JP2739538B2 - 脱離水分の少ない表面改質金属体の製造法 - Google Patents

脱離水分の少ない表面改質金属体の製造法

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JP2739538B2 JP1802793A JP1802793A JP2739538B2 JP 2739538 B2 JP2739538 B2 JP 2739538B2 JP 1802793 A JP1802793 A JP 1802793A JP 1802793 A JP1802793 A JP 1802793A JP 2739538 B2 JP2739538 B2 JP 2739538B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、脱離水分の少ない表面
改質金属体を製造する方法、さらに詳しくは、表面を特
定の不活性被膜で覆うことにより、その表面の水分に対
する親和性を減じ、もって脱離・放出される水分を著減
した表面改質金属体を工業的に有利に製造する方法に関
するものである。
【0002】
【従来の技術】半導体製造分野や真空装置製造分野にお
いては、真空チャンバーやガス配管などに広く用いられ
ているステンレス鋼材の表面から放出されるガス(特に
表面に吸着している水分)が真空ないし減圧雰囲気中に
あるいは高純度ガス雰囲気中に脱離してくるため、超高
真空や超高清浄な減圧雰囲気の実現が阻害されていた。
【0003】このため、これらの分野においては吸着ガ
スの脱離によるガス放出のないステンレス鋼材が所望さ
れており、従来から、ステンレス鋼材表面に電解研磨を
施したり、ステンレス鋼材に電解研磨を施した後、60
℃程度の加熱硝酸に浸漬して表面に不動態被膜を形成さ
せたり、あるいは、ステンレス鋼材を酸素ガス中で40
0〜600℃程度に加熱して表面に不動態皮膜を形成さ
せたりすることが行われてきた。
【0004】たとえば、特開平2−43353号公報に
は、ドライ酸化雰囲気でステンレス鋼等の被酸化処理金
属の表面に酸化炉内で水分の吸蔵や吸着の少ない不動態
皮膜を形成する金属酸化処理方法が記載されている。
【0005】また、本出願人の出願にかかる特開平3−
274254号公報には、表面を研磨したステンレス鋼
を不活性ガス雰囲気中または真空中150〜200℃の
温度で加熱処理した後、オゾン含有ガス雰囲気中で15
0〜200℃加熱処理する方法が示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】集積回路の集積度の飛
躍的な向上を目指す半導体製造業界にあっては、集積回
路製造用の各種ガスの純度の向上に対する要求が益々強
く、ガス純度はもとより、ガスに接する材料表面から脱
離する吸着ガスを限りなくゼロに近づける努力が要請さ
れている。
【0007】上記の従来技術によるステンレス鋼材料
は、室温下の環境で使用する場合にはこれらの要求に応
えることができるものである。しかしながら、一般に集
積回路製造における各種成模装置(たとえば常圧VD
装置、減圧CVD装置等)は300℃以上の加熱下で使
用されるところ、このような加熱環境下において
は、上記の従来技術によっては装置構成材料表面から脱
離する吸着ガスを低減することはできないという限界が
ある。
【0008】本発明者らは、酸素、オゾンおよび水蒸気
のいずれをも実質的に含まないアルコキシシラン蒸気を
適正化学蒸着温度(220〜430℃)に加熱された金
属体(殊にステンレス鋼材)と接触させて該金属体表面
に化学蒸着層を形成させた後、未反応物および副生物を
系外に除去することにより、耐蝕性にすぐれかつ常温下
はもとより加熱下でも脱離する吸着ガス(殊に水分)の
少ない表面改質金属体の製造法につき、すでに特開平4
−337074号公報として特許出願を行っている。
【0009】本発明者らは、その後も鋭意研究を重ねた
結果、上記特開平4−337074号公報の方法よりも
さらに好ましい方法を見い出すに至った。
【0010】すなわち、本発明は、ステンレス鋼材など
