JP2705997B2 - ガス放電パネル - Google Patents

ガス放電パネル

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JP2705997B2 JP2161894A JP16189490A JP2705997B2 JP 2705997 B2 JP2705997 B2 JP 2705997B2 JP 2161894 A JP2161894 A JP 2161894A JP 16189490 A JP16189490 A JP 16189490A JP 2705997 B2 JP2705997 B2 JP 2705997B2
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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) この発明は、ガス放電パネルに関するもので、特に陰
極に特徴を有するガス放電パネルに関するものである。
(従来の技術) 陰極及び陽極間に所定の電圧を印加し両電極間のガス
媒体を放電させるガス放電パネルは、視野角が広いこ
と、コントラスト比が高いこと、自己発光するため表示
が見やすいこと、薄型のパネルが作製出来ること等の特
徴を有しており、OA機器等の表示装置に利用されている
他、高品位テレビ等への応用が期待されている。
このようなガス放電パネルは、駆動方法で大別すると
AC型のものとDC型のものとに分けられる。DC型のガス放
電パネルは、駆動回路が比較的簡単であるという特徴を
有する。しかし、陰極表面が放電空間に直接露出する構
造となるため、陰極材料の特性がパネルの放電特性に直
接影響する。さらに陰極が直接イオン衝突を受けるため
陰極のスパッタリング特性によってパネルの寿命は大き
く左右される。従って、DC型のガス放電パネルの特性を
向上させるためには、陰極材料の検討が非常に重要にな
る。
陰極材料の検討にあたっては、仕事関数が小さくかつ
スパッタ率が小さい材料を選択するのが良いことが知ら
れている。その理由は、仕事関数が小さいと陰極材料か
らの二次電子放出が大きくなりガス放電パネルの駆動電
圧を低く出来るからである。また、スパッタ率が小さい
とガス放電パネルの寿命を長く出来るからである。
このような材料としては、希土類(例えばランタン)
化合物、酸化物、これらより仕事関数及びスパッタ率は
大きいが、ニッケル等が知られている。
陰極を希土類化合物の一種である六ホウ化ランタン
(LaB6)で構成したガス放電パネルが、例えば文献(テ
レビジョン学会技術報告,12,(49),(1988.11),p
p.43〜48)に開示されている。このガス放電パネルは、
ニッケルを陰極としたものに比べ低い電圧で駆動出来た
が、寿命の点で満足出来るものではなかった。
また酸化物は、電気抵抗が高過ぎるため、また焼成に
よりさらに高次の酸化物になるため、陰極材料としては
不向きである。従って、陰極を酸化物で構成したガス放
電パネルは、まだ実用化されていない。
このような訳で、現在のところは、ニッケルが陰極材
料として最も広く用いられている。また、ニッケルは、
スクリーン印刷法により容易に厚膜化出来大型のガス放
電パネルの形成に適しているという点からも広く用いら
れている。
(発明が解決しようとする課題) しかしながら、ニッケル厚膜を陰極材料として用いた
従来のガス放電パネルは、パネル内に封入されているネ
オン−アルゴン等のガスの電離によって生じたイオンに
よりニッケルがスパッタリングされ陰極が損傷を受ける
恐れがある。このため、より長寿命なガス放電パネルを
得ようとした場合技術的に満足出来るものではなかっ
た。
また、パネル内に放電ガスと共に水銀を封入しイオン
衝撃を緩和すると共に局部的な放電集中を防止し、これ
により陰極のスパッタリングによる損傷を防ぐ方法もあ
るが、水銀封入作業が複雑でコスト高になると共に安全
性確保が大変であること、パネル破砕時に水銀汚染が生
