JP2734756B2 - 精密鋳造用チタンアルミナイド - Google Patents

精密鋳造用チタンアルミナイド

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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は、鋳造素材としての精密鋳造用チタンアルミ
ナイド(Ti−Al金属間化合物)に係り、特に、湯流れ性
に優れ、鋳放状態で高強度を有し、薄肉鋳物でも割れが
発生しずらい精密鋳造用チタンアルミナイドに関する。
[従来の技術] チタンアルミナイド(Ti−Al金属間化合物)は、ニッ
ケル基耐熱合金よりも比強度に優れ、チタン合金よりも
耐熱性,耐酸化性に優れた特性を有しているため、近
年、航空機用ジェットエンジンのインペラ,ブレード等
の精密鋳造用鋳造素材として注目されている。このチタ
ンアルミナイドは、軽く、耐酸化性に優れ、温度上昇に
伴って強度が増加し、さらにクリープ特性が良いなどの
長所を有している反面、常温延性に乏しく、靱性が発現
される高温でも加工速度依存性が強いなどの問題があ
る。これらの問題点が解決できれば、航空機用エンジン
の軽量化や高性能化が推進できるため、上記チタンアル
ミナイドについて結晶塑性学的,物理冶金学的な研究が
活発に行われている。
具体的には、特願昭61−41740号,特願平1−255632
号,特願平1−287243号,特願平1−298127号などにお
いて、粒界強化によってチタンアルミナイドの常温靱性
を改善する技術が提案されている。
[発明が解決しようとする課題] これらの技術によれば、米国特許第4294615号明細書
のものよりも高強度のチタンアルミナイド製品を得るこ
とができる。しかしながら、その常温強度は400MPa前後
であり、特願平1−255632号の如く強度向上成分を添加
したものでも500MPa以上の強度は達成されていない。
また、上記チタンアルミナイドは、Ti−Al系の特徴的
なミクロ組織であるラメラー粗大粒によって、その靱性
が悪化させられていると考えられている。この対策とし
て、Ti−AlにBやYなどを添加することによって、ラメ
ラー粒界を強化し、靱性の改善を図った技術が提案され
ている。しかしながら、このように粒界を強化したチタ
ンアルミナイドにあっても、これを鋳造素材としてター
ビンブレード等の薄肉複雑形状品を鋳造しようとする
と、上記ラメラー粗大粒が鋳造品に割れを誘発させ、良
品歩留りが悪化してしまう。
上記タービンブレード,インペラ等の薄肉複雑形状品
は、鋳造や切削では成形が困難もしくは不可能なため、
一般に精密鋳造(ロストワックス鋳造)によって製造さ
れる。このとき、鋳物を歩留り良く作るためには、溶湯
の湯流れ性(鋳型充満性)を良好にすることが必須の要
件となる。しかしながら、上記チタンアルミナイドを鋳
造素材とした場合、その常温靱性を改善するためとはい
えMo,V,Nb等の添加剤を多量に添加すると、これによっ
て融点が高温化したり、凝固温度範囲が拡大したり、融
解潜熱が小さくなったりすると湯流れ性が悪化し、良品
歩留りが著しく低下してしまう。
また、上記チタンアルミナイドの融点が高温化する
と、その鋳造時に、チタンアルミナイドの主成分である
活性元素Tiと鋳型との反応が促進され、鋳型−溶湯間の
反応が著しくなってしまい健全な鋳物が得られなくなっ