の金属体表面から脱離する吸着ガス(殊に水分)を加熱
環境下にあっても著減することのできる表面改質金属体
を製造する工業的な方法を提供することを目的とするも
のである。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明の脱離水分の少な
い表面改質金属体の製造法は、酸素、オゾンおよび水蒸
気のいずれをも実質的に含まないフルオロトリアルコキ
シシラン蒸気を適正化学蒸着温度に加熱された金属体と
接触させ、該金属体表面に化学蒸着層を形成させる化学
蒸着工程A、および、未反応物および副生物を系外に除
去する有機物残渣除去工程B、をこの順に実施すること
を特徴とするものである。
【0012】以下本発明を詳細に説明する。
【0013】〈金属体〉本発明において表面改質の対象
となる金属体としては、ステンレス鋼材、銅または銅合
金材、アルミニウムまたはアルミニウム合金材などがあ
げられ、その形状は板状、管状、箔状はもとより、継
手、バルブなど複雑な形状、あるいは繊維状、粒子状な
どであってもよい。金属体の中では特にステンレス鋼材
が重要であり、このステンレス鋼材はオーステナイト
系、マルテンサイト系、フェライト系などのいずれでも
よい。
【0014】金属体は、後に形成する化学蒸着層が均一
な厚さとなるように、予めその表面の清浄化処理が施さ
れる。清浄化処理としては、金属体がステンレス鋼材で
ある場合を例にとると、界面活性剤を用いた洗浄による
脱脂、バフ研磨、電解研磨、気相酸化、水蒸気処理な
ど、あるいはそれらの組み合わせが採用される。
【0015】殊に、金属体としてはその表面に緻密な酸
化膜が形成されたものが好ましい。この酸化膜は自然酸
化膜であっても良いが、実質的に水分を含まない酸化雰
囲気で加熱酸化処理(加熱温度はたとえば150〜40
0℃)して形成した酸化膜であることが好ましい。
【0016】金属体は、さらに好ましくは、上記酸化膜
を表面に有する金属体を水分曝露する前処理を後述の化
学蒸着工程Aの直前で施したものであることが望まし
い。この水分曝露の方法は特に限定されないが、たとえ
ば、常温〜100℃程度に加熱された金属体の表面に、
窒素ガス等の不活性ガスをキャリアガスとして加湿器の
水をバブリングして発生させた水蒸気を1〜3時間程度
接触させればよい。そして水分曝露後の処理雰囲気に残
存する水蒸気を窒素ガス等の不活性ガスを通気して系外
にパージすることで、水分曝露する前処理は達成でき
る。
【0017】〈化学蒸着工程A〉化学蒸着工程Aは、フ
ルオロトリアルコキシシラン蒸気を適正化学蒸着温度に
加熱された金属体と接触させ、該金属体表面に化学蒸着
層を形成させる工程である。適正化学蒸着温度はフルオ
ロトリアルコキシシランの種類によっても若干異なる
が、フルオロトリエトキシシランの場合で100〜40
0℃である。
【0018】この場合、フルオロトリアルコキシシラン
蒸気中には酸素、オゾンおよび水蒸気のいずれをも実質
的に含まないことが重要であり、もし酸素、オゾンまた
は水蒸気が含まれていると、金属体表面への化学蒸着の
前にシリカ微粒子が生じ、この微粒子を含んだ状態で化
学蒸着層が形成されるため、形成被膜の金属体に対する
密着性や緻密性が損なわれることになる。
【0019】フルオロトリアルコキシシランとしては、
炭素数が1〜5程度の同一または異なるアルコキシ基を
有するフルオロトリアルコキシシランが好適に用いら
れ、殊にフルオロトリメトキシシランおよびフルオロト
リエトキシシランが重要である。なおフルオロトリアル
コキシシランは一般式 FSi(OR)3 で示される。ここでR
は、炭素数1〜5程度の同一または異なるアルキル基で
ある。
【0020】金属体とフルオロトリアルコキシシランと
の接触は、バッチ方式でも可能であるが、工業的には通
気方式の方が有利である。フルオロトリアルコキシシラ
ンの反応装置への供給は、フルオロトリアルコキシシラ
ンを気化または霧化させて、キャリアガスと共に反応装
置に送ることにより行う。フルオロトリアルコキシシラ
ンの気化または霧化は、フルオロトリアルコキシシラン
の蒸気圧や所要濃度を考慮し、加熱方式、不活性ガスに
