JP2710005B2 - 霜降り状食肉の製造方法 - Google Patents

霜降り状食肉の製造方法

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JP2710005B2
JP2710005B2 JP5165844A JP16584493A JP2710005B2 JP 2710005 B2 JP2710005 B2 JP 2710005B2 JP 5165844 A JP5165844 A JP 5165844A JP 16584493 A JP16584493 A JP 16584493A JP 2710005 B2 JP2710005 B2 JP 2710005B2
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博文 宮本
績 神原
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は霜降り状食肉の製造方法
に関する。
【0002】
【従来の技術】牛肉、豚肉、羊肉等の赤身肉中に網目状
の脂肪層が点在している、いわゆる霜降り肉は調理の際
の加熱によって脂肪が適度に溶け出し、肉に独特の芳香
とジューシーな柔らかい食感を与える。一方、肩肉やモ
モ肉等の脂肪分の少ない赤身肉はこの性質がなく、硬い
食感を与えるため、霜降り肉と比較して食肉としての評
価は低い。このため従来から、比較的安価な脂肪分の少
ない赤身肉から霜降り状の食肉をつくり、付加価値を高
める為の研究開発が行われてきている。
【0003】例えば、ホエータンパク質、卵白を用いた
エマルジョンを食肉に注入する方法(特公平3−754
4)、融点10〜35℃の油脂をインジェクション注入
する方法(特開昭60−41467)、安定剤を含むエ
マルジョンをインジェクション注入する方法(特公昭5
9−23777)、30重量%以上のホエータンパク質
強化剤組成物を生肉に配合しタンパク質を強化した赤身
肉(特開昭56−102767)、未加熱の卵白を含む
エマルジョンをインジェクション注入する方法(特開昭
59−162853)等である。
【0004】
【本発明が解決しようとする課題】これらの従来技術に
よって製造された霜降り状食肉には、加熱調理後歯切れ
が悪く天然の霜降り食肉に認められる滑らかな口溶けの
よさがない、という共通の課題がある。又、それぞれの
従来技術にはつぎのような個別の課題がある。
【0005】融点10〜35℃の油脂や、安定剤を含む
エマルジョンをインジェクション注入する方法(特開昭
60−41467)による霜降り状食肉は、加熱調理の
際に注入された脂肪がほとんど溶出してしまうため、加
熱調理の際の重量損失が大きく、ジューシーな食感も得
られない。また、インジェクション液は、油脂や安定剤
が溶解する温度以上である必要があり、エマルジョンを
脂肪の固化温度より高い温度範囲で食肉に注入するため
微生物が繁殖し易くなる等の問題がある。
【0006】タンパク質強化剤組成物を生肉に配合しタ
ンパク質を強化した赤身肉、および未加熱の卵白を含む
エマルジョンをインジェクション注入する方法(特開昭
59−162853)では、食肉中に注入されたエマル
ジョン中のタンパク質水溶液は液状のままである。この
ため食肉の保存や流通の過程で凍結と解凍を行うと、ド
リップにタンパク質が混入して流出してしまい、ドリッ
プが白濁し、外観が損なわれるばかりでなく、加熱調理
時に脂肪を食肉中に保有することができない。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の対象とする食肉
は、生又は解凍した牛肉、豚肉、馬肉、羊肉等の食用の
獣肉、鶏肉、七面鳥肉、がちょう肉等の家禽肉及び家兎
肉等であって、比較的脂肪が少ない部位である。
【0008】本発明で食肉に注入するカルシウム塩含有
液は、乳酸カルシウム、塩化カルシウム、酢酸カルシウ
ム等の易溶性カルシウム塩を溶解または分散せしめた液
である。カルシウム塩含有液の注入量は、注入後の食肉
中のカルシウム塩の濃度が、乳酸カルシウムの場合0.
