JP2689286B2 - 車両用差動制限制御装置 - Google Patents

車両用差動制限制御装置

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JP2689286B2
JP2689286B2 JP2415558A JP41555890A JP2689286B2 JP 2689286 B2 JP2689286 B2 JP 2689286B2 JP 2415558 A JP2415558 A JP 2415558A JP 41555890 A JP41555890 A JP 41555890A JP 2689286 B2 JP2689286 B2 JP 2689286B2
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薫 澤瀬
健一郎 品田
政義 伊藤
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、車両の左右輪の差動制
限を制御する、車両用差動制限制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】自動車の駆動輪における左右輪間には、
旋回時等に生じる差動を許容するための差動機構が設け
られているが、この差動機構では、左右輪のうち一方の
車輪の負荷が溝にはまって路面との摩擦係数が著しく小
さくなると、この一方の車輪のみが回転して他方の車輪
はほとんど回転しなくなって、路面に駆動トルクを伝達
できない状態が生じることがある。
【0003】そこで、このような場合に、その差動を制
限できる差動制限機構(LSD=リミテットスリップデ
フ)が開発されている。このような左右輪の差動制限機
構には、左右輪の回転速度差に比例するタイプのもの
や、入力トルクに比例するタイプのものがある。左右輪
回転速度差比例タイプには、液体の粘性を利用したVC
(ビスカスカップリング)式LSDなどのものがあり、
車両の走行安定性を向上しうる利点がある。一方、入力
トルク比例タイプのものには、一般的なLOM(ロック
オートマチック)式LSDなどのフリクションタイプの
ものや、ウォームギヤの摩擦抵抗を利用したTORSE
N(トルーセン)式LSDなどのメカニカルタイプのも
のがあり、車両の旋回性能を向上しうる利点がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述の
ような各差動制限機構では、その差動制御特性が物性な
どによって定まっており、必ずしも常に適切に差動制御
を行なえるように差動制御特性を調整できるようにはな
っていない。
【0005】本発明は、上述の課題に鑑み創案されたも
ので、左右輪の差動状態を適切に制御できるようにし
た、車両用差動制限制御装置を提供することを目的とす
る。
【0006】
【課題を解決するための手段】このため、本発明の車両
用差動制限制御装置は、車両の左輪側駆動軸と右輪側駆
動軸との差動を選択的に制限可能な差動制限手段と、上
記差動制限手段を制限する制御手段とを備えると共に、
上記左輪側駆動軸の回転速度を検出する左輪側回転速度
検出手段と、上記右輪側駆動軸の回転速度を検出する右
輪側回転速度検出手段と、上記左輪側回転速度検出手段
及び上記右輪側回転速度検出手段により検出された各回
転速度に基づいて上記左輪側駆動軸と上記右輪側駆動軸
との実回転速度差を算出する実回転速度差算出手段と、
上記車両の旋回に応じて発生すべき上記左輪側駆動軸と
上記右輪側駆動軸との目標回転速度差を設定する目標回
転速度差設定手段とを備え、上記実回転速度差算出手段
で算出された実回転速度差が、上記目標回転速度差設定
手段で設定された目標回転速度差に近づくように、上記
制御手段により上記差動制限手段を制限する車両用差動
制限制御装置において、上記制御手段が、上記実回転速
度差と上記目標回転速度差との差に応じて上記差動制限
手段による差動制限力を作用させると共に、上記実回転
速度差が0よりも大きく上記目標回転速度差よりも小さ
い場合には上記差動制限手段による差動制限力を作用さ
せないように構成されていることを特徴としている。
【0007】
【0008】
【作用】上述の本発明の車両用差動制限制御装置では、
実回転速度差算出手段が、左輪側回転速度検出手段及び
右輪側回転速度検出手段により検出された各回転速度に
基づいて上記左輪側駆動軸と上記右輪側駆動軸との実回
転速度差を算出し、目標回転速度差設定手段が、車両の
旋回に応じて発生すべき上記左輪側駆動軸と上記右輪側
駆動軸との目標回転速度差を設定すると、制御手段で、
実回転速度差が、上記目標回転速度差設定手段で設定さ
れた目標回転速度差に近づくように、差動制限手段を制
限する。
【0009】このとき、上記制御手段は、上記実回転速
度差と上記目標回転速度差との差に応じて上記差動制限
手段による差動制限力を作用させるが、上記実回転速度
差が、0よりも大きく上記目標回転速度差よりも小さい
場合には上記差動制限手段による差動制限力を作用させ
ない。つまり、上記実回転速度差が上記理想回転速度よ
りも小さい領域で差動制限力の値を0に設定する不感帯
を設けることにより、不必要に差動制限力を与えること
が回避されて、効率よく差動状態が制限されることにな
る。
【0010】
【実施例】以下、図面により、本発明の一実施例として
車両用差動制限制御装置について説明すると、図1は
その全体構成を示すブロック図、図2はその差動制御装
置をそなえた駆動トルク伝達系の全体構成図、図3はそ
の左右輪差動としてのリヤディファレンシャルを示す断
面図、図4(a),(b)はいずれも図3のA−A矢視
断面、図5はその回転数差対応制御部を示す構成図、図
6はその後輪トルクゲイン補正部を示す構成図、図7は
その入力トルク対応制御部の一部を示す構成図、図8は
その入力トルク対応制御部の一部を示す構成図、図9は
その最大値選択部から制御電流出力部に至る部分の構成
図、図10はその操舵角検出手段の詳細を示す構成図、
図11はその車速検出手段の詳細を示す構成図、図12
はその理想回転数差を説明するための車輪状態を模式的
に示す平面図、図13は理想回転数差設定用マップを示
す図、図14はその回転差ゲイン設定マップを示す図、
図15(a),(b)はそれぞれその差動対応クラッチ
トルク設定用マップを示す図、図16はそのエンジント
ルクマップの例を示す図、図17はそのトランスミッシ
ョントルク比マップの例を示す図、図18はそのセンタ
デフ入力トルク設定マップ、図19はその装置を含んだ
車両全体の制御の流れを示すフローチャート、図20は
そのリヤディファレンシャルの制御の流れを示すフロー
チャート、図21はその回転数差対応クラッチトルクの
設定の流れを示すフローチャート、図22はその入力ト
ルク対応クラッチトルクの設定の流れを示すフローチャ
ートである。
【0011】まず、図2を参照してこの車両用差動制限
制御装置をそなえる車両の駆動系の全体構成を説明す
る。
【0012】図2において、符号2はエンジンであっ
て、このエンジン2の出力はトルクコンバータ4及び自
動変速機6を介して出力軸8に伝達される。出力軸8の
出力は、中間ギア10を介して前輪と後輪とのエンジン
トルクを所要の状態に配分する作動装置としての遊星歯
車式差動装置12に伝達される。
【0013】この遊星歯車式差動装置12の出力は、一
方において減速歯車機構19,前輪用の差動歯車装置1
4を介して車軸17L,17Rから左右の前輪16、1
8に伝達され、他方においてベベルギヤ機構15,プロ
ペラシャフト20及びベベルギヤ機構21,後輪用の差
動歯車装置(リヤディファレンシャル)22を介して車
軸25L,25Rから左右の後輪24,26に伝達され
る。
【0014】遊星歯車式差動装置12は、従来周知のも
のと同様にサンギア121、同サンギア121の外方に
配置されたプラネタリギア122と、同プラネタリギア
122の外方に配置されたリングギア123とを備え、
プラネタリギア122を支持するキャリア125に自動
変速機6の出力軸8の出力が入力され、サンギア121
は前輪用出力軸27および減速歯車機構19を介して前
輪用差動歯車装置14に連動され、リングギア123は
後輪用出力軸29およびベベルギヤ機構15を介してプ
ロペラシャフト20に連動されている。
【0015】また、遊星歯車式差動装置14には、その
前輪側出力部と後輪側出力部との差動を拘束(又は制
限)することにより前輪と後輪とのエンジンの出力トル
クの配分を変更しうる差動制限手段又は差動調整手段と
しての油圧多板クラッチ28が付設されている。
【0016】すなわち、油圧多板クラッチ28は、サン
ギヤ121(又はリングギア123)とキャリア125
