JP2720698B2 - 差動調整式前後輪トルク配分制御装置 - Google Patents

差動調整式前後輪トルク配分制御装置

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JP2720698B2
JP2720698B2 JP9473692A JP9473692A JP2720698B2 JP 2720698 B2 JP2720698 B2 JP 2720698B2 JP 9473692 A JP9473692 A JP 9473692A JP 9473692 A JP9473692 A JP 9473692A JP 2720698 B2 JP2720698 B2 JP 2720698B2
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  • Arrangement And Mounting Of Devices That Control Transmission Of Motive Force (AREA)
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、4輪駆動自動車におけ
る前後輪トルク配分制御装置に関し、特に、前輪側と後
輪側との間の差動状態を調整することで前輪及び後輪へ
のトルク配分を制御する、差動調整式前後輪トルク配分
制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】前輪側に伝達されるエンジンからのトル
ク(駆動トルク又は駆動力ともいう)と、後輪側に伝達
されるトルクの比を運転状態に応じて制御するように構
成された自動車の動力伝達装置が種々知られている。例
えば、所謂フルタイム4輪駆動の自動車において、エン
ジンからのトルクを前輪側と後輪側とに適当に配分する
ためにセンタディファレンシャルと、このセンタディフ
ァレンシャルでの差動を制限するビスカスカップリング
等の差動制限機構とを設け、この差動制限機構を調整す
ることで、トルクの比を運転状態に応じて制御すること
が考えられる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述の
ような各差動制限機構では、その差動制御特性が物性な
どによって定まっており、積極的に差動制御を行なうも
のでなく、必ずしも常に適切にトルク配分制御を行なえ
るようにはなっていない。そこで、図3,4に示すよう
な差動調整式前後輪トルク配分制御装置が考えられた。
【0004】なお、図3はその装置の制御系の詳細を示
すブロック図、図4はその装置をそなえた自動車の駆動
系の全体構成を示す模式的な車両平面図である。図4に
示すように、エンジン2の出力がトルクコンバータ4及
び自動変速機6を介して出力軸8に伝達され、さらに、
中間ギア10を介してセンタディファレンシャル(以
下、センタデフと略す)12に伝達される。
【0005】このセンタデフ12の出力は、一方におい
て減速歯車機構19,前輪用の差動歯車装置(フロント
デフ)14を介して車軸17L,17Rから左右の前輪
16、18に伝達され、他方においてベベルギヤ機構1
5,プロペラシャフト20及びベベルギヤ機構21,後
輪用の差動歯車装置22を介して車軸25L,25Rか
ら左右の後輪24、26に伝達される。
【0006】センタデフ12は、ここでは遊星歯車式の
ものであり、プラネタリキャリアにエンジンからの出力
を入力され、サンギアから前輪駆動系へ出力され、リン
グギアから後輪駆動系へ出力される。また、センタデフ
12には、その前輪側出力部と後輪側出力部との差動を
制限することにより前輪と後輪とのエンジンの出力トル
クの配分を変更しうる差動制限機構としての油圧多板ク
ラッチ28が付設されている。
【0007】したがって、センタデフ12は、油圧多板
クラッチ28を完全フリーの状態からロックさせた状態
まで適宜制御することにより、前輪側及び後輪側へ伝達
されるトルクを、前輪:後輪が約32:68程度から前
後車輪の接地荷重に応じた比率(例えば60:40)の
間で制御することができるようになっている。完全フリ
ー状態での前輪:後輪の値:約32:68は、遊星歯車
の前輪側及び後輪側の入力歯車の歯数比等の設定により
規定でき、ここでは、油圧多板クラッチ28の油圧室内
の圧力がゼロで完全フリーの状態のときには約32:6
8となるように設定されている。
【0008】また、この完全フリー状態での比(例えば
約32:68)は、前輪系と後輪系との負荷バランス等
によって変化するが通常はこのような値となる。また、
油圧室内の圧力が設定圧(例えば約9kg/cm2 )と
されて油圧多板クラッチ28がロック状態にあって、差
動制限が実質的にゼロとなると、前輪と後輪とのトルク
配分は、前後車輪の接地荷重に応じた比率(例えば6
0:40)となる。
【0009】なお、符号30はステアリングホイール3
2の中立位置からの回転角度、即ちハンドル角(操舵
角)θを検出するハンドル角センサ(操舵角センサ)3
4a,34bは、それぞれ車体の前部および後部に作用
する横方向の加速度Gyf,Gyrを検出する横加速度セン
サであり、この例では、2つの検出データGyf,Gyrを
平均して横加速度データとしているが、車体の重心部付
近に横加速度センサ34を1つだけ設けて、この検出値
を横加速度データとしてもよい。
【0010】36は車体に作用する前後方向の加速度G
x を検出する前後加速度センサ、38はエンジン2のス
ロットル開度θtを検出するスロットルポジションセン
サ、39はエンジン2のエンジンキースイッチ、40、
42、46、44はそれぞれ左前輪16、右前輪18、
左後輪24、右後輪26の回転速度を検出する車輪速セ
ンサであり、これらスイッチ及び各センサの出力はコン
トローラ48に入力されている。
【0011】符号50はアンチロックブレーキ装置であ
り、このアンチロックブレーキ装置50はブレーキスイ
ッチ50Aと連動して作動する。つまり、ブレーキペダ
ル51の踏込時にブレーキスイッチ50Aがオンとなる
と、これに連動してアンチロックブレーキの作動信号が
出力されて、アンチロックブレーキ装置50が作動す
る。また、アンチロックブレーキの作動信号が出力され
るときには同時にその状態を示す信号がコントローラ4
8に入力されるように構成されている。また、52はコ
ントローラ48の制御信号に基づき点灯する表示灯であ
る。
【0012】なお、コントローラ48は、図示しないが
後述する制御に必要なCPU、ROM、RAM、インタ
フェイス等を備えている。符号54は油圧源、56は同
油圧源54と油圧多板クラッチ28の油圧室との間に介
装されてコントローラ48からの制御信号により制御さ
れる圧力制御弁系(以下、圧力制御弁と略す)である。
【0013】また、この自動車には自動変速機6がそな
えられており、符合160は自動変速機のシフトレバー
160Aの選択シフトレンジを検出するシフトレバー位
置センサ(シフトレンジ検出手段)であり、この検出情
報もコントローラ48に送られる。さらに、エンジン回
転数センサ(エンジン回転速度センサ)170で検出さ
れたエンジン回転数Neやトランスミッション回転数セ
ンサ(トランスミッション回転速度センサ)180で検
出されたトランスミッション回転数Nt もコントローラ
48に送られる。
【0014】なお、さらにセンサとして、クラッチ28
のピストンに加わる油圧を検出する油圧センサ304が
所定の箇所に設けられている。次に、油圧多板クラッチ
28によりセンタデフ12の差動制限の制御(駆動力配
分制御)にかかるコントローラの構成要素を、図3のブ
ロック図を参照して説明する。この制御では、各センサ
(車輪速センサ40,42,44,46,操舵角センサ
30a,30b,30c,横加速度センサ34,前後加
速度センサ36,スロットルポジションセンサ38,エ
ンジン回転数センサ170,トランスミッション回転数
センサ180,シフトポジションセンサ160等)から
の検出情報に基づいて、油圧多板クラッチ28のクラッ
チトルクを設定し、目標のクラッチトルクを得られるよ
うに油圧多板クラッチ28の差動油圧を制御するように
なっている。
【0015】なお、データのうちABS情報,車輪速,
舵角,変速段,ABSのコントロールユニットとエンジ
ンの制御ユニットとの総合通信(SCI通信:SCI=S
erial Communication Interface )等のデータは、デジ
タル入力され、前後加速度,横加速度, アクセル開度,
