JP2742632B2 - ディスクブレーキロータ - Google Patents

ディスクブレーキロータ

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JP2742632B2
JP2742632B2 JP3909791A JP3909791A JP2742632B2 JP 2742632 B2 JP2742632 B2 JP 2742632B2 JP 3909791 A JP3909791 A JP 3909791A JP 3909791 A JP3909791 A JP 3909791A JP 2742632 B2 JP2742632 B2 JP 2742632B2
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健二 下田
高浩 佐藤
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Aisin Takaoka Co Ltd
Toyota Motor Corp
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Aisin Takaoka Co Ltd
Toyota Motor Corp
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ディスクブレーキに使
用されるディスクブレーキロータ(以下、ディスクロー
タという。)の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】ディスクブレーキにおいては、車両の車
輪と一体にディスクロータが回転し、車両を制動させる
際、ディスクブレーキキャリパによりディスクブレーキ
パッドが押し付けられ、ディスクロータとディスクブレ
ーキパッドのライニング部との摩擦により車両が制動さ
れる。かかるディスクロータは、(1)大きな抵抗力を
得るため、ディスクブレーキパッドのライニング部との
高い摩擦係数が要求特性とされ、また(2)ライニング
部の有機成分が高温下で溶融してディスクロータの表面
に膜を作り、この膜により上記摩擦係数を低下させるこ
とを防止するため、冷却性も要求特性とされ、さらに
(3)耐久性向上のため、耐蝕性も要求特性とされる。
【0003】従来、かかるディスクロータとしては、例
えば特開昭63−111331号公報に開示されている
ように、ディスクブレーキパッドと当接する溶射層が形
成されたものが知られている。この溶射層は、軟質であ
るが熱伝導性に優れる銅系材料及び硬質のステンレス系
材料を所定の割合で溶射したものである。この溶射層
は、アーク溶射ガンを用いて2種類の材料を酸化雰囲気
下かつ一律の条件で溶射する方法か、粒子の飛行速度が
大きいプラズマ溶射により2種類の材料を酸化雰囲気下
で溶射する方法により主に形成されていた。このディス
クロータでは、溶射層において、軟質の銅系材料中に硬
質のステンレス系材料が複合化されることにより好適な
摩擦係数を維持しつつ、熱伝導性に優れる銅系材料によ
り好適な冷却性を確保し、かつ銅系材料の粒子とステン
レス系材料の粒子との密着性により好適な耐蝕性を確保
している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記従来のデ
ィスクロータでは、上記方法により、図5に示すよう
に、溶射層中で銅系材料の粒子91及びステンレス系材
料の粒子92をそれぞれある程度偏平状態で存在させな
いと、溶射層がポーラスになり、両粒子の密着性が阻害
されて耐蝕性を充分に確保できないことから、摩擦係数
の向上が制約されていた。
【0005】また、上記従来のディスクロータでは、上
記方法により、酸化雰囲気下で溶射層が形成されていた
ため、ステンレス系材料の脱炭・酸化を生じて所望の硬
度のステンレス系材料の粒子が溶射層中に存在しにく
い。また、この場合、溶射層中で両粒子が酸化膜を介し
て存在するため、熱応力によって脆い酸化物でヘアーク
ラックを伝播しやすいとともに、ライニング部との摩擦
時にステンレス系材料の粒子が脱落して表面に条痕摩耗
を生じやすい。このため、これらの点でも耐蝕性が阻害
されていた。
【0006】本発明は、上記従来の制約に鑑みてなされ
たものであって、冷却性を確保しつつ、摩擦係数及び耐
蝕性の向上したディスクロータを提供することを目的と
する。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明のディスクロータ
は、ディスクブレーキパッドと当接する溶射層が形成さ
れたディスクロータにおいて、前記溶射層は、銅系材料
を含むマトリックスと、該マトリックス中に酸化膜が介
在されずに分散され、平均粒径100μm以下かつ偏平
率70%以下であって、該マトリックスより硬質の塊状
粒子とからなることを特徴とするものである。
【0008】溶射層は、マトリックスと、このマトリッ
クス中に酸化膜が介在されずに分散された塊状粒子とか
らなる。マトリックスは銅系材料を含むものである。こ
のマトリックス中にはステンレス系材料を含ませること
もできる。銅系材料とステンレス系材料とでマトリック
スを構成する場合、銅系材料の粒子及びステンレス系材
料の粒子も酸化膜が介在されていないことが好ましい。
