JP2733875B2 - 液晶素子 - Google Patents

液晶素子

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JP2733875B2
JP2733875B2 JP41532890A JP41532890A JP2733875B2 JP 2733875 B2 JP2733875 B2 JP 2733875B2 JP 41532890 A JP41532890 A JP 41532890A JP 41532890 A JP41532890 A JP 41532890A JP 2733875 B2 JP2733875 B2 JP 2733875B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、液晶表示素子や液晶−
光シャッター等で用いる液晶素子、特に強誘電性液晶素
子に関し、更に詳しくは液晶分子の配向状態を改善する
ことにより、表示特性を改善した液晶素子に関するもの
である。
【0002】
【従来の技術】強誘電性液晶分子の屈折率異方性を利用
して偏光素子との組み合わせにより透過光線を制御する
型の表示素子がクラーク(Clark) 及びラガーウォル(Lag
erwall) により提案されている(特開昭56-107216 号公
報、米国特許第4367924 号明細書等)。
【0003】この強誘電性液晶は、一般に特定の温度域
において、非らせん構造のカイラルスメクチックC相
(SmC*) 又はH相(SmH*) を有し、この状態において、
加えられる電界に応答して第1の光学的安定状態と第2
の光学的安定状態のいずれかを取り、且つ電界の印加の
ないときはその状態を維持する性質、すなわち双安定性
を有し、また電界の変化に対する応答も速やかであり、
高速ならびに記憶型の表示素子としての広い利用が期待
され、特にその機能から大画面で高精細なディスプレー
としての応用が期待されている。
【0004】この双安定性を有する液晶を用いた光学変
調素子が所定の駆動特性を発揮するためには、一対の平
行基板間に配置される液晶が、電界の印加状態とは無関
係に、上記2つの安定状態の間での変換が効果的に起る
ような分子配列状態にあることが必要である。
【0005】また、液晶の複屈折を利用した液晶素子の
場合、直交ニコル下での透過率は、 で表わされる。前述の非らせん構造におけるチルト角θ
は第1と第2の配向状態でのねじれ配列した液晶分子の
平均分子軸方向の角度として現われることになる。上式
によれば、かかるチルト角θが22.5°の角度の時最大の
透過率となり、双安定性を実現する非らせん構造でのチ
ルト角θが22.5°にできる限り近いことが必要である。
【0006】ところで、強誘電性液晶の配向方法として
は、大きな面積に亙って、スメクチック液晶を形成する
複数の分子で組織された液晶分子層を、その法線に沿っ
て一軸に配向させることができ、しかも製造プロセス工
程も簡便なラビング処理により実現できるものが望まし
い。
【0007】強誘電性液晶、特に非らせん構造のカイラ
ルスメクチック液晶のための配向方法としては、例え
ば、米国特許第4,561,726 号明細書等が知られている。
【0008】しかしながら、これまで用いられてきた配
向方法、特にラビング処理されたポリイミド膜による配
向方法を、前述のクラークとラガウォールによって発表
された双安定性を示す非らせん構造の強誘電性液晶に対
して適用した場合には、下記の如き問題点を有してい
た。
【0009】すなわち、本発明者らの実験によれば、従
来のラビング処理したポリイミド膜によって配向させて
得られた非らせん構造の強誘電性液晶でのチルト角θ
(後述の第3図に示す角度)がらせん構造をもつ強誘電
性液晶でのチルト角H(後述の図2に示す角度)と較べ
て小さくなっていることが判明した。特に、従来のラビ
ング処理したポリイミド膜によって配向させて得た非ら
せん構造の強誘電性液晶でのチルト角θは、一般に3°
〜8°程度で、その時の透過率はせいぜい3〜5%程度
であった。
【0010】この様に、クラークとラガウォールによれ
ば双安定性を実現する非らせん構造の強誘電性液晶での
チルト角がらせん構造をもつ強誘電性液晶でのチルト角
と同一の角度をもつはずであるが、実際には非らせん構
造でのチルト角θの方がらせん構造でのチルト角Hより