じる等の問題点があった。
また、陰極をニッケル厚膜で構成したガス放電パネル
では、表示を行なわせるための(ガス放電を行なわせる
ための)駆動電圧が高い(決して低いとは云えない)と
いう問題点があった。
さらに、ニッケルペーストには、焼成工程でニッケル
が酸化されることを防止するためにB(ホウ素)等のよ
うな還元剤が含有されていた。このため、還元剤の効力
を有効に得るためには焼成条件等を厳しく管理しなけれ
ばならないという問題点があった。
この発明はこのような点に鑑みなされたものであり、
従ってこの発明の目的は、従来より低い電圧で駆動が出
来、水銀封入をすることなく長寿命であるガス放電パネ
ルを提供することにある。
(課題を解決するための手段) この目的の達成を図るため、この発明によれば、陰極
及び陽極を具えこれら電極間のガスの放電により発光す
るガス放電パネルにおいて、 前述の陰極を、:ランタンクロマイト(LaCrO3)、
:ランタンカルシウムクロマイト(La1-XCaXCrO3。た
だし0<X<1)、:アルミナ(Al2O3)ドープの酸
化亜鉛(ZnO)および:アンチモン(Sb)ドープの酸
化スズ(SnO2)から選ばれた1種(以下、説明の都合
上、これを電気伝導性酸化物ともいう。)を含む構造
体、で構成したことを特徴とする。
(作用) このような構成によれば、電気伝導性酸化物の仕事関
数及びスパッタ率が、ニッケルのものに比べ共に小さい
ので、陰極をニッケル厚膜とした従来のガス放電パネル
より駆動電圧が低く寿命が長いガス放電パネルが得られ
る。
また、電気伝導性酸化物は酸化物であるため電流密度
が、ニッケル等の金属に比べ高くならない。従って、放
電の集中が起きないので水銀封入の必要性もなくなる。
また、電気伝導性酸化物は、高温に対し安定である。
このため、これを用いた陰極は、ガス放電パネルの作製
工程中の種々の熱処理工程においても特性が損なわれる
ようなことはない。
さらに、還元剤が不要になるので、工程自由度が向上
する。
また、電気伝導性酸化物としてアルミナドープの酸化
亜鉛又はアンチモンドープの酸化スズを用いる構成によ
れば、酸化亜鉛のみまた酸化スズのみを用いる場合より
電気抵抗が小さい陰極が得られる。
(実施例) 以下、図面を参照してこの発明のガス放電パネル(以
下、パネルと略称する場合もある。)の実施例につき説
明する。なお、説明に用いる各図はこの発明が理解出来
る程度に各構成成分の寸法、形状、配置関係を概略的に
示してある。また、説明に用いる各図においては、同様
な構成成分については同一の番号を付して示している。
また、以下の説明で述べる材料名及び材料の量、温
度、膜厚等の数値的条件並びに使用装置等この発明の範
囲内の好適例にすぎない。従って、この発明が以下の条
件に限られるものではないことは理解されたい。
第1実施例 先ず、電気伝導性酸化物を含む構造体(即ち陰極)
を、電気伝導性酸化物の粒子と、低融点ガラスから成る
バインダーとで構成した例により、第1実施例のパネル
の説明を行なう。
第1図は、その説明に供する図であり、第1実施例の
ガス放電パネルを陰極及びこの陰極が形成されている基
板に着目して示した部分的な断面図である。
第1図において、11は基板を示す。この基板11は、ガ
ス放電パネルで一般に用いられる絶縁性基板や透明絶縁
性基板で構成出来る。この実施例の場合ガラス基板で構
成してある。
このガラス基板11上には、電気伝導性酸化物の粒子13
と、低融点ガラスから成るバインダー15とで構成され
た、電気伝導性酸化物を含む構造体21aから成る陰極が
設けてある。
なお、この実施例では、電気伝導性酸化物の粒子とし
て粒径が数umのランタンクロマイト(LaCrO3)の粒子を
用い、低融点ガラスとして公知の鉛(Pb)ガラスを用い
ている。
次に、この第1実施例の理解を深めるために、上述の
電気伝導性酸化物を含む構造体21aの形成方法の一例に
つき説明する。
始めに、LaCrO3を例えばボールミルを用い粒径が数μ
