JP2690957B2 - 直流アーク炉における可動電極の位置制御方法 - Google Patents

直流アーク炉における可動電極の位置制御方法

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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は、直流アーク炉の可動電極(アーク電極とも
言う)を位置制御する直流アーク炉における可動電極の
位置制御方法に係わり、特に炉内の状況を考慮した電極
位置制御を行う直流アーク炉における可動電極の位置制
御方法に関する。
(従来の技術) 一般に、製鋼用直流アーク炉においては、可動電極か
らアークを発生しながら溶解原料である鉄屑等の被溶解
物(以下、スクラップと指称する)を溶解し炉底に溶鋼
を得るものであるが、そのスクラップの溶解時にスクラ
ップの形状が時々刻々変化し、それに伴ってアーク電流
が変化するので、所望のアーク電流を確実に得るために
可動電極を頻繁に昇降制御する必要がある。
第2図は、従来方法を適用した位置制御システムの構
成図であって、アーク炉1にスクラップ2を充填して炉
蓋3を閉止した後、この炉蓋3上部から可動電極4を挿
入し、トランス5,AC−DC変換用サイリスタ6,直流リアク
トル7を介して可動電極4と炉底電極8間に電圧を印加
し、可動電極4先端からアークを発生しながらスクラッ
プ2を順次溶解していく。
このアーク発生時,アーク電圧検出器11で可動電極4
と炉底電極8間の電圧Vrを検出し、この検出電圧Vrと予
め定めた設定電圧Vdとの偏差が零となるように調節部12
で比例積分演算を行い、得られた操作出力(制御信号)
を昇降制御用モータ13に供給する。この昇降制御用モー
タ13は操作出力に基づいて正転または逆転し、それに伴
ってウインチ14が一端を固定端とするワイヤ15の他端を
巻きとりまたは巻き戻すことにより、このワイヤ15を介
してマスト16を昇降制御している。このときマスト16上
部に水平に固定された水平ホルダアーム17が一緒に昇降
するので、このホルダアーム17を介して可動電極4が昇
降制御され、可動電極4と炉底電極8間に所定の電圧が
印加されて可動電極4先端から所望形状のアークが発生
される。
また、アーク電流の制御においては、サイリスタ6の
出力側または炉底電極8の出力側よりアーク電流を検出
し、この検出電流Irと設定電流Idとの偏差が零となるよ
うに自動電流調整器でゲート制御角αを求め、このゲー
ト制御角αに応じて前記サイリスタ6のゲートを制御す
る構成となっいる。
従って、この種の電極位置制御方法は、Vd−Vr<0な
る関係にあるとき可動電極4を下降させ、Vd−Vr>0な
る関係にあるとき可動電極4を上昇させるような制御を
行っている。一方、アーク電流の制御においては、Id−
Ir<0なる関係にあるときゲート制御角αを大きくし、
Id−Ir>0なる関係にあるときゲート制御角αが小さく
するように制御している。
(発明が解決しようとする課題) しかし、以上のような電極の位置制御方法では、例え
ばVd−Vr>0の関係にあると判断して可動電極4を上昇
させても可動電極4と炉底電極8間の電圧Vrが大きくな
らない場合が有り、逆にVd−Vr<0の関係にあるとき可
動電極4を下降させても電圧Vrが小さくならない場合が
ある。すなわち,制御の意図とは逆の現象が発生し、可
動電極4の位置制御を適切に行えない問題がある。この
ことは例えばVd−Vr>0なるときに可動電極4を上昇さ
せても可動電極サイドよりアークが発生している場合に
は電極Vrが大きくならず、またVd−Vr<0なるときには
可動電極4を下降させても例えばスクラップ2自体が速
く溶ける場合には電圧Vrが小さくならないことが生ず
る。このように従来の電極の位置制御方法は、可動電極
4と炉底電極8間の検出電圧Vrのみに依存して電極の位
置を適切に制御できない。
本発明は以上のような不具合を除去するためになされ
たもので、炉内の状況を適切に評価しながら適切な電極
位置制御を実現し得、よって,操業上ロスを低減して生
産性の向上を図る直流アーク炉における可動電極の位置
制御方法を提供することを目的とする。
(課題を解決するための手段および作用) 本発明は、直流アーク炉内の被溶解物を溶解する可動
電極への印加電圧を検出し、この検出電圧Vrと設定電圧
Vdとの電圧偏差に応じて前記可動電極の昇降制御を行う
直流アーク炉における可動電極の位置制御方法におい
て、前記検出電圧Vrと設定電圧Vdとの電圧偏差がVd−Vr
>0の関係にある電極上昇制御時、可動電極の移動量dH
と前記可動電極の検出電圧の変化量dVrとの比△V(=d
Vr/dH)を算出し、この比が可動電極サイドのアーク発
生量に基づいて定められる規定範囲以下または以上のと
きには炉内の状況から電極の移動を抑制すべきであると
判断し可動電極上昇方向における前記電圧偏差の単位量
当たりの電極移動量を小さくする。また前記検出電圧Vr
と設定電圧Vdとの電圧偏差がVd−Vr<0の関係にある電
