JP2712217B2 - 植物組織培養法 - Google Patents
植物組織培養法Info
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Description
【発明の詳細な説明】
[産業上の利用分野]
本発明は,植物組織培養法に関する。
[従来の技術]
一般に,植物組織培養においては,植物体の一部ある
いは全部を植物の生長に必要な無機塩類,ビタミン,糖
などのほかに植物ホルモン(オーキシン類,サイトカイ
ニン類)を加えたものを培地として,カルスをつくらせ
(これをカルス誘導あるいは脱分化という)たり,その
カルスを植え継いで培養を続け有用物質を得たり,又は
そのルスから植物を再生(復元)させたりしている。植
物体の再生では,カルスから不定胚を経る場合や園芸植
物のランなどのように植物体組織(一般的には生長点と
呼ばれる分裂のさかんな部分)からプロトコーム状球体
を経て植物を再生することなども行なわれている。 [発明が解決しようとする問題点] 上述される植物組織培養において,インドール酢酸,
ナフトール酢酸,2・4−ジクロロフェノキシ酢酸などの
オーキシン類やカイネチン,ベンジルアデニン,ゼアチ
ンなどのサイトカイニン類といった種々の植物ホルモン
を相互に種々の割合で添加したり,カゼイン分解物や酵
母抽出液などを加えてカルスの増殖や分化(植物体の再
生を伴う形態的分化,有用物質を生産する代謝的分化)
を制御する試みがなされている。しかしながら,実際に
は増殖や分化の制御は困難であり,特に植物ホルモン類
は,添加量によって,増殖や分化を阻害するなどの問題
があった。 [問題点を解決するための手段] 本発明は,上述せる問題点に鑑みなされたもので,光
合成原核微生物抽出物を含む培地により植物組織培養を
することを特徴とする植物組織培養法を要旨とするもの
である。ここで植物組織培養には,(1)植物体培養
(全体培養),(2)胚培養,(3)器官培養,(4)
組織培養,カルス培養,(5)細胞培養がある。 本発明で利用できる光合成原核微生物としては,シア
ノバクテリア類(「R.Rippka and R.Y.Stanier:J.Gen.M
icobiol.,111,1−61(1979)」により種々分類されてい
る。)や光合成細菌類等がある。シアノバクテリア類と
しては,例えば,クロログレオフィシス属(Chlorogloe
opisis sp.),デルモカルパ属(Dermocarpa sp.),ノ
ストック属(Nostoc sp.),シネココッカス属(Synech
ococcus sp.),オスシラトリア属(Oscillatoria s
p.)があり,具体例としては,クロログレオフィシス属
(Chlorogloeopisis sp.)ATCC 27181,デルモカルパ属
(Dermocarpa sp.)ATCC 2937,ノストック属(Nostoc
sp.)ATCC 27895,シネココッカス属(Synechococcus s
p.)ATCC 27192,ATCC 29404,ATCC 29534,ATCC 2717
0,オスシラトリア属(Oscillatoria sp.)ATCC 27906
などが挙げられ,また,光合成細菌類としては,例え
ば,ハロバクテリウム属(Halobacterium sp.),ロド
シュードモナス属(Rhodopseudomonas sp.),ロドスピ
リラム属(Rhodospirillum sp.)があり,具体例として
は,ハロバクテリウム・クチルブルム(Halobacterium
cutirubrum)ATCC 33170,ハロバクテリウム・メディテ
ラネイ(Halobacterium mediterranei)ATCC 33500,ハ
ロバクテリウム・サッカルボルム(Halobacterium sacc
harovorum)ATCC 29252,ハロバクテリウム・サリナリ
ウム(Halobacterium salinarium)ATCC 19700,ハロバ
クテリウム・ソドメンセ(Halobacterium sodomense)A
TCC 33755,ロドシュードモナス・アシドフィラ(Rhodo
pseudomonas acidophila)ATCC 25092,ロドシュードモ
ナス・ルティラ(Rhodopseudomonas rutila)ATCC 338
72,ロドシュードモナス・スフェロイデス(Rhodopseudo
