JP2735758B2 - 合成開口レーダの動揺補償方法およびレーダによる位置計測方法 - Google Patents

合成開口レーダの動揺補償方法およびレーダによる位置計測方法

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JP2735758B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、合成開口レーダにお
けるレーダプラットフォームの動揺による結像性能の劣
化を低減する方法および移動体の位置をレーダにより計
測する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】図6は例えばIEEE.Transac
tion on Aerospaceand Elec
tronic Systems、Vol.AES−1
1、No3 Page338〜348に掲載されたJ.
C.Kirk、Jr.著「Motion Compen
sation For Synthetic Aper
ture Radar」に示された従来の合成開口レー
ダ装置の構成を示す図であり、図において、1は送信
機、2は送受切換器、3は送受信アンテナ、4は受信
機、5は送信機1及び受信機4に対して、ローカル信号
を供給する局部発振器、6は位相補償用基準信号発生手
段、7は、この位相補償用基準信号発生手段6と受信機
4に接続され、2つの出力信号の複素乗算を行う複素乗
算手段、8は画像再生手段、9は表示器、10は、上記
位相補償用基準信号発生手段6に接続され、レーダプラ
ットフォームの位置、速度等のデータを供給する慣性航
法手段、11は、複素乗算手段7の出力信号のスペクト
ル中心値の変化を検出し、これを位相補償用基準信号発
生手段6に供給するクラッタトラッカ、12はアンテナ
のビームを観測対象に向けるためのアンテナ方向制御器
である。図7は従来の合成開口レーダの動揺補償方法を
説明するための図であり、図において、13は観測対
象、14は位相補償基準点、15は合成開口レーダを搭
載するレーダプラットフォームである。
【0003】次に図面に従って動作について説明する。
送信機1で発生した高周波信号は、送受切換器2を経て
送受信アンテナ3から観測対象に向け放射される。観測
対象で反射された高周波信号は再び送受信アンテナ3で
受信され、送受切換器2を経て受信機4で増幅・検波さ
れた後、複素乗算手段7により、位相補償用基準信号発
生手段6により発生した位相補償用基準信号との複素乗
算を行ない、レーダプラットフォーム15の動揺の影響
を補償する。このとき、位相補償用基準信号に与える位
相量は、図7に示すように、観測対象13中の任意の一
点を位相補償基準点14として定め、この点と慣性航法
装置10により計測したレーダプラットフォーム15と
の相対距離から求めることができる。位相補償量を求め
る際に必要とされるレーダプラットフォーム15の位置
計測精度は、送信波長程度とされ、航空機及び衛星に搭
載する合成開口レーダの場合、その波長は3cmから1
0cm程度となる。
【0004】一般に、慣性航法装置10による位置計測
精度は、数mから数10m程度であるから、この精度を
補う必要がある。そこで、複素乗算手段7の出力信号を
クラッタトラッカ11に取り込み、そのスペクトルの中
心周波数を求め、この周波数とレーダプラットフォーム
15の動揺が無い場合に得られる受信信号スペクトルの
中心周波数との差を無くすための位相補償量を算出す
る。位相補償用基準信号発生手段6では、この位相補償
量を先に述べた相対距離から算出される位相に加えるこ
とによって、慣性航法装置10の位置計測精度の不足を
補う。このとき、受信信号スペクトルの中心周波数の計
測精度は信号対雑音電力比及びレーダプラットフォーム
15の移動に伴う観測対象のレーダ断面積の変化に依存
する。
【0005】また、慣性航法装置10に替わる位置計測
方法として、4つ以上の互いに異なる位置に配置された
送信機から、放射される高周波信号をレーダプラットフ
ォームに搭載された受信機で受信し、受信機の位置を計
測するGPS(GlobalPositioning
System)が、広く知られている。しかし、この方
式では送信側と受信側とで異なる発振器を使用するため
位相情報が利用できず、送受信間の電波伝搬時間により
送信機と受信機との相対距離を算出するため、その精度
は、高々数m程度であり、合成開口レーダの動揺補償に
用いるには、位置計測精度が不十分である。さらに、G
PSでは、3次元空間中のレーダプラットフォームの位
置を計測するのに、3個の送信機だけでは不十分で異な
る3個の送信機の時刻合わせのために、第4の送信機を
必要とする。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】従来の合成開口レーダ
における動揺補償は、以上のようにして行われるので、