2〜3.0%好ましくは0.4〜1.2%、塩化カルシ
ウムの場合0.2〜2.5%好ましくは0.4〜0.8
%になるようにする。その他のカルシウム塩の場合も乳
酸カルシウム、塩化カルシウムと同一の効果のある濃度
とする。注入するカルシウム塩含有液のカルシウム塩濃
度はできるだけ高いことがよい。
【0009】食肉へのカルシウム塩含有液の注入には注
射器等の器具を用いる。注入箇所に制限はない。注入は
一カ所だけ行ってもよいし、数カ所又は数十カ所行って
もよい。注入後、食肉にタンブリング等の振動を加える
と効率よくカルシウム塩含有液が分散してよりよいもの
となる。
【0010】カルシウム塩含有液のpHは6〜10好ま
しくは弱アルカリの7.5〜9がよい。注入時の食肉、
カルシウム塩含有液及び雰囲気の温度は0〜20℃好ま
しくは0〜10℃がよい。カルシウム塩含有液の注入
後、食肉は上記温度にてカルシウム塩含有液が食肉中に
分散するのに必要な時間保持する。例えば、30分保持
する。
【0011】次いで食肉に注入する重合リン酸塩含有液
は、ピロリン酸四カリウム、ピロリン酸二水素ナトリウ
ム及びトリポリリン酸ナトリウム等のオルトリン酸塩の
脱水縮合物の水溶液である。効果のある注入後の食肉中
の重合リン酸塩の濃度は、ピロリン酸二水素ナトリウム
又はトリポリリン酸ナトリウムの場合は0.03〜0.
3%好ましくは0.05〜0.1%である。その他の重
合リン酸塩の場合もピロリン酸二水素ナトリウム又はト
リポリリン酸ナトリウムと同一の効果のある濃度とす
る。注入する重合リン酸塩含有液の重合リン酸塩濃度は
できるだけ高いことがよい。
【0012】食肉への重合リン酸塩含有液の注入には注
射器等の器具を用いる。注入箇所に制限はない。注入は
一カ所だけ行ってもよいし、数カ所又は数十カ所行って
もよい。注入後、食肉にタンブリング等の振動を加える
と効率よく重合リン酸塩含有液が分散してよりよい。
【0013】重合リン酸塩含有液のpHは6〜10好ま
しくは弱アルカリの7.5〜9がよい。注入時の食肉、
重合リン酸塩含有液及び雰囲気の温度は0〜20℃好ま
しくは0〜10℃がよい。重合リン酸塩含有液の注入後
食肉は上記温度にて重合リン酸塩含有液が食肉中に分散
するのに必要な時間保持する。例えば、30分保持す
る。
【0014】水中油系の乳化液の油相には食肉の熱変性
温度より低い温度で融解する動植物性脂肪好ましくは牛
脂、ラードを用いる。
【0015】乳化液の調整に用いる乳化剤は、グリセリ
ン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン
脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル
又はレシチン等の常用の乳化剤、キサンタンガム、グア
ガム、アラビアガム又はトラガントガム等の増粘多糖
類、ホエータンパク質、カゼインナトリウム、卵又は調
整乳清タンパク質加工品等のタンパク質若しくはそれら
の組み合わせである。
【0016】その乳化液の水相と油相の比率及びその注
入量は、それが注入される食肉の脂肪分、硬さを考慮し
て適宜決められる。乳化液の油相の割合は、牛脂の場合
10〜60重量%好ましくは20〜50重量%である。
【0017】その乳化液の水相に調整乳清タンパク質加
工品を含有させることが場合によってはよい。本発明で
用いる調整乳清タンパク質加工品として、株式会社第一
化成製のもの(商品名、ジェネシス)がある(特許公開
公報平成4年第228036号)。調整乳清タンパク質
加工品とは牛乳から脂肪分及びカゼインを除いた乳清か
らさらに塩類、糖類などの低分子化合物を実質的に除
き、その後、液のpHを4以下又は6以上に調整し、加
熱処理を施し得られるものである。例えば、乳清はチー
ズ製造における上清液に大量に含まれる。又、塩類、糖
類などの低分子化合物を実質的に除去する方法として
は、水又は低濃度の緩衝液を用いた透析法、電気透析
