JP2548635B2 - 表面改質金属体の製造法 - Google Patents

表面改質金属体の製造法

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JP2548635B2
JP2548635B2 JP3138212A JP13821291A JP2548635B2 JP 2548635 B2 JP2548635 B2 JP 2548635B2 JP 3138212 A JP3138212 A JP 3138212A JP 13821291 A JP13821291 A JP 13821291A JP 2548635 B2 JP2548635 B2 JP 2548635B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、高度の耐蝕性を有する
表面改質金属体(殊にステンレス鋼材)を工業的に有利
に製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近時、半導体産業の発展は目覚しく、半
導体集積回路製造工程もかつてのウエットプロセスから
ドライプロセスへ、さらに集積度も64メガビットへと
高まる一方で、必然的に半導体製造の各プロセスには各
種高純度ガスが多用されるようになってきている。特に
酸化プロセス、エッチングプロセス、エピタキシャルプ
ロセスにおいては、酸化性、腐蝕性の強いガスが使用さ
れたり、副生したりするケースがあるが、これらのガス
を供給または排出する配管経路には、ガス同様あらゆる
面からクリーン性が要求される。
【0003】従来より、耐蝕性配管材料として、耐蝕性
の各種樹脂製の配管やバルブ、樹脂ライニングまたは樹
脂コーティングを施した配管やバルブが知られている。
【0004】またステンレス鋼材の耐蝕性を向上させる
方法の一つとして、ステンレス鋼材を電解メッキまたは
無電解メッキしたり、陽極酸化処理したりすることも知
られている。
【0005】ステンレス鋼板の耐蝕性を向上させる方法
として、ゾル−ゲル法によるディッピングによってステ
ンレス鋼材の表面に皮膜を形成させる方法も提案されて
いる。
【0006】たとえば、特開昭63−216981号公
報には、ステンレス鋼板表面を第IIIb族、第IV族および
第Va族の炭化物、窒化物、硼化物および珪化物のいずれ
かの薄膜で被覆するに際し、ステンレス鋼板に予めAl、
Zr、Ti、Siのアルコキシドまたはアセチルアセトネート
塩の1種または2種以上を 0.005重量%以上含有するア
ルコール溶液を塗布して、200〜600℃に加熱し、
Al、Zr、Ti、Siの1種または2種以上の酸化物皮膜を設
ける方法が示されている。
【0007】特開平2−239112号公報には、テト
ラ低級アルコキシシランを、その5〜40容量%の低級
脂肪族アルコールおよび1〜30容量%の水との混合物
とし、しかも、系内pHを塩酸により1〜3に調整する
と共に温度を20〜70℃に調整することによりシリカ
ゾルを生成させ、ついで、この混合物中に、予め洗浄さ
れた金属基材を浸漬した後、ディッピング法により混合
物中より金属基材を液面に対して垂直に0.05〜10mm/s
ecの速度で引き上げて金属基材の表面にシリカの被膜を
形成させ、これを乾燥するようにした金属基板上へのシ
リカ被膜の形成法が示されている。
【0008】金属表面に耐蝕性皮膜を形成させる別の方
法として、CVDと略称される化学的気相蒸着法を利用
する方法も提案されている。
【0009】たとえば、「日本金属学会誌、第51巻第
11号(1987)」の1054頁〜1059頁には、
高耐蝕性酸化物多層薄膜を形成すべく、液体の有機チタ
ン化合物を加熱蒸発させて水蒸気と反応させたり、固体
の有機アルミニウム化合物や有機クロム化合物を加熱揮
発させて水蒸気と反応させることにより、鉄基板上に金
属酸化物を析出させ、これらの金属酸化物からなる単層
皮膜や多層皮膜を形成する方法が示されている。
【0010】同様に「Boshoku Gijutsu, 38, 579-585
(1989) 」には、有機タンタル化合物、有機アルミニウ
ム化合物、有機クロム化合物を揮発させて酸素ガスと反
応させることにより、鉄基板上に金属酸化物を析出さ
せ、これらの金属酸化物からなる単層皮膜や多層皮膜を
形成する方法が示されている。
【0011】「化学工学、第54巻第12号(199
0)」の922頁〜924頁にも、有機チタン化合物、
有機アルミニウム化合物、有機ジルコニウム化合物など
を揮発させて酸素ガスと反応させることにより、鉄基板
上に金属酸化物を析出させ、これらの金属酸化物からな
る単層皮膜や多層皮膜を形成する方法が示されている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】樹脂製または樹脂ライ
ニングや樹脂コーティングを施した配管等は、強度、耐
熱性、表面平滑度、発塵性および水分過渡性に代表され
るアウトガス特性などの点で問題があり、半導体製造ラ
インの高純度ガス配管系には適用しがたい。
【0013】電解メッキまたは無電解メッキあるいは陽
極酸化処理によりステンレス鋼材の耐蝕性を向上させる
方法は、その処理工程がウエットプロセスであり、形成
した表面膜中に水分を抱き込んでいたり、膜形成中や水
分除去時に生成する微細なピンホールが存在するため、
半導体製造用ガス配管には適していない。
【0014】ステンレス鋼板の耐蝕性を向上させるべ
