JP2714621B2 - 創傷治療剤 - Google Patents

創傷治療剤

Info

Publication number
JP2714621B2
JP2714621B2 JP3157747A JP15774791A JP2714621B2 JP 2714621 B2 JP2714621 B2 JP 2714621B2 JP 3157747 A JP3157747 A JP 3157747A JP 15774791 A JP15774791 A JP 15774791A JP 2714621 B2 JP2714621 B2 JP 2714621B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
chitin
wound
chitosan
cotton
agent
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Lifetime
Application number
JP3157747A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH0592925A (ja
Inventor
重政  好弘
清一 戸倉
皓 松橋
三郎 南
寿門 太田
Original Assignee
サンファイブ 株式会社
鳥取大学長
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by サンファイブ 株式会社, 鳥取大学長 filed Critical サンファイブ 株式会社
Priority to JP3157747A priority Critical patent/JP2714621B2/ja
Publication of JPH0592925A publication Critical patent/JPH0592925A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP2714621B2 publication Critical patent/JP2714621B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Lifetime legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Medicinal Preparation (AREA)
  • Pharmaceuticals Containing Other Organic And Inorganic Compounds (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、キチン、キトサンな
どを原料として得られ、創面の保護、組織欠損部及び死
腔への充填と併せて鎮痛効果も備え、散布剤と充填剤の
両性質を具備する創傷治療剤に関する。
【0002】
【従来の技術】キチン、キトサンに限らず、創傷治癒促
進を目的として種々の治療剤が開発されているが、熱
傷、植皮のための採皮部、植皮部など、皮膚欠損傷に対
しても創傷被覆保護剤として多くの材料が提案され、且
つ、商品化されている。創傷被覆保護剤は、主に合成物
からなるものと、天然物からなるものに分類される。合
成物からなるものとしては、ナイロン繊維やポリエステ
ル繊維からなるビロード風合いのシート、織物、ポリウ
レタン多孔体シート、架橋ポリビニルアルコール多孔体
シート等があり、天然物からなるものとしては、コラー
ゲン不織布(例えば商品名メイパック、明治製薬社
製)、凍結豚皮(商品名メタスキン、三井製薬社製)、
フィブリン膜等がある。
【0003】最近、生体への親和性がよいことから、天
然物由来のバイオロジカルドレッシングが注目されてお
り、皮膚欠損傷の保護剤として使用されている。しか
し、これらの製剤は損傷被覆保護剤としての機能を完全
に果たし得るものではなく、素材あるいは形状等につい
てなお検討が進められている。さらに、現在創面被覆保
護剤として使用されている散布剤にはデルマトール、ヨ
