JP2694277B2 - 燃焼室構造 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 この発明は燃焼室構造に係り、特にバルブ面積を増加
するとともに、スキッシュエリアを増加する燃焼室構造
に関する。

〔従来の技術〕

ガソリン機関の混合気の燃焼は、シリンダヘッドとピ
ストンとで形成される燃焼室内で行われる。

前記燃焼室内で行われる混合気の燃焼は、点火とそれ
に続く火焔伝播が短周期で反復する間欠燃焼であり、燃
料の持つ化学エネルギはこの燃焼期間中に熱エネルギに
変換され、ピストン運動を介してクランクシャフト回転
運動として取り出されている。

また、前記燃焼室の形状は、バルブの配置によって、
シリンダヘッドにバルブを持つオーバヘッドバルブ式燃
焼室と、シリンダ側方にバルブを持つサイドバルブ式燃
焼室に大別される。前記オーバヘッドバルブ式燃焼室に
は、半球型燃焼室、くさび型燃焼室、浴そう型燃焼室等
がある。

更に、吸・排気バルブ周辺のガス流路を形成するとと
もに、点火プラグを配置している前記燃焼室形状は、吸
入混合気量、エンジン出力、熱効率等のエンジンの主要
性能を支配する重要な要素である。

更にまた、特開昭62−26308号公報に開示される如
く、シリンダヘッドの強度を確保するとともにカップ形
ベットの収容場所を確保すべく、カップ形タペットの長
さ方向の中心軸を、このカップ形タペットの中心軸と直
交し、且つカムシャフトの回転中心軸を通る平面を前記
カムシャフトの回転中心軸から間隔をおいて貫通させた
ものがあった。

また、特開昭61−49113号公報に開示される如く、１
気筒当り少なくとも３個以上の吸気バルブを設け、この
吸気バルブのバルブステム端部を１本のカムシャフト上
のカムにより効率よく駆動させるべく、中央に位置する
吸気バルブのバルブステム端部をロッカアームを介して
駆動し、その両側に位置する吸気バルブのバルブステム
端部を夫々リフタを介して駆動させていた。

〔発明が解決しようとする問題点〕

ところで、従来のマルチバルブエンジンの燃焼室構造
においては、点火プラグが燃焼室の中心部位に配置され
ているとともに、吸・排気バルブが前記燃焼室のボアに
沿って配置されていた。

この結果、吸入混合気量を増加してエンジンの出力を
向上すべく、バルブ面積を増加すれば、スキッシュエリ
アが減少して、エンジンの主要性能を低下させ、実用上
不利であるという不都合がある。

〔発明の目的〕

そこで、この発明の目的は、バルブ面積を増加し得る
とともにスキッシュエリアを増加し得て、エンジンの吸
入効率と燃焼効率とを向上し得て、エンジンの主要性能
を向上し得る燃焼室構造を実現することにある。

〔問題点を解決するための手段〕

この木多岐を達成するために、この発明は、シリンダ
ヘッドとピストンとで形成される燃焼室のボアの周縁に
沿って複数の吸気バルブ及び排気バルブを環状に配置す
るとともに前記燃焼室の中央部位にセンタバルブを配置
したマルチバルブエンジンの燃焼室構造において、前記
燃焼室の中央部位に前記ピストンの移動方向に対して略
直立するように前記センタバルブを配置し、前記センタ
バルブを駆動するカムシャフトの回転軸心と交差する方
向各側の前記燃焼室の周縁に沿って夫々前記吸気バルブ
及び排気バルブを配置するとともにこれら吸気バルブ及
び排気バルブを夫々前記燃焼室の中央部位に向かうよう
に傾斜して配置し、前記カムシャフトの回転軸心と平行
な方向各側の前記燃焼室の周縁に前記センタバルブを挟
むように夫々点火プラグを配置し、前記センタバルブ下
面部位と前記ピストン上端面部位とによりスキッシュエ
リアを形成すべく前記センタバルブ下面を上死点位置に
おける前記ピストン上端面に接近させて設けたことを特
徴とする。

