JP2742265B2 - 磁気記録媒体およびその製造法ならびにその潤滑剤 - Google Patents

磁気記録媒体およびその製造法ならびにその潤滑剤

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JP2742265B2 JP17715688A JP17715688A JP2742265B2 JP 2742265 B2 JP2742265 B2 JP 2742265B2 JP 17715688 A JP17715688 A JP 17715688A JP 17715688 A JP17715688 A JP 17715688A JP 2742265 B2 JP2742265 B2 JP 2742265B2
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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は,磁気ディスク,磁気テープ,磁気カード,
磁気ドラムなどの磁気記録媒体に関し,特に含フッ素イ
ソシアネート重合体よりなる潤滑膜を設けた磁気記録媒
体およびその製造方法,ならびに潤滑膜の原材料である
カルボニルアジド基、を有する含フッ素重合体よりなる
潤滑剤に関する。
〔従来の技術〕
通常,磁気記録媒体の表面は,記録再生時に磁気記録
ヘッドなどにより摩擦される。この摩擦による磁気記録
媒体の性能低下を防止するために,磁気記録媒体の表面
に潤滑膜を形成させる方法が一般に知られている。
この技術分野において,ペルフルオロポリエーテルな
どの含フッ素化合物を潤滑膜材料として使用すること
は,公知であり,例えばペルフルオロポリエーテルの末
端にイソシアノ基を導入した化合物が米国特許第381087
4号において開示されている。また,磁気記録媒体の潤
滑剤として含フッ素イソシアネートを用いること(特開
昭62−14553号公報),およびイソシアネートと多価ア
ルコールより生成する含フッ素ポリウレタンを用いるこ
と(特開昭62−187798号公報)などが提案されている。
〔発明が解決しようとする課題〕
上述した従来技術においては,含フッ素イソシアネー
トを磁気記録媒体の潤滑膜を適用する際の製造プロセス
の安定性については全く配慮されていなかった。すなわ
ち,含フッ素イソシアネートはポットライフが短く,磁
気記録媒体の潤滑剤として含フッ素イソシアネートの潤
滑膜を形成させる場合に,ポットライフの切れた含フッ
素イソシアネートを用いると潤滑剤の固型物の付着によ
る潤滑膜の欠陥発生などの問題があった。
本発明の目的は,上記従来技術における問題点を解消
し,潤滑膜としての欠陥の発生が少なく,製造プロセス
の安定性に優れた磁気記録媒体およびその製造方法なら
びに磁気記録媒体の潤滑膜を形成する原材料である潤滑
剤を提供することにある。
〔課題を解決するための手段〕
上記本発明の目的は,カルボニルアジド基を有する含
フッ素重合体を潤滑剤として用い,磁気記録媒体面へ付
着した後,加熱処理によりイソシアノ基を再生し,引き
続き重合させて,含フッ素イソシアネート重合体よりな
る潤滑膜を形成することにより,達成される。
含フッ素イソシアネートを磁気記録媒体の潤滑剤とし
て用いる時に,潤滑剤のポットライフが短いばかりでな
く,潤滑膜を形成させる場合に欠陥の発生などの問題が
あった。この問題点を解決するべく鋭意研究を行った結
果,その原因は空気中の水分によって含フッ素イソシア
ネートが加水分解あるいは重合を起こすためであること
を知った。
そこで本発明者は,加水分解や重合を防ぐために,カ
ルボニルアジド基、を有する含フッ素重合体を磁気記録
媒体の表面上に付着させた後,上記媒体上で,含フッ素
重合体のカルボニルアジド基、をを加熱分解することに
よってイソシアノ基を生成させ,引き続き重合させるこ
とにより,欠陥の発生の少ない均質の含フッ素イソシア
ネート重合体からなる潤滑膜が形成できることを見い出
した。
本発明のカルボニルアジド基、を有する含フッ素重合
体を磁気記録媒体の潤滑剤として用いると,潤滑剤のポ
ットライフが長くなり形成した潤滑膜の欠陥の発生が低
減するが,さらに磁気記録媒体の摺動特性が改善される
効果もあることが分かった。摺動特性が改善されるのは
含フッ素イソシアネート重合体の架橋密度が向上するた
めであるものと思われる。
本発明は,基体上に,直接もしくは下地層を介して形
