JP2699038B2 - 温度感受性リポソーム - Google Patents

温度感受性リポソーム

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JP2699038B2
JP2699038B2 JP7235992A JP7235992A JP2699038B2 JP 2699038 B2 JP2699038 B2 JP 2699038B2 JP 7235992 A JP7235992 A JP 7235992A JP 7235992 A JP7235992 A JP 7235992A JP 2699038 B2 JP2699038 B2 JP 2699038B2
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健司 河野
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    • A61K9/1271Non-conventional liposomes, e.g. PEGylated liposomes, liposomes coated with polymers

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、医薬品,化粧料をはじ
め、医学・薬学分野で応用し得る、温度変化に対応して
内包物質を放出し得る温度感受性リポソームに関する。
【0002】
【従来の技術】リポソームは、医学・薬学分野におい
て、薬物などの担体や細胞膜モデル等として幅広く応用
されている。最近では、リポソームを高分子化して膜の
強化を図ったり、糖や酵素,タンパク質等を固定化し
て、刺激応答性リポソームを調製し、生体への薬物の吸
収性改善の目的で、ドラッグデリバリーシステムにおけ
る薬物運搬体として利用が検討されたりしている。
【0003】上記の刺激応答性リポソームのうち、温度
感受性リポソームは、生体の体温や皮膚温等に反応して
内包薬物を放出させるなど、医学的・薬学的にも、或い
は化粧料の分野においても、応用価値の高いものであ
る。従来、かかる温度感受性リポソームとしては、ジミ
リストイルホスファチジルコリン,ジパルミトイルホス
ファチジルコリン,ジステアロイルホスファチジルコリ
ン等、相転移点を有するリン脂質を用いたものが多かっ
た。これらは、相転移温度において脂質がゲル状態から
液晶状態に変化し、膜構造に乱れが生じて内包物質を放
出するものである。
【0004】また、温度を感受する部位として、室温付
近に曇点を有するプルロニックポリマーを導入した多糖
誘導体でリポソームを被覆し、温度感受性ポリマーを調
製した例が報告されている(高分子学会予稿集,302
0−3022,1989年)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、従来のリン脂
質により調製した温度感受性リポソームにおいては、内
包物質の放出温度はリポソーム膜を構成する脂質により
特定の値となり、生体内に適用するべく体温付近での設
定は困難であった。また、内包物質の放出も遅く、短時
間に相当量の薬物を放出させたい場合には使用しにくい
ものであった。その他に、内包させる物質の性状等によ
っては、ほとんど放出の起こらないこともあった。
【0006】また、プルロニックポリマー導入多糖誘導
体で被覆したリポソームも、リポソーム上に導入される
前記ポリマーの量がわずかであるため、温度変化に対し
すみやかに反応せず、徐放性製剤への応用には向くが、
標的部位に短時間で作用させるべき薬剤等においては不
向きであった。さらに、多糖誘導体へのプルロニックポ
リマーの導入量の制御も困難で、温度変化に対する応答
性や放出量及び放出速度の制御を行い難いものであっ
た。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するた
め、リポソームの表面叉は内部に、曇点を有する高分子
化合物を直接担持させ、曇点以上の温度でこの高分子化
合物が疎水化することにより、リポソームの膜構造を変
化させ、内包物質を放出させる系を検討し、本発明を完
成させるに至った。
【0008】本発明においては、曇点を有する高分子化
合物をリポソーム中の水相に内包させるか、曇点を有す
る高分子化合物にアルキル基,コレステロール等の疎水
性基を導入し、この疎水性基とリポソーム膜の疎水性部
との相互作用を生ぜしめて、前記高分子化合物をリポソ
ームの表面叉は内部に担持させる。
【0009】本発明で使用する曇点を有する高分子化合
物としては、ポリアクリル酸系ポリマーが体温付近に曇
点を設定でき、特に好ましい。ポリアクリル酸系ポリマ
ーに曇点を持たせるには、ポリマー鎖中のカルボン酸,
