JP2700247B2 - 炭素膜がコートされた光電変換装置の作製方法 - Google Patents

炭素膜がコートされた光電変換装置の作製方法

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Description

【発明の詳細な説明】 〔発明の利用分野〕 本発明は光学的バンド巾が1.0eV以上特に2.0〜5.5eV
を有する炭素または炭素を主成分とする被膜を光電変換
装置上、特に光電変換部にコーティングすることによ
り、機械ストレスに対する耐摩耗保護材とすることによ
り、コンピューターを始めとする情報処理機器、ファク
シミリ等の情報読み取り手段等に、広く応用を可能にし
ようとする光電変換装置を作製する方法に関するもので
ある。
〔従来技術及びその問題点〕
従来例において、炭素膜は200〜1000℃と高温でしか
得られないとされており、炭素膜が条件によっては、室
温(プラズマにより150℃程度まで表面が昇温する)ま
たはそれ以下の温度での作製方法でも十分な硬度を有せ
しめ得ることはではきなかった。
また、従来例において、光電変換装置の光電変換部の
耐摩耗層として、SiO2,SixNyOz,Ta25,などの被膜が
用いられてきたがいずれも硬度が十分ではなく、信頼性
に欠けていた。また、最近、光電変換部の耐摩耗層とし
て、薄板ガラスを有機接着剤で貼付する方法または、有
機樹脂を介して有機接着剤で貼付する方法が用いられて
いるが、いずれの場合もガラスの電気伝導度が大きいた
め静電気による動作不良、至っては破損を引き起こして
いた。
本発明は、光電変換装置上、特に光電変換部上に炭素
または炭素を主成分とする被膜をコーティングし、その
表面での耐摩耗性等の機械的強度を補強した光電変換装
置を得ることを目的としたものであり、そのような光電
変換装置を効率よく生産することを目的としたものであ
る。
〔問題を解決するための手段〕
本発明は、表面上に光電変換材料が形成されたテープ
状キャリアを第1のロールより第2のロールに移動させ
つつ前記ロール間でテープ状キャリアの裏側に配設され
た第1の電極と、この電極に対向して前記テープ状キャ
リアの表面側に配設された第2の電極との間に電気エネ
ルギーを加えて、プラズマを発生させ、炭化水素化物気
体、またはこれに加えて添加物気体とを分解反応せしめ
て、前記光電変換材料上に炭素膜またはホウ素、リンま
たは窒素の添加された炭素を主成分とする膜を形成する
ことにより上記目的を達成したものである。
特にエチレン、メタンのような炭化水素気体を直流ま
たは高周波、 特に基体側に正の直流バイアスを加えた高周波電界によ
りプラズマを発生させた雰囲気中に導入して分解せしめ
ることにより、C−C結合を作り、 結果としてグラファイトのような非透光性の導電性また
は不良導電性の炭素を作るのではなく、作製条件により
求められた光学的エネルギバンド巾(Egという)が1.0e
V以上、好ましくは1.5〜5.5eVを有するダイヤモンドに
類似の絶縁性の炭素を形成することを特徴としている。
さらにこの発明の炭素は、その硬度もビッカース硬度
が2000Kg/cm2以上、好ましくは4500Kg/cm2以上、理想的
には6500Kg/cm2というダイヤモンド類似の硬さを有する
アモルファス(非晶質)または5〜200Åの大きさの微
結晶性を有するセミアモルファス(半非晶質)構造を有
する炭素またはこの炭素中に水素、ハロゲン元素が25原
子%以下またはIII価またはV価の不純物が5原子%以
下、また窒素がN/C≦0.05の濃度に添加されたいわゆる
炭素を主成分とする炭素(以下本発明においては単に炭
素という)を基板上に設けた複合体を設けんとしたもの
である。
本発明は、さらにこの炭素が形成される基板を200℃
以下好ましくは−100〜150℃の従来より知られたCVD法
に比べて500〜1500℃も低い温度で形成せしめ、下地の
光電変換材料の特性を劣化させることなく、また下地材
料との界面でおこる反応を防止しつつコーティングが可
能であることを実験的に見出したことを他の特徴とす
る。
また本発明は、この炭素にIII価の不純物であるホウ
素を0.1〜5原子%の濃度に添加し、P型の炭素を設
け、またV価の不純物であるリン、窒素を同様に0.1〜
5原子%の濃度に添加し、N型の炭素を設けることによ
りこの基板上面の炭素を1×107〜1×1013Ωcm、好ま
しくは、1×108〜5×1011Ωcmの導電性にしたことに