との間に介装されており、自身の油圧室に作用される制
御圧力によって摩擦力が変わり、サンギヤ121(又は
リングギア123)とキャリヤ125との差動を拘束す
るようになっている。
【0017】したがって、遊星歯車式差動装置12は、
油圧多板クラッチ28を完全フリーの状態からロックさ
せた状態まで適宜制御することにより、前輪側及び後輪
側へ伝達されるトルクを、前輪:後輪が約32:68程
度から50:50の間で制御することができるようにな
っている。完全フリー状態での前輪:後輪の値:約3
2:68は、遊星歯車の前輪側及び後輪側の入力歯車の
歯数比等の設定により規定でき、ここでは、油圧多板ク
ラッチ28の油圧室内の圧力がゼロで完全フリーの状態
のときには約32:68となるように設定されている。
【0018】また、この完全フリー状態での比(約3
2:68)は、前輪系と後輪系との負荷バランス等によ
って変化するが通常はこのような値となる。また、油圧
室内の圧力が設定圧(9kg/cm2)とされて油圧多板ク
ラッチ28がロック状態にあって、差動制限が実質的に
ゼロとなると、前輪と後輪とのトルク配分は、50:5
0となって直結状態となる。
【0019】なお、リヤディファレンシャル22につい
ては、後で詳述する。
【0020】符号30はステアリングホイール32の中
立位置からの回転角度、即ちハンドル角θを検出するハ
ンドル角センサ、34a,34bはそれぞれ車体の前部
および後部に作用する横方向の加速度Gyf,Gyrを検出
する横加速度センサであり、この例では、2つの検出デ
ータGyf,Gyrを平均して横加速度データとしている
が、車体の重心部付近に横加速度センサ34を1つだけ
設けて、この検出値を横加速度データとしてもよい。3
6は車体に作用する前後方向の加速度Gxを検出する前
後加速度センサ、38はエンジン2のスロットル開度θ
tを検出するスロットルポジションセンサ、39はエン
ジン2のエンジンキースイッチ、40、42、44、4
6はそれぞれ左前輪16、右前輪18、左後輪26、右
後輪28の回転速度を検出する車輪速センサであり、
のうち、46,44は後輪車輪速検出手段(前輪車輪速
センサ)であり、特に、46は左輪側回転速度速検出手
段、44は右輪側回転速度速検出手段である。これらス
イッチ及び各センサの出力は制御手段としてのコントロ
ーラ48に入力されている。
【0021】符号50はアンチロックブレーキ装置であ
り、このアンチロックブレーキ装置50はブレーキスイ
ッチ50Aと連動して作動する。つまり、ブレーキペダ
ル51の踏込時にブレーキスイッチ50Aがオンとなる
と、これに連動してアンチロックブレーキの作動信号が
出力されて、アンチロックブレーキ装置50が作動す
る。また、アンチロックブレーキの作動信号が出力され
るときには同時にその状態を示す信号がコントローラ4
8に入力されるように構成されている。また、52はコ
ントローラ48の制御信号に基づき点灯する警告灯であ
る。
【0022】なお、コントローラ48は、図示しないが
後述する制御に必要なCPU、ROM、RAM、インタ
フェイス等を備えている。
【0023】符号54は油圧源、56は同油圧源54と
油圧多板クラッチ28の油圧室との間に介装されてコン
トローラ48からの制御信号により制御される圧力制御
弁系(以下、圧力制御弁と略す)である。 また、この
自動車には自動変速機がそなえられており、符合160
は自動変速機のシフトレバー160Aの選択シフトレン
ジを検出するシフトレバー位置センサ(シフトレンジ検
出手段)であり、この検出情報もコントローラ48に送
られる。
【0024】さらに、エンジン回転数センサ(エンジン
回転速度センサ)170で検出されたエンジン回転数N
eやトランスミッション回転数センサ(トランスミッシ
ョン回転速度センサ)180で検出されたトランスミッ
ション回転数Ntもコントローラ48に送られる。
【0025】また、この例では、トラクションコントロ
ールシステム151もそなえている。つまり、エンジン
2は、アクセルペダル162の踏み込み量に応じて開度
が制御される主スロットル弁152をそなえており、ア
クセルペダル162および連結策等とともにアクセルペ
ダル系エンジン出力調整装置を構成している。
【0026】そして、アクセルペダル系エンジン出力調
整装置と独立して制御されるエンジン出力制御手段とし
ての副スロットル弁153が、エンジン2の吸気通路内
において主スロットル弁152と直列的に設けられてい
る。この副スロットル弁153はモータにより駆動さ
れ、このモータは後輪速センサ44,46や前輪速セン
サ40,42やエンジン回転数センサ170やエンジン
負荷センサ172等の検知結果にもとづき駆動制御され
る。
【0027】そして、上述のリヤディファレンシャル
(リヤデフ)22は、差動制限装置23が設けられてお
り、図3に示すように構成されている。
【0028】つまり、図3に示すように、入力軸401
がプロペラシャフト20の後端に結合されており、入力
軸401によりドライブピニオンギヤ402が一体回転
するように支持されている。また、入力軸401は、軸
受412を介してケース413の前部内に回転自在に支
持されている。
【0029】ドライブピニオンギヤ402には、クラウ
ン歯車403が噛合しており、このクラウン歯車403
には、ボルト431によって動力伝達用環状部材404
および第1のハウジング405が一体に結合されてい
る。
【0030】リヤデフ22は、遊星歯車機構を用いた遊
星歯車式ディファレンシャルであって、動力伝達用環状
部材404およびこの内部に形成され、環状部材404
の内周面に形成されたリングギヤ407と、左側輪24
の車軸25Lとスプライン結合するサンギヤ408と、
右側輪26の車軸25Rとスプライン結合するキャリヤ
409と、このキャリヤ409に軸410a,410b
を介して取り付けられたプラネタリギヤ411a,41
1bとから構成されている。
【0031】したがって、入力軸401から入った回転
トルクは、ドライブピニオンギヤ402,クラウン歯車
403を経て、環状部材404のリングギヤ407か
ら、プラネタリギヤ411a,411b及びキャリヤ4
09を介して右側輪26の車軸25Rへ伝達されると共
に、プラネタリギヤ411a,411b及びサンギヤ4
08を介して左側輪24の車軸25Lへ伝達されるよう
になっている。
【0032】また、キャリヤ409の右側には、第2の
ハウジング406が設けられており、この第2のハウジ
ング406はベアリング428を介して環状支持部材4
18に支持されている。
【0033】そして、このリヤデフ22には、差動制限
装置23が設けられており、この差動制限装置23は、
差動制限機構としての多板クラッチ414と、この多板
クラッチを駆動する駆動装置417と、この駆動装置4
17を制御するコントローラ48のリヤデフ制御部48
aとから構成されている。
【0034】つまり、多板クラッチ414は、環状部材
404の内部に設けられており、一方のクラッチディス
ク414aを支持するホルダ部415aは軸410a,
410bを介してキャリヤ409に結合されて、クラッ
チディスク414aがキャリヤ409と一体回転するよ
うになっており、他方のクラッチディスク414bを支
持するホルダ部415bはサンギヤ408の設けられた
中空シャフト416に形成されて、クラッチディスク4
14bがサンギヤ408と一体回転するようになってい
る。
【0035】さらに、駆動装置417は、キャリヤ40
9と第2のハウジング406との間に介設された力方向
変換機構429と、この力方向変換機構429を駆動す
る電磁式クラッチ機構430とからなっている。なお、
このリヤデフ22は電磁式クラッチ機構により差動制限
を行なうので、電磁制御式ディファレンシャル(EMC
D:Electro Magnetic Controlled Differentia
l)という。
【0036】力方向変換機構429は、図3に示すよう
に、キャリヤ409と第2のハウジング406との間に
介装されたボール421と、図4(a)に示すように、
このボール421を収容する菱形(又は矩形)の室42
5とからなり、室425は、キャリヤ409側に形成さ
れた溝422とキャリヤ409と第2のハウジング40
6との間の環状部材423に形成された溝424とによ
って形成されている。そして、環状部材423は、キャ
リヤ409と第2のハウジング406との間に介装され
て、通常時にはこれらの部材に対して回転方向にフリー
であって、ボール421を介してキャリヤ409と一体
回転しているが、第2のハウジング406側(つまり、
クラウン歯車403や動力伝達用環状部材404側)の