小さくなっている。しかも、この非らせん構造でのチル
ト角θがらせん構造でのチルト角Hより小さくなる原因
が非らせん構造での液晶分子のねじれ配列に起因してい
ることが判明した。つまり、非らせん構造をもつ強誘電
性液晶では、液晶分子が基板の法線に対して上基板に隣
接する液晶分子の軸より下基板に隣接する液晶分子の軸
(ねじれ配列の方向)へ連続的にねじれ角δでねじれて
配列しており、このことが非らせん構造でのチルト角θ
がらせん構造でのチルト角Hより小さくなる原因となっ
ている。
【0011】また、このチルト角θの低下現象に対する
1つの改善策として、液晶分子のプレチルト角(液晶分
子と基板界面とのなす角)を大きくすることが考えられ
ているが、通常のポリイミド(PI)配向膜で大きなプ
レチルト角を与えるものは少ない。
【0012】また、従来のラビング処理したポリイミド
配向膜によって生じたカイラルスメクチック液晶の配向
状態は、電極と液晶層の間に絶縁体層としてのポリイミ
ド配向膜の存在によって、第1の光学的安定状態(例え
ば、白の表示状態)から第2の光学的安定状態(例え
ば、黒の表示状態)にスイッチングするための一方極性
電圧を印加した場合、この一方極性電圧の印加解除後、
強誘電性液晶層には他方極性の逆電界Vrevが生じ、この
逆電界Vrevがディスプレイの際の残像を引き起してい
た。上述の逆電界発生現象は、例えば吉田明雄著、昭和
62年10月「液晶討論会予稿集」142 〜143 頁の「SSFLC
のスイッチング特性」で明らかにされている。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の目的
は、前述の従来技術の問題点を解決した強誘電性液晶素
子を提供するものであり、特にカイラルスメクチック液
晶の非らせん構造で液晶分子のプレチルト角を大きく与
えることにより大きなチルト角θを生じ、高コントラス
トな画像がディスプレイされ、且つ残像を生じないディ
スプレイを達成できる強誘電性液晶素子を提供すること
にある。
【0014】
【課題を解決するための手段】即ち、本発明は、透明電
極の形成された一対の平行基板間にカイラルスメクチッ
ク液晶を挟持し、少なくとも一方の基板に2種以上のポ
リイミドを複合化した配向膜を有する液晶素子におい
て、前記配向膜が複合化することにより、各々のポリイ
ミド単体で液晶に与えるプレチルト角より大きなプレチ
ルト角を与えることができるものよりなることを特徴と
する液晶素子である。
【0015】以下、本発明を詳細に説明する。図1は本
発明の強誘電性液晶素子の一例を示す模式図である。同
図1において、11a と11b は各々In2O3 や ITO(インジ
ウム チン オキサイド;Indium Tin Oxide)等の透
明電極12a と12b で被覆された基板(ガラス基板)であ
り、その上に200 Å〜1500Å厚の絶縁膜13a と13b (例
えば、SiO2膜、TiO2膜、Ta2O5 膜など)と2種以上の複
合化したポリイミドで形成した50Å〜1000Å厚の配向膜
14a と14b とが各々積層されている。
【0016】この際、平行かつ同一向き(図1でいえば
A方向)になるようラビング処理(矢印方向)した配向
膜14a と14b が配置されている。基板11a と11b との間
には、強誘電性カイラルスメクチック液晶15が配置さ
れ、基板11a と11b との間隔の距離は、強誘電性カイラ
ルスメクチック液晶15のらせん配列構造の形成を抑制す
るのに十分に小さい距離(例えば、0.1 μm〜3μm)
に設定され、強誘電性カイラルスメクチック液晶15は双
安定性配向状態を生じている。上述の十分に小さい強誘
電性カイラルスメクチック液晶15が配置されている液晶
間距離は、配向膜14a と14b との間に配置されたビーズ
スペーサー16(例えば、シリカビーズ、アルミナビーズ
等)によって保持される。また、17a, 17bは偏光板を示
す。
【0017】本発明で用いるポリイミドは、通常のジア
ミンとテトラカルボン酸無水物とを重縮合反応させるこ
とによって合成されるポリアミド酸を加熱閉環すること
によって得られる。
【0018】一列を挙げると、テトラカルボン酸無水物
としては、ピロメリット酸二無水物,ベンゾフェノンテ
トラカルボン酸二無水物,ビフェニルテトラカルボン酸
二無水物,ナフタレンテトラカルボン酸二無水物などの
芳香族テトラカルボン酸二無水物や、シクロブタンテト