極下降制御時、前記比△V(=dVr/dH)がスクラップ溶
け込み速度に基づいて定められる所定値を越えたとき、
前記と同様に炉内の状況から電極の移動を速くすべきで
あると判断し、可動電極下降方向における前記電圧偏差
の単位量当たりの電極移動量を大きくすることにより、
炉内の状況を考慮しつつ可動電極を適切に位置制御する
ものである。
(実施例) 以下、本発明方法の一実施例としての構成について第
1図を参照して説明する。なお、第1図において第2図
と同一部分には同一符号を付してその詳しい説明は省略
し、専ら第2図と比較して異なる部分について説明す
る。すなわち、本発明方法においては、例えばマスト16
の近傍に電極位置センサ21を設け、このセンサ21の出力
から電極位置信号Hを取り出し、この電極位置信号Hと
前記アーク電圧検出器11の検出電圧Vrとを電圧変化量演
算手段22に供給する。この電圧変化量演算手段22は、△
V=(dVr/dH)なる演算を行って検出電圧の変化量△V
を求めた後、電極速度判断手段23に送られる。この演算
は例えば一定時間間隔でdVrとdHを計算し、これにより
△Vを求めることにより行う。この電極速度判断手段23
は、電極上昇制御時に評価係数k1,k2を用いて検出電圧V
rの変化量△Vがk1<△V<k2なる関係にあるか否かを
判断し、上記関係にないときには電極上昇速度を低下さ
せる信号を出力し、かつ、上記関係にあるときには電極
速度が正常であると判断し本来の調節部12の出力のみに
依存させるように信号を出力しない第1の電極速度判断
部23aと、電極下降制御時に検出電圧Vrの変化量△Vが
評価係数k3よりも大きいときに電極下降速度を速める判
断信号を出力し、かつ、それ以外のときに電極速度が正
常であると判断し本来の調節部12の出力のみに依存させ
るように信号を出力しない第2の電極速度判断部23aと
からなっている。なお、前記評価係数k1およびk2は検出
電圧の変化量と電極位置の変化量の比で表されるもので
あって、アーク炉1の正常な操業範囲の下限比と上限比
と考えることができる。特に、上限比k2は、検出電圧の
変化量が極端に大きくなれば調節部12の本来の制御を損
なう可能性があるので、本来の調節部12の動作に戻す限
界値の意味をもった値である。検出電圧の変化量が上記
比を越えて必要以上に大きくなったり、または必要以上
に小さくなったときに電極速度を徐々に低下させ、最終
的には可動電極4を停止させることを意図する。前記評
価係数k3も同様な意図の下に予め設定されるものであ
る。
24は電極速度可変手段であって、常時は前記調節部12
からの操作出力に基づいて昇降制御用モータ13を制御す
るが、前記各電極速度判断部23a,23bから電極速度を低
下させ、または電極速度を速める判断信号を受けたと
き、前記操作出力をその信号に応じて可変して昇降制御
用モータ13の回転速度を制御する機能を持っている。
次に、本発明方法を適用したシステムの動作について
説明する。今、可動電極4に高電圧を印加して可動電極
4先端からアークを発生させながらスクラップ2を溶解
していくが、このときアーク電圧検出器11の検出電圧Vr
と設定電圧Vdとの偏差がVd−Vr>0の関係にあるとき、
調節部12は所要の速度vで可動電極4を上昇させるよう
な制御信号を昇降制御用モータ13に供給する。
しかして、この電極上昇時、電圧変化量演算手段22で
はアーク電圧検出器15からの検出電圧Vrと電極位置セン
サ21からの電極位置信号Hとを取込み、△V=(dVr/d
H)なる演算を行って検出電圧の変化量△Vを求めた
後、第1の電極速度判断部23aへ送出する。この第1の
電極速度判断部23aでは、評価係数k1,k2を用いて検出電
圧の変化量△Vがk1<△V<k2なる関係にあるか否かを
判断し、上記関係にないと判断したときには例えば可動
電極サイドからのアーク発生等により可動電極4を所定
の速度で昇降されても発生電圧が大きくならないと判断
し、可動電極4の上昇速度を低下させる信号を出力す
る。その結果、この信号を受けて電極速度可変手段24で
は調節部12からの操作出力を低下させることにより、可
動電極4の上昇速度を低下させるように昇降制御用モー
タ13を制御する。従って、上記k1>△V>k2以外の関係
が所定時間の間続くと可動電極4は最終的には停止して
しまう。
一方、アーク電圧検出器11の検出電圧Vrと設定電圧Vd
との偏差がVd−Vr<0の関係にあるとき、調節部12は所
要の速度vで可動電極4を下降させるような制御信号を
昇降制御用モータ13に供給するが、この電極下降時,電
圧変化量演算手段22では前述と同様にアーク電圧検出器
15からの検出電圧Vrと電極位置センサ21からの電極位置
信号Hとを取込み、△V=(dVr/dH)なる演算を行って
検出電圧の変化量△Vを求めた後、第2の電極速度判断
部23bに送出する。ここで、第2の電極速度判断部23bで
は、評価係数k3を用いて検出電圧の変化量△Vがk3より
も大きいか否かを判断し、大きいと判断したとき例えば
スクラップ2の溶け込みが非常に速いために可動電極4
を所定の速度て下降させても発生電圧が小さくならない
