JP2730261B2 - 二酸化珪素被膜の製造方法 - Google Patents

二酸化珪素被膜の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は酸化珪素被膜の製造方法に関し、特に珪弗化
アンモニウムを含む処理液と基材とを接触させて基材表
面に二酸化珪素被膜を形成する方法に関する。
[従来の技術] 任意の基材表面に酸化珪素被膜を製造する方法とし
て、0.5〜3.0モル/の濃度の珪弗化水素酸に酸化珪素
を飽和させ、その後この珪弗化水素酸の酸化珪素飽和水
溶液1につきホウ酸を2.0×10-2モル以上添加して酸
化珪素を過飽和とした処理液に基材を浸漬し、基材表面
に酸化珪素被膜を製造する方法(特開昭57−196744)、
及び該処理液にホウ酸を添加し続けることにより、酸化
珪素の過飽和状態をある程度持続させ、酸化珪素被膜を
繰り返し析出させる方法(特開昭58−161944)、また上
記方法の添加剤であるホウ酸の代わりにアルミニウム化
合物、カルシウム化合物、マグネシウム化合物、等を用
いた改良法(特開昭62−20876)等が知られている。
[発明が解決しようとする課題] 上記析出法は低温で膜形成が可能であり、かつ任意の
形状の基材表面に均一に酸化珪素被膜を形成できるなど
の利点を持つが、該処理で使用される珪弗化水素酸は硫
酸に匹敵する強酸性の液体である。そのため金属等の酸
性水溶液中で反応する基材はそのままでは浸漬処理を行
なう事ができないと言った問題点があった。また、強酸
と言うことで取り扱い上かなりの危険性を伴うと言った
問題もあった。
[課題を解決するための手段] 本発明は前記問題点を解決するためになされたもので
あり、珪弗化アンモニウムを含む水溶液を処理液として
用い該処理液に基材を接触させて基材表面に二酸化珪素
被膜を析出させる二酸化珪素被膜の製造方法である。
ここで水溶液は珪弗化アンモニウム水溶液、または珪
弗化アンモニウム水溶液に二酸化珪素を溶解させた液を
用いる、添加剤としては、ホウ酸、塩化アルミニウム、
塩化カルシウム、塩化マグネシウムが用いられるが、弗
素と反応する例えばアルミニウム化合物、カルシウム化
合物、マグネシウム化合物などが有効に利用できる。ガ
ラス板、金属等の基材への酸化珪素膜の成膜方法は処理
液中に基材を浸漬させる方法が一般に行われるが、基材
上へ処理液を塗布して接触させるようにしてもよい。本
発明で得られる酸化珪素膜は、おそらく化学反応の結果
として基板上に析出してくると考えられる。よって、一
般に処理液中の珪素の濃度が高いほど成膜能力も高くま
た処理温度が高いほど成膜量は多く成膜速度も速くなる
傾向にある。珪弗化アンモニウムを含む水溶液に、ホウ
酸等の添加剤を加えた処理液を20℃〜60℃の温度に維持
し、その中へガラス等の基材を浸漬し約16時間保持する
と基材表面に数十mmの二酸化珪素膜が形成される。
[作用] 本発明によれば従来のこの種の二酸化珪素膜製造方法
の特徴である低温で膜形成が可能であり、かつ任意
形状の基材表面に均一に酸化珪素被膜を形成できる。な
どの利点に加えて従来適用できなかった強酸性溶液中で
反応する金属等の基材にも二酸化珪素被膜を成膜でき適
用範囲を拡大することができるに至った。
また、使用される珪弗化アンモニウムは粉末試薬とし
て入手が可能であり高純度な処理液の調整が容易に行な
える。珪弗化アンモニウム水溶液を処理液として使用す
る場合は試薬粉末を溶解するだけで処理液として使用し
即座に成膜処理を実施できる。二酸化珪素を飽和させる
などの工程が省かれ作業効率が向上する。本発明で使用
される珪弗化アンモニウム水溶液は強酸性ではなく、さ
らに比較的低濃度で処理できるために取扱上の危険性も
かなり軽減される。
[実施例] 実施例1 各種濃度に調整した珪弗化アンモニウム水溶液50mlに
濃度0.5モル/のホウ酸水溶液を添加し40℃恒温水槽
中で30分間撹拌する。その後で充分に洗浄を行なったソ
ーダライムガラス(50mm×25mm×1.1mm)を浸漬した。
ガラス基板はマスキングテープにより一部マスキングし
てある。16時間後基板ガラスを取り出し成膜量を接触針
式膜厚測定機で測定した。処理結果を表−1に示す。な
お、成膜した膜は赤外線分光法(IR)、二次イオン質量
分析法(SIMS)などで酸化珪素膜であることが確認され
ている。
表−1は処理液濃度とホウ酸添加量が成膜速度にどの
様な影響を及ぼすかをまとめたものであるが例えば処理
液濃度0.8モル/の場合、ホウ酸添加量が1.5mlでは16
時間浸漬したガラス基板上に43nmの酸化珪素膜が得ら
れ、また2.0mlでは55nmの膜が得られている。また、ホ
