JP2736656B2 - メタロセン誘導体の電荷移動錯体およびそのラングミュア・ブロジェット膜 - Google Patents

メタロセン誘導体の電荷移動錯体およびそのラングミュア・ブロジェット膜

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【発明の詳細な説明】 〈産業上の利用分野〉 本発明は、新規なメタロセン誘導体の電荷移動錯体お
よびそれを含むラングミュア・ブロジェット膜に関す
る。
〈従来の技術〉 金属錯体は、エネルギー変換材料、電気化学的触媒等
の高機能材料として注目され盛んに研究されている[N.
Oyama,S.Yamaguchi,M.Kaneko,A.Yamada,J.Electroanal.
Chem.,139,215(1982),K.Itaya,N.Shoji,I.Uchida,J.A
m.Chem.Soc.,106,3423(1984)等]。
そして、これらを薄膜化し規則的な分子集合体を形成
することによって、さらに高度な機能の発現が期待され
る。そのため、実際、薄膜形成の試みがなされている。
このような薄膜の製造方法には、真空蒸着、懸濁吹き付
け、ポリマー中への分散、機械的ラビングなどがある
が、いずれも厚膜の均一性、微結晶分布の形態の再現性
に問題がある。
そこで、これらの問題を解消するものとして、電界効
果型トランジスター、表示素子、光電変換素子、非線形
光学素子、二次元磁性体、生物物理学などの分野におい
て、ラングミュア・ブロジェット(LB)法による再現性
のある安定した分子配向性膜の形成が近年注目されてい
る[G.G.Roberts,Sensors and Actuators,4131(198
3);Contemp.Phys.,25,109(1984);G.G.Roberts,et a
l.,I.E.E.Proc.,128,I,197(1981):H.Kuhn,et al,J.Ch
em.Phys.,61,5009(1974);ibid,68,3918(1978);F.Ka
jzar,et al,Opt.Commun.,45,133(1983);J.phys.,44,C
−3,709(1983):M.Pomerantz,Solid State Commun.,3
9,707(1981);Surf.Sci.,142,556(1984)]。
このようなLB膜では、分子の組織的な集合化による機
能発現を積極的に期待できる点に特徴がある。
このようなLB膜には、機能性錯体として知られている
フェロセン等のメタロセン錯体を適用することが考えら
れ、実際の適用も報告されている[Thin Solid Films,1
33,1(1985)]。
一般に、フェロセン等のメタロセン錯体では、混合原
子価をもちうること、導電性をもつこと、磁性を発現し
うることなどの点で電極材料、導電性材料、センサー、
生理活性触媒等としての機能が期待されるからである。
このようなことから、本発明者らは、先に、「少なく
とも一方のシクロペンタジエニル環に (ただし、R1はアルキレン基を、R2はアルキル基を表わ
す。)で示される基を有するメタロセン錯体およびこれ
を含むLB膜」を提案している(特願昭62-115595号)。
〈発明が解決しようとする課題〉 しかしながら、上記のような錯体では、LB膜化が可能
であり、しかもLB膜化後、分子の配向を保持したままで
重合、特に光重合が可能であるものの、電気化学的な混
合原子価状態を実現するには至らなかった。その理由
は、LB膜化に重要とされるアルキル鎖を有しているため
に、そのLB膜においてはアルキル鎖がバッキングした層
が形成され、それが絶縁層として電解液およびイオンに
対して遮蔽的に作用するために電気化学的に不活性な膜
となっている。
従って、光重合等によるポリマーLB膜を用いて電気化
学的に混合原子価状態を実現することができれば、優れ
た機能膜が得られることが期待される。
本発明は、高機能材料としての用途が期待され、ラン
