JP2717553B2 - フタロシアニン化合物およびラングミュア・ブロジェット膜 - Google Patents

フタロシアニン化合物およびラングミュア・ブロジェット膜

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JP2717553B2 JP20919588A JP20919588A JP2717553B2 JP 2717553 B2 JP2717553 B2 JP 2717553B2 JP 20919588 A JP20919588 A JP 20919588A JP 20919588 A JP20919588 A JP 20919588A JP 2717553 B2 JP2717553 B2 JP 2717553B2
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Description

【発明の詳細な説明】 <産業上の利用分野> 本発明は新規なフタロシアニン化合物およびそれを含
むラングミュア・ブロジェット膜に関する。
<従来の技術> 金属フタロシアニンは、生体中で光合成や酸素輸送な
どの機能を有するクロロフィルやヘモグロビンと類似構
造の分子であり、化学的、物理的、熱的に安定な上、各
種触媒作用やガス輸送などの多彩な機能がある。
また、金属フタロシアニンは、大きなπ電子共役系の
中に金属イオンが存在するため、電子伝導、光伝導、セ
ンサー、表示素子、電池などへの応用が期待され、種々
研究が行われている。
さらには、可視−近赤外に広い吸収帯をもっているこ
となどから光記録材料への興味も持たれている。
そして、これらを薄膜化し規則的な配向をもつ分子集
合体を形成することによって、さらに高度な機能の発現
が期待される。
このような薄膜の形成法として、近年、ラングミュア
・ブロジェット(LB)法が注目され、電界効果型トラン
ジスター、表示素子、光電変換素子、非線形光学素子、
二次元磁性体、生物物理化学などの分野において、安定
した分子配向膜が得られている。
このようなLB法によって得られる膜をラングミュア・
ブロジェット(LB)膜という。
このLB膜の形成に際しては、有機溶媒に対する溶解性
が要求される。
しかし、無置換のフタロシアニンは、低溶解性、結晶
多形のためLB膜の形成は困難とされている。
またLB膜は累積後の処理により成膜分子の分子配向を
変化させることなく重合させて重合LB膜を形成すると、
膜の機械的強度、堅牢性が向上し、優れた機能性膜が実
現する。
従って、このような点での処理性、機械的強度、耐熱
性、耐食性等の特質も必要である。
本発明は、高機能材料としての用途が期待され、ラン
グミュア・ブロジェット膜の形成が可能で、光による会
合体形成が可能な新規なフタロシアニン化合物およびそ
れにより形成されたラングミュア・ブロジェット膜を提
供することを目的としている。
<課題を解決するための手段> 上記目的を達成するために、本発明のフタロシアニン
化合物は、少なくとも1個以上の (ただし、R1はアルキレン基を、R2はアルキル基を表わ
す。)で示される基を有するものである。
また、本発明のラングミュア・ブロジェット膜はフタ
ロシアニン化合物を含むものである。
以下、本発明の具体的構成について詳細に説明する。
本発明のフタロシアニン化合物は、下記式(I)で示
されるものである。
式(I) 上記式(I)において、Pcはフタロシアニンの1価以
上の残基を表わし、 で示される基(以下、ジアセチレン基という。)はフタ
ロシアニン環を形成するベンゼン環に結合するものであ
る。
この場合、ジアセチレン基は、フタロシアニンのベン
ゼン環の任意の位置に結合するが、通常は3−位ないし
4−位に結合するものである。
従って、ジアセチレン基の結合位置は、n=2では、
3,3′−、3,4′−、3,3″−、3,4″−、4,4′−であ
り、これら異性体の混合物である。
また、n=4では、3,3′,3″,3−、4,4′,4″,4
−を主とし、n=8では、3,4,3′,4′,3″,4″,3,4
−を主とする。
さらに、フタロシアニンの中心原子には、特に制限は
なく、Fe、Cu、Co、Niなどの他、V、Pb、Si、Ge、Sn、
Al、Ru、Ti、Zn、Mg、Mn、VO等の他、H2も可能である。
ただ、これらのうちでは、Fe、Co、NiまたはCuが好適
である。
nは、1〜8の正の整数を表わし、特に4であること
が好ましい。
で示されるジアセチレン基について説明する。
ここに、R1は置換もしくは無置換のアルキレン基を表
わすが、無置換のものが好ましい。
R1は炭素数1〜10、特に1〜5であることが好まし
く、直鎖でも分岐でもよい。
具体的には、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチ
レン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレ
ン、オクタメチレン等が挙げられ、これらのうち、特に
メチレンが好ましい。
また、R2は、置換もしくは無置換のアルキル基を表わ
すが、無置換のものが好ましい。
R2は、炭素数9〜18、特に10〜16であることが好まし
く、直鎖でも分岐でもよいが、直鎖のものが好ましい。
具体的には、n−ドデシル、n−トリデシル、n−ブ
タデシル、n−ペンタデシル、n−ヘキサデシル等が挙
げられる。
本発明のフタロシアニン化合物は、以下のようなスキ
ームに従って合成する。
出発原料である酸塩化物〔化合物(1)〕は、文献
〔H.Shirai,A.Maruyama,K.Kobayashi,N.Hojo,Macromol.