よるバブリング方式などが採用される。キャリアガスと
しては、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスが
用いられる。
【0021】フルオロトリアルコキシシラン蒸気は、適
正化学蒸着温度(フルオロトリエトキシシランの場合で
100〜400℃)に加熱された金属体と接触させる。
温度が余りに低いときには良好な膜質が得られず、温度
が余りに高いときにはフルオロトリアルコキシシランの
熱分解が起こり、その結果シリカ微粒子が化学蒸着層中
に浸入し、形成被膜の金属体に対する密着性や緻密性を
損なう。なおフルオロトリアルコキシシランの供給は大
気圧以上で行うのが通常であるが、減圧下に行うことも
できる。
【0022】反応装置の材質は、石英ガラスやステンレ
ス鋼などが使用され、反応装置の加熱方法も均一な加熱
を行うことができるものであれば特に限定されない。
【0023】〈有機物残渣除去工程B〉有機物残渣除去
工程Bは、化学蒸着工程A終了後、未反応物および副生
物を系外に除去する工程である。
【0024】上に述べた化学蒸着工程Aが終了した後
は、フルオロトリアルコキシシランの供給を停止し、未
反応のフルオロトリアルコキシシランおよび副生物であ
るアルコールやエーテルなどの有機物残渣を除去する。
【0025】この際には、通常、加熱下で不活性ガスの
通気により未反応物および副生物を系外に除去するが、
酸素またはオゾンを含むガスの供給により加熱下に未反
応物および副生物を酸化してから系外に除去することに
よっても達成できる。このときの温度は、化学蒸着工程
Aと同程度の温度とするのが通常である。化学蒸着工程
Aから有機物残渣除去工程Bの移行はバッチまたは連続
的に行われる。
【0026】なお有機物残渣除去工程Bは、少なくとも
反応装置から排気される不活性ガス中の未反応物および
副生物がガスクロマトグラフ等により検出されなくなる
まで継続することが好ましい。
【0027】有機物残渣除去工程B終了後、不活性ガス
雰囲気下に金属体を冷却すれば、目的とする表面改質金
属体が得られる。
【0028】
【作用】本発明の目的とする機能を有する表面改質金属
体が得られる理由は必ずしも明らかではないが、酸素、
オゾンおよび水蒸気のいずれをも実質的に含まないフル
オロトリアルコキシシラン蒸気を適正化学蒸着温度に加
熱された金属体と接触させることにより、金属体表面へ
のシリカ微粒子の混入が有効に防止されること、一般に
アルコキシシランより水や水酸基との反応性が高いフル
オロトリアルコキシシランを原料としているため、蒸着
温度が比較的低温でも密着性や緻密性にすぐれた化学蒸
着層が形成されること、さらには、化学蒸着層が、弗素
が一部結合した弗化シリカ膜となるため撥水性が改善さ
れることなどによるものと推測される。なお、本発明の
方法による表面改質は、同時に耐触性の向上にも大きく
寄与している。
【0029】
【実施例】
〈装置の構成〉図1は本発明に従って表面改質金属体を
製造するために用いる装置の一例を示した概略図であ
る。
【0030】(1) は外熱式管状電気炉であり、該外熱式
管状電気炉(1) にはステンレス鋼製のマッフル(2) が備
えられている。このマッフル(2) には金属体(M) が装填
される。ここで用いた金属体(M) の形状は配管であり、
この金属体(M) の表面改質が施される部位は配管の内表
面のみである。
【0031】上記マッフル(2) にはパージガス流入口(2
1)とパージガス排出口(22)とが設けられている。金属体
(M) にはガス流入口(23)とガス排出口(24)とが設けられ
ている。なお金属体(M) の表面全体に本発明の表面改質
が施される場合には、パージガス流入口(21)とパージガ
ス排出口(22)は不要で、マッフル(2) にはガス流入口(2
3)とガス排出口(24)とが設けられ、該マッフル(2) には
金属体(M) が装填される。
【0032】(11)は熱電対式温度センサーである。この
熱電対式温度センサー(11)は図示せざる制御装置に接続
されており、マッフル(2) 内が予め設定された温度を保