アミド等に、直鎖,分岐鎖或いは環状の炭化水素基等を
導入して、ポリマー分子の修飾を行う。たとえば、N-ペ
ンチルアクリルアミド,N-イソプロピルアクリルアミ
ド,N-シクロヘキシルアクリルアミド等のモノマーを重
合させて、本発明の目的に好適なポリマーを得ることが
できる。さらに、ポリアクリル酸系ポリマーを調製する
際、種々の異なるモノマーを共重合させることにより、
高分子化合物の曇点の調節を行うことができる。
【0010】また、特にリポソーム表面に前記高分子化
合物を担持させる際、高分子化合物に疎水性基を導入す
ると、安定に保持させることができる。導入する疎水性
基としては、長鎖の直鎖叉は分岐アルキル基,コレステ
ロール等が好ましい。
【0011】本発明で用いるリポソームを調製する際、
使用する脂質については特に制限はない。リポソームに
高分子化合物を担持させるには、リポソーム溶液に高分
子化合物の溶液を曇点以下の温度で添加し、しばらくイ
ンキュベーションして相互作用させるか、或いはリポソ
ーム調製時に脂質と混合し、リポソーム内水相中に内包
させる。
【0012】
【作用】本発明に係る高分子化合物を担持した温度感受
性リポソームにおいて、曇点以下の温度では、担持され
た高分子化合物は親水性で水中に広がっているが、曇点
以上の温度になると、疎水性となり、高分子鎖が収縮す
ると同時にリポソーム脂質膜内へ移行しようとする。そ
の結果、リポソーム脂質膜の構造に乱れが生じ、内包物
質の放出が起こる。
【0013】前記したように、脂質の相転移温度に反応
した内包物質の放出においては、内包する物質によって
はほとんど変化がない場合がある。しかし、本発明に係
る温度感受性リポソームの場合、脂質の相転移とともに
担持された高分子化合物が疎水性となることにより、内
包物質の放出量を著しく増大させることができる。
【0014】薬剤を内包させたリポソームを生体内に適
用したり、有効成分を内包させたリポソームを皮膚上に
適用し、内包物質を標的部位で放出させる際、薬剤の作
用や標的部位により、放出速度を種々の段階に制御する
必要がある。本発明に係る温度感受性リポソームにおい
ては、リポソームと相互作用させる高分子化合物の量比
を変化させることにより、リポソームに担持させる高分
子化合物の量を容易に制御できる。従って、曇点以上の
温度に対するリポソーム脂質膜の構造変化の程度を調節
して、内包物質の放出量或いは放出速度を制御すること
が可能である。
【0015】
【実施例】さらに、本発明について実施例により詳細に
説明する。
【0016】実施例1として、ポリ-N-イソプロピルア
クリルアミドを担持させた卵黄レシチンマルチラメラリ
ポソームを調製した。まず、N-イソプロピルアクリルア
ミドとアクリル酸ステアリルとを99:1のモル比で共
重合させて共重合体(平均分子量20,000)を合成
し、この共重合体水溶液と、常法に従い調製した卵黄レ
シチンマルチラメラリポソーム溶液とを20℃で12時
間インキュベートして、リポソーム表面にポリ-N-イソ
プロピルアクリルアミドを担持させた。また、内包物質
として、カルボキシフルオレセインを用いた。
【0017】このポリ-N-イソプロピルアクリルアミド
担持リポソームについて、内包させたカルボキシフルオ
レセインの経時的な放出挙動を、蛍光強度を測定するこ
とにより調べた。その際、ポリ-N-イソプロピルアクリ
ルアミドを担持させていない卵黄レシチンリポソームを
比較例1とした。結果を図1に示す。
【0018】図1において、実施例1のリポソームは、
20℃では比較例1のリポソームと同程度のカルボキシ
フルオレセインの放出挙動を示し、放出速度はかなり抑
制されていた。しかし、温度を34℃に上昇させると、
実施例1のリポソームにおいては、顕著なカルボキシフ
ルオレセインの放出が認められた。温度を再び20℃に
低下させると、この放出は抑制された。一方、比較例1
のリポソームにおいては、このような温度に対する顕著
な反応は認められなかった。実施例1における顕著な温
度感受性は、このリポソームに担持させたポリ-N-イソ
プロピルアクリルアミドが、31℃に曇点を有するため
であると考えられる。
【0019】次に、実施例2として、ポリ-N-イソプロ
ピルアクリルアミドを担持させた、ジパルミトイルホス
ファチジルコリンユニラメラリポソームを調製した。ま
ず、N-イソプロピルアクリルアミドとアクリル酸ステア
リルとを99:1のモル比で共重合させて共重合体(平
均分子量20,000)を合成し、この共重合体水溶液
と、常法に従い調製したジパルミトイルホスファチジル
コリンユニラメラリポソーム溶液とを20℃で12時間
インキュベートして、リポソーム表面にポリ-N-イソプ
ロピルアクリルアミドを担持させた。また、内包物質と
