JP2727442B2 - 異常知覚改善剤 - Google Patents

異常知覚改善剤

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、生体機能調整作用を有
するケイ酸ポリマーを有効成分として含有する医薬組成
物に関する。
【0002】
【従来の技術】生体は外的・内的変化に対応しながら、
生体の物理・化学的状態をある一定の安定な生理的条件
内に調節・維持し、個体としての生命を維持している。
生体のかかる恒常性を維持し調節する機構は、生体を構
成する細胞、特にその細胞膜を通して行われる。よく知
られているように細胞膜はリン脂質の二重層よりなり、
細胞膜に存在する膜表面蛋白など各種のリセプターによ
って種々の物質を受容し、又は選択的に透過させ細胞内
外の物質的・化学的平衡バランスを保持し、細胞として
の正常な機能を果たしている。しかしながら、何らかの
原因でこのバランスがくずれると、例えば細胞膜を構成
するりん脂質の構成成分である脂肪酸バランスの不均
衡、即ち不飽和脂肪酸が減少し、飽和脂肪酸が増加する
と、細胞膜は全体的に硬くなり、膜流動性が低下する。
かかる膜流動性の変化は、膜表面の各種リセプターやナ
トリウム、カリウム、カルシウム等のイオンチャンネル
の正常機能低下をきたし、細胞としての機能不全を起こ
させる。
【0003】本発明者らは、病態時に生ずる生体の細胞
機能不全に伴う神経系、内分泌系並びに免疫系の歪みを
調節し、これを修復する生体の恒常性維持機構に着目
し、生体の自然治癒力を高め、生体の機能正常化に作用
する物質を鋭意研究のところ、本発明を完成した。本発
明は、ポリマー化することにより活性化した水溶性ケイ
酸塩よりなり、病態時に生ずる細胞機能の低下を修復し
正常化する生体機能の調節・維持物質に関し、これを有
効成分とする医薬とそれらの製造方法に関する。
【0004】ケイ素は動植物界に広く分布しており、特
に動物組織においてケイ酸塩として毛、羽、骨、皮膚な
どに存在し、骨形成における必須成分であることが知ら
れている。動物組織中では、コラーゲン中の交差結合鎖
を形成し、酸性ムコ多糖体の構成成分として含まれてい
る。このようにケイ素は生体組織に必須な成分である
が、動物にケイ素を投与した場合の薬理作用としては、
抗マクロファージ作用による免疫抑制作用や抗糖尿病作
用などが知られている。ケイ酸化合物としては、ケイ酸
マグネシウム、ケイ酸アルミニウム等が制酸剤として繁
用されているが、特にそのポリマーが特異な薬理作用を
有するということはこれまで報告されていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、生体
機能調整作用を有するケイ酸ポリマーを有効成分として
含有する異常知覚改善剤を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】病態時に生ずる細胞機能
の低下を修復し正常化する生体機能調整作用を有する本
発明物質は、ケイ酸又はケイ酸塩が重合したケイ酸ポリ
マーであり、好ましくは水溶性のケイ酸ポリマーを用い
ることができる。ケイ酸としては、例えばオルトケイ
酸、メタケイ酸、メソ二ケイ酸、メソ三ケイ酸、メソ四
ケイ酸等が挙げられる。これらケイ酸の塩、例えばナト
リウム、カリウム等のアルカリ金属との塩或いはケイ酸
アルカリ塩の濃厚水溶液である水ガラス等のケイ酸含有
物質を用いることもできる。また、酸化ケイ素にアルカ
リ水溶液を加え、加熱溶解して生成したケイ酸塩溶液も
使用することができる。
【0007】本発明ケイ酸ポリマーは、分子量は480
0乃至200万、好ましくは2万乃至100万(ゲル濾
過法、限外濾過法、電気泳動法などにより分析)であ
り、ケイ酸の重合度は75乃至33000、好ましくは
490乃至16500で示される。
【0008】本発明ケイ酸ポリマーは例えば次のような
方法により製造することができる。オルトケイ酸ナトリ
ウム、メタケイ酸ナトリウム、オルトケイ酸カリウム、