ラカルボン酸二無水物,シクロペンタンテトラカルボン
酸二無水物などの脂環式テトラカルボン酸二無水物など
が使用できる。
【0019】また、ジアミンとしては、下記の化1の一
般式(I)で示される、
【0020】
【化1】 2,2−ビス[4−(アミノフェノキシ)フェニル]ヘ
キサフルオロプロパン化合物をはじめ、m−フェニレン
ジアミン,p−フェニレンジアミン,ベンジジン,4,
4″−ジアミノターフェニル,4,4′″−ジアミノク
ォーターフェニル,4,4′−ジアミノジフェニルエー
テル,4,4′−ジアミノジフェニルメタン,ジアミノ
ジフェニルスルホン,2,2−ビス(p−アミノフェニ
ル)プロパン,2,2−ビス(p−アミノフェニル)ヘ
キサフロロプロパン,1,5−ジアミノナフタレン,
2,6−ジアミノナフタレン,3,3′−ジメチルベン
ジジン,3,3′−ジメトキシベンジジン,3,3′−
ジメチル−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル,
3,3′−ジメチル−4,4′−ジアミノジフェニルメ
タン,1,4−ビス(p−アミノフェノキシ)ベンゼ
ン,4,4′−ビス(p−アミノフェノキシ)ビフェニ
ル,2,2−ビス[4−(p−アミノフェノキシ)フェ
ニル]プロパンなどが使用できる。
【0021】通常の単一のポリイミドを配向膜として用
いた場合、下述の様な最大チルト角に近いチルト角を生
じる平均分子軸に液晶を配列させることは難しい。ま
た、これを改善するために、単一のポリイミドを複合化
させた場合、通常の組み合わせでは、各ポリイミド単体
から生じるプレチルト角よりも小さなプレチルト角しか
得られないことが多い。しかるに、特定の複合化、すな
わち2種以上のポリイミドの組み合わせ及び配合比率等
を設定すると、単一のポリイミドから生じるプレチルト
角よりも大きなプレチルト角を得ることができる。
【0022】本発明では、この様に、配向膜に特定の2
種以上のポリイミドを組み合わせて、単一のポリイミド
では得られない大きなプレチルト角を得ることができ
る、複合化させた配向膜を使用することに特徴を有す
る。すなわち、本発明において、2種以上のポリイミド
を複合化した配向膜を形成する場合、単一のポリイミド
A,B,・・・・の配向膜で得られるプレチルト角をそ
れぞれαA ,αB ,・・・・とし、αA ≧αB ≧・・・
・とした場合、例えばポリイミド単体AとBより複合化
した配向膜で得られるプレチルト角をαA+B とすると、
αA+B ≧αA ≧αB の関係が成立する配向膜が用いられ
る。
【0023】本発明における、2種以上のポリイミドの
複合化の方法としては、任意の比率における2種以上の
ポリイミドのブレンド(混合),共重合、あるいは積層
構成等の方法が使用できる。
【0024】本発明で用いるポリイミド膜を基板上に設
ける際には、ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸を
ジメチルフォルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメ
チルスルフォキシド、N−メチルピロリドンなどの溶剤
に溶解して0.01〜40重量%溶液として、該溶液をスピン
ナー塗布法、スプレイ塗布法、ロール塗布法などにより
基板上に塗布した後、 100〜350 ℃、好ましくは 200〜
300 ℃の温度で加熱して脱水閉環させてポリイミド膜を
形成することができる。このポリイミド膜は、しかる後
に布などでラビング処理される。又、本発明で用いるポ
リイミド膜は30Å〜1μ程度、好ましくは 200Å〜2000
Åの膜厚に設定される。この際には、図1に示す絶縁膜
13a と13b の使用を省略することができる。又、本発明
では、絶縁膜13a と13b の上にポリイミド膜を設ける際
には、このポリイミド膜の膜厚は500Å以下、好ましく
は300 Å以下に設定することができる。
【0025】本発明において用いられる液晶物質として
は、降温過程で、等方相,コレステリック相,スメクチ
ックA相を通してカイラルスメクチックC相を生じる液
晶が好ましい。特に、コレステリック相の時のピッチが
0.8 μm以上のものが好ましい(但し、コレステリック
相でのピッチは、コレステリック相の温度範囲における
中央点で測定したもの)。その具体的な液晶物質として