成された磁性膜,または該磁性膜上に保護膜を有する磁
気記録媒体において,上記磁性膜または保護膜上に,カ
ルボニルアジド基、を有する含フッ素重合体よりなる潤
滑剤を付着した後,加熱処理して,上記磁性膜または保
護膜上に含フッ素イソシアネート重合体よりなる潤滑膜
を形成したものである。
本発明は,基体上に,直接もしくは下地層を介して形
成された磁性膜,または該磁性膜上に保護膜を有する磁
気記録媒体を製造する方法において,上記磁性膜もしく
は保護膜上に,フルオロポリエーテル鎖またはアルキル
鎖を基本骨格とし,カルボニルアジド基、を少なくとも
1つ有する含フッ素重合体よりなる潤滑剤を付着した
後,例えば100〜200℃の温度に加熱処理して,上記含フ
ッ素重合体にイソシアノ基を再生させ,引き続き重合さ
せることにより,上記磁性膜もしくは保護膜上に,含フ
ッ素イソシアネート重合体よりなる潤滑膜を形成させる
方法である。
そして,本発明の潤滑膜を形成するための原材料であ
る潤滑剤は, 一般式 Rf−CON3 ……(I) もしくは N3OC−Rf′−CON3 ……(II) (式中,Rf−,−Rf′−は,ペルフルオロポリエーテル
基,ペルフルオロアルキル基のうちより選ばれる含フッ
素炭素基を表す。) で示されるカルボニルアジド基、を有する含フッ素重
合体よりなるものであって,上記の一般式(I)または
(II)で示されるカルボニルアジド基、を有する含フッ
素重合体を構成するRf−,−Rf′−が, −〔(CF2O)(CF2CF2O)〕−, −〔(CF2CF2CF2O)〕−, (式中,p,q,r,sは3〜100の整数を表す。) のうちから選ばれる含フッ素炭素基を有するものである
ことが望ましい。
〔作用〕
本発明の磁気記録媒体の潤滑膜を形成する潤滑剤は,
カルボニルアジド基、を有する含フッ素重合体であるの
で,媒体面への付着時には水分に対して安定であり,そ
の後,加熱処理により窒素が解離されてイソシアノ基を
生成し,生成した含フッ素イソシアネートは加水分解と
重合を起こして所望する含フッ素イソシアネート重合体
よりなる潤滑膜となる。
本発明の情報記録媒体の製造方法において,潤滑剤と
して使用されるカルボニルアジド基、を有する含フッ素
重合体は,フルオロポリエーテル鎖あるいはアルキル鎖
を基本構造とし,カルボニルアジド基、を少なくとも1
つ以上有する化合物のなかから選ばれる。
上記フルオロポリエーテル鎖あるいはフルオロアルキ
ル鎖は,直鎖状のものばかりでなく,分岐したものでも
かまわない。上記カルボニルアジド基、を有する含フッ
素重合体としては,例えば N3OC〔(CF2O)(CF2CF2O)m〕CON3, などが挙げられる。
上記カルボニルアジド基を有する含フッ素重合体を磁
気記録媒体に適用する際には,例えば第3図の製造工程
図に示すごとく,磁気記録媒体面〔第3図(a)〕に,
直接あるいは,溶液の状態にして,スプレワイプ法,デ
ィップ法,スピンコート法などにより付着される〔第3
図(b)〕。
そして,媒体面に付着された含フッ素重合体は,加熱
によりイソシアノ基を生成し,媒体面上で重合し〔第3
図(c)〕,含フッ素イソシアネート重合体よりなる潤
滑膜が形成される〔第3図(d)〕。
上記のイソシアノ基の生成および重合に要する温度は
含フッ素重合体の種類によって異なるが,低温では反応
が遅く,高温では媒体の劣化が起こりやすいので,一般
に100〜200℃の温度範囲であることが好ましい。
なお,本発明においては,情報記録媒体面上で含フッ
素カルボニルアジドを,含フッ素イソシアネートに変換
し,重合させることが重要なポイントであって,使用す
る重合体の主鎖構造または分子量などの異なる化合物を
使用してもかまわない。
〔実施例〕
以下に,本発明の一実施例を挙げ,さらに詳細に説明
する。
まず,カルボニルアジド基、を有する含フッ素重合体
の合成を,実施例1および2に示す。
(実施例1) 次の式(1)で示されるペルフルオロポリエーテル−
α,ω−ジ酸ジメチルエステル(平均分子量2000)20g
の溶液に, CH3O2C〔(CF2O)(CF2CF2O)〕CO2CH3 ……(1) ヒドラジン(1水和物)1.5gを徐々に滴下し,室温で4
時間撹拌して反応させた。
反応終了後,未反応のヒドラジンを減圧留去し,次の
式(2)で示される化合物を得た。
H2NNHOC〔(CF2O)(CF2CF2O)〕CONHNH2 ……(2) 式(2)で示される化合物20gに亜硝酸ナトリウム1.8
