JP2704371B2 - スレーキング抑制剤 - Google Patents

スレーキング抑制剤

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JP2704371B2
JP2704371B2 JP7132755A JP13275595A JP2704371B2 JP 2704371 B2 JP2704371 B2 JP 2704371B2 JP 7132755 A JP7132755 A JP 7132755A JP 13275595 A JP13275595 A JP 13275595A JP 2704371 B2 JP2704371 B2 JP 2704371B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はスレーキング抑制剤に関
し、更に詳しくは、主に不定形耐火物の骨材として塩基
性骨材を使用する場合に発生する消化作用を抑制し、耐
火物の亀裂発生等のスレーキングを抑制するための薬剤
を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】鉄鋼業界において、不定形耐火物は施工
が容易であり、しかも任意の形状に成形ができることか
ら省力化できる等の多くの利点を有するため、近年その
使用量は急速な伸びを示している。
【0003】現在普及している不定形耐火物としてキャ
スタブル、吹付け材、ラミング材、スタンプ材、コーテ
ィング材、スリンガー材等があり、これらに使用される
骨材として、シリカ質、ジルコン質、アルミナ質、黒
鉛、炭化珪素等の中性あるいは酸性の骨材がある。ま
た、このような中性あるいは酸性の骨材に比べて、マグ
ネシア、ドロマイト等の塩基性の骨材は、その耐食性が
優れることから定形耐火物の分野では広く利用されてい
るものの、不定形耐火物にこれを使用した場合には、不
定形耐火物の製造時に使用する水の添加によって骨材の
一部が消化し、また加熱、乾燥時にはこの消化が更に促
進され、水酸化物の生成に伴う耐火物の体積膨張を生起
する。従って、結果として耐火物施工体に亀裂を生じ、
施工体は脆弱となることから耐火物として使用できない
ものとなる。
【0004】このような塩基性骨材の消化、即ち水和反
応を抑制するために、従来より多くの方法が提案されて
いる。例えば、パラフィン、アスファルト、ピッチ、油
類、樹脂、オキシカルボン酸あるいはその塩、ショ糖等
を使用する方法、あるいは難溶性リン酸塩を使用する方
法(特開昭61-291465号)、非晶質シリカ粉末を使用する
方法(特開昭58-99177号)、硼砂、硼酸を使用する方法
(特開昭57-129881号)、CaO成分及びAl2O3成分を特定量
含有したマグネシア骨材を使用する方法(特開平5-70247
号)等が提案されている。
【0005】しかしながら、これらの方法はそれぞれ、
溶湯を汚染する、耐火物に低融点物質が生成し強度が低
くなる、耐火物の耐食性が低下する、容積安定性が悪く
なる等の数々の問題点を有しているだけでなく、消化抑
制の効果が未だ充分でない。また、クエン酸、乳酸、グ
リコール酸、酒石酸、酢酸等の有機酸の多価金属塩を消
化抑制剤として使用する方法も提案されているが、同様
に消化抑制の効果が未だ充分でない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】そこで本発明者らは、
塩基性骨材を使用する場合に生じる消化を抑制し、消化
によって発生するスレーキングを抑制する方法について
鋭意検討を重ねた。その結果、グリコール酸・乳酸アル
ミニウム化合物またはクエン酸・乳酸アルミニウム化合
物を使用することによって、このような材料がスレーキ
ングを抑制する優れた効果を有することを見出し、係る
知見を基に本発明を完成させるに至ったものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】即ち、本発明はグリコー
ル酸・乳酸アルミニウム化合物からなるスレーキング抑
制剤に関し、更にクエン酸・乳酸アルミニウム化合物か
らなるスレーキング抑制剤に関する。
【0008】