して、カルセインを用いた。
【0020】このポリ-N-イソプロピルアクリルアミド
担持リポソームについて、内包させたカルセインの放出
挙動の温度による変化を、蛍光強度を測定することによ
り調べた。その際、ポリ-N-イソプロピルアクリルアミ
ドを担時させていないジパルミトイルホスファチジルコ
リンリポソームを比較例2とした。結果は、各温度にお
ける測定開始1分後のカルセインの放出量の内包量に対
する割合(漏れ率)にて、図2に示した。
【0021】カルセインを内包させた場合、通常の脂質
リポソームでは、脂質の相転移温度による放出の変化は
ほとんど認められない。図2においても、ジパルミトイ
ルホスファチジルコリンの相転移温度は42℃である
が、比較例2のリポソームでは、42℃付近より高温側
でわずかにカルセインの漏れが認められただけであっ
た。一方、実施例2のリポソームでは、ポリ-N-イソプ
ロピルアクリルアミドの曇点である31℃付近からカル
セインの放出が促進され、さらに、42℃付近では短時
間で著しい放出が認められた。実施例2のリポソームに
おいては、ポリ-N-イソプロピルアクリルアミドの曇点
が31℃、リポソームを構成するジパルミトイルホスフ
ァチジルコリンの相転移温度が42℃であるため、30
℃付近から42℃付近の広い温度範囲で内包物質の放出
の増大が認められると考えられる。また、通常は放出さ
れないような内包物質でさえも、相当量の放出を行わせ
ることができた。
【0022】
【発明の効果】以上のように、本発明に係る温度感受性
リポソームは、特定の温度に対する反応性が非常に良い
ものであった。この良好な温度感受性は、リポソーム構
成脂質の相転移温度よりも、担持させた高分子化合物の
有する曇点により定まるため、高分子化合物の曇点を調
節することによって、内包物質を放出させる温度を所望
の温度に設定することも可能である。
【0023】また、本発明に係る温度感受性リポソーム
においては、従来の温度感受性リポソームでは十分な放
出を起こすことのできなかった物質についても、良好に
放出させることができた。リポソーム構成脂質の相転移
による膜構造の変化と、高分子化合物の曇点における疎
水化による膜構造の変化との相乗作用により、従来より
短時間に多量の内包物質の放出を起こさせることも可能
である。従って、従来の温度感受性リポソームでは標的
部位で十分な薬剤の放出を果たせなかった場合などに
も、応用価値があるものである。
【0024】さらに、本発明においては、曇点を有する
高分子化合物のリポソームにおける担持量を容易に制御
することができるため、温度感受性リポソームからの内
包物質の放出速度をも制御することができる。従って、
ドラッグデリバリーシステム等に応用した場合でも、標
的部位や薬剤の作用,効果等の相違により、徐放性製剤
から即効性の製剤まで、幅広い製剤設計を行うことがで
きる。
【0025】このように、本発明により、医学・薬学分
野において特に有用な温度感受性リポソームを提供する
ことができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1及び比較例1について、20
℃及び34℃における、リポソームからのカルボキシフ
ルオレセインの放出挙動を経時的に示す図である。
【図2】本発明の実施例2及び比較例2について、リポ
ソームからのカルセインの漏れ率と、温度との関係を示
す図である。
【符号の説明】
1 実施例1 2 比較例1 3 実施例2 4 比較例2
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 // C08F 20/06 C08F 20/06 (56)参考文献 特開 昭54−28276(JP,A) 特開 平4−187634(JP,A) 特開 昭61−247716(JP,A) 特開 平5−194192(JP,A)

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 曇点を有する高分子化合物を表面叉は内
    部に担持させて成る、温度感受性リポソーム。
  2. 【請求項2】 曇点を有する高分子化合物が、ポリアク
    リル酸系ポリマーであることを特徴とする、請求項1に
    記載の温度感受性リポソーム。
  3. 【請求項3】 曇点を有する高分子化合物に、疎水性基
    を導入して表面叉は内部に担持させて成る、温度感受性
    リポソーム。
  4. 【請求項4】 曇点を有する高分子化合物が、ポリアク
    リル酸系ポリマーであることを特徴とする、請求項3に
    記載の温度感受性リポソーム。
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