ウ酸添加量が2.0mlで50℃で処理した場合には90nmの膜
が得られた事が示されて いる。さらにホウ酸添加量が4.0mgと多くなると成膜量
は0となる。
このことから添加剤の添加量と成膜量との間には一定
の関係があり、添加剤の添加量が少なくてもいけない
し、また多すぎてもいけないことがわかる。
この添加剤の添加量と成膜量の関係は、処理液の濃度
とも一定の関係を持つことが表−1よりわかる。つまり
処理液濃度が低い場合は添加剤の添加量を多くしないと
成膜能力が発揮されない。それに対して処理液濃度が高
くなると少量の添加剤を添加するだけで成膜能力が発揮
されることがわかる。
実施例2 二酸化珪素を飽和させた約0.4、0.6、0.8モル/の
珪弗化アンモニウム水溶液、100mlをビーカーに入れ、
恒温水槽にて35℃に保持した。次に0.5モル/のホウ
酸水溶液を2ml添加した。添加後、30分経過した後に充
分に洗浄、乾燥したソーダライムガラスをそれぞれ5枚
ずつ浸漬した。浸漬したソーダライムガラスはそれぞれ
一定時間毎に1枚ずつ取り出して接触針式膜厚測定機に
より成膜量を測定した。第1図に浸漬時間と成膜量の関
係を示す。横軸はガラスの浸漬時間を、縦軸は酸化珪素
膜の成膜量を示している。成膜量は時間経過とともに単
調に増加した。また、珪弗化アンモニウム濃度の高い処
理液の方が成膜量は多くなった。
実施例3 1モル/に調整した珪弗化アンモニウム水溶液を処
理液として用い50mlをビーカーにとり35℃恒温水槽に保
持する。処理液は35℃に保ちながら処理液に0.5モルの
ホウ酸水溶液を2ml添加し30分間撹拌を行う。撹拌後基
材としてITO膜(インジウム錫酸化膜)付きガラス基
板、フロートガラス板を浸漬処理した。ITO膜は珪弗化
水素酸中では溶解してしまうために従来法では酸化珪素
膜を成膜することはできない。しかし本実施例3の処理
を行ない16時間後に取り出し膜厚を接触針式膜厚測定機
で測定したところITO膜は溶解することなしに成膜が行
なわれておりフロート板と共に膜厚が50nmの酸化珪素膜
が被覆していた。
また、同様の処理条件でステンレス板を浸漬処理を行
なった。ステンレス板は珪弗化水素酸中では表面が浸食
され光沢が失われてしまうが、本実施例3の方法では表
面光沢を失うこと無く表面に50nmの膜厚で酸化珪素を成
膜する事ができた。
実施例4 0.8モル/に調整した珪弗化アンモニウム水溶液150
mlをそれぞれ50mlをビーカーに分取し40℃恒温水槽に保
持する。それぞれの処理液に0.02モルの塩化カルシウ
ム、0.003モルの塩化アルミニウム、0.02モルの塩化マ
グネシウムを少量の蒸留水で溶解してから添加した。30
分間撹拌を行なった後で充分に洗浄された50mm×25mm×
1.1mmのフロート板ガラスを浸漬処理した。ガラスはマ
スキングテープで一部マスクを施しておいた。16時間浸
漬後ガラスを取り出し洗浄乾燥後、接触針式膜厚測定機
で測定したところそれぞれ30nm、80nm、30nmの膜が得ら
れた。
[発明の効果] 本発明によれば従来のこの種二酸化珪素被膜の形成法
の特徴である低温で膜形成が可能であり、かつ任意
形状の基材表面に均一に酸化珪素被膜を形成できる。な
どの利点を全く失う事なくさらに前記従来法で適用でき
なかった強酸性溶液中で反応する金属等の基材にも二酸
化珪素被膜を成膜でき処理対象範囲の大幅な拡大が期待
できる。
使用される珪弗化アンモニウムは粉末試薬として入手
が可能であり高純度な処理液の調整が容易に行なえる。
珪弗化アンモニウム水溶液を処理液として使用する場
合は試薬粉末を溶解するだけで処理液として使用し即座
に成膜処理を実施できるため、二酸化珪素を飽和させる
などの工程が省かれ作業効率が向上する。
本発明で処理液として使用される珪弗化アンモニウム
水溶液は強酸性ではなく、さらに比較的低濃度で処理で
きるために、取扱上の危険性もかなり軽減される等の顕
著な効果を有するものである。
【図面の簡単な説明】
第1図は本願発明の処理液を用いた場合の浸漬時間と成
膜量の関係を示すものである。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】珪弗化アンモニウムを含む水溶液と添加剤
    とからなる処理液に、基材を接触させて該基材表面に酸
    化珪素被膜を形成させることを特徴とする二酸化珪素被
    膜の製造方法。
  2. 【請求項2】前記添加剤がホウ酸、塩化アルミニウム、
    塩化カルシウム、塩化マグネシウムである特許請求の範
    囲第1項記載の二酸化珪素被膜の製造方法。
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