるデューティDcを出
力し、この出力は油圧回路116に入力され、発進クラ
ッチ62の油圧が目標クラッチ圧に制御される。次に力
行モードでは基本的にはクラッチ圧はライン圧に等しく
される。又、惰行モードではクラッチが微少なスリップ
をする程度のクラッチ圧にされる。
【0027】次に、目標クラッチ圧補正量決定手段11
2はクラッチ圧を変えることによりCVT117の入力
トルクを増減することができ、入力トルク補正手段とな
る。図6は目標クラッチ圧補正量決定手段112の動作
を示すフローチャートである。ステップ401では目標
エンジン回転数と検出されたエンジン回転数Neとの偏
差EIRが200rpm 以上か否かを判定し、以下であれ
ばステップ402でEIRが100rpm 以上か否かを判
定し、ステップ403ではdEIR/dt即ちEIRの
変化方向が正か負かを判定し、正であればステップ40
4に進む。
【0028】ステップ305では、実効張力Teff=M1
/R1を演算し、ステップ306では最低ライン圧Pl
min eff sinβ/2μS 2 を演算し、ステップ30
7では2次側安全率SF2=Plsp/Plminを演算す
る。ステップ308ではTEの正負を判定し、負の場合
即ち2次側駆動の場合にはステップ309で図2の破線
で示す関係マップMAP3より1次側安全率SF1を演
算し、TEが正または零の場合即ち1次側駆動の場合に
はステップ310に進み、図2の実線で示す関係MAP
2から1次側安全率SF1を求める。ステップ311で
は、過渡状態の安全率が1を下回らないように、定常状
態の1次側安全率SF1と図8に示すMAP4からデュ
ーティ制限値Dmaxを計算する。図8は図4でほぼ一定
となった1次油圧減衰率の逆数=1次側安全率として、
SF1とDmaxの関係を描いた。
【0029】次に、ライン圧の制御においては、変速比
演算手段102は1次側回転数N1及び2次側回転数N
2 を入力され、変速比Rc=N1 /N2 を算出する。
又、CVT入力トルク演算手段103はスロットル開度
θとエンジン回転数Ne=N1を入力され、1次側トル
クM1 を算出する。目標ライン圧決定手段105は変速
比Rcと1次側トルクM1 を入力されて目標ライン圧P
lsp を決定し、ライン圧制御演算手段108は目標ライ
ン圧Plsp と油圧Pcを入力され、操作量であるデュー
ティDl を油圧回路116に出力する。ただし、Pcが
ライン圧と等しくない状態(クラッチ非直結状態)で
は、目標ライン圧に対応した所定デューティを出力す
る。
【0030】次に、変速制御においては、目標エンジン
回転数決定手段101はスロットル開度θと車速Vから
目標エンジン回転数Nesp を決定し、この目標エンジン
回転数Nesp とエンジン回転数Neが減算器110に入
力され、その偏差EIRが変速制御演算手段106に入
力され、変速制御演算手段106は操作量であるデュー
ティDrを出力し、油圧回路116を介してCVT11
7を変速制御する。118はエンジン、119は駆動装
置である。
【0031】又、変速制御演算手段106からのデュー
ティ出力Drは制限値決定手段107により決定された
デューティ制限値Dmax で制限される。図7は変速制御
演算手段106の詳細な構成を示し、比例−積分制御に
より、積分ゲインKI の積分器201の出力を減算器2
04において公称中立値Dnnから差し引き、実中立値D
nを得る。一方、比例ゲインKP の比例演算器202の
出力を制限器203の制限値Dmax により制限し、減算
器205で実中立値Dnから制限器203の出力を差し
引いたものをデューティDrとして出力する。
【0032】図9に制限値決定手段107の動作のフロ
ーチャートを示す。ステップ301では、変速比Rcと
半径R1 の関係マップMAP1よりR1 を算出する。ス
テップ302ではクラッチが直結か否かを判定し、直結
状態であればステップ303で1次側トルクM1 =TE
とし、直結状態でなければステップ304でクラッチ圧
PcとクラッチゲインKc(トルク/圧力)の積=2次
側トルクをRcで割った1次換算トルクPc・Kc/R
cとTE のうち小さい方を1次側トルクM1 とする。
【0033】ステップ305では、実効張力Teff=M1
/R1を演算し、ステップ306では最低ライン圧(最
低ベルト挟持力値)Plmin=Teff sinβ/2μ2