Chem.,181,575(1980)〕に従って合成する。
また、ジアセチレンアルコール〔化合物(2)〕は、
以下のように合成する。
文献〔W.Beckmann et al.,Synthesis 1975,423,T.H.V
aughm,J.Am.Chem.Soc.55,3456,(1935)等〕に従い合成
した1−アルキル−2−ヨードアセチレンR2−C≡CI
(例えば、1−ドデシル−2−ヨードアセチレン等)
を、あらかじめメタノールに溶解したアセチレン誘導体
CH≡C−R1−OH(例えば、プロパルギルアルコール、3
−ブチン−1−オール等)、塩化銅およびエチルアミン
の混合溶液中に加え、撹拌する。溶液を酸性にし、エー
テルで抽出を行なった後、濾過により不純物を取り除
き、溶媒をエバポレーションして目的のアルコールを得
る。
上記のようにして合成した酸塩化物〔化合物(1)〕
とジアセチレンアルコール〔化合物(2)〕とから目的
物を得る。
具体的には、酸塩化物とジアセチレンアルコールとを
ベンゼン等の有機溶媒中で反応させてエステル化を行
う。この場合反応温度は10〜90℃程度、反応時間は12〜
48時間程度とする。また反応は還流させながら行う。
反応終了後、n−ヘキサン等により未反応物を除去
し、カラムクロマトグラフィや再結晶などを行って精製
し、目的物を得る。
このときの収率は45〜55%程度である。
このようにして得られる前記式(I)で示される化合
物は、元素分析、赤外吸収スペクトル、電子スペクト
ル、熱分解温度等により同定する。
赤外吸収スペクトルは、KBr錠剤法によって測定し、
νc≡c 2250cm-1付近、νc=o 1730cm-1付近、ν
CH2 2950cm-1付近等に特性吸収が得られる。
熱分解温度は、240〜300℃程度である。
電子スペクトルには、630〜690nm、580〜630nm、310
〜340nm、250〜290nm等の吸収極大が得られる。
本発明のフタロシアニン化合物は、それ自身エネルギ
ー変換材料、電気化学的触媒、光電変換素子などの高機
能材料としての用途が期待されるばかりでなく、次に述
べるラングミュア・ブロジェット(LB)膜を形成させる
際の材料とすることもできる。
本発明のフタロシアニン化合物は、LB膜を形成する際
要求される有機溶媒(クロロホルム、ベンゼン等)に対
する溶解性も十分である。
LB膜は、垂直浸漬法、水平付着法のいずれの方法でも
形成することができる。
垂直浸漬法を適用する場合は所定の公知の方法に従
う。この場合水相の温度は5〜25℃程度とし、表面圧は
15〜25mN/m程度とする。
また、水平付着法を適用する場合も所定の公知の方法
に従う。この場合水相の温度は5〜25℃程度とし、表面
圧は15〜25mN/m程度とする。
単分子膜の極限面積は、90〜100Åである。
垂直浸漬法を適用して形成したLB膜は、偏光電子スペ
クトルの結果および膜厚測定の結果などから、基板上に
垂直というよりはわずかに傾いており、浸漬方向に対し
てフタロシアニン環が平行に配向していることが示唆さ
れる。
本発明のLB膜は、マトリックス剤を含有していてもよ
い。
また、本発明のLB膜は、電界効果型トランジスタ、光
電変換素子等の機能性材料として使用可能である。
さらに、本発明のLB膜は、光を照射することによって
会合体を形成することが可能となり、堅牢性、耐久性等
の点で優れた特性が得られる。
光照射に際しては、紫外線を用いることが好ましく、
光源としては水源ランプ、Xeランプ、紫外線ランプ等を
用いればよい。
会合体の形成は、電子線スペクトルの測定により確認
され、会合体の形成開始とともに685nm付近の吸収が消
失し、620nm付近の吸収が増大する。
また、界面にて会合して薄膜化することも可能であ
る。
<実施例> 以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。
実施例1 (1−1)本文記載のスキーム中の酸塩化物である化合