回転トルクを受けると、キャリヤ409に対して差回転
を生じて、この回転トルクによる力が、方向を変更され
て、クラッチ414の押圧力として作用するようになっ
ている。
【0037】環状部材423に第2のハウジング406
側の回転トルクを作用させるのは、電磁式クラッチ機構
430であり、この電磁式クラッチ機構430は、環状
部材423と第2のハウジング406側(クラウン歯車
403や動力伝達用環状部材404側)の部材426と
の間に介装されたクラッチ427と、磁石419と差動
制限機構制御手段としてのソレノイド(EMCDコイ
ル)420とからなる電磁式クラッチ駆動系とからなっ
ている。
【0038】つまり、クラッチ427が、第2のハウジ
ング406の内側に配設されていて、第2のハウジング
406のさらに内側には磁石419が設置され、この一
方、第2のハウジング406の外側に、磁石419を吸
引しうるソレノイド420が設置されている。これによ
り、ソレノイド420が作動すると、磁石419が第2
のハウジング406側に引き付けられて、第2のハウジ
ング406との間でクラッチ416を押圧するようにな
ることで、クラッチ416が係合するようになってい
る。
【0039】そして、クラッチ416が係合するように
なると、環状部材423が、第2のハウジング406側
の回転トルクを受けて、第2のハウジング406側と一
体的に回転しようとするようになる。この時に、第2の
ハウジング406側(したがって、サンギヤ407側)
とキャリヤ409とが回転速度差(差回転)を生じてい
れば、つまり、左右輪間に回転速度差が生じていれば、
環状部材423は、キャリヤ409に対して差回転を生
じ、このように環状部材423がキャリヤ409に対し
て差回転を生じると、図4(b)に示すように、ボール
421と溝422,424の傾斜面とを介して、差回転
方向の力Δrが、これと直交する方向の力、つまり、リ
ヤデフの軸心方向や車軸方向に並行な力Fに変換され
て、この力Fによりキャリヤ409が軸心方向へ駆動さ
れて、シャフト410a,410b,ホルダ部415a
を通じて、多板クラッチ414が押圧されて係合するよ
うにになっている。
【0040】このような多板クラッチ414の係合力
は、左右輪の回転速度差とソレノイド420で生じる電
磁力の大きさとに対応することになり、ソレノイド42
0への電流を調整することで、多板クラッチ414の係
合力、したがって、差動制限力を制御できるのである。
【0041】このようなソレノイド420への電流調整
による差動制限力の制御のために、コントローラ48に
リヤデフ制御部48aが設けられている。
【0042】ここで、このリヤデフ制御部48aについ
て説明する。
【0043】リヤデフ制御部48aは、図1のブロック
図に示すように、各センサ(車輪速センサ40,42,
44,46,操舵角センサ30a,30b,30c,横
加速度センサ34,前後加速度センサ36,スロットル
ポジションセンサ38,エンジン回転数センサ170,
トランスミッション回転数センサ180,シフトポジシ
ョンセンサ160等)からの検出情報に基づいて、多板
クラッチ414のクラッチトルクを設定し、目標のクラ
ッチトルクを得られるように駆動装置417の電磁式ク
ラッチ機構430への供給電流を制御するようになって
いる。
【0044】なお、データのうちABS情報,車輪速,
舵角,変速段,ABSのコントロールユニットとエンジ
ンの制御ユニットとの総合通信(SCI通信:SCI=
Serial Communication Interface)等のデータ
は、デジタル入力され、前後加速度,横加速度,アクセ
ル開度,多板クラッチへの油圧制御,4WDコントロー
ルユニット制御,リヤデフの電磁クラッチへの電流等に
関してはアナログ入力される。
【0045】この装置では、多板クラッチ414のクラ
ッチトルクの設定は、左右輪の差動状態(回転速度差
であって回転数差とも表現する)に着目して理想の差動
状態となるように制御を行なうための差動対応クラッチ
トルクTrnと、急発進時などにおける車輪のスリッ
プを抑制して大きな路面伝達トルクを得られるように後
輪に入力されるトルクに比例して設定される入力トルク
比例クラッチトルクTraとの中から1つが選択される
ようになっており、これらの各クラッチトルクTrn,
Traの設定部について順に説明する。
【0046】差動対応クラッチトルクTrnは、旋回時
に運転者の意志に沿うように車両を挙動させるように制
御精度を高めると共にタイトコーナブレーキング現象を
回避できるようにするためのクラッチトルクである。つ
まり、旋回時には、左右輪間及び前後輪間には、その軌
道差や車体姿勢により、幾何学的に差動が生じるので、
この差動を適切に許容できるように、左右輪間及び前後
輪間の差動を制御したい。
【0047】ところで、旋回時に運転者の意志として、
入手可能な情報は、運転者の要求舵角(疑似舵角)δr
efや、車体速(疑似車体速)Vrefであり、これら
の情報δref,Vrefに基づいて、に差動対応クラ
ッチトルクTrnを設定するようになっている。
【0048】したがって、差動対応クラッチトルクTv
の設定にかかる部分は、図1に示すように、実回転速度
差検出手段としての左右輪実回転速度差検出部500
と、理想回転速度差設定手段(目標回転速度差設定手
段)としての左右輪理想回転速度差設定部510と、左
右輪実回転速度差ΔVrdと左右輪理想回転速度差ΔV
hrとからクラッチトルク(差動制限力)Trn´を設
定する差動制限力設定手段としての差動対応クラッチト
ルク設定部520と、このクラッチトルクTrn´を後
輪トルクゲインk3で補正する補正部(k3補正部)54
6とから構成されている。
【0049】左右輪実回転速度差検出部500は、図5
に示すように、フィルタ202c,202dと、左右輪
実回転速度差算出部506とをそなえて構成されてい
る。なお、フィルタ202c,202dは、それぞれ車
輪速センサ44,46により検出された左後輪24,右
後輪26の回転速度データ信号RL,RRの中から、外
乱等により発生するデータの微振動成分を取り除くため
のものである。さらに、左右輪実回転速度差算出部50
6では、後輪の左側輪回転速度Vrlから後輪の右側輪
回転速度Vrrを減じることで左右輪の実回転速度差
[左右輪の回転速度差(左右回転差:この回転差はリヤ
デフにおける回転差でもある)]ΔVrdを算出する。
【0050】左右輪理想回転速度差設定部510は、操
舵角検出手段としての運転者要求操舵角演算部(擬似操
舵角演算部)212と、車体速データ検出手段としての
運転者要求車体速演算部(擬似車体速演算部)216
と、理想作動状態設定部としての理想回転速度差設定部
518とをそなえて構成されている。
【0051】操舵角検出手段としての運転者要求操舵角
演算部212は、図10に示すように、操舵角センサ3
0(第1操舵角センサ30a,ステアリングハンドルに
設置された第2操舵角センサ30b,ニュートラル位置
センサ30c)からの検出データθ1,θ2,θnに基づ
いてセンサ対応操舵角δh[=f(θ1,θ2,θn)]
の値を算出するセンサ対応操舵角データ設定部212a
と、横加速度センサ34a,34bで検出されたデータ
Gyf,Gyrを平均して横加速度データGyを算出す
る横加速度データ算出部212bと、センサ対応操舵角
δhの方向と横加速度データGyの方向とを比較する比
較部212cと、比較部212cでの比較結果に応じて
運転者要求操舵角δrefを設定する運転者要求操舵角
設定部(車速データ設定部)212dとをそなえて構成
されている。
【0052】なお、センサ対応操舵角δhを求める関数
δh=f(θ1,θ2,θn)は、ハンドル角センサの仕
様に応じたものとなる。また、センサ対応操舵角δh及
び横加速度データGyは、いずれも例えば右旋回方向を
正としている。
【0053】これらのセンサ対応操舵角δh及び横加速
度データGyの方向を比較するのに、検出データxに対
して次のような方向に関する関数SIG(x)を設定す
る。 x>0の時には、SIG(x)=1 x=0の時には、SIG(x)=0 x<0の時には、SIG(x)=−1 そして、比較部212cでは、センサ対応操舵角δhの
方向と横加速度データGyの方向との比較を、SIG
(δh)とSIG(Gy)とを比較することにより行な
っている。
【0054】運転者要求操舵角設定部212dでは、セ
ンサ対応操舵角δhの方向SIG(δh)と横加速度デ
ータGyの方向SIG(Gy)とが等しい場合には、セ
ンサ対応操舵角δhを運転者要求操舵角(操舵角デー
タ)δrefに設定し、センサ対応操舵角δhの方向S
IG(δh)と横加速度データGyの方向SIG(G