〔作用〕

上述の如く構成したことにより、この燃焼室構造は、
燃焼室の中央部位にセンタバルブを設け、燃焼室の周縁
に夫々バルブ及び排気バルブを設けたことにより、バル
ブ面積が増加され、多量の混合気を燃焼室内に吸入する
ことができる。また、センタバルブ下面を上死点位置に
おけるピストン上端面に接近させて設けたことにより、
バルブ面積を減らすことなくスキッシュエリアを増加す
ることができ、燃焼室の中央部位に略直立するように配
置したセンタバルブとこのセンタバルブを駆動するカム
シャフトの回転軸心に対して交差する方向各側の燃焼室
の周縁に沿って夫々傾斜して配置した吸気バルブ及び排
気バルブとによって夫々混合気を逆方向に押し出し、混
合気を撹拌して乱流を与えることができ、前記混合気を
効率良く燃焼し得て、エンジンの主要性能を向上するこ
とができる。

〔実施例〕

以下図面に基づいてこの発明の実施例を詳細に説明す
る。

第１〜４図はこの発明の実施例を示すものである。第
１〜４図において、２はエンジン、４はシリンダヘッ
ド、６はシリンダヘッドカバー、８はシリンダブロック
である。前記エンジン２は、シリンダブロック８とシリ
ンダヘッド４とシリンダヘッドカバー６とを有してい
る。

前記シリンダヘッド４とシリンダブロック８内のシリ
ンダ10内を上下動するピストン12とにより、燃焼室14が
形成されている。燃焼室14の上面部位には、第１図にお
いて、上側に３個の吸気バルブ16、16、16が設けられ、
下側に３個の排気バルブ18、18、18が設けられ、前記吸
気バルブ16と排気バルブ18とが環状に配置されていると
ともに、中央部位に吸気用のセンタバルブ20が配置され
ている。また、シリンダヘッド４には、前記吸気バルブ
16と前記排気ルブ18とに対応して、夫々吸気通路22と排
気通路24とが設けられている。

前記３個の吸気バルブ16のバルブステム16aと３個の
排気バルブ18のバルブステム18aとセンタバルブ20のバ
ルブシテム20aとは、夫々シリンダヘッド４を上方へ貫
通している。前記吸気バルブ16及びセンタバルブ20に、
夫々のバルブステム16a、20aの上部にバネ受け26aを設
け、そのバネ受け26aに支持したスプリング28aにより、
前記吸気バルブ16及びセンタバルブ20が常時閉弁方向に
付勢されている。

また、前記排気バルブ18には、前記吸気バルブ16と同
様に、夫々のバルブステム18aの上部にバネ受け20bを設
け、そのバネ受け20bに支持したスプリング28bにより、
前記排気バルブ18が常時閉弁方向に付勢されている。

更に、前記吸気バルブ16のバルブシテム16aの上端部
位にはバルブリフタ30aを介して、前記吸気バルブ16を
駆動する第１カム32を有する第１カムシャフト34が設け
られている。

更にまた、前記排気バルブ18のバルブステム18aの上
端部位には、バルブリフタ30bを介して、前記排気バル
ブ18を駆動する第２カム36を有する第２カムシャフト38
が設けられている。

また、センタバルブ20のバルブステム20aの上端部位
には、バルブリフタ30aを介して、前記センタバルブ20
を駆動する第３カム40を有する第３カムシャフトが設け
られている。

これにより、このエンジン２は、図１・図２に示す如
く、燃焼室14の中央部位にピストン12の移動方向に対し
て略直立するようにセンタバルブ20を配置し、センタバ
ルブ20を駆動するカムシャフト42の回転軸心と交差する
方向各側の燃焼室14の周縁に沿って夫々吸気バルブ16及
び排気バルブ18を配置するとともにこれら吸気バルブ16
及び排気バルブ18を夫々燃焼室14の中央部位に向かうよ
うに傾斜して配置している。したがって、センタバルブ
20下面は、ピストン12上端面12aに対して略平行に対向
される。また、吸気バルブ16下面及び排気バルブ18下面
は、ピストン12上端面12aに対して夫々燃焼室14の中央
部位に向かうように傾斜して対向される。