多板クラッチへの油圧制御,4WDコントロールユニッ
ト制御,後輪用の差動歯車装置(リヤデフ)22の電磁
クラッチへの電流等に関してはアナログ入力される。
【0016】そして、油圧多板クラッチ28のクラッチ
トルクには、前輪側と後輪側との差動状態に着目して
理想の差動状態となるように制御を行なうための差動対
応クラッチトルクTV(又はTV ),車両にはたらく
前後加速度(車体加速度)に対応して制御を行なうため
の前後加速度対応クラッチトルクTX(又はTx ),
急発進時などに前後輪直結四輪駆動状態として大きな路
面伝達トルクを得られるようにエンジン出力トルクに比
例して設定されるエンジントルク比例クラッチトルクT
A(又はTa )と、さらに、湿式多板クラッチのクラ
ッチ部分を保護するための保護制御用クラッチトルクT
pcとの4つのトルク値から最大値を選択するようになっ
ている。
【0017】以下、これらの各クラッチトルクTv ,T
x ,Ta ,Tpcの設定について、図3を参照して説明す
る。差動対応クラッチトルクTv は、旋回時に運転者の
意志に沿うように車両を挙動させるようにするクラッチ
トルクであり、車体の姿勢制御を行なうには後輪を駆動
ベースとして後輪からスリップするように設定するのが
効果的であるため、差動対応クラッチトルクTv は、こ
のような状態を実現するように設定されるようになって
いる。
【0018】このため、差動対応クラッチトルクTv の
設定にかかる部分(前後輪回転速度差比例算出手段20
1)は、図3に示すように、前後輪実回転速度差検出部
200と、前後輪理想回転速度差設定部210と、前後
輪実回転速度差ΔVcdと前後輪理想回転速度差ΔVh
cとからクラッチトルクTv ′を設定する差動対応クラ
ッチトルク設定部220と、このクラッチトルクTv ′
を横加速度補正する補正部246とから構成されてい
る。
【0019】前後輪実回転速度差検出部200は、外乱
等により発生するデータの微振動成分を取り除くための
フィルタ202a〜202dと、前輪車輪回転速度デー
タ算出部204aと、後輪車輪回転速度データ算出部2
04bと、前後輪実回転速度差算出部206とをそなえ
て構成されている。前輪車輪回転速度データ算出部20
4aでは、前輪の回転速度データ信号FL,FRから求
まる前輪の各車輪速を平均化して前輪回転速度Vfを得
て、後輪車輪回転速度データ算出部204bでは、後輪
の回転速度データ信号RL,RRから求まる後輪の各車
輪速を平均化することで後輪回転速度Vrを得るように
なっている。
【0020】前後輪実回転速度差算出部206では、後
輪回転速度Vrから前輪回転速度Vfを減じることで前
後輪の実回転速度差(センタデフにおける回転差)]Δ
Vcdを算出する。前後輪理想回転速度差設定部210
は、操舵角データ検出手段としての運転者要求操舵角演
算部(擬似操舵角演算部)212と、車体速データ検出
手段としての運転者要求車体速演算部(推定車体速演算
部又は擬似車体速演算部)216と、理想作動状態設定
部としての理想回転速度差設定部218とをそなえて構
成されている。
【0021】そして、理想回転速度差設定部218で
は、運転者要求操舵角演算部212で算出された運転者
要求操舵角δref と、推定車体速演算部216で算出さ
れた推定車体速Vref とから、理想回転速度差ΔVhcを
設定する。つまり、車速に関しては、低車速時には、旋
回時の前後輪の軌道半径の差(所謂内輪差)の影響が大
きく、後輪の回転速度Vrは前輪の回転速度Vfよりも
小さいが、高車速になるにしたがって、後輪の回転速度
Vrが前輪の回転速度Vfに対して大きくなるようにす
ることで、高速時には後輪がスリップしやすいようにし
ている。これにより、高速時ほど要求される車体の姿勢
の応答性を確保している。また、操舵角に関しては、操
舵角が大きいほど前後輪に要求される回転差も大きくな
るので、操舵角データδref の大きさ|δref |が大き
いほどΔVhcの値も大きくなる。
【0022】上述のようにして、前後輪実回転速度差検
出部200で検出された前後輪実回転速度差ΔVcdと、
前後輪理想回転速度差設定部210で設定された前後輪
理想回転速度差ΔVhcとは、減算器222で減算(ΔV
cd−ΔVhc)されて、得られた差ΔVc (=ΔVcd−Δ
Vhc)と、前後輪理想回転速度差ΔVhcとが、差動対応
クラッチトルク設定部220にデータとして入力される
ようになっている。
【0023】差動対応クラッチトルク設定部220は、
前後輪実回転速度差ΔVcdと前後輪理想回転速度差ΔV
hcとの差ΔVc (=ΔVcd−ΔVhc)に対応して、クラ
ッチトルクTv ′を設定するが、前後輪理想回転速度差
ΔVhcの正負によって場合分けして、クラッチトルクT
v ′を設定している。 (i) ΔVhc≧0のときは、前輪よりも後輪の方の速度
を速くしたいのであり、以下の〜のようにクラッチ
トルクTv ′を設定する。
【0024】ΔVcd≧ΔVhcならば、後輪が過回転し
てスリップしているので、後輪寄りに大きく配分された
エンジントルクの一部を前輪側へ移すようにして後輪の
スリップを抑制したい。そこで、クラッチトルクTv ′
が差ΔVc (ΔVcd−ΔVhc)の大きさに比例して高ま
るように、 Tv ′=a×(ΔVcd−ΔVhc)=a×ΔVc ・・・(1.3) と設定する(ただし、aは比例定数)。
【0025】ΔVhc>ΔVcd>0ならば、前輪がスリ
ップしているにもかかわらず実回転速度は前輪よりも後
輪の方が高いので、もしもこの時クラッチトルクTv ′
を高めると前輪側へ配分されるエンジントルクが増加し
て前輪のスリップが促進されてしまうことになる。この
ため、差動制限をフリーにして、前輪側へ配分されるエ
ンジントルクを低減したい。そこで、この場合には、ク
ラッチトルクTv ′を0に設定して、いわゆる不感帯領
域を設定する。
【0026】0≧ΔVcdならば、前輪がスリップして
いるので、前輪側へのエンジントルクの配分を減少させ
て前輪のスリップを低減したい。そこで、クラッチトル
クTv ′がΔVcdの大きさに比例して高まるように、 Tv ′=−a×ΔVcd=−a×(ΔVc +ΔVhc) ・・・(1.4) と設定する(ただし、aは比例定数)。
【0027】このようなTv ′とΔVc との関係をマッ
プ化して、このマップによって、差ΔVc と前後輪理想
回転速度差ΔVh c とから差動対応クラッチトルクTv
を求めることができる。なお、ΔVhc=0の時にはΔV
hc>ΔVcd>0の不感帯領域はなくなる。 ( ii) ΔVhc<0のときは、後輪よりも前輪の方の速度
を速くしたいのであり、以下の〜のようにクラッチ
トルクTv ′を設定する。
【0028】ΔVcd≧0ならば、後輪が過回転してス
リップしているので、後輪寄りに大きく配分されたエン
ジントルクの一部を前輪側へ移すようにして後輪のスリ
ップを抑制したい。そこで、クラッチトルクTv ′がΔ
Vcdの大きさに比例して高まるように、 Tv ′= a×ΔVcd= a×( ΔVc +ΔVhc) ・・・(1.5) と設定する(ただし、aは比例定数)。
【0029】0>ΔVcd>ΔVhcならば、後輪がスリ
ップしているにもかかわらず実回転速度は前輪よりも後
輪の方が高いので、もしもこの時クラッチトルクTv ′
を高めると後輪側へ配分されるエンジントルクが増加し
て後輪のスリップが促進されてしまうことになる。この
ため、差動制限をフリーにして、後輪側へ配分されるエ
ンジントルクを低減したい。そこで、この場合には、ク
ラッチトルクTv ′を0に設定して、所謂不感帯領域を
設定する。
【0030】ΔVhc≧ΔVcdならば、前輪がスリップ
しているので、前輪側へのエンジントルクの配分を減少
させて前輪のスリップを低減したい。そこで、クラッチ
トルクTv ′がΔVc (ΔVcd−ΔVhc)の大きさに比
例して高まるように、 Tv ′=−a×(ΔVcd−ΔVhc) =−a×ΔVc ・・・(1.6) と設定する(ただし、aは比例定数)。
【0031】このようなTv ′とΔVc との関係をマッ
プ化してこのマップによって、差ΔVc と前後輪理想回
転速度差ΔVh c とから差動対応クラッチトルクTv を
求めることができる。このようにして、差動対応クラッ
チトルク設定部220で、マップを参照してΔVc とΔ
Vhcとから求められた差動対応クラッチトルクTv ′
は、横加速度補正されるようになっている。
【0032】補正部246では、差動対応クラッチトル
クTv ′に横Gゲインk1 を乗算することで横加速度補