mとなるように粉砕する。次いでこの粉末を乾燥するた
めに約150℃程度の温度のオーブンで所定時間熱処理す
る。次いで、この粉末と、鉛ガラスと、ビークルとを混
合してスクリーン印刷用のペーストを調製する。なお、
この際の混合比を、この実施例では、LaCrO3:Pbガラ
ス:ビークル=45:15:40(重量比)としている。
その後、ガラス基板11上に上述のペーストを、公知の
スクリーン印刷法により印刷する。そしてこれを所定の
温度で焼成することにより、上述の構造体21aを得るこ
とが出来る。
第2実施例 第1実施例で用いたLaCrO3の代わりにLa0.8Ca0.2CrO3
の組成のランタンカルシウムクロマイトを用い、第1実
施例と同様の手順でランタンカルシウムクロマイトを含
む構造体21aから成る陰極を有する第2実施例のパネル
を作製する。
この第2実施例パネルの構成によれば、La1-XCaXCrO3
(但し、0<X<1)の抵抗値がLaCrO3に比べ小さいの
で、パネルの大型化を行った場合でもLaCrO3を用いる場
合より敗戦抵抗の増大を小さくすることが出来る。
なお、La1-XCaXCrO3はLaCrO3のLaの一部をCaで置換す
ることにより得られる。そして、La1-XCaXCrO3の抵抗値
とCaの置換量Xとの関係は例えば文献(小瀬三郎「高導
電性酸化物“ランタンクロマイト”」化学工業,(197
4.12),pp.72〜79に開示されているようなものであるの
で、パネル設計に応じた所望の抵抗値のランタンカルシ
ウムクロマイトの入手は容易に行える。
第3実施例 次に、電気伝導性酸化物を含む構造体(即ち陰極)
を、配線電極(以下、下地電極と称する。)と、電気伝
導性酸化物の粒子と、低融点ガラスから成るバインダー
とで構成した例により、第3実施例のパネルの説明を行
なう。
第2図は、その説明に供する図であり、第3実施例の
ガス放電パネルを第1図と同様にして示した部分的な断
面図である。
この第3実施例のガス放電パネルでは、ガラス基板11
上に、配線抵抗を低減する目的で先ず下地電極17を設け
てあり、この下地電極17上に第1実施例と同様な電気伝
導性酸化物の粒子13と、低融点ガラスから成るバインダ
ー15とで構成した上地電極18が設けてある。そして、こ
れらの構成成分17,15及び13で、電気伝導性酸化膜を含
む構造体21bを構成している。
なお、この構造において放電空間に露出される部分は
上地電極18ということになる。また、下地電極17は、種
々の材料で構成出来るが、この実施例ではニッケル厚膜
で構成してある。
下地電極17及び上地電極18で構成した上述のような構
造体21bは、ガラス基板11上に公知のニッケルペースト
(例えば、エレクトロ・サイエンス・ラボラトリ(ES
L)社製のESL−#2554)をスクリーン印刷法により塗布
後これを焼成しニッケル厚膜から成る下地電極17を形成
し、続いて、このニッケル厚膜上に第1実施例で調製し
たLaCrO3を含むペースト或いは第2実施例で調製したLa
0.8Ca0.2CrO3を含むペーストを印刷及び焼成することに
より形成出来る。
電気伝導性酸化物はそれ自体でも高電気伝導性を有し
ているが、この第3実施例の構成によれば、引き回し配
線部分の配線抵抗をニッケルによりさらに低減させるこ
とが出来るという効果が得られるので、大型パネルの作
製に当たって有効な構造である。なお、電気伝導性酸化
物を含むペーストは、下地電極17上全部に塗布しても、
下地電極17の表示セル内に相当する部分上にのみ塗布し
ても、いずれでも良い。
以下、La0.8Ca0.2CrO3を含むペーストを用いパネルを
作製した例により、第3実施例のパネルについてさらに
説明する。
先ず、ガス放電パネルは以下に説明するような構造の
ものとしている。第3図(A)はその説明に供する図で
あり、このパネルの要部を一部切り欠いて概略的に示し
た斜視図である。
このパネルは、前面基板31、これに対向する背面基板
33、これら基板31,33間に設けられ個々の表示セル35を