この場合、不活性ガス雰囲気下で銅系材料の粒子及びス
テンレス系材料の粒子を溶射する方法を採用することが
できる。
【0009】塊状粒子は平均粒径100μm以下かつ偏
平率70%以下である。塊状粒子が平均粒径100μm
を超えれば、マトリックス中に占める塊状粒子の面積割
合が大きくなりすぎ、塊状粒子による研摩効果が充分に
発揮されず、摩擦係数の向上が充分でない。また、塊状
粒子が偏平率70%を超えれば、塊状粒子による研摩効
果が発揮されにくく、やはり摩擦係数の向上が充分でな
い。塊状粒子をこのように塊状でマトリックス中に分散
させるためには、溶射をアーク溶射ガンで行なう場合は
圧縮ガスの圧力を低め、粒子の飛行速度を下げることに
より、衝突エネルギーを小さくすればよい。また、塊状
粒子の粒径は、溶射をアーク溶射ガンで行なう場合、線
材の送り量で調整すればよい。すなわち、線材の送り量
を小さくするほど、塊状粒子の粒径を小さくすることが
できる。
【0010】また、塊状粒子はマトリックスより硬質の
ものである。マトリックス中にステンレス系材料を含む
場合には塊状粒子はステンレス系材料よりも硬質のもの
であることが好ましい。塊状粒子がマトリックスより硬
質のものでなければ、塊状粒子による研摩効果が発揮さ
れない。塊状粒子を酸化膜を介在させずにマトリックス
中に分散させるためには、不活性ガス雰囲気下で塊状粒
子を溶射する方法を採用することができる。マトリック
ス中にステンレス系材料を含む場合において、酸化膜を
介在させずにマトリックス中に塊状粒子を分散させるた
めには、一つのアーク溶射ガンにより所定割合の銅系材
料及びステンレス系材料でマトリックスを形成すると同
時に、別のアーク溶射ガンにより不活性ガス雰囲気下で
塊状粒子を溶射する方法を採用することができる。
【0011】
【作用】本発明のディスクロータの溶射層では、酸化膜
を介在させずに分散された塊状粒子が溶射前の所望の硬
度を溶射層中でも維持し、その塊状粒子が軟質の銅系材
料を含むマトリックス中で平均粒径100μm以下かつ
偏平率70%以下で分散されていることにより、塊状粒
子の研摩効果が発揮され、高い摩擦係数が得られる。マ
トリックス中にステンレス系材料を含む場合には、軟質
の銅系材料中に硬質のステンレス系材料が複合化された
マトリックスにより、ある程度好適な摩擦係数を維持
し、さらにこのマトリックス中に上記塊状粒子が分散さ
れていることにより、塊状粒子の研摩効果が発揮され、
より一層高い摩擦係数が得られる。
【0012】また、塊状粒子は、溶射層中で酸化膜を介
在させないので、熱応力によってヘアークラックを生じ
ることはなく、上記平均粒径及び偏平率の範囲であれ
ば、ライニング部との摩擦時に塊状粒子が脱落しにく
い。また、この塊状粒子は、酸化膜が介在されずにマト
リックス中に分散されるため濡れ性がよく、上記平均粒
径及び偏平率の範囲であれば、充分にマトリックスと密
着し、かえってマトリックス中で骨材として作用して機
械的強度を高める。このため、溶射層は好適な耐蝕性を
確保する。マトリックス中にステンレス系材料を含む場
合でも、銅系材料の粒子とステンレス系材料の粒子とが
マトリックス中に偏平状態で存在すれば、溶射層がポー
ラスとなることはなく両粒子は好適に密着し、ここで塊
状粒子も両者の密着性を阻害することなく、かえって機
械的強度を高めて、より一層好適な耐蝕性を確保する。
【0013】さらに、この溶射層では、熱伝導性に優れ
る銅系材料により従来と同様に好適な冷却性を確保して
いる。
【0014】
【実施例】以下、本発明を具体化した実施例のディスク
ロータにおける溶射層1、2、5、6を比較例のディス
クロータにおける溶射層3、4、7〜12とともに図面
を参照しつつ説明する。まず、図1に示すように、ディ
スクブレーキパッド(図示せず)と当接する被溶射面1
aをもつディスクロータ本体1を用意した。また、2つ
のアーク溶射ガン2、3を用意するとともに、銅系材料
としてCu線材4、ステンレス系材料としてSUS42
0J2線材5、塊状粒子材料としてSUS440C線材
6を用意した。なお、SUS440Cは、SUS420
J2よりもC量が多く、硬質である。すなわち、SUS
440Cは560Hv(100g)、SUS420J2
は430Hv(100g)である。
【0015】次いで、一方のアーク溶射ガン2にはCu
線材4及びSUS420J2線材5を装備し、他方のア
ーク溶射ガン3にはSUS440C線材6、6を装備し
た。そして、一方のアーク溶射ガン2により、圧縮空気
を用いた所定の条件で、被溶射面1aにCu線材4及び
SUS420J2線材5の溶射を行なうと同時に、他方
のアーク溶射ガン3により、Arガスを用いた所定の条
件で、被溶射面1aにSUS440線材6、6の溶射を
行なった。なお、アーク溶射ガン3の条件は、例えば、
塊状粒子が平均粒径100(μm)、偏平率70(%)
の場合、 電流:100A 電圧:30V Arガス圧縮圧力(一次):5kgf/cm2 Arガス圧縮圧力(二次):0kgf/cm2 である。こうして、溶射層M(1〜12)をもつディス
クロータを得た。
【0016】このとき、Cu線材4の粒子及びSUS4
20J2線材5の粒子における体積割合、各平均粒径及
び各偏平率(%)は、各線材4、5の送り量等で調節
し、以下の条件で一定とした。なお、偏平率は、各粒子