y)とが等しくない場合には、0を運転者要求操舵角δ
refに設定する。
【0055】センサ対応操舵角δhの方向SIG(δ
h)と横加速度データGyの方向SIG(Gy)とが等
しくない場合に運転者要求操舵角δrefとして0を設
定するのは、例えばドライバがカウンタステア等のハン
ドル操作を行なうときには、ハンドルの操舵位置と実際
の車両の操舵角(旋回状態)とが異なるようになる場合
があり、このような時に、ハンドルの操舵位置から車両
の操舵角と設定すると適切な制御を行ないにくい。
【0056】そこで、このような不具合を排除するため
に、センサ対応操舵角δhの方向SIG(δh)と横加
速度データGyの方向SIG(Gy)とが等しくない場
合には、運転者要求操舵角を0に設定しているのであ
る。
【0057】このように、運転者要求舵角δrefは、
ハンドル角から求められるが、このハンドル角に基づく
舵角δhは、例えば横加速度Gyに基づいた舵角δyよ
りも運転者の意志をより反映した舵角であって、運転者
要求舵角δrefとして適している。例えば、運転者が
現状よりも大きく曲がりたい場合には、|δh|>|δ
y|となり、舵角値|δh|を採用することで舵角値|
δy|を採用するよりも理想回転速度差(スリップ目標
値)の大きさを大きくでき、一方、運転者が現状の曲が
りを押えたい場合には、|δh|<|δy|となり、舵
角値|δh|を採用することで舵角値|δy|を採用す
るよりも理想回転速度差(スリップ目標値)の大きさを
小さくできるのである。
【0058】運転者要求車体速演算部216は、車輪に
スリップを生じたときに車輪速から車体速を求めると、
図11に示すように、車輪速センサ40,42,44,
46により検出された左前輪16,右前輪18,左後輪
24,右後輪26の回転速度データ信号FL,FR,R
L,RRのうち下から(小さい方から)2番目の大きさ
の車輪速データを選択する車輪速選択部216aと、こ
の選択した車輪速データ等から運転者要求車体速を設定
する運転者要求車体速算出部216cとからなってい
る。
【0059】特に、運転者要求車体速算出部216cで
は、車輪速選択部216aで選択した車輪速データをフ
ィルタ216bにかけて雑音成分を除去して得られる車
輪速データSVWと、前後加速度センサ36で検出され
た前後加速度をフィルタ216dにかけて雑音成分を除
去して得られる前後加速度データGxとに基づいて、ス
リップ前のある時点における両データSVW,Gxか
ら、スリップ中の車速を推定できるようになっている。
つまり、ある時点の車輪速データSVWをV2,前後加
速度データGxをaとすると、この時点よりも時間tだ
け後の理論上の車体速Vrefは、Vref=V2+a
tで算定できる。
【0060】また、前後加速度データGxに換えて、車
輪速データSVW又は運転者要求車体速Vrefを時間
微分して得られる運転者要求車体加速度V´refを採
用してもよい。
【0061】なお、回転速度データ信号FL,FR,R
L,RRのうち下から2番目の大きさの車輪速データを
採用するのは、各車輪は通常いずれも過回転側にスリッ
プしている場合が多いので本来なら最も低速回転の車輪
速を採用するのが望ましいが、データの信頼性を考慮し
て下から2番目の車輪速を採用しているのである。そし
て、理想回転速度差設定部518では、運転者要求操舵
角演算部212で算出された運転者要求操舵角δref
と、運転者要求車体速演算部216で算出された運転者
要求車体速Vrefとから、図13に示すようなマップ
に対応して、理想回転速度差ΔVhrを設定する。
【0062】つまり、操舵角に関しては、操舵角が大き
いほど左右輪に要求される回転差も大きくなるので、操
舵角データδrefが大きいほど理想回転速度差ΔVh
rの値も大きくなり、例えば、操舵角データδrefが
右旋回方向に大きくなるほど理想回転速度差ΔVhrの
値は正方向に(左側輪の方が速度が大きい方向に)大き
くなり、操舵角データδrefが左旋回方向に大きくな
るほど理想回転速度差ΔVhrの値は負方向に(左側輪
の方が速度が小さい方向に)大きくなる。また、車速に
関しては、低車速時には、車速の増大にしたがって理想
回転速度差ΔVhrの値が増大するが、高速時には、車
速の増大に対する理想回転速度差ΔVhrの値の増大傾
向は小さくなる。即ち、高速時には、左右輪の理想回転
速度差ΔVhrは主として操舵角データδrefに応じ
て決定する。
【0063】このような左右輪の軌道半径差による左右
輪の回転速度差ΔVhrについて、図12を参照して説
明する。なお、図12に示す例は、右旋回の場合であ
り、旋回内側の右輪車輪速(旋回内輪速)をVi、旋回
外側の左輪車輪速(旋回外輪速)をVo、左右輪の中心
部分での車速をV、車両の旋回半径(左右輪の中心部分
での旋回半径)をR、左右輪間隔(トレッド)をLtと
して、ホイールベースをl、前輪中心と重心との間の距
離をlf、後輪中心と重心との間の距離をlr、車両重
量をmとする。そして、車体スリップ角βが充分に小さ
く、cosβ≒1、sinβ≒βとすると、左右輪の回
転速度差ΔVhrは、以下のようにあらわせる。 ΔVhr=Vo−Vi=(Lt/R)・V ・・・(1.1) なお、 R=(1+A・V2)・l/δ ・・・(1.2) ただし、Aはスタビリティファクタであって、フロント
コーナリングパワーをkf,リヤコーナリングパワーを
krとすると、 A=−(m/2l2)・(lf・kf−lr・kr)/(kf・kr)
【0064】上式(1.1)(1.2)に示すように、
車速Vと操舵角δとから、左右輪の理想回転速度差ΔV
hrを算出できる。但し、車速V及び操舵角δとして
は、それぞれ、疑似車体速Vref及び運転者要求舵角
δrefを用いる。
【0065】そして、左右輪実回転速度差検出部500
で検出された左右輪実回転速度差ΔVrdと、左右輪理
想回転速度差設定部510で設定された左右輪理想回転
速度差ΔVhrとは、減算器522で減算(ΔVrd−
ΔVhr)されて、得られた差ΔVr(=ΔVrd−Δ
Vhr)と、左右輪理想回転速度差ΔVhrとが、差動
対応クラッチトルク設定部520にデータとして入力さ
れるようになっている。
【0066】差動対応クラッチトルク設定部520は、
左右輪実回転速度差ΔVrdと左右輪理想回転速度差Δ
Vhrとの差ΔVr(=ΔVrd−ΔVhr)に対応し
て、クラッチトルクTrn´を設定するが、左右輪理想
回転速度差ΔVhrの正負によって場合分けして、クラ
ッチトルクTrn´を設定している。
【0067】(i)ΔVhr≧0のとき、 この場合は、前輪よりも後輪の方の速度を速くしたいの
であり、以下の〜のようにクラッチトルクTrn´
を設定する。
【0068】ΔVrd≧ΔVhrならば、後輪が過回
転してスリップしているので、後輪寄りに大きく配分さ
れたエンジントルクの一部を前輪側へ移すようにして後
輪のスリップを抑制したい。そこで、クラッチトルクT
rn´が差ΔVr(ΔVrd−ΔVhr)の大きさに比
例して高まるように、 Trn´=a×(ΔVrd−ΔVhr)=a×ΔVr ・・・(1.3) と設定する(ただし、aは比例定数)。
【0069】ΔVhr>ΔVrd>0ならば、前輪が
スリップしているので、もしもこの時クラッチトルクT
rn´を高めると前輪側へ配分されるエンジントルクが
増加して前輪のスリップが促進されてしまうことにな
る。このため、差動制限をフリーにして、前輪側へ配分
されるエンジントルクを低減したい。そこで、この場合
には、クラッチトルクTrn´を0に設定して、所謂不
感帯領域を設定する。
【0070】0≧ΔVrdならば、前輪がスリップし
ているので、前輪側へのエンジントルクの配分を増加さ
せて前輪のスリップを低減したい。そこで、クラッチト
ルクTrn´がΔVrdの大きさに比例して高まるよう
に、 Trn´=−a×ΔVrd=−a×(ΔVr+ΔVhr) ・・・(1.4) と設定する(ただし、aは比例定数)。
【0071】このようなTrn´とΔVrとの関係をマ
ップ化すると、図15(a)のようになり、このマップ
によって、差ΔVrと左右輪理想回転速度差ΔVhrと
から差動対応クラッチトルクTrnを求めることができ
る。
【0072】なお、ΔVhr=0の時には、ΔVhr>
ΔVrd>0の不感帯領域はなくなる。
【0073】(ii)ΔVhr<0のとき、 この場合は、後輪よりも前輪の方の速度を速くしたいの
であり、以下の〜のようにクラッチトルクTrn´
を設定する。
【0074】ΔVrd≧0ならば、後輪が過回転して
スリップしているので、後輪寄りに大きく配分されたエ
ンジントルクの一部を前輪側へ移すようにして後輪のス
リップを抑制したい。そこで、クラッチトルクTrn´