は、例えば下記の化2で示される液晶物質「LC-1」 、
「80B」及び「80SI*」を下記の比率で含有させた液晶組成
物が好ましく用いられる。
【0026】
【化2】 液 晶 (1) (LC-1)90/(80B)10 (2) (LC-1)80/(80B)20 (3) (LC-1)70/(80B)30 (4) (LC-1)60/(80B)40 (5) 80SI* 上記の配合比率は、それぞれ重量比を表わしている。
【0027】図2は、強誘電性液晶の動作説明のため
に、セルの例を模式的に描いたものである。21a と21b
は、In2O3 、SnO2あるいはITO 等の薄膜からなる透明電
極で被覆された基板(ガラス板)であり、その間に液晶
分子層22がガラス基板面に垂直になるよう配向したSmC*
(カイラルスメクチックC)相又はSmH*(カイラルスメ
クチックH)相の液晶が封入されている。太線で示した
線23は液晶分子を表わしており、この液晶分子23はその
分子に直交した方向に双極子モーメント(P⊥)24を
有している。この時の三角錐の頂角をなす角度がかかる
らせん構造のカイラルスメクチック相でのチルト角Hを
表わしている。基板21a と21b 上の電極間に一定の閾値
以上の電圧を印加すると、液晶分子23のらせん構造がほ
どけ、双極子モーメント(P⊥)24がすべて電界方向に
向くよう、液晶分子23は配向方向を変えることができ
る。液晶分子23は、細長い形状を有しており、その長軸
方向と短軸方向で屈折率異方性を示し、従って例えばガ
ラス基板面の上下に互いにクロスニコルの偏光子を置け
ば、電圧印加極性によって光学特性が変わる液晶光学変
調素子となることは、容易に理解される。
【0028】本発明の液晶素子で用いる双安定性配向状
態の表面安定型強誘電性液晶セルは、その厚さを充分に
薄く(例えば、0.1 〜3μm)することができる。この
ように液晶層が薄くなるにしたがい、図3に示すよう
に、電界を印加していない状態でも液晶分子のらせん構
造がほどけ、非らせん構造となり、その双極子モーメン
トPaまたはPbは上向き(34a) 又は下向き(34b) のどちら
かの状態をとる。
【0029】このようなセルに、図3に示す如く一定の
閾値以上の極性の異なる電界Ea又はEbを電圧印加手段31
a と31b により付与すると、双極子モーメントは、電界
Ea又はEbの電界ベクトルに対応して上向き34a 又は下向
き34b と向きを変え、それに応じて液晶分子は、第1の
安定状態33a あるいは第2の安定状態33b の何れか一方
に配向する。この時の第1と第2の安定状態のなす角度
の1/2がチルト角θに相当する。
【0030】この強誘電性液晶セルによって得られる効
果は、その第1に応答速度が極めて速いことであり、第
2に液晶分子の配向が双安定性を有することである。第
2の点を、例えば図3によって更に説明すると、電界Ea
を印加すると液晶分子は第1の安定状態33a に配向する
が、この状態は電界を切っても安定である。又、逆向き
の電界Ebを印加すると、液晶分子は第2の安定状態33b
に配向してその分子の向きを変えるが、やはり電界を切
ってもこの状態に留まっている。また、与える電界Eaが
一定の閾値を越えない限り、それぞれの配向状態にやは
り維持されている。
【0031】次に、図4は本発明の液晶素子における配
向膜を用いた配向方法により配向した液晶分子の配向状
態を模式的に示す断面図、図5はそのC−ダイレクタを
示す図である。
【0032】図4に示す51a 及び51b は、それぞれ上基
板及び下基板を表わしている。50は液晶分子52で組織さ
れた液晶分子層で、液晶分子52が円錐53の底面54(円
形)に沿った位置を変化させて配列している。
【0033】図5は、C−ダイレクタを示す図である。
同図5のU1は一方の安定配向状態でのC−ダイレクタ81
で、U2は他方の安定配向状態でのC−ダイレクタ81であ
る。C−ダイレクタ81は、図4に示す液晶分子層50の法
線に対して垂直な仮想面への分子長軸の写影である。
【0034】一方、従来のラビング処理したポリイミド
膜によって生じた配向状態は、図6のC−ダイレクタ図
によって示される。図6に示す配向状態は、上基板51a
から下基板51b に向けて分子軸のねじれが大きいため、
チルト角θは小さくなっている。
【0035】次に、図7(a) は、C−ダイレクタ81が図