より、静電気による動作不良、至っては破損を防ごうと
したことを他の特徴としている。
また、炭素中には潤滑性向上のため、SP3のダイヤモ
ンド結合に加工し、SP2のグラファイト結合成分が少な
いことが好ましい。
以下に図面に従って本発明に用いられた複合体の作製
方法を記す。
〔実施例1〕 第1図は本発明の炭素または炭素を主成分とする被膜
を形成するためのRTR方式のプラズマCVD装置の概要を示
す。
図面において、ドーピング系(10)において、キャリ
アガスである水素を(11)より、反応性気体である炭化
水素気体例えばメタン、エチレンを(12)より、III価
不純物のジボラン(水素希釈)(13),V価不純物のアン
モニアまたはフォスヒンを(14)よりバルブ(28)、流
量計(29)をへて反応系(30)中にノズル(25)より導
入される。このノズルに至る前に、反応性気体の励起用
にマイクロ波エネルギを(26)で加えて予め活性化させ
ることは有効である。反応系(30)では、第1のロール
(4)より第2のロール(5)に補助ロール(6),
(7)を経て移動する。
この補助ロール(7)はテープ状キャリアにたるみが
こないように一定の張力(テンション)を与えるべく、
バネ(27)を具備する。補助ロール間には、第1の電極
(2),被形成面を具備するテープ状キャリア(1),
第2の電極(3)を有し、一対の電極(2),(3)間
には高周波電極(15)、マッチングトランス(16),直
流バイヤス電源(17)より電気エネルギが加えられ、プ
ラズマ(40)が発生する。排気系(20)は圧力調整バル
ブ(25),ターボ分子ポンプ(22),ロータリーポンプ
(23)をへて不要気体を排気する。
これらの反応性気体は、反応空間(40)で0.01〜0.3t
orr例えば0.1torrとし、高周波による電磁エネルギによ
り0.1〜5KWのエネルギを加えられる。直流バイヤスは、
−200〜600V(実質的には−400〜+400V)を加える。な
ぜなら、直流バイヤスが零のときは自己バイヤスが−20
0V(第2の電極を接地レベルとして)を有しているため
である。反応性気体は、水素で一部を希釈した。例えば
メタン:水素=1:1とした。第1の電極は冷却手段
(9)を有し、冷却液体を(8)より入れ、(8′)に
排出させ、被形成面上の温度を150〜−100℃に保持させ
る。かくしてプラズマにより被形成面上にビッカーズ硬
度2000Kg/cm2以上を有するとともに、熱伝導度2.5W/cm
deg以上のC−C結合を多数形成したアモルファス構造
または微結晶構造を有するアモルファス構造の炭素を生
成させた。さらにこの電磁エネルギは50W〜1KWを供給
し、単位面積あたり0.03〜3W/cm2のプラズマエネルギを
加えた。
このプラズマ密度大きい場合、また予めマイクロ波で
反応性気体が励起されている場合は、5〜200Åの大き
さの微結晶性を有するセミアモルファス構造の炭素を生
成させることができた。成膜速度は100〜1000A/分を有
し、特に表面温度を−50〜150℃とし、直流バイアスを
+100〜300V加えた場合、その成膜速度は100〜200A/分
(メタンを用いマイクロ波を用いない場合)、500〜100
0A/分(メタンを用いマイクロ波を用いた場合、または
エチレンを用いマイクロ波を用いた場合)を得た。
これらはすべてビッカーズ硬度が2000Kg/mm2以上を有
する条件のみを良品とする。もちろんグラファイトが主
成分ならばきわめて柔らかく、かつ黒色で本発明とはま
ったく異質なものである。
この反応生成物は光電変換装置(1)が冷却媒体
(9)により冷却され、この上面に被膜として形成され
る。反応後の不純物は排気系(20)よりターボ分子ポン
プ、ロータリーポンプを経て排気される。反応系は0.00
1〜10torr代表的には0.01〜0.5torrに保持されており、
マイクロ波(26)、高周波のエネルギ(15)により反応
系内はプラズマ状態(40)が生成される。特に励起源が
1GHz以上、例えば2.45GHzの周波数にあっては、C−H
結合より水素を分離し、さらに周波源が0.1〜50MHz例え
ば13.56MHzの周波数にあってはC−C結合、C=C結合
を分解し、−C−C−結合を作り、炭素の不対結合手同
士を互いに衝突させて共有結合させ、安定なダイヤモン
ド構造を局部的に有した構造とさせ得る。
かくして光電変換装置の光電変換材料および金属また
は有機材料上に炭素特に炭素中に水素を25モル%以下含