レーダプラットフォームの移動に伴って観測対象レーダ
断面積が変化したり、受信機雑音によって受信信号周波
数の計測に誤差を生じ、これをレーダプラットフォーム
の動揺であると誤って位相補償量を算出するなどの問題
点があった。
【0007】また、レーダプラットフォームの位置計測
方法として考えるならば、慣性航法装置による計測精度
が数10m程度であり、GPSでも数m程度となるた
、送受信間の電波伝搬時間を利用する方法より高い精
度で位置を計測する方法が必要とされていた。
【0008】この発明は、上記のような問題点を解消す
るためになされたもので、計測観測対象のレーダ断面積
の変化や受信機雑音の影響が無視できるとともに、慣性
航法装置の位置計測精度の不足を補うことのできる合成
開口レーダの動揺補償方法と移動体の位置をレーダによ
り高精度に計測する方法を得ることを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】この発明の請求項1に係
る合成開口レーダの動揺補償方法は、異なる位置に配置
した3以上のリピータを用いて、レーダから放射された
高周波信号を受信し、増幅した後、受信した方向に対し
て増幅後の高周波信号を送り返し、レーダに付加された
送受信アンテナと送受信機を用いて、上記リピータに向
けて高周波信号を送受信し、上記送受信機で得られた受
信信号より、相対距離算出手段を用いて、送受信に伴う
電波伝搬時間と位相からレーダプラットフォームとリピ
ータとの相対距離を算出し、上記相対距離算出手段に接
続されたプラットフォーム位置算出手段により、上記相
対距離とリピータの位置からレーダプラットフォームの
位置座標を算出し、この位置座標と観測対象内の任意の
一点との相対距離を求め、この距離の変動から、レーダ
プラットフォームの動揺による受信信号の位相変動量を
算出し、この位相変動量が0となるように位相補償を行
うことによりレーダプラットフォームの動揺の影響を除
去するものである。
【0010】この発明の請求項2に係るレーダによる位
置計測方法は、異なる位置に配置した3以上のリピータ
を用いて、レーダから放射された高周波信号を受信し、
増幅した後、受信した方向に対して増幅後の高周波信号
を送り返し、レーダに付加された送受信アンテナと送受
信機を用いて、上記リピータに向けて高周波信号を送受
信し、上記送受信機で得られた受信信号より、相対距離
算出手段を用いて、送受信に伴う電波伝搬時間と位相か
らレーダプラットフォームとリピータとの相対距離を算
出し、上記相対距離算出手段に接続されたプラットフォ
ーム位置算出手段により、上記相対距離とリピータの位
置からレーダプラットフォームの位置座標を算出するも
のである。
【0011】また、この発明の請求項3に係る合成開口
レーダの動揺補償方法またはレーダによる位置計測方法
は、各リピータが互いに異なる周波数で受信信号をそれ
ぞれ周波数変調するようにし、各リピータから返信され
た信号をこの周波数差で弁別することによって、リピー
タ以外の物体からの反射波であるクラッタを抑圧し、か
つ、各リピータからの返信波を混同することなく抽出す
るものである。
【0012】
【作用】この発明の請求項1に係る合成開口レーダの動
揺補償方法は、リピータにより送受信する高周波信号が
中継されるため、観測対象のレーダ断面積の影響を受け
ることなく、受信機雑音を無視できる程度の十分な信号
対雑音電力比を確保できるので、レーダプラットフォー
ムの動揺を高精度に計測することができ、これを補償す
ることによって、プラットフォームの動揺の影響による
結像性能の劣化を低減することができる。
【0013】この発明の請求項2に係るレーダによる位
置計測方法は、リピータにより送受信する高周波信号が
中継されるため、観測対象のレーダ断面積の影響を受け
ることなく、受信機雑音を無視できる程度の十分な信号
対雑音電力比を確保できるので、送受信する高周波信号
の波長と同程度の精度でレーダプラットフォームの位置
を計測可能となる。
【0014】また、この発明の請求項3に係る合成開口
レーダの動揺補償方法またはレーダによる位置計測方法
は、各リピータが互いに異なる周波数で周波数変調した
高周波信号を返信し、レーダ装置側で各リピータから返
信された信号をこの周波数差で弁別するので、リピータ
以外の物体からの反射波であるクラッタを抑圧し、か
つ、各リピータからの返信波を混同することなく抽出す
ることができ、動揺補償および位置計測の精度を向上さ
せることができる。
【0015】
【実施例】
実施例1.以下、この発明の一実施例を図について説明
する。図1において、13は観測対象、14は位相補償
基準点、15はレーダプラットフォーム、16は第1の
リピータ、17は第2のリピータ、18は第3のリピー
タである。なお、リピータ16、17、18は異なる位
置に配置されている。
【0016】図2は、リピータ16、17、18の構成