規定するセル間隔壁37、前面基板31に設けられた陽極
(アノード電極)39、背面基板33に設けられた陰極(カ
ソード電極)41を具える。ここで、陰極41は、第2図に
示すように、下地電極17と、この上に積層されLa0.8Ca
0.2CrO3を含む上地電極18で構成してある。
さらに、このパネルは、図示せずも、前面基板31の表
示セル以外の部分に遮光膜を具え、前面基板31に陽極39
の表示に供する部分以外を覆うアノードオーバーコート
層を具え、背面基板33に陰極41の表示に供する部分以外
を覆うカソードオーバーコート層を具える。また、前面
及び背面基板31,33間には、放電ガスとして、He−2%X
e(容積比)混合ガスを200Torrの圧力で封入してある。
このパネルは、厚膜印刷技術により作製している。パ
ネル作製の概略工程図を第3図(B)に示す。詳細な説
明は省略するが、ステップS1〜S8にて前面基板に前面基
板側の構成部品を形成し、ステップS11〜S19で背面基板
に背面基板側の構成部品を形成し、その後、両基板を封
着し(ステップS21)、その後、両基板間に放電ガスを
封入する(ステップ22)。
このパネルの各構成部品作製に当たって用いるペース
トは別表1に示すようなものとしている。また、それら
構成部品の膜厚は別表2に示すような膜厚としている。
なお、陰極41の上地電極18用のペーストは、別表3に示
すI〜IIIの組成が異なる3種類のペーストとしてい
る。また、別表1において、アノード端子とは、陽極39
の所定位置に設けられ陽極と外部駆動回路との接続に供
する部分、カソード端子とは陰極41の所定位置に設けら
れ陰極と外部駆動回路との接続に供する部分のことであ
る。
陰極41の上地電極18のペーストの種類を違えたパネ
ル、さらに、前面及び背面基板間に水銀を封入したパネ
ルしないパネルをそれぞれ作製し実施例のパネルとす
る。また、陰極41を上地電極18無しとした構造即ちニッ
ケルから成る下地電極17のみで構成し前面及び背面基板
間に水銀を封入したパネルを作製し比較例のパネルとす
る。そして、これらパネルの印加電圧(V)に対する放
電電流(μA/cell)特性をそれぞれ測定する。
第4図はその結果の一部を、横軸に印加電圧をとり縦
軸に放電電流をとって示した特性図である。第4図中、
51で示す特性は、上地電極18を別表3のペースト番号I
のペーストを用い形成し水銀は封入しなかったパネルの
特性、52で示す特性は、上地電極18を別表3のペースト
番号Iのペースト用い形成しかつ水銀を封入したパネル
の特性、53で示す特性は、比較例のパネルの特性であ
る。
ガス放電パネルにおいては、放電電流と輝度とは比較
関係にあるので、低い印加電圧で高い放電電流が得られ
るのが望ましい。この点、第4図から明らかなように、
1セル当たり350μAの放電電流を流すのに必要な印加
電圧は、水銀封入無しの実施例のパネルが160V、水銀封
入有りの実施例のパネルが225V、比較例のパネルが290V
というように、Ca0.2La0.8CrO3を用いた実施例のパネル
では、従来パネルに比べ、水銀封入有りの場合で35V、
水銀封入無しの場合で130Vも低電圧化出来ることが分
る。
また、第5図は、別表3に示した3種類のペーストI
〜IIIを用いて作製したパネル毎の印加電圧−放電電流
特性を示した図である。なお、各パネルはいずれも水銀
を5μ封入してある。
第5図からも明らかなように、この発明によれば、ペ
ースト中の鉛ガラスの量の違いにかかわらず各パネルは
同じような特性を示すことが分る。従って、この発明の
場合ペーストの管理が緩和出来ることが分る。ニッケル
ペースト等の従来のペーストでは、鉛ガラスの含有量を
変えるとパネルの種々の特性が大きく変化してしまうた
めペーストの管理が非常に重要であった点を考えると、
これは大きな特徴である。これは、ニッケル厚膜の場
合、ニッケル粒子の酸化具合によって抵抗値が変わり、
また鉛ガラス量が変ると粒子間の抵抗が変化しさらに厚
膜に含ませてある還元剤から発生されるガスと鉛ガラス
