JP2748824B2 - 白銅/ステンレス鋼クラッドの製造方法 - Google Patents

白銅/ステンレス鋼クラッドの製造方法

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JP2748824B2 JP5174660A JP17466093A JP2748824B2 JP 2748824 B2 JP2748824 B2 JP 2748824B2 JP 5174660 A JP5174660 A JP 5174660A JP 17466093 A JP17466093 A JP 17466093A JP 2748824 B2 JP2748824 B2 JP 2748824B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、接合強度に優れる白
銅/ステンレス鋼クラッドの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】白銅/ステンレス鋼クラッドは、その耐
海水性が優れる点より海水淡水化プラント等で汎用され
ている。
【0003】このような白銅/ステンレス鋼クラッドの
製造方法としては、従来より爆着法と圧延法がある。そ
して、前者の爆着法は製造コストが高くかつ製造可能寸
法にも制限があるという問題があるのに対し、後者の圧
延法はそのような問題はないので、その点有利である。
【0004】しかし、この圧延法によるクラッドの製造
方法では、できる限り高温で圧延を行なった方が接合面
での組成変形が起こりやすくなり接合面が密着しやすく
なること、また原子の拡散速度が速くなり接合面に残る
未圧着ボイドが消失しやすくなること、更に異種金属同
士の相互拡散が起こりやすくなることから、十分な接合
強度を得るためにクラッド圧延前の組立スラブ加熱温度
を高くする必要がある。
【0005】例えば、合せ材に白銅、母材に炭素鋼ある
いは低合金鋼を用いた場合、または特開平5−2387
2号に示すように合せ材に青銅、母材に炭素鋼を用いた
場合等は、クラッド圧延前のスラブ加熱温度を白銅また
は青銅の融点に近い温度である1000℃前後に加熱し、連
続して圧延するものとなっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】一方、合せ材に白銅、
母材にステンレス鋼を用いた場合に、前記例と同様にク
ラッド圧延前にスラブ加熱温度を1000℃前後に加熱し連
続して圧延すると、その温度域では前記例と較べて白銅
とステンレス鋼の変形抵抗比が大きくなる。例えば図1
は9/1白銅とオーステナイト系ステンレス鋼の熱間変
形抵抗の温度依存性を示すが、1000℃前後以上の温度域
ではその変形抵抗比が2以上と大きくなる。このように
合わせ材と母材との変形抵抗比が大きくなると、圧延の
際にステンレス鋼の伸びに対して白銅の伸びが著しく上
回る異常伸びが発生して接合面の滑りが生じ、ひいては
その接合が困難になるという問題がある。
【0007】このような問題に対しては、圧延中の両素
材のズレを防止すべく組立スラブの形状を図2(a)に示
すようなセミサンドイッチ型あるいは同図(b)に示すよ
うなサンドイッチ型とし四周を拘束溶接する方法がある
が、この場合でも白銅の異常伸びを抑えることができ
ず、例えば図3に示すように溶接部が破壊し、圧延を中
断せざるを得なくなる場合が多い(図中、(a)はセミサン
ドイッチ型、(b)はサンドイッチ型の場合)。四周拘束
溶接部の破壊を防ぐには、これらの組立スラブの外側を
更に炭素鋼等の犠牲材で覆って、組立スラブの構造を強
固にして製造する方法があるが、それでは製造コストが
著しく高くなるという問題がある。
【0008】この発明は従来技術の以上のような問題に
鑑み創案されたもので、優れた接合強度を有する白銅/
ステンレス鋼クラッドを低コストで製造することのでき
る製造方法を提供しようとするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】上述のように、白銅とス
テンレス鋼を重ね合わせたスラブを、接合面の塑性変形
および拡散が起こりやすいように白銅の融点近くの1000
℃前後まで加熱し圧延すると、白銅と炭素鋼あるいは低
合金鋼を組み合わせたときよりも変形抵抗比が大きくな
るため、接合面で滑りが生じ接合が困難になる。このた
め、本発明者らは、白銅とステンレス鋼の変形抵抗比が
低温になるほど小さくなる傾向があることに着目し、ク
ラッド圧延前のスラブ加熱温度を低くして試行を繰り返
したが、単純なスラブ加熱温度の低下は、やはり接合面
の塑性変形および原子の拡散を起こりにくくし、接合が
阻害される傾向がみられた。
【0010】そこで、更に本発明者らは、スラブ加熱温
度を単に低下するのみならず、圧延条件との種々の組み
合わせで試行を繰り返した結果、後述する実施例の試験
よりも明らかなように、スラブ加熱温度を変形抵抗比が
それほど大きくならない温度域に制御した後、塑性変形
および原子の拡散が起こりやすい圧延の初期段階の温度
域で強圧下による圧延を施すことで健全な接合強度が得
られることを知見した。
【0011】本発明に係る白銅/ステンレス鋼クラッド
の製造方法は、本発明者らのこのような知見に基づき創
案されたもので、白銅とステンレス鋼のスラブを熱間で
圧延して白銅/ステンレス鋼クラッドを製造する方法に
おいて、前記スラブを850〜950℃に加熱した後、少なく
とも1パスは、800℃以上の温度でかつ圧下率が10%以
上の条件で圧延することをその基本的特徴とするもので
ある。
【0012】次に、本発明における諸条件の限定理由を
説明する。
【0013】まず、スラブ加熱温度であるが、これは後
述する圧延条件による接合性向上との兼ね合いで決定さ
