JP2739342B2 - 多層セラミックロータ、その成形体及びその製造方法 - Google Patents

多層セラミックロータ、その成形体及びその製造方法

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JP2739342B2 JP1135373A JP13537389A JP2739342B2 JP 2739342 B2 JP2739342 B2 JP 2739342B2 JP 1135373 A JP1135373 A JP 1135373A JP 13537389 A JP13537389 A JP 13537389A JP 2739342 B2 JP2739342 B2 JP 2739342B2
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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、自動車用ターボチャージャーロータ、ガス
タービンロータなど用いるのに適した多層セラミックロ
ータ、その成形体およびその製造方法に関するものであ
る。
〔従来の技術〕
タービンロータ等は、1000℃近い温度又はそれ以上の
高温下で数万rpm以上の高速回転を行う必要があるた
め、耐熱性、及び高温強度に優れた材料を用いることが
要求される。
従来、このようなタービンロータ等には、耐熱性合金
が用いられていたが、約1000℃又はそれ以上もの高温に
長時間耐えることのできるものが少なく、しかも重量が
大きく、慣性が大きくなるという問題があった。そこ
で、最近は金属よりも高温で安定であり、軽量で、酸化
腐食やクリープ変形を受けにくいSi3N4、SiC、サイアロ
ン等のセラミックスが用いられるようになってきた。
このようなセラミックスからタービンロータ等を製造
するには、射出成形により翼部と軸部を一体的に成形し
た後で、不活性雰囲気中で焼成する方法が用いられてい
たが、緻密で高強度の軸部を作ることができず、また翼
部と軸部の肉厚の差が大きい場合には、成形体の脱脂工
程でひび割れが発生するという問題があった。
そのため、特開昭57−88201号公報、特開昭58−12400
3号公報、特開昭60−142002号公報などに記載されてい
るように、翼部と軸部とを予め別々に成形した後、両者
を嵌合させて一体的に焼成接合される方法が提案されて
いる。
〔発明が解決しようとする課題〕
しかしながら、このような方法によっても軸部を充分
に緻密化するのが難しく、しかも翼部と軸部の接合部分
での破壊が起り易いという問題がある。
また、上記従来技術では、成形体の段階で翼部の強度
が十分でなく、破損したり、亀裂が入ったりするという
問題もあった。
従って本発明の目的は、翼部を含む外層部が十分な強
度を有するセラミックスロータ用成形体及びその製造方
法を提供することである。
本発明のもう1つの目的は、軸部が高度に緻密化して
強度が高く、翼部を含む外層部が優れた高温耐食性を有
し、かつ外層部と軸部とが強固に接合されているセラミ
ックロータを提供することである。
〔課題を解決するための手段〕
本発明者は、上記目的を達成すべく種々検討を重ねた
結果、翼部を含む外層部においてセラミック成分の一部
を繊維状としたセラミックロータ用成形体では、外層部
が十分な強度を有するために、取扱い中に破損したり亀
裂が入ったりすることがなくなることを発見した。ま
た、Y2OとAl2O3の配合比が異なる所定の組成範囲の窒化
珪素系セラミックスにより、外層部と軸部とを形成する
と、外層部に高い高温耐食性を付与するとともに軸部を
高強度化することができることを発見した。以上の発見
に基づき、本発明を完成したものである。
すなわち、本発明の多層セラミックロータ用成形体
は、いずれも焼結助剤としてY2O3及びAl2O3を含有する
窒化珪素系セラミックスからなる外層部と軸部とで一体
的に構成され、前記外層中のAl2O3の少なくとも一部が
繊維状であることを特徴とする。
また本発明の多層セラミックロータ用成形体の製造方
法は、いずれも焼結助剤としてY2O3及びAl2O3を含有す
る窒化珪素系セラミックスからなる外層部と軸部とで一
体的に構成された多層セラミックスロータ用成形体を製