物(1)〔中心金属=Fe(III),Co(II),Ni(II),Cu
(II)〕は、文献〔H.Shirai,A.Maruyama,K.Kobayashi,
N.Hojo,Macromol.Chem.,181,575(1980)〕に従って合
成した。
ヘプタデカ−2,4−ジイン−1−オール−は、文献
〔W.Beckmann et al.,Synthesis 1975,423,T.H.Vaughm,
J.Am.Chem.Soc.55,3456,(1935)等〕に従い合成した1
−ドデシル−2−ヨードアセチレン(1×10-1mol、5.6
1g)を、あらかじめメタノール(50ml)に溶解した等モ
ルのプロパギルアルコールならびに、塩酸ヒドロキシア
ミン(6.55×10-3mol、0.46g)塩化銅(2.27×10-3mo
l、2.25g)およびエチルアミン(2.82×10-1mol、12.72
g)の混合溶液中に加え撹拌した。
次に、この溶液に塩酸(20ml)を加えて酸性にし、エ
ーテルで抽出を行なった後、濾過により不純物を取り除
き、溶媒をエバポレーションして、目的とするヘプタデ
カ−2,4−ジイン−1−オール(8.99g、3×10-2mol)
を得た。収率は31%であった。
(1−2)〔テトラキス(2,4−ヘプタデカジイニル−
2もしくは3−カルボキシラト)フタロシアニナト〕Fe
(III)の合成 化合物(2)〔中心金属Fe(III)〕0.5g(5.66×10
-4モル)に精製ベンゼン40mlに溶かしたヘプタデカ−2,
4−ジイン−1−オール1.12g(4.52×10-3モル)を滴下
した。温度90℃で還流させながら48時間撹拌しエステル
化を行った。反応終了後、n−ヘキサンを加えた後冷却
させ、未反応のヘプタデカ−2,4−ジイン−1−オール
を濾別して除いた。これをクロロホルムを展開溶媒とし
てカラムクロマトグラフィで精製後、アセトンでもう一
回展開した。
n−ヘキサンより再結晶し、淡緑色の生成物を得た
(収率51%)。
この化合物について、元素分析、熱分解温度、IRスペ
クトル(KBr錠剤法)、電子スペクトル(クロロホルム
中)を測定し、これらにより同定した。
元素分析 C H N Fe 分析値(%) 75.30 7.06 6.01 4.01 計算値(%) 75.84 7.02 6.52 2.95 熱分解温度 252.348℃ IRスペクトル νc≡c 2237cm-1 νc=o 1723cm-1 νc=c 1615cm-1 電子スペクトル λmax nm(logε) 637(4.47)、 580sh(4.42)、 335(4.51) (1−3)〔テトラキス(2,4−ヘプタデカジニイル−
2もしくは3−カルボキシラト)フタロシアニナト〕Co
(II)の合成 上記(1−2)と同様に合成を行い未反応物を除いた
後、展開溶媒としてクロロホルム、ベンゼン:エタノー
ル=10:1を用いたカラムクロマトグラフィを使い精製
後、クロロホルム/石油エーテルの混合溶媒(1/10)か
ら再結晶し、濃紺の固体を得た(収率43%)。
元素分析 C H N Co 分析値(%) 69.63 7.27 6.94 8.49 計算値(%) 74.84 7.25 6.71 3.53 熱分解温度 281.371℃ IRスペクトル(KBr錠剤法) νc≡c 2240cm-1 νc=o 1719cm-1 νc=c 1610cm-1 電子スペクトル(クロロホルム中) λmax nm(logε) 680(4.60)、620(4.46)、 327(4.50)、285(4.65) (1−4)〔テトラキス(2,4−ヘプタデカジニイル−
2もしくは3−カルボキシラト)フタロシアニナト〕Ni
(II)の合成 上記(1−2)と同様に合成を行い、n−ヘキサンを
加え未反応物を十分取り除いた後、クロロホルム/アセ
トンで再沈を行い収率41%で深緑色の固体を得た。