グミュア・ブロジェット膜の形成が可能で、かつ光重合
可能な新規なメタロセン誘導体の電荷移動錯体およびそ
れを用いたラングミュア・ブロジェット膜を提供するこ
とを目的としている。
〈課題を解決するための手段〉 上記目的を達成するために、本発明のメタロセン誘導
体の電荷移動錯体は、少なくとも一方のシクロペンタジ
エニル環に、 (ただし、R1はアルキレン基を、R2はアルキル基を表わ
す。)で示される基を有するメタロセン誘導体と電子受
容性化合物とから形成されるものである。
上記において、電子受容性化合物は、ヨウ素、テトラ
シアノエチレンまたは置換もしくは無置換のテトラシア
ノキノジメタンであることが好ましい。
また、本発明のラングミュア・ブロジェット膜は、上
記のメタロセン誘導体の電荷移動錯体を含むものであ
る。
以下、本発明の構成について説明する。
本発明のメタロセン誘導体の電荷移動錯体は模式的に
下記式(I)で示されるものである。
式(I) Fc→EA 上記式(I)において、Fcはメタロセン誘導体を、ま
たEAは電子受容性化合物を表わす。
メタロセン誘導体(Fc)は、少なくとも一方のシクロ
ペンタジエニル環に、 で示される基を有するものである。
ここに、R1は、置換もしくは無置換のアルキレン基を
表わすが、無置換のものが好ましい。
R1は炭素数1〜10、特に1〜5であることが好まし
く、直鎖でも分岐でもよい。
具体的には、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチ
レン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレ
ン、オクタメチレン等が挙げられ、これらのうち、特に
メチレンが好ましい。
また、R2は、置換もしくは無置換のアルキル基を表わ
すが、無置換のものが好ましい。
R2は、炭素数9〜18、特に10〜16であることが好まし
く、直鎖でも分岐でもよいが、直鎖のものが好ましい。
具体的には、n−ドデシル、n−トリデシル、n−ブ
タデシル、n−ペンタデシル、n−ヘキサデシル等が挙
げられる。
このような上記式で示される基はメタロセン錯体を構
成するシクロペンタジエニル環に直接結合する。
本発明のメタロセン錯体は、中心金属原子を挟んで平
行に対向する1対のシクロペンタジエニル環のうちいず
れか一方が、上記式で示される基を少なくとも一つ有す
ればよい。
従って、上記式で示される基の置換数および置換位置
は種々のものが可能であるが、1つのシクロペンタジエ
ニル基はモノ置換であることが好ましく、1−または1,
1′−の置換位置であることが好ましい。
1−位置換のものは下記式(II)で示される。
式(II) 上記式(II)においてMtは遷移金属、例えば、Co、N
i、Cu、Fe、Zn、Cr、Ru、Osを表わす。
なお、上記したとおり、上記式(II)において下方に
位置するシクロペンタジエニル環には上記式で示される
基が結合してもよい。
また、上記において、シクロペンタジエニル環は、置
換体であってもよい。
置換基としては、Cl等のハロゲン、OCH3等のアルコキ
シ基、ニトロ基等が挙げられる。
また、電子受容性化合物(EA)としては、ヨウ素
(I2)、テトラシアノエチレン(TCNE)、置換もしくは
無置換のテトラシアノキノジメタン(TCNQ)などが挙げ
られる。
置換のTCNQとして、具体的にはTCNQのキノン骨格に炭
素数12〜20の長鎖アルキル基(例えばオクタデシル、ド
デシル、ヘキサデシル等)などが置換したものが挙げら
れる。
電子受容性化合物のなかでも、I2、オクタデシルTCNQ
等の置換のTCNQが好ましい。
以下に、本発明のフェロセン誘導体の電荷移動錯体の
好ましい具体例を示すが、これらに限定されるものでは
ない。
次に、本発明のフェロセン誘導体の電荷移動錯体の合
成法について説明する。
まず、フェロセン誘導体を合成する。この場合、例え
ば式(II)で示される化合物は以下のようになる。
まず出発物質であるアルコールは以下のスキームに従