monas spheroides)ATCC 17024,ロドシュードモナス・
ビリディス(Rhodopseudomonas viridis)ATCC 19567,
ロドシュードモナス・ブラスティカ(Rhodopseudomonas
blastica)ATCC 33485,ロドスピリラム・モリシアナ
ム(Rhodospirillum molischianum)ATCC 14031,ロド
スピリラム・ホトメトリクム(Rhodospirillum photome
tricum) ATCC 27871,ロドスピリラム・ルブラム(Rh
odospirillum rubrum)ATCC 277,ATCC 17031,ロドス
ピリラム・テヌエ(Rhodospirillum tenue)ATCC 2509
3などが挙げられる。また,光合成原核微生物は,上記
した微生物あるいはその変種や変異種に限ることなく,
天然に棲息する海洋性,淡水性等のものならびに培養さ
れたものが含まれる。特に,海洋性の光合成原核微生物
は,資源的に豊富であり生産性に優れている。 また,上述した光合成原核微生物の抽出物は,光合成
原核微生物の菌体または,適度に破砕した菌体を常温ま
たは加熱した適当な溶媒と接触させ抽出を行ない得たも
のであるが,前記溶媒としては,菌体によって種々の溶
媒を単独又は複数併用して適宜のものを選択すればよい
が,一般的には,水性溶媒が好ましい。例えば水性溶媒
としては,水単独あるいは酸,塩基,もしくは有機溶媒
を溶解した溶液などがある。また,メタノール,エーテ
ル等の有機溶媒で抽出後,有機溶媒を除去し水に溶解さ
せてもよい。本発明で使用する抽出物は,前記した方法
により得られた抽出液,またはこれらの抽出液を分子分
画したもの,あるいは濃縮物または凍結乾燥もしくは噴
霧乾燥等により乾燥した抽出粉末を使用できる。特に,
核酸様物質,タンパク,糖類,遊離アミノ酸などを多く
含むものが望ましい。光合成原核微生物抽出物の基本培
地への添加量としては,水に対して0.01〜70%で使用目
的,使用方法によって適宜選択できるが,望ましくは0.
1〜25%である。 以上述べた,光合成原核微生物抽出物を基本培地に添
加し,その培地により植物組織培養をするのであるが,
基本培地,培養方法などは通常の植物組織培養における
ものと同様である。すなわち基本培地としては,ムラシ
ゲ(Murashige)&スクーグ(Skoog)(1962)の無機
塩,微量成分,およびビタミン等を含む基本的合成培
地,あるいは植物組織培養に適した種々の改変培地を適
宜選択して使用できる。更に,通常の培養に使用される
植物ホルモン,ココナッツミルク,カゼイン分解物や酵
母抽出物等を目的に応じて併せて添加してもよい。 また,培養の対象となる植物は,分化全能性を有して
いることが知られている。すなわち外植体(植物体全体
又はそれらの一部)が培養可能である。また,前記した
植物体全体又はそれらの一部の初代培養あるいは継代培
養したものも培養可能である。特に,茎頂部,形成層,
若い胚軸等が好ましい。 [実施例] 以下,実施例によってさらに詳しく説明する。 実施例1 (I)ニンジン培養細胞の作製 ニンジンの無菌種子の芽ばえにおいて胚軸が10cm位に
生長したものを約1cm位に切断し,下記培地中で25℃,
暗条件下で培養した。培地は基本培地としてMurashige
& Skoog培地を使用し,これに3%,2.4−D1mg/l
(オーキシン類)を添加しpH5.5〜pH5.7に調整した。約
1ヶ月の培養後,培地中の2.4−D濃度を0.11mg/lに減
少させた培地に移植し,振盪速度90回/分のレシプロ式
シェーカーを用いて振盪培養した。その後,1週間に1回
の割合で,2.4−D 0.11mg/lを含む培地に植え継いで生
長の早いニンジン培養細胞を得る。 (II)光合成原核微生物抽出物の作製 シアノバクテリア類としてシネココッカス属(Synech
ococcus sp.)ATCC 27192,光合成細菌類としてロドシ
ュードモナス・ブラスティカ(Rhodopseudomonas blast
ica)ATCC 33485を用いて作製する。 抽出物は菌体を集菌後凍結乾燥し,水に大して3%に
なるように菌体を懸濁させ,100℃で30分間熱水抽出し,
遠心分離して上澄液を0.45μmメンブランフィルターを
用いてろ過し得られる熱水抽出液である。 (III)ニンジン培養細胞の培養 (I)で作製したニンジン培養細胞を用いて培地に対