く、ゾル−ゲル法によるディッピングによってステンレ
ス鋼材の表面に皮膜を形成させる方法にあっては、この
ようにして形成した皮膜は、ゲル化の過程で一次粒子が
数十個ないし数百個の単位で凝縮して二次粒子を形成
し、この二次粒子の内部に数十ないし数百オングストロ
ームの細孔が存在するようになる。この細孔は、その後
の焼成工程で1000℃程度まで昇温しないと消滅しな
いものであるが、このゾル−ゲル法では基板の性状制約
上高くとも600℃程度の焼成しかなされないため、形
成した皮膜は多孔質となってしまい、高度の耐蝕性が要
求される用途には問題が残る。
【0015】そこで特開昭63−216981号公報の
方法においては、このような細孔の多い皮膜上に、さら
にCVDやその他の方法によって炭化物、窒化物、硼化
物あるいは珪化物で被覆するようにしているが、そのよ
うにしても基礎である一次皮膜は多孔質であることから
全体的には緻密な状態にはならず、やはり期待するほど
の防蝕効果を得ることはできない。
【0016】また特開平2−239112号公報におい
ては、水の使用およびpHの調整によって極力ピンホー
ルのないシリカ薄膜を得ようとする工夫を行っている
が、そのためにはシリカゾルを含む混合液を調製後、5
0〜60℃で10〜20日もの長期間放置後、この混合
液中に金属基材を浸漬しており、実用的とは言いがた
い。
【0017】これに対し、CVDを利用して金属表面に
耐蝕性皮膜を形成させる方法は、ゾル−ゲル法とは異な
り緻密な皮膜が得られることが期待できる。
【0018】この方法に関する上にあげた3つの文献に
おいては、金属基板上へのチタン、アルミニウム、クロ
ム、タンタルまたはジルコニウムの各酸化物析出のため
の反応ガスとして水蒸気または酸素ガスを用いている。
これらの文献には金属基板上へのケイ素酸化物(つまり
シリカ)皮膜の形成については記載がないが、本発明者
らの検討によれば、たとえこの方法を適用して金属基板
上にシリカ皮膜を形成させても、耐蝕性にすぐれた緻密
なシリカ皮膜を得ることができない。その理由は、有機
ケイ素化合物であるアルコキシシランと水蒸気または酸
素ガスとを同時に供給すると、ステンレス鋼板表面の水
酸基とアルコキシシランのアルコキシ基との反応による
脱アルコール反応、脱エーテル縮合反応だけでなく、ア
ルコキシシランの熱分解、加水分解が同時に起こり、分
解生成物であるシリカ微粒子が混在する膜質となるため
と推測される。そして結果として成膜速度は大となる
が、得られたシリカ皮膜は基材に対する密着性や緻密性
が損なわれ、耐蝕性に問題を生ずるようになる。
【0019】そして、腐蝕性ガス、特に湿性ガスで耐塩
化水素材料が要求される塩化水素、三塩化ホウ素、ジク
ロルシラン、三塩化シラン、三塩化リンなどを用いる用
途には、放出水分量の少ない構成材料が要求されるとこ
ろ、上に述べたゾル−ゲル法や化学的気相蒸着法(CV
D)においては、得られるシリカ皮膜の緻密性の点で疑
問があるため、これらの用途に充分には応えられない。
【0020】なお金属基材を対象とするものではなく、
また耐蝕性皮膜を得る目的に関するものではないが、
「J. Chem. Soc., FradayTrans. 1, 1984, 80, 3135-31
45 」および「J. Chem. Soc., Fraday Trans. 1, 1988,
84(12), 4327-4336 」には、H型のモルデナイト系ゼ
オライトとのヒドロキシル基とアルコキシシランとの反
応によりゼオライト細孔周辺上にシリカを析出させ、ゼ
オライトとシリカとの構成元素の違いによる雪庇現象を
利用して細孔径を0.01nmのオーダーの精度で化学修飾に
より調整する技術が示されている。
【0021】本発明は、このような背景下において、化
学的気相蒸着法(CVD)を採用しながらも金属体表面
に緻密ですぐれた耐蝕性を有するシリカ皮膜を形成させ
る方法を提供することを目的とするものである。
【0022】
【課題を解決するための手段】本発明の表面改質金属体
の製造法の一つは、酸素、オゾンおよび水蒸気のいずれ
をも実質的に含まないアルコキシシラン蒸気を適正化学
蒸着温度に加熱された金属体と接触させ、該金属体表面
に化学蒸着層を形成させる化学蒸着工程A、および、化
学蒸着工程A終了後、未反応物および副生物を系外に除
去する有機物残渣除去工程B、をこの順に実施すること
を特徴とするものである。
【0023】また本発明の表面改質金属体の製造法の他
の一つは、酸素、オゾンおよび水蒸気のいずれをも実質
的に含まないアルコキシシラン蒸気を適正化学蒸着温度
に加熱された金属体と接触させ、該金属体表面に化学蒸
着層を形成させる化学蒸着工程A、化学蒸着工程A終了
後、未反応物および副生物を系外に除去する有機物残渣
除去工程B、および、有機物残渣除去工程B終了後の金
属体を水蒸気と接触させて処理する水蒸気処理工程C、
水蒸気処理工程C終了後、系に不活性ガスを供給して乾
燥を行う乾燥工程D、をこの順に実施し、さらに化学蒸
着工程Aに戻ってこれら各工程を必要回数繰り返すこと
を特徴とするものである。
【0024】以下本発明を詳細に説明する。
【0025】〈金属体〉本発明において表面改質の対象
となる金属体としては、ステンレス鋼材、鋼材、メッキ
鋼材、銅または銅合金材、アルミニウムまたはアルミニ
ウム合金材などがあげられ、その形状は板状、管状、箔
状はもとより、継手、バルブなどの複雑な形状、あるい
は繊維状、粒子状などであってもよい。金属体の中では