う。
より具体的には、文献[W.Beckmann et al.,Synthesi
s 1975,423、T.H.Vaughm,J.Am.Chem.Soc.55,3456(193
5)等]に従い合成した1−アルキル−2−ヨードアセ
チレンR2‐C≡CI(例えば、1−ドデシル−2−ヨード
アセチレン等)を、あらかじめメタノールに溶解したア
セチレン誘導体CH≡C-R1‐OH(例えば、プロパルギルア
ルコール、3−ブチン−1−オール等)、塩化銅および
エチルアミンの混合溶液中に加え、撹拌する。溶液を酸
性にし、エーテルで抽出を行った後、濾過により不純物
を取り除き、溶媒をエバポレーションし、目的とする上
記のアルコールを得る。
次にこのアルコールをメタロセンモノカルボン酸クロ
ライドと反応させる。
より具体的には上記アルコールとメタロセンモノカル
ボン酸クロライド(例えば、フェロセンモノカルボン酸
クロライド)を、有機溶媒(例えば、1,2−ジクロロエ
タン、酢酸エチル等)に溶解し、非酸化性雰囲気中(例
えばN2気流中等)にて、室温で2時間程度、その後、55
℃程度で16時間程度撹拌する。
このようにして得られた反応生成物を濾別し、石油エ
ーテル、n−ヘキサン等により再結晶して目的とするメ
タロセン誘導体を得る。
上記ではカルボン酸クロライドはメタロセンの1−位
に置換したものを用いるが、1,1′−位等に置換したも
のを用いれば、同様に対応したメタロセン誘導体を得る
ことができる。
このようにして得られるメタロセン誘導体は、IRスペ
クトル、電子スペクトル、H-NMR、マススペクトル、元
素分析等により容易に同定することができる。
このように合成したメタロセン誘導体から電荷移動錯
体を得る。
この場合、メタロセン誘導体と電子受容性化合物とを
ベンゼン、アセトン等の有機溶媒中で30〜70日程度反応
させた後、溶媒を留去する。
反応温度等の反応条件は電子受容性化合物により異な
り、I2の場合は暗所にて反応させる必要がある。
得られた電荷移動錯体は、IRスペクトル、電子スペク
トル、元素分析等により同定することができる。
IRスペクトルはKBr錠剤法によればよく、ν C≡N 2370〜2380cm-1ν C≡CH 2235〜2240cm-1ν C=O 1720〜1725cm-1の特性吸収が観測される。
電子スペクトルではCTバンドが観測される。
本発明の電荷移動錯体は、それ自身エネルギー変換材
料、電気化学的触媒などの高機能材料としての用途が期
待されるばかりでなく、次に述べるラングミュア・ブロ
ジェット膜を形成させる際の材料とすることもできる。
本発明の電荷移動錯体は、ラングミュア・ブロジェッ
ト膜を形成する際要求される有機溶媒(クロロホルム、
ベンゼン等)に対する溶解性も十分である(10-3M以上
溶解可能)。
本発明の電荷移動錯体のLB膜を作製するには、通常、
水平付着法が適用できる。
この水平付着法は、通常の方法に従えばよい。
この際展開溶媒としては、ベンゼン、クロロホルム等
を用いればよい。
なお、LB膜中にはマトリックス物質としてステアリン
酸塩等が含有されていてもよい。
本発明の電荷移動錯体は光重合が可能である。
従って、単分子膜を重合した後に水平付着法や垂直浸
漬法に従いLB膜としてもよい。
またLB膜を光重合してもよい。
具体的には、通常の方法に従えばよい。
このようにして得られたLB膜では、電気化学的な混合
原子価状態が実現でき、電子デバイス、スイッチング素
子、情報変換素子等の各種高機能膜としての用途が可能
となる。
〈実施例〉 以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。
実施例1. (1−1)2,4−ヘプタデカジニル−フェロセンカルボ
キシレートとI2との電荷移動錯体[具体例(1)]の合
成 (1−1−1)ヘプタデカ−2,4−ジイン−1−オール
の合成 文献[W.Beckmann et al.,Synthesis 1975,423、T.H.