して(II)で得られた光合成原核微生物抽出液を培地に
対して1%添加した培地と,無添加の培地で12日培養し
た結果を表−1に示す。 p.38に準じて下記のように測定した。 セルラーゼ・オノズカR−10 2%,マルセロチーム
R−10 1%,ドリセラーゼ 2%,塩化カルシウム
(CaCl2・2H2O)0.5%,マンニトール0.7Mを用いて,30
℃,60分間,振幅7cm,振盪回数90回/分で振盪し,次に5
0回/分の振盪を90分間行ない,遊離してきたプロトプ
ラストの数を0.1mmの深さのヘモサイトメーターを用い
て計測し細胞を測定する。 実施例2 実施例1の(I)で作製したニンジン培養細胞は,形
態的分化を行ない,不定胚を形成することが知られてい
るが,その際における光合成原核微生物抽出物の添加に
よる影響を調べた。 培地は実施例1の(I)で用いた培地において,植物
ホルモンである2,4−Dを含まない基本培地を用いた。
実施例1の(II)で作製された光合成原核微生物抽出液
を培地に対して1%添加した培地と,無添加の培地で温
度25℃,暗条件下で30日間培養し形成された不定胚につ
いて10日目,20日目,30日目に顕微鏡観察した結果を表−
2に示す。 実施例3 ラン科植物であるカトレアの生長点培養において,培
地中に実施例1の(II)で作製した光合成原核微生物抽
出液を0.5%添加してプロトコーム状球体(以下、「PL
B」と呼ぶ。)への影響について調べた。 材料は,カトレア類に属するレリオカトレア(Lealio
cattleya)の側芽の生長点付近の分裂組織から誘導され
たPLBである。PLB培養培地としては,ハイポネックス
(Hyponex:7−6−19)にジャガイモジュース7%,炭
素源としてショ糖2%を含むものを使用した。 初期誘導のPLBを15個まで増殖し、1個のPLBを4つに
分割し、分割された60個のPLBを調整した。 PLB培養培地に対して実施例1の(II)で作製した光
合成原核微生物抽出液を0.5%添加した培地と,無添加
の培地で1ヶ月培養した結果を表−3に示す。 実施例4 タバコのカルスからの植物体の再生において光合成原
核微生物抽出物の添加による影響について調べた。 材料は,タバコ(Nicotiana tabacum L.cv.Bright Ye
llow)の茎の髄組織由来のカルスである。カルスの培養
は,Murashige & Skoog培地を使用し,これに植物ホル
モンとして,インドール酢酸(1mg/l)とカイネチン
(0.1mg/l)を添加した寒天培地上で継代培養した。 芽の分化誘導の基本培地としては,Murashige & Skoo
g培地に植物ホルモンであるインドール酢酸(0.1mg/l)
とカイネチン(mg/l)を加えた寒天培地を使用した。 上記基本培地に対して,実施例1の(II)で作製した
光合成原核微生物抽出液を1.5%添加した培地と無添加
の培地を作製した。それぞれの培地に対して,継代培養
されたカルスをカミソリの刃を用いて5mm角の大きさに
切断し,カルス切片を試験管1本に1個の割合で移植し
たものを各25本用意し14日間培養した結果を表−4に示
す。 実施例5 ニンジン培養細胞β−カロチン産生株に対して,光合
成原核微生物抽出物の添加による影響を調べた。 培地は,Murashige & Skoog培地を使用し,これにシ
ョ糖3%,2.4−D1mg/lを添加し,pH5.5〜5.7に調整し寒
天を1%加えた寒天固体培地を基本倍地として使用し
た。 実施例1の(II)で作製した光合成原核微生物抽出液
を基本培地に対して1%添加した培地と,無添加の培地
で温度25℃,暗条件下で50日間日培養し細胞内に蓄積さ
れたβ−カロチン量を測定した。β−カロチン量は,培
養細胞の生重量を測定後,乳鉢中で細胞を破砕し,少量
のアセトンを加えてβ−カロチンを抽出し,3mlの石油エ
ーテルを加え,石油エーテル層中にβ−カロチンを移行
させ,分光光度計を用いて,石油エーテル層の453nmの
吸光度を測定し,培養細胞内に蓄積されたβ−カロチン
量を算出した。その結果を表−5に示す。 [発明の効果] 本発明によれば,植物組織培養において,光合成原核
微生物抽出物を添加することにより,細胞の増殖および
分化を促進し効率よく培養を行なうことができ,かつ,
合成植物ホルモンの悪影響を極力おさえるための処置法
となることができる。従って,植物を一定の条件下で培
