JP2709111B2 - 免疫系の感化及び腫瘍の治療のためのヘモシアニン及びアリルフォリンの使用 - Google Patents
免疫系の感化及び腫瘍の治療のためのヘモシアニン及びアリルフォリンの使用Info
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Description
モシアニン及びアリルフォリンを使用することに関す
る。
な血清蛋白である。ヘモシアニンは酸素を運搬する役割
を有する、銅を含んだ青色の蛋白質である。血中におけ
るその濃度は20−120mg/mlである。ヘモシアニンは軟体
動物の中ではカタツムリ(腹足類)、イカ(頭足類)、
ヒザラガイ(多板類)、ツノガイ(堀足類)、及びイガ
イ(双殻類)に見出される。また節足動物の中では、サ
ソリ及びクモ(蛛形類)、カブトガニ(剣尾類)、エ
ビ、ロブスター、カニ及びザリガニ(甲殻類)、並びに
ムカデ類(多足類)に見出される。
り、フェニルアラニン及びチロシン含有量が高いことを
特徴としている。完全変態性の昆虫の幼虫及びサナギに
おいては、60mg/mlまでの濃度において見出され、また
完全変態類及び不完全変態類の成虫においてはより低い
濃度で見出される。各々の動物の種属のアリルフォリン
には、特別の名称がある(ショウジョウバエのdrosophi
lin,オオクロバエのcalliphorinその他)。アリルフォ
リンは、酸素を結合しない。物質の搬送体およびクチク
ラ成分としての種々の機能について議論がなされてきて
いる。例えば最近になって、単クローン抗体の研究の過
程において、アリルフォリンは構造的に節足動物のヘモ
シアニンと一致し、恐らくはその誘導体であることが見
出されている。
いて合成される。これらの細胞は、少なくともそれらの
生物発生の際に、血液循環中で自由に浮動することはな
く、血液と接触している特定の組織(心筋隔膜、腸腺、
脂肪体、眼窩その他)と関連している。ヘモシアニン及
びアリルフォリンはこれらの細胞中で濃縮され、血液中
へと放たれる。カタツムリの天然ヘモシアニンは円筒形
であり、ポリオウィルスと同じ体積の35nmのものであ
る。他の軟体動物のヘモシアニンは、この寸法の半分で
ある。節足動物のヘモシアニン及びアリルフォリンは構
造的に、側部の長さ10nmの立体形状に基づいている。こ
の立体形状はアリルフォリンについては半分のこともあ
り、他方ヘモシアニンについては、立体形状はしばしば
少数が会合してオリゴマーとなる。節足動物の最大のヘ
モシアニン(カブトガニ)は8つの立体形状からなり、
側部の長さが25nmと、大雑把にいってリボソームの寸法
に対応している。
00−80,000の分子量を有し免疫学的に異なる8つまでの
サブユニットから成る。10nmの基本立体形状は、かかる
サブユニットから形成されたヘキソンである。各々の種
類のサブユニットは、ヘキソンが少数会合したヘモシア
ニンにおいて、特定の構造的役割を果たす。幾つかの完
全な分析手順が存在しており、また詳しいX線構造解析
モデルも存在する。アリルフォリンの遺伝的構造の詳細
の多くは公知である。
して透析し、二価のカチオンを除くことにより、サブユ
ニットへと分解することができる。軟体動物において
は、このサブユニットは7−8つの球状ドメインからな
り、これらのドメインの各々は、約55,000の分子量を有
している。各ドメインは、免疫学的に非常に異なってい
る。それらの内の一つは、完全に整列されている。各々
は活性な、銅2原子からなる酸素結合中心を有してい
る。元々の分子中には、このようなドメインが160個ま
で存在する。35nmの分子中におけるこれらの配列の詳細
は公知である。
というその性質に基づき、軟体動物及び節足動物が旧口
動物として脊椎動物から分離されて以来少なくとも6億
年にわたり、ヘモシアニンは最も強力な抗原として知ら
れたものの一つであった。哺乳類においては、ヘモシア
ニンは非常に強力な抗血清の形成へと導き、T4/T8細胞
の割合をT4ヘルパー細胞の方へと動かし、適用部位にお
いては、局部的な紅斑及びマクロファージによる浸潤へ
と導く。このことは長年にわたって、キーホールリンペ
ットヘモシアニン(KLH)による免疫学的研究において
行われていた。
種々の実験動物の生体内で、顕著な抗腫瘍作用を草する
ことが公知である。このKLHの特性は、繰り返し証明さ
れてきている。KLHによる臨床治療は、表在性膀胱癌の
場合には再発率を大きく減少させ、一方で不快な副作用
はこれまで観察されてはおよず、また他の種類の腫瘍も
また確実に影響を受けている(ユリンシック(C.D.Juri
ncic)らの、Uroscope,Information u.Fortbilding i.