造するもので、(a)セラミック成分の一部が繊維状で
ある第一のスリップと、セラミック成分が繊維状でない
第二のスリップを作成し、(b)スリップキャスト用型
内に前記第一のスリップを注入し、(c)前記外層部に
相当する部分が固化した時点で前記第一スリップを排出
して中央に凹部を形成し、(d)しかる後前記凹部内に
前記第二のスリップを注入し、もって前記軸部を前記外
層部と一体的に固化させることを特徴とする。
さらに本発明の多層セラミックロータは、いずれも焼
結助剤としてY2O3及びAl2O3を含有する窒化珪素系セラ
ミックスからなる外層部と軸部とで一体的に構成された
多層セラミックロータにおいて、前記外層部は2〜10重
量%のY2O3及び0.2〜5重量%のAl2O3を含有し、前記軸
部は2〜10重量%のY2O3及び0.5〜10重量%のAl2O3を含
有し、かつ前記外層部のY2O3/Al2O3の重量比(A)と前
記軸部のY2O3/Al2O3の重量比(B)との比(A/B)が1.0
以上であることを特徴とする。
本発明を以下詳細に説明する。
第1図は、本発明の多層セラミックスローターの一例
を示す断面図である。多層セラミックローターは、ロー
タ本体1と、ロータ本体から半径方向に延出している複
数枚の翼部2とからなり、ロータ本体1は外層部3と、
軸部4とで構成されている。翼部2とロータ本体1の外
層部3とはともに高温腐食性ガスにさらされる部分であ
り、ロータ本体1の軸部4は高応力がかかる部分であ
る。従って、前者を一般的にロータの外層部5と呼ぶこ
とにする。
本発明においては、外層部5を形成するためのセラミ
ックス成分のいずれかを繊維状にすると、成形体の強度
が向上し、クラック防止となるので望ましい。しかし、
繊維状セラミックスの割合が大きくなりすぎると、成形
体の密度が低下するのでかえって強度不足となる。一般
に繊維状セラミック成分は、全セラミックス成分の0.5
〜10重量%程度が適当であり、特に1〜3重量%が適当
である。いずれのセラミック成分が繊維状となってもか
まわないが、通常は、繊維状にするのが容易であること
からAl2O3を繊維状にして使用する。繊維状Al2O3セラミ
ックスの平均繊維長は一般に50〜500μm程度である。
なお、軸部4用のセラミックス成分の一部を繊維状にす
ることは、緻密化されにくく強度が不十分となるため好
ましくない。
かかる多層セラミックスロータ用成形体を製造するに
は、まず外層部用の第一のスリップと軸部用の第二のス
リップを作成する。具体的には、外層部5用の第一のセ
ラミックスリップの成分は、Y2O32〜10重量%、Al2O30.
2〜5重量%、残部実質的にSi3N4とし、軸部4用の第二
のセラミックスリップの成分は、Y2O32〜10重量%、Al2
O30.5〜10重量%、残部実質的にSi3N4とし、かつY2O3/A
l2O3の比をA/B≧1.0に設定する。
次に、石膏型等を用い、スリップキャスト法により外
層部5を成形する。外層部5の形成は、石膏型内に第一
のスリップを注入し、外層部5に相当する部分が固化し
た時点でその中央部のまだ流動状態の第一スリップを排
出することにより行う。これはスリップキャスト法にお
いては、外側から脱水固化していく性質を利用したもの
である。このようにして形成された中央凹部はちょうど
軸部4に対応する形状を有するので、その凹部内に第二
のスリップを注入し、固化させて軸部4を形成する。こ
のようにして形成された多層成形体は、外層部と軸部と
の接合が完全に行われている。
その後、常法により焼結して、セラミックスを緻密化
し、外層部5と軸部4とが一体化した多層セラミックロ
ータを得る。
なおセラミックスのスリップは、セラミックス成分に
適当な分散剤を配合して、水等の媒体に分散させること
により調製し、バインダーは添加する必要がない。
上記成形体の焼結により得られる多層セラミックロー
タは、外層部5及び軸部4を形成しているセラミックス
はいずれも、Si3N4を主成分とするものであるが、焼結
助剤であるY2O3及びAl2O3の組成が異なることを特徴と
する。特に外層部5の窒化珪素系セラミックスは、2〜
10重量%のY2O3と0.2〜5重量%のAl2O3を含有し、軸部
4の窒化珪素系セラミックスは2〜10重量%のY2O3と0.