持するために常に測温結果を制御装置に伝達している。
制御装置は、熱電対式温度センサー(11)の測温結果に基
いて外熱式管状電気炉(1) に命令を発し、適宜電力の入
切を行わせる。なお金属体(M) が長尺品である場合には
複数の加熱ヒーター、複数の熱電対式温度センサーおよ
び複数の制御装置でそれぞれ独立に温度制御を行い、金
属体(M) の温度分布を最小限に抑えるようにする。
【0033】(C) はキャリアガス源で、該キャリアガス
源(C) から供給されるキャリアガスはパージガス供給系
(3) 、不活性ガス供給系(4) 、水蒸気供給系(5) 、フル
オロトリアルコキシシラン供給系(6) に分岐している。
不活性ガス供給系(4) 、水蒸気供給系(5) およびフルオ
ロトリアルコキシシラン供給系(6) は、マッフル(2)に
至る前で集合し、ガス流入口(23)と接続するようにして
ある。また、パージガス供給系(3) はパージガス流入口
(21)に接続するようにしてある。
【0034】パージガス供給系(3) は、パージガス供給
配管(31)に、順次上流側から流量計(32)、流量調節弁(3
3)および閉止弁(34)を設けた構成とされている。
【0035】不活性ガス供給系(4) は、不活性ガス供給
配管(41)に、順次上流側から流量計(42)、流量調節弁(4
3)、および閉止弁(44)を設けた構成とされている。
【0036】水蒸気供給系(5) は、キャリアガス供給配
管(51)に、順次上流側から流量計(52)、流量調節弁(5
3)、および閉止弁(54)を設けた構成とされており、流量
調節弁(53)と閉止弁(54)との間には、水(W) を入れた加
湿器(55)が設けられている。加湿器(55)より下流のキャ
リアガス供給配管(51)は水蒸気供給配管(56)となる。
【0037】フルオロトリアルコキシシラン供給系(6)
は、キャリアガス供給配管(61)に、順次上流側から流量
計(62)、流量調節弁(63)、および閉止弁(64)を設けた構
成とされており、流量調節弁(63)と閉止弁(64)との間に
は、フルオロトリアルコキシシラン(FSi) を入れた気化
器(65)が設けられている。気化器(65)より下流のキャリ
アガス供給配管(61)はフルオロトリアルコキシシラン供
給配管(66)となる。
【0038】流量計(32), (42), (52), (62)はそれぞれ
の供給系に流れるパージガスまたはキャリアガスの流量
を計測して表示するものであり、下流側に設けた流量調
節弁(33), (43), (53), (63)との連動によって予め設定
した流量を確保する制御機能を備えている。閉止弁(34)
は通常開の状態で、閉止弁(44), (54), (64)はそれらの
各供給系が使用状態のときのみ開の状態で、それ以外の
ときは通常閉止となる。
【0039】ガス排出口(24)は図示せざる除外装置に接
続されており、該除外装置において未反応のフルオロト
リアルコキシシランおよびアルコールやエーテル等の反
応副生物が無害化される。
【0040】〈操 作〉金属体(M) の内表面に蒸着層を
形成させるにあたっては、まず金属体(M) の内表面を清
浄にしてから、予めパージガス供給系(3) からパージガ
ス供給配管(31)とパージガス流入口(21)を経て所定流量
の不活性ガスが供給されているマッフル(2) 内にセット
し、金属体(M) の一端をガス流入口(23)に接続し、他端
をガス排出口(24)に接続する。そして不活性ガス供給系
(4) の閉止弁(44)を開とした後、流量調節弁(43)を開通
して所定流量のキャリアガスを金属体(M) 内に供給し、
ひとまず金属体(M) 内をキャリアガス流通雰囲気として
から、閉止弁(44)を閉止してキャリアガスの供給を停止
する。
【0041】ついで水蒸気供給系(5) の閉止弁(54)を開
とした後、流量調節弁(53)を開通して所定流量のキャリ
アガスを加湿器(55)に供給する。そうするとキャリアガ
スは水(W) 内でバブリングし、水蒸気を同伴しながら水
蒸気供給配管(56)とガス流入口(23)を経て金属体(M) 内
に導入される。この水蒸気流通雰囲気に金属体(M) 内表