5の状態(ユニフォーム配向状態という)でのチルト角
θを示す説明図、および図7(b) はC−ダイレクタ81が
図6の状態(スプレイ配向状態という)でのチルト角θ
を示す説明図である。図中、60はポリイミド膜に施した
ラビング処理軸を示し、61a は配向状態U1での平均分子
軸、61b は配向状態U2での平均分子軸、62a は配向状態
S1での平均分子軸、62b は配向状態S2での平均分子軸を
示す。平均分子軸61a と61b とは、互いに閾値電圧を超
えた逆極性電圧の印加によって変換することができる。
同様のことは平均分子軸62a と62b との間でも生じる。
【0036】次に、逆電界Vrevによる光学応答の遅れ
(残像)に対するユニフォーム配向状態の有用性につい
て説明する。
【0037】液晶セルの絶縁層(配向膜)の容量Ci
液晶層の容量をCLC及び液晶の自発分極をPsとすると、
残像の原因となるVrevは、下式で表わされる。
【0038】 図8は、液晶セル内の電荷の分布、自発分極Psの方向
及び逆電界Vrevの方向を模式的に示した断面図である。
図8(a) はパルス電界印加前のメモリー状態下における
+及び−電荷の分布状態を示し、この時の自発分極Psの
向きは+電荷から−電荷の方向である。図8(b) は、パ
ルス電界解除直後の自発分極Psの向きが図8(a) の時の
向きに対して逆向き(従って、液晶分子は一方の安定配
向状態から他方の安定配向状態に反転を生じている)で
あるが、+及び−電荷の分布状態は、図8(a) の時と同
様であるため、液晶内に逆電界Vrevが矢印B方向に生じ
ている。この逆電界Vrevはしばらくした後、図8(c) に
示すように消滅し、+及び−電荷の分布状態が変化す
る。
【0039】図9は従来のポリイミド配向膜によって生
じたスプレイ配向状態の光学応答の変化をチルト角θの
変化に換えて示した説明図である。図9に示す様に、パ
ルス電界印加時においては、矢印X1の方向に沿ってスプ
レイ配向状態下の平均分子軸S(A)から最大チルト角H付
近のユニフォーム配向状態下の平均分子軸U2までオーバ
ーシュートし、パルス電界解除直後においては、図8
(b) に示す逆電界Vrevの作用が働いて、矢印X2の方向に
沿ってスプレイ配向状態下の平均分子軸S(B)までチルト
角θが減少し、そして図8(c) に示す逆電界Vrevの減衰
の作用により、矢印X3の方向に沿ってスプレイ配向状態
下の平均分子軸S(C)までチルト角θが若干増大した安定
配向状態が得られる。図10はこの時の光学応答の状態
を示すグラフである。
【0040】本発明によれば、前述した様に、2種以上
のポリイミドを複合化し、各々のポリイミド単体で得ら
れるプレチルト角より大きなプレチルト角を得る組み合
せの配向膜を用いていることから、その配向状態におい
ては、図9に示したスプレイ状態下の平均分子軸S(A),
S(B)及びS(C)を生じることが無く、従って最大チルト角
Hに近いチルト角θを生じる平均分子軸に配列させるこ
とができる。図11は、この時の本発明の光学応答の状
態を示すグラフである。図11によれば、残像に原因す
る光学応答の遅れを生じないことと、メモリー状態下で
の高いコントラストを引き起こしていることが認められ
る。
【0041】本発明の液晶素子は、下述の実施例で明ら
かにする様に、ラビング処理した特定の複合化したポリ
イミド配向膜による配向方法を用いることによって、明
状態と暗状態での大きな光学的コントラストを示し、特
に米国特許第4,655,561 号明細書等に開示されているマ
ルチプレクシング駆動時の非選択画素に対して大きなコ
ントラストを生じ、さらにディスプレイ時の残像の原因
となるスイッチング時(マルチプレクシング駆動時)の
光学応答の遅れを生じない配向状態が達成された。
【0042】
【実施例】以下、実施例を示し本発明をさらに具体的に
説明する。 実施例1 1000Å厚の ITO膜が設けられている 1.1mm厚のガラス板
を2枚用意し、それぞれのガラス板上に下記の化3の構
造式(II),(III)で示す2種のポリアミド酸を
1:1にブレンドした複合ポリアミド酸のN−メチルピ
ロリドン/n−ブチルセロソルブ=5/1の 3.0重量%
溶液をスピンコートにて成膜後、約1時間, 250℃で加
熱焼成処理を施した。この時の膜厚は 250Åであった。
この塗布膜に、ナイロン殖毛布による一方向ラビング処
理を行なった。