このエンジン２の燃焼室14は、センタバルブ20下面と
ピストン12上端面12aとによりスキッシュエリアＳを形
成すべく、センタバルブ20をシリンダブロック８とシリ
ンダヘッド４との接合面Ａ近傍に位置させることによ
り、センタバルブ20下面を上死点位置におけるピストン
12上端面12aに接近させて設けている。

前記スキッシュエリアとは、ピストン12が上死点に達
した時に、前記燃焼室14内の混合気に乱流を与えて混合
をよくし、前記混合気を冷却して自己発火を防止する空
間である。

なお、符号44は点火プラグ取付用孔部、46は点火プラ
グである。この点火プラグ46は、第１図・第３図に示す
如く、カムシャフト42の回転軸心と平行な方向各側の燃
焼室14の周縁に夫々配置している。

次に作用について説明する。

エンジン２が駆動した際には、第１カムシャフト34の
回転により第１カム32が回転し、吸気バルブ16を直接開
閉させ、吸気通路16から混合気を燃焼室14内に吸入して
いる。

また、第２カムシャフト38の回転により第２カム36が
回転し、前記吸気バルブ16とはタイミングを異ならしめ
排気バルブ18を直接開閉させ、燃焼室14から排気通路24
に排気ガスを排出している。

更に、第３カムシャフト42の回転により第３カム40が
回転し、前記吸気バルブ16とは同タイミングにセンタバ
ルブ20を直接開閉させ、前記吸気通路22から混合気を燃
焼室14内に吸入している。

このエンジン２は、圧縮行程におけるピストン12の上
死点時に、第２図に示す如く、燃焼室14の中央部位に略
直立するように配置したセンタバルブ20下面とピストン
12上端面12aとにより形成されるスキッシュエリアＳに
よって、燃焼室14の中央部位の混合気が周縁に押し出さ
れる。また、このエンジン２は、圧縮行程におけるピス
トン12の上死点時に、第２図に示す如く、燃焼室14の周
縁において中央部位に向かうように傾斜して配置した吸
気バルブ16下面及び排気バルブ18下面がピストン12上端
面12aに近接することによって、燃焼室14の周縁の混合
気が中央部位に押し出される。

これにより、燃焼室14の中央部位に略直立して配置し
たセンタバルブ20とこのセンタバルブ20を挟んで燃焼室
14の周縁に夫々傾斜して配置した吸気バルブ16及び排気
バルブ18とは、夫々混合気を逆方向に押し出すことにな
り、混合気を撹拌して乱流を与え、燃焼室14内において
混合するとともに冷却することができる。

また、カムシャフト42の回転軸心と平行な方向各側の
燃焼室14の周縁にセンタバルブ20を挟むように夫々配置
した点火プラグ46は、センタバルブ20と吸気バルブ16及
び排気バルブ18とにより生成される混合気の乱流から離
れていることにより、周囲の混合気があまり撹拌される
ことがない。

これにより、点火プラグ46は、周囲の混合気の撹拌が
少ないことから、着火を容易・確実に行うことができ
る。

このため、このエンジン２の燃焼室14の構造は、第４
図に示す如く、燃焼室14の中央部位にセンタバルブ20を
設け、燃焼室14の周縁に夫々吸気バルブ16及び排気バル
ブ18を設けたことにより、バルブ面積を増加することが
できるとともに、燃焼室14内の混合気を混合し得て、こ
の混合気の自己発火を防止するスキッシュエリアＳをバ
ルブ面積を減少することなく増加することができる。こ
れにより、バルブ面積の増加により吸入される混合気量
を増加することができるとともに、エンジン２の燃焼効
率を向上することができ、エンジン２の高出力化と低燃
費とを実現することができ、実用上有利である。