てしまう。
以上の事情を考慮して創案された本発明の目的は、チ
タンアルミナイド特有のラメラー組織の発生を抑えて薄
肉複雑形状鋳造品の割れを防止すると共に、常温強度を
500MPa以上とする精密鋳造用チタンアルミナイドを提供
するものである。
[課題を解決するための手段] 上記目的を達成するため本発明に係る精密鋳造用チタ
ンアルミナイドは、その凝固温度範囲をできるだけ拡げ
ることなく融点を低下させる添加元素を探索し、且つラ
メラー組織の発生を抑えてTiB(チタンボライド)が晶
出する条件を探索することによって実現できたものであ
る。
この精密鋳造用チタンアルミナイドは、重量百分率で Al 31〜34% Fe 1.5〜3.0% V 0.5〜2.0% B 0.18〜0.35% を含有し、残部がTiおよび不可避不純物から構成されて
いる。
また、上記V 0.5〜2.0%の代わりにMo 1.0〜3.0%を
含有させてもよい。
また、上記V 0.5〜2.0%を代わりにCr 0.3〜1.5%を
含有させてもよい。
[作用] 上記組成の合金を溶融した溶湯を用いて精密鋳造すれ
ば、割れを誘発させるラメラー組織(第5図に示す)が
消滅し、代わりに第1図に示すようなウィスカー状のTi
B(チタンボライド)が微細に均一に分散・晶出された
全く新しいチタンアルミナイド合金(Ti−Al基TiB分散
複合材料)が鋳造される。上記TiBは、鋳放状態で晶出
しており、これにより鋳物の強度が強化される。また、
上記ウィスカー状のTiBの微細度は、鋳造時の溶湯の冷
却速度を調節することによって、所望の微細度に制御可
能となる。
もし、上記組成元素がそれぞれ規定された範囲を外れ
ると以下の欠点が生じる。
Alが31%より少ない場合、特にAl/Tiが0.49よりも小
さい場合には、第2図に示すように、晶出するTiBが粗
大化し、且つラメラー組織も現われ始め、靱性が著しく
低下する。一方、Alが34%より多い場合、特にAl/Tiが
0.55よりも大きい場合には、第3図に示すように、上記
TiBが凝集し、同様に靱性が著しく低下する。
また、Bが0.18%より少ないとTiBの晶出が不充分に
なり、Bが0.35%より多いと得られるチタンアルミナイ
ド合金の硬度が硬くなりすぎて靱性が発現されにくくな
る。
Feは本発明の重要な元素であり、これが1.5%より少
ないと、湯流れ性の悪化やTiBの粗大化をもたらす。一
方、Feが3.0%より多い場合には、硬度が硬くなって脆
くなる共に、比重が大きくなって重くなる。さらに、こ
の場合、第3図や第4図に示すように、晶出するTiBが
凝集し、靱性が発現されなくなる。
V,MoおよびCrは、TiBを微細なウィスカー状とするた
めの重要な元素である。これら元素が、夫々の下限値よ
りも少ないとTiBが粗大化して靱性が低下してしまい、
上限値よりも多いと得られる合金を硬く脆くしてTiBの
分散効果が減じられてしまう。
[実施例] 以下に本発明の一実施例を添付図面に基づいて説明す
る。
まず、本実施例のチタンアルミナイドと比較するため
に従来のチタンアルミナイドのミクロ組織を第5図に示
す。
第5図は、従来のAl含有量が32〜36mass%のTi−Al2
元系チタンアルミナイドに観察される所謂ラメラー粗大
粒と称されているミクロ組織(×400倍)である。この
ラメラー組織は、上記2元系チタンアルミナイドに、0.