法、クロマトグラフ(イオン交換、ゲルろ過、疎水クロ
マトなど)、マイクロフィルトレーション、電気泳動
法、及び吸着分離法などがいずれも使用でき、これらを
二種以上組み合わせて使用してもよい。また、加熱処理
する場合、加熱温度は特に限定されないが、55℃以上
であるのが好ましく、一般に75〜95℃程度が扱い易
い。加熱時間は、例えば80℃のとき一時間程度がよ
い。調整乳清タンパク質加工品のタンパク濃度を食肉中
1.0〜18.0%好ましくは2.0〜9.0%に調整
する。溶存する塩濃度は、ナトリウムイオン、カリウム
イオン等の一価のイオンの場合、10〜500mM好ま
しくは50〜200mMに調整し、カルシウムイオン等
の二価以上の多価イオンの場合は、一価のイオンの十分
の一程度に調整する。pHは等電点から遠ざける方がよ
い。又、中性付近に調整する方がよい。
【0018】乳化は油相の脂肪の融点よりも高い温度で
行う。例えば、油相が牛脂の場合は50〜60℃で乳化
させる。乳化時間は3〜10分でよい。
【0019】得られた乳化液は0〜20℃好ましくは0
〜10℃の品温に調整し、食肉に注入する。食肉への乳
化液の注入には注射器等の器具を用いる。注入箇所に制
限はない。注入は一カ所だけ行ってもよいし、数カ所又
は数十カ所行ってもよい。注入後、食肉にタンブリング
等の振動を加えると効率よく乳化液が分散してよりよ
い。
【0020】
【作用】従来の技術は、脂肪分の少ない赤身肉に脂質又
はエマルジョンをインジェクション注入することによっ
てのみジューシー感を付与し、霜降り状の食肉を製造し
ようとしている。しかし、上記手段により食肉に脂肪を
点在させても、得られた食肉は歯切れが悪く、天然の霜
降り食肉のような滑らかな口溶けもない。これは、食肉
の食感に最も影響を与える筋原繊維が改質されていない
ためである。加熱調理しても柔らかく弾力性に富む食肉
とは、食肉中のタンパク質が均質で密な網目構造をも
ち、多量の結合水を含んでゲル化している状態であろう
と考えられる。
【0021】本発明は、食肉にカルシウム塩含有液、次
いで重合リン酸塩を注入することにより、食肉の筋原繊
維を改質した。つまり、食肉中のタンパク質の網目構造
を強化し、結合水量を多くした。その作用は次のとおり
である。
【0022】一般に食肉は屠殺後ATP濃度の低下によ
り互いに強く結合したアクトミオシンが形成される。ま
たpHの低下にともなうタンパク質の凝集によりタンパ
ク質の保水能が低下する。この状態の食肉特に赤身肉を
加熱調理すると、タンパク質の凝集部分が加熱変性し、
結合水が遊離し蒸発する。よって硬くてもろい食感のも
のとなる。
【0023】食肉にカルシウム塩含有液を注入すると、
カルシウムイオンがアクチン、トロポミオシン、トロポ
ニンとよぶ細いフィラメントを形成する筋原繊維と結合
し、この細いフィラメントがミオシンとよぶ太いフィラ
メントと強く結合する。この反応において、太いフィラ
メントが保護され保水能は低下するがタンパク質の網目
構造が均質化されると考えられる。
【0024】カルシウム塩含有液にて処理した後に重合
リン酸塩含有液を食肉に注入すると重合リン酸塩が筋原
繊維と結合していたカルシウムイオンと結合し、カルシ
ウムイオンが筋原繊維から遊離することにより、太いフ
ィラメントと細いフィラメントの結合が弱まり、タンパ
ク質の水和結合を増進する。
【0025】本発明における注入の順序を逆にすると、
カルシウムイオンとタンパク質の結合力よりカルシウム
イオンと重合リン酸塩の結合力の方が強く、カルシウム
イオンによるアクトミオシンの結合の強化及びタンパク
質の網目構造の均質化がはかれない。
【0026】またカルシウム塩と重合リン酸塩の混合液
を同時に注入すると、浸漬する前にカルシウムイオンと
重合リン酸塩が結合し、カルシウムイオンの効果が発揮
されず、重合リン酸塩の効果が低下する。
【0027】尚、カルシウム塩又は重合リン酸塩の添加
量を多くすると風味に影響を及ぼすのでその添加量には