特にステンレス鋼材が重要であり、このステンレス鋼材
はオーステナイト系、マルテンサイト系、フェライト系
等のいずれでもよい。
【0026】金属体は、後に形成するシリカ皮膜が均一
な厚さとなるように、予めその表面の清浄化処理が施さ
れる。清浄化処理としては、金属体がステンレス鋼材で
ある場合を例にとると、界面活性剤を用いた洗浄による
脱脂、バフ研磨、電解研磨、気相酸化、水蒸気処理な
ど、あるいはそれらの組み合わせが採用される。
【0027】〈化学蒸着工程A〉化学蒸着工程Aは、ア
ルコキシシラン蒸気を適正化学蒸着温度に加熱された金
属体と接触させ、該金属体表面に化学蒸着層を形成させ
る工程である。適正化学蒸着温度はアルコキシシランの
種類によっても若干異なるが、テトラエトキシシランの
場合で220〜430℃である。
【0028】この場合、アルコキシシラン蒸気中には酸
素、オゾンおよび水蒸気のいずれをも実質的に含まない
ことが重要であり、もし酸素、オゾンまたは水蒸気が含
まれていると、金属体表面への化学蒸着の前にシリカ微
粒子が生じ、この微粒子を含んだ状態でシリカ皮膜が形
成されるため、形成被膜の金属体に対する密着性や緻密
性が損なわれることとなる。
【0029】アルコキシシランとしては、炭素数が1〜
5程度の同一または異なるアルキル基を有するテトラア
ルコキシシランが好適に用いられ、殊にテトラメトキシ
シランおよびテトラエトキシシランが重要である。
【0030】金属体とアルコキシシランとの接触は、バ
ッチ方式でも可能であるが、工業的には通気方式の方が
有利である。アルコキシシランの反応装置への供給は、
アルコキシシランを気化または霧化させて、キャリアガ
スと共に反応装置に送ることにより行う。アルコキシシ
ランを気化または霧化は、アルコキシシランの蒸気圧や
所要濃度を考慮し、加熱方式、不活性ガスによるバブリ
ング方式などが採用される。キャリアガスとしては、窒
素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスが用いられ
る。
【0031】アルコキシシラン蒸気は、適正化学蒸着温
度(テトラエトキシシランを化学蒸着させる場合は22
0〜430℃、好ましくは250〜400℃、殊に27
0〜380℃)に加熱された金属体と接触させる。温度
が余りに低いときは良好な膜質の皮膜が得られず、温度
が余りに高いときにはアルコキシシランの熱分解が起こ
り、その結果シリカ微粒子がシリカ皮膜中に混入し、形
成したシリカ皮膜の緻密性、密着性を損なう。なおアル
コキシシラン蒸気の供給は常圧下に行うのが通常である
が、減圧下に行うこともできる。
【0032】反応装置の材質は、石英ガラスやステンレ
ス鋼などが使用され、反応装置の加熱方法も均一な加熱
を行うことができるものであれば特に限定されない。
【0033】〈有機物残渣除去工程B〉有機物残渣除去
工程Bは、化学蒸着工程A終了後、未反応物および副生
物を系外に除去する工程である。
【0034】上に述べた化学蒸着工程Aが終了した後
は、アルコキシシランの供給を停止し、未反応のアルコ
キシシランおよび副生物であるアルコールやエーテルな
どの有機物残渣を除去する。
【0035】この際には、酸素またはオゾンを含むガス
の供給により加熱下に未反応物および副生物を酸化して
から系外に除去することが望ましい。酸素またはオゾン
を含むガスとしては、酸素ガス、オゾンを含むガス、空
気、酸素またはオゾンを窒素や希ガス等の不活性ガスで
稀釈したガスなどがあげられる。このときの温度は、化
学蒸着工程Aと同程度の温度とするのが通常であり、特
に酸素ガスを用いれば250〜350℃程度の比較的低
い温度域で酸化が進み、有機物残渣の除去が短時間に達
成できる。そのため、金属体の結晶粒界の成長を抑制で
き、金属体の表面特性を損なうことなく有機物残渣の酸
化、除去が達成できる。有機物残渣の除去は、不活性ガ
ス雰囲気の流通によっても達成できる。ただし、酸素ガ
スを供給する場合に比しては高目の温度および長目の時
間を要する。
【0036】有機物残渣除去工程B終了後、不活性ガス
雰囲気下に金属体を冷却すれば、目的とする表面改質金
属体が得られる。
【0037】〈水蒸気処理工程C〉水蒸気処理工程C
は、有機物残渣除去工程B終了後の金属体を水蒸気と接
触させて処理する工程である。この工程は任意工程であ
るが、この工程を組み入れると、次に述べるように金属
体表面にシリカ皮膜を単分子層ずつ形成していって任意
の膜厚とすることもできる。
【0038】この工程の温度条件は化学蒸着工程Aと同
様に220〜430℃程度に設定するのが通常である
が、必ずしもこの範囲に限られるものではない。
【0039】〈乾燥工程D〉乾燥工程Dは、水蒸気処理
工程C終了後、系に不活性ガスを供給して乾燥を行う工
程である。下記に述べるような各工程の繰り返しを行う
場合、水蒸気処理工程C終了後に金属体上に吸着してい
る過剰の水蒸気や系内雰囲気に残存している水蒸気を許
容限度以下にまで排出することが必要である。この乾燥
工程Dを実施することにより、次の工程である化学蒸着
工程Aにおいてアルコキシシランの加水分解を抑制し、
緻密なシリカ被膜を形成させることができる。この乾燥
工程Dは、たとえば、窒素ガス等の不活性ガス通気下で
水蒸気導入温度と同様の温度で1時間前後行えば充分で
ある。
【0040】〈各工程の繰り返し〉化学蒸着工程A、つ
いで有機物残渣除去工程Bを経ることにより、金属体の
表面には極薄のシリカ皮膜が形成される。この段階で水