面を所定温度で所定時間曝してから閉止弁(54)を閉止し
て水蒸気の供給を停止し、再度不活性ガス供給系(4) の
閉止弁(44)を開とし、キャリアガスを(M) 内に導入し、
金属体(M) 内をキャリアガス流通雰囲気とする。このキ
ャリアガス流通雰囲気に金属体(M) 内を所定温度で所定
時間曝してから、閉止弁(44)を閉止してキャリアガスの
供給を停止する。
【0042】その後フルオロトリアルコキシシラン供給
系(6) の閉止弁(64)を開とした後、流量調節弁(63)を開
通して所定流量のキャリアガスを気化器(65)に供給す
る。そうするとキャリアガスはフルオロトリアルコキシ
シラン(FSi) 内でバブリングし、その蒸気を同伴して金
属体(M) 内に導入されるから、金属体(M) 内はフルオロ
トリアルコキシシラン蒸気の流通雰囲気となる。この状
態で所定温度で所定時間金属体(M) 内表面をフルオロト
リアルコキシシラン蒸気流通雰囲気に曝して、該金属体
(M) 内表面に蒸着層を形成させる。
【0043】所定時間経過後、閉止弁(64)を閉止してフ
ルオロトリアルコキシシラン蒸気の供給を停止した後、
不活性ガス供給系(4) からキャリアガスを供給する。そ
うすると、金属体(M) 内および該金属体(M) 内表面に残
存する未反応のフルオロトリアルコキシシランおよび副
生するアルコール、エーテル等の有機物残渣が系外に持
ち去られる。
【0044】有機物残渣除去が完了したら、キャリアガ
ス流通雰囲気下のままで外熱式管状電気炉(1) のヒータ
ーを切り、金属体(M) を冷却し、内表面が改質された製
品を取り出す。
【0045】〈改質金属体の製造〉 実施例1〜2 上に述べた装置を用い、キャリアガスとしては窒素ガ
ス、フルオロトリアルコキシシランとしては、三弗化ア
ンチモン(和光純薬工業株式会社製)とテトラエトキシ
シラン(信越化学工業株式会社製)より五塩化アンチモ
ン(和光純薬工業株式会社製)を触媒として合成、蒸留
精製したフルオロトリエトキシシランをそれぞれ用い
て、金属体(M) の一例としてステンレス鋼材に対する蒸
着層の形成を行った。なお、用いたフルオロトリエトキ
シシランの純度は約99.9%(熱伝導式ガスクロマトグラ
フで測定した結果から)であり、不純物は少量のフルオ
ロジエトキシシランとテトラエトキシシランおよび微量
のエチルアルコールを含んでいた。
【0046】外熱式管状電気炉(1) としては、外径34.0
mm、内径28.4mm、長さ2800mmのステンレス製のマッ
フル(2) を備えた手製の電気炉を用いた。金属体(M) と
しては、外径6.35mm、内径4.35mm、長さ2000mmの配
管材で、実施例1では硝酸浸漬により管内表面に不導態
被膜を形成した市販のステンレス鋼製電解研磨管(大陽
酸素株式会社製のメガパイプ(登録商標);真空二度溶
解SUS316L)を、実施例2では上記ステンレス綱
製電解研磨管を基材として実質的に水分を含有しない酸
化雰囲気で加熱処理した市販の酸化膜管(大陽酸素株式
会社製のファインゴールドメガパイプ)を用いた。
【0047】この配管材(M) の管内面を界面活性剤入り
の洗浄液(5%クリーンエース(登録商標)、昭光通商
株式会社製)で脱脂洗浄した後、超純水ですすぎ、窒素
ガスを吹き付けて乾燥させた。
【0048】上記の清浄化処理を施した配管材(M) を予
めパージガス供給系(3) から窒素ガス1000ml/minを
供給されているマッフル(2) 内にセットし、配管材(M)
の一端をガス流入口(23)に接続し、他端をガス排出口(2
4)に接続した。配管材(M) に不活性ガス供給系(4) から
窒素ガスを20ml/minの割合で流し、配管材(M) 内を窒
素ガスで置換した後、不活性ガス供給系(4) からの窒素
ガスの供給を停止し、水蒸気供給系(5) より水蒸気と窒
素ガスの混合ガスを電解研磨管に20ml/minの割合で1
時間流した。
【0049】その後、水蒸気と窒素ガス20ml/min流通
雰囲気下で電解研磨管を100℃まで昇温し、この温度
に1時間保持した。
【0050】ついで、水蒸気供給系(5) からの水蒸気と