正を施して、差動対応クラッチトルクTv を得るように
なっているが、この横Gゲインk1 は以下のように設定
される。つまり、横加速度センサ34からの検出データ
Gy が、フィルタ242を通じて外乱等により発生する
データの微振動成分を取り除かれた後、横Gゲイン設定
部244に送られるようになっている。この横Gゲイン
設定部244では、図3の設定部244のブロック内に
示すマップにしたがって横加速度データGy から横Gゲ
インk1 を設定する。
【0033】この横Gゲインk1 は、路面の摩擦係数μ
の状態を制御に反映させようとするもので、横加速度G
y が大きくなるほど路面μが大きいものと判断でき、路
面μが大きいほど、エンジントルクの配分を後輪主体と
して車体の回頭性を優先できるようにしたい。そこで、
路面μの大きさ(したがって、横加速度Gy の大きさ)
が大きくなると、横Gゲインk1 を減少させて、設定ク
ラッチトルクTv を減少させる補正を行なうようになっ
ている。なお、路面μが大きい場合でも、車体の回頭性
を特別優先させないならば、この横Gゲインk1 による
補正を省略することも考えられる。
【0034】前後加速度対応クラッチトルクTx は、上
記の前後輪差動対応クラッチトルク制御において、低μ
路(路面摩擦係数μの低い路)の走行時等により、4輪
全てがスリップして、制御のハンチングが発生するおそ
がある際に、この前後加速度対応クラッチトルクTx が
さようすることにより、車両の強アンダーステア化を防
止して車両がスムースな旋回動作を行なえるようにする
ためのクラッチトルクであり、車両にはたらく前後加速
度Gx に対応して制御を行なうようになっている。
【0035】この前後加速度対応クラッチトルクTx の
設定は、前後加速度対応クラッチトルク設定手段254
で行なわれ、前後加速度センサ36からの検出データG
x が、フィルタ252を通じて外乱等により発生するデ
ータの微振動成分を取り除かれた後、クラッチトルク設
定手段254に送られるようになっている。前後加速度
対応クラッチトルク設定手段254では、例えばマップ
(図3中のブロック254内のマップ参照)に基づいて
前後加速度データGx から前後加速度対応クラッチトル
クTx ′を求める。このように設定された前後加速度対
応クラッチトルクTx ′は、横加速度対応補正部256
で補正を施される。補正部256では、前述の補正部2
46と同様な補正であり、前後加速度対応クラッチトル
クTx ′に横Gゲインk1 を掛けることで横加速度補正
を施して、前後加速度対応クラッチトルクTx を得るよ
うになっているが、この横Gゲインk1 は前述してお
り、そのねらいも前述と同様に路面の摩擦係数μの状態
を制御に反映させようとするものなのでここでは説明を
省略する。
【0036】このようにして補正された前後加速度対応
クラッチトルクTx は、スイッチ258aの入切に応じ
てデータ出力される。このスイッチ258aは、判断手
段258からの信号により、前輪車輪速Vfが車体速V
ref よりも大きいとき、つまり、前輪がスリップしてい
る時(フロントスリップ時)にONとなり、他の場合に
は、OFFとなる。
【0037】これは、前述したように、前後加速度対応
クラッチトルク制御が、4輪スリップ時の差動対応クラ
ッチトルク制御のハンチング現象を防止するものであ
り、フロントスリップを検出することで4輪スリップを
判定している。したがって、フロントスリップ時だけ設
定された前後加速度対応クラッチトルクTx が出力さ
れ、他の場合には、出力されない(この場合には、Tx
=0とされ、以下、一般に、スイッチが切れてクラッチ
トルクが出力されないときには、クラッチトルクの値は
0とされる)。
【0038】エンジントルク比例クラッチトルクTa
は、停止状態からの急発進時などに伝達トルクが大きく
なることが予想される場合に、後輪の初期スリップを防
ぐことができるように、予め直結4輪駆動状態に設定す
るための設定トルクである。そこで、このエンジントル
ク比例クラッチトルクTa を設定する部分(エンジント
ルク比例クラッチトルク設定手段)260は、図3の左
下部分に示すように、ある瞬間のエンジントルクTeを
検出するエンジントルク検出部264と、その時のトル
コントルク比tを検出するトルコントルク比検出部26
6と、その時のトランスミッションの減速比ρm を検出
するトランスミッションの減速比検出部276と、エン
ジントルクTeと比例関係に設定されたマップに基づい
てエンジントルクTeからエンジントルク比例トルクT
a ′を得るエンジントルク比例トルク設定部268と、
このエンジントルク比例トルクTa ′に上述のトルコン
トルク比t,トランスミッションの減速比ρm ,終減速
ρ1 及び回転差ゲインk2 を乗算して、エンジントルク
比例クラッチトルクTa を得るエンジントルク比例クラ
ッチトルク演算部270と、設定されたエンジントルク
比例クラッチトルクTa を低速時(例えばVref <20
km/h)のみデータとして出力するスイッチ274aと
から構成されている。
【0039】エンジントルク検出部264では、スロッ
トルポジションセンサ38から送られてフィルタ262
aを通じて外乱等により発生するデータの微振動成分を
取り除かれたスロットル開度データθthと、エンジン回
転数センサ170から送られてフィルタ262bを通じ
て外乱等により発生するデータの微振動成分を取り除か
れたエンジン回転数データNeとから、エンジントルク
マップを通じてその時のエンジントルクTeを求めるよ
うになっている。
【0040】トルコントルク比検出部266では、エン
ジン回転数センサ170から送られてフィルタ262b
を通じて外乱成分を取り除かれたエンジン回転数データ
Neと、トランスミッション回転数センサ180から送
られてフィルタ262cを通じて外乱成分を取り除かれ
たトランスミッション回転数データNtとから、トラン
スミッショントルク比マップを通じて、その時のトラン
スミッショントルク比tを求めるようになっている。
【0041】トランスミッションの減速比検出部276
では、シフトレバー位置センサ160からの選択シフト
段情報から、図3のブロック276内に示すようなシフ
ト段−減速比対応マップを参照してトランスミッション
の減速比ρm を求めるようになっている。エンジントル
ク比例トルク設定部268の設定に用いるマップ(図3
のブロック268内参照)では、エンジントルクTeと
エンジントルク比例トルクTa ′とが、サンギヤ及びリ
ングギヤの各歯数Zs,Zr,前輪分担荷重Wf及び車
重Wa等の既知の定数から決定する比例定数に従う直線
関係となっている。
【0042】エンジントルク比例クラッチトルク演算部
270では、上述のようにして決定したエンジントルク
比例トルクTa ′と、トルコントルク比t,トランスミ
ッションの減速比ρm ,終減速ρ1 及び回転差ゲインk
2 とから演算が行なわれるが、回転差ゲインk2 は回転
差ゲイン設定部275で以下のように設定される。つま
り、回転差ゲインk2 は、タイトコーナブレーキ現象を
回避しようとするもので、理想回転速度差設定部218
で設定された理想回転速度差ΔVhcから図ししないマッ
プに従って決定される。
【0043】そして、理想回転速度差ΔVhcが大きくな
るのに従って回転差ゲインk2 が直線的に小さくなり、
この回転差ゲインk2 を乗算視て補正することにより、
旋回時等に理想回転速度差ΔVhcが大きくなった場合
に、急発進性能よりも旋回性能(タイトコーナブレーキ
現象を防止できるような性能)を優先させるように、エ
ンジントルク比例クラッチトルクTa が小さくされるの
である。
【0044】さらに、スイッチ274aは、判断手段2
74からの信号により、低車速時(この例ではVref <
20km/h)にはONとなって、エンジントルク比例ク
ラッチトルクTa をデータとして出力できるようにする
が、車速がこれ以上大きくなる(Vref ≧20km/h)
とOFFとなって、エンジントルク比例クラッチトルク
Ta のデータとして出力を停止する。これは、エンジン
トルク比例制御は、ある程度の速度での旋回時にタイト
コーナブレーキング現象を発生させたり、スリップ許容
が必要な場面で他の制御速を排除する場合があり、これ
らを回避するのに、低車速時のみにこのエンジントルク
比例制御を行なうという条件を設けているのである。
【0045】つぎに、湿式多板クラッチ28のクラッチ
部分を保護するための保護制御用クラッチトルクTpcの