ードホルムあるいは亜鉛華でんぷんなどがある。これら
は創面を被覆保護すると共に、その収斂作用や吸質性を
利用して湿潤な創面を乾燥させることにより治癒促進を
はかる目的で使用されている。
【0004】しかしながら、薬剤自体は直接的な治癒作
用や鎮痛作用を有しておらず、また大量の使用は副作用
として神経系や消化器系などに障害をもたらす恐れがあ
る。
【0005】このほかに抗菌性散布剤としてフランセチ
ンパウダーなどあるが、これらは感染病原体の殺菌ある
いは感染予防の目的が主体であり、必ずしも創面被覆保
護あるいは乾燥の効果は十分とはいえない。また、過敏
症や局所刺激性等から使用期間や量に制限がある。
【0006】消炎鎮痛剤としては、消炎鎮痛固定剤とし
てのパップがあるが、開放創には刺激が強すぎて応用で
きない。
【0007】植物性の消炎剤として軟部腫脹治療剤のメ
リロートエキスがあるが、循環器、胃腸等への副作用の
あることが認められている。
【0008】更に、従来の創傷治療剤は、生体の有する
創傷治癒機転を阻害する因子を取り除くことを目的とし
たものであり、治癒機転に対する間接的効果を期待した
ものである。一方、体表面損傷のみならず、膿瘍や腫瘍
摘出術などによる生体内深部軟部組織欠損においても創
傷治癒促進のため生体内充填剤の埋没が必要である。し
かし、生体内充填剤は、専ら人工乳房、義鼻、義眼など
特定な軟組織の欠損に対し、単に形状維持のための整形
の目的で利用されているにすぎない。形状維持のための
代替素材としては、主としてシリコン、塩化ビニル、発
泡スチロールなどの合成物が利用されているが、これら
は物理的に形状を整えるため生体内に埋没するだけで、
素材自体には創傷治癒促進作用はない。現在、生体内深
部軟部組織の欠損傷に対し、治癒促進をはかる目的で創
腔内に埋没する充填剤はほとんど開発されておらず、わ
ずかに止血剤としてゼラチンスポンジ(商品名:スポン
ゼル 山之内製薬、ゼルフォーム 住友・アップジョ
ン)が代用されることがあるが、充填、埋没を必要とす
る大きな欠損傷には適さない。特に内股部、腋下部及び
顎下部等は皮下組織が粗であり、且つ、重要な神経及び
大血管を有しており、縫合による創腔の閉鎖は極めて困
難なものとなる。従来では排液ガーゼを挿入し、ひたす
ら肉芽組織の増生を待つしかなく、治療期間も長引き患
者(動物も含めて)にとって極めて負担が大きいもので
あった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】皮膚欠損傷に対する創
傷被覆保護剤として従来から市販されているコラーゲン
不織布や凍結豚皮等のバイオロジカルドレッシングは、
創傷被覆保護剤として必ずしも十分なものではない。そ
の欠点の1つは、まず、創面への密着性が十分でないこ
とである。一般に被覆保護剤は、その機能が完全なもの
は不可能としても、ある程度の人工皮膚的な働きを要求
される。即ち、治療の間創面に対して保護剤が一体とな
って働き、治癒に向かうのが好ましい。保護剤による創
面への密着性が悪いと、患部界面に滲出液が多量にたま
り、乾燥が遅れ、結果的に表皮形成が遅れることにな
る。第2に滲出液によって保護剤が早期に分解され易い
欠点がある。これは、保護剤としての機能を失うだけで
なく、外部感染の原因になり、十分な表皮形成が行われ
ないのはもちろんである。第3に、創面に発生する滲出
液を外部に移動させる能力も小さく、患部に滲出液が貯
留し易く、創面の治癒が遅れる原因ともなっている。第
4に創傷被覆保護剤の創部への固定化方法に適当なもの
がなく、創部から離脱しやすく、保護剤としての作用、
効果の発揮が効率よいとはいえない。従って、生物材料
のもので、上記の欠点を改良した保護剤の開発が待望さ
れていた。
【0010】キチン、キトサン繊維は生物材料であり、
生体との親和性に優れているので、それからなる不織
布、織物、編物等は創面保護剤、創傷治癒促進剤として
好ましいものであることが予想される。しかしながら、
これらキチン、キトサンからなるシートは、従来のバイ
オテクノロジカルドレッシングと比べて必ずしも優れた
創傷被覆保護剤、創傷治癒促進剤といえるものではなか