d.Urologie,1986年1号)。膀胱癌細胞に対するKLHの正
確な作用機構は、まだ完全には明らかになってはいな
い。しかしながら、作用部位はこれまでの化学療法的な
部位とは全く異なることが見出されている。化学療法の
結果というものは、部分的に矛盾している。細胞障害性
の薬剤がすべての尿路上皮細胞に作用するのに対し、KL
Hは生体全体のマクロファージを刺激する(カーチス
(J.E.Curtis)らの「キーホールリンペットヘモシアニ
ンに対する人体の免疫応答における人体の免疫応答の関
係における抗原投与量」Journal of Laboratory in Cli
n.Med.,78:61 1971年)。カーチスは、KLHが人体におけ
る細胞性の主要な遅延型過敏症及び主要な抗体反応の両
者をもたらすことを示している。
カイン産生マクロファージを活性化する非特異性の刺激
剤として作用する。
同等の種類の物質である、追加的な強力な抗原を入手可
能とすることである。
キーホールリンペットヘモシアニン以外のヘモシアニ
ン、及び/又はアリルフォリンを使用することにより解
決される。
ーホールリンペットヘモシアニン以外のヘモシアニン、
アリルフォリン、或いはこれらの組み合わせを使用する
ことを扱っている。
について抗腫瘍作用を有することは公知である。好まし
くはオオクロバエ、マイマイ、タコ、ザリガニ、ガザ
ミ、カブトガニ、及びユーリペルマ(Eurypelma)の類
の動物から分離したヘモシアニン及びアリルフォリン
は、特に他の成分と結合した場合に、予期しない免疫的
及び腫瘍阻止作用を示した。
らの腫瘍に対する増殖抑制作用について実験する過程に
おいて、驚くべきことに、各種の類の動物のヘモシアニ
ン及びアリルフォリンが、抗腫瘍作用における免疫的に
顕著な差異及び強度の異なりを示すことが見出された。
この観点に立ち、免疫系及び腫瘍の治療に対する好まし
い影響の故に、キーホールリンペットヘモシアニンに加
えて、他にも有用なヘモシアニン及びアリルフォリンの
類の物質を使用することができる。特に、キーホールリ
ンペットヘモシアニンの使用について知られた膀胱癌と
は別の種類の腫瘍も、これらの物質で治療しうる。既に
述べたように、ヘモシアニンの抗腫瘍作用の機構は知ら
れていない。しかしながらヘモシアニンは、免疫グロブ
リン及び主要組織適合性(抗原遺伝子)複合体即ちMHC
蛋白質の基本構造に驚くほど似ている部分的な構造を有
している。このことが、既に述べた免疫系に対する作用
をも含めて、これらが行う作用の表れ方の理由となって
いるのであろう。種々のヘモシアニンの抗腫瘍作用を、
メチルコラントレンで誘発されたマウスの繊維肉腫につ
いて試験した。得られたデータは、ヘモシアニン及びア
リルフォリンが免疫能力を予防的に増大させるという結
論を導いた。
足動物の組織から分離され、軟体動物又は節足動物の個
々の種類は、ユーリペルマ、カブトガニ、ザリガニ、カ
ザミ、オオクロバエ、マイマイ及びタコの類からなる群
から選択される。ここに述べた種類が、軟体動物或いは
節足動物の中で、免疫系の感化及び腫瘍増殖抑制作用を
有するヘモシアニン又はアリルフォリンが分離されうる
限定的な種類でないことは明らかである。
られた結果を表1に示す。抗腫瘍作用はいずれの場合に
おいても存在するが、例えばSDSWで変性した成分におけ
るものよりも、天然成分の方が明らかに強力であること
が見出された。
離するためには、四肢、血液小窩又は心臓を刺すことに
より軟体動物又は節足動物の血液を取り出し、血球を遠
心分離して凝固を防ぐ。かくして得られた上清即ちプラ
ズマから、調製用超遠心機においてペレット化しPBS中
に再溶解することにより、より小さい血リンパ成分から
ヘモシアニン又はアリルフォリンを精製する。生成され
るヘモシアニン又はアリルフォリン標品は、95%まで純