養し,その器官,組織及び細胞を目的に応じる形態に誘
導でき,有用物質産生細胞の産生能を向上させることが
できる。あるいは,細胞の生長(増殖)を促進する効果
を併せ持つ為,有用物質産生細胞の大量作出を容易に行
なうことができる。
いは全部を植物の生長に必要な無機塩類,ビタミン,糖
などのほかに植物ホルモン(オーキシン類,サイトカイ
ニン類)を加えたものを培地として,カルスをつくらせ
(これをカルス誘導あるいは脱分化という)たり,その
カルスを植え継いで培養を続け有用物質を得たり,又は
そのルスから植物を再生(復元)させたりしている。植
物体の再生では,カルスから不定胚を経る場合や園芸植
物のランなどのように植物体組織(一般的には生長点と
呼ばれる分裂のさかんな部分)からプロトコーム状球体
を経て植物を再生することなども行なわれている。 [発明が解決しようとする問題点] 上述される植物組織培養において,インドール酢酸,
ナフトール酢酸,2・4−ジクロロフェノキシ酢酸などの
オーキシン類やカイネチン,ベンジルアデニン,ゼアチ
ンなどのサイトカイニン類といった種々の植物ホルモン
を相互に種々の割合で添加したり,カゼイン分解物や酵
母抽出液などを加えてカルスの増殖や分化(植物体の再
生を伴う形態的分化,有用物質を生産する代謝的分化)
を制御する試みがなされている。しかしながら,実際に
は増殖や分化の制御は困難であり,特に植物ホルモン類
は,添加量によって,増殖や分化を阻害するなどの問題
があった。 [問題点を解決するための手段] 本発明は,上述せる問題点に鑑みなされたもので,光
合成原核微生物抽出物を含む培地により植物組織培養を
することを特徴とする植物組織培養法を要旨とするもの
である。ここで植物組織培養には,(1)植物体培養
(全体培養),(2)胚培養,(3)器官培養,(4)
組織培養,カルス培養,(5)細胞培養がある。 本発明で利用できる光合成原核微生物としては,シア
ノバクテリア類(「R.Rippka and R.Y.Stanier:J.Gen.M
icobiol.,111,1−61(1979)」により種々分類されてい
る。)や光合成細菌類等がある。シアノバクテリア類と
しては,例えば,クロログレオフィシス属(Chlorogloe
opisis sp.),デルモカルパ属(Dermocarpa sp.),ノ
ストック属(Nostoc sp.),シネココッカス属(Synech
ococcus sp.),オスシラトリア属(Oscillatoria s
p.)があり,具体例としては,クロログレオフィシス属
(Chlorogloeopisis sp.)ATCC 27181,デルモカルパ属
(Dermocarpa sp.)ATCC 2937,ノストック属(Nostoc
sp.)ATCC 27895,シネココッカス属(Synechococcus s
p.)ATCC 27192,ATCC 29404,ATCC 29534,ATCC 2717
0,オスシラトリア属(Oscillatoria sp.)ATCC 27906
などが挙げられ,また,光合成細菌類としては,例え
ば,ハロバクテリウム属(Halobacterium sp.),ロド
シュードモナス属(Rhodopseudomonas sp.),ロドスピ
リラム属(Rhodospirillum sp.)があり,具体例として
は,ハロバクテリウム・クチルブルム(Halobacterium
cutirubrum)ATCC 33170,ハロバクテリウム・メディテ
ラネイ(Halobacterium mediterranei)ATCC 33500,ハ
ロバクテリウム・サッカルボルム(Halobacterium sacc
harovorum)ATCC 29252,ハロバクテリウム・サリナリ
ウム(Halobacterium salinarium)ATCC 19700,ハロバ
クテリウム・ソドメンセ(Halobacterium sodomense)A
TCC 33755,ロドシュードモナス・アシドフィラ(Rhodo
pseudomonas acidophila)ATCC 25092,ロドシュードモ
ナス・ルティラ(Rhodopseudomonas rutila)ATCC 338
72,ロドシュードモナス・スフェロイデス(Rhodopseudo
monas spheroides)ATCC 17024,ロドシュードモナス・
ビリディス(Rhodopseudomonas viridis)ATCC 19567,