がΔVrdの大きさに比例して高まるように、 Trn´=a×ΔVrd=a×(ΔVr+ΔVhr) ・・・(1.5) と設定する(ただし、aは比例定数)。
【0075】0>ΔVrd>ΔVhrならば、後輪が
スリップしているので、もしもこの時クラッチトルクT
rn´を高めると後輪側へ配分されるエンジントルクが
増加して後輪のスリップが促進されてしまうことにな
る。このため、差動制限をフリーにして、後輪側へ配分
されるエンジントルクを低減したい。そこで、この場合
には、クラッチトルクTrn´を0に設定して、所謂不
感帯領域を設定する。
【0076】ΔVhr≧ΔVrdならば、前輪がスリ
ップしているので、前輪側へのエンジントルクの配分を
増加させて前輪のスリップを低減したい。そこで、クラ
ッチトルクTrn´がΔVr(ΔVrd−ΔVhr)の
大きさに比例して高まるように、 Trn´=−a×(ΔVrd−ΔVhr) =−a×ΔVr ・・・(1.6) と設定する(ただし、aは比例定数)。 このようなTrn´とΔVrとの関係をマップ化する
と、図15(b)のようになり、このマップによって、
差ΔVrと左右輪理想回転速度差ΔVhrとから差動対
応クラッチトルクTrn´を求めることができる。
【0077】このようにして、差動対応クラッチトルク
設定部520で、マップ[図15(a),(b)]を参
照してΔVrとΔVhrとから求められた差動対応クラ
ッチトルクTrn´は、図6に示すように、補正部54
6でk3補正され、差動対応クラッチトルクTrnが得
られるようになっている。
【0078】補正部546では、差動対応クラッチトル
クTrn´に後輪トルクゲインk3を乗算することで横
加速度補正を施して、差動対応クラッチトルクTrnを
得るようになっているが、この後輪トルクゲインk
3は、後輪トルクゲイン設定部544で、以下のように
設定される。
【0079】つまり、後輪トルクゲイン設定部544に
は、入力トルク設定手段としての後輪分担トルク演算部
560から演算された入力トルクとしての後輪分担トル
クTreが送られて、図6中のブロック544内に示す
マップから後輪分担トルクTreに応じて後輪トルクゲ
インk3を設定する。
【0080】この後輪トルクゲインk3は、後輪分担ト
ルクTreの大きさに応じて補正する係数であり、差動
対応クラッチトルクTrnにもこの後輪分担トルクTr
eの大きさを加味させて、後輪分担トルクTreが小さ
い場合には、差動対応クラッチトルクTrnも小さくな
るようにして、後輪分担トルクTreの増大に応じて差
動対応クラッチトルクTrnも増大するようにしている
のである。
【0081】なお、後輪分担トルクTreがTre=T
rmとなったところで、後輪トルクゲインk3は一定値
(k3=1)となるが、Trmはダート路での最大加速
走行時を想定した後輪分担トルクで、 Trm=μ[Wr+(h/l)・W・Gx]・Rt ・・・(1.7) ただし、μは路面摩擦係数、hは重心高さ、Gxは車両
の前後加速度、Rtはタイヤ半径である。
【0082】後輪分担トルク比例クラッチトルクTra
は、停止状態からの急発進時などに伝達トルクが大きく
なることが予想される場合に、後輪の初期スリップを防
ぐことができるようするための設定トルクであって、後
輪分担トルクTreから比例トルクTra´を求めてこ
れをk4補正することで得られる。
【0083】このような後輪分担トルク比例クラッチト
ルクTraを求めて、これによりクラッチ414を制御
するために、図1に示すように、後輪分担トルク演算部
560と、比例トルク演算部570と、比例関係調整手
段としてのk4補正部572と、スイッチ574aとが
設けられている。なお、比例トルク演算部570と、k
4補正部572とから差動制限力設定手段が構成され
る。
【0084】後輪分担トルク演算部560は、図7に示
すように、ある瞬間のエンジントルクTeを検出するエ
ンジントルク検出部264と、その時のトルコントルク
比tを検出するトルコントルク比検出部266と、その
時のトランスミッションの減速比ρmを検出するトラン
スミッションの減速比検出部276と、前後加速度Gx
からセンタデフトルク(センタデフクラッチトルク)T
cを得るセンタデフトルク設定部562とから、それぞ
れの情報が送られて、これらのエンジントルクTeとト
ルコントルク比tとトランスミッションの減速比ρmと
センタデフトルクTcとから後輪分担トルクTreを算
出するように構成されている。
【0085】エンジントルク検出部264では、スロッ
トルポジションセンサ38から送られてフィルタ262
aを通じて外乱等により発生するデータの微振動成分を
取り除かれたスロットル開度データθthと、エンジン
回転数センサ170から送られてフィルタ262bを通
じて外乱等により発生するデータの微振動成分を取り除
かれたエンジン回転数データNeとから、例えば図16
に示すようなエンジントルクマップを通じて、その時の
エンジントルクTeを求めるようになっている。
【0086】トルコントルク比検出部266では、エン
ジン回転数センサ170から送られてフィルタ262b
を通じて外乱成分を取り除かれたエンジン回転数データ
Neと、トランスミッション回転数センサ180から送
られてフィルタ262cを通じて外乱成分を取り除かれ
たトランスミッション回転数データNtとから、例えば
図17に示すようなトランスミッショントルク比マップ
を通じて、その時のトランスミッショントルク比tを求
めるようになっている。
【0087】トランスミッションの減速比検出部276
では、シフトポジションセンサ160からの選択シフト
段情報から、シフト段−減速比対応マップ(図示省略)
を参照してトランスミッションの減速比ρmを求めるよ
うになっている。
【0088】センタデフトルク設定部562では、前後
加速度Gxに基づいて次式からセンタデフトルクTcを
演算する。 Tc=(Z/ Zr)・( Rt/ρrd)[(Wf-Wa・Zs/Z)・Gx-h/l・ Wa・ Gx2]・・・(2.1) ただし、Zsはサンギヤの歯数、Zrはリングギヤの歯
数、Wfは前輪分担荷重、Waは車重、ρrdは終減速
比、ZはZs+Zrである。
【0089】後輪分担トルク演算部560では、上述の
ように設定されたエンジントルクTe,トルコントルク
比t,トランスミッションの減速比ρm,センタデフト
ルクTcに基づいて後輪分担トルクTreを演算する
が、この算出は、次の2式による演算結果Tre1,T
re2のうち大きい方の値を採用する。
【0090】Tre1を算出する演算式は次式であり、
これはクラッチ414が滑る場合を想定したトルクの前
後配分式である。 Tre1=(Te・t・ρ1・ρm−Tc)・ρrd・Zr/(Zr+Zs) ・・・(2.2)
【0091】また、Tre2を算出する演算式は次式で
あり、これはクラッチ414が滑らない場合を想定した
式であり、これにより得られる後輪分担トルクTre2
は静止時後輪分担トルクである。 Tre2=(Wr/W)・Te・t・ρ1・ρm・ρrd・・・(2.
【0092】 そして、Tre=MAX(Tre1,Tre2) ・・・(2.) より、後輪分担トルクTreを決定する。
【0093】なお、後輪分担トルクTreとして、上述
のように静止時後輪分担トルクTre2を採用するの
は、Tre1の演算式ではTre1の値が負になる場合が
あり、このような場合等に静止時後輪分担トルクTre
2を採用しているのである。また、この後輪分担トルク
Treに基づくクラッチ制御は発進時を狙っているもの
なので、静止時後輪分担トルクTre2を採用するのは
これに適している。
【0094】比例トルク演算部570では、上述の後輪
分担トルクTreに比例したクラッチトルクTra´を
演算するもので、設定された比例関係[傾斜m(=Tr
a´/Tre)が、例えば0.8]で、TreからTr
a´を算出する。
【0095】比例関係調整手段としてのk4補正部57
2では、このようにして得られたクラッチトルクTra
´に回転差ゲインk4を乗算することで補正(比例関係
調整)が施される。なお、回転差ゲインk4は、図8に
示すように、回転差ゲイン設定部576において以下の
ように設定される。
【0096】つまり、回転差ゲインk4は、タイトコー
ナブレーキ現象を回避しようとするもので、理想回転速
度差設定部510で設定された理想回転速度差ΔVhr
から図14に示すようなマップに従って決定される。こ
のマップにおける回転差ゲインk4は理想回転速度差Δ
Vhrとの関係は、次式であらわせる。 K4=0.9 ×( |ΔVhrmax ||ΔVhr|)/|ΔVhrmax |+0.1 ・・・(2.5) ただし、ΔVhrmax=MAX|ΔVhr(δ=MAX)| また、係数0.9及び定数0.1は、k2の下限を0.