gを加えた。上記混合物を0〜5℃に氷冷し,5%塩酸50m
lを徐々に滴下した。滴下終了後,さらに氷冷を続け,6
時間撹拌した。上記混合物を氷冷し,1,1,2−トリクロロ
トリフルオロエタン(以下フレオンと略称)溶液とした
後,無水硫酸マグネシウムで乾燥し,溶媒を留去して次
の式(3)で示される化合物を得た。
N3OC〔(CF2O)(CF2CF2O)〕CON3 ……(3) 上記式(3)で示される化合物の赤外スペクトルで
は,2200cm-1にアジド基の吸収が観測された。
(実施例2) 次の式(4)で示されるω−ポリヘキサフルオロプロ
ピレンオキシド酸メチルエステル(平均分子量2500)25
gの溶液に, ヒドラジン(1水和物)1gを滴下し,室温で2時間撹拌
し反応させた。反応終了後,未反応のヒドラジンを減圧
留去し,次の式(5)で示される化合物を得た。
式(5)で示される化合物25gに,亜硝酸ナトリウム1
gを加えた。上記混合物を0〜5℃に氷冷し,5%塩酸50m
lを徐々に滴下した。滴下終了後,さらに氷冷を続け6
時間撹拌した。
上記混合物を水洗し,フレオン溶液とした後,無水硫
酸マグネシウムで乾燥し,溶媒を留去して次の式(6)
で示される化合物を得た。
上記の式(6)で示される化合物の赤外スペクトルで
は,2200cm-1にアジド基の吸収が観測された。
次に比較例として用いた含フッ素イソシアネートの合
成について,比較例1,比較例2に示す。
(比較例1) 実施例1で合成した式(3)の化合物10gを乾燥窒素
雰囲気下で90℃の温度にて約1時間加熱し,次の式
(7)で示される含フッ素イソシアネートを得た。
ONC〔(CF2O)(CF2CF2O)〕NCO ……(7) 上記の式(7)で示される化合物の赤外スペクトルで
は,2300cm-1にイソシアノ基の吸収が観測された。
(比較例2) 実施例2で合成した式(6)で示される化合物10gを
乾燥窒素雰囲気下で90℃の温度にて約1時間加熱し,式
(8)で示される含フッ素イソシアネートを得た。
上記の式(8)で示される化合物の赤外スペクトルで
は,2300cm-1にイソシアノ基の吸収が観測された。
上記式(3)および式(6)で示される含フッ素カル
ボニルアジドと式(7)および式(8)で示される含フ
ッ素イソシアネートの構造式を第1表にまとめて示す。
次に,本発明のカルボニルアジド基、を有する含フッ
素重合体を磁気記録媒体に適用した例を,実施例3〜8
に示す。
(実施例3) 磁気記録媒体として,第1図に示ごとく,基体1上
に,エポキシ,フェノールおよびポリビニルブチラール
樹脂よりなるバインダ中に磁性粉(γ−Fe2O3)を分散
させた磁性塗膜2を形成した,5インチ径の塗布型の磁気
ディスクに,上記の式(3)で示される含フッ素カルボ
ニルアジドの0.5%(重量)フレオン溶液をスプレ塗布
した。ついで,この磁気ディスクを200℃で2時間加熱
して潤滑膜3とした。
上記の手順で作製した磁気ディスクを用い,ピエゾ素
子をアームにとりつけた磁気ヘッドを0.2μmの高さで
浮上させ,ピエゾ素子の平均出力ノイズレベルの5倍を
越えるピーク数を潤滑膜の欠陥数とした。なお,ノイズ
と欠陥を分離して測定するために,上記方法では,平均
出力ノイズレベルの5倍以上のピークに限定している。
潤滑剤の溶液調製時から,それぞれ1時間,10日間,1
ケ月経過した潤滑剤溶液を用いて,試料を作製し,その
試料について欠陥数を求めた。その結果を第2表に示
す。
なお,ロット数は1000であり,潤滑膜の膜厚は約100
Åであった。
(実施例4) 含フッ素カルボニルアジドとして上記の式(6)で示
される化合物を用い,実施例3と同様の方法で試料を作
製した。
(比較例3) 含フッ素カルボニルアジドの代りに上記の式(7)で
示される含フッ素イソシアネートを用い,実施例3と同
様の方法で試料を作製した。
(比較例4) 含フッ素カルボニルアジドの代りに上記の式(8)で
示される含フッ素イソシアネートを用い,実施例3と同
様の方法で試料を作製した。
上記の実施例3,4および比較例3,4において作製した試
料の試験結果を第2表にまとめて示す。
(実施例5) 磁気記録媒体として,第2図に示すごとく,NiPメッキ
5したAl合金の基体1上に,Arガス雰囲気中の高周波ス
パッタリング法により,膜厚0.25μmのCr膜6,膜厚0.06
μmのCo−Ni−Zr合金よりなる金属磁性膜2′,膜厚0.