粋である。次いで陰イオン交換クロマトグラフィーを行
うことにより、100%の純度が得られる。別の血清蛋白
質からのアリルフォリンのさらなる精製はpH値9.6(グ
リシン/OH緩衝液、10mM EDTA)における透析によって達
成され、その場合アリルフォリンは次いでサブユニット
へと解離する。続いての陰イオン交換クロマトグラフィ
ーにより、100%純粋なアリルフォリンが得られ、これ
は中性の緩衝液(トリス/塩酸)に対して透析すること
によりヘキソンへと再構成される。
ンチュラ(Eurypelma californicum)、食用カタツムリ
(Helix pomatia)、マダコ(Octopus vulgaris)、川
ザリガニ(Astacus fluviatilis)、浜ガニ(Caucinus
maenas)或いはカブトガニ(Limulus polyphemus)の種
から得るべきである。
rythrocephala)から得られる。
Mトリス/塩酸緩衝液において得られる。投与量は、実
験動物毎に一日当たり2部位(鼠径部又は腋窩)へと皮
下投与された、0.5mlPBS中の3×100μgである。使用
された癌細胞は、生体内通路からとった遺伝子組成が同
じである腹水細胞(meth−A−ascites cells)であっ
た。これらの細胞はトリプトファン・ブルーで試験され
た(2%陽性)。1×105個の細胞が皮内に移植され
た。前述した好ましい動物の種の一つから取ったヘモシ
アニンによる治療は、+2、+5及び+7日に皮下に10
0μgを投与することによって行われた。表1は、腫瘍
の容積及び4週間後の生存率に関する結果を示してい
る。表1に示されているように、治療を行わないコント
ロール(対照標準)グループにおいては、10匹の実験動
物のうち腫瘍移植後28日の期間を生き延びたものはいな
かったが、これに対してヘモシアニンで治療された群に
おいては10匹の実験動物のうち2〜6匹がこの期間を生
き延び、28日後の腫瘍容積は、治療しないコントロール
グループにおける腫瘍容積の11〜34%であった。
が打ち切られたという事実に起因するものであり、良好
な免疫的治療は約2週間だけ持続することが経験的に示
された。
インを含むサブユニットもまた、有効に使用することが
できる。冒頭の部分で述べたように、軟体動物のヘモシ
アニンは7〜8つの球状ドメインからなるサブユニット
から構成されており、その各々は55,000程度の分子量を
有している。節足動物のヘモシアニン及びアリルフォリ
ンは、分子量70,000−80,000で免疫学的に異なる8つま
でのサブユニットを含む。ドメインのサブユニットは免
疫学的に非常に多様なものであるから、研究されたドメ
インのすべてのサブユニットが幾らかの有効性を示すと
いうことは驚くべきことである。
ペルマ・カリフォルニカム(Eurypelma californicum)
のヘモシアニンのa、d及び/又はeである。しかし表
1に示されているように、腫瘍容積を減少させることに
おける効果が観察されているとはいえ、サブユニットd
の作用機構は未だ明らかではない。だがこの表1の結果
は明らかに、サブユニットdについても効能が保証でき
るという結論を導くことを許すものである。
x pomatia)から取ったβcヘモシアニンのドメインd
及び/又はgという好ましい使用もまた、14〜21日後に
おける腫瘍の増殖阻止作用を示している。
ニンのサブユニットaはまた、キモトリプシンによって
分断することもできる。分断された混合物から、23個の
アミノ酸からなるペプチド断片を得ることができ、これ
が必要とされる種類の免疫学的効果を奏するものであ
る。
くはガザミ又はタコから取ったヘモシアニン、或いはオ
オクロバエから取ったアリルフォリンに対して結合され