限度がある。
【0028】次に、本発明は、食肉にこれら二つの液の
処理を行った後に水中油系の乳化液、特にその水相に調
整乳清タンパク質加工品を含有する水中油系の乳化液、
を注入することにより、食肉にジューシー感を付与し
た。その作用は次のとおりである。
【0029】一般に天然の霜降り肉の脂肪分は、筋原繊
維を数十個集めた第1次筋束を包みこむ 筋周膜の部分
に分散している。この脂肪は脂肪のうと呼ばれる袋の中
に存在しており、加熱調理による食肉中からの脂肪の溶
出を防いでいる。このため、天然の霜降り肉は加熱調理
後も柔らかく弾力性がある食感で、且つジューシーであ
る。
【0030】水中油系の乳化液は、流動性があるため、
食肉の脂肪の固化温度より低い温度においても容易に注
入できる。又、注入した後タンブリング等の振動を加え
ることにより第1次筋束の筋周膜の部分に容易に分散す
る。
【0031】特にその水相に調整乳清タンパク質加工品
を含有する水中油系の乳化液は、食肉中に注入され加熱
調理されると、耐熱性があり且つ保水性の高いゲルを形
成するので、その食肉は脂肪の溶出が抑えられ、ソフト
で口溶けがよく且つジューシーである。
【0032】調整乳清タンパク質加工品は加熱変性にも
関わらず熱変性による凝固していない高タンパク質溶液
である。通常、高濃度のタンパク質溶液は加熱により凝
固するが、pHがタンパク質の等電点から離れ、かつ低
塩濃度の環境下ではタンパク質分子間の電気的な反発が
大きいため、分子が互いに凝集しにくく、加熱変性させ
ても凝固せず溶液状態のままである。しかしこの変性タ
ンパク質溶液に塩を加えるとタンパク分子内の電気的性
質が陰蔽され、そのため分子が凝集し易くなり、高分子
化する。これによって、溶液内の粘性は上昇し、塩の添
加量が多い場合ゲル化することになる。さらに、この一
連の反応は温度が高いほど速やかに起こる。以上のよう
な性質をもった調整乳清タンパク質加工品はそれ自身の
タンパク質濃度、溶存する塩濃度、pHを調整すること
により、ゲルの硬さ、保水力、透明度、耐熱性を調整す
ることができる。
【0033】尚、カルシウム塩含有液及び重合リン酸塩
含有液を食肉に注入するときに高濃度の方が良いのは、
少量注入で済むため食肉の組織の保護上好ましいからで
ある。注入時のカルシウム含有液、重合リン酸塩含有液
及び乳化液、並びに食肉、雰囲気の温度が0〜20℃好
ましくは0〜10℃とするのは、微生物の増殖を防止す
るため及び凍結しないためである。乳化液中の油相の割
合が10〜60%好ましくは20〜50%が良いのは、
脂肪の割合がこれ以上多いと乳化液の安定性が悪くなる
ため、及び粘度が高くなり食肉への注入が困難になるた
めである。又、脂肪の割合が低いと、良好な霜降り肉が
得られないためである。乳化液に用いる脂肪が牛脂、ラ
ードが良いのは、食肉の風味が向上するためである。
【0034】以下の7種の食肉を加熱調理したあと、そ
の垂直断面を走査型電子顕微鏡を用いて比較観察した。
天然の霜降り食肉、赤身肉、この赤身肉を本発明の請求
項2の手段により改質した食肉、この赤身肉に水中油系
の乳化液のみを注入食肉、この赤身肉にカルシウム塩含
有液のみを注入した食肉、この赤身肉に重合リン酸塩含
有液を注入した食肉及びこの赤身肉にカルシウム塩含有
液次いで重合リン酸塩含有液を注入した食肉である。そ
れぞれの写真映像を図1から図7に示す。
【0035】図2に示されるように、加熱調理したあと
の赤身肉は360×270(μm)中に約42本の筋原
繊維があるが、筋原繊維と筋原繊維との間の空隙が大き
い。加熱調理による筋原繊維の収縮が大きいからであ
る。
【0036】これに対し、図3に示されるように、加熱
調理したあとの、赤身肉を本発明の請求項2の手段によ
り改質した食肉は、同様に360×270(μm)中に
約33本の筋原繊維があるが、筋原繊維と筋原繊維との
間の空隙が小さい。加熱調理による筋原繊維の収縮が小
さいからである。さらに、油脂部が分離することなく、