蒸気処理工程Cに従い水蒸気を不活性ガスと共に供給す
ると、シリカ皮膜の最上面のアルコキシ基が水蒸気によ
り加水分解し、水酸基となる。そこで再び化学蒸着工程
Aを実施すれば、次層のシリカ皮膜の形成反応が円滑に
進むことになる。これらの工程を A−(B−C−D−A)n −B (nは1以上の整数)というように必要回数繰り返せ
ば、所望の膜厚のシリカ皮膜を得ることができる。この
方法によれば、金属体表面にシリカ皮膜を単分子層ずつ
形成していくこともできるので、極めて緻密なシリカ皮
膜を形成することができる。
【0041】
【作用】一般に金属体の表面には酸化膜が形成されてお
り、Mを金属体とするとき、その表面の酸素はM−O結
合とM−OH結合の両者の形で存在している。全酸素量
に占めるOH酸素の割合は、金属体がSUS316やS
US304の場合で40〜60%程度であり、水を含む
環境ほど高くなる傾向がある。
【0042】この金属体を適正化学蒸着温度に加熱して
おいてその表面に酸素、オゾンおよび水蒸気のいずれを
も実質的に含まないアルコキシシラン蒸気が接触させる
と、金属体表面の水酸基とアルコキシシランのアルコキ
シ基との間で脱アルコール反応が進み、さらには結合し
たアルコキシシランに残存しているアルコキシ基と、同
じく結合した隣接アルコキシシランに残存しているアル
コキシ基との間に脱エーテル縮合反応が生ずる。これに
より、金属体表面にシリカ皮膜が形成されるので、未反
応のアルコキシシランおよび副生したアルコールやエー
テルを除去すれば、目的とする表面改質金属体が得られ
る。なお上記の温度範囲であればアルコキシシランが熱
分解を起こさないので、形成皮膜中に熱分解により生ず
るシリカ微粒子が混入するおそれはない。
【0043】金属体に対するアルコキシシランの化学蒸
着を単分子層にとどめ、未反応のアルコキシシランおよ
び副生したアルコールやエーテルを除去を行ってから、
水蒸気による処理を行うと、金属体に結合したアルコキ
シシラン中になお残存しているアルコキシ基が水酸基に
変換するので、乾燥後に再びアルコキシシランを供給す
ると、2層目の皮膜が形成される。以下このような操作
を繰り返すと設計通りに所望の厚さまで1層ずつ皮膜を
形成される。図2にこの反応プロセスの模式図を示す。
【0044】これに対し、アルコキシシランを酸素、オ
ゾンあるいは水蒸気と共に供給すると、金属体表面の水
酸基とアルコキシシランのアルコキシ基との間の反応も
進むが、気相でアルコキシシランの酸化分解や加水分解
が生じてシリカ微粒子が生じ、この微粒子が金属体表面
に析出するため、形成皮膜にはかなりの量のシリカ微粒
子が混在する形となり、金属体に対する皮膜の密着性が
低下し、皮膜の緻密性も損なわれることになる。
【0045】
【実施例】次に実施例をあげて本発明をさらに説明す
る。
【0046】〈装置の構成〉図1は本発明の表面改質金
属体を製造するために用いる装置の一例を示した概略図
である。
【0047】(1) は環状式電気炉であり、該環状式電気
炉(1) の炉室(11)にはステンレス鋼製の反応管(2) が備
えられている。この反応管(2) には金属体(M) が装填さ
れる。反応管(2) にはガス流入口(21)とガス排出口(22)
とが設けられている。なお金属体(M) が管状であるとき
は、この金属体(M) で反応管を兼ねることができる。
【0048】(12)は熱電対式温度センサーである。この
熱電対式温度センサー(12)は図示せざる制御装置に接続
されており、炉室(11)内が予め設定された温度を保持す
るために常に測温結果を制御装置に伝達している。制御
装置は、熱電対式温度センサー(12)の測温結果に基いて
環状式電気炉(1) に命令を発し、適宜電力の入切を行わ
せる。なお金属体(M) が長いものである場合には、複数
の加熱ヒーター、複数の温度センサーおよび複数の制御
装置でそれぞれ独立に温度制御を行い、金属体(M) の温
度分布を最小限に抑えるようにする。
【0049】反応管(2) には、不活性ガスからなるキャ
リアガス源(C) から供給されるガスと酸素含有ガス源
(O) から供給されるガスとが切り換え可能に供給される
ようになっている。
【0050】このうちキャリアガス源(C) から供給され
るキャリアガスは、さらに不活性ガス供給系(3) 、水蒸
気供給系(4) およびアルコキシシラン供給系(5) に分岐
しており、反応管(2) に至る前に後述の酸素含有ガス供
給系(6) と共に集合し、ガス流入口(21)に接続するよう
にしてある。
【0051】不活性ガス供給系(3) は、キャリアガス供
給配管(31)に順次上流側から流量計(32)、流量調節弁(3
3)および閉止弁(34)を設けた構成とされている。
【0052】水蒸気供給系(4) は、キャリアガス供給配
管(41)に順次上流側から流量計(42)、流量調節弁(43)お
よび閉止弁(44)を設けた構成とされており、流量調節弁
(43)と閉止弁(44)との間には水(W) を入れた加湿器(45)
が設けられている。加湿器(45)より下流のキャリアガス
供給配管(41)は水蒸気供給管(46)となる。
【0053】アルコキシシラン供給系(5) は、キャリア
ガス供給配管(51)に順次上流側から流量計(52)、流量調
節弁(53)および閉止弁(54)を設けた構成とされており、
流量調節弁(53)と閉止弁(54)との間にはアルコキシシラ
ン(Si)を入れた気化器(55)が設けられている。気化器(5
5)より下流のキャリアガス供給配管(51)はアルコキシシ