また、センタバルブ20をシリンダブロック８とシリン
ダヘッド４との接合面Ａ近傍に位置させたので、燃焼室
をコンパクトに形成でき、ピストン12の変形を回避しつ
つ混合気の高圧縮化を可能にすることができる。

なお、ピストン12上端面12aは、シリンダヘッド４と
シリンダブロック９の接合面Ａ内に略一致する場合が多
いが一致せずこの接合面Ａより突出する場合、またはこ
の接合面Ａに達していない場合もあり、この場合はバル
ブ下面を適宜上下させて位置し、前記ピストン12上端面
12aとセンタバルブ20下面部位とを接近させなければな
らないのは勿論である。

〔発明の効果〕

このように、この発明によれば、燃焼室の中央部位に
センタバルブを設け、燃焼室の周縁に夫々吸気バルブ及
び排気バルブを設けたことにより、バルブ面積を増加す
ることができ、センタバルブ下面を上死点位置における
ピストン上端面に近接させてスキッシュエリアを形成し
たことにより、バルブ面積を減らすことなくスキッシュ
エリアを増加することができる。また、燃焼室の中央部
位に略直立するように配置したセンタバルブとこのセン
タバルブを駆動するカムシャフトの回転軸心に対して交
差する方向各側の燃焼室の周縁に沿って夫々傾斜して配
置した吸気バルブ及び排気バルブとによって夫々混合気
を逆方向に押し出し、混合気を撹拌して乱流を与えるこ
とにより、火炎の伝播を速めることができる。このた
め、エンジンの吸入効率と燃焼効率とを向上し得て、実
用上有利である。

また、シリンダヘッドとシリンダブロックとの接合面
近傍にセンタバルブを設けたことにより、コンパクトな
燃焼室を形成することができ、混合気の高圧縮化を実現
できる。

【図面の簡単な説明】

第１〜４図はこの発明の実施例を示し、第１図はエンジ
ンの燃焼室部位の拡大底面図、第２図は第１図のII−II
線による断面図、第３図は第１図のIII−III線による断
面図、第４図は、本案の燃焼室構造と従来の燃焼室構造
とを比較した折れ線グラフである。 図において、２はエンジン、４はシリンダヘッド、６は
シリンダヘッドカバー、８はシリンダブロック、10はシ
リンダ、12はピストン、14は燃焼室、16は吸気バルブ、
18は排気バルブ、20はセンタバルブ、22は吸気通路、24
は排気通路、26はバネ受け、28はスプリング、30はバル
ブリフタ、32は第１カム、34は第１カムシャフト、36は
第２カム、38は第２カムシャフト、40は第３カム、42は
第３カムシャフト、44は点火プラグ取付用孔部、46は点
火プラグである。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.⁶ 識別記号 庁内整理番号 ＦＩ 技術表示箇所 Ｆ０２Ｂ 23/08 Ｆ０２Ｂ 23/08 Ｍ 29/02 29/02 Ｚ

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】シリンダヘッドとピストンとで形成される
   燃焼室のボアの周縁に沿って複数の吸気バルブ及び排気
   バルブを環状に配置するとともに前記燃焼室の中央部位
   にセンタバルブを配置したマルチバルブエンジンの燃焼
   室構造において、前記燃焼室の中央部位に前記ピストン
   の移動方向に対して略直立するように前記センタバルブ
   を配置し、前記センタバルブを駆動するカムシャフトの
   回転軸心と交差する方向各側の前記燃焼室の周縁に沿っ
   て夫々前記吸気バルブ及び排気バルブを配置するととも
   にこれら吸気バルブ及び排気バルブを夫々前記燃焼室の
   中央部位に向かうように傾斜して配置し、前記カムシャ
   フトの回転軸心と平行な方向各側の前記燃焼室の周縁に
   前記センタバルブを挟むように夫々点火プラグを配置
   し、前記センタバルブ下面部位と前記ピストン上端面部
   位とによりスキッシュエリアを形成すべく前記センタバ
   ルブ下面を上死点位置における前記ピストン上端面に接
   近させて設けたことを特徴とする燃焼室構造。