元素分析 C H N Ni 分析値(%) 74.01 7.11 6.91 4.30 理論値(%) 75.10 7.05 6.95 3.28 熱分解温度 251.382℃ IRスペクトル(KBr錠剤法) νc≡c 2240cm-1 νc=o 1730cm-1 νc=c 1620cm-1 電子スペクトル λmax nm(logε) 665(4.29)、610(4.56)、 320(4.42)、271(4.79) (1−5)〔テトラキス(2,4−ヘプタデカジニイル−
2もしくは3−カルボキシラト)フタロシアニナト〕Cu
(II)の合成 上記(1−2)と同様に合成を行い、n−ヘキサンを
加え未反応物除去の操作を数回繰り返し、クロロホルム
/アセトニトリルで再沈を行った(収率40%)。
元素分析 C H N Cu 分析値(%) 68.80 7.40 6.94 9.19 理論値(%) 75.22 7.12 6.68 3.31 熱分解温度 249.371℃ IRスペクトル νc≡c 2235cm-1 νc=o 1715cm-1 νc=c 1612cm-1 電子スペクトル λmax nm(logε) 677(4.23)、602(4.62)、 333(4.64)、260(4.66) 上記のうち、Co(II)化合物について、ジメチルホル
ムアミド(DMF)、ベンゼン、クロロホルムと溶媒をか
えてスペクトルを測定した。この結果を第1図に示す。
これらの電子スペクトルを比較すると、600〜700nmの
可視領域には中心金属に配位している窒素中心のπ−π
*に基づくQバンドの吸収が現れている。ここにある二
つの吸収はフタロシアニン環に特徴的な単量体二量体
の平衡の存在によるものである。一般的にπ−π*遷移
のλmax値は、溶媒の極性の増加にともない長波長へシ
フトするが、この場合は溶媒に対するCo(II)化合物の
溶解性の差が平衡のずれを生じさせていると考えられ
る。
クロロホルムとベンゼン中では単量体と二量体がほぼ
平衡状態に存在しているが、DMF中では金属間相互作用
が弱められ、また置換基であるジアセトンセグメントが
立体障害となり二量体が進みにくくなっているというこ
となどを考えると相対的に単量体が高い濃度を示してい
ることが説明できる。
また、金属の違いによって、各種溶媒に対して溶解性
の違いができたことについては、金属間の会合力の差で
あると考えられる。
単分子膜の形成 副相の2回蒸留水上に1×10-4Mのクロロホルム溶液
から、マイクロピペットを用いて一定量展開した。
水面上で10分間滞留させた後、表面圧−面積曲線を測
定した。
この測定に際しては、Lauda Langmuir Film Barance
FW1型と協和界面科学表面膜圧力計HBM−AP型を用いた。
Co(II)化合物について副相の温度を5、10、25℃と
設定して表面圧−面積曲線を測定した結果を第2図に示
す。極限面積が約90Åという値になっているが、CPK
モデルなどからその配向状態を推測すると、約78゜傾い
ていると考えられる。この点については温度の違いによ
る極端な差はなく、予想どうり高温の方がその極限面積
が大きくなっていることから、フタロシアニン環がさら
に傾いていると予想される。これは極低温の5℃では、
展開した時点で会合体やドメインを形成しやすいのに対
して、高温では分子が割と単一に存在しているため分子
間同志の凝集力が弱いせいではないかと考えられる。
展開溶媒としては、フタロシアニン誘導体の凝集力に
よる単分子膜状態への影響があり、これを防止するには
溶媒をクロロホルム、ベンゼンとする必要がある。ただ
し、ベンゼン溶液中では、見た目にはクロロホルム溶液
と変わらず均一な状態を保っているが、放置後のスペク
トルを見ると二量体に基づく620nm付近の吸収が幾分増
大しており、溶液中で会合体形成が起きていると考え
た。これらのことから一番安定なクロロホルムを溶媒と
して選択した。
またクロロホルムを用いても展開する量により、水面
滞留時間を長くすると表面圧−面積曲線の再現性が取り