ロドシュードモナス・ブラスティカ(Rhodopseudomonas
blastica)ATCC 33485,ロドスピリラム・モリシアナ
ム(Rhodospirillum molischianum)ATCC 14031,ロド
スピリラム・ホトメトリクム(Rhodospirillum photome
tricum) ATCC 27871,ロドスピリラム・ルブラム(Rh
odospirillum rubrum)ATCC 277,ATCC 17031,ロドス
ピリラム・テヌエ(Rhodospirillum tenue)ATCC 2509
3などが挙げられる。また,光合成原核微生物は,上記
した微生物あるいはその変種や変異種に限ることなく,
天然に棲息する海洋性,淡水性等のものならびに培養さ
れたものが含まれる。特に,海洋性の光合成原核微生物
は,資源的に豊富であり生産性に優れている。 また,上述した光合成原核微生物の抽出物は,光合成
原核微生物の菌体または,適度に破砕した菌体を常温ま
たは加熱した適当な溶媒と接触させ抽出を行ない得たも
のであるが,前記溶媒としては,菌体によって種々の溶
媒を単独又は複数併用して適宜のものを選択すればよい
が,一般的には,水性溶媒が好ましい。例えば水性溶媒
としては,水単独あるいは酸,塩基,もしくは有機溶媒
を溶解した溶液などがある。また,メタノール,エーテ
ル等の有機溶媒で抽出後,有機溶媒を除去し水に溶解さ
せてもよい。本発明で使用する抽出物は,前記した方法
により得られた抽出液,またはこれらの抽出液を分子分
画したもの,あるいは濃縮物または凍結乾燥もしくは噴
霧乾燥等により乾燥した抽出粉末を使用できる。特に,
核酸様物質,タンパク,糖類,遊離アミノ酸などを多く
含むものが望ましい。光合成原核微生物抽出物の基本培
地への添加量としては,水に対して0.01〜70%で使用目
的,使用方法によって適宜選択できるが,望ましくは0.
1〜25%である。 以上述べた,光合成原核微生物抽出物を基本培地に添
加し,その培地により植物組織培養をするのであるが,
基本培地,培養方法などは通常の植物組織培養における
ものと同様である。すなわち基本培地としては,ムラシ
ゲ(Murashige)&スクーグ(Skoog)(1962)の無機
塩,微量成分,およびビタミン等を含む基本的合成培
地,あるいは植物組織培養に適した種々の改変培地を適
宜選択して使用できる。更に,通常の培養に使用される
植物ホルモン,ココナッツミルク,カゼイン分解物や酵
母抽出物等を目的に応じて併せて添加してもよい。 また,培養の対象となる植物は,分化全能性を有して
いることが知られている。すなわち外植体(植物体全体
又はそれらの一部)が培養可能である。また,前記した
植物体全体又はそれらの一部の初代培養あるいは継代培
養したものも培養可能である。特に,茎頂部,形成層,
若い胚軸等が好ましい。 [実施例] 以下,実施例によってさらに詳しく説明する。 実施例1 (I)ニンジン培養細胞の作製 ニンジンの無菌種子の芽ばえにおいて胚軸が10cm位に
生長したものを約1cm位に切断し,下記培地中で25℃,
暗条件下で培養した。培地は基本培地としてMurashige
& Skoog培地を使用し,これに3%,2.4−D1mg/l
(オーキシン類)を添加しpH5.5〜pH5.7に調整した。約
1ヶ月の培養後,培地中の2.4−D濃度を0.11mg/lに減
少させた培地に移植し,振盪速度90回/分のレシプロ式
シェーカーを用いて振盪培養した。その後,1週間に1回
の割合で,2.4−D 0.11mg/lを含む培地に植え継いで生
長の早いニンジン培養細胞を得る。 (II)光合成原核微生物抽出物の作製 シアノバクテリア類としてシネココッカス属(Synech
ococcus sp.)ATCC 27192,光合成細菌類としてロドシ
ュードモナス・ブラスティカ(Rhodopseudomonas blast
ica)ATCC 33485を用いて作製する。 抽出物は菌体を集菌後凍結乾燥し,水に大して3%に
なるように菌体を懸濁させ,100℃で30分間熱水抽出し,
遠心分離して上澄液を0.45μmメンブランフィルターを
用いてろ過し得られる熱水抽出液である。 (III)ニンジン培養細胞の培養 (I)で作製したニンジン培養細胞を用いて培地に対
して(II)で得られた光合成原核微生物抽出液を培地に
対して1%添加した培地と,無添加の培地で12日培養し