れる。すなわち、スラブ加熱温度を高温域に設定すると
前掲図1に示すように白銅とステンレス鋼の変形抵抗比
が大きくなりすぎ圧延が困難となる一方(合わせ材とし
て7/3白銅、母材としてフェライト系,二相系,マル
テンサイト系ステンレス鋼を用いた場合も同様であ
る)、低温過ぎても接合性が著しく低下するのである
が、比較的低温域でもその後の適正強圧下により接合性
の向上が得られるからである。このような見地からスラ
ブの加熱温度は決定されることになるが、具体的には95
0℃を超えるとスラブの破壊がみられるため950℃をその
上限とし、850℃未満とすると変形抵抗比は小さくなる
ものの、その後いかに大きな圧下を加えても接合性の向
上が図れないことから、850℃を下限とする。
【0014】次に、圧延条件を説明する。スラブ加熱温
度が950℃以下になった場合では通常の圧延では十分な
接合強度が得られないので、塑性変形および原子の拡散
が起こりやすい圧延の初期段階である圧延初期に強圧下
を行なう。そして、白銅は温度の低下とともに変形抵抗
が急激に増加し、800℃未満の圧下では接合に対してほ
とんど寄与しなくなるので、少なくとも800℃以上で圧
延を行うものとする。また、800℃に温度が低下するま
でに1パス当たりの圧下率を10%以上に設定し総圧下量
を大きくとらなければ、何度圧延を行なっても後述する
実施例に示すように高い接合強度は得られない。したが
って、少なくとも1パスは、800℃以上の温度でかつ圧
下率が10%以上の条件で圧延するものとする。
【0015】ところで、本発明においては母材にステン
レス鋼を用いているが、その鋼種によっては850〜950℃
の加熱後圧延のプロセスだけでは十分な耐食性が得られ
ない場合がある。これは圧延温度域もしくは徐冷中の温
度域がステンレス鋼の鋭敏化しやすい範囲となるからで
あり、特に合金元素を多量に含有するステンレス鋼ほど
鋭敏化を起こしやすくなることになる。そこで、合金元
素を多量に含有するステンレス鋼を母材として用いる場
合等には、耐食性の改善を得るために上記熱間圧延後に
固溶化熱処理を行なうものとする。
【0016】
【実施例】以下、本発明の具体的実施例につき説明す
る。
【0017】まず、合せ材に白銅、母材にオーステナイ
ト系ステンレス鋼を用い、本発明の条件を満たす方法
と、条件を満たさない方法とでそれぞれクラッドを製造
し、その接合強度を比較した。供試クラッドの製造条
件、圧延状況および接合強度を下記表1に示す。なお、
接合強度はJIS G 0601の剪断強度試験により評価した。
【0018】
【表1】
【0019】表中、A〜FおよびN〜Pは本発明法によ
り製造したクラッドであり、そのうちA〜Fは母材に9
/1白銅を用いた例、N〜Pは母材に7/3白銅を用い
た例である。これらはいずれも、圧延中組立スラブの破
壊が起こらず、無事圧延を完了した。剪断強度も鋼およ
び鋼合金クラッド鋼に関するJIS G 3604に定められた98
MPaをはるかに上回る200MPa程度の良好な値を示した。
G〜Lは本発明のいずれかの条件を満たさない方法で製
造したクラッドである。G〜Iはスラブ加熱温度が高か
ったため、圧延中に組立スラブの破壊が起こり、圧延途
中で製造を中止せざるを得なかった。Jはスラブ加熱温
度が低かったため、接合が不十分であり、剪断試験片加
工中に接合界面で剥離が発生し、接合強度の評価ができ
なかった。K、Lは800℃以上の温度での圧下が不十分
であったため、Kの剪断強度は本発明鋼に較べ低く、L
はJと同様に剪断試験片加工中に合せ材剥離が発生し
た。
【0020】次に、表1中の供試クラッドC、E、F
を、母材の耐食性改善のため1050℃で固溶化熱処理を施
し、その接合強度および耐孔食性を調べた。ここで、処
理温度を1050℃としたのは、9/1白銅の融点が約1100
℃であることに基づく。その結果を下記表2に示す。耐
孔食性はJIS G 0578のステンレス鋼の塩化第二鉄腐食試
験法により評価した。
【0021】
【表2】
【0022】表2より明らかなように、固溶化熱処理に
より耐孔食性が改善されたとともに、固溶化熱処理前と
同様に剪断強度が200MPa程度と良好な接合強度が得られ
た。
【0023】
【発明の効果】以上説明したように、本発明に係る白銅
/ステンレス鋼クラッドの製造方法によれば、特別な組
立スラブによる熱間圧延法や爆着法をとることなく接合
強度が良好なクラッドが得ることができるとともに、そ
の製造コストも低廉になるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】9/1白銅と代表的なオーステナイト系ステン
レス鋼の熱間変形抵抗の温度依存性を示したグラフであ
る。
【図2】組立スラブの模式図であり、(a)はセミサンド
イッチ型、(b)はサンドイッチ型をそれぞれ示す。
【図3】図2の組立スラブが圧延中に破壊した際の模式
図であり、(a)はセミサンドイッチ型、(b)はサンドイッ
チ型をそれぞれ示す。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 白銅とステンレス鋼のスラブを熱間で圧
    延して白銅/ステンレス鋼クラッドを製造する方法にお
    いて、前記スラブを850〜950℃に加熱した後、少なくと
    も1パスは、800℃以上の温度でかつ圧下率が10%以上
    の条件で圧延することを特徴とする白銅/ステンレス鋼
    クラッドの製造方法。
  2. 【請求項2】 請求項1の白銅/ステンレス鋼クラッド
    の製造方法において、前記熱間圧延後に固溶化熱処理を
    行なうことを特徴とする請求項1の白銅/ステンレス鋼
    クラッドの製造方法。
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