る。これらの23個のアミノ酸を含む結合したペプチドサ
ブユニットの作用は表1に示されており、本発明のこの
形態が特に大きな効果を有することが看取されうる。即
ち腫瘍の大きさの劇的な減少に加えて、10匹の実験動物
のうち7又は8匹という高い生存率が観察されるからで
ある。
したサブユニットが、混合物中において、或いは化学的
又は物理的に他の成分と結合した場合には、必要とされ
る効果の強化も達成することができる。この場合の他の
成分とは、ウイルス又はウイルスの構成成分、バクテリ
ア又はバクテリア構成成分、菌類又はその構成成分、或
いは寄生動物又はその構成成分からなるものである。こ
のような結合は、直接接種を可能ならしめるという利点
を有している。
ォリン、或いはそれらのサブユニットのさらなる好まし
い使用は、抗体を増加し、又は結合される抗原に対する
細胞免疫系の反応性を増すという目的で、投与前に抗原
と物理的又は化学的に結合させることにある。
r cells)の断片と結合された場合には、特に強い効果
が達成される。表1に示されているように、この結合に
より、多大の腫瘍減少効果と共に、生存率を増大させる
効果も達成されるものである。
は節足動物の血液を取り出し、血球を遠心分離して凝固
を防いだ。上清(=プラズマ)から、調製用超遠心機に
おいてペレット化し次いでPBS(リン酸緩衝食塩水)中
に再溶解することにより、より小さい血リンパ成分から
ヘモシアニン又はアリルフォリンを精製した。生成され
たヘモシアニン標品は、95%以上まで純粋であった。次
いで陰イオン交換クロマトグラフィーを行うことによ
り、100%の純度が得られた。ペレット化されたアリル
フォリンはより不純物を含んでいたが、これはアリルフ
ォリンが別の血清蛋白質を緩く結合していたためであ
る。このような結合は、pH値9.6(グリシン緩衝液、10m
M EDTA)においてアリルフォリンをサブユニットへと解
離することにより切断できた。続いての陰イオン交換ク
ロマトグラフィーにより、100%純粋なアリルフォリン
が生成され、これは中性の緩衝液(トリス/塩酸)に対
して透析することによりヘキソンへと再構成された。
レンで誘発されたマウスの繊維肉腫について試験した。
この手本については、例えばムンダー(P.G.Munder)他
「生体内及び生体外における異種の物質の抗腫瘍作用」
onkologie 5,4−7,1982年に記載がある。アオバエ即ち
カリフォーラ・エリスロセファーラ(Calliphora eryth
rocephala)のアリルフォリン、及び次の動物のヘモシ
アニンが使用された。食用カタツムリ(エスカルゴ)即
ちヘリックス・ポマーティア(Helix pomatia)、マダ
コ即ちオクトパス・ヴルガリス(Octopus vulgaris)、
川ザリガニ即ちアスタカス・フルヴィアティリス(Asta
cs fluviatilis)、浜ガニ即ちカルシヌス・マエナス
(Carcinus maenas)、カブトガニ即ちリムルス・ポリ
フェムス(Limulus polyphemus)及びタランチュラ即ち
ユーリペルマ・カリフォルニカム(Eurypelma californ
icum)である。すべての標品は、pH7.5である0.1モルの
トリス/塩酸緩衝液中にあった。投与量は、実験動物毎
に一日当たり2部位(鼠径部又は腋窩)へと皮下投与さ
れた、0.5mlPBS中の3×100μgであった。使用された
癌細胞は、生体内通路から取ったのと遺伝的組成が同様
の腹水細胞(meth−A−ascites cells)であった。こ
れらの細胞は、トリプトファン・ブルーで試験された
(2%陽性)。1×105個の細胞が皮内に移植された。
ヘモシアニンによる治療は、+2、+5及び+7日に皮
下に100μgを投与することによって行われた。表1
は、腫瘍の容積及び4週間後の生存率に関する結果を示