った。例えば、キチン、キトサン繊維からなる不織布、
シートなどを創部に接触させた場合、創部の接触面を刺
激し、滲出液を多量に発生するという欠点をもってい
る。このように、キチン、キトサンの臨床面の応用につ
いては製剤としての形状等に改善の余地が残されてい
る。
【0011】一方、皮膚欠損傷等に対する散布剤の応用
は治療法が簡単であり、適応範囲も極めて広いが、創面
に対する固定化、密着性、感染予防あるいは大量使用に
よる副作用の面等で問題点も多く指摘されている。
【0012】創傷に対する創傷治療剤としては、(1)
創面に刺激性のないこと、(2)創面に密着して保護効
果をもつこと、(3)滲出液を吸収し、創面を乾燥させ
ること、(4)創傷感染を予防すること、(5)直接的
な創傷治癒効果と鎮痛効果を有すること、さらに、
(6)生体に対する副作用がないこと、等を具備するこ
とが望まれている。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明者らはキチン、キ
トサン及びこれらの誘導体を用いて、その特性を有効に
活用するならば、従来の欠点を解消し、かつ上記した
(1)〜(6)項の作用効果を具備した創傷治療剤が得
られることを見い出し、この発明に至ったものである。
即ち、この発明は、糸状キトサンの集合体であるキトサ
ン綿からなる創傷治療剤、キチン、キトサン及びこれら
の誘導体のスポンジ状加工物からなる創傷治療剤、及
び、糸状キチンの集合体であるキチン綿からなる創傷治
療剤を提供することである。
【0014】以下、この発明の創傷治療剤については詳
しく説明する。この発明に用いられるキチンは、エビ、
カニ等の甲殻類、バッタ、カブトムシ等の昆虫類、イカ
の甲等に含まれて自然界に広く分布して存在するN−ア
セチル−D−グルコサミンを構成単位とする多糖類であ
り、セルロースに類似した構造を有している。このよう
な構造から推測できるように、キチンは化学的に安定で
あり、温和な条件下ではほとんどの試薬と反応しない。
また、これまでキチンを温和な条件下で溶かす適当な溶
剤も見出されていなかったので、キチンは極めて取扱い
にくく、そのためほとんど利用されていないのが現状で
ある。しかし、近年、キチンを有効成分とする抗腫瘍剤
が優れた抗腫瘍活性を有することが提案されている(例
えば、特昭59−27826号公報)。
【0015】また、キチン及びその誘導体は、リゾチー
ム受容性が高く、生体内消化性に優れ、生体親和性があ
り、細胞レベルでの馴染がよく、血清中の中分子量の物
質透過性が高く、血清タンパク質などの血液成分の吸着
能が大であり、また、キチンの脱アセチル化が進むに従
って免疫原性が高くなることも予想されている。さらに
脱アセチル化度70%のキチンが最も高いマクロファー
ジ活性化能を示すことも知られている。
【0016】この発明におけるキチンとは、天然物から
精製して得られるキチン以外に、脱アセチル化度が50
%以内のキチンをも含む。また、キチンを化学的に変成
して得られる様々なキチン誘導体も含まれる。キチン誘
導体としては、例えばカルボキシメチル化キチン、ヒド
ロキシエチル化キチンなどのエーテル化キチン、アセチ
ル化キチン、スルホン化キチン、などがあげられる。エ
ステル化物としては、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン
酸、酩酸、吉草酸、イソプロピオン酸、イソ酩酸、イソ
吉草酸、安息香酸、ケイ皮酸、サリチル酸、アントラニ
ル酸、フタル酸などのカルボン酸類、硫酸、トルエンス
ルホン酸、スルファニル酸などのスルホン酸類、炭酸類
あるいはそれらの無水物のエステル化物があげられる。
【0017】キチンを脱アセチル化してえられるキトサ
ンについては、特開昭56-26049号、特開昭59-88424号、
特開昭62-170254 号などでキトサンが創部の治癒促進剤
として効果を有することが提案されている。さらに、キ
トサン薄膜は水や低分子物質を透過する性質を具備し、
生体組織との親和性も良好であり、組織反応を生ぜず、
バイオマテリアルとしての性能があり、マイクロカプセ