1にするためである。
【0097】このように、理想回転速度差ΔVhrが大
きくなるのに従って直線的に小さくなる回転差ゲインk
4により補正することで、旋回時等に理想回転速度差Δ
Vhrが大きくなった場合に、急発進性能よりも旋回性
能(タイトコーナブレーキ現象を防止できるような性
能)を優先させるように、クラッチトルクTra´が小
さくされるのである。
【0098】また、クラッチトルクTraを得るのに、
理想回転速度差ΔVhrと比例関係をもつようにクラッ
チトルクTraを設定して、この比例係数を後輪分担ト
ルクTreの大きさによって後輪分担トルクTreの大
きさが大きいほど比例係数〔傾斜m´(=Tra/ΔV
hr)〕が大きくなるように変更する比例関係調整手段
を設けるようにしてもよい。
【0099】さらに、クラッチ574aは、判断手段5
74からの信号により、低車速時(この例ではVref
<20km/h)にはONとなって、クラッチトルクTa
をデータとして出力できるようにするが、車速がこれ以
上大きくなる(Vref≧20km/h)とOFFとなっ
て、後輪分担トルク比例クラッチトルクTraのデータ
として値0を出力する。これは、後輪分担トルク比例制
御は、車輪のスリップを防止することで路面への伝達ト
ルクを確保しようとするものであって、後輪分担トルク
比例クラッチトルクTraによると、タイトコーナブレ
ーキング現象を発生させたり、スリップ許容が必要な場
面で他の制御速を排除してしまう場合があり、これらを
回避するために、定車速時のみにこの後輪分担トルク比
例制御を行なうという条件を設けているのである。
【0100】上述の差動対応クラッチトルクTrn,後
輪分担トルク比例クラッチトルクTraの各クラッチト
ルクは、適当なタイミングで繰り返される各制御サイク
ル毎にそれぞれ設定され、最大値選択部580に送られ
る。この最大値選択部580では、各制御サイクル毎
に、クラッチトルクTrn,Traの中から最大のもの
(このクラッチトルクをTr´とする)を選択する。た
だし、スイッチ574aがOFFの場合には、クラッチ
トルクTraとして0が送られるので、最大値選択部5
80では、クラッチトルクTrnを選択するようになっ
ている。
【0101】このようにして選択されたクラッチトルク
Tr´は、図9に示すように、k5補正部584でk5
正を施される。このk5補正は、トラクションコントロ
ールが行なわれている場合にはクラッチトルクTr´を
低減するような補正であり、例えば、トラクションコン
トロール時(ON時)にはk5=0.5、トラクション
コントロールしていない時(OFF時)にはk5=1.
0とされている。
【0102】このようにして補正されて得られたクラッ
チトルクTrは、トルク−電流変換部586に送られ
て、ここで、設定されたクラッチトルクTrが得られる
ようなクラッチ供給電流Iに変換されるようになってい
る。ここでは、マップ(図9中のブロック586内参
照)によって、クラッチトルクTrからクラッチ供給電
流Iを得ている。
【0103】上述のようにして、クラッチ供給電流Iが
得られたら、電流制限部(リミッタ)588で、クラッ
チ供給電流Iが限界値(例えば、3A)を超えたらIが
限界値にホールドされるようになっている。
【0104】このようにリミッタ588を経たクラッチ
供給電流Iの情報は、ピークホルドフィルタ590に取
り込まれるようになっている。このピークホルドフィル
タ590は、電流の急変により制御にハンチングが起こ
らないように、電流の過度な急変を防止する一種のリミ
ッタであり、電流の立上がりに対しては、ある程度高い
限界速度(例えば10.4A/s)を設定し、電流の立
下がりに対しては、やや低い限界速度(例えば5.2A
/s)を設定している。
【0105】そして、電流変化の速度がこのような限界
を超えるようなクラッチ供給電流Iの情報が送られた
ら、この限界速度に応じた制御電流に留められるように
なっている。
【0106】さらに、フィルタ590を通過した制御電
流Iは、スイッチ592aを経て、EMCDコイル42
0に送られるようになっている。なお、スイッチ592
aは、判断手段592からの信号によって、ABS制御
(アンチロックブレーキ制御)が行なわれていれば(O
N状態ならば)OFFとされ、ABS制御が行なわれて
いなければONとされる。つまり、ABS制御が行なわ
れていないことを条件に、制御電流Iの信号が送られる
ようになっている。これは、ABS制御時にはABSを
確実に作用させる必要があり、この時左右輪のトルク配
分状態を制御するのは、ABS制御に干渉したりして好
ましくないためである。
【0107】コイル420では、このようにして送られ
てきた制御電流Iに応じて、磁力を発生して、クラッチ
414の接続状態を調整する。
【0108】この装置は、上述のように構成されている
ので、以下のようにして、差動調整が行なわれる。
【0109】まず、駆動系の全体の動作の流れは、図1
9に示すように、まず、各制御要素をイニシャルセット
して(ステップa1)、舵角中立位置の学習(ステップ
a2)、及びクラッチの予圧学習(ステップa3)を行
ない、続いて、設定されたデューティに応じてクラッチ
28を制御しながら前後輪駆動力配分制御を行ない(ス
テップa4)、さらに、リヤデフの制御を行なう(ステ
ップa5)。
【0110】そして、ステップa7〜a11で、スリッ
プ制御,トレース制御,トルク選択,リタード制御演
算,SCI(Serias Communication Interface)通信制
御といったエンジン出力制御(トラクション制御)を行
なって、トルク配分表示ランプを点灯して(ステップa
12)、ステップa13で故障診断(フェイル・ダイア
グ)を行なう。ステップa14で、所定時間(15mse
c)経過したかどうかを判断して、所定時間(15mse
c)経過したら、ウォッチドッグによる暴走チェックを
行なって(ステップa15)、上述のステップa2へ戻
って、ステップa2〜a13の一連の制御を繰り返す。
【0111】つまり、上述の前後輪駆動力配分制御,リ
ヤデフの制御及びエンジン出力制御が、所定周期(15
msec)で、行なわれるのである。
【0112】このうち、リヤデフの制御(ステップa
5)に関して、図20〜図22のフローチャートを参照
して説明する。
【0113】図20に示すように、まず、車輪速FR,
FL,RR,RL,舵角θ1,θ2,θn,横加速度G
y,前後加速度Gx,スロットル開度θth,エンジン回
転数Ne,トランスミッション回転数Nt,選択シフト
段等の各データを検出して、これらのデータから運転者
要求車速Vref,運転者要求舵角δref等を算出する(ス
テップj1)。
【0114】そして、運転者要求車速Vref,運転者要
求舵角δrefからマップにしたがって左右輪の理想回転
速度差ΔVhrを求め(ステップj2)、このΔVhr
からマップにしたがって回転差ゲインk4を設定する
(ステップj3)。
【0115】さらに、エンジントルクTeとトルコント
ルク比tとトランスミッションの減速比ρmとセンタデ
フトルクTcとから2種類の後輪分担トルクTre1,
Tre2を算出する(ステップj4,j5)。そして、
2種類の後輪分担トルクTre1,Tre2の大きい方
を後輪分担トルクTreとして採用する(ステップj
6)。
【0116】また、後輪分担トルクTreよりマップに
したがって後輪トルクゲインk3を求める(ステップj
7)。そして、左右輪実回転速度差ΔVrdと左右輪理
想回転速度差ΔVhrと後輪トルクゲインk3とから差
動対応クラッチトルクTrnを求める(ステップj
8)。
【0117】この一方、後輪分担トルクTreと回転差
ゲインk4とから、後輪分担トルク比例クラッチトルク
Traを求める(ステップj9)。
【0118】さらに、ステップj10で、これらの各ク
ラッチトルクTrn,Traのうち大きい方を設定クラ
ッチトルクTr´として設定する。
【0119】さらに、ステップj11で、このようにし
て決定したクラッチトルクTr´をエンジン出力状態、
つまりトラクションコントロールしているかどうかによ
ってk5補正して、クラッチトルクTrを得る。
【0120】続いて、このようにして補正されて得られ
たクラッチトルクTrをトルク−電流変換して、クラッ
チ供給電流Iを得て(ステップj12)、クラッチ供給
電流Iが限界値(例えば、3A)を超えているかどうか
を判断して(ステップj13)、Iが限界値を超えてい
たら、Iを限界値にホールドする(ステップj14)。
