JP2750626B2 - 位置決め装置の粘性摩擦係数同定方法 - Google Patents

位置決め装置の粘性摩擦係数同定方法

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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は、工作機械、プリンタ、プロッタあるいは半
導体製造装置などに広く用いられている位置決め装置に
おける物理パラメータの同定方法に関するものであり、
特に回転機構と直動機構それぞれの粘性摩擦係数を簡単
に求める方法に関する。
[従来の技術] 工作機械、プリンタ、プロッタ機器あるいは半導体製
造装置などには、モータなどの回転駆動手段による回転
運動を変換器を介し直線運動に変換し、搬送物体を直動
方向所望の位置に高速高精度にポジショニングする位置
決め装置が多く採用されている。このような装置は、モ
ータ、カップリングおよびボールネジなどから構成され
る回転機構と案内機構および搬送物体からなる直動機構
とから構成されているが、高度の制御アルゴリズムをイ
ンプリメントしたり、あるいはシミュレーションシステ
ムを開発するためには上記機構の正確な動特性を把握す
る必要がある。
さて、モータなどの回転運動を変換器を介して直線運
動に変換する位置決め装置の一例を第2図に示す。この
ような位置決め装置の動特性は、回転機構側を構成する
モータ1、カップリング2およびボールネジ3のイナー
シャと直動機構側の搬送物体4の重量、回転・直動機構
それぞれの粘性摩擦係数Dm,DWおよび回転・直動機構間
に介在するバネ定数(図示せず)によって支配される。
一般に、イナーシャと搬送重量の値は設計時点でほぼ正
確に捉えられる。また、バネ定数もインパルス応答試験
あるいは位置決め装置の周波数特性を測定することによ
ってある程度正確な同定値は求められる。しかし、回転
と直動機構が共に組み込まれた状態でそれぞれの粘性摩
擦係数を同定することは従来から困難であった。
例えば、文献『オブザーバによるサーボモータ系の個
体摩擦の推定と位置決め制御への応用(山田一郎)』
(計測自動制御学会論文集Vo1.24,No.2,pp.162−169)
では、オブザーバ理論に基づいてサーボモータ系の摩擦
を同定する方法を明確に提示している。しかし、この方
法は、本質的に、本発明で扱うような回転機構に直動機
構が接続された位置決め装置に対する同定方法ではな
い。
また、従来からモータ軸に換算した等価的な粘性摩擦
係数は容易に求められていた。すなわち、等速度運動を
行わせた場合のモータ軸でみた運動方程式は次式で表現
される。
(Dm+P2Dw=τ …(1) 上式において、入力トルクがτm1のときモータ軸の回
転角速度がm1であり、入力トルクをτm2とした場合に
回転角速度がm2になったとすれば、モータ軸でみた等
価粘性摩擦係数Deffは次式から求められる。
ここで、Dmは回転機構の粘性摩擦係数、Dwは直動機構
の粘性摩擦係数である。また、Pは回転運動から直線運
動への変換定数であり、ボールネジのピッチをLとする
とL/2πである。
上式から明かなように、モータ軸でみた粘性摩擦係数
は、回転機構の粘性摩擦係数と直動機構の粘性摩擦係数
が変換定数を介して回転側に変換された量との総和であ
り、回転側および直動側それぞれの粘性摩擦係数を上述
のような等速運動試験から求めることはできない。
さらに、回転機構あるいは直動機構のみの粘性摩擦係
数を求めようとした場合、装置を分解して回転機構およ
び直動機構の粘性摩擦係数を別個に求めるという方法も
考えられる。あるいは、組み立て前に回転および直動機
構それぞれの粘性摩擦係数を求めるということも考えら
れる。しかしながら、直動機構の偏重心が及ぼす回転機
構への影響、あるいは案内機構に対する直動機構の摺動