の断面において、長さ(長手方向)をa、厚さをbとし
た場合に、{(a−b)/a}×100で表した。ま
た、各平均粒径は偏平率が高いため表示不能である。
【0017】体積割合…Cu線材4の偏平粒子体積:S
US420J2線材5の偏平粒子体積=50:50 各偏平率…90%以上 他方、SUS440線材6の塊状粒子の体積割合は以下
の条件で一定とし、平均粒径(μm)及び偏平率(%)
を種々変化させた。なお、平均粒径は偏平率が高い場合
は表示不能である。
【0018】体積割合…Cu線材4の偏平粒子体積+S
US420J2線材5の偏平粒子体積:SUS440線
材6の塊状粒子体積=90:10 塊状粒子の平均粒径及び偏平率が異なる溶射層1〜12
について、100km/hから0km/hまで、60k
gf/cm2 の圧力でブレーキングした場合の摩擦係数
(μ)を求めた。結果を表1に示す。
【0019】
【表1】 なお、塊状粒子を存在させなかった溶射層の摩擦係数は
0.34であった。また、実施例のディスクロータに係
る溶射層5の表面の金属組織を図2に示し、断面の金属
組織を図3に示す。一方、比較例のディスクロータに係
る溶射層8の断面の金属組織を図4に示す。
【0020】SUS440C線材6の塊状粒子は、Ar
ガスを用いたアーク溶射ガン3によって溶射されるた
め、酸化膜が介在されずに溶射層中に分散され、溶射前
の硬度が維持される。また、表1より、溶射層1、2、
5、6が優れていることから、その塊状粒子がマトリッ
クス中に平均粒径100μm以下かつ偏平率70%以下
で存在すれば、従来よりも一層高い摩擦係数の溶射層が
得られることがわかる。このため、溶射層1、2、5、
6では、軟質のCu線材4の偏平粒子中に硬質のSUS
420J2線材5の偏平粒子が複合化されたマトリック
スにより、ある程度好適な摩擦係数を維持し、さらにこ
のマトリックス中に上記塊状粒子が分散されていること
により、塊状粒子の研摩効果が発揮され、より一層高い
摩擦係数が得られていることがわかる。
【0021】また、上記塊状粒子は、溶射層中で酸化膜
を介在させないので、熱応力によってヘアークラックを
生じることはなく、上記平均粒径及び偏平率の範囲であ
れば、ライニング部との摩擦時に塊状粒子が脱落しにく
い。また、この塊状粒子は、Cu線材4の偏平粒子とS
US420J2線材5の偏平粒子とがマトリックス中に
偏平状態で存在し、溶射層がポーラスとなることはなく
両粒子は好適に密着し、ここで塊状粒子が酸化膜を介在
させずにマトリックス中に分散されるため濡れ性がよ
く、上記平均粒径及び偏平率の範囲であれば、両者の密
着性を阻害することなく、かえってマトリックス中で骨
材として作用して機械的強度を高める。このため、溶射
層1、2、5、6では、より一層好適な耐蝕性が確保さ
れることがわかる。
【0022】さらに、この溶射層では、熱伝導性に優れ
る銅系材料により従来と同様に好適な冷却性を確保して
いる。
【0023】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明のディスク
ロータでは、銅系材料を含むマトリックス中に上記塊状
粒子が分散された溶射層をもつため、充分な冷却性を確
保しつつ、高い摩擦係数及び耐蝕性を発揮することがで
きる。したがって、このディスクロータを車両のディス
クブレーキに使用すれば、充分な冷却性を確保しつつ、
高い摩擦係数及び耐蝕性を発揮することができるため、
より大きな抵抗力で車両を制動することができるととも
に、より過酷な条件下の使用に耐えることができ、従来
よりもより一層高い安全性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例のディスクロータを得べく溶射中の状態
を示す断面図である。
【図2】実施例のディスクロータに係る溶射層5の表面
の金属組織を示す50倍の顕微鏡写真である。
【図3】実施例のディスクロータに係る溶射層5の断面
の金属組織を示す200倍の顕微鏡写真である。
【図4】比較例のディスクロータに係る溶射層8の断面
の金属組織を示す200倍の顕微鏡写真である。
【図5】従来のディスクロータに係る溶射層の断面図で
ある。
【符号の説明】
1…ディスクロータ本体 1a…被溶
射面 2、3…アーク溶射ガン 4…Cu線
材(銅系材料) 5…SUS420J2線材(ステンレス系材料) 6…SUS440C線材(塊状粒子材料) M…溶射層
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平1−116326(JP,A) 特開 昭51−32437(JP,A) 特公 昭45−245(JP,B1)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ディスクブレーキパッドと当接する溶射層
    が形成されたディスクブレーキロータにおいて、前記溶
    射層は、銅系材料を含むマトリックスと、該マトリック
    ス中に酸化膜が介在されずに分散され、平均粒径100
    μm以下かつ偏平率70%以下であって、該マトリック
    スより硬質の塊状粒子とからなることを特徴とするディ
    スクブレーキロータ。
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