【0121】このように、リミッタ処理されたクラッチ
供給電流Iは、ピークホルドフィルタ590でフィルタ
処理され(ステップj15)、ABS制御(アンチロッ
クブレーキ制御)が行なわれているかどうかの判断(ス
テップj16)によって、ABS制御が行なわれていれ
ば、クラッチ供給電流Iを0として(ステップj1
7)、R/D制御(リヤデフ制御)つまり、EMCDコ
イル420を通じた差動制限制御を行なう(ステップj
18)。
【0122】上述の差動対応クラッチトルクTrnの算
出は、図21に示すように行なわれる。
【0123】まず、右側車輪速Vrlから左側車輪速V
rrを減算した差ΔVrd(=Vrl−Vrr)を算出
し(ステップk1)、そして、この差(左右輪の実回転
速度差)ΔVrdから、前述のようにして(ステップj
3参照)求めた左右輪の理想回転速度差ΔVhrを減算
して、差ΔVr(=ΔVrd−ΔVhr)を求める(ス
テップk2)。
【0124】そして、ステップk3で、上述の左右輪の
理想回転速度差ΔVhrが、0以上かどうかを判断し
て、ΔVhrが0以上ならステップk4へ、ΔVhrが
0未満ならステップk5へ進む。
【0125】ステップk4に進むと、マップ[図15
(a)参照]を用いてΔVrからクラッチトルクTrn
´を設定する。
【0126】具体的には、ΔVr≧ΔVhrならば、
クラッチトルクTrn´が差ΔVr(=ΔVrd−ΔV
hr)の大きさに比例して高まるように、 Trn´=a×(ΔVrd−ΔVhr)=a×ΔVr と設定する(ただし、aは比例定数)。
【0127】また、ΔVhr>ΔVrd>0ならば、
クラッチトルクTrn´を0に設定して、所謂不感帯領
域を設定する。
【0128】さらに、0≧ΔVrdならば、クラッチ
トルクTrn´がΔVrdの大きさに比例して高まるよ
うに、Trn´=−a×ΔVrd=−a×(ΔVr+ΔVh
r)と設定する(ただし、aは比例定数)。
【0129】なお、ΔVhr=0の時にはΔVhr>Δ
Vrd>0の不感帯領域はなくなる。
【0130】ステップk5に進むと、マップ[図15
(b)参照]を用いてΔVrからクラッチトルクTrn
´を設定する。
【0131】具体的には、ΔVrd≧0ならば、クラ
ッチトルクTrn´がΔVrdの大きさに比例して高ま
るように、 Trn´=a×ΔVrd=a×(ΔVr+ΔVhr) と設定する(ただし、aは比例定数)。
【0132】また、0>ΔVrd>ΔVhrならば、
クラッチトルクTrn´を0に設定して、所謂不感帯領
域を設定する。
【0133】さらに、ΔVhr≧ΔVrdならば、ク
ラッチトルクTrn´がΔVr(ΔVrd−ΔVhr)
の大きさに比例して高まるように、 Trn´=−a×(ΔVrd−ΔVhr)=−a×ΔV
r と設定する(ただし、aは比例定数)。
【0134】このように、ステップk4,k5で、求め
られた差動対応クラッチトルクTrn´は、補正部54
6で横Gゲインk1を積算されることで横加速度対応補
正され(ステップk6)、差動対応クラッチトルクTr
nが得られる。
【0135】このような差動対応クラッチトルクTrn
の設定により、クラッチトルクTrの大きさが適切に設
定され、左右輪の差動が適宜許容されながら、旋回時に
運転者の意志に沿うように車両を挙動させることができ
るようになるのである。
【0136】特に、センサ対応操舵角δhの方向SIG
(δh)と横加速度データGyの方向SIG(Gy)とが
等しくない場合には、運転者要求操舵角を0に設定して
いるので、例えばドライバがカウンタステア等のハンド
ル操作を行なうときなどに、ハンドルの操舵位置と実際
の車両の操舵角(旋回状態)とが異なるようになって
も、不適切なデータが採用させなくなり、制御の性能向
上に寄与する。
【0137】さらに、運転者要求車速Vrefとして、
回転速度データ信号FL,FR,RL,RRのうち下か
ら2番目の大きさの車輪速データを採用しているので、
データの信頼性が確保されている。
【0138】そして、理想回転速度差ΔVhrの設定
が、マップ(図13参照)に示すように、操舵角が大き
いほど大きく、また、低車速時には車速の増大にしたが
って増大するが、高速時には、車速の増大に対して次第
に小さな増大傾向となるように設定されるので、高速時
には後輪がスリップしやすくなり、高速時ほど要求され
る車体の姿勢の応答性が確保される。また、操舵角に関
しては、操舵角が大きいほど前後輪に要求される回転差
も大きくなり、これが適切に許容され、タイトコーナブ
レーキング現象を回避できる利点がある。
【0139】一方、上述の後輪分担トルク比例クラッチ
トルクTraの算出は、図22に示すように行なわれ
る。
【0140】まず、後輪分担トルクTreをこれに比例
するクラッチトルクTra´に変換して(ステップm
1)、回転差ゲインk4によりクラッチトルクTra´
を補正してクラッチトルクTraを得る(ステップm
2)。
【0141】さらに、判断手段574の低車速時(この
例ではVref<20km/h)であるかどうかの判断に
より、低車速時(Vref<20km/h)には上述のス
テップm2で得たクラッチトルクTraを制御信号とす
るが、車速がこれ以上大きいと(Vref≧20km/
h)、後輪分担トルク比例クラッチトルクTraの制御
信号として0を設定する。
【0142】このような後輪分担トルクTreや左右輪
理想回転速度差ΔVhrに比例するような後輪分担トル
ク比例クラッチトルクTraによって、発進時や低速か
らの急加速時などのときに、左右輪の差動を適切に制限
できるようになって、適宜高いトルクを路面に伝達でき
るようになって、発進時や急加速時におけるタイヤのス
リップが防止され、走行安定化や旋回性能の向上などを
同時に達成でき走行性能が向上するとともに、駆動系の
耐久性向上にも寄与する。
【0143】なお、このリヤデフ機構は、4輪駆動車以
外の車両に適用することや、フロントデフに適用するこ
ともできる。
【0144】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明の車両用差
動制限制御装置によれば、車両の左輪側駆動軸と右輪側
駆動軸との差動を選択的に制限可能な差動制限手段と、
上記差動制限手段を制限する制御手段とを備えると共
に、上記左輪側駆動軸の回転速度を検出する左輪側回転
速度検出手段と、上記右輪側駆動軸の回転速度を検出す
る右輪側回転速度検出手段と、上記左輪側回転速度検出
手段及び上記右輪側回転速度検出手段により検出された
各回転速度に基づいて上記左輪側駆動軸と上記右輪側駆
動軸との実回転速度差を算出する実回転速度差算出手段
と、上記車両の旋回に応じて発生すべき上記左輪側駆動
軸と上記右輪側駆動軸との目標回転速度差を設定する目
標回転速度差設定手段とを備え、上記実回転速度差算出
手段で算出された実回転速度差が、上記目標回転速度差
設定手段で設定された目標回転速度差に近づくように、
上記制御手段により上記差動制限手段を制限する車両用
差動制限制御装置において、上記制御手段が、上記実回
転速度差と上記目標回転速度差との差に応じて上記差動
制限手段による差動制限力を作用させると共に、上記実
回転速度差が0よりも大きく上記目標回転速度差よりも
小さい場合には上記差動制限手段による差動制限力を作
用させないように構成されるので、運転者のハンドル操
作が、トルク配分制御に反映されるようになって、運転
者の意志にあったスムースで敏速な旋回が可能となる。
そして、より正確にトルク配分制御を行なえ、タイトコ
ーナブレーキング現象も回避しやすくなる。特に、実回
転速度差が、0よりも大きく目標回転速度差よりも小さ
い場合には差動制限手段による差動制限力を作用させな
い、つまり、差動制限力の値を0に設定する不感帯が設
けられているので、タイトコーナブレーキング現象の回
避はもちろんのこと、車両の挙動を不安定方向へ導くお
それのある差動制限を抑制することができる。すなわ
ち、実回転速度差が、0〜目標回転速度差の間にある状
態を考えると、実回転速度差を目標回転速度差に近づけ
るためには、左右輪の回転速度差を大きくするように制
御しなければならないが、このような状態下で差動制限
を行なおうとすると、左右輪の回転速度差が却って小さ
くなってしまう方向にしか差動制限力が作用しなくな
り、これでは、タイトコーナブレーキング現象を助長
し、タイヤのスリップを促進することになる。また、ア
ンダステア傾向が必要以上に高まってしまう。本装置
は、こういう状況下では、差動制限力を与えないので、
このような不具合を招くことなく、タイトコーナブレー