05μmの炭素質の保護膜4を順次形成した磁気ディスク
を用い,含フッ素カルボニルアジドとして上記の式
(3)で示される化合物を用いて,実施例3と同様の方
法で潤滑膜3を形成させた磁気ディスクを作製した。
(実施例6) 含フッ素カルボニルアジドとして上記の式(6)で示
される化合物を用い,実施例5と同様の方法で試料を作
製した。
(比較例5) 含フッ素カルボニルアジドの代りに,上記の式(7)
で示される含フッ素イソシアネートを用い,実施例5と
同様の方法で試料を作製した。
以上の実施例5,6および比較例5における潤滑膜の欠
陥数を求めた結果を第3表に示す。
(実施例7) 実施例5と同様の方法で作製した磁気ディスクを上記
の式(3)で示される含フッ素カルボニルアジドの0.5w
t%フレオン溶液に浸した後,引き上げる操作によりデ
ィップ塗布した。ついで,この磁気ディスクを200℃で
2時間加熱して潤滑膜を形成し試料を作製した。
(実施例8) 上記の式(6)で示される含フッ素カルボニルアジド
を用い,実施例7と同様の方法で試料を作製した。
(比較例6) 含フッ素カルボニルアジドの代りに,上記の式(8)
で示される含フッ素イソシアネートを用い,実施例7と
同様の方法で試料を作製した。
以上の実施例7,8および比較例6における潤滑膜の欠
陥数を求めた結果を第4表に示す。
以上の実施例3〜8および比較例3〜6から次のこと
が分かる。
第2表から明らかなごとく,スプレ塗布により潤滑膜
を形成した場合,本発明(実施例3,4)に比べ,含フッ
素イソシアネートを用いる従来法(比較例3,4)では,10
日後には欠陥数が1桁以上,1ケ月後には,さらに増大し
ている。イソシアノ基を保護した化合物を用いる本発明
は,長期にわたって欠陥数の少ない安定した潤滑膜が得
られる。
また,第3表の比較例5および実施例5,6から明白で
あるように,本発明は,塗布型磁性膜ばかりでなく,金
属磁性膜に対しても有効である。
また,第4表の比較例6および実施例7,8に見られる
ように,本発明は,スプレ塗布ばかりでなく,ディップ
塗布に対しても有効である。
さらに,式(3),(6),(7),(8)で示され
る化合物の2wt%フレオン溶液を調製し,温度27℃,湿
度RH60%の空気を封入し放置する実験を行った結果,イ
ソシアノ基を有する式(7),(8)で示される化合物
は,2週間後に固体不溶物が生成したのに対し,イソシア
ノ基を保護した本発明の実施例1,2にて得られた式
(3),(6)で示される化合物は,1ケ月放置した後
も,固体不溶物が生成せず安定しており,潤滑剤として
用いる場合に経時変化が小さく有効であることが分かっ
た。
以上の実施例および比較例においては,膜厚100Åの
潤滑膜を形成する際の欠陥数を示したが,これ以外の膜
厚を形成する際にも,同様の効果が得られた。
なお上記比較例3〜6および実施例3〜8では,潤滑
剤塗布前にφ=0.2μmのフィルタでろ過を行ってい