を示す図であって、30は送受信アンテナ、31は送受
切換器、32はミキサー、33はコヒーレント発振器、
34は増幅器である。
【0017】図3は、この発明に係る合成開口レーダの
構成例を示す図であって、20は、リピータ16、1
7、18に向けて高周波信号を送受信するアンテナ、2
1はこのアンテナに接続された送受信機、22は送受信
機21と慣性航法装置10に接続され、レーダプラット
フォーム15と位相補償基準点14との相対距離を算出
する手段、23は、相対距離算出手段22で求めた相対
距離より、プラットフォームの位置すなわち座標を求め
る、プラットフォーム位置算出手段である。
【0018】以下、この発明において付加された装置を
用いたレーダプラットフォームの位置計測方法および動
揺補償方法について説明する。3次元空間中でのレーダ
プラットフォーム15の座標を(x、y、z)とし、位
相補償基準点14の座標を(α、β、γ),3つのリピ
ータ16、17、18の座標を(a1、b1、c1)、
(a2、b2、c2)、(a3、b3、c3)とする
と、レーダプラットフォーム15と各リピータ16、1
7、18との相対距離R1、R2、R3は式(1)〜式
(3)で与えられる。
【0019】
【数1】
【0020】このとき、各リピータ16、17、18の
座標は既知であり、相対距離R1、R2、R3は、レー
ダとリピータとの間で高周波信号を送受信するときの電
波伝搬時間Δt1、Δt2、Δt3と、送受信機21に
より得られる受信信号の位相φ1、φ2、φ3を用い
て、相対距離算出手段22において、図4に示す処理フ
ローに従い算出される。プラットフォーム位置算出手段
23において式(1)〜式(3)を、3つの未知数x、
y、zを求めるための3元連立方程式とみなして、これ
を解くことにより、レーダプラットフォーム15の位置
座標(x、y、z)を波長オーダの精度で求めることが
できる。この位置座標(x、y、z)を用いれば、任意
の位相補償基準点14(α、β、γ)に対する位相補償
量φを式(4)で求めることが可能で、位相補償基準信
号発生手段6では、この位相補償量φを式(4)に従っ
て求めるとともに、式(5)を用いて位相補償基準信号
refを発生する。このとき、位相補償基準点14の位
置座標(α、β、γ)は、観測する領域内の任意の位置
座標をオペレータが選定することができる。通常の運用
では、観測領域の中心点が選定される。
【0021】
【数2】
【0022】これら一連のリピータに対する送受信動作
を観測対象に対する高周波信号の送受信と同期して行う
ことにより、送信パルス毎のレーダプラットフォームの
動揺による位置の変動を算出し、この影響を補償するた
めの位相補償基準信号を得ることができる。ここで得ら
れた位相補償基準信号を複素乗算手段8により受信機4
の出力信号に掛け合わせることにより、受信機の出力信
号に含まれるレーダプラットフォームの動揺により生じ
た位相誤差を補償することができる。これによって、レ
ーダプラットフォームの動揺の影響による結像性能の劣
化を低減することができる。
【0023】実施例2.なお、上記実施例1では、各送
受信機21からリピータ16、17、18に向けて送信
する高周波信号と各リピータから返送される信号が同一
の周波数fを利用する例を示したが、リピータ16、1
7、18の各々において異なる周波数g1、g2、g3
で周波数変調する。各リピータから返信された信号をこ
の周波数差で弁別することによって、リピータ以外の物
体からの反射波であるクラッタを抑圧し、かつ、各リピ
ータからの返信波を混同することなく抽出することがで
きる。
【0024】実施例3.なお、上記実施例1および2で
は、各リピータに向けて送信する高周波信号の周波数を
観測対象に向けて送信するものと同一の周波数一波で行
う例を示したが、図5に示すように波長が互いに素とな
る組合せの複数の周波数の高周波信号をレーダプラット
フォーム15とリピータ16、17、18との間で送受
信できるように、複数の送受信機21及び送受信アンテ
ナ20を設けても良い。このように、波長が互いに素と
なる組合せの複数の周波数の高周波信号を送受信すれ
ば、受信信号の位相からアンビギュイティなしで求める
ことのできる距離変化を使用した波長の積にまで延長す
ることができる。すなわち、3つの波長3cm、5c
m、7cmを組合せることにより、一波では高々1/2
波長すなわち3.5cmまでしか求めることができない
ものを、3波用いることにより、3×5×7÷2=5
0.25cmまで求めることができる。
【0025】
【発明の効果】以上のように、この発明の請求項1に係
る合成開口レーダの動揺補償方法は、レーダプラットフ
ォームの位置を地上に配置したリピータとの送受信信号
の位相によって決定するように構成したので、送受信す
る高周波信号の波長と同程度の精度でレーダプラットフ
ォームの位置の変化を計測でき、この影響を補償するこ