ラン供給配管(56)となる。
【0054】流量計(32), (42), (52)はそれぞれの供給
系に流れるキャリアガスの流量を計測して表示するもの
であり、下流側に設けた流量調節弁(33), (43), (53)と
の連動によって予め設定した流量を確保する制御機能も
備えている。
【0055】一方、酸素含有ガス源(O) から供給される
酸素含有ガスは、酸素含有ガス供給系(6) を介して反応
管(2) に導入される。この酸素含有ガス供給系(6) は、
酸素含有ガス供給配管(61)に順次上流側から流量計(6
2)、流量調節弁(63)および閉止弁(64)を設けた構成とさ
れている。
【0056】なお、閉止弁(34), (44), (54), (64)はい
ずれも手動の弁であって、普段は開通状態とされている
が、緊急時や装置の休止時には閉止される。
【0057】〈操 作〉金属体(M) 表面にシリカ皮膜を
形成させるにあたっては、まず金属体(M) の表面を清浄
にし、反応管(2) 内にセットしてから、所定温度に制御
された環状式電気炉(1) に装填する。
【0058】そして不活性ガス供給系(3) の流量調節弁
(33)を開放して所定流量のキャリアガスを反応管(2) に
供給し、ひとまず反応管(2) 内をキャリアガス雰囲気と
してからその供給を停止する。
【0059】その後アルコキシシラン供給系(5) の流量
調節弁(53)を開通し、所定流量のキャリアガスを気化器
(55)に供給する。そうするとこのキャリアガスはアルコ
キシシラン(Si)内でバブリングし、その蒸気を同伴して
反応管(2) に導かれるから、反応管(2) 内はアルコキシ
シラン蒸気の流通雰囲気となる。この状態で所定時間金
属体(M) をアルコキシシラン雰囲気に曝してシリカ皮膜
を形成させる。
【0060】所定時間経過後、流量調節弁(53)を閉止し
てアルコキシシランの供給を停止し、次に酸素含有ガス
供給系(6) から酸素含有ガスを供給する。そうすると、
酸素含有ガス中の酸素が未反応のアルコキシシランおよ
び副生するアルコール、エーテルなどの有機物残渣と反
応してそれらを酸化させ、さらには系外に持ち去る。
【0061】水蒸気の供給を行うときは、酸素含有ガス
供給系(6) の流量調節弁(63)を閉止して酸素含有ガスの
供給を停止し、水蒸気供給系(4) の流量調節弁(43)を開
通して所定流量のキャリアガスを加湿器(45)に供給す
る。そうするとこのキャリアガスは水(W) 内でバブリン
グし、水蒸気を同伴しながら水蒸気供給管(46)を経て反
応管(2) に導入されるから、この水蒸気により金属体
(M) 上に形成したシリカ皮膜の最上層のアルコキシ基が
加水分解反応を起こして水酸基となる。所定時間が経過
した段階で流量調節弁(43)を閉止して水蒸気の供給を一
旦停止する。そして反応管(2) へのアルコキシシラン蒸
気の供給、酸素含有ガスの供給を順次行い、以下、水蒸
気の供給、アルコキシシラン(Si)の供給および酸素含有
ガスの供給の各操作を必要回数繰り返す。
【0062】最後の操作が終了したときは、流量調節弁
(63)を閉止し、再度不活性ガス供給系(3) の流量調節弁
(33)を開通としてキャリアガスを反応管(2) に導入し、
反応管(2) 内を清浄にすると共に、金属体(M) を冷却
し、表面が改質された製品を取り出す。
【0063】〈改質金属体の製造と評価〉 実施例1〜17 上に述べた装置を用い、キャリアガスとしては窒素ガ
ス、酸素含有ガスとしては酸素ガス、アルコキシシラン
としては信越化学株式会社製のテトラエトキシシランを
それぞれ用い、金属体(M) の一例としてのステンレス鋼
材に対するシリカ皮膜の形成を行った。
【0064】硝酸浸漬によって管内表面に不動態皮膜を
形成させた外径6.35mmの市販のステンレス鋼製電解研磨
管(SUS316L)を管の長手方向に半分に切断し、
巾約6mm、長さ約20mmの試験片を作成した。この試験
片を界面活性剤入りの洗浄液(5%クリーンエース(登
録商標))で脱脂洗浄した後、超純水ですすぎ、窒素ガ
スを吹き付けて乾燥させた。
【0065】環状式電気炉(1) に設置したステンレス製
反応管(2)(外径12.7mm、内径10.2mm、長さ500mm)
に、まず試験片をセットしない状態でキャリアガス源
(C) から不活性ガス供給系(3) を介して窒素ガスを10
ml/minの割合で供給し、反応管(2) 内部の雰囲気を窒素
ガスで置換した。その後、窒素ガス10ml/minの流通雰
囲気下で反応管(2) を後述の表1の蒸着反応温度(25
0℃、300℃、350℃、400℃)まで昇温した。
【0066】ついで上記の表面清浄化処理を施した試験
片をガス排出口(22)を介して反応管(2) 内の中央部に挿
入し、反応管(2) への窒素ガスの供給を停止すると共
に、アルコキシシラン供給系(5) よりテトラエトキシシ
ラン(分圧10mmHg)と窒素ガスとの混合ガスを反応管
(2) へ10ml/minの割合で流しながら、表1に示す蒸着
反応条件で化学蒸着反応を行った。
【0067】所定の蒸着時間が経過してから反応管(2)
へのテトラエトキシシランと窒素ガスとの混合ガスの供
給を停止し、酸素含有ガス供給系(6) から酸素ガスを反
応管(2) へ10ml/minの割合で流しながら、蒸着反応温
度と同じ温度条件下に1時間加熱処理した。
【0068】その後、反応管(2) への酸素ガスの供給を
停止し、再度不活性ガス供給系(3)より窒素ガスを反応