状態は、予圧条件によって変化させられるようになって
いるため、粘性摩擦係数を回転・直動機構が共に組み立
てられる以前に、あるいは組立後に再度分解して同定す
ることは無意味である。
[発明が解決しようとする課題] 上述のように、従来技術では、本発明が対象とするよ
うな回転・直動機構の粘性摩擦係数を分離した状態で精
度よくしかも、煩雑なアルゴリズムの組み込みなしで求
めることは困難であった。
本発明の目的は、回転・直動機構の粘性摩擦係数を簡
便かつ精度よく同定する方法を提示することである。し
かも、回転・直動機構が共に組み込まれた完成品として
の位置決め装置の姿のままで同定できることが特徴とな
っている。
[課題を解決するための手段および作用] 本発明は上述の課題を解決するためになされたもので
あり、モータなどの回転運動をボールネジとナットで構
成されるような変換器を介して直線運動に変換する回転
・直動機構の粘性摩擦係数を同定する方法である。しか
も、粘性摩擦係数は先ず直動機構側について単独で求め
られ、次にモータ軸に換算される。最後に、予め求めら
れている回転および直動機構全体としてのモータ軸に換
算した粘性摩擦係数から直動機構側の寄与分である前記
モータ軸に換算された直動機構側の粘性摩擦係数を差し
引くことによって回転機構側単独の粘性摩擦係数を算出
する。すなわち、回転機構側と直動機構側それぞれの粘
性摩擦係数を分離して導出する。
以下詳細に、粘性摩擦係数の同定方法を説明する。
第2図に示した位置決め装置を第3図のような1自由
度モデルで表現する。この機構の運動方程式は図示の記
号を使って次式となる。
(Jm+Jc+Jb+Dm +K(Pθ−x)P =τ−Tfc W+Dw+K(x−Pθ)=−Ffc ……(3) 但し、Jmはモータのイナーシャ、Jcはカップリングの
イナーシャ、Jbはボールネジのイナーシャ、Dmは回転機
構の粘性摩擦係数、Kは回転と直動機構の間に介在する
バネ定数である。Pは回転運動から直線運動への変換定
数であり、ボールネジのピッチをLとしてL/2πとな
る。さらに、Wは直動機構の重量、Dwは直動機構の粘性
摩擦係数、θは回転角度、xは直動機構の変位、τ
は入力トルク、Tfcは回転機構に対する静止摩擦トル
ク、Ffcは直動機構に対する静止摩擦力である。(・)
は時間微分を表わす。
上式の各変換θ、x、TfcおよびFfcをラプラス変換
してそれぞれθ(s)=£(θ)、x(s)=£
(x)、Tfc(s)=£(Tfc)およびFfc(s)=£(F
fc)とおき、上式を整理すると次式となる。
但し、 D(s)=(Js2+Dms+KP2)(Ws2+Dms+K)−K2P
2 今、Tfc0,Ffc=0とおいて、アクチュエータであるモ
ータ側のセンサすなわちタコジェネレータ出力から、バ
ネ要素を介してアクチュエータとは反対側に位置する搬
送物体速度までの伝達関数を求めると 但し、 A=KPUP/KTG=(K/W)1/2,ζ=Dw/(KW)1/2 となる。ここで、kTGはモータのタコジェネレータ感
度、KPUは搬送物体側速度検出器感度、ωは固有角周
波数、ζはダンピング係数、Aは利得である。したがっ
て、上式で表現される2次系の周波数特性を周波数特性
分析器、例えばサーボアナライザを使って実測し、共振
値MPと共振周波数fpを実測し、かつ搬送物体の重量Wが
既知ならば、直動機構の固有角周波数ωとダンピング
係数ζおよび直動機構の直接的物理パラメータであるバ
ネ定数Kと粘性摩擦係数DWは以下の手順によって算出可
能になる。
共振値MPの実測値より 共振周波数fpの実測値と上記算出のζより fn=fp/(1−2ζ1/2 fnとWより K=4π2fn 2W fn、ζおよびWより DW=4πfnζW 上記算出手順から分かるように、本同定法の特徴は以
下のとおりである。
(a)バネKと粘性摩擦係数DWの導出においては、タコ