設定について説明すると、このクラッチトルクTpcの設
定は保護制御部230で行なわれるようになっている。
つまり、湿式多板クラッチ28では、一般に、クラッチ
板間の差回転が大きくなると、クラッチフェイシングの
焼き付きや摩耗量増大等の損傷を招く畏れがあり、当然
ながら差回転が大きくこの状態の継続時間が大きいほど
損傷を招き易い。一方、このような状態を回避してクラ
ッチ28を保護するには、クラッチフリーにすること
(クラッチ板間の接続を解除すること)が考えられる
が、クラッチ28の接続状態からフリーへの切り換えを
瞬時に行なうと、車両の姿勢が急変する畏れがある。そ
こで、これらの現象をいずれも回避できるように、保護
制御部230により、保護制御用クラッチトルクTpcが
設定されるのである。
【0046】保護制御部230では、前後輪実回転速度
差算出部206で算出された前後輪実回転速度差Vcdを
受けて、この前後輪実回転速度差Vcdが基準値(この例
では、8.6km/h)よりも大きい状態が基準時間(こ
の例では、1秒間)以上継続すると、所定のパターンで
保護制御用クラッチトルクTpcを設定するようになって
いる。
【0047】つまり、上述の検知条件が成立すると、保
護制御用クラッチトルクTpcを、まず短時間(この例で
は1秒間)だけ上限値に設定し、この後、徐々に0へと
減少(自然解除)させていく。この例では、減少時のT
pcと時間ttとの関係は、次式のようになっている。 Tpc=40−14tt ・・・(4.1) また、上述の検知条件が成立しない場合には、保護制御
用クラッチトルクTpcの値は0に設定される。
【0048】上述の差動対応クラッチトルクTv ,前後
加速度対応クラッチトルクTx ,エンジントルク比例ク
ラッチトルクTa ,保護制御用クラッチトルクTpcの各
クラッチトルクは、適当なタイミングで繰り返される各
制御サイクルごとに、それぞれ設定され、このように設
定された各クラッチトルクTv ,Tx ,Ta ,Tpcは、
最大値選択部280に送られる。
【0049】この最大値選択部280では、各制御サイ
クルごとに、クラッチトルクTv ,Tx ,Ta ,Tpcの
中から最大のもの(このクラッチトルクをTc とする)
を選択する。ただし、スイッチ258a又は274aが
OFFの場合には、クラッチトルクTx 又はTa が送ら
れないので、最大値選択部280では、送られたクラッ
チトルクの中から最大値を選択するようになっている。
【0050】このようにして選択されたクラッチトルク
Tc はトルク−圧力変換部282に送られて、ここで、
設定されたクラッチトルクTc が得られるようなクラッ
チ制御圧力Pc が設定されるようになっている。ここで
は、マップ(図3中のブロック282内参照)によっ
て、クラッチトルクTc からクラッチ制御圧力Pc を得
ているが、一般に、クラッチトルクTc とクラッチ制御
圧力Pc とは比例関係にあるためマップも図示するよう
な線形のものになっている。
【0051】さらに、このように変化されたクラッチ制
御圧力Pc には、予圧付与手段としての加減算器284
において、遠心圧補正と、予圧補正とが施されるように
なっている。遠心圧補正は、クラッチ制御圧力Pc か
ら、遠心補正圧設定部286で設定された遠心補正圧P
v を減算することで行なわれるが、遠心補正圧設定部2
86では、図3のブロック286内に示すようなマップ
によって、204aで算出された前輪車速Vfから求め
る。これは、ピストン室は前輪側軸と同期して回転する
ので、遠心油圧は、前輪車速Vfに対応して生じるため
であり、遠心補正圧Pvは、前輪車速Vfの2乗に比例
するように設定される。
【0052】予圧補正は、クラッチ制御圧力Pc に、初
期係合圧設定部(予圧設定部)288で設定された初期
係合圧(イニシャル圧)をPi 予圧として加算する補正
である。この予圧補正の目的は、クラッチ28の各クラ
ッチ板間を引きづりトルクの出ない程度のぎりぎりの接
触状態(極めてわずかに接触している状態)に保って、
制御応答を高めようとするものである。
【0053】ところが、クラッチのクラッチ板間のクリ
アランスは、部品誤差や組み立て誤差等によって、製造
段階から各製品ごとにばらつきが生じる上に、同一の製
品でも経年変化していく。特に、クラッチ板のリターン
スプリングは一般に強いものが設置されているので、各
部の誤差や経年変化がクラッチ板間のクリアランス状態
に与える影響が大きい。
【0054】このため、適当なタイミングでクラッチ板
間のクリアランス状態を検知しながら、常に、クラッチ
板間をぎりぎりの接触状態に保つようにする必要があ
る。そこで、予圧設定部288では、どの程度の予圧が
必要であるかを適当な時間間隔で試行(ここでは、学習
という)して、イニシャル圧Pi を設定するようにして
いる。
【0055】こうして、有効油圧であるクラッチ制御圧
力Pc に、遠心補正圧Pv を減算することで遠心圧補正
を施され、イニシャル圧(予圧)Pi を加算されること
で予圧付与補正を施された油室供給レベルの制御圧力P
cd(=Pc −Pv +Pi )は、ピークホルドフィルタ2
90に取り込まれるようになっている。このピークホル
ドフィルタ290は、油圧の急変により制御にハンチン
グが起こらないように、油圧の過度な急変を防止する一
種のリミッタであり、油圧の立上がりに対しては、ある
程度高い限界速度(例えば31.4kg/ cm2 /s)を
設定し、油圧の立下下がりに対しては、やや低い限界速
度(例えば15.7kg/ cm2 /s)を設定している。
【0056】そして、油圧変化の速度がこのような限界
を超えるような制御圧力Pcdが送られたら、この限界値
に応じた制御圧に留めるようにする。さらに、フィルタ
290を通過した制御圧力Pcd′は、スイッチ292
a,294aを経て、デューティ設定部295に送られ
る。なお、スイッチ292aは、判断手段292からの
信号によって、ABS制御(アンチロックブレーキ制
御)が行なわれていれば(ON状態ならば)OFFとさ
れ、ABS制御が行なわれていなければONとされる。
つまり、ABS制御が行なわれていないことを条件に、
制御圧力Pcd′の信号が送られるようになっている。こ
れは、ABS制御時にはABSを確実に作用させる必要
があり、この時前後輪のトルク配分状態を制御するの
は、ABS制御に干渉したりして好ましくないためであ
る。
【0057】また、スイッチ294aは、判断手段29
4からの信号によって、デューティソレノイドバルブを
保護するための制御スイッチであり、低速時で且つ設定
されたクラッチトルクTc が小さい場合には、デューテ
ィを0にしてしまおうとするものである。低速条件とし
ては、例えばVref ≦5km/h であること、クラッチト
ルクTc の条件としては、例えばTc ≦1kgfmである
こと、などと規定できる。そして、この2つの条件が揃
ったら、スイッチ294aがOFFにされて、制御圧力
Pcd′の信号は送られないようになっている。
【0058】デューティ設定部295は、圧力フィード
バック補正部296と、圧力−デューティ変換部298
とをそなえている。圧力フィードバック補正部296
は、ピストンに作用している実際の圧力を検出する圧力
センサ304からの検出情報を受けて、制御圧力Pcd′
の信号を補正するものであり、油圧回路の特性を補正す
るためのものである。なお、圧力センサ304から圧力
フィードバック補正部296へ送られる信号は、フィル
タ306で外乱等による雑音成分を除去される。
【0059】圧力−デューティ変換部298は、圧力フ
ィードバック補正部296でフィードバック補正された
制御圧力Pに対応する(Duty)を設定するもので、図3の
クラッチ圧力−デューティ変換部298のブロック内に
示すマップのように、デューティは予圧状態から最大圧
状態まで圧力Pに対して直線的に増加する。このような
対応関係から、制御圧力Pに相当するデューティが設定
される。
【0060】制御実行部として機能する油圧回路300
では、このように設定されたデューティに応じて、デュ
ーティソレノイド302が作動して、センタデフの油圧
多板クラッチ28を制御するようになっている。一方、
このようなセンタデフ制御と並行して、前後輪へのトル
ク配分状態が、運転席のインストルメントパネルのメー
タクラスタ内に表示されるようになっている。
【0061】つまり、メータクラスタ内には、前輪(又
は後輪)へのトルク配分状態をグラフィック表示(又は