8〜2.0mass%のMo,V,Nb若しくはCrなど常温靱性を改善
する効果があるとされる第3元素を添加した場合にも観
察される。第5図に示す上記ラメラー層間の大きさは、
Al/Ti比が小さいほど小さくなり、またBやYなどの添
加によって粒界の強化がなされることが報告されてい
る。しかしながら、肉厚が数ミリメートルよりも薄く、
且つ複雑な形状の鋳物(たとえばジェットエンジンのシ
ュラウド付タービンベーン等)を精密鋳造(ロストワッ
クス鋳造)する場合は、上記ラメラー組織があるとどう
しても割れが発生しやすく、薄肉複雑形状の鋳物を良品
歩留り良く作ることができなかった。
これに対し、第1図は、本実施例のチタンアルミナイ
ドのミクロ組織(×400倍)を示すものである。このチ
タンアルミナイドの組成は以下の通りである。
Al 32% Fe 2.0% V 1.0% B 0.25% 残部がTiおよび不可避不純物 上記組成の合金を溶融した溶湯を用いて精密鋳造すれ
ば、鋳放状態で得られる鋳物は、第1図に示すように、
鋳割れを誘発させるチタンアルミナイド特有のラメラー
組織(第5図に表す)が消滅し、代わりに、ウィスカー
状のTiB(チタンボライド)が微細に均一に分散・晶出
された全く新しいTi−Al基TiB分散複合材料となる。上
記TiBは、鋳物の強度を強化する強化材として機能す
る。
上記ウィスカー状のTiBは、鋳込み後の冷却速度が速
いほど微細な組織となって、得られる鋳物の強度向上に
大きく貢献することになる。冷却速度を高めるために
は、鋳型の温度を低温にすればよい。具体的には、上記
TiBのウィスカー長さを第1図に示す如く約20μm以下
のウィスカーとするためには、例えば、幅25mm,長さ70m
m,厚さ2mm程度のタービンブレードをロストワックス鋳
造する場合、その鋳型温度を400℃以下にして溶湯を注
ぐ必要がある。
この場合、上記組成のチタンアルミナイド溶湯は、湯
流れ性が良く且つ融点も低いので、たとえ低温(400℃
以下)の鋳型であっても充分健全な鋳造品を良品歩留り
良く得ることができる。また、このように鋳型温度を低
温にしておけば、チタンアルミナイド溶湯中の活性元素
Tiと鋳型との反応が抑制され、鋳型−溶湯間が反応する
ことなく健全な鋳物が得られる。
また、鋳造されたタービンブレードの常温強度を測定
するために、鋳型に一緒に組み込んだφ12mm×l60mmの
丸棒から引張試験片を機械加工してこれを常温で引張試
験した結果、以下の値が得られた。
0.2%耐力 465MPa 抗張力 517MPa 伸び 0.58% ようするに、本実施例のチタンアルミナイドを溶湯と
して薄肉複雑形状のタービンブレードをロストワックス
鋳造すれば、得られる鋳造品は、ラメラー組織が生じな
いことからこのラメラー組織に起因する鋳割れが発生す
ることなく、且つ上記ウィスカー状のTiBによって鋳放
し状態での常温強度が強化され、約500MPa以上の常温強
度を得ることができる。
[発明の効果] 以上説明したように本発明の精密鋳造用チタンアルミ
ナイドによれば次のごとき優れた効果を発揮することが
できる。
(1)Ti−Al系特有のラメラー粗大粒組織が消滅し、微
細なウィスカー状のTiBが均一に分散したミクロ組織と
なるため、薄肉鋳物での割れが発生しずらくなり、且つ
鋳放し状態での常温強度を500MPa以上に高めることがで
きる。
(2)鋳造後の冷却速度を適宜調節することにより、上
記ウィスカー状のTiBの微細度を制御することができ
る。
(3)融点が低められ、多少の靱性も発現するため、薄
肉複雑形状の精密鋳造品を良品歩留り良く製造すること
ができる。
(4)金属合金粉末にSiCウィスカー又はAl2O3等を混合
して作る合成複合材料とは異なり、本発明の合金はIn s
itu生成複合材料であるため,合金の清浄度を保つこと
ができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の一実施例を表す精密鋳造用チタンアル
ミナイドの金属組織を表す図、第2図〜第4図は上記チ
タンアルミナイドの各元素が請求の範囲に規定された範
囲から外れた場合の金属組織を表す図、第5図は従来例
を表す精密鋳造用チタンアルミナイドの金属組織を表す
図である。

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量百分率で Al 31〜34% Fe 1.5〜3.0% V 0.5〜2.0% B 0.18〜0.35% を含有し、残部がTiおよび不可避不純物から構成される
    ことを特徴とする精密鋳造用チタンアルミナイド。
  2. 【請求項2】上記V 0.5〜2.0%の代わりにMo 1.0〜3.0
    %が含有された請求項1記載の精密鋳造用チタンアルミ
    ナイド。
  3. 【請求項3】上記V 0.5〜2.0%の代わりにCr 0.3〜1.5
    %が含有された請求項1記載の精密鋳造用チタンアルミ
    ナイド。
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