にくくなるという現象がみられた。これは、長時間放置
しておくと分子−分子間の何らかの相互作用で水面上で
凝集が起こり、そのためドメインを作りやすいと考えら
れる。そこで圧縮を開始するとフタロシアニンのような
大きな環状化合物は、横方向の空隙を埋めるというだけ
でなく、重なりあいが起こり不均一な単分子膜となり、
再現性に乏しい結果を招くと思われる。そしてこのこと
にはもう一つの重要なファクターである圧縮速度も大い
に関係している。より良い機能を発現させるためには、
作成条件によって膜の性質が大きく左右されるというLB
膜そのもののキャラクタリゼーションにまず力を注ぐべ
きである。そこでこの研究における圧縮速度の問題につ
いて述べるが、本実験では速い圧縮をすると、分子が最
密充填していないと予想させるようにその極限面積が大
きくなった。これは狭い面積領域における過圧縮の状態
を招いていると考えられ、このような状態で累積した時
には、膜内で等方的なランダム配向を示すと考えられ
る。
以上のことをまとめると、再現性のある表面圧−面積
曲線を測定するためには、溶液中での凝集を防ぐ意味で
濃度の薄いクロロホルム溶液を使い、水面上の広範囲な
領域に慎重に展開し、ゆっくりとした速度で圧縮する必
要があることがわかった。
累積膜の形成 本発明のフタロシアニン化合物は垂直浸漬法、水平付
着法のいずれも適用可能であり、具体的には公知の所定
の方法に従う。
表面圧の違いによる累積過程をCo(II)化合物につい
て第3図に示す。
15mN/mにおける累積比は約0.97であり、25mN/mにおけ
るそれは約0.98となり表面圧の違いによる差はほとんど
なく良好な累積が行なわれていることがわかった。
赤外吸収スペクトルの測定 硫酸と純水による親水処理およびステアリン酸鉄によ
る疎水処理を行なったフッ化カルシウム板に設定圧力1
5、20、25mN/mにおいて垂直浸漬法を用い、40層累積し
たものについて測定した。
Co(II)フタロシアニン化合物の場合を第4図に示
す。比較のため、化合物そのもののKBr錠剤法による測
定も併せて示す。
2950cm-1のアルキル鎖の吸収と1620cm-1のフタロシア
ニン環に基づく吸収に注目すると、その相対強度からフ
タロシアニン環が立っていることがうかがえる。
上記と同様の処理をしたフッ化カルシウム板に垂直浸
漬法を用いて40層累積したLB膜の電子スペクトルを第5
図に示す。併せて溶液の電子スペクトルも示す。
先に示したのと同様フタロシアニン環のπ−π*遷移
に基づく単量体、二量体と帰属されるピークが600〜700
nmに見られるが、溶液と比べて、LB膜にするとそれぞれ
15および5nm長波長シフトしているのがわかる。これは
双極子間の相互作用によるものでKashaの理論を用いる
と、そのシフトの度合からしてフタロシアニン環がやや
傾いていると考えられる。
次に上記のLB膜の偏光電子スペクトルについて第6図
に示す。
累積方向に対する対向性について検討するため、入射
光路に対して基板の角度を垂直に固定し、さらに偏光面
を回転させて平行および垂直偏光により電子スペクトル
を測定した。他にもここには示していないが偏光赤外吸
収スペクトルなどの測定を行ない、それら種々の分光学
的測定結果から予想した分子配向を第7図に示す。
膜厚測定の結果はエリプソメトリーだけでなく、膜の
断面を撮影した透過型電子顕微鏡(TEM)写真からも算
出した。結果は23ÅとなりCPKモデルから予想した値よ
り小さく、置換基であるジアセチレンセグメントが同一
平面に存在していないことも考えられる。
なお、エリプソメトリーによる膜厚の測定は、ITO基
板上に垂直浸漬法で10〜80層累積したものについて行っ
た。
次に接触角を測定した。接触角の測定はフッ化カルシ
ウム板およびITO基板上に垂直浸漬法を用いて10〜40層
累積したものについて行なった。
この結果、接触角は106゜となり、かなり疎水性が強
くなっているのがわかる。このことはアルキル鎖が垂直
