JP2696992B2 - インクジェット記録用インクの製造方法 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、インク滴を吐出して記録紙等の被記録媒体
に文字や画像を記録するインクジェット記録装置に用い
られるインクジェット記録用インク及びその製造方法に
関し、特に長期放置後の印字安定性を改良したインクジ
ェット記録用インク及びその製造方法に関する。

〔従来の技術〕

従来一般的なオンディマンド型インクジェット記録装
置は、第１図のように基本的には、圧縮室13及びノズル
オリフィス12が形成された下基板上に圧縮室13に対応す
る位置に形成された圧電素子11を有する上基板15を積層
したインク噴出ヘッド10と、インク供給管16と、インク
タンク17とから成り、電気信号に応じて圧電素子11がた
わむことにより圧縮室13内のインクが圧縮されノズルオ
リフィス12よりインク粒として噴出され、被記録媒体に
記録を行うものである。

この記録方法において、圧縮室13にあるインクに急激
な圧縮のくり返しが行われるためキャビテーションが起
り易く、その結果圧縮室13内に気泡が発生する場合があ
る。一度発生した気泡は圧縮室13にとどまり、そのため
次に印加される電気信号で圧電素子11がたわんだ時に圧
縮室13内のインクが十分圧縮されないために、ノズルオ
リフィスより安定したインク粒が発生されなかったり、
インク粒自体を発生できず印刷不能となったりして印字
に影響を及ぼした。このキャビテーションはインク中に
浴存する空気が大きな原因と考えられており、溶存空気
を除去する方法についてさまざまな検討がされてきた。

従来、煮沸や減圧によって溶存空気を除去する方法
や、還元される化学種を添加しインク中の浴存気体を別
な化学種として存在させる方法などが用いらており、初
期的に溶存空気の除去は可能であった。

〔発明が解決しようとする課題〕

しかし、着色剤として種々の染料を検討した結果、初
期的に溶存空気が除去できても多くの染料においてはイ
ンクを長期放置することにより経時的に窒素の発生が認
められた。

また、溶存空気を別な化学種として存在させる方法に
ついては経時的に効果が認められるが、効果があるのは
酸素など反応性のある気体のみである。酸素を反応させ
て窒素の溶解量を飽和以下にするという試みも特公昭53
−20882号で行われている。窒素の量が一定に保たれる
のであれば効果も認められるが、インク成分の分解によ
る窒素の発生を含めると飽和量以下を保つのは不可能で
ある。

また、酸素吸収剤として亜硫酸塩をインクに添加する
と、多価アルコール系に溶けにくいことでノズル目詰ま
りを起こしやすく、さらにその還元作用によってインク
中の染料の変質や変色を引き起こすことがあった。

本発明の目的は、長期放置による窒素の発生を抑えた
印字安定性の良好な、かつ目詰まりやインクの変質、変
色を改良した記録用インク及びその製造方法を提供する
ことにある。

〔課題を解決するための手段〕

本発明はかかる問題を解決するものであり、本発明の
インクジェット記録用インクは、70℃の環境下に160時
間おいた時、その間の窒素発生量が2ppmを越えて10ppm
以下であることを特徴とする。

また、本発明の製造方法は、加熱手段及び還流手段を
有する製造装置によりインクジェット記録用インクの製
造方法であって、70℃の環境下に160時間おいた時、そ
の間の窒素発生量が2ppmを越えて10ppm以下になるよう
前記加熱手段を制御することを特徴とする。

インクの長期放置における窒素の発生は染料により非
常にばらつき、溶存気体濃度の増加程度から、溶解度を
越えて気泡の発生にまで及ぶものがあり、長期放置にお
ける印字安定性に悪影響を与えている。

そこで窒素の発生を抑えるべく検討を重ねた結果、イ
ンク製造時に加熱手段を制御する工程を有することで、
染料にかかわらず窒素の発生の抑制に効果があることが
わかった。さらに、そのインクを70℃の環境で、160時
間おき、その間の窒素の発生量が10ppm以下であれば、
長期放置後の印字安定性が良好でかつ目詰まりや変色、
変質がおこらないことがわかった。