で構成される部分の厚膜中の体積が変化し厚膜の抵抗値
が変るのに対し、La1-XCaXCrO3が高い耐酸化性を有して
いるため還元剤が不要でかつ表面の酸化も生じないこと
によると考えられる。
第4実施例 次に、第3実施例で用いたLa0.8Ca0.2CrO3の代りに、
アルミナ(Al2O3)を0.5重量%ドープした酸化亜鉛(Zn
O)(以下、アルミナドープZnOと略称する。)を用い、
以下に説明するように第4実施例のパネルを作製する。
なお、この実施例のアルミナドープZnOは、高純度化学
研究所製のもので、共沈現象を利用し作製されたもの
(ZnO中にアルミナが包蔵されているもの)を用いてい
る。
また、ペーストは、アルミナドープZnOと鉛ガラスと
を、焼結時の上地電極18中のアルミナドープZnOを含有
量が90重量%となるよう調製する。なお、ペーストは、
粒度分布が異なる2種類のアルミナドープZnOを用いて
2種類作製する。以下の説明では、説明の都合上、一方
の粒度分布のアルミナドープZnOをアルミナドープ通常Z
nO、他方をアルミナドープ微細化ZnOと称することにす
る。これら2種類のアルミナドープZnOの粒度分布は、
別表4に示す通りである。
次に、上記2種類のアルミナドープZnOペーストを用
い、このペーストを用いたこと以外は第3実施例と同様
な条件でガス放電パネルをそれぞれ作製し実施例のパネ
ルとする。但し、これら実施例のパネルはいずれも水銀
封入は行わない。
次に、これらパネルの印加電圧(V)に対する放電電
流(μA/cell)特性をそれぞれ測定する。
第6図は、アルミナドープZnOペーストを用い作製し
た各パネルの印加電圧−放電電流特性及び比較例のパネ
ルの同特性(第4図に53で示した特性を引用)を示した
図である。第6図中、61で示す特性は、アルミナドープ
微細化ZnOペーストを用い上地電極を形成したパネルの
特性、62で示す特性は、アルミナドープ通常ZnOペース
トを用い上地電極を形成したパネルの特性、63で示す特
性は、比較例のパネルの特性である。
第6図から明らかなように、1セル当たり350μAの
放電電流を流すのに必要な印加電圧は、アルミナドープ
微細化ZnOを用いた実施例のパネルが240V、アルミナド
ープ通常ZnOを用いた実施例のパネルが300V、比較例の
パネルが290Vとなり、アルミナドープ通常ZnOを用いた
パネルは比較例のパネルより当該電圧が10V高く、アル
ミナドープ微細化ZnOを用いたパネルは比較例のパネル
より当該電圧が50V低くなることが分る。
実施例の各パネルにおいて、鉛ガラスの量が同じであ
るにもかかわらずアルミナドープ微細化ZnOを用いたパ
ネルが動作電圧が低くなった理由は、微細化によりアル
ミナドープZnO粒子の比表面積(表面積/体積)が増加
した分相対的に鉛ガラスの量が減るためであろうと考え
られる。即ち、アルミナドープZnO粒子間の鉛ガラスに
よる抵抗が上記比表面積の増加により低くなる分低電圧
化が達成出来たと推察される。
また、アルミナドープ通常ZnOを用いたパネルは比較
例と同等な放電特性を示したが、各実施例のパネルはい
ずれも水銀封入なしで比較例と同等或いは優れた放電特
性が得られる点で比較例のものと相違する。従って、環
境保護の点、コスト低減の点でこの実施例のパネルは比
較例のものより優れていることが理解出来る。
次に、アルミナドープ通常ZnOペースト用い形成した
上地電極を具える9インチマルチカラーパネルを作製す
る。表示セル数は480(赤、緑、青色各160×3)×120
個である。第7図は、そのパネルの1つの表示セル部分
をパネルの厚さ方向に沿って切って概略的に示した断面
図である。このパネルの基本構造は第3図に示したパネ
ルと同様であるが以下の点で両者は相違する。
まず、各表示セル35の前面基板31側には該表示セルが
相当する色(赤、緑又は青)に応じた蛍光体43を設けて
ある。用いた蛍光体は別表5に示したものである。な
お、蛍光体に導電性を付与するため、蛍光体形成時のペ