している。看取されうるように、治療を行わないコント
ロール(対照標準)グループにおいては、10匹の実験動
物のうち腫瘍移植後28日の期間を生き延びたものはいな
かったが、これに対してヘモシアニンで治療された群に
おいては10匹の実験動物のうち2〜6匹がこの期間を生
き延び、28日後の腫瘍容積は、治療しないコントロール
グループにおける腫瘍容積の11〜34%であった。記録さ
れた最小の効果は甲殻類のヘモシアニンについてのもっ
であったが、これはサブユニットの種類の数が少なく、
従って抗原デテルミナントの数が少ないことに起因して
いる(マークル(J.Markl)「節足動物からの呼吸蛋白
質ヘモシアニンにおける構造的に異なるサブユニットの
進化と機能」Biol.Bull.171,90−115,1986年参照)。
(Eurypelma californicum)のヘモシアニンのサブユニ
ットa、d並びにeと、食用カタツムリ即ちヘリックス
・ポマーティア(Helix pomatia)のβc−ヘモシアニ
ンのドメインd及びgを、公知の方法(マークル(J.Ma
rkl)他「クモのヘモシアニン、IV、ユーリペルマ・カ
リフォルニカムのヘモシアニンのポリペプチド鎖の比
較」、Hoppe-Seyler's Z.Physiol.Chem.,360,639−650,
1979年;ロンティー(R.Lontie)他「ヘリックス・ポマ
ーティアのヘモシアニンの成分、機能ユニット及び活性
部位」、Life Chem.Rep.Suppl.1,109−120,1983年)に
より、天然の状態で分離し、これらの抗腫瘍作用をメス
−A−肉腫(meth−A−sarcoma)モデルについて試験
した。
カタツムリのヘモシアニンのドメインdはまた、SDSで
変性した状態においても使用した(2%のSDS中におけ
る変性。SDSはマウスに投与する前に透析によて0.1%と
希釈した)。
を限界トリプシン溶解(トリプシノリシス)により、大
きさが殆ど同じで分子量が34,000及び37、000の二つの
断片と切断し、これらの断片を文献記載のようにして分
離した(シャータウ(Schartau)他「クモのヘモシアニ
ン、XIX、ユーリペルマ・カリフォルニカムのヘモシア
ニンからのサブユニットdの完全なアミノ酸配列および
e鎖に対する比較」Hoppe-Seyler'sZ.Physiol.Chem.,36
4,1383−1409,1984年)。これら二つの変性されたペプ
チド断片をdTn34及びdTn37と呼ぶこととし、これらも
メス−A−肉腫(meth−A−sarcoma)モデルについて
試験した。
ついても抗腫瘍作用は存在したが、変性された成分より
も天然成分の方が明らかに顕著な結果が記録された。ク
モから取ったサブユニットdの場合には、完全なポリペ
プチド鎖とC末端ペプチド断片dTn37の間には明確な差
異は観察されなかったが、一方N末端ペプチド断片dTn
34の作用は明らかに低かった。全体として、分離された
成分の作用は、例2による完全なヘモシアニンの作用よ
りも明らかに弱いものであった。
文献(マークル(J.Markl)「タランチュラのヘモシア
ニンに対する単クローン抗体の特徴付け」、Verh.Dtsc
h.Zool.Ges.80,1987年)に記載されたシーケンス結合単
クローン抗体Ec−8を利用して、サブユニットaのキモ
トリプシン切断混合物から免疫親和性クロマトグラフィ
ーにより分離した。これは特にタランチュラのサブユニ
ットaに対して選択性を有すると共に、Ec−8に対応す
る抗原デテルミナントを担持している。この分離された
抗原をガザミ(Carcinus)及びタコ(Octopus)のヘモ
シアニン、並びにオオクロバエ(Calliphora)のアリル
フォリンに対して標準的な方法(パルフレイマン(J.W.