ル材料、透析膜、人造臓器、手術用材料、血管補強材料
等への応用が図られている。
【0018】
【作用】 この発明のキチン、キトサンを主成分とする創
傷治療剤による治療法は、創傷の形状や程度により治療
法(治療回数や量)を随時調節できること、これにより
創傷治癒阻害因子の1つである滲出液の貯留を防ぎ、創
面乾燥に効果的であること、さらに直視下で創面を観察
できるので正確な予後判定が可能なことなどの多くの利
点を有するのである。
【0019】又、キチン、キトサンは、それ自体、極め
て勝れた肉芽組織増生作用を有し、治癒機転に直接的な
促進効果を示す。これは従来の創傷治療剤にはみられな
い作用であり、キチン、キトサンの創傷治療剤としての
最も大きな特徴である。又、その殺菌作用、局所の消
炎、鎮痛作用、壊死組織の融解・吸収作用などにより、
複数の創傷治癒機転阻害因子を除去する能力を有するこ
とも大きな特徴である。さらに、生体に親和性があり無
毒であること、刺激性のないこと、綿状、フレーク状、
スポンジ状等に調製されたキチン、キトサンそのものを
直接使用できることなどの利点から従来の創傷治療剤に
較べてその応用範囲は極めて広く効果的な薬物といえ
る。
【0020】
【実施例】次に、この発明の創傷治療剤を実施例により
詳細に説明する。 (1)キトサン綿の製造:キトサンを紡糸することによ
り得たキトサン糸を水流で一晩以上、熱水(60−90℃)
で2−7時間洗浄した後、メタノール,エタノール,ア
セトン等の水と親和性のよい揮発性溶媒に一昼夜以上浸
漬する。約1−4cmの長さに切断したこの糸をミキサー
で処理した後、乾燥することによりキトサンの綿状加工
物が得られる。得られたキトサン綿の繊維は長さ2−20
mm, 幅20−50μm, 厚さ3−15μm,見かけ比重は0.01
−0.2 g/ccであった。
【0021】実施例1:共和油脂工業(株)製のキトサ
ン(フローナックC,粒経50−60μm)200gを
水−酢酸混合水(23:1容量比)で攪拌溶解し、2回
加圧濾過(1−2kg/cm2)を行った後一晩放置す
ることによって脱泡させる。この原液をエチレングリコ
ール10リットル、氷1.5kg、水酸化カリウム1.
8kgを混合した溶液中に、0.1mm×500ホール
のノズルより押し出し、紡糸後、メタノール−水(1:
1)混合溶液中で更に凝固を進行させ、さらに空気中で
1.15倍延伸した糸を流水で一晩水洗し、70−80
℃の熱水で3−5時間処理した後、メタノールに一昼夜
以上浸漬し、かせ掛け機に巻取り自然乾燥させる。得ら
れたキトサン糸を1−2cmにカットした後、ミキサー
で処理し、キトサンの綿状加工物を得た。得られたキト
サン綿の見かけ比重は0.026g/ccで繊維は長さ
9mm,幅26μm,厚み9μmであった。
【0022】実施例2:実施例1と同様の条件で紡糸し
たキトサン糸を、ボビンに巻取り一晩流水で洗浄する。
更に70−80℃の熱水で3−5時間洗浄した後、メタノー
ルに一昼夜以上浸漬する。糸をボビンから外し約2cmの
長さに切断する。切断した糸をミキサーで処理する。
【0023】上記実施例1で製造したキトサン綿を使用
して、動物実験した結果を表1に示す。表1中における
治療効果の判定は次の通りである。 +:極めて順調に治癒したもの。 ±:手術後粘稠な血様滲出液の貯留、流出をみたが、肉
眼的に炎症像はなく肉芽組織の増生したもの。 −:効果のなかったもの。
【0024】
【表1】
【0025】表1に示すように、キトサン綿を、主とし
て外傷と手術創への充填による創傷治療剤として使用し
た。その内訳は、犬2例,猫8例,牛8例,及び馬1例
の計19例である。応用効果は良好な反応がみられたも
のが17/19で、猫の挫傷の1例(No.9)では使用に
ともなう組織反応は全く認められなかった。しかし、こ
の1例は交通事故による重度な組織損傷と飛節部の脱臼
による患部の物理的な回転によって末梢動脈は断裂して
おり、患部の血液循環は遮断されていた。本例と好対照
をなす症例としてはNo.5の猫で、本例も交通事故による
重度な組織損傷と中手骨の骨折がみられたが、指端への
血行は損傷部位の対側面で保たれており、キトサン綿に