有する炭素またP、IまたはN型の導電型を有する炭素
を主成分とする被膜を形成させることができた。
〔実施例2〕 第2図(A)は実施例1の作製方法によって得られた
炭素を用いた光電変換装置の例である。(A)は光電変
換材料(3)を少なくとも一方の電極を透明電極で設け
た、導電膜で挟んだ光電変換装置の例である。本実施例
においては、透明絶縁基板(1)上に、遮光性電極
(2)、光電変換材料(3)、透明電極(4)と積層
し、フォトリソグラフィーで導光窓(21)をあけ、電極
(5)を設け、その上に実施例1の作製方法によって炭
素膜をつけた。このとき炭素膜の下に有機材料または無
機材料あるいはその両方を設けてもかまわない。このと
き炭素膜(6)を0.03〜5μm、好ましくは0.1〜3μ
mの厚さに設けたものである。このとき、保護層が極め
て薄く、硬度がビッカース硬度で2000kg/cm2以上、好ま
しくは4000kg/cm2以上と十分硬いため、焦点精度がよ
く、MTFの向上に役立ち、高解像を実現し、耐摩耗性、
炭素膜特有の高平滑性等、多くの特性を併用して、有効
に用いている。
〔実施例3〕 第3図(A)、(B)は実施例1の作製方法によって
得られた炭素を用いた光電変換装置の例である。第3図
(A)は断面図、(B)は正面図を示す。この光電変換
装置は透明絶縁基板(1)上に光電変換材料(2)を形
成し、導光窓(21)を形成する。その上にくし形に共通
電極(4)と個別電極(3)を形成する。その上に実施
例1の作製方法によって炭素膜をつけた。このとき炭素
膜の下に、有機材料あるいは無機材料、あるいはその両
方を設けてもよい。
このとき炭素膜を0.03〜10μm、好ましくは0.1〜5
μmの厚さに設けたものである。
このときビッカース硬度2000kg/cm2以上に向上させる
ことにより、光電変換装置の耐摩耗性を3倍以上に伸ば
し、表面での原稿のすべりを良好にし得るための効果は
著しい。
〔効果〕
以上の説明より明らかな如く、本発明は光電変換部に
炭素または炭素を主成分とした被膜をコーティングして
設けたものである。この複合体はすべりを助長でき、こ
れに加えて耐摩耗性の向上ができ、さらに加えて電気伝
導度が静電気除去に適しているため、その工業的価値は
計り知れないものである。特にこの炭素が150℃以下の
低温で形成できるのに対し、その硬度または基板に対す
る密着性がきわめて優れているのが特徴である。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の炭素または炭素を主成分とする被膜を
被形成面上に作製するロール・ツー・ロール方式の製造
装置の概要を示す。 第2図、第3図(A),(B)は本発明の複合体を用い
た光電変換装置である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 天知 伸充 神奈川県厚木市長谷398番地 株式会社 半導体エネルギー研究所内 (72)発明者 坂本 直哉 神奈川県厚木市長谷398番地 株式会社 半導体エネルギー研究所内 (72)発明者 小玉 光文 神奈川県厚木市長谷398番地 株式会社 半導体エネルギー研究所内 (72)発明者 高山 一郎 神奈川県厚木市長谷398番地 株式会社 半導体エネルギー研究所内 審査官 粟野 正明 (56)参考文献 特開 昭62−212662(JP,A) 特開 昭62−151354(JP,A) 特開 昭57−141977(JP,A) 特開 昭62−83471(JP,A) 特開 昭61−124168(JP,A) 特開 昭61−161868(JP,A)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】表面上に光電変換材料が形成されたテープ
    状キャリアを第1のロールより第2のロールに移動さ
    せ、 前記ロール間で前記テープ状キャリアの裏側に配設され
    た第1の電極と、該電極に対向して前記テープ状キャリ
    アの表面側に配設された第2の電極との間に電気エネル
    ギーを加えてプラズマを発生させ、 炭化水素化物気体と添加物気体とを分解反応せしめて、
    前記光電変換材料上にホウ素、リンまたは窒素の添加さ
    れた炭素を主成分とする膜を形成することを特徴とする
    炭素膜がコートされた光電変換装置の作製方法。
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