JP2729247B2 - エンジンバルブ等への盛金材料の肉盛溶接方法 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、例えばエンジンバルブの弁フェース部等
に、硬質かつ高耐摩耗性を有する盛金材料を肉盛溶接す
る方法に関する。

〔従来の技術〕

エンジンバルブの弁フェース部は、高負荷、高サイク
ルの繰返し荷重を受けるため、母材単体の強度では著し
く摩耗する。そのため、弁フェース部に、硬質かつ高耐
摩耗性の盛金材料、例えばステライト等の合金粉末を肉
盛溶接して、耐摩耗性を高めるようにしている。

この場合、第３図〜第６図に示すように、鍛造工程を
経たエンジンバルブ（以下ワークという）（１）の弁フ
ェース部（1a）に、まず第４図示のような環状凹溝
（２）を形成したのち、第５図示のように、この環状凹
溝（２）に上記した盛金材料をプラズマ溶接等により肉
盛り（３）を施し、最後に、肉盛り（３）部を機械加工
により、第６図のようなテーパ状のフェース面（1b）に
仕上げている。

上記環状凹溝（２）は、通常、機械加工により形成さ
れるが、機械加工では、大掛かりな前工程を要すること
に加えて、材料の歩留まりが悪いなどの問題があるた
め、最近では、上記環状凹溝（２）を、鍛造工程におい
て、エンジンバルブ（１）を成形するのと同時に形成す
ることが行われている。

このような鍛造により環状凹溝（２）を形成すると、
その表面は、酸化したスケールや黒皮等により覆われ、
この状態のまま肉盛溶接すると、盛金材料の溶着性が損
なわれて、内部欠陥が発生したり、組織が不安定となっ
たりするので、黒皮層を除去する必要がある。

従来、上記黒皮層は、旋削盤やサンドブラスト装置に
より除去していた。

〔発明が解決しようとする課題〕

黒皮層は、旋削盤やサンドブラスト装置により除去す
る従来の方法では、鍛造工程と肉盛工程との間に、余分
な前工程を要することとなり、その分多くの作業時間を
費やして生産性が低下するばかりでなく、それ専用の旋
削盤やサンドブラスト装置を設置したり、作業者を確保
したりしなければならないので、設備費や人件費が嵩
む。

本発明は、上記問題点を解決するためになされたもの
で、黒皮層等を除去するための前工程を廃止することに
より、設備費や人件費の削減を計るとともに、生産性を
大幅に高めうるようにした、エンジンバルブ等への盛金
材料の肉盛溶接方法を提供することを目的としている。

〔課題を解決するための手段〕

上記目的は、エンジンバルブ（１）の弁フェース部
（1a）等に形成された環状凹溝（２）に、母材と異なる
盛金材料（７）を肉盛溶接するに際し、前記エンジンバ
ルブ（１）等を一定方向に回転させつつ、第１周目にお
いて、適宜の肉盛溶接装置（Ｗ）におけるトーチ（５）
より発生させた火炎（６）により、前記環状凹溝（２）
の表面に黒皮層等を除去し、第２周目において、前記ト
ーチ（５）に盛金材料（７）を供給して、環状凹溝
（２）の全面に肉盛溶接することにより達成することが
できる。

また、上記目的は、エンジンバルブ（１）等を一定方
向に回転させつつ、少なくとも２つのトーチ（５）
（９）を備える適宜の肉盛溶接装置（Ｗ）における一方
のトーチ（９）より発生させた火災（10）により、前記
環状凹溝（２）の表面の黒皮層等を除去しつつ、肉盛溶
接装置における他方のトーチ（５）に盛金材料（７）を
供給して、黒皮層等の除去された環状凹溝（２）の全面
に順次肉盛溶接することによっても達成される。

〔作 用〕

環状凹溝（２）の黒皮層等を、肉盛溶接工程時に除去
することにより、旋削盤等の機械を使用した前工程を廃
止することができ、生産性は著しく高まる。

〔実施例〕

以下、本発明の実施例を、図面に基づいて説明する。

第１図（Ａ）及び（Ｂ）は、請求項（１）記載の発明
の溶接要領を略示するものである。

まず、第１図（Ａ）に示すように、プラズマ溶接装置
（Ｗ）におけるほぼ30゜傾斜させた回転台（４）上に、
鍛像により成形された、弁フェース部（1a）に環状凹溝
（２）を備えるワーク（エンジンバルブ）（１）の傘部
（1c）を載置して、回転台（４）の回転により一定方向
に回転させつつ、弁フェース部（1a）の直上に臨ませた
トーチ（５）の先端より、不活性シールドガス（図示
略）を噴射しながら、プラズマアーク（火災）（６）の
みを発生させ、環状凹溝（２）の表層に形成された、鍛
造時に酸化スケールや黒皮層等を、アーク熱により焼失
又は剥離させる。

この際のプラズマアーク（６）の温度は、母材の表層
のみが若干溶融しうる程度とするのがよい。

ついで、ワーク（１）が１回転して、環状凹溝（２）
内の黒皮層等が全て除去されたのち、第１図（Ｂ）に示
すように、引き続きワーク（１）を１回転させるととも
に、プラズマアーク（６）を発生させ、かつ同時に、ト
ーチ（５）の先端よりステライト等の盛金材料（７）を
プラズマアーク（６）に向けて供給し、アーク熱により
盛金材料（７）と環状凹溝（２）を溶融させて、環状凹
溝（２）の全面に肉盛り（８）を施す。

この肉盛溶接時においては、プラズマアーク（６）の
温度を、母材の融点と同程度がそれ以上に高める。

次に、請求項（２）記載の発明の溶接要領を、第２図
に基づいて説明する。

この発明は、前述したと同様の肉盛り用のトーチ
（５）と、その反対側に、ほぼ180゜位置をずらして設
けた、黒皮層等を除去するトーチ（９）との２トーチに
より、肉盛溶接を行なうものである。