対して極めて良好な反応を示した。なお、No.9の挫傷し
た部位を断脚し、新鮮創にキトサン綿を充填したところ
創は良好な癒合がみられた。以上のことから、本剤の応
用にあたっては血行の存在が必要であり、死滅組織の再
生は期待できない。
【0026】手術創の感染による縫合創の裂開に対して
本剤の充填を3例(No.12 〜14)に実施したが、その効
果は猫で著しい傾向がみられた。また、この効果は牛及
び馬に対しても同様にみられ、現在まではほとんど治療
対象とならなかった乳牛の体表膿瘍に対して、1回の本
剤の充填で2例とも完治した。さらに乳牛の蹄底潰瘍に
対しても本剤の1回の充填、圧定によって完治した。馬
の1例は悪性慢性蹄皮炎で、別名蹄癌と呼称されるごと
く極めて治癒が期待できない疾病であるが、患部の外科
的切除とその欠損部への本剤の充填圧定によって翌日か
ら極めて良好な着地歩行がみられ、その後再発も認めら
れず完治させることができた。また癒合後において患部
の瘢痕形成による硬化、機能障害はいずれの例において
も認められなかった。以上のようにこの発明の創傷治療
剤は患部への1〜数回の適応で犬,猫,牛及び馬に良好
な組織修復力を惹起せしめ、今まで治療不能と考えられ
ていた慢性疾患を完治できたことから驚異的な能力を有
する治療剤と考えられる。
【0027】(2)キチン、キトサン及びそれらの誘導
体よりなるスポンジ状加工物の製造:キチン、キトサン
及びそれらの誘導体、あるいはそれらにポリビニルアル
コール、ポリアクリルアミド、デンプン、ゼラチン等の
水溶性高分子を添加し、ミキサーで0.5−2時間処理
することにより0.1−5%(w/v)の分散液を得
る。分散液のみ、あるいはフェルト、スポンジ状のポリ
エステル、ポリウレタン等及び調製した分散液を−10
〜−40℃で凍結させる。これを凍結乾燥することによ
りキチン、キトサン及びそれらの誘導体を含むスポンジ
を得た。
【0028】実施例:ミキサーを用い、いか甲キチン
の1.5%(w/v)水分散液を作製する。ポリスチレ
ンシャーレ(φ40mm,H5mm)に作製した分散液
5.5mlを入れ、−20℃で凍結させた後、一昼夜凍
結乾燥することによりキチンスポンジを得た。
【0029】
【0030】上記実施例で製造したキチンスポンジを
使用して、動物実験した結果を表2に示す。表2中にお
ける治療効果の判定は、前記表1の説明と同じである。
【0031】
【表2】
【0032】キチンスポンジを表2に示すように主とし
て感染創傷7例に用いた。その内訳は、犬3例,猫3
例,及び牛1例である。応用の効果は6/7にみとめら
れ、手術創の感染による皮膚縫合創の裂開例1例におい
ては、その効果は不確実であった。本例は再手術によっ
て皮下埋没縫合糸が数本残存しており、この糸が非吸収
性糸であったため良好な肉芽増生が惹起できなかったも
のと考えられた。
【0033】犬の歯周病2例(No.1及びNo.7)に対して
本剤の局所充填を実施したことろ良好な肉芽の増生がみ
られ完治した。また牛の関節炎(No.5)にも本剤の充填
を実施したところ良好な組織修復が認められた。No.2〜
No.4の外傷に対してはいずれも極めて良好な治療機転が
1〜数回の本剤の充填で得られた。以上のごとく、外傷
に対してはむろんのこと、口内疾患への応用も期待で
き、又副作用が全く見られないことより理想的な創傷治
療剤と考えられる。
【0034】更に、実施例で製造したキチンスポンジ
を表3に示すように2例の犬に用いた。1例は去勢によ
る組織欠損部への充填であり、1例は骨折間への充填で
ある。両例とも全く副作用も見られず完治した。特に骨
折に対しても骨組織の再生力の促進が期待できると考え
られた。
【0035】
【表3】
【0036】(3)キチン綿の製造:キチンの綿状加工
物の製造は、粉砕機を用い、キチンの糸、顆粒、あるい
はフレーク状の物を粉砕することによって行った。粉砕
は種々の形状のハンマ, ライナを使用し、回転数1,000-
9,000rpm, 定格電流20-30A、で行った。得られたキチン
綿は見かけ比重0.01-0.3g/cc, 長さ0.1-10mm, 幅5-4