ジェネレータ感度kTGおよび搬送物体の速度検出器感度k
PUの校正値が不必要となっている。すなわち、周波数特
性の測定に必要な分解能さえ備えた検出器ならばこれら
の値は未知でかまわない。
(b)第2図の位置決め装置に対して、速度制御系ある
いは位置制御系が構成されていても(5)式の構造は不
変となるため、本同定法に何等の変更もない。換言すれ
ば、速度制御系あるいは位置制御系を構成したときの制
御系列得が本同定法に及ぼす影響は皆無である。
さて、上記手順によって搬送物体側の物理パラメータ
である粘性摩擦係数DWは求めることができた。従って、
(2)式によって、回転軸でみた等価粘性摩擦係数Deff
が求められていれば、 Dm=Deff−P2DW ……(6) として回転機構のみの粘性摩擦係数Dmが位置決め装置を
分解することなしに求められる。
なお、回転軸からみた等価粘性摩擦係数Deffは、前記
(2)式によって求める以外に、周波数応答を測定して
も算出することができる。この方法を以下に示す。先
ず、位置制御状態にある位置決め装置に対して、拘束位
置の周りで正弦波加振する。そして、電流指令端子Vi
らタコジェネレータ出力kTGまでの周波数応答を測定す
る。第2図の位置決め装置のモデルを参照して電流指令
Viからタコジェネレータ5の出力まで周波数応答は次式
となる。
但し、Jeffは回転軸でみた等価イナーシャ、Deffは回
転軸でみた等価粘性摩擦係数、Kiは電流アンプゲイン、
Ktはトルク定数である。等価イナーシャJeffは既知であ
るから、周波数特性の折れ点周波数fc[Hz]を読みとれ
ば、 Deff=2π Jefffc ……(8) から等価粘性摩擦係数Deffが求められる。次に、(6)
式を使用することによって回転機構側の粘性摩擦係数Dm
は容易に算出される。
[実施例] 第1図は、本発明の一実施例に係る位置決め装置の粘
性摩擦係数同定法の流れ図を示す。この流れ図に従って
第2図の位置決め機構に対する物理パラメータの同定法
を説明する。
第4図は、(5)式の周波数特性の実測結果である。
ただし、直動機構の案内面への押し付け力をパラメータ
にとっている。すなわち、摺動面への押し付け予圧をパ
ラメータにして、タコジェネレータ出力から搬送物体側
の速度までの周波数特性を測定した結果である。当然、
予圧を大きくすると摺動面間の油膜が薄くなって個体接
触が頻繁になるため、位置決め物体に対するダンピング
は大きくなる筈である。第4図の実験結果は、予圧を大
きくするにしたがって共振値が徐々に下がってきて、ダ
ンピングが増加していることを示している。同図から共
振値MPと共振周波数fpを読み取り、搬送物体の質量は既
知であるとすれば、物理パラメータは、上述した方法に
したがって下記の表1のように算出される。
なお、周波数特性の測定においては、位置決め装置を
速度制御系の状態にしておき、速度指令端子へ正弦波を
入力して、これを低周波数から高周波数まで掃引させ
て、タコジェネレータ出力から直動機構側の速度までの
周波数特性を測定している。また、高感度のサーボ式加
速度計を搬送物体に装着し、得られる加速度出力を積分
して速度信号に変換することによって、直動機構側の速
度を得ている。
また、本例では回転機構側の状態検出器としてタコジ
ェネレータを選んだが、パルスジェネレータの出力をF/
V変換した信号でも構わないことは言うまでもない。さ
らに、搬送物体側の状態検出器として、本例では加速度
検出器を使ったが、高精度の位置決め装置において一般
的に使用されているレーザ干渉計の出力信号を用いても
よい。
さて、直動機構側の粘性摩擦係数DWは表1のように求
められた。次に、回転機構側の粘性摩擦係数Dmを求め
る。表2では(7)式に基づいて等価粘性摩擦係数Deff
を求め、そこから先に求めた直動機構側の粘性摩擦係数
DWを回転機構側へ変換した量だけ差し引くことによって