ーストは、蛍光体:酸化インジウム粉末(In2O3粉末、
同和ケミカル製):スクリーンオイル(6009;奥野製薬
社製)=2:1:5(重量比)の組成のものを用いる。
また、陽極39は、膜厚が2000ÅのIndium−Tin−Oxide
(ITO)蒸着膜としている。
また、この実施例では、本マルチカラーパネルを耐圧
が330VのICで駆動することとする。このため、放電ガス
がHe−Xeであると蛍光体を塗布した場合このICから供給
される電圧ではパネル全面を点灯させることが出来な
い。そこで、パネルには、He−Xeより低い電圧で放電可
能なHe−Kr混合ガスを封入する。なお、実施例のパネル
は、水銀は封入しない。
上述のような条件で作製した実施例のマルチカラーガ
ス放電パネルの、…印加電圧に対する放電電流特性、
…印加電圧に対する輝度特性、…放電電流に対する
輝度特性をそれぞれ測定する。また、色度図を作製す
る。なお、輝度測定には色彩輝度計BM−5(トプコン社
製)を用いた。また、陰極をニッケル厚膜のみで構成し
かつ水銀を封入したこと以外は実施例と同様な条件で比
較例のマルチカラーガス放電パネルを作製し、これにつ
いても実施例と同様に各放電特性の測定を行い、また色
度図を作製する。
第8図(A)は、横軸に印加電圧(V)をとり縦軸に
放電電流(μA/cell)をとり、実施例及び比較例のマル
チカラーパネルの印加電圧−放電電流特性を示した図で
ある。
また、第8図(B)は、横軸に印加電圧(V)をとり
縦軸に輝度(cd/m2)をとり、実施例及び比較例のマル
チカラーパネルの印加電圧−輝度特性を示した図であ
る。
また、第8図(C)は、横軸に放電電流(μA)をと
り縦軸に輝度(cd/m2)をとり、実施例及び比較例のマ
ルチカラーパネルの特性を示した図である。
また、第8図(D)は、実施例及び比較例のマルチカ
ラーパネルの色度図である。
第8図(A)から明らかなように、同一印加電圧の場
合比較例のマルチカラーパネルの方が実施例より高い放
電電流が得られている。これは、蛍光体を設けないで行
った結果(第6図の特性62と特性63の関係)と同様であ
る。
また、同一印加電圧において比較例の方が実施例より
高い放電電流が得られるので、第8図(B)に示すよう
に、同一印加電圧の場合比較例の方が実施例より高い輝
度が得られている。しかし、その差はわずかであり、実
用上では同等と考えられる。また、必要に応じては、ア
ルミナドープZnOをアルミナドープ微細化ZnOに変えるこ
とにより、実施例のパネルの特性は大幅に改善出来るの
で、この点からも問題はない。
また、通常は、放電電流が同じならば輝度は同じにな
るはずであるが、第8図(C)から明らかなように、同
一放電電流における輝度は実施例の方が比較例より高く
なる。これは、実施例で用いているZnOが白色であるた
め、表示セルでの反射率が比較例より高まるためと考え
られる。
また、第8図(D)から明らかなように、実施例のパ
ネルの方が比較例のパネルより標準色に近い色が得られ
ることが分る。特に、赤は実施例の方が大幅に標準色に
近いことが分る。各色において、実施例のパネルの方が
標準色に近い色が得られる理由は、実施例のパネルが水
銀を封入していないためであろうと考えられる。
以上のことから、この発明をマルチカラーパネルに適
用した場合、水銀が不要となり然も色度の向上が図れる
ことが理解出来る。
なお、この第4実施例では、電気伝導性酸化物をアル
ミナドープZnOとしていたが、電気伝導性酸化物をアン
チモンドープの酸化スズとした場合もこの第4実施例と
同様な効果が期待出来る。
第5実施例 次に、電気伝導性酸化物を含む構造体(即ち陰極)
を、下地電極と、電気伝導性酸化物の皮膜とで構成した
例により、第5実施例のパネルの説明を行なう。
第9図は、その説明に供する図であり、第5実施例の
ガス放電パネルを第1図と同様にして示した部分的な断
面図である。
この第5実施例のガス放電パネルでは、ガラス基板11