00μmの繊維状であった。
【0037】実施例:粉砕機はホソカワミクロン
(株)製のACMパルベライザ10を用い、イカ甲キチ
ンを3.6kgを回転数6,800rpm,定格電流2
4.2A,バー状ハンマ,溝状ライナで25分間粉砕を
行った。得られたキチン綿は見かけ比重0.05−0.
129g/cc,長さ200−800μm,幅10−1
20μmであった。
【0038】上記実施例で得たキチン綿の皮下埋め込
みによる局所反応の実験を下記動物で行った。 動物:犬 種:雑種 年齢:2才
【0039】実験的にブドウ球菌にて膿瘍を作製後、患
部にキチン綿を充填し臨床経過を観察した結果、患部の
疼痛は充填後一日目に消失し、腫脹及び発赤も5日まで
には消失した。一般症状も充填後3日目には改善され
た。
【0040】
【発明の効果】皮膚の糜爛及び潰瘍は知覚部が露出され
るため疼痛が著しく治療にあたっては鎮痛とすみやかな
肉芽増生をもたらす創傷治療剤が期待される。この発明
の創傷治療剤は被覆時の疼痛がなく、しかも創を保護す
る被膜を形成し鎮痛効果を発揮すると共に旺盛な肉芽増
生がみられ、しかもキチン質独特のマクロファージ活性
化によって創の正常化は著しく進み、かつ、不必要な瘢
痕はほとんど形成されず美容整形の面からも創傷被覆剤
としての全ての能力を具備するものと考えられる。
【0041】本発明の綿状あるいはスポンジ状の創傷治
療剤は、どのような形状の創腔にも適応が可能であり、
また充填量の調節がきわめて容易である。創腔へ埋没さ
せた場合、キチンの効果により肉眼的に炎症像もなく、
生体防御機能としての種々な細胞を遊走させ、まず創内
の汚染物や壊死組織を処理させ、更に繊維芽細胞を刺激
して増数し、これに血管系の発達も同時に加って極めて
良好な肉芽組織を発達させるにいたる。この繊維芽細胞
の活性と血管の発達は当然ながら皮膚の癒合を増強せし
め、かつ開いた創においては従来の治療法ではすみやか
な皮膚の萎縮が発現するにもかかわらず、本剤の適用で
ほとんど皮膚の萎縮が認められず生体内充填効果も優れ
ている。さらに、本創傷治療剤によって形成される肉芽
は毛細血管に富み、周囲の皮膚の萎縮も発生しにくい点
から、まず被覆あるいは充填によって汚染創の洗浄化と
良性肉芽の形成による創腔の狭小化が計られ、一時的な
閉鎖が困難な症例に対して極めて良好な二次的閉鎖によ
る治癒効果が期待できる。創傷治療剤がキトサン綿、キ
チン綿の場合には、傷を外から覆う場合にとくに有用で
あり、創傷治療剤がキチン、キトサン及びこれらの誘導
体のスポンジ状加工物の場合には、腫瘍を取り除いた穴
を埋める場合などにとくに有用である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 太田 寿門 鳥取市湖山町東5丁目133番地 サンフ ァイブ株式会社内 合議体 審判長 加藤 孔一 審判官 宮本 和子 審判官 谷口 浩行 (56)参考文献 特開 昭63−90507(JP,A) 特開 昭61−141373(JP,A) 特開 昭61−64256(JP,A) 特開 平1−207238(JP,A) 特開 昭60−142923(JP,A)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 キトサンを紡糸し、洗浄後、揮発性溶媒
    に浸漬し、次いで1−4cmの長さに切断し、ミキサー
    で処理した後、乾燥することにより得られる、糸状キト
    サンの集合体であるキトサン綿からなる創傷治療剤。
  2. 【請求項2】 キチンを粉砕機により粉砕することによ
    り得られる、長さ0.1−10mm、巾5−400μm
    の繊維状キチンの集合体であるキチン綿からなる創傷治
    療剤。
JP3157747A 1991-05-31 1991-05-31 創傷治療剤 Expired - Lifetime JP2714621B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP3157747A JP2714621B2 (ja) 1991-05-31 1991-05-31 創傷治療剤