た結果を表−1に示す。 p.38に準じて下記のように測定した。 セルラーゼ・オノズカR−10 2%,マルセロチーム
R−10 1%,ドリセラーゼ 2%,塩化カルシウム
(CaCl2・2H2O)0.5%,マンニトール0.7Mを用いて,30
℃,60分間,振幅7cm,振盪回数90回/分で振盪し,次に5
0回/分の振盪を90分間行ない,遊離してきたプロトプ
ラストの数を0.1mmの深さのヘモサイトメーターを用い
て計測し細胞を測定する。 実施例2 実施例1の(I)で作製したニンジン培養細胞は,形
態的分化を行ない,不定胚を形成することが知られてい
るが,その際における光合成原核微生物抽出物の添加に
よる影響を調べた。 培地は実施例1の(I)で用いた培地において,植物
ホルモンである2,4−Dを含まない基本培地を用いた。
実施例1の(II)で作製された光合成原核微生物抽出液
を培地に対して1%添加した培地と,無添加の培地で温
度25℃,暗条件下で30日間培養し形成された不定胚につ
いて10日目,20日目,30日目に顕微鏡観察した結果を表−
2に示す。 実施例3 ラン科植物であるカトレアの生長点培養において,培
地中に実施例1の(II)で作製した光合成原核微生物抽
出液を0.5%添加してプロトコーム状球体(以下、「PL
B」と呼ぶ。)への影響について調べた。 材料は,カトレア類に属するレリオカトレア(Lealio
cattleya)の側芽の生長点付近の分裂組織から誘導され
たPLBである。PLB培養培地としては,ハイポネックス
(Hyponex:7−6−19)にジャガイモジュース7%,炭
素源としてショ糖2%を含むものを使用した。 初期誘導のPLBを15個まで増殖し、1個のPLBを4つに
分割し、分割された60個のPLBを調整した。 PLB培養培地に対して実施例1の(II)で作製した光
合成原核微生物抽出液を0.5%添加した培地と,無添加
の培地で1ヶ月培養した結果を表−3に示す。 実施例4 タバコのカルスからの植物体の再生において光合成原
核微生物抽出物の添加による影響について調べた。 材料は,タバコ(Nicotiana tabacum L.cv.Bright Ye
llow)の茎の髄組織由来のカルスである。カルスの培養
は,Murashige & Skoog培地を使用し,これに植物ホル
モンとして,インドール酢酸(1mg/l)とカイネチン
(0.1mg/l)を添加した寒天培地上で継代培養した。 芽の分化誘導の基本培地としては,Murashige & Skoo
g培地に植物ホルモンであるインドール酢酸(0.1mg/l)
とカイネチン(mg/l)を加えた寒天培地を使用した。 上記基本培地に対して,実施例1の(II)で作製した
光合成原核微生物抽出液を1.5%添加した培地と無添加
の培地を作製した。それぞれの培地に対して,継代培養
されたカルスをカミソリの刃を用いて5mm角の大きさに
切断し,カルス切片を試験管1本に1個の割合で移植し
たものを各25本用意し14日間培養した結果を表−4に示
す。 実施例5 ニンジン培養細胞β−カロチン産生株に対して,光合
成原核微生物抽出物の添加による影響を調べた。 培地は,Murashige & Skoog培地を使用し,これにシ
ョ糖3%,2.4−D1mg/lを添加し,pH5.5〜5.7に調整し寒
天を1%加えた寒天固体培地を基本倍地として使用し
た。 実施例1の(II)で作製した光合成原核微生物抽出液
を基本培地に対して1%添加した培地と,無添加の培地
で温度25℃,暗条件下で50日間日培養し細胞内に蓄積さ
れたβ−カロチン量を測定した。β−カロチン量は,培
養細胞の生重量を測定後,乳鉢中で細胞を破砕し,少量
のアセトンを加えてβ−カロチンを抽出し,3mlの石油エ
ーテルを加え,石油エーテル層中にβ−カロチンを移行
させ,分光光度計を用いて,石油エーテル層の453nmの
吸光度を測定し,培養細胞内に蓄積されたβ−カロチン
量を算出した。その結果を表−5に示す。 [発明の効果] 本発明によれば,植物組織培養において,光合成原核
微生物抽出物を添加することにより,細胞の増殖および
分化を促進し効率よく培養を行なうことができ,かつ,
合成植物ホルモンの悪影響を極力おさえるための処置法
となることができる。従って,植物を一定の条件下で培
養し,その器官,組織及び細胞を目的に応じる形態に誘
導でき,有用物質産生細胞の産生能を向上させることが
できる。あるいは,細胞の生長(増殖)を促進する効果
を併せ持つ為,有用物質産生細胞の大量作出を容易に行