る。このため,比較例3〜6の欠陥数は,3割ほど小さい
値となっている。ろ過により,潤滑剤固型物はある程度
除去され欠陥数が低減するが,本発明のようにイソシア
ノ基を保護した時ほど効果的ではない。
以上の実施例において説明したごとく本発明の磁気記
録媒体の潤滑膜は,欠陥が少なく,また長期にわたって
安定した製造プロセスが得られることが分かる。
次に,実施例9〜14により,本発明の潤滑膜が優れた
摺動特性を有することを示す。
(実施例9) 磁気記録媒体として,エポキシ,フェノール,および
ポリビニルブチラール樹脂よりなるバインダ中に,磁性
粉(γ−Fe2O3)を分散させて作製した5インチ径の塗
布型磁気ディスクに,式(3)で示される含フッ素カル
ボニルアジドを所定の膜厚で塗布した。潤滑剤の塗布
は,フレオン溶液のかたちでスプレ塗布した後,磁気デ
ィスクを回転させながら,ガーゼテープで潤滑剤が所定
の膜厚になるまで過剰の潤滑剤を拭き取った。なお,潤
滑剤の膜厚は,フーリエ変換型赤外分光器によって測定
した。
ついで,この磁気ディスクを200℃で2時間加熱し,
潤滑膜とした。
磁気ヘッドに対する摺動強度の測定は,上記の方法で
作製した磁気ディスクを,20gの荷重を印加したサファイ
ア摺動子(曲率半径50mmの球面摺動子)を用い,スライ
ディング速度20m/sにて繰り返し摺動させ,磁気記録媒
体表面に傷が発生するまでの回数を測定することにより
耐久性を評価した。
(実施例10) 式(6)で示される含フッ素カルボニルアジド化合物
を用い,実施例9と同様の方法で試料を作製した。
(比較例7) 含フッ素カルボニルアジドの代りに式(7)で示され
る含フッ素イソシアネートを用い,実施例9と同様の方
法で試料を作製した。
以上の実施例9,10および比較例7における試験結果を
第5表に示す。
(実施例11) 磁気記録媒体として,NiPをメッキしたAl合金基板上
に,Arガス雰囲気中の高周波スパッタリング法により,
膜厚0.25μmのCr膜,膜厚0.06μmのCo−Ni−Zr合金か
らなる金属磁性膜,膜厚0.05μmの炭素質の保護膜を順
次形成して磁気ディスクを作製し,潤滑剤として式
(3)で示される含フッ素カルボニルアジドを用い,実
施例9と同様の方法で潤滑膜を形成した。
なお,摺動強度の測定は,サファイア摺動子(曲率半
径50mm)を用い,荷重20g,スラディング速度20m/sに
て,上述した摺動試験法と同様の方法で評価した。
(実施例12) 式(6)で示される含フッ素カルボニルアジド化合物
を用い,実施例11と同様の方法で試料を作製した。
(比較例8) 含フッ素カルボニルアジドの代りに式(7)で示され
る含フッ素イソシアネートを用い,実施例11と同様の方
法で試料を作製した。
以上の実施例11,12および比較例8における試験結果
を第6表に示す。
(実施例13) 磁気記録媒体として,ポリイミドフィルム上に膜厚0.