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP3157747A JP2714621B2 (ja) 1991-05-31 1991-05-31 創傷治療剤

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH0592925A JPH0592925A (ja) 1993-04-16
JP2714621B2 true JP2714621B2 (ja) 1998-02-16

Family

ID=15656468

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP3157747A Expired - Lifetime JP2714621B2 (ja) 1991-05-31 1991-05-31 創傷治療剤

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2714621B2 (ja)

Families Citing this family (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US5599916A (en) * 1994-12-22 1997-02-04 Kimberly-Clark Corporation Chitosan salts having improved absorbent properties and process for the preparation thereof
JP2731833B2 (ja) * 1995-06-26 1998-03-25 大同ほくさん株式会社 海洋生物を原料とした代用皮膚
GB2329840C (en) * 1997-10-03 2007-10-05 Johnson & Johnson Medical Biopolymer sponge tubes
JP2008202170A (ja) * 2007-02-20 2008-09-04 National Institute For Materials Science キトサンマトリックス並びにそれを用いた細胞培養基材、創傷被覆材及び神経再生材
KR101377569B1 (ko) 2012-01-19 2014-03-25 (주)시지바이오 항균성 창상 피복재 및 그 제조방법
JP6333715B2 (ja) * 2014-12-19 2018-05-30 国立大学法人鳥取大学 創傷治癒促進剤
JP6856221B2 (ja) * 2017-10-11 2021-04-07 国立大学法人鳥取大学 創傷治癒促進シート及びその製造方法

Family Cites Families (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US4532134A (en) * 1981-04-06 1985-07-30 Malette William Graham Method of achieving hemostasis, inhibiting fibroplasia, and promoting tissue regeneration in a tissue wound
JPS60142923A (ja) * 1983-12-28 1985-07-29 Lion Corp 歯周病薬
JP2654789B2 (ja) * 1988-02-15 1997-09-17 第一工業製薬株式会社 褥瘡防止材

Also Published As

Publication number Publication date
JPH0592925A (ja) 1993-04-16

Similar Documents

Publication Publication Date Title
EP0477979A2 (en) Biological filling agent and wound-healing agent
JP2977724B2 (ja) 歯周病処置用複合物質
Shigemasa et al. Applications of chitin and chitosan for biomaterials
US6316598B1 (en) Water absorbent keratin and gel formed therefrom
US10525147B2 (en) Bionanocomposite synthesis for would healing
US20050208114A1 (en) Composition and method for healing tissues
JP2003505156A (ja) 傷の治療を向上させる方法及び組成物
CN105013001B (zh) 一种妇科医用生物水凝胶功能敷料及其制备方法
Vachhrajani et al. Science of wound healing and dressing materials
JP3550685B2 (ja) 創傷治療剤
JP2714621B2 (ja) 創傷治療剤
KR20020000580A (ko) 피부 상처 치료용 드레싱제 및 그 제조방법
US4600711A (en) Composition for topical and infusion treatment of wounds and burns
JPH0776175B2 (ja) 損傷されたかまたは病気になった組織の局所的処置用の組成物および方法
AU612387B2 (en) Pharmaceutical compositions promoting the wound healing and process for preparing same
WO1998026789A1 (en) Microclysmic gel for treatment of tissue trauma and burns
CN109432483B (zh) 一种加速创面愈合的医用敷料及其制备方法和应用
CN107184980A (zh) 顺势疗法的治疗方法及其组合物
JPH04371161A (ja) キチン又はキトサンの綿状物
JP2001017533A (ja) 皮膚潰瘍補填修復材料
CN113855849A (zh) 一种敷料组合物及其制备方法和应用
JPH08245401A (ja) 皮膚保護剤
JPH04139131A (ja) 散布剤
JP5766379B1 (ja) サルファ剤およびキトサン剤を含み、剤型が散剤である、ゲル形成剤
RU2081633C1 (ru) Способ лечения гнойно-некротических заболеваний пальцев у крупного рогатого скота по е.п.мажуге

Legal Events

Date Code Title Description
EXPY Cancellation because of completion of term