メタケイ酸カリウム等の水溶性ケイ酸塩、又は水ガラス
等のケイ酸含有物質を水溶性溶媒に溶解する。上記ケイ
酸塩の水溶液は高pHであるので、塩酸、硫酸、酢酸等
の通常の酸類でpH2乃至10、好ましくはpH4〜
9.5の範囲に調整するのが好ましい。該水溶液には乳
糖、マンニット、ソルビット、白糖、ブドウ糖、果糖、
ガラクトース等の糖類を添加しておくのが好ましい。ま
た食塩、塩化カリウム、硫酸ナトリウム等の塩類を添加
してもよい。
【0009】製剤上好ましくは、上記のケイ酸含有水溶
液を乾燥させて粉末状にしてもよい。粉末化は通常用い
られている方法により行うことが可能であり、例えば加
熱又は凍結乾燥する方法が利用できる。加熱乾燥すると
き、好ましい粉末化を行うために例えば150乃至25
0℃の下に乾燥する方法等が挙げられる。凍結乾燥する
には、常法に従って減圧下にて凍結乾燥して粉末化する
ことができる。ポリマーとしての確認は、モリブデン酸
アンモニウム液を加え、亜硫酸塩溶液で還元することに
より生じるモリブデン酸青の発色が重合により低下する
方法等によって確認することができる。また酸性条件下
でゲル濾過法を行うことにより高分子帯にケイ酸ポリマ
ーを分離することができ、これをアルカリ下で分解して
モリブデンケイ酸青により確認する事も可能である。
【0010】
【実施例】
実施例1.7.6gの水ガラス(ケイ素として1.2
g)を100mlの水に溶解した。別に97.5gの乳
糖を300mlの水に加温溶解し、これに水ガラス溶液
を混和した後、希塩酸を用いてpHを8.0に調整し
た。これを200℃で乾燥し、90gの粉末を回収し
た。得られた本発明ケイ酸ポリマーは次のような物性値
を有しており、1g中12mgのケイ素を含んでいた。 分子量:13000乃至100万 重合度:210乃至16500
【0011】実施例2.12.9gのメタケイ酸ナトリ
ウム(ケイ素として1.2g)を100mlの水に溶解
した。別に95.8gの乳糖を300mlの水に加温溶
解し、これにメタケイ酸ナトリウム溶液を混和した後、
希塩酸を用いてpHを8.0に調整した。これを200
℃で乾燥し90gの粉末を回収した。得られた本発明ケ
イ酸ポリマーは次のような物性値を有しており、1g中
に12mgのケイ素を含んでいた。 分子量:15000乃至90万 重合度:250乃至15000
【0012】実施例3.5.9gのオルトケイ酸ナトリ
ウム(ケイ素として0.6g)を100mlの水に溶解
した。別に99gのマンニットを300mlの水に加温
溶解し、これにオルトケイ酸ナトリウム溶液を混和した
後、希塩酸を用いてpHを8.0に調整したこれを20
0℃で乾燥し、88gの粉末を回収した。得られた本発
明ケイ酸ポリマーは次のような物性値を有しており、1
g中6mgのケイ素を含んでいた。 分子量:20000乃至100万 重合度:330乃至16500
【0013】実施例4.1.89gの水ガラス(ケイ素
として0.3g)を100mlの水に溶解した。これに
500mlの20%乳糖水溶液を加え、希塩酸でpH
8.0に調整した。この液を1.2mlずつバイアル瓶
に充填し、次いで凍結乾燥を行った。得られた乾燥粉末
品は1バイアル中0.6mgのケイ素を含有し、次のよ
うな物性値を有するものであった。 分子量:30000乃至150万 重合度:490乃至25000
【0014】
【作用】
1.肥満細胞の脱顆粒抑制作用 本発明物質の肥満細胞に対する脱顆粒抑制作用を常法に
従って測定した。即ち、ラット腹腔内肥満細胞の細胞浮
遊液に本発明ケイ酸ポリマー溶液を加え、37℃で10
分間放置した後、ヒスタミン遊離剤であるコンパウンド
48/80溶液を加えた。10分間反応させた後、冷却
した緩衝液を加え反応を停止させ、遠心分離後上清のヒ
スタミン量を蛍光法で測定した。常法に従って、被検物
質のヒスタミン遊離抑制率を求めた結果、本発明物質は
肥満細胞からのヒスタミン遊離を有意に抑制した。
【0015】結果の一例を表1に示す。
【表1】
【0016】2.抗原抗体反応によるヒスタミン遊離抑