回転機構側の粘性摩擦係数Dmが求められている。
[他の実施例] 上述の実施例では、回転機構側のタコジェネレータ出
力に対する直動機構側の速度の周波数応答を測定し、得
られる2次ローパスフィルタの特性値である共振値MP
共振周波数fpを読み取り、搬送物体の重量を既知量とし
て、粘性摩擦係数を導出した。しかしながら、回転駆動
手段側の状態検出器はタコジェネレータ出力に代わって
パルスジェネレータの出力でもかまわない。さらには、
直動機構側すなわち搬送物体側の状態検出器は、搬送物
体に装着した加速度検出器そのものの出力信号でもよい
し、搬送物体の移動量を非接触で計測するレーザ干渉計
の出力信号でもよい。
[発明の効果] 以上述べてきたように、本発明によれば、回転・直動
機構からなる位置決め装置の粘性摩擦係数を回転および
直動側それぞれについて組立状態のままで求められる効
果がある。したがって、回転機構と直動機構とにわざわ
ざ分解した状態で粘性摩擦係数を求めるというような煩
雑な作業は不要である。また、本発明の同定法は制御工
学が教えるところのオブザーバ理論などを使った煩雑な
アルゴリズムではないので、物理的直感が明白であると
いう特徴がある。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明の一実施例に係る位置決め装置の粘性
摩擦係数同定法を示す流れ図、 第2図は、位置決め装置の一例を示す図、 第3図は、位置決め装置の1自由度モデル、 第4図は、予圧をパラメータにとったときの、タコジェ
ネレータ出力から直動機構側の速度までの周波数特性、 である。 1:モータ、2:カップリング、3:ボールネジ、4:搬送物
体、5:タコジェネレータ。

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】回転機構の回転運動を変換器を介して直動
    機構の直線運動に変換して搬送物体を直動方向に位置決
    めする位置決め装置において、前記回転機構側の状態に
    対する前記搬送物体側の状態の周波数特性を測定して共
    振周波数fpと共振値Mpを読み取り、前記共振周波数fp
    前記共振値Mpを用いてダンピング係数ζと固有周波数fn
    を算出し、前記ダンピング係数ζと前記固有周波数fn
    前記搬送物体を含む前記直動機構側の重量Wを用いて前
    記直動機構側の粘性摩擦係数DWを、 DW=4πfnζW として算出し、前記直動機構側の粘性摩擦係数DWが求め
    られた後、前記回転駆動手段側から見た等価粘性摩擦係
    数Deffと前記変換器の回転運動から直線運動への変換定
    数Pを用いて前記回転機構側の粘性摩擦係数Dmを、 Dm=Deff−P2DW として算出することにより、前記直動機構側の粘性摩擦
    係数DWと前記回転機構側の粘性摩擦係数Dmを分離して導
    出することを特徴とする位置決め装置の粘性摩擦係数同
    定方法。
  2. 【請求項2】前記ダンピング係数ζを、 として算出し、前記固有周波数fnを、 fn=fp/(1−2ζ1/2 として算出することを特徴とする請求項1に記載の位置
    決め装置の粘性摩擦係数同定方法。
  3. 【請求項3】前記変換器がピッチLのボールネジを有す
    る時、前記変換定数Pを、 P=L/2π として算出することを特徴とする請求項2に記載の位置
    決め装置の粘性摩擦係数同定方法。
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JP6325504B2 (ja) * 2015-10-28 2018-05-16 ファナック株式会社 学習制御器の自動調整を行う機能を有するサーボ制御装置
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