方向にまっすぐ伸び、表面を覆っているためと考えられ
る。
以下、すべてCo(II)フタロシアニン化合物について
のものである。
累積膜への光照射 表面圧25mN/mにおいて垂直浸漬法を用いて親水処理し
たカバーガラスへ40層累積した試料を使い、照射後の電
子スペクトル変化を測定した結果を第8図に示す。照射
後10分を過ぎた当りから単量体に帰属される685nm付近
の吸収が減少し始め、それが15分となるとその速度は顕
著に速くなり、変わって二量体に帰属される620nmの吸
収が増大しはじめていくことがわかった。25分を過ぎる
とスペクトルが一定となり、これ以上照射を続けても反
応は進行しないことがわかった。この結果より、膜面内
にほぼ同じ割合で存在していたと思われる単量体と二量
体も光照射により、二量体の割合がかなり大きくなった
ことがわかった。これは第9図に示すように光照射によ
る会合体形成ということで説明できる。なお、この点に
ついて層数の違いによる影響を10〜80層の試料を用いて
試したが、さほど変化はなかった。
会合体形成についての検討 まず形成条件を光から熱に変えて行った結果を第10図
に示す。
今後用いる試料は比較のため、親水処理したカバーガ
ラスに40層累積したものとした。光照射と同じ様な吸収
ピークの形を示してはいるが、第10図にも示してあるよ
うにタイムスケールが大幅に異っており、光照射時にみ
られたような反応の終点まで10時間を要している。また
温度の影響を調べるために、55〜100℃の範囲で試みて
みたが、高温の方がわずかに速いという結果となった。
それ以上反応が進行していないことは、30時間後の吸収
ピークが同一であったということから確認した。
次にヨウ素処理を行い、前述のように光照射を実施し
た。
ヨウ素処理としては、二次処理である気相によるドー
ピングあるいはトラフ内にヨウ素を含ませておき、単分
子膜の中に取り込ませながら累積していくという方法を
採った。
まず、ヨウ素ドーピングの結果を第11図に示す。
この結果から、その会合体形成能力は今までのどの条
件よりも速く、またスペクトルの形態から二量体形成の
率が多くなっているのがわかった。照射後10分のスペク
トルが反応終点であることは前述したのと同様に確認し
た。さらにスペクトルにおいて何も処理していないLB膜
の結果(第12図)と比較するとヨウ素ドープにより5〜
7nm長波長シフトしているのがわかり、そこへ照射する
とまた元の波長に戻るという現象が観察された。長波長
シフトしていることについて、Kashaの励起子モデルに
基づく理論を当てはめて解釈した結果を模式化したもの
が第13図である。この結果よりヨウ素ドープした後に3
分間光照射して得られたスペクトルの結果に、ヨウ素の
処理無しで光照射した結果が重なるには、照射時間にし
て25分を要することがわかった。これらの結果からヨウ
素のドープにより、会合体形成にとって最適な環境にフ
タロシアニン環が配列されたと考えられる。補足とし
て、さらに会合体形成率を上げようと、この試料に改め
てヨウ素をドープし、その後光照射を行ったが、スペク
トルにはほとんど変化がみられなかった。これは、膜面
内の分子が、最初の光照射における会合体形成により、
それ以上動く空隙を失ったためと考えられる。
次に、もう一つの条件として用いた、単分子膜内にヨ
ウ素を含ませてやる方法を適用した場合についてその結
果を第14図に示す。それによると反応終点までには2時
間を要した。また今まで示してきた各条件における結果
のように、このスペクトルから会合体形成が起こってい
ることが確認される。
さらに、比較として溶液中における光照射後の電子ス
ペクトルの結果を第15図に示す。
それによるとLB膜の時とは全く異なり、会合体を形成
していたものまでむしろ分離させられていくかのように
モノマーの吸収帯が増大し、ダイマーの吸収が減少して
いくという全く反対のような結果となった。またモノマ