メータ表示)するようなトルク配分表示部312が設け
られており、トルク推定手段310により、推定された
配分トルクの大きさに応じて、トルク配分状態が表示さ
れるようになっている。このように、トルク推定手段3
10によってトルク配分状態を推定するのは、トルク配
分状態を実測するのが困難なためである。
【0062】上述のように構成されるので、まず、差動
対応クラッチトルクTv の設定により、適宜後輪を駆動
ベースとして後輪からスリップするように設定しながら
車体の姿勢制御を適切に調整できるようになり、旋回時
に運転者の意志に沿うように車両を挙動させることがで
きるようになるのである。また、前後加速度対応クラッ
チトルクTx により、フロントスリップ時のような加速
時には、直結4WDと同等なトルク配分としながら、そ
れ以上のトルクは、ベース配分比(後輪寄りに配分する
ようになり、強アンダー化が防止されて、スムースな旋
回が行なえるようになる。
【0063】また、エンジントルク比例クラッチトルク
Ta によって、発進時や低速からの急加速時などのとき
に、適宜直結4WD状態とされて、高いトルクを路面に
伝達できるようになって、発進時や急加速時におけるタ
イヤのスリップが防止され、走行性能が向上するととも
に、駆動系の耐久性向上にも寄与する。さらに、保護制
御用クラッチトルクTpcによって、クラッチ板が保護さ
れて、装置の耐久性向上に寄与するとともに、車両のス
ピンの防止にも役立つ効果がある。
【0064】ところが、上述のように、前後加速度対応
クラッチトルク(車体加速度対応クラッチトルク)Tx
,差動対応クラッチトルク(前後回転差対応クラッチ
トルク)Tv ,エンジントルク比例クラッチトルクTa
の3要素により決定されるトルクをさらに横Gとハンド
ル角と車体速で調整して決定しているが、入力3つと要
因3つとの各定数や特性マップを設定する際には、多量
の試験を必要として、さらに、複雑な解釈が必要とな
る。
【0065】また、上述のように、前後加速度対応クラ
ッチトルクTx ,差動対応クラッチトルクTv ,エンジ
ントルク比例クラッチトルクTa のうちの最大値を採用
することは、必ずしも適切な制御状態が実現するとは限
らず、この最大値の選択がより効果的に働く場合もある
が、偶然的に何らかの意識しない要因でトルクの大きさ
が設定されてしまうおそれがある。
【0066】そこで、各制御要素を関連させながらより
きめ細かくしかもより確かな制御を行なうことが課題と
なっている。本発明は、上述の課題に鑑み創案されたも
ので、常に適切に前後のトルク配分制御を行なえるよう
にした、差動調整式前後輪トルク配分制御装置を提供す
ることを目的とする。
【0067】
【課題を解決するための手段】このため、本発明の差動
調整式前後輪トルク配分制御装置は、車両における前輪
側駆動軸と後輪側駆動軸との差動を許容するとともにこ
れらの前輪側駆動軸及び後輪側駆動軸にエンジンからの
トルクを配分するセンタディファレンシャルと、このセ
ンタディファレンシャルの差動を制限する差動制限機構
と、この差動制限機構を制御する制御手段とをそなえ、
上記制御手段が、車体加速度に応じた制御量要素を設定
する車体加速度対応制御量要素設定手段と、前後輪差回
転に応じた制御量要素を設定する前後輪差回転対応制御
量要素設定手段と、上記エンジンの出力に応じた制御量
要素を設定するエンジン出力対応制御量要素設定手段と
をそなえるとともに、上記車両の走行モードに応じて上
記各制御量要素を重みづけする重みづけ手段と、上記車
両の走行状態データや走行環境データからファジー理論
に基づいて上記各走行モードの適合度を算出する適合度
算出手段と、上記重みづけ手段で重みづけされた各制御
量要素を上記各走行モード毎に統合した上で上記適合度
の大きさに応じて加重平均して上記差動制限機構の制御
量を設定する制御量設定手段とをそなえていることを特
徴としている。
【0068】上記車両の走行状態データや走行環境デー
タとしては、例えば、車体速度と、操舵角と、車体に作
用する横加速度と、車両の走行する路面の勾配と、車両
の4輪のスリップ状態とを設定することができる。
【0069】
【作用】上述の本発明の差動調整式前後輪トルク配分制
御装置では、センタディファレンシャルが、車両の前輪
側駆動軸と後輪側駆動軸との差動を許容するとともにこ
れらの前輪側駆動軸及び後輪側駆動軸にエンジンからの
トルクを配分する。このとき、差動制限機構が、上記セ
ンタディファレンシャルの差動を制限することで上記ト
ルク配分状態を調整しうる。この差動制限機構は、制御
手段により制御されるが、制御手段では、車体加速度対
応制御量要素設定手段で車体加速度に応じた制御量要素
を設定し、前後輪差回転対応制御量要素設定手段で前後
輪差回転に応じた制御量要素を設定し、エンジン出力対
応制御量要素設定手段でエンジン出力に応じた制御量要
素を設定する。そして、重みづけ手段で、車両の走行モ
ードに応じて上記各制御量要素を重みづけして、適合度
算出手段で、例えば車体速度や操舵角や車体に作用する
横加速度や車両の走行する路面の勾配や車両の4輪のス
リップ状態などの、車両の走行状態データや走行環境デ
ータから、ファジー理論に基づいて上記各走行モードの
適合度を算出する。さらに、制御量設定手段で、上記重
みづけ手段で重みづけされた各制御量要素を上記各走行
モード毎に統合した上で上記適合度の大きさに応じて加
重平均して上記差動制限機構の制御量を設定する。制御
手段は、こうして設定された制御量に応じて、上記差動
制限機構を制御する。
【0070】
【実施例】以下、図面により、本発明の一実施例として
の差動調整式前後輪トルク配分制御装置について説明す
ると、図1はその制御内容を説明する図、図2はその装
置の制御系の概要を示す模式的なブロック図である。
【0071】この差動調整式前後輪トルク配分制御装置
は、前述の図4に示すような自動車の駆動系にそなえら
れる。つまり、図4に示すように、エンジン2の出力が
トルクコンバータ4及び自動変速機6を介して出力軸8
に伝達され、さらに、中間ギア10を介してセンタディ
ファレンシャル(以下、センタデフと略す)12に伝達
されるようになっている。
【0072】このセンタデフ12の出力は、一方におい
て減速歯車機構19,前輪用の差動歯車装置(フロント
デフ)14を介して車軸17L,17Rから左右の前輪
16、18に伝達され、他方においてベベルギヤ機構1
5,プロペラシャフト20及びベベルギヤ機構21,後
輪用の差動歯車装置22を介して車軸25L,25Rか
ら左右の後輪24、26に伝達されるようになってい
る。
【0073】センタデフ12は、ここでは遊星歯車式の
ものであり、プラネタリキャリアにエンジンからの出力
を入力され、サンギアから前輪駆動系へ出力され、リン
グギアから後輪駆動系へ出力されるようになっている。
また、センタデフ12には、その前輪側出力部と後輪側
出力部との差動を制限することにより前輪と後輪とのエ
ンジンの出力トルクの配分を変更しうる差動制限機構と
しての油圧多板クラッチ28が付設されているようにな
っている。
【0074】したがって、センタデフ12は、油圧多板
クラッチ28を完全フリーの状態からロックさせた状態
まで適宜制御することにより、前輪側及び後輪側へ伝達
されるトルクを、前輪:後輪が約32:68程度から前
後車輪の接地荷重に応じた比率(例えば60:40)の
間で制御することができるようになっている。完全フリ
ー状態での前輪:後輪の値:約32:68は、遊星歯車
の前輪側及び後輪側の入力歯車の歯数比等の設定により
規定でき、ここでは、油圧多板クラッチ28の油圧室内
の圧力がゼロで完全フリーの状態のときには約32:6
8となるように設定されている。
【0075】また、この完全フリー状態での比(例えば
約32:68)は、前輪系と後輪系との負荷バランス等
によって変化するが通常はこのような値となる。また、
油圧室内の圧力が設定圧(例えば約9kg/cm2 )と
されて油圧多板クラッチ28がロック状態にあって、差
動制限が実質的にゼロとなると、前輪と後輪とのトルク
配分は、前後車輪の接地荷重に応じた比率(例えば6
0:40)となる。
【0076】この自動車の駆動系の構成の詳細について
は、既に説明しているのでここでは省略する。そして、
この装置では、コントローラ48における油圧多板クラ
ッチ28の制御トルクの設定に関する部分が、前述の例
(図3参照)と異なっている。つまり、コントローラ4
8には、油圧多板クラッチ28のクラッチトルクの設定
のために、図2に示すように、車体加速度対応制御量要