制作用 抗卵白アルブミン血清(IgE様抗体)をラットの腹腔
内に投与して受動感作を行った。受動感作の24時間後
にラットの腹腔内より肥満細胞を取り出し、細胞浮遊液
を調製した。細胞浮遊液に本発明ケイ酸ポリマー溶液を
加え、37℃で10分間放置した後、卵白アルブミン溶
液を加え抗原抗体反応を惹起させ、さらに10分間反応
させた。以下、上記1の試験法と同様に反応を停止さ
せ、被検物質のヒスタミン遊離抑制率を求めた。その結
果、本発明物質は抗原抗体反応を介した肥満細胞からの
ヒスタミン遊離を有意に抑制した。
【0017】結果の一例を表2に示す。
【表2】
【0018】3.ヒアルロニダーゼ阻害作用 ヒアルロニダーゼを含む溶液に本発明物質を加え、37
℃で10分間放置した後、ヒアルロン酸の基質溶液を加
えてさらに15分間反応させた。酢酸緩衝液で反応を停
止させた後、540nmの吸光度を測定した。生理食塩
水を用いた対照群と比較してヒアルロニダーゼ阻害率を
求めた結果、本発明物質は用量依存的に阻害活性を示し
た。
【0019】結果の一例を表3に示す。
【表3】
【0020】4.モルモット鼻腔内血管透過性の抑制作
用 モルモット鼻腔内にヒスタミンを還流し、鼻粘膜の透過
性及び分泌の亢進を色素漏出を指標として調べた〔小島
・堤、アレルギー、35巻、180頁(1986
年)〕。即ち、気管切開部より鼻腔内にポリエチレンチ
ューブを挿入し、色素溶液を静脈内に注射した。生理食
塩液を毎分1mlで還流し、鼻から10分間流出させ洗
浄した後、次の20分間鼻から流出した液を採取し(A
液)、次いでヒスタミン生理食塩液を10分間還流して
鼻からの流出液を採取した(B液)。再び生理食塩液を
10分間還流し、鼻から流出した液を採取した(C
液)。採取した液を遠心分離した後、上清の620nm
における吸光度を測定した。ヒスタミン還流の30分前
に本発明物質溶液を腹腔内投与した結果、鼻粘膜の色素
透過性を有意に抑制した。
【0021】結果の一例を表4に示す。尚、鼻液中の色
素量は吸光度で示した。
【表4】
【0022】5.末梢循環障害、異常知覚改善作用 キノホルムによる中毒性神経障害としてスモン後遺症が
知られている。本症の特徴は末梢循環障害による下肢の
冷感や、物がはりついた感じ、しめつける感じ、ピリピ
リした感じ、しびれ感など異常知覚(南山堂・医学大辞
典の「スモン」の項における説明)がみられる点であ
る。キノホルムを投与した動物実験モデルは、冷感や異
常知覚を伴うスモン後遺症に対する治療薬の開発に利用
されており、本発明物質の異常知覚改善作用の指標とし
て、キノホルムによる末梢循環障害の改善作用を測定し
た。即ち、ラットにキノホルムを漸増的に27日間腹腔
内投与して末梢循環障害を惹起させた後、後肢を5℃の
水に2分間浸漬して低温負荷を与え、その後肢温度回復
過程をサーモグラフィーで画像解析することによって循
環障害改善作用を評価した。本発明物質はキノホルム投
与21日目より7日間連続静脈内投与した。
【0023】結果の一例を表5に示す。本発明物質投与
群の投与量はケイ素mg/kgで括弧内に示した。
【表5】
【0024】6.鎮痛作用 喜多等の方法〔日薬理誌、71巻、195〜210頁
(1970年)〕に従って作成したSARTストレスマ
ウスを用いて鎮痛作用を測定した。鎮痛作用の測定はラ
ンダル・セリット法に従って行った。SARTストレス
を負荷した動物は疼痛閾値が低下しており、ランダル・
セリット式圧刺激測定装置を用いてマウスの尾根部に圧
刺激を加えると、少しの刺激でも敏感に反応する病態動
物である。被検物質投与後の閾値を投与前閾値で除した
値を鎮痛係数として、本発明物質の鎮痛作用を測定し
た。本発明物質を腹腔内投与することにより、SART
ストレス負荷動物の低下した疼痛閾値が用量依存的に改
善された。
【0025】結果の一例を表6に示す。
【表6】
【0026】7.急性毒性試験 ddY系雄性マウスを用い、一群10匹として静脈内投
与及び腹腔内投与による急性毒性試験を行った結果、本
発明物質のLD50は静脈内投与でケイ素量として60.