22μmのCo−Cr金属磁性膜,膜厚0.02μmのボロン保護
膜を順次蒸着により形成したフロップイディスクを作製
し,潤滑剤として式(3)で示される含フッ素カルボニ
ルアジドを用い,実施例9と同様の方法で潤滑膜を形成
した。
なお,摺動強度の測定は,上記フロッピイディスクを
ガラス板に接着し,サファイア摺動子(曲率半径50mm)
を用い,荷重20g,スライディング速度2m/sにて,上述し
た摺動試験法と同様の方法で評価した。
(実施例14) 式(6)で示される含フッ素カルボニルアジド化合物
を用い,実施例13と同様の方法で試料を作製した。
(比較例9) 含フッ素カルボニルアジドの代りに,式(7)で示さ
れる含フッ素イソシアネートを用い,実施例13と同様の
方法で試料を作製した。
以上の実施例13,14および比較例9における試験結果
を第7表に示す。
以上の実施例9〜14および比較例7〜9から次のこと
が分かる。
第5表に見られるように,比較例7と膜厚もほぼ同じ
である実施例9,10を比較すると本発明による磁気ディス
クは,いずれも摺動強度が,約3倍程度向上することが
認められる。
また,第6表の実施例11,12,第7表の実施例13,14に
示すごとく,本発明は,金属磁性膜に対しても,塗布型
磁性膜と同様の優れた摺動強度が得られることが明白で
ある。
以上,本発明の実施例において説明したごとく,本発
明による磁気記録媒体は,いずれの場合においても良好
な摺動強度を示し,磁気記録媒体として優れた耐久性な
らびに信頼性を有することが分かる。
〔発明の効果〕 以上詳細に説明したごとく,本発明の磁気記録媒体に
おいては,潤滑剤として含フッ素カルボニルアジドを使
用し,媒体面上で含フッ素イソシアネートを生成させる
製造プロセスをとるため,含フッ素イソシアネートの加
水分解性,自己重合性の影響を受けずに長期にわたって
欠陥の少ない安定な潤滑膜を形成させることができ,耐
久性ならびに信頼性の優れた磁気記録媒体を得ることが
できる。
さらに,本発明の潤滑膜は,塗布型磁気記録媒体,Co
−Ni−Zrなどのスパット金属磁気記録媒体,メッキある
いは真空蒸着などにより形成された金属磁性膜,さらに
上記磁性膜の上に炭素,ボロンなどの保護膜を有する磁
気記録媒体のほか,磁気記録媒体表面に,例えば微細孔
を形成し潤滑剤を含浸させたものに対しても有効であ
る。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の実施例3において例示した磁気ディス
クの断面構造を示す模式図,第2図は本発明の実施例5
において例示した磁気ディスクの断面構造を示す模式
図,第3図は本発明の磁気記録媒体の製造工程図を示
す。 1……基体、2……磁性塗膜 2′……金属磁性膜、3……潤滑膜 4……保護膜、5……NiPメッキ 6……Cr膜

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】基体上に、直接もしくは下地層を介して形
    成された磁性膜、または該磁性膜上に保護膜を有する磁
    気記録媒体において、上記磁性膜または保護膜上に、カ
    ルボニルアジド基を有する含フッ素重合体よりなる潤滑
    剤を付着した後、加熱処理して、上記磁性膜または保護
    膜上に含フッ素イソシアネート重合体よりなる潤滑膜を
    形成したことを特徴とする磁気記録媒体。
  2. 【請求項2】基体上に、直接もしくは下地層を介して形
    成された磁性膜、または該磁性膜上に保護膜を有する磁
    気記録媒体を製造する方法において、上記磁性膜もしく
    は保護膜上に、フルオロポリエーテル鎖またはアルキル
    鎖を基本骨格とし、カルボニルアジド基を少なくとも1
    つ有する含フッ素重合体よりなる潤滑剤を付着した後、
    加熱処理して、上記含フッ素重合体にイソシノア基を再
    生させて、引き続き重合することにより、上記磁性膜も
    しくは保護膜上に、含フッ素イソシアネート重合体より
    なる潤滑膜を形成することを特徴とする磁気記録媒体の
    製造方法。
  3. 【請求項3】請求項2に記載の磁気記録媒体の製造方法
    において、加熱処理の温度を100〜200℃とすることを特
    徴とする磁気記録媒体の製造方法。
  4. 【請求項4】磁気記録媒体に用いる潤滑剤が、 一般式 Rf−CON3 ……(I) もしくは N3OC−Rf′−CON3 ……(II) (式中、Rf−、−Rf′−は、ペルフルオロポリエーテル
    基、ペルフルオロアルキル基のうちより選ばれる含フッ
    素炭素基を表す。) で示されるカルボニルアジド基を有する含フッ素重合体
    よりなることを特徴とする磁気記録媒体の潤滑剤。
  5. 【請求項5】請求項4に記載の磁気記録媒体の潤滑剤に
    おいて、一般式(I)または(II)で示されるカルボニ
    ルアジド基を有する含フッ素重合体を構成するRf−、−
    Rf′−が、 −〔(CF2O)(CF2CF2O)〕−、 −〔(CF2CF2CF2O)〕−、 (式中、p、q、r、sは3〜100の整数を表す。) のうちから選ばれる含フッ素炭素基であることを特徴と
    する磁気記録媒体の潤滑剤。
  6. 【請求項6】請求項4に記載の潤滑剤が、 一般式 (式中、nは3〜100の整数を表す。) で示されるカルボニルアジド基を有する含フッ素重合体
    よりなることを特徴とする磁気記録媒体の潤滑剤。
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