とができるので、プラットフォームの動揺の影響による
結像性能の劣化を低減することができる。
【0026】この発明の請求項2に係るレーダによる位
置計測方法は、従来の慣性航法装置のみを利用する方法
あるいはGPSを利用する方法と比較して、より高い精
度でレーダプラットフォームの位置を計測することがで
きる。
【0027】また、この発明の請求項3に係る合成開口
レーダの動揺補償方法またはレーダによる位置計測方法
は、各リピータが互いに異なる周波数で周波数変調した
高周波信号を返信し、レーダ装置側で各リピータから返
信された信号をこの周波数差で弁別するので、リピータ
以外の物体からの反射波であるクラッタを抑圧し、か
つ、各リピータからの返信波を混同することなく抽出す
ることができ、動揺補償の精度および位置計測精度を向
上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施例1を示す説明図。
【図2】この発明の実施例1におけるリピータの構成を
示す図。
【図3】この発明の実施例1における合成開口レーダの
構成を示す図。
【図4】この発明の実施例1における相対距離算出手段
の動作を示すフローチャート。
【図5】この発明の実施例3における合成開口レーダを
示す構成図。
【図6】従来の合成開口レーダを示す構成図。
【図7】従来の合成開口レーダの動揺補償方法の説明
図。
【符号の説明】
16、17、18 互いに異なる位置に配置されたリピ
ータ 20 送受信アンテナ 21 送受信機 22 相対距離算出手段 23 プラットフォーム位置算出手段
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 藤坂 貴彦 鎌倉市大船五丁目1番1号 三菱電機株 式会社 電子システム研究所内 (72)発明者 大橋 由昌 鎌倉市大船五丁目1番1号 三菱電機株 式会社 電子システム研究所内 (72)発明者 近藤 倫正 鎌倉市大船五丁目1番1号 三菱電機株 式会社 電子システム研究所内 (72)発明者 近藤 夏樹 鎌倉市上町屋325番地 三菱電機株式会 社 鎌倉製作所内 (56)参考文献 特開 平4−203992(JP,A) 特開 平4−262286(JP,A) 特開 平3−78686(JP,A) 特開 平2−99881(JP,A)

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 異なる位置に配置した3以上のリピータ
    を用いて、レーダから放射された高周波信号を受信し、
    増幅した後、受信した方向に対して増幅後の高周波信号
    を送り返し、 レーダに付加された送受信アンテナと送受信機を用い
    て、上記リピータに向けて高周波信号を送受信し、上記
    送受信機で得られた受信信号より、相対距離算出手段を
    用いて、送受信に伴う電波伝搬時間と位相からレーダプ
    ラットフォームとリピータとの相対距離を算出し、 上記相対距離算出手段に接続されたプラットフォーム位
    置算出手段により、上記相対距離とリピータの位置から
    レーダプラットフォームの位置座標を算出し、 この位置座標と観測対象内の任意の一点との相対距離を
    求め、この距離の変動から、レーダプラットフォームの
    動揺による受信信号の位相変動量を算出し、この位相変
    動量が0となるように位相補償を行うことによりレーダ
    プラットフォームの動揺の影響を除去する合成開口レー
    ダの動揺補償方法。
  2. 【請求項2】 異なる位置に配置した3以上のリピータ
    を用いて、レーダから放射された高周波信号を受信し、
    増幅した後、受信した方向に対して増幅後の高周波信号
    を送り返し、 レーダに付加された送受信アンテナと送受信機を用い
    て、上記リピータに向けて高周波信号を送受信し、上記
    送受信機で得られた受信信号より、相対距離算出手段を
    用いて、送受信に伴う電波伝搬時間と位相からレーダプ
    ラットフォームとリピータとの相対距離を算出し、 上記相対距離算出手段に接続されたプラットフォーム位
    置算出手段により、上記相対距離とリピータの位置から
    レーダプラットフォームの位置座標を算出するレーダに
    よる位置計測方法。
  3. 【請求項3】 請求項1または請求項2において、各リ
    ピータが互いに異なる周波数で受信信号をそれぞれ周波
    数変調するようにし、各リピータから返信された信号を
    この周波数差で弁別することによって、リピータ以外の
    物体からの反射波であるクラッタを抑圧し、かつ、各リ
    ピータからの返信波を混同することなく抽出する合成開
    口レーダの動揺補償方法またはレーダによる位置計測方
    法。
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