Vaughm,J.Am.Chem.Soc.55,3456(1935)等]に従い合成
した1−ドデシル−2−ヨードアセチレン(1×10-1mo
l、5.61g)を、あらかじめメタノール(50ml)に溶解し
た等モルのプロパルギルアルコールならびに、塩酸ヒド
ロキシアミン(6.55×10-3mol、0.46g)、塩化銅(2.27
×10-2mol、2.25g)、およびエチルアミン(2.82×10-1
mol、12.72g)の混合溶液中に加え撹拌した。
次に、この溶液に塩酸(20ml)を加えて酸性にし、エ
ーテルで抽出を行なった後、濾過により不純物を取り除
き、溶媒をエバポレーションして、目的とするヘプタデ
カ−2,4−ジイン−1−オール(8.99g、3×10-2mol)
を得た。収率は31%であった。
(1−1−2)2,4−ヘプタデカジニル−フェロセンカ
ルボキシレートの合成 フェロセンモノカルボン酸クロライド4.79g(2×10
-2mol)と、上記のように合成したジアセチレン誘導体
(ヘプタデカ−2,4−ジイン−1−オール)4.97g(2×
10-2mol)とを、1,2−ジクロロエタン(20ml)に溶解さ
せ、窒素気流中にて室温で2時間、その後55℃にて16時
間撹拌した。
得られた粗生成物を、ベンゼン:アセトン=3:1の混
合溶媒を展開溶媒としてカラムクロマトグラフにより精
製し、n−ヘキサンにより再結晶して2,4−ヘプタデカ
ジニル−フェロセンカルボキシレート(4.59g、1×10
-3mol)を得た。収率は96%であった。
このものは、元素分析、IRスペクトル、電子スペクト
ル等により同定した。
(1−1−3)電荷移動錯体の合成 2,4−ヘプタデカジニル−フェロセンカルボキシレー
ト0.12g(2.6×10-4mol)とヨウ素0.3g(2.6×10-3mo
l)をベンゼン溶液中で混合し、30日間室温で暗所に放
置後溶媒を留去し、黒緑色の錯体を得た。
なお、上記において、ヨウ素は市販品(和光純薬工業
(株)製)をそのまま使用し、ベンゼンは市販特級品を
精製して用いた。
この電荷移動錯体はIRスペクトル、電子スペクトル、
および元素分析により同定した。これらの結果を以下に
示す。
IRスペクトル(KBr錠剤法)ν C≡CH 2256cm-1 ν C= O 1718cm-1 電子スペクトル(クロロホルム溶液中) λmax 440nm λmax 580nm 元素分析(フェロセン誘導体:I2=1:3として) 計算値 C 27.50%,H 2.94% 実測値 C 27.24%,H 3.25% LB膜の形成 上記の電荷移動錯体をベンゼンに溶解し(濃度3×10
-3M)、これを蒸留水上に均一に落とし、単分子膜を展
開した。水相の温度を10℃とし。単分子膜が均一になる
まで10分間放置した。
この単分子膜で協和界面化学(株)製表面膜圧力計に
より表面圧−面積(π−A)曲線を測定した。この場合
水面滞留時間10〜20分、圧縮速度10mm/min、水相の温度
15℃に設定して測定を行った。この結果を第1図に示
す。フェロセン誘導体に比べて、その極限面積、曲線の
形状ともほとんど変化を示していないことがわかった。
次に上記の水面上単分子膜に表面膜圧力計HBM-AP型の
装置(協和界面科学(株)製)を用い、10℃あるいは20
℃で0.3時間光照射した。
この光照射時間と表面積との関係を第2図に、また光
照射後の単分子膜のπ−A曲線を、フェロセン誘導体の
比較において、第3図に示す。
光照射による単分子膜の表面積の増減の挙動はフェロ
セン誘導体とは明らかに異なることが確認された。
すなわち、フェロセン誘導体の場合と比べると、電荷
移動錯体の場合その体積膨張や収縮の度合が大きくなっ
ているのがわかった。これはヨウ素を取り込んでいる分
だけ空間ができ、その中をジアセチレン基が重合により
連結していくため分子全体の動きが大きくなり、そのた
め平面構造からのねじれや屈曲が起こり体積膨張や収縮
の度合が増大したと考えられる。
また、表面圧0まで戻して測定し直したところ、ヨウ
素との電荷移動錯体では極限面積にはさほど差がみられ
ないが、崩壊圧は低くなった。
次に、光重合後の電荷移動錯体について累積膜を作製