素設定手段410と、前後輪差回転対応制御量要素設定
手段420と、エンジン出力対応制御量要素設定手段4
30と、重みづけ手段440と、適合度算出手段450
と、制御量設定手段460とをそなえている。
【0077】車体加速度対応制御量要素設定手段410
は、制御量要素として車体加速度Gxに応じたクラッチ
トルクTXを設定するものであり、この値TXは、前述
の図3に示すクラッチトルクTxとほぼ同様に設定され
る。つまり、この制御量要素TXは、例えば低μ路走行
時等により、4輪全てがスリップして制御のハンチング
が発生するおそがある際に、車両の前後加速度(走行加
減速度)Gx に対応した制御量(クラッチトルク)を与
えるものであり、車両の強アンダーステア化を防止して
車両がスムースな旋回動作を行なえるようにするための
ものである。
【0078】この制御量要素TXの設定は、例えば、前
後加速度センサ36から入力される検出データGxを、
フィルタ処理して外乱等成分を取り除いた上で、この前
後加速度データGxから、加速時の前輪分担荷重(W
f′/Wa)と、加速に必要な総出力トルク( プロペラ
軸上で考えたトルクである) Taを求め、これらを積算
して前輪分担トルクTfを求める。そして、この前輪分
担トルクTfに対応して、クラッチトルクTXを設定す
ることができる。
【0079】また、前後加速度GxとクラッチトルクT
Xとの関係を調べてこの関係を予めマップ化して、マッ
プにより、前後加速度GxからクラッチトルクTXを求
めることもできる。前後輪差回転対応制御量要素設定手
段420は、前後輪差回転ΔVcdに応じた制御量要素
TVを設定するものであり、この値TVは、前述の図3
に示すクラッチトルクTvとほぼ同様に設定される。
【0080】つまり、制御量要素TVは、前輪側と後輪
側との差動状態に着目して理想の差動状態となるように
制御を行なうための制御量要素である。即ち、制御量要
素TVは、旋回時に運転者の意志に沿うように車両を挙
動させるようにするクラッチトルクであり、例えば車体
の姿勢制御を行なうには後輪を駆動ベースとして後輪か
らスリップするように設定するのが効果的であるため、
このような状態を実現するように設定される。
【0081】この制御量要素TVの設定は、前述の図3
に示す前後輪実回転速度差検出部200及び前後輪理想
回転速度差設定部210のごとき機能部分で決定された
前後輪実回転速度差ΔVcdと前後輪理想回転速度差Δ
Vhcとから設定される。なお、前後輪実回転速度差Δ
Vcdは、車輪速センサ40から出力されフィルタ処理
して外乱等成分を取り除かれた前輪車輪速データVfと
後輪車輪速データVrとに基づいて、減算処理により前
後輪実回転速度差ΔVcd(=Vr−Vf)を求める。
【0082】また、前後輪理想回転速度差ΔVhcは、
操舵角センサ30から出力された操舵角データθに基づ
いて求められる運転者要求操舵角と、車輪速センサ40
から出力される車輪速データVに基づいて求められる運
転者要求車速とから設定されるようになっている。運転
者要求車速(推定車体速)を推定するには、例えば、4
輪の各車輪速センサ40により検出された各輪の回転速
度データ信号FL,FR,RL,RRのうち下から(小
さい方から)2番目の大きさの車輪速データを選択し
て、この選択した車輪速データ等と前後加速度センサ3
6で検出された前後加速度とに基づいて、ある時点の両
データSVW, Gx から、その後の車速を推定するよう
になっている。つまり、ある時点の車輪速データSVW
をV2 ,前後加速度データGxをaとすると、この時点
よりも時間tだけ後の理論上の車体速Vref は、Vref
=V2 +atで算定できる。
【0083】なお、このような運転者要求車速(推定車
体速)を推定する部分を、車体速センサ216と定義す
ることができる。また、回転速度データのうち下から2
番目の大きさの車輪速データを採用するのは、各車輪は
通常いずれも過回転側にスリップしている場合が多く本
来なら最も低速回転の車輪速を採用するのが望ましい
が、データの信頼性を考慮して下から2番目の車輪速を
採用しているのである。
【0084】そして、前後輪理想回転速度差ΔVhc
は、車速については、低車速時には、旋回時の前後輪の
軌道半径の差(所謂内輪差)の影響が大きく、後輪の回
転速度Vrは前輪の回転速度Vfよりも小さいが、高車
速になるにしたがって、後輪の回転速度Vrが前輪の回
転速度Vfに対して大きくなるようにすることで、高速
時には後輪がスリップしやすいようにしている。これに
より、高速時ほど要求される車体の姿勢の応答性を確保
している。また、操舵角に関しては、操舵角が大きいほ
ど前後輪に要求される回転差も大きくなるので、操舵角
データδref の大きさ|δref |が大きいほどΔVhcの
値も大きくなる。
【0085】そして、例えば前後輪実回転速度差ΔVcd
から前後輪理想回転速度差ΔVhcを減算して、この差Δ
Vc (ΔVcd−ΔVhc)に応じてクラッチトルクTVを
設定する。エンジン出力対応制御量要素設定手段430
は、エンジン出力Teに応じた制御量要素TAを設定す
るもので、この値TAは、前述の図3に示すクラッチト
ルクTaとほぼ同様に設定される。
【0086】つまり、制御量要素TAは、停止状態から
の急発進時などに伝達トルクが大きくなることが予想さ
れる場合に、後輪の初期スリップを防いで大きな路面伝
達トルクを得られるように、予め直結4輪駆動状態に設
定するために設定される。この制御量要素TAの設定
は、例えば、ある瞬間のエンジントルクTeと、その時
のトルコントルク比tと、その時のトランスミッション
の減速比ρm とを求めて、例えばマップに基づいてエン
ジントルクTeからエンジントルク比例トルクTA′を
得て、このエンジントルク比例トルクTA′に上述のト
ルコントルク比t,トランスミッションの減速比ρm ,
終減速ρ1 及び回転差ゲインk2 等を乗算して、エンジ
ントルク比例クラッチトルクTAを得る。
【0087】重みづけ手段440は、車両の走行モード
に応じて各制御量要素TX,TV,TAを重みづけす
る。この車両の走行モードとして、ここでは、低速直進
モード(第1モード)、例えば車庫入れ時などの低速大
舵角を行なうタイトコーナモード(第2モード)、中高
速直進走行である一般直進モード(第3モード)、中高
速旋回走行である一般屈曲モード(第4モード)、緩や
かなカーブ(直線も含む)の登降坂モード(第5モー
ド)、屈曲登降坂モード(第6モード)、低μ路4輪ス
リップモード(第7モード)の、7つのタイプに区分し
ている。
【0088】そして、重みづけ手段440では、上記の
各モード毎に、エンジントルク比例クラッチトルクTA
の重み係数PAi と差動対応クラッチトルクTVの重み
係数PVi と車体加速度対応クラッチトルクTXの重み
係数PXi とを設定し(iはモードナンバに対応す
る)、これらの値TA,PAi ,TV,PVi ,TX,
PXi に基づき、各モードの制御量Ti (=PAi TA
+PVi TV+PXi TX)を算出するようになってい
る。
【0089】適合度算出手段450は、車両の走行状態
データや走行環境データからファジー理論に基づいて各
走行モードの適合度ωi を算出する。車両の走行状態デ
ータや走行環境データとしては、ここでは、車体速度
(車速)と操舵角(ハンドル角)と横加速度(横G)と
勾配と4輪スリップの有無との5要素が与えられるよう
になっている。
【0090】このため、車体速度(車速)Vbを検出す
る車速センサ216と、操舵角(ハンドル角)θを検出
する舵角センサ(ハンドル角センサ)30と、横加速度
(横G)Gyを検出する横加速度センサ(横Gセンサ)
34と、路面勾配を検出する路面勾配センサ452と、
4輪のスリップ状態を検出する車輪スリップセンサ45
4とが設けられている。なお、車速センサ216,舵角
センサ30,横Gセンサ34は前述のものを利用でき
る。
【0091】路面勾配センサ452は、例えば既存の車
体姿勢検出センサ等を用いることができ、或いは、これ
に車体のノーズダイブやノーズバンプといった挙動に応
じて補正を施することで適切な検出ができる。車輪スリ
ップセンサ454は、例えば、4輪に設けられた車輪速
センサ40からの検出データと、車速センサ216から
の検出データとを比較することで判定するように構成す
ることができる。なお、例えば後輪主体の駆動力配分の
場合には、前輪がスリップしたら4輪全輪がスリップし
ていると判断できるので、前輪のみについて、車輪スリ