と判断し、電極下降速度を速める信号を出力する。その
結果、この信号を受けて電極速度可変手段24は調節部12
からの操作出力を増加させることにより、可動電極4の
下降速度を上昇させるように昇降制御用モータ13を制御
する。
従って、以上のような実施例によれば、調節部12によ
る検出電圧に依存した本来の可動電極4の速度とは別
に、その可動電極4の上昇時に検出電圧の変化量が2つ
の評価係数を越えて必要以上に発生電圧が大きくならな
いときには可動電極4の速度を低下させ、逆に可動電極
4の下降時に検出電圧の変化量が評価係数よりも大きい
とき、可動電極の速度を速める制御を行うことにより、
炉内の状況を適切に評価しながら可動電極を適切な状態
で位置制御できる。このように速度を早めたり、遅めた
りした状態より、正規の状態への復帰方法は速度を早め
たり遅めたりした状態となったことをオペレータに警報
し、オペレータが状態を確認の上リセットボタンを押し
て復帰させるとか、(dVr/dH)を監視し、これが規定範
囲内に入ってから一定時間後に復帰させる等の方法を適
宜選ぶことができる。
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではな
い。すなわち、上記実施例ではワイヤ15を用いてマスト
16の昇降を行っているが、このワイヤ15に代えてマスト
16側にラックを取付け、昇降制御用モータ13の出力軸に
歯車を取付け、この歯車をラックに噛合させることによ
りマスト16を昇降させてもよく、その他種々の昇降制御
手段を用いて昇降可能である。その他、本発明はその要
旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。
(発明の効果) 以上詳記したような本発明によれば、可動電極・炉底
電極間の検出電圧と設定電圧との偏差に基づいて可動電
極の昇降および速度制御を行うほか、可動電極の移動量
に対する可動電極の前記検出電圧の変化量との比を算出
し、この比が第1の規定範囲以下または以上のときには
可動電極上昇方向における前記電圧偏差の単位量当りの
電極移動量を小さくし、前記比が第2の範囲以上にある
ときには可動電極下降方向における前記電圧偏差の単位
量当りの電極移動量を大きくする様にしたことにより、
炉内の状況を考慮しながら可動電極の適切な位置制御を
行うことができ、よって操業上のロスをなくして効率的
にスクラップを溶解させ得、これにより製鋼時間の短縮
化によって生産性の向上が図れ、諸原単位の低減にも大
きく貢献する直流アーク炉における可動電極の位置制御
方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明に係わる直流アーク炉における可動電極
の位置制御方法を適用したシステム構成図、第2図は従
来方法を適用したシステム構成図である。 1……アーク炉、2……スクラップ、4……可動電極、
11……アーク電圧検出器、12……調節部、13……昇降制
御用モータ、22……電圧変化量演算手段、23……電極速
度判断手段、24……電極速度可変手段。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 高橋 昭一 東京都千代田区丸の内1丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (72)発明者 青 範夫 東京都千代田区丸の内1丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (72)発明者 岡崎 金造 神奈川県川崎市川崎区田辺新田1番1号 富士電機株式会社内

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】直流アーク炉内の被溶解物を溶解する可動
    電極への印加電圧を検出し、この検出電圧Vrと設定電圧
    Vdとの電圧偏差に応じて前記可動電極の昇降制御を行う
    直流アーク炉における可動電極の位置制御方法におい
    て、 前記検出電圧Vrと設定電圧Vdとの電圧偏差がVd−Vr>0
    の関係にある電極上昇制御時、前記可動電極の移動量dH
    と前記可動電極の検出電圧の変化量dVrとの比△V(=d
    Vr/dH)を算出し、この比が前記可動電極サイドのアー
    ク発生量に基づいて定められる規定範囲以下または以上
    のとき、可動電極上昇方向における前記電圧偏差の単位
    量当たりの電極移動量を小さくし、 一方、前記検出電圧Vrと設定電圧Vdとの電圧偏差がVd−
    Vr<0の関係にある電極下降制御時、前記比△V(=dV
    r/dH)がスクラップ溶け込み速度に基づいて定められる
    所定値を越えたとき、可動電極下降方向における前記電
    圧偏差の単位量当たりの電極移動量を大きくすることを
    特徴とする直流アーク炉における可動電極の位置制御方
    法。
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