演算し、ステップ307では2次側安全率(第2挟持
比)SF2=Plsp/Plminを演算する。ステップ308
ではTEの正負を判定し、負の場合即ち2次側駆動の場
合にステップ309で図2の破線で示す1次側安全率
(第1挟持比)SF12次側安全率SF 2 、変速比Rc
の関係マップMAP3より1次側安全率SF1を演算
し、TEが正または零の場合即ち1次側駆動の場合には
ステップ310に進み、図2の実線で示す1次側安全率
SF 1 、2次側安全率SF 2 、変速比Rcの関係MAP2
から1次側安全率をSF1を求める。ステップ311で
は、過渡状態の1次側安全率SF 1 が1を下回らないよ
うに、定常状態の1次側安全率SF1と図8に示す1次
側安全率SF 1 とデューティ制限値Dmaxとの関係
AP4からデューティ制限値Dmaxを演算する。図8は
図4でほぼ一定となった1次油圧減衰率の逆数=1次安
全率として、SF1とDmaxの関係を描いたものであ
る。この様に制限値決定手段(制限手段)107で求め
られたデューティ制限値Dmaxは変速制御演算手段
(変速制御手段)106に送られる。変速制御演算手段
106は求められたデューティ制限値Dmaxを越えな
いように油圧回路114における油圧制御弁の操作量D
rを制限すれば、変速中も1次側安全率SF 1 は1以上
に保たれるため変速時におけるベルトスリップを防止す
ることができる。
【0034】実施例2 上記実施例においては、エンジン118、CVT11
7、発進クラッチ62の接続順序であるが、エンジン1
18、発進クラッチ62、CVT117の接続順序であ
っても同様である。又、発進クラッチ62は湿式油圧ク
ラッチとして説明したが、電磁クラッチでも流体クラッ
チでもよい。図9のステップ304ではクラッチトルク
の推定は、電磁クラッチの場合には例えばその電流値よ
り可能である。又、流体クラッチの場合には、例えば速
度比の関数で与えられる容量係数と入力回転数より可能
である。又、図9のステップ308でのCVT117の
1次側が駆動側か被駆動側かの判定は、例えばクラッチ
の入力回転数と出力回転数の差の符号で行なうこともで
きる。さらに、過渡状態での1次側安全率を1以上とし
ているが、さらに確実にするために1より大きな値にす
ることも考えられる。
【0035】実施例3 実施例1では、速い変速が必要な場合(例えば変速制御
の偏差が大きくて操作量の制限を受けている場合)、操
作量制限値Dmax を大きくするために、クラッチ圧を操
作してクラッチ伝達トルクを小さくし、CVT117の
入力トルクを必要量減じているが、エンジン出力を減少
させてもCVT117の入力トルクを減じることができ
る。
【0036】図10は制御部82の他の構成を構成を示
し、エンジン出力補正量決定手段120は偏差EIR、
デューティ制限値Dmax、デューティ比D、デューテ
ィ出力の実中立値Dnを入力されてトルク加減量を決定
し、エンジン118を制御するエンジン出力制御手段1
21を指示してCVT117の入力トルクを補正する。
即ち、エンジン出力制御手段121からCVT入力トル
ク演算103にエンジントルク情報TEが入力され、一
次側トルクM1の演算に反映される。従って、エンジン
出力補正量決定手段120とエンジン出力制御手段12
1とにより入力トルク補正手段を構成する。
【0037】図11はエンジン出力補正量決定手段12
0の動作を示すフローチャートであり、図6とほぼ同様
の動作を行ない、補正量Tedn を決定する。
【0038】
【発明の効果】以上のようにこの発明によれば、CVT
ベルトの有効張力と2次側油圧と変速比とから定常状態
の安全率を算出し、これと予め求めた操作量と1次油圧
の変化率の関係から変速中(過渡状態)の安全率が所定
値以上となる限界操作量を求めて変速制御中の操作量を
制限することにより、過大な操作量による1次側油圧低
下により発生するCVTベルトスリップを確実に防止す
ることができる。又、必要な場合のみ必要なだけCVT
入力トルクを補正する入力トルク補正手段を設けたの
で、操作量制限による変速制御性能の低下を回避でき
る、しかも、すべてを電子制御で構成したので安価にで
き、精度の高いものが得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明装置の構成図である。
【図2】車両用無段変速機の1次及び2次安全率と変速
比との関係図である。