管(2) へ10ml/minの割合で流しながら反応管(2) を室
温にまで冷却した後、試験片を反応管(2) から取り出し
た。
【0069】得られた試験片につき目視観察を行ったと
ころ、実施例1〜17の試験片は全て処理前の電解研磨
面の光沢と色調とを保っていた。
【0070】次に、皮膜形成処理した試験片の耐蝕性を
調べるために、該試験片を10%王水に2時間浸漬し、
浸漬後の電解研磨面側の表面状況(光沢の有無や表面侵
蝕状態)を目視観察した。
【0071】この目視観察後、上記電解研磨面側に1%
王水 0.1mlを20分間接液(接液面積約150〜190
mm2)し、該接液に溶出した鉄およびクロムの溶出量をフ
レームレス原子吸光分析装置により測定した。結果を表
1に示す。
【0072】比較例1〜8 蒸着反応温度を200℃または450℃とし、蒸着反応
時間を1時間、2時間、3時間または6時間としたほか
は実施例1〜17と同様にして試験片に対するシリカ皮
膜の形成を行った。結果を表1に併せて示す。ただし、
10%王水に2時間浸漬したときの電解研磨面側の表面
状況が劣っていたので、1%王水を接液したときの鉄お
よびクロムの溶出量については測定を行っていない。
【0073】 表1 化学蒸着反応条件 耐蝕性試験結果 温度 時間 10%王水2時 1%王水接液への (℃) (hr) 間浸漬後の目 溶出量(ng/mm2) ## 視観察 # 鉄 クロム 実施例 1 250 1 △ 2.8 0.1 実施例 2 250 2 △ 2.4 0.1以下 実施例 3 250 3 ○ 2.2 0.1以下 実施例 4 250 6 ○ 1.8 0.1以下 実施例 5 300 1 ○ 1.6 0.1以下 実施例 6 300 2 ○ 2.1 0.1以下 実施例 7 300 3 ○ 1.1 0.1以下 実施例 8 300 6 ○ 1.5 0.1以下 実施例 9 350 1 ○ 1.4 0.1以下 実施例10 350 2 ○ 1.4 0.1以下 実施例11 350 3 ○ 0.5 0.1以下 実施例12 350 6 ○ 1.2 0.1以下 実施例13 350 48 ○ 1.8 0.1以下 実施例14 400 1 △ 2.7 0.1 実施例15 400 2 △ 3.0 0.1 実施例16 400 3 △ 3.3 0.1 実施例17 400 6 △ 3.8 0.1以下 比較例 1 200 1 × − − 比較例 2 200 2 × − − 比較例 3 200 3 × − − 比較例 4 200 6 × − − 比較例 5 450 1 × − − 比較例 6 450 2 × − − 比較例 7 450 3 × − − 比較例 8 450 6 × − −
【0074】(注)# 10%王水2時間浸漬後の電解研磨面側の表面状況
を光沢の有無、表面侵蝕の状況を10%王水浸漬前と対
比して、下記の基準で判定した。 ○…非常に良好:浸漬前と表面形態変わらず △…良好:一部光沢消失 ×…不良:全面光沢消失、侵蝕により凹凸が発生## 10%王水2時間浸漬後、1%王水20分間接液時
の鉄およびクロムの溶出量を、フレームレス原子吸光分
析装置による鉄およびクロムの測定値から下記の算出式
で試験片の単位表面積当りの鉄およびクロム溶出量に換
算したもの。 溶出量(ng/mm2) =[鉄またはクロムの測定値(ng/ml) ×接液1%王水量
(ml)]/試験片との接液面積(mm2)
【0075】実施例1〜17で得たシリカ皮膜形成試験
片の耐蝕性をシリカ皮膜を形成しない未処理試験片と比
較評価するため、未処理試験片として、SUS316L
電解研磨管、SUS316L光輝焼鈍管およびSUS3
16L酸化膜管(電解研磨管基材として、酸素雰囲気中
で350℃、1時間加熱処理して表面に金色色調を有す
る不動態皮膜を形成したもの)を用意し、これらを同様
に10%王水に2時間浸漬した後、目視により表面状態
を観察した。その結果、いずれも光沢が全面消失し、侵
蝕による著しい凹凸が発生していた。
【0076】さらに、未処理基材としてSUS316L
電解研磨管およびSUS316L光輝焼鈍管を1%王水
に20分間接液したときの鉄およびクロムの溶出量を上
記と同じ方法で測定したところ、試験片表面積1mm2
りの溶出量は、SUS316L電解研磨管の場合で鉄1
5.0ng、クロム0.3ngであり、SUS316L光輝焼鈍管
の場合で鉄20.6ng、クロム 6.0ngであった。
【0077】上記の結果から、実施例に従って製造した
シリカ皮膜形成ステンレス鋼材はすぐれた耐蝕性を有し
ており、特に蒸着反応温度を300〜350℃として製
造したものは耐蝕性が極めてすぐれていることがわか
る。
【0078】実施例18 上記実施例と同じ装置、同じステンレス鋼基材を用い
て、上記実施例と同様の手法にて化学蒸着反応を行った
後、残存有機物残渣を除去した。ついで、反応管(2) を
冷却せずに、水蒸気供給系(4) から水蒸気と窒素ガスと
の混合ガスを反応管(2) へ10ml/minの割合で3時間導
入し、その後水蒸気の導入を停止し、再度不活性ガス供
給系(3) より窒素ガスを反応管(2) へ10ml/minの割合
で1時間流した後、窒素ガスの供給を停止し、再びテト
ラエトキシシラン(分圧10mmHg)含有窒素ガスをアル
コキシシラン供給系(5) から反応管(2) に導入し、化学
蒸着反応を行った。その後、上記実施例と同様の手法に
て有機物残渣を除去し、窒素ガス流通雰囲気下で反応管
(2) を室温まで冷却し、シリカ皮膜形成試験片を取り出