窒素ガスの混合ガスの供給を停止し、不活性ガス供給系
(4) から窒素ガスを20ml/minの割合で1時間流し、1
00℃に保持した状態の配管材(M) 内を窒素ガスで置換
した。
【0051】次に、不活性ガス供給系(4) からの窒素ガ
スの供給を停止し、フルオロトリアルコキシシラン供給
系(6) からフルオロトリエトキシシランと窒素ガスの混
合ガスを100℃に保持した状態の配管材(M) に20ml
/minの割合で1時間流した後、フルオロトリエトキシシ
ランと窒素ガスの混合ガス20ml/min流通雰囲気下で電
解研磨管を順次200℃、300℃、350℃まで昇温
し、各温度に1時間保持し、化学蒸着反応処理を行っ
た。
【0052】次に、フルオロトリエトキシシランと窒素
ガスの混合ガスの供給を停止し、不活性ガス供給系(4)
から窒素ガスを350℃に保持した状態の配管材(M) に
50ml/minの割合で流しながら、ガス排出管(24)から排
出される窒素ガス中に未反応のフルオロトリアルコキシ
シランおよび副生するアルコール、エーテル等の有機物
残渣が検出されなくなるまで継続し、有機物残渣を除去
した。
【0053】上記の有機物残渣除去処理時のガス排出口
(24)から排出される窒素ガス中に含まれる有機物残渣の
分析は、熱伝導式ガスクロマトグラフ(株式会社島津製
作所製のGC−8A−PT)で行った。このときの各成
分の検出限界は約1ppm であった。
【0054】その後、外熱式管状電気炉(1) のヒーター
を切り、窒素ガス50ml/min流通雰囲気下で、配管材
(M) を室温付近の温度まで冷却した後、マッフル(2) か
ら取り出し、管内に蒸着層が形成した配管材(M) を得
た。
【0055】比較例1〜2 化学蒸着反応に用いる原料としてフルオロトリエトキシ
シランの代わりにテトラエトキシシランを用いた以外
は、実施例1〜2と同一装置、同様の配管材(比較例1
では電解研磨管、比較例2では酸化膜管)および同様の
処理条件で処理を行い、管内に蒸着層が形成した配管材
を得た。
【0056】〈水分脱離特性の測定と評価〉上記の実施
例1〜2、比較例1〜2で得られた管内に蒸着層が形成
した配管材(M) の水分脱離特性を調べた。すなわち実施
例1〜2、比較例1〜2で得られた管内に蒸着層が形成
した配管材(M) を試料管として、その各試料管の内表面
を25℃の飽和水分に曝した後、水分濃度0.01ppm 以下
の窒素ガスでパージしたときの水分濃度の経時変化を測
定し、水分脱離特性を同様に測定した未処理の電解研磨
管および未処理の酸化膜管と比較した。
【0057】結果を表1および図2に示す。表1は、室
温(25℃)下窒素ガスパージ時の各試料管の水分濃度
が水分計の検出限界0.01ppm に到達するまでの時間を示
したものである。図2は、表面改質金属体およびその未
処理の基材の水分脱離特性の一例を示した図であり、実
施例1〜2、比較例1〜2で得られた表面改質金属体お
よび未処理の電解研磨管、未処理の酸化膜管を25℃の
飽和水分で管内表面を曝露した後、それらの試料管の温
度を25℃として、3時間窒素ガスパージした後、試料
管の温度を50℃ステップ昇温で50〜350℃まで加
熱したときの加熱温度と最大放出水分濃度の関係を示し
たものである。
【0058】なお、水分脱離特性の測定は次の手順によ
って行った。 (1)逆浸漬装置とイオン交換装置を通して精製した純
水 (200ml) を入れたガス洗浄瓶の水中をバブリング
した窒素ガスを500ml/minの流量で各試料管の中へ1
時間導入し、各試料管内表面を25℃の飽和水分に曝露
した。水分曝露は試料管1本ごとに行った。 (2)飽和水分に曝露した各試料管の中に、合成ゼオラ
イト(3Aタイプ)を充填した除湿筒で水分を除去した
窒素ガス(水分0.001ppm以下)を400ml/minの流量で
通気したときの各試料管出口ガス中の水分濃度の経時変
化を0.01ppm の検出感度を有する水晶発振式水分計(株
式会社島津製作所製のMAH−2型)を用いて測定し
た。水分濃度測定は試料管1本ごとに行った。 (3)前記水分濃度の経時変化は、測定開始後(除湿窒