上に、下地電極17が設けてあり、この下地電極17表面に
電気伝導性酸化物の皮膜13aを付着させた例である。そ
して、これら構成成分17及び13aで、電気伝導性酸化膜
を含む構造体21cを構成している。
電気伝導性酸化物をLaCrO3とした例で説明すると、こ
の第5実施例に係る構造体21cは、例えば以下に説明す
るようなめっき法及び熱処理法で形成することが出来
る。
始めに、La(NO3を0.1mol/及び(NH42CrO7
0.1mol/含むpHが2.3のめっき液を調製する。この一方
で、ガラス基板11上に第3実施例と同様にしてスクリー
ン印刷法によりニッケル厚膜から成る下地電極17を形成
する。
次に、下地電極17が形成されているガラス基板11を、
上述のめっき液中に浸漬し、室温にて静止状態で−1.5V
(SCE:飽和カロメル電極基準)の定電圧電解めっきによ
り、下地電極17上にめっきを行なう。次に、この試料に
対し熱処理を行なう。
このような手順により、下地電極17表面にLaCrO3の皮
膜13aを付着させることが出来る。
なお、この実施例では、めっき後の熱処理の雰囲気
を、大気雰囲気とした。また、基板がガラス基板である
ため、上述の熱処理温度を600℃程度とした。
より高温度での熱処理を望む場合は、基板を耐熱性に
優れる例えばアルミナケイ酸ガラス(例えばコーニング
社製のコーニング0317)で構成するのが好適である。ま
た、基板にダメージを与えないようにするために、熱処
理をランプアニール又はレーザーアニール等の方法で行
なっても良い。
第6実施例 次に、電気伝導性酸化物を含む構造体(即ち陰極)
を、下地電極と、電気伝導性酸化物の粒子と、メタルか
ら成るバインダーとで構成した例により、第6実施例の
パネルの説明を行なう。
第10図は、その説明に供する図であり、第6実施例の
ガス放電パネルを第1図と同様にして示した部分的な断
面図である。
この第6実施例のガス放電パネルでは、ガラス基板11
上に、下地電極17が設けてあり、この下地電極17上に電
気伝導性酸化物の粒子13と、メタルから成るバインダー
19とで構成した上地電極18を設けてある。そして、これ
ら構成成分17,13及び19で、電気伝導性酸化膜を含む構
造体21dを構成している。
電気伝導性酸化物をLaCrO3とした例で説明すると、こ
の第6実施例に係る構造体21dは、例えば以下に説明す
るような方法で形成することが出来る。
始めに、公知のメタルオーガニックペースト中に、第
1実施例において作製したLaCrO3粒子を混合して、LaCr
O3粒子を含むメタルオーガニックペーストを調製する。
この一方で、ガラス基板11上に第3実施例と同様にして
スクリーン印刷法によりニッケル厚膜から成る下地電極
17を形成する。
次に、下地電極17が形成されているガラス基板11上
に、スクリン印刷法により、LaCrO3粒子を含むメタルオ
ーガニックペーストを印刷する。その後、所定の焼成を
行なって構造体21dを得る。
なお、LaCrO3粒子を混合させるメタルオーガニックペ
ーストとしては、種々のものがあるが、この実施例で
は、ITOペースト(例えばESL社製のESL−#3050)を用
いた。ITOペーストを用いる場合、ITO(In2O3:Sn)が、
バインダー19ということになる。
第7実施例 次に、電気伝導性酸化物を含む構造体(即ち陰極)
を、電気伝導性酸化物の粒子と、メタルから成るバイン
ダーとで構成した例により、第7実施例のパネルの説明
を行なう。この構造は、第6実施例のものから下地電極
17を除いた構造に相当するが、特にメタルから成るバイ
ンダー19が低抵抗なものの場合に好適な構造である。
第11図は、その説明に供する図であり、第7実施例の
ガス放電パネルを第1図と同様にして示した部分的な断
面図である。
この第7実施例のガス放電パネルでは、ガラス基板11
上に、電気伝導性酸化物の粒子13と、メタルから成るバ
インダー19とで構成した構造体21eから成る陰極を設け
てある。
なお、この第7実施例に係る構造体21eは、例えば、