筋周膜の部分に定着している。油脂を含んだ調整乳清タ
ンパク質加工品のゲルが筋周膜の部分に定着しているか
らである。
【0037】この組織は加熱調理したあとの天然の霜降
り肉の組織と似ている。つまり、図1に示されるよう
に、加熱調理したあとの天然の霜降り肉は360×27
0(μm)中に約30本の筋原繊維があるが、筋原繊維
と筋原繊維との間の空隙が小さい。加熱調理による筋原
繊維の収縮が小さいからである。さらに、脂肪は脂肪の
うで被覆されており食肉中からの脂肪の溶出を防いでい
る。
【0038】一方、従来の技術である水中油系の乳化液
のみを注入した食肉を加熱調理したものは、その組織は
天然の霜降り食肉の組織と異なり、むしろ、赤身肉の組
織に似ている。つまり、図4に示されるように、加熱調
理したあとの、水中油系の乳化液のみを注入した食肉
は、360×270(μm)中に約39本の筋原繊維が
あり、又、加熱調理により乳化液が溶出するからであ
る。
【0039】ちなみに、図5に示されるように、加熱調
理したあとの、カルシウム塩含有液のみを注入した食肉
は、360×270(μm)中に約50本の筋原繊維が
ある。又、筋原繊維と筋原繊維との間の空隙が小さい。
赤身肉よりも筋原繊維の収縮が大きいことがわかる。
【0040】又、図6に示されるように、加熱調理した
あとの、重合リン酸塩含有液のみを注入した食肉は、3
60×270(μm)中に約24本の筋原繊維があり、
筋原繊維の輪郭が分かりにくい。又、筋原繊維の収縮が
小さい。筋原繊維が部分的にアルカリ分解されたからで
ある。
【0041】尚、図7に示されるように、カルシウム塩
含有液次いで重合リン酸塩含有液を注入した食肉の加熱
調理したあとの組織は、図1に示される調理したあとの
天然の霜降り食肉の組織に近い。
【0042】走査型電子顕微鏡写真図1〜7に対する食
肉の組織の官能評価における特徴を以下に述べる。 図1の肉(霜降り肉) ジューシーであり、歯切れがよい。 図2の肉(赤身肉) バサバサした食感で、歯切れが悪い。 図3の肉(本発明による肉) ジューシーであり、歯切れがよい。 図4の肉(乳化液のみ注入) 噛みはじめはジューシーで柔らかいが、歯切れ が悪い。 図5の肉(Ca液のみ注入) 赤身肉以上に歯切れが悪い。 図6の肉(リン酸液のみ注入) 柔らかいが、食肉らしい食感でなくなる。 図7の肉(Ca液とリン酸液 ジューシー感はないが、柔らかく適度な歯ご を注入) たえがあり、霜降り肉の食感に近い。
【0043】
【実施例】
(実施例1)オーストラリア産牛の肩肉約1Kgを0〜
10℃でゆっくりと解凍した。その食肉に8.0%塩化
カルシウム含有液50mlを注射器を用いて注入した。
10分間タンブリングすることにより塩化カルシウム含
有液を食肉中に充分分散させた。更に2%トリポリリン
酸ナトリウム含有液50mlを注射器を用いてこれに注
入した。10分間タンブリンすることによりトリポリリ
ン酸ナトリウム含有液を食肉中に充分分散させた。次
に、牛脂30部、水69.4部、ショ糖脂肪酸エステル
0.3部及びポリグリセリン脂肪酸エステル0.3部の
比率の水中油系の乳化液100mlを注射器を用いて牛
肉に注入した。10分間タンブリングを行うことにより
上記乳化液を充分分散させた。このように処理された牛
肉を中心まで充分に火が通るまで加熱調理した。本品を
試食した結果、未処理の牛肉と比べソフトで歯切れがよ
くジューシーであった。
【0044】(実施例2)オーストラリア産牛のモモ肉
の冷凍品約1Kgを0〜10℃でゆっくりと解凍した。
その食肉に8.0%乳酸カルシウム含有液50mlを注
射器を用いて注入した。30分間放置することにより乳
酸カルシウム含有液を食肉中に充分分散させた。次に
0.5%トリポリリン酸ナトリウム、0.5%ピロリン
酸二水素ナトリウムを含有する溶液50mlを注射器を
用いて注入した。30分間放置することにより上記液を
食肉中に充分分散させた。更に、牛脂、調整乳清タンパ