【0043】
【化3】 その後、平均粒径約1.5 μmのアルミナビーズを一方の
基板上に散布した後、それぞれのラビング処理軸が互い
に平行で、かつ同一処理方向となる様に2枚のガラス基
板を重ね合せてセルを作製した。
【0044】このセル内にチッソ(株)社製の強誘電性
スメクチック液晶である「CS-1014 」(商品名)を等方
相下で真空注入してから、等方相から0.5 ℃/hで30℃ま
で徐冷することによって配向させることができた。この
強誘電性液晶「CS-1014 」を用いた本実施例のセルでの
相変化は、下記のとおりであった。
【0045】 80.5℃ 69.1℃ 50℃ Iso.────→ Ch────→ SmA────→ SmC* (Iso.=等方相 Ch=コレステリック相 SmA
=スメクチックA相 SmC*=カイラルスメクチックC相) 上述の液晶セルを一対の90°クロスニコル偏光子の間に
挾み込んで、50μsec の30Vパルスを印加してから、90
°クロスニコルを消光位(最暗状態)にセットし、この
時の透過率をホトマルチプレターにより測定し、続いて
50μsec の−30Vパルスを印加し、この時の透過率(明
状態)を同様の方法で測定したところ、チルト角θは15
°であり、最暗状態時の透過率は1%で、明状態時の透
過率は32%であり、従ってコントラスト比は32:1であ
った。
【0046】この配向膜の液晶に与えるプレチルト角
は、クリスタルローテーション法により測定し、13.
5°であった。
【0047】なお、構造式(II)および(III)で
示されるポリアミド酸をそれぞれ単体で用いて形成した
ポリイミド配向膜を用いて、上記と同様の方法によりプ
レチルト角を測定したところ、それぞれ9.8°および
7.4°であった。
【0048】又、残像の原因となる光学応答の遅れは0.
1 秒以下であった。これらの諸特性は、各々単一のポリ
イミドを用いた配向膜より得られる値より優れたものに
なっていた。
【0049】さらに、この液晶セルを図12に示す駆動
波形を用いたマルチプレクシング駆動による表示を行っ
たところ、高コントラストな高品位表示が得られ、また
所定の文字入力による画像表示の後に全画面を白の状態
に消去したところ、残像の発生は判読できなかった。
尚、図12のSN, SN+1,SN+2は走査線に印加した電圧波
形を表わしており、Iは代表的な情報線に印加した電圧
波形を表わしている。(I−SN)は、情報線Iと走査線
SNとの交差部に印加された合成波形である。又、本実施
例では、V0=5〜8V、ΔT =20〜70μsec で行った。 実施例2 下記の化4の構造式(IV),(V)で示される2種の
ポリアミド酸を4:1にブレンドして形成した複合配向
膜を用いた以外は、実施例1と同様にしてセルを作製し
た。
【0050】
【化4】 それぞれに対して実施例1と同様の試験を行った。プレ
チルト角=13.2°、コントラスト比=25:1、及び
光学応答のおくれ時間= 0.2秒の結果を得た。この場合
も、各々単一のポリイミドを用いた配向膜より得られる
値より優れたものになっていた。
【0051】なお、構造式(IV)および(V)で示さ
れるポリアミド酸をそれぞれ単体で用いて形成したポリ
イミド配向膜を用いて、実施例1と同様の方法によりプ
レチルト角を測定したところ、それぞれ9.8°および
7.2°であった。
【0052】又、実施例1と同様のマルチプレクシング
駆動による表示を行ったところ、コントラスト及び残像
については実施例1と同様の結果が得られた。 実施例3 下記の化5の構造式(VI),(VII)で示される2
種のポリアミド酸を1:1にブレンドして形成した複合
配向膜を用いた以外は、実施例1と同様にしてセルを作
製した。
【0053】
【化5】 それぞれに対して実施例1と同様の試験を行った。プレ
チルト角=13.5°、コントラスト比=29:1、及
び光学応答のおくれ時間=0.2秒の結果を得た。この
場合も、各々単一のポリイミドを用いた配向膜より得ら
れる値より優れたものになっていた。
【0054】なお、構造式(VI)および(VII)で
示されるポリアミド酸をそれぞれ単体で用いて形成した
ポリイミド配向膜を用いて、実施例1と同様の方法によ
りプレチルト角を測定したところ、それぞれ9.8°お
よび1.0°であった。
【0055】又、実施例1と同様のマルチプレクシング
駆動による表示を行ったところ、コントラスト及び残像