キング現象の回避や車両の挙動の安定化を促進すること
ができるのである。もちろん、駆動系の耐久性向上にも
寄与する。
【0145】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例としての車両用差動制限制御
装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】本実施例の差動制御装置をそなえた駆動トルク
伝達系の全体構成図である。
【図3】本実施例の左右輪差動としてのリヤディファレ
ンシャルを示す断面図である。
【図4】(a),(b)はいずれも図3のA−A矢視断
面図である。
【図5】本実施例の回転数差対応制御部を示す構成図で
ある。
【図6】本実施例の後輪トルクゲイン補正部を示す構成
図である。
【図7】本実施例の入力トルク対応制御部の一部を示す
構成図である。
【図8】本実施例の入力トルク対応制御部の一部を示す
構成図である。
【図9】本実施例の最大値選択部から制御電流出力部に
至る部分の構成図である。
【図10】本実施例の操舵角検出手段の詳細を示す構成
図である。
【図11】本実施例の車速検出手段の詳細を示す構成図
である。
【図12】本実施例の理想回転数差を説明するための車
輪状態を模式的に示す平面図である。
【図13】本実施例の理想回転数差設定用マップを示す
図である。
【図14】本実施例の回転差ゲイン設定マップを示す図
である。
【図15】(a),(b)はそれぞれ本実施例の差動対
応クラッチトルク設定用マップを示す図である。
【図16】本実施例のエンジントルクマップの例を示す
図である。
【図17】本実施例のトランスミッショントルク比マッ
プの例を示す図である。
【図18】本実施例のセンタデフ入力トルク設定マップ
である。
【図19】本実施例の装置を含んだ車両全体の制御の流
れを示すフローチャートである。
【図20】本実施例のリヤディファレンシャルの制御の
流れを示すフローチャートである。
【図21】本実施例の回転数差対応クラッチトルクの設
定の流れを示すフローチャートである。
【図22】本実施例の入力トルク対応クラッチトルクの
設定の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
2 エンジン 4 トルクコンバータ 6 自動変速機 8 出力軸 10 中間ギヤ(トランスファーアイドラギヤ) 12 センタディファレンシャル(センタデフ) 14 前輪用の差動歯車装置 15 ベベルギヤ機構 15A ベベルギヤ軸 15a ベベルギヤ 16,18 前輪 17L,17R 前輪側車軸 19 減速歯車機構 19a 出力歯車 20 プロペラシャフト 21 ベベルギヤ機構 22 後輪用の差動歯車装置としてのリヤディファレン
シャル(EMCD) 23 差動制限装置 24 左側後輪 26 右側後輪 25L,25R 後輪用車軸 27 前輪用出力軸 27a 中空軸部材 28 差動制限手段としての多板クラッチ 29 後輪用出力軸 30,30a,30b,30c ハンドル角センサ 32 ステアリングホイール 34,34a,34b 横加速度センサ 36 前後加速度センサ 38 スロットルセンサ 39 エンジンキースイッチ 40,42,44,46 車輪速センサ 48 コントローラ 48a リヤデフ制御部 50 アンチロックブレーキ装置 50A ブレーキスイッチ 121 サンギヤ 122 プラネタリピニオン(プラネタリギヤ) 123 リングギヤ 125 プラネットキャリア 160 シフトレバー位置センサ(シフトレンジ検出手
段) 160A 自動変速機のシフトレバー 170 エンジン回転数センサ 180 トランスミッション回転数センサ 202a〜202d フィルタ 212 操舵角検出手段としての運転者要求操舵角演算
部(擬似操舵角演算部) 212a センサ対応操舵角データ設定部 212b 横加速度データ算出部 212c 比較部(比較手段) 212d 運転者要求操舵角設定部(車速データ設定
部) 216 車体速データ検出手段としての運転者要求車体
速演算部(擬似車体速演算部) 216a 車輪速選択部 216c 運転者要求車体速算出部 216d フィルタ 218 理想作動状態設定部としての理想回転速度差設
定部 262a,262b,262c フィルタ 264 エンジントルク検出部 266 トルコントルク比検出部 276 トランスミッションの減速比検出部 401 入力軸 402 ドライブピニオンギヤ 403 クラウン歯車 404 動力伝達用環状部材 405 第1のハウジング 406 第2のハウジング 407 リングギヤ 408 サンギヤ 409 キャリヤ 410a,410b 軸 411a,411b プラネタリギヤ 412 軸受 413 ケース 414 差動制限手段としての多板クラッチ 414a,414b クラッチディスク 415a,145b ホルダ部 416 中空シャフト 417 駆動装置 418 環状支持部材 419 磁石 420 差動制限機構制御手段としてのソレノイド(E
MCDコイル) 421 ボール 423 環状部材 424 溝 425 室 426 第2のハウジング側の部材 427 クラッチ 428 ベアリング 429 力方向変換機構 430 電磁式クラッチ機構(EMCD) 431 ボルト 500 実回転速度差検出手段としての左右輪実回転速
度差検出部 506 左右輪実回転速度差算出部 510 理想回転速度差設定手段(目標回転速度差設定
手段)としての左右輪理想回転速度差設定部 518 理想作動状態設定部としての理想回転速度差設
定部 520 差動対応クラッチトルク設定部(差動制限力設
定手段) 522 減算器 546 補正部(k3補正部) 544 後輪トルクゲイン設定部 560 後輪分担トルク演算部 562 センタデフトルク設定部 570 比例トルク演算部(差動制限力設定手段の一
部) 572 比例関係調整手段としてのk4補正部(差動制
限力設定手段の一部) 574 判断部 574a スイッチ 576 回転差ゲイン設定部 580 最大値選択部 584 k5補正部 586 トルク−電流変換部 588 電流制限部(リミッタ) 590 ピークホルドフィルタ 592 判断手段 592a スイッチ
フロントページの続き (72)発明者 伊藤 善仁 東京都港区芝五丁目33番8号 三菱自動 車工業株式会社内 (56)参考文献 特開 平1−275225(JP,A)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 車両の左輪側駆動軸と右輪側駆動軸との
    差動を選択的に制限可能な差動制限手段と、 上記差動制限手段を制限する制御手段とを備えると共
    に、 上記左輪側駆動軸の回転速度を検出する左輪側回転速度
    検出手段と、 上記右輪側駆動軸の回転速度を検出する右輪側回転速度
    検出手段と、 上記左輪側回転速度検出手段及び上記右輪側回転速度検
    出手段により検出された各回転速度に基づいて上記左輪
    側駆動軸と上記右輪側駆動軸との実回転速度差を算出す
    る実回転速度差算出手段と、 上記車両の旋回に応じて発生すべき上記左輪側駆動軸と
    上記右輪側駆動軸との目標回転速度差を設定する目標回
    転速度差設定手段とを備え、 上記実回転速度差算出手段で算出された実回転速度差
    が、上記目標回転速度差設定手段で設定された目標回転
    速度差に近づくように、上記制御手段により上記差動制
    限手段を制限する車両用差動制限制御装置において、 上記制御手段が、 上記実回転速度差と上記目標回転速度差との差に応じて
    上記差動制限手段による差動制限力を作用させると共
    に、 上記実回転速度差が0よりも大きく上記目標回転速度差
    よりも小さい場合には上記差動制限手段による差動制限
    力を作用させないように構成されていることを特徴とす
    る、車両用差動制限制御装置。
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US11618521B2 (en) * 2020-07-09 2023-04-04 Zhejiang CFMOTO Power Co., Ltd. Quick connect and disconnect latch mechanism for mounting accessories on offroad vehicles

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