素ガス通気開始後)3時間経過までは各試料管の温度は
25℃に、その後はマントルヒーター(大科電器株式会
社製、長さ500mm、ヒーター容量100W)4本を用
いて昇温速度10℃/minで順次50℃、100℃、15
0℃、200℃、250℃、300℃、350℃にステ
ップ昇温し、各速度に1時間維持して測定した。
【0059】
【表1】 金属体の種類 化学蒸着反応原料の種類 水分脱離特性 実施例1 電解研磨管 フルオロトリエトキシシラン 約 21分 実施例2 酸化膜管 フルオロトリエトキシシラン 約 18分 比較例1 電解研磨管 テトラエトキシシラン 約 30分 比較例2 酸化膜管 テトラエトキシシラン 約 25分 対照例1 未処理電解研磨管 − 約 110分 対照例2 未処理酸化膜管 − 約 60分 (注)水分脱離特性は、25℃、窒素ガスパージの条件
において、水分濃度が水分計の検出限界0.01ppm に到達
するまでの時間。
【0060】表1および図2の結果から、本発明の方法
で製造した表面改質ステンレス鋼材は、常温下および加
熱下の水分脱離特性にすぐれ、管内からの水分放出が少
ないことがわかる。
【0061】
【発明の効果】本発明の方法で製造した表面改質金属体
は、常温下はもとより加熱下の水分脱離防止特性もすぐ
れているため、これを超高純度ガス供給配管系の構成材
料として用いれば接ガス面から放出される水分による汚
染を防止することができ、超高純度ガスの純度低下を来
たさずユースポイントに速やかに供給することができ
る。またこれを真空チャンバー等真空機器の構成材料に
用いれば、加熱雰囲気下で使用しても、接ガス面から放
出される水分による汚染を防止することができ、結果と
して速やかに超高清浄な雰囲気を実現でき、水分汚染に
由来する処理製品の性能悪化を排除することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に従って表面改質金属体を製造するため
に用いる装置の一例を示した概略図である。
【図2】表面改質金属体およびその未処理の基材の水分
脱離特性の一例を示した図である。
【符号の説明】
(1) …外熱式管状電気炉、(11)…熱電対式温度センサ
ー、(2) …マッフル、(21)…パージガス流入口、(22)…
パージガス排出口、(23)…ガス流入口、(24)…ガス排出
口、(3) …パージガス供給系、(31)…パージガス供給配
管、(32)…流量計、(33)…流量調節弁、(34)…閉止弁、
(4) …不活性ガス供給系、(41)…不活性ガス供給配管、
(42)…流量計、(43)…流量調節弁、(44)…閉止弁、(5)
…水蒸気供給系、(51)…キャリアガス供給配管、(52)…
流量計、(53)…流量調節弁、(54)…閉止弁、(55)…加湿
器、(56)…水蒸気供給配管、(6) …フルオロトリアルコ
キシシラン供給系 (61)…キャリアガス供給配管、(62)…流量計、(63)…流
量調節弁、(64)…閉止弁、(65)…気化器、(66)…フルオ
ロトリアルコキシシラン供給配管、(M) …金属体、(C)
…キャリアガス源、(W) …水、(FSi) …フルオロトリア
ルコキシシラン

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】酸素、オゾンおよび水蒸気のいずれをも実
    質的に含まないフルオロトリアルコキシシラン蒸気を適
    正化学蒸着温度に加熱された金属体と接触させ、該金属
    体表面に化学蒸着層を形成させる化学蒸着工程A、およ
    び、未反応物および副生物を系外に除去する有機物残渣
    除去工程B、をこの順に実施することを特徴とする脱離
    水分の少ない表面改質金属体の製造法。
  2. 【請求項2】金属体がステンレス鋼材である請求項1記
    載の製造法。
  3. 【請求項3】化学蒸着工程Aに供する金属体が、その表
    面が酸化された状態で水分曝露を行う前処理を施したも
    のである請求項1記載の製造法。
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