【作用】以下に本発明のスレーキング抑制材について更
に詳記する。本発明のグリコール酸・乳酸アルミニウム
化合物(以下、グリコール酸・乳酸アルミニウムと云う)
またはクエン酸・乳酸アルミニウム化合物(以下、クエ
ン酸・乳酸アルミニウム化合物と云う)は、以下の方法
によって製造することができる。即ち、先ず塩化アルミ
ニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、塩基性
塩化アルミニウム等の水溶性アルミニウム塩とアルカリ
金属あるいはアンモニウムの炭酸塩、重炭酸塩等を反応
させアルミナ水和物を得る。次いでこのアルミナ水和物
をグリコール酸と乳酸の混合酸中に溶解させることによ
りまたはこれを乾燥することにより、グリコール酸・乳
酸アルミニウムを得ることができる。また、上記混合酸
としてクエン酸と乳酸との混合酸を使用することによっ
て、クエン酸・乳酸アルミニウムを得ることができる。
また別に、塩基性乳酸アルミニウムにグリコール酸また
はクエン酸を添加することによっても製造できる。
【0009】尚、本発明に於いて殊に重要なことは、こ
のようなグリコール酸・乳酸アルミニウムまたはクエン
酸・乳酸アルミニウムとして、各々グリコール酸アルミ
ニウムと乳酸アルミニウムとの単なる混合物、あるいは
クエン酸アルミニウムと乳酸アルミニウムとの単なる混
合物の使用では、その理由は定かではないが、本発明の
スレーキング抑制剤の効果を期待することはできない。
本発明は上述のような手段、即ち溶液を出発原料として
製造することにより、始めてその効果を奏するものとな
る。
【0010】本発明のグリコール酸・乳酸アルミニウム
の原料の配合割合に関して云えば、グリコール酸・乳酸
アルミニウムを構成するグリコール酸とアルミニウム
は、グリコール酸/Al2O3モル比で0.3〜6.0の範囲であ
り、乳酸とアルミニウムは、乳酸/Al2O3モル比で0.3〜
6.0の範囲であって、且つグリコール酸と乳酸の合量
は、(グリコール酸+乳酸)/Al2O3モル比で1.0〜8.0の
範囲である。また、クエン酸・乳酸アルミニウムの原料
の配合割合については、クエン酸・乳酸アルミニウムを
構成するクエン酸とアルミニウムは、クエン酸/Al2O3
モル比で0.1〜2.0の範囲であり、乳酸とアルミニウム
は、乳酸/Al2O3モル比で0.3〜6.0の範囲であって、且
つクエン酸と乳酸の合量は、(クエン酸+乳酸)/Al2O3
モル比で0.8〜7.0の範囲である。このような配合割合で
使用することによって、本発明のスレーキング抑制剤は
最も効果が優れたものとなる。即ち、これら原料の配合
割合に於いて、上記の有機酸の総量がアルミニウム正塩
より大幅に多くなると、塩基性骨材と有機酸との反応が
激しくなることから実用的ではなく、また逆に有機酸が
あまりに少ないと、アルミニウム塩の安定性が悪くなる
ことから、その結果としてアルミニウム塩の溶解度が低
下し消化抑制効果も低下することから好ましくない。
【0011】本発明のグリコール酸・乳酸アルミニウム
またはクエン酸・乳酸アルミニウムは、前述のような溶
液の状態で使用してもよいが、溶液を噴霧乾燥、通気乾
燥、真空乾燥、凍結乾燥等任意の乾燥手段によって乾燥
して使用してもよい。
【0012】スレーキング抑制剤として使用するグリコ
ール酸・乳酸アルミニウムまたはクエン酸・乳酸アルミ
ニウムの配合量に関して云えば、使用する塩基性骨材量
に対して概ね0.05〜10重量部、好ましくは1〜5重量部の
範囲で配合する。即ち0.05重量部以下では本発明のスレ
ーキング抑制効果が充分発現せず、また10重量部以上を
配合しても配合量に相当する程の効果は期待できないこ
とから経済的でない。更に本発明のスレーキング抑制剤
は、これらをそれぞれ単独で使用すればよいが、混合し
て使用することもでき、あるいは分散剤など他の添加剤
と併用して使用してもよい。
【0013】本発明のスレーキング抑制剤が対象とする
塩基性骨材の種類を掲げれば、電融マグネシア、海水マ
グネシア、天然マグネシア等のマグネシア骨材、スピネ
ル骨材、マグネシアクロム骨材、ドロマイト骨材、カル
シア骨材等を挙げることができる。