すなわち、まず前述の発明と同様に、回転台（４）に
よりワーク（１）を一定方向に回転させつつ、トーチ
（９）よりプラズマアーク（10）のみを発生させて、環
状凹溝（２）内の黒皮層等を除去する。

ついで、ワーク（１）が約半回転して、黒皮層等の除
去された環状凹溝（２）が、肉盛り用のトーチ（５）の
直下まで移動したとき、トーチ（５）の先端よりプラズ
マアーク（６）を発生させると同時に、盛金材料（７）
を供給して、順次黒皮層等が除去されて回転してくる環
状凹溝（２）に肉盛り（８）を施す。

ついで、ワーク（１）が１回転して、環状凹溝（２）
内の黒皮層等が全周に亘って除去されたと同時に、トー
チ（９）よりのプラズマアーク（10）を停止し、かつト
ーチ（５）により、引き続き肉盛り（８）を続行する。

ワーク（１）が１回転して、環状凹溝（２）の全周の
黒皮層等が除去された時点では、環状凹溝（２）の約半
周に肉盛溶接されたのみであるので、引き続きワーク
（１）を約半回転させて、トーチ（５）により、環状凹
溝（２）の残りの半周に肉盛り（８）を施し、全面に肉
盛溶接された直後において、トーチ（５）のプラズマア
ーク（６）と盛金材料（７）の供給を停止する。

以上説明した請求項（１）及び（２）記載の発明にお
いては、いずれも黒皮層等を肉盛溶接と同時に除去する
ため、従来のような機械による黒皮層等の除去工程を経
る必要がなく、生産性は著しく高まる。

また、黒皮層等が除去された後のワーク（１）は、傘
部（1c）全体がアーク熱により予熱されているため、そ
の後の肉盛溶接時において、温度上昇が緩やかとなっ
て、熱ひずみの発生するのが防止されるとともに、盛金
材料（７）の湯流れ性が良好となるので、母材に対する
溶着性が向上し、ピンホールや未溶着等、内部欠陥の発
生率が極めて少なくなる。

請求項（１）記載の発明は、１つのトーチにより黒皮
層等の除去と肉盛溶接とを行なうので、装置が簡略化す
る利点がある。

また、請求項（２）記載の２トーチ式の発明は、ワー
クを１回転半させるのみで溶接が終了するので、請求項
（１）記載の発明に比べて生産性は高い。

なお、請求項（２）記載の発明において、黒皮層等を
除去するトーチ（９）の位置を、肉盛り用トーチ（５）
に対しほぼ180゜ずらした反対側としてあるが、例えば
それら２つのトーチ（５）（９）を互いに接近させるな
ど、その位置は適宜である。

本発明方法に用いる肉盛溶接手段は、上記プラズマ溶
接以外に、酸素−アセチレンガスやその他の溶接手段で
もよい。

本発明方法は、バルブシートのシート部に肉盛溶接す
る際にも適用しうる。

〔発明の効果〕

本発明方法によれば、ワーク（１）の環状凹溝（２）
の黒皮層等を、肉盛溶接工程と同時に除去するようにし
たから、従来のような機械による前工程を廃止すること
ができ、生産性の向上は勿論のこと、機械設備や人件費
等が削減され、製造コストの低減が図れる。

【図面の簡単な説明】

第１図（Ａ）及び（Ｂ）は、請求項（１）記載の発明方
法の一実施例を示し、（Ａ）は黒皮層等の除去、（Ｂ）
は肉盛溶接時をそれぞれ示す概略説明図、 第２図は、請求項（２）記載の発明方法の一実施例を示
す概略説明図、 第３図は、ワークの正面図、 第４図は、弁フェース部に環状凹溝を形成した状態を示
す要部の拡大図、 第５図は、同じく肉盛溶接した状態を示す要部の拡大
図、 第６図は、同じく仕上加工を施した状態を示す要部の拡
大図である。 （１）ワーク（エンジンバルブ） （1a）弁フェース部、（1c）傘部 （２）環状凹溝、（４）回転台 （５）トーチ （６）プラズマアーク（火炎） （７）盛金材料、（８）肉盛り （９）トーチ （10）プラズマアーク（火炎） （Ｗ）プラズマ溶接装置

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭53−80348（ＪＰ，Ａ) 特開 昭60−99480（ＪＰ，Ａ) 特開 平４−4975（ＪＰ，Ａ)

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】エンジンバルブの弁フェース部等に形成さ
   れた環状凹溝に、母材と異なる盛金材料を肉盛溶接する
   に際し、前記エンジンバルブ等を一定方向に回転させつ
   つ、第１周目において、適宜の肉盛溶接装置におけるト
   ーチより発生させた火炎により、前記環状凹溝の表面の
   黒皮層等を除去し、第２周目において、前記トーチに盛
   金材料を供給して、環状凹溝の全面に肉盛溶接すること
   を特徴とするエンジンバルブ等への盛金材料の肉盛溶接
   方法。
2. 【請求項２】エンジンバルブの弁フェース部等に形成さ
   れた環状凹溝に、母材と異なる盛金材料を肉盛溶接する
   に際し、前記エンジンバルブ等を一定方向に回転させつ
   つ、少なくとも２つのトーチを備える適宜の肉盛溶接装
   置における一方のトーチより発生させた火炎により、前
   記環状凹溝の表面の黒皮層等を除去しつつ、肉盛溶接装
   置における他方のトーチに盛金材料を供給して、黒皮層
   等の除去された環状凹溝の全面に順次肉盛溶接すること
   を特徴とするエンジンバルブ等への盛金材料の肉盛溶接
   方法。