5〜10重量%のAl2O3を含有している。また外層部5のY2
O3/Al2O3の重量比(A)と軸部4のY2O3/Al2O3の重量比
(B)との比率(A/B)は1.0以上となるように設定す
る。すなわち、外層部5のセラミックスのAl2O3に対す
るY2O3の配合割合は、軸部4のセラミックス以上となっ
ている。A/Bが1.0未満では、軸部4を充分に緻密化して
高強度を得るとともに外層部5の高温耐食性を高めるこ
とが困難で、しかも外層部5と軸部4との接合部分で破
壊が起り易くなるので不適当である。一方、A/Bがあま
り大きくなりすぎると外層部5と軸部4との熱膨張係数
の差が大きくなり、接合部分に歪が生じ易くなったり、
亀裂が生じたりする。従って、A/Bの比は1.2〜1.5の範
囲内とするのが好ましい。
〔作 用〕
本発明者らの研究によれば、多層セラミックロータ用
の成形体の外層部において、セラミック成分の一部を繊
維とすることにより、十分に大きな強度が付与される。
繊維は一種の強化材として作用し、翼部の破損や亀裂の
防止及び焼結時の割れの防止に有効である。
また、窒化珪素系セラミックス中のAl2O3に対するY2O
3の配合割合が大きくなると、高温強度が高く高温耐食
性に優れ、熱膨張係数は小さくなる。逆に、Y2O3の配合
割合が小さくなると、焼結が早く起こるようになり、低
温での強度が高く、熱膨張係数は大きくなる。このこと
から、使用時にあまり高温にさらされることのない軸部
4に、Al2O3に対するY2O3の配合割合が小さい窒化珪素
系セラミックスを使用し、使用時に高温腐食性ガスにさ
らされる外層部5には、Al2O3に対するY2O3の割合が大
きい窒化珪素系セラミックスを使用する。これによっ
て、使用条件に応じて必要な高強度(軸部)及び高温耐
食性(外層部)を有する多層セラミックロータが得られ
る。
また、熱膨張係数が外層部5よりも軸部4の方が大き
いが、外層部5の方がより高温にさらされるため、高温
下で使用した場合には、外層部5と軸部4との熱膨張の
差は実質的に大きくならず、熱膨張差に基づく内部応力
による亀裂や破壊が起るようなことがない。
さらに、焼結に際して、軸部4が先に焼結して緻密化
するので、焼結割れやそりの問題がないという利点があ
る。逆に外層部5が先に焼結すると、その後で焼結する
軸部4の収縮により外層部5が引っ張られ、割れの原因
となる。
〔実施例〕
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する
が、本発明はこれに限定されるものではない。
実施例1 平均粒径0.6μmのSi3N4粉末100重量部に対し、第1
表に示す量のY2O3(平均粒径0.5μm)及びAl2O3(平均
粒径1μm)粉末を混合し、分散剤としてアンモニアを
0.001重量部加えて、重量部の水に分散させて、第一の
スリップ及び第二のスリップを調製した。
最大直径150mm、長さ80mmのロータ本体に高さ40mm、
幅1mmの翼が9枚設けられた形状のロータを形成するた
めに、第一のスリップを石こう型中に注入して、翼部を
含む外層部をスリップキャスト法により成形した。外層
部における第一のスリップが固化した段階で、未固化の
スリップを排出し、中央に凹部を形成した。次にその凹
部内に第二のスリップを注入し、固化させて軸部を成形
した。この場合、外層部の厚みは約7mmであった。この
操作を第1表に示す各種の組合せのスリップにより行っ
た。
次いで、成形体を1850℃の窒素雰囲気中で2時間焼結
して、多層セラミックロータを得た。
得られた多層セラミックロータについてTIT1200℃の
雰囲気中で60000rpmの回転数による回転試験を1時間行
った。その結果ロータに何の異常も認められなかった。
実施例2 実施例1において、第一のスリップ中のAl2O3を平均
繊維長150μmの繊維状として、外層部の成形を行った
以外同様にして、成形体を形成した。成形体は乾燥時に
ひびや割れが全く認められず、また取り扱いによる割れ
の問題もなかった。成形体の焼成後、同様の回転試験を
行ったが、異常はまったく起らなかった。
〔発明の効果〕
本発明によれば、外層部に繊維状セラミックスを配合
して成形体を作成すると、成形体強度を著しく向上する
ことができる。さらに外層部と軸部をそれぞれ上記組成
とすると、ほぼ均等に緻密化し、それぞれ充分な強度が
得られ、使用に際してもそれぞれの使用温度条件に対応