Palfreyman)らの「小さな合成オリゴペプチドを免疫源
として使用してポリペプチド特異抗血清を製造するため
のガイドライン」、J.Immunol.Meth.75,383−393,1984
年)により結合し、この形態においてメス−A−肉腫
(meth−A−sarcoma)モデルについて試験した。これ
により、Ec−8抗原決定基が発生しないこれら3種の担
体分子の抗腫瘍作用が高められた(表1)。
性について、ユーリペルマ(タランチュラ)、カルシヌ
ス(浜ガニ)及びマダコのヘモシアニン、並びにカリフ
ォーラ(アオバエ)のアリルフォリンでもって試験し
た。この試験は、モルモットにネオ抗原として皮下注射
した後に抗体の力価(タイター)を測定することにより
行った、血球機能アッセイである。2匹のコントロール
(対照標準)モルモットを、シクロスポリンで免疫反応
を抑制した(6.25mg/kg体重、1日2回を30日)2匹の
モルモットと比較した。この方法に関しては、アムロー
(P.O.Amlot)らの「生体内における蛋白質(KLH)及び
多糖類(DNP−Ficoll)ネオ抗原に対する人体の免疫反
応:シクロスポリンを投与した骨髄移植患者と比較した
通常の患者」Clin.Exp.Immunol.64,125−135,1986年を
参照されたい。抗体の力価は、二次抗血清としてアルカ
リ性フォースファターゼと結合された抗(モルモットIg
M)及び抗(モルモットIgG)を使用して、ミクロタイタ
ーウェル当たりのヘモシアニン又はアリルフォリンを1n
gとし、ELISAにより検出した。試験された4つの物質
は、アムロー(P.O.Amlot)らにより要求されたすべて
の基準を満足し、免疫欠陥の診断のために適しているこ
とが証明された。かくして、免疫欠陥及び他の免疫的パ
ラメーターの診断のためのKLHの非常に良好な有用性
は、驚くべきことにすべてのヘモシアニン及びアリフォ
リンについても当てはまることが明らかになった。
ス、マダコ即ちオクトパスのヘモシアニン、及びアオバ
エ即ちカリフォーラのアリルフォリンを、文献記載の方
法(パルレイマン(J.W.Palreyman)他「小さな合成オ
リゴペプチドを免疫源として使用してポリペプチド特異
抗血清を製造するためのガイドライン」J.Immunol.Met
h.75,383−393,1984年);ダーメン(Jan Dahmen)他
「血液型P1抗原の末端多糖類(α−D−Gal−(1−>
4)−β−D−Gal−(1−>4)−β−D−GLcNAc)
部分のスペーサー・アーム、脂質及びエチルグリコシド
の合成;ネオ糖蛋白質の調製」Carbohyd rate Research
129,63−71,1984年;ダーメン(Jan Dahmen)他「人尿
中に見出される四糖(α−D−GLc−(1−>6)−α
−D−GLc−(1−>D−GLc−(1−>4)−D−GL
c)のエチルグリコシド、及びプルランからのスペーサ
ー・アーム脂質の合成;ネオ糖蛋白質の調製」Carbohyd
rate Research 127,27−33,1984年;ダーメン(Jan Dah
men)他「血液型Pk抗原の多糖類部分(α−D−Gal−
(1−>4)−β−D−Gal−(1−>4)−β−D−G
Lc)のスペーサー・アーム、脂質及びエチルグリシドの
合成:ネオ糖蛋白質の調製」Carbohydrate Research 12
7,15−25,1984年;ダーメン(Jan Dahmen)他「グリコ
シド合成における2−臭化エチルグリコシド:α−L−
Fuc−(1−>2)−D−Gal及びβ−D−Gal−(1−
>4)−D−GLcNAcを含む糖蛋白質の調製」Carbohydra
te Research 125,237−245,1984年;レミュー(R.U.Lem
ieux)、ベイカー(D.A.Baker)及びバンドル(D.R.Bun
dle)「炭水化物特異抗体の生成のための方法論」Can.