した。なお、化学蒸着反応条件は実施例4と同一条件で
行い、水蒸気の導入は室温で純水を10ml/minの窒素ガ
スでバブリングする方法を採用した。
【0079】その結果、得られたシリカ皮膜形成試験片
は処理前の電解研磨面の光沢と色調を保っており、上記
の実施例と同様の方法で行った耐蝕性試験による耐蝕性
も非常にすぐれていた。すなわち、10%王水に2時間
浸漬した後の目視観察においても表面形態の変化は全く
見られず、その10%王水に2時間浸漬した試験片の電
解研磨面側に1%王水 0.1mlを20分間接液した後、該
接液に溶出した鉄およびクロムの溶出量をフレームレス
原子吸光分析装置で測定したときの結果も、試験片表面
積1mm2 当りで鉄は 0.2ng、クロムは 0.1ngにすぎなか
った。
【0080】実施例19〜20 上述の実施例7(蒸着温度300℃、蒸着時間3時間)
および実施例13(蒸着温度350℃、蒸着時間48時
間)と同じ条件で化学蒸着反応を行い、オージェ電子分
光装置により処理試験片の深さ方向のシリカ皮膜の膜厚
および膜組成について分析した。結果を表2に示す。
【0081】 表2 化学蒸着反応条件 オージェ電子分光装置による表面分析結果 温度 時間 シリカ皮膜 シリカ皮膜の最表面膜組成(%)* (℃) (hr) の膜厚 # Si Fe Cr O 実施例19 300 3 約25 17 10 4 69 実施例20 350 48 約94 20 12 4 64 (注) # 膜厚の単位はオングストローム。* シリカ皮膜の膜組成をSi、Fe、Cr、Oの4元
素として分析し、4元素の原子濃度を100%として各
成分組成比を表示した。
【0082】表2から、本発明の方法で製造したシリカ
皮膜形成ステンレス鋼材には、膜厚が非常に薄い表層で
SiリッチのSi、Fe、Cr混在酸化膜のシリカ皮膜
が形成されていることがわかる。
【0083】実施例21〜22 図1に示した環状式電気炉(1) に代えてステンレス鋼製
のマッフル(外径34.0mm、内径28.4mm、長さ2800m
m)を備えた電気炉を用い、金属体(M) としては、硝酸
浸漬により管内表面に不動態皮膜を形成した外径6.35m
m、長さ2000mmの市販のステンレス鋼製電解研磨管
(SUS316L)を用いた。
【0084】反応管(2) の設置を省略し、この電解研磨
管を反応管(2) 兼用の試験片として上記のマッフル内に
取り付け、該電解研磨管の一端を不活性ガス供給系(3)
、水蒸気供給系(4) 、アルコキシシラン供給系(5) お
よび酸素含有ガス供給系(6) からなるガス供給系統に接
続し、他端をガス排出口(22)とした。
【0085】ステンレス鋼製マッフルには窒素ガス入口
と窒素ガス出口が接続されており、炉の加熱時には、ス
テンレス鋼製マッフル内および電解研磨管外側は窒素ガ
ス流通雰囲気下にあるようにした。
【0086】予め電解研磨管の内表面(電解研磨面)を
実施例1〜17の場合と同様に表面清浄化処理を行って
おき、該電解研磨管に不活性ガス供給系(3)より窒素ガ
スを50ml/minの割合で流し、管内を窒素ガスで置換し
た。その後、窒素ガス50ml/minの流通雰囲気下で電解
研磨管を350℃まで昇温し、この温度に3時間保持し
た。
【0087】ついで、不活性ガス供給系(3) からの窒素
ガスの供給を停止し、アルコキシシラン供給系(5) より
テトラエトキシシラン(分圧2mmHg)と窒素ガスとの混
合ガスを電解研磨管内へ50ml/minの割合で流しなが
ら、蒸着反応温度350℃で3時間(実施例21の場
合)または48時間(実施例22の場合)化学蒸着反応
を行った。
【0088】次に、テトラエトキシシランと窒素ガスと
の混合ガスの供給を停止し、酸素含有ガス供給系(6) よ
り酸素ガスを電解研磨管内へ50ml/minの割合で流しな
がら350℃で1時間加熱処理し、有機物残渣を除去し
た。
【0089】その後、酸素ガスの供給を停止し、不活性
ガス供給系(3) から窒素ガスを50ml/minの割合で流し
ながら、電解研磨管を室温まで冷却した後、ステンレス
鋼製マッフルから取り出した。
【0090】これにより、管内にシリカ皮膜が形成した
電解研磨管が得られたので、その水分脱着特性を調べ
た。すなわち、シリカ皮膜が形成した電解研磨管の内表
面を25℃、相対湿度40%の水分に曝した後、水分濃
度0.01ppm以下のアルゴンガスでパージしたときの水分
濃度の経時変化を測定し、水分脱着特性を未処理の電解
研磨管(SUS316L)と比較した。
【0091】結果を後の表3に示す。なお、水分脱着特
性の測定は次の手順により行った。
【0092】(1) 逆浸透装置とイオン交換装置を通して
精製した純水200mlを入れたガス洗浄瓶の水中をバブ
リングしたアルゴンガスを、除湿したアルゴンガスで稀
釈することにより、25℃の相対湿度40%に湿度調整
したアルゴンガスを作った。このときの相対湿度は、電
子式温湿度計(株式会社チノー製、HNP−20型)を
用いて測定した。このようにして湿度調整したアルゴン
ガスを500ml/minの流量で各処理管の中へ1時間導入
し、処理管内表面を25℃の相対湿度40%のの水分に
暴露した。
【0093】(2) 25℃の相対湿度40%の水分に暴露
した各処理管の中に、ゲッター式アルゴンガス精製装置
(大陽酸素株式会社製、SPU−A型)で水分を除去し
たアルゴンガス(水分0.01ppm 以下)を1100ml/min
の流量で通気したときの処理管出口ガス中の水分濃度の
経時変化を大気圧イオン化質量分析計(日立東京エレク