した。累積膜は垂直浸漬法、水平付着法のいずれかの方
法でも作製可能であった。
この場合表面膜圧力計HBM-AP型の装置(協和界面科学
(株)製)を使い、温度15℃、表面圧15mM/mまたは25mM
/mに設定して累積速度10mm/minにてITO基板上に重合膜
を累積した(垂直浸漬法適用)。
30層目程度まで良好な累積が得られた。
光重合後親水処理したフッ化カルシウム板に40層Y膜
として累積したLB膜について電子スペクトルを測定し
た。この結果を第4図にクロロホルム溶液中におけるフ
ェロセン誘導体およびI2電荷移動錯体とともに示す。
この結果LB膜におけるシクロペンタジエニル環のπ−
π*に遷移に帰属されるピークに注目すると、その溶液
状態に比べ短波長シフトしているのが観測された。
このことは、Kashaの理論からシクロペンタジエニル
環が膜面に対して垂直に配向していることを示す。溶液
におけるスペクトルから680nm付近にI2電荷移動錯体形
成のピークが観測された。
また、LB膜では330nm付近にブロードな吸収が観測さ
れた。
さらには、フェロセン誘導体の累積膜にヨウ素をドー
プしたもののスペクトルを比較すると、上記とほぼ同じ
吸収ピークを示したことからもヨウ素との錯体形成が支
持される。また、900〜1400nmの近赤外領域に電荷移動
錯体に特徴づけられるブロードな吸収帯も確認された。
次にITO基板にLB法を用いて60層累積した試料を作製
しコンタクトアングルメーターDT型(協和界面科学
(株)製)により接触角を測定した。
接触角は約82°という値を示し、フェロセン長鎖誘導
体(110°)の場合より減少しており、膜表面の疎水性
が弱くなっているのがわかる。このことは、膜が中性状
態からイオン状態(酸化状態)になっていることを示し
ている。
ITO基板に40層累積して、DVA-36L型自動エリプソメー
ター(溝尻光学(株)製)により、厚膜を測定した。
厚膜は1層当たり19Åでありフェロセン誘導体よりも
大きい値を示した。これはヨウ素ドープした累積膜が、
フェロセン誘導体単独の膜と同じ15Åという値を示して
いることから膜中の配向がそのまま保たれているのに対
して、ヨウ素電荷移動錯体は、表面圧−面積曲線や厚膜
測定の結果などから、ヨウ素の影響で配向が変化してい
ると予想される。
また、走査型電子顕微鏡(SEM)写真と蛍光顕微鏡写
真を撮影(第5a〜5d図)し、ヨウ素との電荷移動錯体の
LB膜の表面状態を観察した。SEM写真を第5b図にまた蛍
光顕微鏡写真を第5a、5c、5d図に示す。
これらの写真から重合膜がかなり密度濃く、ぎっしり
詰まっている様子がうかがえる。
またフェロセン誘導体ではBlue励起やGreen励起をし
てもその蛍光体を確認できなかったが、ヨウ素錯体では
写真の白く写っている部分として見ることができた。
このことはやはりフェロセン誘導体単独とヨウ素錯体
では重合体の高次構造による違いがあると思われる。
なお、走査型電子顕微鏡写真は、ITO基板上へLB法に
より40〜60層累積した試料について撮影して観察した。
また、蛍光顕微鏡写真は、石英板に40層累積したもの
について同様に観察した。
ITO基板上へLB法(垂直浸漬法:設定圧力15mN/m)で6
0層累積した試料を用いて、X線光電子分光(ESCA)を
測定した。
この結果を第6図に示す。
713eVと711eV付近にブロードの二つのピークが観測さ
れた。713eVの方がフェリシニウムイオン(III)であり
711eVの方はフェロセン(II)と帰属できるが、スペク
トル強度などからも、鉄原子同志はかなり等価に近い状
態にあると考えられる。
次に、サイクリックボルタンメトリーを測定した。
作用電極としてLB法によりITO電極上へ17層累積した
基板を用い、電解液には支持電解質として0.1MTBAPを含
んだアセトニトリル溶液を用いて測定した。同時に電荷
移動錯体のアセトニトリル溶液、フェロセン誘導体のア
セトニトリル溶液についても測定した。
結果を第7図に示す。
第7図において、実線がヨウ素との電荷移動錯体のLB
膜、点線がそのアセトニトリル溶液、一点鎖点が比較の