以下、本発明をさらに詳しく説明する。

インク製造時の加熱手段を制御する工程は、染料によ
り適宜決められるものであるが、工程での温度は高い程
より効果が大きい。特にインクを沸騰させる場合は最も
効率的であり、さらにインク温度に対してヒーター温度
が高い程効果も大きい。工程の時間は温度と関連により
設定できるが、長い程効果はある。具体的には、工程の
制御温度は80℃以上、制御時間は３時間以上であれば、
多くの染料において十分な効果が得られ、得にアゾ染料
については著しい効果が得られる。さらに制御温度が90
℃以上であれば、より効果的である。本発明による製造
方法においてインクを脱気後、70℃の環境に160時間お
いた時に、その間の窒素の発生量が10ppm以下になれ
ば、インクの長期放置後の印字安定性は全く問題ない
が、逆に発生量を2ppm以下に抑えようとする工程として
非常に長時間を要し、さらにインクの変色、沈澱等がお
こる。従つて、インクを脱気後、70℃の環境に、160時
間おいた時に、その間の窒素の発生量が2ppmを越えて10
ppm以下の範囲になるよう制御する。

〔実施例〕

以下、実施例に沿つて本発明をさらに詳しく説明す
る。

まず本発明に用いるインク組成をａ〜ｆに示す。

上記ａ〜ｆの組成のインクを加熱手段および還流手段
を具備する製造装置を用いて制御温度と制御時間をかえ
製造した。それぞれのインクの製造における工程の温度
および時間の制御条件を第１表に示す。

１〜24に示すインクを0.8μｍのメンブレンフィルタ
で濾過後、70℃に加熱、減圧脱気を行ってアルミラミネ
ートフィルムから成るインク容器に封入し、70℃の環境
に、160時間置き、その間の窒素の発生量を、ガスクロ
マトグラフで測定した結果を第２表に示す。

また上記の製造方法において製造したインクの３ケ
月、６ケ月、１年放置における印字安定性と、インクの
変質、変色と、インクの目詰まりを評価した結果を第３
表に示す。

印字安定性は、駆動電圧130V、パルス巾100μｓ、周
波数3KHzの条件で行った。

〈印字安定性〉 ◎：連続印字でドット抜けがほとんど発生しない ○：時々ドット抜けする ×：顕著にドット抜けする 〈インクの変質、変色〉 分光光度計による色調の確認と0.8μｍのメンブレン
フィルタによる沈澱の確認により評価した。

○：変質、変色なし △：変色がみられる ×：沈澱、変色の発生 〈目詰まり〉 ノズルを開放して、常温１ケ月後に印字評価した。

○：クリーニングなしで初期から印字する △：クリーニングで復帰する ×：目詰まりして復帰しない 第２表、第３表から明らかな様に、本発明の製造方法
によりインクを脱気後、70℃の環境で160時間放置し、
その時の窒素の発生量を２〜10ppmの範囲になるように
工程を制御したインクは、長期放置後も、印字安定性、
変質、変色、目詰まりのいずれも良好であることがわか
った。

〔発明の効果〕

以上に述べたように、本発明のインクジェット記録用
インクによれば、長期にわたって染料からの窒素の発生
が抑えられ、常に印字安定性の良好なインクを得ること
ができる。また今までは窒素の発生による印字安定性不
良から、染料を限定する必要があったが、本発明によれ
ば、染料を限定することなく目的に応じて広範囲からの
選択が可能になった。また染料の反応しやすい成分は製
造時の加熱制御により速やかに反応し、その後の放置で
のインクの変質や変色も改良され、インクの品質安定性
目詰まりを含めて非常に良好なインクを得ることができ
た。

また、本発明は特にアゾ染料に対して顕著であり、印
字安定性、インクの変質、変色、目詰まりの改良効果は
大きく、インクの着色剤の選択範囲はおおいに拡大され
た。

さらに、本発明は製造装置等は従来のまま使用するこ
とができコスト面でも大きなメリットがある。

【図面の簡単な説明】

第１図はオンデマンド型インクジェット記録装置の原理
図。 10……インク噴射ヘッド 11……圧電素子 13……圧縮室 16……インク供給管 17……インクタンク

Claims (3)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】染料を含有するインクジェット記録用イン
   クであって、70℃の環境下に160時間おいた時、その間
   の窒素発生量が2ppmを越えて10ppm以下であることを特
   徴とするインクジェット記録用インク。
2. 【請求項２】前記染料がアゾ染料を含有することを特徴
   とする特許請求の範囲第１項記載のインクジェット記録
   用インク。
3. 【請求項３】加熱手段及び還流手段を有する製造装置に
   よるインクジェット記録用インクの製造方法であって、 70℃の環境下に160時間おいた時、その間の窒素発生量
   が2ppmを越えて10ppm以下になるように前記加熱手段を
   制御することを特徴とするインクジェット記録用インク
   の製造方法。