トロニクス株式会社製、UG−240−PN型)を用い
て測定した。水分濃度の経時変化測定は処理管1本ごと
に行った。
【0094】(3) 前記の水分濃度の経時変化は、測定開
始後(除湿アルゴンガス通気開始後)1時間経過までは
各処理管の温度は25℃に、その後はマントルヒーター
(大科電器株式会社製、長さ500mm、ヒーター容量1
00W)4本を用いて昇温速度10℃/minで150℃ま
で昇温し、その温度に1時間維持して、測定した。
【0095】 表3 化学蒸着反応条件 シリカ皮膜形成電解研磨管の水分脱着特性 温度 時間 出口アルゴンガス中の水分濃度 (ppm) (℃) (hr) 25℃経過 150℃昇温 150℃経過 1hrの場合 の場合 1hrの場合 実施例21 350 3 0.01 0.20 0.01 実施例22 350 48 0.01 0.25 0.01
【0096】なお、未処理の電解研磨管(SUS316
L)の水分濃度の経時変化を同様にして測定したとき
は、出口アルゴンガス中の水分濃度は、管温度25℃の
場合にはアルゴンガスパージ経過1時間で0.04ppm 、管
温度150℃昇温の場合には最大0.58ppm 、管温度15
0℃の場合には経過1時間で0.05ppm であった。
【0097】上記の結果から、本発明の方法で製造した
シリカ皮膜形成ステンレス鋼材は、水分脱着特性にすぐ
れ、管内からの水分放出が少ないことがわかる。
【0098】
【発明の効果】本発明にあっては、ステンレス鋼材など
の金属体へのアルコキシシランの供給を、比較的低温
(たとえば220〜430℃)で、しかも酸素、オゾン
および水蒸気のいずれも実質的に含まない条件下に行う
ようにしているので、アルコキシシランが気相で熱分
解、酸化分解または加水分解を起こすことなく、金属体
に対するアルコキシランの化学蒸着反応を円滑に行うこ
とができる。
【0099】そのため、得られたシリカ皮膜にはシリカ
微粒子が含まれず、金属体との密着性も良好となり、し
かも緻密なものとなる。従って、本発明の方法により製
造されたシリカ皮膜形成金属体は、従来のゾル−ゲル法
やCVDにより製造されるものに比し、格段にすぐれた
耐蝕性を示し、また水分放出量も少ない。
【0100】殊に、アルコキシドシラン供給工程、有機
物残渣除去工程に引き続き水蒸気供給工程を実施し、さ
らにアルコキシドシラン供給工程、有機物残渣除去工
程、水蒸気供給工程を繰り返すようにすれば、単分子層
ごとのシリカ皮膜形成も可能となり、任意の膜厚の極め
てすぐれた耐蝕性を有するシリカ皮膜形成金属体を製造
することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の表面改質金属体を製造するために用い
る装置の一例を示した概略図である。
【図2】本発明の反応プロセスの模式図である。
【符号の説明】
(1) …環状式電気炉、 (11)…炉室、(12)…熱電対式温度センサー、 (2) …反応管、 (21)…ガス流入口、(22)…ガス排出口、 (3) …不活性ガス供給系、 (31)…キャリアガス供給配管、(32)…流量計、(33)…流
量調節弁、(34)…閉止弁、 (4) …水蒸気供給系、 (41)…キャリアガス供給配管、(42)…流量計、(43)…流
量調節弁、(44)…閉止弁、(45)…加湿器、(46)…水蒸気
供給管、(W) …水、 (5) …アルコキシシラン供給系、 (51)…キャリアガス供給配管、(52)…流量計、(53)…流
量調節弁、(54)…閉止弁、(55)…気化器、(56)…アルコ
キシシラン供給管、(Si)…アルコキシシラン、 (6) …酸素含有ガス供給系、 (61)…酸素含有ガス供給配管、(62)…流量計、(63)…流
量調節弁、(64)…閉止弁、 (C) …キャリアガス源、 (O) …酸素含有ガス源、 (M) …金属体

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】酸素、オゾンおよび水蒸気のいずれをも実
    質的に含まないアルコキシシラン蒸気を適正化学蒸着温
    度に加熱された金属体と接触させ、該金属体表面に化学
    蒸着層を形成させる化学蒸着工程A、および、化学蒸着
    工程A終了後、未反応物および副生物を系外に除去する
    有機物残渣除去工程B、をこの順に実施することを特徴
    とする表面改質金属体の製造法。
  2. 【請求項2】酸素、オゾンおよび水蒸気のいずれをも実
    質的に含まないアルコキシシラン蒸気を適正化学蒸着温
    度に加熱された金属体と接触させ、該金属体表面に化学
    蒸着層を形成させる化学蒸着工程A、化学蒸着工程A終
    了後、未反応物および副生物を系外に除去する有機物残
    渣除去工程B、および、有機物残渣除去工程B終了後の
    金属体を水蒸気と接触させて処理する水蒸気処理工程
    C、水蒸気処理工程C終了後、系に不活性ガスを供給し
    て乾燥を行う乾燥工程D、をこの順に実施し、さらに化
    学蒸着工程Aに戻ってこれら各工程を必要回数繰り返す
    ことを特徴とする表面改質金属体の製造法。
  3. 【請求項3】適正化学蒸着温度が220〜430℃であ
    る請求項1または2記載の製造法。
  4. 【請求項4】金属体がステンレス鋼材である請求項1ま
    たは2記載の製造法。
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