した適切な高強度、高温耐食性が得られる。また、外層
部と軸部の接合が強固であり、接合部分で応力破壊が起
るようなことがない。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の多層セラミックロータの一例を示す断
面図である。 1……ロータ本体 2……翼部 3……ロータ本体外層部 4……軸部 5……外層部
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 川上 泰伸 埼玉県和光市中央1丁目4番1号 株式 会社本田技術研究所内 (72)発明者 樋口 義勝 埼玉県和光市中央1丁目4番1号 株式 会社本田技術研究所内 (72)発明者 浜▲崎▼ 景久 埼玉県和光市中央1丁目4番1号 株式 会社本田技術研究所内 (72)発明者 吉野 哲司 埼玉県和光市中央1丁目4番1号 株式 会社本田技術研究所内 (72)発明者 北村 泰三 埼玉県和光市中央1丁目4番1号 株式 会社本田技術研究所内 (56)参考文献 特開 昭61−58868(JP,A)

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】いずれも焼結助剤としてY2O3及びAl2O3
    含有する窒化珪素系セラミックスからなる外層部と軸部
    とで一体的に構成された多層セラミックロータ用の成形
    体において、前記外層中のAl2O3の少なくとも一部が繊
    維状であることを特徴とする成形体。
  2. 【請求項2】請求項1に記載の成形体において、前記外
    層部は2〜10重量%のY2O3及び0.2〜5重量%のAl2O3
    含有し、前記軸部は2〜10重量%のY2O3及び0.5〜10重
    量%のAl2O3を含有し、かつ前記外層部のY2O3/Al2O3
    重量比(A)と前記軸部のY2O3/Al2O3の重量比(B)と
    の比(A/B)が1.0以上であることを特徴とする成形体。
  3. 【請求項3】いずれも焼結助剤としてY2O3及びAl2O3
    含有する窒化珪素系セラミックスからなる外層部と軸部
    とで一体的に構成された多層セラミックロータ用の成形
    体を製造する方法において、(a)セラミック成分の一
    部が繊維状である第一のスリップと、セラミック成分が
    繊維状でない第二のスリップを作成し、(b)スリップ
    キャスト用型内に前記第一のスリップを注入し、(c)
    前記外層部に相当する部分が固化した時点で前記第一ス
    リップを排出して中央に凹部を形成し、(d)しかる後
    前記凹部内に前記第二のスリップを注入し、もって前記
    軸部を前記外層部と一体的に固化させることを特徴とす
    る方法。
  4. 【請求項4】請求項3に記載の成形体の製造方法におい
    て、前記第一のスリップ中のAl2O3の少なくとも一部が
    繊維状であることを特徴とする方法。
  5. 【請求項5】請求項3又は4に記載の成形体の製造方法
    において、前記第一のスリップが2〜10重量%のY2O3
    び0.2〜5重量%のAl2O3を含有する窒化珪素系セラミッ
    クスからなり、前記第二のスリップが2〜10重量%のY2
    O3及び0.5〜10重量%のAl2O3を含有する窒化珪素系セラ
    ミックスからなり、前記第一のスリップ中のY2O3/Al2O3
    の重量比(A)と前記第二のスリップ中のY2O3/Al2O3
    重量比(B)との比(A/B)が1.0以上となるようにする
    ことを特徴とする方法。
  6. 【請求項6】いずれも焼結助剤としてY2O3及びAl2O3
    含有する窒化珪素系セラミックスからなる外層部と軸部
    とで一体的に構成された多層セラミックロータにおい
    て、前記外層部は2〜10重量%のY2O3及び0.2〜5重量
    %のAl2O3を含有し、前記軸部は2〜10重量%のY2O3
    び0.5〜10重量%のAl2O3を含有し、かつ前記外層部のY2
    O3/Al2O3の重量比(A)と前記軸部のY2O3/Al2O3の重量
    比(B)との比(A/B)が1.0以上であることを特徴とす
    る多層セラミックロータ。
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