J.Biochem.55,1977年;アプリン(J.D.Aplin)およびリ
ストン・ジュニア(J.C.Wriston,Jr.)「複合炭水化
物、或いは蛋白質及び脂質の調製、特性及び適用」CRC
Critical Reviews in Biochemistry,pp.259,1981年;ピ
ント(B.M.Pinto)及びバンドル(D.R.Bundle)「人工
抗原としての使用からの複合糖質の調製:単純化した手
順」Carbohydrate Research 124,313−318,1984年)に
より、部分的に以下に示す市販の物質と結合し、また部
分的に他の源から取った物質と結合した。
物 c)ウイルス断片(ヘルペスウイルス) d)バクテリア断片(BCG、ムラミルジペプチド) e)クリプトコックス・ネオフォルマンス(Cryptococc
us neoformans)の菌類断片 f)住血吸虫すなわちシストソーマ・マンソーニ(Schi
stosoma mansoni)のシストソームラ(Schistosomula)
表面抗原 マウスに対して投与することにより(6週間以上にわ
たる3回の標準的な免疫化)、遺伝子組成が同じメス−
A−腹水断片と共に、強力なハプテン特異抗血清が得ら
れた。一方ではヘモシアニン自体の免疫転形及び抗腫瘍
機構を通じて作用し、また他方では特異な抗ハプテン抗
体を通じて作用する、組み合わせでの治療効果を示すた
めに、次の手順が行われた。ユーリペルマのヘモシアニ
ンをメス−A−腹水から取った腫瘍細胞断片に結合し、
メス−A−肉腫癌モデルについて試験した。表1の結果
は、純粋なユーリペルマのヘモシアニンによる処置と比
較しての治療効果の増大を示している。28日後において
も10匹のうち8匹が生存していた。従って非特異なアジ
ュバントとしてのヘモシアニンと特異な抗原成分との組
み合わせは、より有効な接種物であることが証明された
(原理に関しては、シューマッヒャー(V.Schirrmache
r)「最小の後遺症の免疫コントロールを達成する手段
としての腫瘍特異T細胞の術後活性化」ゼネラル・モー
タース癌研究財団、Accomplishments in Cncer Researc
h 1986,フオートナー及びローズ編の218−232頁を参
照)。
タツムリのヘモシアニンを3回皮下投与することによ
り、10匹のマウスを6週間にわたり免疫化した。さらに
3週間の後、メス−A−腹水癌細胞を例2の如くにして
移植し、次いでマウスをガザミ即ちカルシヌスのヘモシ
アニンで治療した(軟体動物と節足動物のヘモシアニン
の間には、免疫的な交叉反応はない)。これとは別に、
10匹のマウスをオオクロバエ即ちカリフォーラのアリル
フォリンで予め処置し、癌細胞の移植後にタコ即ちオク
トパスのヘモシアニンで処置した。表1に示されている
如く、これらの処置の結果は何れの場合にも、予備処置
をしない動物の場合よりも著しく良好であった。カブト
ガニ、ユーリペルマ、ガザミ、タコ及びマイマイのヘモ
シアニン、並びにオオクロバエのアリルフォリンによる
モルモットの免疫化実験による測定は、投与後における
マクロファージ及びT4ヘルパー細胞の大幅な膨張を示し
ていた。全体として、これらのデータから、ヘモシアニ
ン及びアリルフォリンが免疫の能力を予防的に増大する
という結論が導かれる。
テンとしてEc−8特異ペプチド断片)としてガザミ及び
タコのヘモシアニン並びにオオクロバエのアリルフォリ
ンを使用することは、例3の最後の部分において既に述
べた。これと平行して、このハプテンをこれら3つの担
体と共に2匹のモルモットに注射した(皮下に0.1mgを
3回、6週間にわたり)。結果として、各々の場合にお
いて、担体分子に対するのみでなく、ハプテンに対して
も強力な抗血清が得られた。ハプテンのみを注射された
2匹の対照標準としたモルモットは、陰性反応を示し
た。陽性のモルモットにおけるハプテンの反応は、担体
分子のものとは容易に免疫的に区別され得た。なぜなら
それは、タランチュラに特異的なエピトープ(抗原決定
基)であったからである。ハプテンを標的とする免疫グ
ロブリンIgG断片は、タランチュラのヘモシアニンと結
合された臭化シアンのセファローズ(Sepharose)CL−4
B上での親和性精製により分離され、この免疫ブロッテ