金(Au)或いは銀(Ag)を含むメタルオーガニックペー
スト中にLaCrO3粒子を混合してペーストを調製し、これ
をガラス基板11上にスクリーン印刷法により塗布後焼成
することにより形成出来る。
(発明の効果) 上述した説明からも明らかなように、この発明のガス
放電パネルによれば、陰極を、ランタンクロマイトを含
む構造体、またはランタンカルシウムクロマイトを含む
構造体、またはアムリナドープの酸化亜鉛を含む構造
体、またはアンチモン(Sb)ドープの酸化スズを含む構
造体で構成しているので、所望とする輝度を従来より低
い駆動電圧で得られ、かつ、水銀を用いずとも長寿命な
ガス放電パネルを得ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
第1図は、第1及び第2実施例のガス放電パネルの説明
に供する図、 第2図は、第3及び第4実施例のガス放電パネルの説明
に供する図、 第3図(A)は、第3及び第4実施例の説明に供するガ
ス放電パネルの一部切り欠き斜視図、 第3図(B)は、第3及び第4実施例で作製するパネル
の概略的な製造工程図、 第4図は、第3実施例の説明に供する図であり、実施例
及び比較例のパネルの放電特性を示す図、 第5図は、第3実施例の説明に供する図であり、鉛ガラ
ス量と放電特性との関係を示す図、 第6図は、第4実施例の説明に供する図であり、実施例
及び比較例のパネルの放電特性を示す図、 第7図は、第4実施例で作製したマルチカラーガス放電
パネルの要部を示す断面図、 第8図(A)〜(D)は、第4実施例で作製した実施例
及び比較例のマルチカラーパネルの特性図、 第9図は、第5実施例のガス放電パネルの説明に供する
図、 第10図は、第6実施例のガス放電パネルの説明に供する
図、 第11図は、第7実施例のガス放電パネルの説明に供する
図である。 11……基板(ガラス基板) 13……電気伝導性酸化物の粒子 13a……電気伝導性酸化物の皮膜 15……低融点ガラスから成るバインダー 17……下地電極、18……上地電極 19……メタルから成るバインダー 21a〜21e……電気伝導性酸化物を含む構造体 31……前面基板、33……背面基板 35……表示セル、37……セル間隔壁 39……陽極(アノード電極) 41……陰極(カソード電極) 43……蛍光体。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 塩沢 直行 東京都港区虎ノ門1丁目7番12号 沖電 気工業株式会社内 (56)参考文献 特開 昭63−248035(JP,A) 特開 昭64−45035(JP,A)

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】陰極及び陽極を具えこれら電極間のガスの
    放電により発光するガス放電パネルにおいて、 前記陰極をランタンクロマイト(LaCrO3)を含む構造体
    で構成したことを特徴とするガス放電パネル。
  2. 【請求項2】陰極及び陽極を具えこれら電極間のガスの
    放電により発光するガス放電パネルにおいて、 前記陰極をランタンカルシウムクロマイト(La1-XCaXCr
    O3)を含む構造体で構成したことを特徴とするガス放電
    パネル(ただし、0<X<1である。)。
  3. 【請求項3】陰極及び陽極を具えこれら電極間のガスの
    放電により発光するガス放電パネルにおいて、 前記陰極をアルミナ(Al2O3)ドープの酸化亜鉛(ZnO)
    を含む構造体で構成したことを特徴とするガス放電パネ
    ル。
  4. 【請求項4】陰極及び陽極を具えこれら電極間のガスの
    放電により発光するガス放電パネルにおいて、 前記陰極をアンチモン(Sb)ドープの酸化スズ(SnO2
    を含む構造体で構成したことを特徴とするガス放電パネ
    ル。
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