【図3】この発明装置による変速関係の詳細油圧回路図
である。
【図4】この発明装置の1次油圧のステップ応答図であ
る。
【図5】この発明装置の実施例1による制御部の構成図
である。
【図6】この発明装置の実施例1による目標クラッチ圧
補正量決定手段の動作を示すフローチャートである。
【図7】この発明装置の実施例1による変速制御演算手
段106の構成図である。
【図8】車両用無段変速機の1次側安全率とデューティ
制限値との関係図である。
【図9】この発明装置の実施例1による制限値決定手段
の動作を示すフローチャートである。
【図10】この発明装置の実施例3による制御部の構成
図である。
【図11】この発明装置の実施例3によるエンジン出力
補正量決定手段の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
2 ベルト式無段変速機 2A ベルト 4 1次側プーリ 6,12 固定プーリ部片 8,14 可動プーリ部片 10 2次側プーリ 32 ライン油路 68 油圧センサ 82 制御部 103 CVT入力トルク演算手段 104 目標クラッチ圧決定手段 106 変速制御演算手段 107 制限値決定手段 108 ライン圧制御演算手段 109 クラッチ圧制御演算手段 112 目標クラッチ圧補正量決定手段 116 油圧回路 117 CVT 118 エンジン 120 エンジン出力補正量決定手段 121 エンジン出力制御手段
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI F16H 59:54 63:06 (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) F16H 9/00 F16H 59/00 - 63/48

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 固定プーリ部片と、この固定プーリ部片
    に接離可能に装着された可動プーリ部片と、この可動プ
    ーリ部片に設けられた油圧サーボを有する一次側プーリ
    及び二次側プーリの夫々の両プーリ部片間の溝に駆動ベ
    ルトを巻掛けベルト式の無段変速機を備え、上記何れか
    一方のプーリの油圧サーボに、油圧源が発生する油圧を
    調整したライン圧を供給することにより、上記駆動ベル
    トの第2挟持力を発生させると共に、上記何れか他方の
    プーリの油圧サーボにはライン圧を選択的に供給するこ
    とにより変速油圧を作って上記駆動ベルトの第1挟持力
    を発生させることで上記両プーリ部片間の溝幅を増減し
    て両プーリに巻掛けられる上記駆動ベルトの回転半径を
    増減させ変速比を制御する車両用無段変速機の制御装置
    において、運転状態検出手段の情報から決定された目標
    ライン圧に制御するライン圧制御手段と、上記情報から
    決定された目標変速比又は目標エンジン回転数に制御す
    る変速制御手段と、伝達トルクと上記一次側プーリ及び
    二次側プーリの実効径の比実効ベルト張力より最低ベ
    ルト挟持力値を演算する第1演算手段と、上記ライン圧
    と第1演算手段の出力より第2挟持比を演算する第2演
    算手段と、上記第2演算手段の出力と変速比より変速比
    が一定である平衡状態での第1挟持比を演算する第3演
    算手段と、この第3演算手段の出力に応じて上記変速制
    御手段の操作量を制限する制限手段と、上記変速制御手
    段の操作量制限が行われている場合は無段変速機の入力
    トルクを減少する入力トルク補正手段とを備えたことを
    特徴とする車両用無段変速機の制御装置。
  2. 【請求項2】 入力トルク補正手段は、変速制御手段に
    よるアップシフト変速時は入力トルク補正量を徐々に解
    消することを特徴とする請求項1に記載の車両用無段変
    速機の制御装置。
  3. 【請求項3】 入力トルク補正手段は、目標エンジン回
    転数と無段変速機の一次側回転速度の偏差がアップシフ
    ト側に変化した場合に入力トルク補正量を徐々に解消す
    ることを特徴とする請求項1に記載の車両用無段変速機
    の制御装置。
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