ために示したフェロセン誘導体単独のアセトニトリル溶
液の例である。
ヨウ素と電荷移動錯体を形成させると、予想どうりフ
ェロセンがヨウ素アニオンによりフェシリニウムカチオ
ンとなり、電気化学的に酸化されやすくなっていること
がわかる。
なお、酸化ピーク電位(Eap)は0.89V、還元ピーク電
位(Ecp)は0.69Vvs.SCEであった。
また、第8図には、電気化学的酸化還元反応による吸
収スペクトルの変化を示す。
フェロセン誘導体と同様に625nmにフェリシウムイオ
ンの配位子軌道からイオン軌道への励起に帰属されるピ
ークが観察された。このことは電荷移動錯体を形成させ
ることにより電気化学的酸化状態が実現したことを示し
ている。
実施例2. 2,4−ヘプタデカジニル−フェロセンカルボキシレート
とオクタデシルTCNQとの電荷移動錯体 実施例1の2,4−ヘプタデカジニル−フェロセンカル
ボキシレート0.1g(2.2×10-4mol)とオクタデシルTCNQ
0.05g(1.1×10-4mol)をアセトン溶液中で混合し、70
日間加熱処理(55〜60℃)して溶媒を留去後、暗燈色の
錯体を得た。
なお、上記において、オクタデシルTCNQは日本感光色
素製のものを使用し、アセトンは市販特級品を精製して
用いた。
この電荷移動錯体は、IRスペクトル、電子スペクト
ル、および元素分析により同定した。
これらの結果を以下に示す。
IRスペクトル(KBr錠剤法)ν C≡ N 2380cm-1 ν C≡CH 2240cm-1 ν C= O 1720cm-1 電子スペクトル(クロロホルム溶液中) λmax 350nm λmax 450nm 元素分析(フェロセン誘導体:TCNQ誘導体=1:1.2とし
て) 計算値 C 68.98% H 7.71% N 5.34% 実施値 C 68.52% H 7.92% N 5.50% LB膜の形成 実施例1と同様に単分子膜を展開し、同様にπ−A曲
線を測定した(第9図)。
フェロセン誘導体に比べて、オクタデシルTCNQ分子に
よるによる影響のためか極限面積がやや大きくなること
確認された。
次に、ヨウ素錯体の場合と同様に、光照射時間面と表
面積との関係(第10図)を調べたところ、フェロセン誘
導体のときと比べては大きいが、ヨウ素錯体の時よりは
少ないことがわった。
オクタデシルTCNQとヨウ素を比較すると、ヨウ素分子
よりもオクタデシルTCNQの方がその分子の大きさからし
てやはり動きづらく、空間も小さいのでないかと考えら
れる。
その結果、ヨウ素錯体に比べると、ねじれや屈曲が起
こりにくい分だけ体積膨張や収縮の度合いが小さいもの
と思われる。
照射後の表面圧−面積曲線の結果を第11図に示すが、
極限面積はモノマーの時と同様大きくなっており、また
崩壊圧も高くなった。
次に、実施例1と同様に光重合後の電荷移動錯体につ
いて累積膜を作製した。累積膜は垂直浸漬法、水平付着
法のいずれの方法でも作製可能であった。
垂直浸漬法による累積ではその累積比が上昇、下降と
も約0.98となり良好な累積値を示した。
50層目程度までは均一に累積できた。
実施例1と同様にLB膜について電子スペクトルを測定
した。これを第12図に示す。
この結果LB膜におけるシクロペンタジエニル環の面に
沿うπ−π*遷移に帰属されるピークが溶液の場合と比
べ短波長シフトしていることから、ヨウ素錯体同様、シ
クロペンタジエニル環が膜面に垂直に近く配向している
ことがわかった。またフェロセン誘導体単独とオクタデ
シルTCNQ錯体の場合を比較すると、オクタデシルTCNQの
スペクトルには500nmあたりから270nmあたりにかけてブ
ロードであるがかなり大きい吸収がみられており、これ
はTCNQの影響によるものであることが、オクタデシルTC
NQ単独のスペクトルの結果から確認できた。
また接触角を測定したところ、その値は約87°とフェ
ロセン誘導体のそれよりは、いくぶん親水性を帯びてき
ていることがわかった。
さらに、実施例1と同様に厚膜を測定したところ、21
Åという値が得られた。このような大きな値は、オクタ
デシルTCNQの長いアルキル鎖によるものである。このよ
うにオクタデシルTCNQを用いて電荷移動錯体を形成した