【0014】本発明のスレーキング抑制剤の使用方法
は、このような塩基性骨材とグリコール酸・乳酸アルミ
ニウムまたはクエン酸・乳酸アルミニウムとを充分に混
合した後、これにアルミナセメントなどの硬化材を添加
混合する方法が、消化抑制効果を最も良く発現できる点
で望ましい。しかし、本発明スレーキング抑制剤を硬化
材あるいは他の耐火材料と混合した後、これを塩基性骨
材に添加混合しても良く、塩基性骨材とアルミナセメン
ト等の硬化材や他の耐火材料とを混合した後、本発明ス
レーキング抑制剤とを混合してもよい。しかし、これら
は一例であって、本発明はこのような使用方法に特段限
定されるものではない。
【0015】また、本発明のスレーキング抑制剤の使用
に際しては、塩基性骨材と共に各種の酸性骨材、中性骨
材あるいはカーボンとを併用することもできる。更に
は、作業時間の調整等の目的でモノエタノールアミン、
トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、エチレン
ジアミン等のアルカノールアミンやEDTA、アミノ酸
等のキレート剤を併用してもよい。加えて、結合剤とし
てクロム酸、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、
水ガラス、各種ゾル等を併用することもできる。更に本
発明の効果を発揮させるために、高分子系分散剤、リン
酸塩系分散剤等の分散剤、アルミナフラワー、シリカフ
ラワー、ジルコンフラワー等の超微粉を併用、あるいは
難溶性リン酸塩や非晶質シリカ粉末を併用することもで
きる。
【0016】
【実施例】以下に本発明の実施例を掲げ更に説明する。
尚、%は特に断らない限り全て重量%を示す。
【0017】(実施例1)塩基性乳酸アルミニウム溶液
(乳酸/Al2O3モル比3.0,Al2O3濃度5.0%)1000gと70%グリ
コール酸溶液159.8gとを混合して混合溶液とし、これを
2時間保持した後、噴霧乾燥することにより粉末を得
た。この粉末は、グリコール酸/Al2O3モル比3.0であ
り、乳酸/Al2O3モル比3.0であり、且つ(グリコール酸+
乳酸)/Al2O3モル比6.0であるグリコール酸・乳酸アルミ
ニウム粉末であり、これをスレーキング抑制剤として使
用した。
【0018】骨材としてマグネシア骨材(粒子径3mm以上
25.7%、1〜3mm28.6%、0.088〜1mm17.1%、0.088mm以
下28.6%)100重量部と、上記スレーキング抑制剤とを表
1に示した割合でよく混合し、これに硬化材としてアル
ミナセメント5重量部を添加、混合し、所定量の水を加
えて混練した後、2×2×8cmの金型に流し込み振動成形
した。これを20℃で24時間養生した後、脱型して成形体
を得た。
【0019】スレーキング試験は、この成形体を150℃
の飽和水蒸気下(5kgf/cm2)で7時間放置する方法で行っ
た。また成形体の強度の測定は、スレーキング試験を行
った成形体とスレーキング試験を行っていない成形体の
それぞれを110℃で24時間熱処理し、これらを室温まで
冷却した後、万能強度試験機を用いて乾燥曲げ強度を測
定する方法で行った。また、スレーキング試験の評価
は、表2に示したスレーキング試験評価基準値で示し
た。各々の試験結果を表1に示した。
【0020】
【表1】
【0021】
【表2】
【0022】尚、グリコール酸・乳酸アルミニウム粉末
からなる本発明のスレーキング抑制剤を添加しなかった
成形体は、スレーキング試験で崩壊したために強度測定
はできなかった。また表1の結果から明らかなように、
本発明のスレーキング抑制剤の添加によるスレーキング
抑制効果は明らかであり、しかもスレーキング抑制剤を
添加した成形体のスレーキング試験後の強度は、この試
験をしなかった成形体に比べて著しく大きくなるという
予想し得ない効果を有する。
【0023】(実施例2)塩化アルミニウム600gに、炭
酸アンモニウム1278gを添加して反応させ、生成物をろ
過しイオン交換水で洗浄することによりアルミナ水和物
(Al2O320%)1000gを得た。次いでこのアルミナ水和物を
グリコール酸と乳酸との混合酸中に溶解させ、これを0.