4mg/kg、腹腔内投与では71.8mg/kgであ
った。
【0027】
【効果】上記の各種薬理試験の結果から明らかなよう
に、本発明ケイ酸ポリマーは病態時に生ずる生体機能の
異常を修復し正常化する作用を有する。例えば、アレル
ギーや炎症が惹起された病態状態に対して優れた治療作
用を示し、またストレス負荷病態動物の低下した疼痛閾
値を改善する。このように優れた生体機能調整作用を有
する本発明物質は、神経、免疫、内分泌系に作用して各
種病態状態に陥った生体の機能を正常状態に修復する作
用を有するため、例えば抗アレルギー剤、抗炎症剤、末
梢血流の改善や神経異常知覚改善剤、鎮痛剤等の医薬と
して非常に有用である。即ち、本発明物質を有効成分と
して含有する医薬組成物は、アレルギーや炎症、痛みを
伴う各種疾患、例えば気管支喘息、花粉症、アレルギー
性鼻炎、蕁麻疹、湿疹、接触性皮膚炎、アレルギー性結
膜炎等のアレルギー性疾患、胃炎、消化性潰瘍、腸炎、
潰瘍性大腸炎、リウマチ様関節炎、ヘルペス、エリスマ
トーデス、胃腸神経症、呼吸神経症、めまい、神経痛、
四十肩、五十肩、腰痛、頭痛等の各種疾患の治療、予防
に有用である。
【0028】
【実施例】本発明物質は、適当な医薬用の担体若しくは
希釈剤と組み合わせて医薬とすることができ、通常の方
法によって各種製剤化可能で、経口又は非経口投与する
ための固体、半固体、液体又はエアロゾールの剤形に処
方することができる。処方にあたっては、本発明物質を
単独で用いるか、あるいは他の医薬活性成分と適宜組み
合わせて処方してもよい。
【0029】経口投与製剤としては、そのままあるいは
適当な添加剤、例えば乳糖、マンニット、トウモロコシ
デンプン、バレイショデンプン等の慣用の賦形剤と共
に、結晶セルロース、セルロース誘導体、アラビアゴ
ム、トウモロコシデンプン、ゼラチン等の結合剤、トウ
モロコシデンプン、バレイショデンプン、カルボキシメ
チルセルロースカリウム等の崩壊剤、タルク、ステアリ
ン酸マグネシウム等の滑沢剤、その他増量剤、湿潤化
剤、緩衝剤、保存剤、香料等を適宜組み合わせて錠剤、
散剤、顆粒剤或いはカプセル剤とすることができる。ま
たカカオ脂等の油脂性基剤、乳剤性基剤又はマクロゴー
ル等の水溶性基剤、親水性基剤等と混和して坐剤として
もよい。
【0030】注射剤としては、無菌処理をしたバイアル
入粉末を、例えば注射用蒸溜水、生理食塩水、リンゲル
液に用時溶解して用いる。また植物油、合成脂肪酸グリ
セリド、高級脂肪酸エステル、プロピレングリコール等
の溶液若しくは懸濁液とすることができる。また患者の
状態や疾患の種類に応じて、その治療に最適な上記以外
の剤形、例えば軟膏、点眼剤等に適宜製剤化することが
可能である。
【0031】本発明物質の望ましい投与量は、投与対象
(患者の年齢、体重、症状など)、剤形、投与方法、投
与期間等によって変わるが、所望の効果を得るには、一
般の成人に対して通常1日にケイ酸量として1μg乃至
10mg/kgを1回乃至数回に分けて投与することが
できる。注射剤等の非経口投与の場合、吸収等の影響に
より、経口投与量の3乃至10分の1の用量レベルの投
与量が一般的に好ましい。
【0032】以下に本発明物質を有効成分として含有す
る医薬組成物の処方例を示すが、本発明はこれによって
限定されるものではない。
【表7】
【0033】
【表8】
【0034】
【表9】
【0035】
【表10】
【0036】
【表11】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C08L 83/02 C08L 83/02

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ケイ酸ポリマーを有効成分として含有
    する異常知覚改善剤。
  2. 【請求項2】 ケイ酸ポリマーが水溶性ケイ酸塩より
    成る特許請求の範囲第1項記載の異常知覚改善剤。
  3. 【請求項3】 ケイ酸塩がアルカリ金属塩である特許
    請求の範囲第2項記載の異常知覚改善剤。
  4. 【請求項4】 ケイ酸塩がケイ酸ナトリウムである特
    許請求の範囲第3項記載の異常知覚改善剤。
  5. 【請求項5】 ケイ酸ポリマーが水ガラスより成る特
    許請求の範囲第1項記載の異常知覚改善剤。
  6. 【請求項6】 ケイ酸ポリマーの分子量が4800乃
    至200万である特許請求の範囲第1項記載の異常知覚
    改善剤。
  7. 【請求項7】 ケイ酸ポリマーの重合度が75乃至3
    3000である特許請求の範囲第1項記載の異常知覚改
    善剤。
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