ク質加工品5%の水溶液及びポリグリセリン脂肪酸エス
テルの比率が40部、59.5部及び0.5部とした水
中油系の乳化液200mlを注射器を用いて注入した。
30分間のタンブリングを行うことにより上記乳化液を
充分分散させた。このように処理された牛肉を中心まで
充分に火が通るまで加熱調理した。加熱調理時にはこの
牛肉から油脂が溶出しなかった。本品を試食した結果、
未処理の牛肉と比べソフトで滑らかな口溶けがありジュ
ーシーであった。
【0045】(実施例3)豚の肩肉約1Kgに8.0%
乳酸カルシウム含有液50mlを注射器を用いて注入し
た。10分間タンブリングをすることにより乳酸カルシ
ウム含有液を食肉中に充分分散させた。次に1.0%ピ
ロリン酸第二水素ナトリウム含有液50mlを注射器を
用いて注入した。10分間タンブリングをすることによ
りピロリン酸第二水素ナトリウム含有液を食肉中に充分
分散させた。これに、ラード及び調整乳清タンパク質加
工品10%の水溶液の比率が30部及び70部とした水
中油系の乳化液100mlを注射器を用いて注入した。
10分間タンブリングを行うことにより上記乳化液を充
分分散させた。このように処理された豚肉を中心まで充
分に火が通るまで加熱調理した。本品を試食した結果、
未処理の牛肉と比べソフトで口溶けがよくジューシーで
あった。
【0046】
【効果】本発明により、脂肪分の少ない赤身肉はソフト
で歯切れの良い食感とジューシーな風味を持つ霜降り状
の食肉に改質された。特に、その水相に調整乳清タンパ
ク質加工品を含有する乳化液を用いた場合、脂肪分の少
ない赤身肉はさらに滑らかな口溶けの食感と加熱調理時
に油脂が溶出しない特性が付与された。本発明により、
天然の霜降り肉と実質的に変わらない外観、調理適性、
食感及び風味を持つ食肉が製造できた。
【図面の簡単な説明】
【図1】天然の霜降り食肉を加熱調理したあとその垂直
断面を走査型電子顕微鏡により350倍に拡大した写真
の写し
【図2】赤身肉を加熱調理したあとその垂直断面を走査
型電子顕微鏡により350倍に拡大した写真の写し
【図3】赤身肉を本発明の請求項2の手段により改質し
た食肉を加熱調理したあとその垂直断面を走査型電子顕
微鏡により350倍に拡大した写真の写し
【図4】赤身肉を水中油系の乳化液のみを注入した食肉
を加熱調理したあとその垂直断面を走査型電子顕微鏡に
より350倍に拡大した写真の写し
【図5】赤身肉にカルシウム塩含有液のみを注入した食
肉を加熱調理したあとその垂直断面を走査型電子顕微鏡
により350倍に拡大した写真の写し
【図6】赤身肉に重合リン酸塩含有液を注入した食肉を
加熱調理したあとその垂直断面を走査型電子顕微鏡によ
り350倍に拡大した写真の写し
【図7】赤身肉にカルシウム塩含有液次いで重合リン酸
塩含有液を注入した食肉を加熱調理したあとその垂直断
面を走査型電子顕微鏡により350倍に拡大した写真の
写し
【符号の説明】
1 筋原繊維 2 筋原繊維と筋原繊維との隙間 3 脂肪 4 乳化液
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き 審査官 植野 浩志

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 食肉にカルシウム塩含有液、次いで重合
    リン酸塩含有液を注入した後、水中油系の乳化液を注入
    することを特徴とする霜降り状食肉の製造方法。
  2. 【請求項2】 水中油系の乳化液がその水相に調整乳清
    タンパク質加工品を含有したものであることを特徴とす
    る請求項1に記載の霜降り状食肉の製造方法。
JP5165844A 1993-05-27 1993-05-27 霜降り状食肉の製造方法 Expired - Lifetime JP2710005B2 (ja)

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