5時間保持した後、噴霧乾燥することにより粉末を得
た。また別に、このアルミナ水和物をクエン酸と乳酸と
の混合酸中に溶解させ同様に粉末を得た。これらグリコ
ール酸と乳酸またはクエン酸と乳酸との混合割合を各々
変えることによって、スレーキング抑制剤として、各々
成分組成の異なるグリコール酸・乳酸アルミニウム粉末
およびクエン酸・乳酸アルミニウム粉末を得、これらの
粉末を使用して実施例1と同様に試験を行った。
【0024】骨材としてマグネシア骨材(粒子径3mm以上
25.7%、1〜3mm28.6%、0.088〜1mm17.1%、0.088mm以
下28.6%)100重量部と、表3に示した各組成のスレーキ
ング抑制剤1重量部とをよく混合し、これに硬化材とし
てアルミナセメント5重量部を添加、混合し、所定量の
水を加えて混練した後、2×2×8cmの金型に流し込み振
動成形した。これを20℃で24時間養生した後、脱型して
成形体を得た。
【0025】スレーキング試験は、この成形体を150℃
の飽和水蒸気下(5kgf/cm2)で7時間放置する方法で行っ
た。尚、表3に於いて、組成aはグリコール酸/Al2O3
モル比を、bはクエン酸/Al2O3のモル比を、cは乳酸/A
l2O3のモル比を表し、xは(グリコール酸+乳酸)/Al2O3
のモル比を、yは(クエン酸+乳酸)/Al2O3のモル比をそ
れぞれ示した。また比較のために、本発明のスレーキン
グ抑制剤に代えて、他の有機酸アルミニウム粉末を使用
し同様に試験を行った。尚、スレーキング試験評価は、
表2の基準値で示した。
【0026】
【表3】
【0027】(実施例3)本発明のスレーキング抑制剤
として、グリコール酸・乳酸アルミニウムは、グリコー
ル酸/Al2O3モル比3.0、乳酸/Al2O3モル3.0、且つ(グリ
コール酸+乳酸)/Al2O3モル比6.0のものを使用し、また
クエン酸・乳酸アルミニウムは、クエン酸/Al2O3モル比
1.0、乳酸/Al2O3モル3.0、且つ(クエン酸+乳酸)/Al2O3
モル比4.0のものを使用してスレーキング抑制試験を行
った。また比較のために、本発明のスレーキング抑制剤
に代えて、グリコール酸アルミニウム、クエン酸アルミ
ニウム及び乳酸アルミニウムの各々正塩の粉末を使用し
てスレーキング抑制試験を行った。
【0028】骨材としてドロマイト骨材(粒子径3mm以上
36.5%、1〜3mm40.0%、0.088〜1mm23.5%)70重量部、
マグネシア骨材(粒子径0.088mm以下)20重量部及びマグ
ネシア超微粉骨材(粒子径1μm以下)10重量部と、表4に
示した各々の添加剤の所定量をよく混合し、これに硬化
材として中性化して作業性を確保できるようにしたリン
酸アルミニウム5重量部とリグニンスルホン酸系分散剤
0.5部を加えて混合した後、更にこれに水8重量部を加え
て混練した後、2×2×8cmの金型に流し込み振動成形し
た。これを20℃で24時間養生した後、脱型して成形体を
得た。スレーキング試験は、この成形体を130℃の飽和
水蒸気下(3kgf/cm2)で3時間放置する方法で行った。
尚、スレーキング試験評価は表2に示した基準で評価
し、それらの結果を表4に示した。
【0029】
【表4】
【0030】
【発明の効果】耐火物に於いては各種の結合剤として、
例えば水ガラス、粘土、リン酸ナトリウム、リン酸アル
ミニウム、セメント、アルミナセメントあるいは水硬性
アルミナ、アルミン酸ナトリウム、アルミナゾル、シリ
カゾル、アミンシリケート、各種樹脂等が使用される。
中でもアルミナセメント、γ-アルミナあるいはρ-アル
ミナ等の水硬性アルミナを結合剤として使用する場合に
は、他の結合剤の使用に比して多くの水を使用するが、
このような水の使用は耐火物の局部的な消化を促し、施
工体が脆弱となる。しかし本発明のスレーキング抑制剤
を使用することによって、このような消化は抑制され、
結果として施工体の強度が向上するものとなり、スレー
キング抑制剤として優れた効果を有する。また、本発明
のスレーキング抑制剤は、転炉、取鍋、タンディッシュ
等の鉄鋼容器の成形、補修に使用して、その効果が最も
よく発現されるものである。

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 グリコール酸・乳酸アルミニウム化合物
    からなるスレーキング抑制剤。
  2. 【請求項2】 グリコール酸・乳酸アルミニウム化合物
    を構成するグリコール酸とアルミニウムがグリコール酸
    /Al2O3モル比で0.3〜6.0の範囲であり、乳酸とアルミ
    ニウムが乳酸/Al2O3モル比で0.3〜6.0の範囲であっ
    て、且つグリコール酸と乳酸の合量が(グリコール酸+
    乳酸)/Al2O3モル比で1.0〜8.0の範囲である請求項1の
    スレーキング抑制剤。
  3. 【請求項3】 クエン酸・乳酸アルミニウム化合物から
    なるスレーキング抑制剤。
  4. 【請求項4】 クエン酸・乳酸アルミニウム化合物を構
    成するクエン酸とアルミニウムがクエン酸/Al2O3モル
    比で0.1〜2.0の範囲であり、乳酸とアルミニウムが乳酸
    /Al2O3モル比で0.3〜6.0の範囲であって、且つクエン
    酸と乳酸の合量が(クエン酸+乳酸)/Al2O3モル比で0.8
    〜7.0の範囲である請求項3のスレーキング抑制剤。
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