については実施例1と同様の結果が得られた。 比較例1〜3 表1に示したポリアミド酸(1−A)〜(3−A)と、
表2に示したポリアミド酸(1−B)〜(3−B)をそ
れぞれ表3に示す組み合わせで、2種の化合物をブレン
ドして形成した複合配向膜を用いた以外は、実施例1と
同様にしてセルを作製した。
【0056】それぞれのセルに対して、実施例1と同様
の試験を行い、そのコントラスト比および光学応答のお
くれを表4に示す。また、複合配向膜およびポリアミド
酸をそれぞれ単体で用いて形成したポリイミド配向膜を
用いて、実施例1と同様の方法で測定したプレチルト角
を表3に示す。
【0057】これらの諸特性は、各々単一のポリイミド
を用いた配向膜より得られる値より劣るものであり、か
つ前記実施例より特性の劣るものであった。又、実施例
1と同様のマルチプレクシング駆動による表示を行った
ところ、コントラストが本実施例のものと比較して小さ
く、しかも残像が生じた。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
【表3】
【0061】
【表4】
【0062】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の液晶素子
によれば、明状態と暗状態でのコントラストが高く、特
にマルチプレクシング駆動時の表示コントラストが非常
に大きく高品位の表示が得られ、しかも目ざわりな残像
現象が生じない効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の液晶素子の一例を示す模式図である。
【図2】らせん構造をもつカイラルスメクチック液晶の
配向状態を示した斜視図である。
【図3】非らせん構造の分子配列をもつカイラルスメク
チック液晶の配向状態を示す斜視図である。
【図4】本発明における配向膜による配向方法で配向し
たカイラルスメクチック液晶の配向状態を示す断面図で
ある。
【図5】図4のカイラルスメクチック液晶のユニフォー
ム配向状態におけるC−ダイレクタ図である。
【図6】スプレイ配向状態におけるC−ダイレクタ図で
ある。
【図7】図7(a) はユニフォーム配向状態におけるチル
ト角θを示す説明図、図7(b) はスプレイ配向状態にお
けるチルト角θを示す説明図である。
【図8】強誘電性液晶内の電荷分布、自発分極Psの向き
及び逆電界Vrevの向きを示す断面図である。
【図9】電界印加時及び印加後のチルト角θの変化を示
す説明図である。
【図10】従来例の液晶素子における光学応答特性を示
すグラフである。
【図11】本発明の液晶素子における光学応答特性を示
すグラフである。
【図12】本発明の実施例で用いた駆動電圧の波形図で
ある。
【符号の説明】
11a, 11b ガラス基板 12a,12b 透明電極 13a,13b 絶縁膜 14a,14b 配向膜 15 強誘電性カイラルスメクチック液晶 16 ビーズスペーサー 17a,17b 偏光板 21a, 21b 基板 22 液晶分子層 23 液晶分子 24 双極子モーメント 31a,31b 電圧印加手段 32 垂直層 33a 第1の安定状態 33b 第2の安定状態 34a 上向き双極子モーメント 34b 下向き双極子モーメント H らせん構造でのチルト角 θ 非らせん構造でのチルト角 Ea,Eb 電界 50 液晶分子層 51a 上基板 51b 下基板 52 液晶分子 53 円錐 54 底面 60 基板引き上げ方向またはラビング処理軸 61a 配向状態U1での平均分子軸 61b 配向状態U2での平均分子軸 62a 配向状態S1での平均分子軸 62b 配向状態S2での平均分子軸 81 C−ダイレクタ

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 透明電極の形成された一対の平行基板間
    にカイラルスメクチック液晶を挟持し、少なくとも一方
    の基板に2種以上のポリイミドを複合化した配向膜を有
    する液晶素子において、前記配向膜が複合化することに
    より、各々のポリイミド単体で液晶に与えるプレチルト
    角より大きなプレチルト角を与えることができるものよ
    りなることを特徴とする液晶素子。
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