ップを検出すればよい。
【0092】制御量設定手段460は、重みづけ手段4
40で重みづけされた各制御量要素を上記各走行モード
毎に統合した上で適合度ωi の大きさに応じて加重平均
して差動制限機構としての油圧多板クラッチ28の制御
量(クラッチトルク)Tを設定するようになってる。こ
こで、重みづけ手段440,適合度算出手段450及び
制御量設定手段460による油圧多板クラッチ28のク
ラッチトルクTの設定について、図1を参照して各モー
ド毎に具体的に説明する。
【0093】なお、各走行モードにおける伝達関数の設
定は、各モード特性を関数化したものであり、これらの
伝達関数や重みづけのための重み係数は、例えば試験等
により車両特性に応じて予め設定される。低速直進モー
ド(第1モード)について説明すると、このモードで
は、車速とハンドル角と勾配と4輪スリップとについて
伝達関数が与えら、横Gに関しては考慮していない。車
速に関する伝達関数は、車速が0(km/時)〜20
(km/時)では適合度が1であり、車速が20(km
/時)を越えるとリニアに減少して車速が30(km/
時)で適合度が0になる。ハンドル角については、ハン
ドル角が0deg で適合度が1であり、ハンドル角が生じ
るとリニアに減少してハンドル角が270deg で適合度
が0になる。勾配については、勾配度が5(%)までは
適合度が1であり、5(%)から10(%)までリニア
に減少して0になっている。4輪スリップについては、
4輪スリップしていないときに適合度が1になり、4輪
スリップしているときに適合度が0になる。
【0094】そして、低速直進モード(第1モード)に
おける重み係数は、PA1 =1.0,PV1 =1.0,
PX1 =0に設定されており、路面への駆動力伝達を高
めやすい制御量要素TAとステア特性を高めやすい制御
量要素TVとが共に重視されている。タイトコーナモー
ド(第2モード)について説明すると、このモードで
は、車速とハンドル角と勾配と4輪スリップとについて
伝達関数が与えら、横Gに関しては考慮していない。車
速及び勾配及び4輪スリップに関する各伝達関数は第1
モードと同様である。ハンドル角については、ハンドル
角が0deg で適合度が0であり、ハンドル角が生じると
リニアに増加してハンドル角が270deg で適合度が1
になる。
【0095】そして、タイトコーナモード(第2モー
ド)における重み係数は、PA2 =0.25,PV2
1.0,PX2 =0に設定されており、路面への駆動力
伝達を高めやすい制御量要素TAは軽視されるが、ステ
ア特性を高めやすい制御量要素TVが重視されている。
一般直進モード(第3モード)について説明すると、こ
のモードでは、車速と横Gと勾配と4輪スリップとにつ
いて伝達関数が与えら、ハンドル角に関しては考慮して
いない。勾配及び4輪スリップに関する各伝達関数は第
1,2モードと同様である。車速に関する伝達関数は、
車速が0(km/時)〜20(km/時)では適合度が
0であり、車速が20(km/時)を越えるとリニアに
減少して車速が30(km/時)で適合度が1になる。
横Gについては、0.3Gまでは適合度が1であり、
0.3Gからリニアに減少して0.3Gで適合度が0に
なる。
【0096】そして、一般直進モード(第3モード)に
おける重み係数は、PA3 =0,PV3 =1.0,PX
3 =0に設定されており、ステア特性を高めやすい制御
量要素TVのみが重視されている。一般屈曲モード(第
4モード)について説明すると、このモードでは、車速
と横Gと勾配と4輪スリップとについて伝達関数が与え
ら、ハンドル角に関しては考慮していない。車速及び勾
配及び4輪スリップに関する各伝達関数は第3モードと
同様である。横Gについては、0.3Gまでは適合度が
0であり、0.3Gからリニアに増加して0.3Gで適
合度が1になる。
【0097】そして、一般屈曲モード(第4モード)に
おける重み係数は、PA4 =0,PV4 =0.25,P
4 =0に設定されており、ステア特性を高めやすい制
御量要素TVのみがやや採用にされるようになってい
る。緩やかなカーブの登降坂モード(第5モード)につ
いて説明すると、このモードでは、横Gと勾配と4輪ス
リップとについて伝達関数が与えら、車速とハンドル角
に関しては考慮していない。横G及び4輪スリップに関
する各伝達関数は第3モードと同様である。勾配につい
ては、勾配度が5(%)までは適合度が0であり、5
(%)から10(%)までリニアに増加して1になって
いる。
【0098】そして、緩やかなカーブの登降坂モード
(第5モード)における重み係数は、PA5 =1.0,
PV5 =1.0,PX5 =0に設定されており、路面へ
の駆動力伝達を高めやすい制御量要素TAとステア特性
を高めやすい制御量要素TVとが共に重視されている。
屈曲登降坂モード(第6モード)について説明すると、
このモードでは、横Gと勾配と4輪スリップとについて
伝達関数が与えら、車速とハンドル角に関しては考慮し
ていない。勾配及び4輪スリップに関する各伝達関数は
第5モードと同様である。横Gについては、0.3Gま
では適合度が0であり、0.3Gからリニアに増加して
0.3Gで適合度が1になる。
【0099】そして、屈曲登降坂モード(第6モード)
における重み係数は、PA6 =0.2,PV6 =0.2
5,PX6 =0に設定されており、路面への駆動力伝達
を高めやすい制御量要素TAとステア特性を高めやすい
制御量要素TVとが共にやや軽度に制御に採用されるよ
うになっている。。低μ路4輪スリップモード(第7モ
ード)について説明すると、このモードでは、4輪スリ
ップについてのみ伝達関数が与えら、車速とハンドル角
と横Gと勾配に関しては考慮していない。このときの4
輪スリップに関する伝達関数は4輪スリップしていると
きに適合度が1になり、4輪スリップしていないときに
適合度が0になる。
【0100】そして、低μ路4輪スリップモード(第7
モード)における重み係数は、PA7 =1.0,PV7
=1.0,PX7 =1.0に設定されており、低μ路走
行時のための制御量要素TXと路面への駆動力伝達を高
めやすい制御量要素TAとステア特性を高めやすい制御
量要素TVとが共に重視されるようになっている。各モ
ードにおいて代表となる適合度ωi は、そのモードの車
速,ハンドル角,横G,路面勾配及び路面のスリップ状
態に関する伝達関数で得られる適合度のうち、最小のも
のを選択するようになっている。
【0101】例えば、車速が25(km/時)でハンド
ル角が180deg で勾配が0で4輪非スリップ状態を考
えることにする。すると、第1モードについては、車速
に関する適合度は0.5になり、ハンドル角に関する適
合度は約0.3になり、勾配に関する適合度は1.0に
なり、4輪スリップに関する適合度は1.0になる。し
たがって、ハンドル角に関する適合度約0.3が第1モ
ードの適合度ω1 となる。
【0102】また、第2モードについては、車速に関す
る適合度は0.5になり、ハンドル角に関する適合度は
約0.7になり、勾配に関する適合度は1.0になり、
4輪スリップに関する適合度は1.0になる。したがっ
て、車速に関する適合度0.5が第2モードの適合度ω
2 となる。第3モードについては、車速に関する適合度
は0.5になり、横Gに関する適合度は1.0になり、
勾配に関する適合度は1.0になり、4輪スリップに関
する適合度は1.0になる。したがって、車速に関する
適合度0.5が第3モードの適合度ω3 となる。
【0103】第4モードについては、車速に関する適合
度は0.5になり、横Gに関する適合度は0になり、勾
配に関する適合度は1.0になり、4輪スリップに関す
る適合度は1.0になる。したがって、横Gに関する適
合度0が第4モードの適合度ω4 となる。第5モードに
ついては、横Gに関する適合度は1.0になり、勾配に
関する適合度は0になり、4輪スリップに関する適合度
は1.0になる。したがって、勾配に関する適合度0が
第5モードの適合度ω5 となる。
【0104】第6モードについては、横Gに関する適合
度は0になり、勾配に関する適合度は0になり、4輪ス
リップに関する適合度は1.0になる。したがって、横
Gに関する適合度又は勾配に関する適合度0が第6モー
ドの適合度ω6 となる。さらに、第7モードについて
は、4輪スリップに関する適合度は0になり、この0が
第7モードの適合度ω7 となる。
【0105】このように、車両の走行状態データや走行
環境データである車体速度(車速)と操舵角(ハンドル