なうことができる。
─────────────────────────────────────────────────────
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(72)発明者 松永 是
東京都府中市幸町2―41―13 府中第三
住宅2―304
審査官 種村 慈樹
(56)参考文献 特開 昭57−65178(JP,A)
Enzyme Microb.Tec
hnol.,Vol.8 (1986)
P.386−394
Fiziol Rast.,Vol.
32 No.6 (1985) P.1158−
1165
Szv.Alead.Nauk SS
SR Ser.Biol.,Vol.
0,No.5 (1985) P.645−651
Claims (1)
- (57)【特許請求の範囲】 1.光合成原核微生物抽出物を含む培地により植物組織
培養をすることを特徴とする植物組織培養法。 2.光合成原核微生物はシアノバクテリア類又は光合成
細菌類である特許請求の範囲第1項記載の植物組織培養
法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP62334782A JP2712217B2 (ja) | 1987-01-31 | 1987-12-29 | 植物組織培養法 |
Applications Claiming Priority (3)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP62-21246 | 1987-01-31 | ||
JP2124687 | 1987-01-31 | ||
JP62334782A JP2712217B2 (ja) | 1987-01-31 | 1987-12-29 | 植物組織培養法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPS63294782A JPS63294782A (ja) | 1988-12-01 |
JP2712217B2 true JP2712217B2 (ja) | 1998-02-10 |
Family
ID=26358281
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP62334782A Expired - Fee Related JP2712217B2 (ja) | 1987-01-31 | 1987-12-29 | 植物組織培養法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2712217B2 (ja) |
Families Citing this family (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
EP0380692B1 (en) * | 1988-07-27 | 1994-06-22 | Pentel Kabushiki Kaisha | Plant tissue culture process |
Family Cites Families (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPS603826B2 (ja) * | 1980-10-06 | 1985-01-30 | クロレラ工業株式会社 | 植物組識または細胞の培養方法 |
-
1987
- 1987-12-29 JP JP62334782A patent/JP2712217B2/ja not_active Expired - Fee Related
Non-Patent Citations (3)
Title |
---|
Enzyme Microb.Technol.,Vol.8 (1986) P.386−394 |
Fiziol Rast.,Vol.32 No.6 (1985) P.1158−1165 |
Szv.Alead.Nauk SSSR Ser.Biol.,Vol.0,No.5 (1985) P.645−651 |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPS63294782A (ja) | 1988-12-01 |
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