膜は、ヨウ素錯体同様、配向に変化をきたしているとい
える。
また、SEM写真(第13b図)からは、表面の均一性がう
かがえた。蛍光顕微鏡写真(第13a図、13c図、13d図)
からはフェロセン誘導体およびヨウ素錯体との重合体の
高次構造の違いが示された。
15mN/mにおいてLB法を用いITO基板上へ60層累積した
試料についてESCAを測定した結果、713eV付近にピーク
が観測された(第14図)。
フェリシニウムカチオンとTCNQアニオンが1:1に近く
電荷移動錯体を形成しているために、等価な一つのピー
クを与えたものと考えられる。
次に、実施例1と同様にサイクリックボルタンメトリ
ーを測定した。
オクタデシルTCNQ錯体の溶液およびフェロセン誘導体
の結果を第15図に、また実施例1と同様にITO基板上へL
B法により重合分子膜を17層累積した試料およびオクタ
デシルTCNQ錯体の溶液の結果を第16図に示す。
第2図および第3図の結果から、溶液中におけるオク
タデシルTCNQ電荷移動錯体はフェロセン誘導体の場合よ
りむしろ酸化されにくくなっているが、重合単分子膜で
は溶液状態よりは、はるかに電気的に活性を示し、酸化
されやすくなっていることがわかる。これは、配列効果
によるものと考えられる。
なお、この場合酸化ピーク電位(Eap)は0.76V、還元
ピーク電位(Ecp)は0.6Vであり、実施例1のヨウ素錯
体の重合単分子膜よりは活性であるといえる。
〈発明の効果〉 本発明によれば、ヨウ素、オクタデシルTCNQ等の電子
受容性化合物とから形成される新規なメタロセン誘導体
の電荷移動錯体が得られる。
従って、本発明の電荷移動錯体は、電磁場感応素子等
の高機能材料としての用途が可能となる。
またラングミュア・ブロジェット(LB)膜化が可能で
あり、LB膜を形成することにより電気化学的に酸化され
やすくなっていることから、電子デバイス、スイッチン
グ素子、情報変換素子等の高機能膜が得られることとな
る。
【図面の簡単な説明】
第1図〜第8図は、本発明におけるヨウ素錯体について
の特性を示す図面であり、第1図は単分子膜のπ−A曲
線、第2図は光照射時間と表面積、第3図は光重合後の
π−A曲線、第4図は電子スペクトルの測定結果、第5a
図〜第5d図はSEM写真と蛍光顕微鏡写真であって粒子構
造を示す図面代用写真、第6図はESCAの測定結果、第7
図はサイクリックボルタモグラム、および第8図は電気
化学的酸化還元反応による吸収スペクトルの変化をそれ
ぞれ示すものである。 第9図〜第16図は、本発明におけるTCNQ錯体についての
特性を示す図面であり、第9図は単分子膜のπ−A曲
線、第10図は光照射時間と表面積、第11図は光重合後の
π−A曲線、第12図は電子スペクトルの測定結果、第13
a図〜第13d図はSEM写真と蛍光顕微鏡写真であって粒子
構造を示す図面代用写真、第14図はESCAの測定結果、第
15図および第16図はサイクリックボルタモグラムをそれ
ぞれ示すものである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 中原 弘雄 東京都練馬区南大泉町243 (72)発明者 福田 清成 東京都練馬区大泉町1―18―8

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】少なくとも一方のシクロペンタジエニル環
    に、 (ただし、R1はアルキレン基を、R2はアルキル基を表わ
    す。)で示される基を有するメタロセン誘導体と電子受
    容性化合物とから形成されることを特徴とするメタロセ
    ン誘導体の電荷移動錯体。
  2. 【請求項2】電子受容性化合物がヨウ素、テトラシアノ
    エチレンまたは置換もしくは無置換のテトラシアノキノ
    ジメタンである請求項1に記載のメタロセン誘導体の電
    荷移動錯体。
  3. 【請求項3】請求項1または2に記載のメタロセン誘導
    体の電荷移動錯体を含むラングミュア・ブロジェット
    膜。
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