角)と横加速度(横G)と勾配と4輪スリップの有無と
の5要素が検出されると、適合度算出手段450によ
り、車両の各走行モード(第1〜第7モード)毎に、そ
れぞれ適合度ω1 〜ω7 が求められるのである。そし
て、油圧多板クラッチ28のクラッチトルク(クラッチ
拘束トルク)Tは、重みづけ手段440で演算された制
御量Ti 及び適合度算出手段450で設定された適合度
ωi から、制御量設定手段460により、次式で算出さ
れるようになっている。
【0106】 T=Σ(ωi ・Ti )/Σωi 但し、Ti =(PAi TA)+(PVi TV)+(PXi TX) (i=1〜7) このようにして設定されたクラッチトルク(クラッチ拘
束トルク)Tは、センタデフ制御のために油圧多板クラ
ッチ28の油圧制御系に制御信号として送られるが、こ
の制御量設定手段460からの出力は、例えば図3に示
すように、トルク−圧力変換部282から油圧回路30
0にまで至る処理を行なったうえで、油圧多板クラッチ
28の油圧制御に利用するようにしてもよい。
【0107】本発明の一実施例としての差動調整式前後
輪トルク配分制御装置は、上述のように構成されている
ので、推定したエンジントルクに比例するクラッチトル
クTAと、前後輪の差動に対応したクラッチトルクTV
と、車体加速度に対応したクラッチトルクTXとを設定
すると、各モード毎に、これらのトルク値TA,TV,
TXにそれぞれ重み係数PAi ,PVi ,PXi を掛け
て、さらに、それぞれのモードで、車速,ハンドル角,
横G,路面勾配及び路面のスリップ状態に関する伝達関
数から、適合度(グレード)ωi を求めて、各モードの
制御量を適合度ωi により加重平均して、油圧多板クラ
ッチ28のクラッチトルクTを設定する。
【0108】この結果、走行状態・走行環境に応じて、
極めて綿密に、前後駆動配分を制御できるようになり、
常に適切な制御状態が実現する効果がある。また、この
制御では、各伝達関数及び重み係数PAi ,PVi ,P
i を車両に応じて設定することで、各車両に応じて、
綿密に前後駆動配分を制御できるものである。
【0109】なお、本実施例の各伝達関数は一例であ
り、そのねらいとする特性を有するものであればよく、
本実施例のものに限られない。また、走行状態・走行環
境としてのデータも、本実施例のものに限られず、種々
のものを設定しうる。さらに、走行モードも本実施例の
ものに限られず、種々のものを設定しうる。
【0110】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明の差動調整
式前後輪トルク配分制御装置によれば、車両における前
輪側駆動軸と後輪側駆動軸との差動を許容するとともに
これらの前輪側駆動軸及び後輪側駆動軸にエンジンから
のトルクを配分するセンタディファレンシャルと、この
センタディファレンシャルの差動を制限する差動制限機
構と、この差動制限機構を制御する制御手段とをそな
え、上記制御手段が、車体加速度に応じた制御量要素を
設定する車体加速度対応制御量要素設定手段と、前後輪
差回転に応じた制御量要素を設定する前後輪差回転対応
制御量要素設定手段と、上記エンジンの出力に応じた制
御量要素を設定するエンジン出力対応制御量要素設定手
段とをそなえるとともに、上記車両の走行モードに応じ
て上記各制御量要素を重みづけする重みづけ手段と、上
記車両の走行状態データや走行環境データからファジー
理論に基づいて上記各走行モードの適合度を算出する適
合度算出手段と、上記重みづけ手段で重みづけされた各
制御量要素を上記各走行モード毎に統合した上で上記適
合度の大きさに応じて加重平均して上記差動制限機構の
制御量を設定する制御量設定手段とをそなえるという構
成で、走行状態・走行環境に応じて、極めて綿密に、前
後駆動配分を制御できるようになり、常に適切な制御状
態が実現する効果がある。
【0111】特に、上記車両の走行状態データや走行環
境データとして、車体速度と、操舵角と、車体に作用す
る横加速度と、車両の走行する路面の勾配と、車両の4
輪のスリップ状態とを用いることで、走行状態・走行環
境に応じた適切な制御状態を確実に実現することができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例としての差動調整式前後輪ト
ルク配分制御装置の制御内容を説明する図である。
【図2】本発明の一実施例としての差動調整式前後輪ト
ルク配分制御装置の制御系の概要を示す模式的なブロッ
ク図である。
【図3】本発明の案出過程で提案された差動調整式前後
輪トルク配分制御装置の制御系の構成を示す模式的なブ
ロック図である。
【図4】本発明の案出過程で提案された差動調整式前後
輪トルク配分制御装置の構成を示す車両の模式的な図で
ある。
【符号の説明】
2 エンジン 4 トルクコンバータ 6 自動変速機 8 出力軸 10 中間ギヤ(トランスファーアイドラギヤ) 12 センタディファレンシャル(センタデフ) 14 前輪用の差動歯車装置(フロントデフ) 15 ベベルギヤ機構 15A ベベルギヤ軸 15a ベベルギヤ 16,18 前輪 17L,17R 前輪側車軸 19 減速歯車機構 19a 出力歯車 20 プロペラシャフト 21 ベベルギヤ機構 22 後輪用の差動歯車装置(リヤデフ) 24,26 後輪 25L,25R 後輪用車軸 27 前輪用出力軸 27a 中空軸部材 28 油圧多板クラッチ(差動制限機構) 28a 前輪出力側ディスクブレート 28b 入力側ディスクブレート 29 後輪用出力軸 30,30a,30b,30c ハンドル角センサ(ス
テアリングホイール角センサ) 32 ステアリングホイール 34,34a,34b 横加速度センサ 36 前後加速度センサ 38 スロットルセンサ 39 エンジンキースイッチ 40,42,44,46 車輪速センサ 48 コントローラ 50 アンチロックブレーキ装置 50A ブレーキスイッチ 51 ブレーキペダル 52 表示灯 54 油圧源 56 圧力制御弁系(圧力制御弁) 121 サンギヤ 122 プラネタリピニオン(プラネタリギヤ) 123 リングギヤ 124 入力ケース 125 プラネットキャリア 160 シフトレバー位置センサ(シフトレンジ検出手
段) 170 エンジン回転数センサ 180 トランスミッション回転数センサ 410 車体加速度対応制御量要素設定手段 420 前後輪差回転対応制御量要素設定手段 430 エンジン出力対応制御量要素設定手段 440 重みづけ手段 450 適合度算出手段 452 路面勾配センサ 454 車輪スリップセンサ 460 制御量設定手段

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 車両における前輪側駆動軸と後輪側駆動
    軸との差動を許容するとともにこれらの前輪側駆動軸及
    び後輪側駆動軸にエンジンからのトルクを配分するセン
    タディファレンシャルと、このセンタディファレンシャ
    ルの差動を制限する差動制限機構と、この差動制限機構
    を制御する制御手段とをそなえ、上記制御手段が、車体
    加速度に応じた制御量要素を設定する車体加速度対応制
    御量要素設定手段と、前後輪差回転に応じた制御量要素
    を設定する前後輪差回転対応制御量要素設定手段と、上
    記エンジンの出力に応じた制御量要素を設定するエンジ
    ン出力対応制御量要素設定手段とをそなえるとともに、
    上記車両の走行モードに応じて上記各制御量要素を重み
    づけする重みづけ手段と、上記車両の走行状態データや
    走行環境データからファジー理論に基づいて上記各走行
    モードの適合度を算出する適合度算出手段と、上記重み
    づけ手段で重みづけされた各制御量要素を上記各走行モ
    ード毎に統合した上で上記適合度の大きさに応じて加重
    平均して上記差動制限機構の制御量を設定する制御量設
    定手段とをそなえていることを特徴とする、差動調整式
    前後輪トルク配分制御装置。
  2. 【請求項2】 上記車両の走行状態データや走行環境デ
    ータとして、車体速度と、操舵角と、車体に作用する横
    加速度と、車両の走行する路面の勾配と、車両の4輪の
    スリップ状態とが設定されていることを特徴とする、上
    記請求項1記載の差動調整式前後輪トルク配分制御装
    置。
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