ィング(immune blot)は、サブユニットaとの高度に
特異な反応を示した。この課題に関してのさらなるデー
タは、例4及び例5によって与えられている。
Claims (20)
- 【請求項1】ヘモシアニン、アリルフォリン、又はこれ
らの組み合わせであって、ユーリペルマ(Eurypelm
a)、カブトガニ(Limulus)、ザリガニ(Astacus)、
ガザミ(Carcinus)、オオクロバエ(Calliphora)、マ
イマイ(Helix)及びタコ(Octopus)の種からなる群か
ら選択される軟体動物又は節足動物の組織から分離され
たものを活性成分として含む腫瘍治療剤。 - 【請求項2】ユーリペルマ・カリフォルニカム(Eurype
lma californicum)のヘモシアニンが使用される、請求
項1記載の腫瘍治療剤。 - 【請求項3】ヘリックス・ポマーティア(Helix pomati
a)のヘモシアニンが使用される、請求項2記載の腫瘍
治療剤。 - 【請求項4】オクトパス・ヴルガリス(Octopus vulgar
is)のヘモシアニンが使用される、請求項1記載の腫瘍
治療剤。 - 【請求項5】アスタカス・フルヴィアティリス(Astacu
s fluviatilis)のヘモシアニンが使用される、請求項
1記載の腫瘍治療剤。 - 【請求項6】カルシヌス・ミアナス(Carcinus meana
s)のヘモシアニンが使用される、請求項1記載の腫瘍
治療剤。 - 【請求項7】リムルス・ポリフェムス(Limulus polyph
emus)のヘモシアニンが使用される、請求項1記載の腫
瘍治療剤。 - 【請求項8】カリフォーラ・エリスロセファーラ(Call
iphora erythrocephala)のアリルフォリンが使用され
る、請求項1記載の腫瘍治療剤。 - 【請求項9】ヘモシアニン又はアリルフォリンのサブユ
ニットが使用される、請求項1記載の腫瘍治療剤。 - 【請求項10】サブユニットが抗原性ドメインを含むも
のである請求項9記載の腫瘍治療剤。 - 【請求項11】約55,000の分子量を有する軟体動物のヘ
モシアニンサブユニットの球状ドメインの一つが使用さ
れる、請求項9又は10記載の腫瘍治療剤。 - 【請求項12】約70,000−80,000の分子量を有する節足
動物のヘモシアニン又はアリルフォリンのサブユニット
の一つが使用される、請求項9又は10記載の腫瘍治療
剤。 - 【請求項13】ユーリペルマ・カリフォルニカム(Eury
pelma californicum)のヘモシアニンのサブユニット
a、d、e又はその組み合わせが使用される、請求項12
記載の腫瘍治療剤。 - 【請求項14】キモトリプシンによるサブユニットaの
切断により得られた、23個のアミノ酸からなるペプチド
断片が使用される、請求項13記載の腫瘍治療剤。 - 【請求項15】23個のアミノ酸からなるペプチド断片が
ガザミ(Carcinus)又はタコ(Octopus)からのヘモシ
アニン、或いはオオクロバエ(Calliphora)からのアリ
ルフォリンに対して結合される、請求項14記載の腫瘍治
療剤。 - 【請求項16】ヘリックス・ポマーティア(Helix poma
tia)のβc−ヘモシアニンのドメインd、g又はその
組み合わせが使用される、請求項12記載の腫瘍治療剤。 - 【請求項17】ヘモシアニン、アリルフォリン又はその
組み合わせが、ウイルス又はウイルスの構成成分、バク
テリア又はバクテリア構成成分、菌類又はその構成成
分、或いは寄生動物又はその構成成分に対して構造的な
類似性を示し、またはこれらと混合されるか、化学的又
は物理的にこれらと結合される、請求項1記載の腫瘍治
療剤。 - 【請求項18】結合される物質は直接接種に適したもの
である、請求項17記載の腫瘍治療剤。 - 【請求項19】ヘモシアニン、アリルフォリン又はその
組み合わせは、免疫反応を増強するため投与前に抗原と
物理的又は化学的に結合される、請求項1記載の腫瘍治
療剤。 - 【請求項20】結合はメス−A−腹水断片(meth−A−
ascites fragments)において行われる、請求項19記載
の腫瘍治療剤。
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