ーのピークにレッドシフトが見られた。さらに照射10時
間を過ぎるとジアセチレン重合体に特徴的な赤膜に帰属
される520nmの吸収が増大していくのが観察された。こ
れにより、はじめ濃紺色を呈していた溶液の色も赤緑色
に変わっていくという現象が観察された。以上のことよ
り溶液中に光照射すると、フタロシアニン環がジアセチ
レン基の重合にふさわしい距離に位置され、その距離と
いうのはフタロシアニン環が重なり合っているような状
態では存在せず、一分子一分子がある距離を持っている
と考えると、二量体に基づく吸収がほとんど消え、変わ
って単量体の吸収が極端に増大するという結果の説明が
つく。これは剛直なジアセチレン基が会合体形成に対し
て立体障害となっていると考えられ、この状態をLB膜中
として模式化し、第16図に示す。
LB膜の実験と同じように、この過程における時間短縮
のため、ある程度配列している水面上単分子膜における
光照射を試みた。その結果を第17図に示す。これは各表
面圧において、水面上で2時間光照射した後、垂直浸せ
き法を用いて累積したLB膜の電子スペクトルである。予
想した通り到達時間は約1/3位になり、また設定の表面
圧の違いによる差が生じた。これについては表面圧が低
いほど単量体のみの状態になっていくのが速いというこ
とがわかり、分子充填による影響を反映していることが
わかった。
〔発明の効果〕
本発明のフタロシアニン化合物は、新規な化合物であ
り、紫外線レジスト材、光硬化型半導体等の高機能材料
としての用途が可能となる。
そして、この化合物はラングミュア・ブロジェット膜
を形成することができる。
このようなラングミュア・ブロジェット膜は、さらに
高度の機能の発現が可能となり、光変換素子、情報変換
素子等の高機能材料となる。
また、累積後のラングミュア・ブロジェット膜に光照
射することにより会合体形成が可能となり、堅牢性を高
め、かつ耐久性に優れた高機能材料とすることができ
る。
【図面の簡単な説明】 第1図は、本発明のフタロシアニン化合物の電子スペク
トルを示すグラフである。 第2図は、表面圧−面積曲線を示すグラフである。 第3図は、表面圧の違いによる累積過程を示すグラフで
ある。 第4図は、IRスペクトルを示すグラフである。 第5図は、LB膜および溶液中での電子スペクトルを示す
グラフである。 第6図は、LB膜の偏光電子スペクトルを示すグラフであ
る。 第7図は、LB膜における分子配向を模式的に示す図であ
る。 第8図は、LB膜の光照射後の電子スペクトル変化を示す
グラフである。 第9図は、LB膜における光照射による会合体形成を模式
的に示す図である。 第10図は、LB膜の熱による電子スペクトルの変化を示す
グラフである。 第11図は、LB膜の光照射による電子スペクトルの変化を
示すグラフである。 第12図は、LB膜についてI2をドープしないときとの電子
スペクトルを示すグラフである。 第13図は、Kashaの励起子モデルに基づく理論を当ては
めて解釈した結果を模式的に示す図である。 第14図は、単分子膜内にヨウ素を含ませてやる方法を適
用した場合の電子スペクトルを示すグラフである。 第15図は、溶液中における光照射後の電子スペクトルの
結果を示すグラフである。 第16図は、LB膜中におけるジアセチレン重合体を模式的
に示す図である。 第17図は、異なる表面圧において単分子膜に光照射した
ときの電子スペクトルの変化を示すグラフである。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】少なくとも1個以上の (ただし、R1はアルキレン基を、R2はアルキル基を表わ
    す。)で示される基を有することを特徴とするフタロシ
    アニン化合物。
  2. 【請求項2】請求項1に記載のフタロシアニン化合物を
    含むラングミュア・ブロジェット膜。
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