JP2685751C - - Google Patents
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Description
【発明の詳細な説明】
[発明の目的]
(産業上の利用分野)
本発明は化合物超伝導線に係り、特に酸化物超伝導体を用いた化合物超伝導線
の製造方法及び酸化物超伝導体を用いた場合に好適な化合物超伝導線の構造に関
する。 (従来の技術) 化合物超伝導遺体としては金属系のA15型、B1型、シェブレル型、ラーベ
ス型、また酸化物セラミック系のペロブスカイト型、層状ペロブスカイト型等の
結晶構造に属するものが知られている。これらの中でもLa−Ba−Cu−O系
に代表される層状ペロブスカイト型等の酸化物超伝導体では臨界温度が30K以
上、またY−Ba−Cu−O系のようなペロブスカイト,層状ペロブスカイト等
の多相からなる酸化物超伝導体では臨界温度が90Kを超えるものが得られるた
め非常に有望な材料である。しかしながらこれらの酸化物超伝導体は従来、焼結
によるペレット状のものしかできなかった。また超電導マグネット等の応用を考
慮した場合は超伝導体の線材化が必要である。 (発明が解決しようとする問題点) このように酸化物超伝導体は非常に有望な材料であるが、線材への加工ができ
なかったために超電導マグネット等への応用が困難であった。 そこで本発明は、酸化物超伝導体を用いた超伝導線を提供することを目的とす
る。 [発明の構成] (問題点を解決するための手段及び作用) 第1の発明の化合物超伝導線の製造方法にあっては、 銀あるいは金、またはこれらの少なくともいずれか一種を主成分とする合金か
ら構成される金属シース材内部に酸化物超伝導体を形成するための原料を充填し
た部材を作成する第1の工程と、 前記部材を減面加工する第2の工程と、 前記減面加工された部材に酸化性雰囲気中で加熱処理を施し、前記金属シース
材内部に酸化物超伝導体を生成する第3の工程とを具備したことを特徴としてい
る。 また、第2の発明の化合物超伝導線にあっては、 銀あるいは金、またはこれらの少なくともいずれか一種を主成分とする合金か
ら構成される金属シース材内部に酸化物超伝導体を成形するための原料を充填し
た部材を作成する第1の工程と、前記部材を減面加工する第2の工程と、前記減
面加工された部材に酸化性雰囲気中で加熱処理を施し、前記金属シース材内部に
酸化物超伝導体を生成する第3の工程とにより製造された化合物超伝導線である
ことを特徴としている。 各工程について第1図を用いて詳細に説明する。 第1図は各工程を示す線材の断面図である。 第1の工程で用いる原料としては第3の工程で、例えばLa−Sr−Cu−O
,La−Ba−Cu−O系に代表される層状のペロブスカイト型(La1-xM)2
CuO4(M;Ba,Sr,Ca)の他、Y−Ba−Cu−O系,Sc−Ba−
Cu−O系等の連続した酸化物超伝導体が形成できればどのようなものでも良い
。例えば、La、Y、Sc、M、Cu単体若しくは酸化物、さらには加熱により
酸化物に転じる炭酸塩、硝酸塩、水酸化物等を用い、これらを化学量論比に合う
ように混合したしたものを原料として用いることができる。またこの化合物を仮
焼し粉砕したものを原料として用いても良い。 この原料をシース材内部に埋め込む(第1図(a))。シース材としては、電
気抵抗が低く、熱伝導性に優れたものが好適であり、例えば銀、金およびこれら を主体とした合金があげられる。このシース材は超伝導線を形成した場合の安定
化材となる。また埋め込む原料形態であるが、粉体でも良いし線状でも良い。例
えばLa,Ba,Cuの夫々の金属線を同時に埋め込むこともできる。 次に第2の工程である。ここでは第1の工程で得られた部材に、押し出し、ス
ェージング、線引き等の手法で減面加工を施し、所望の線径の線材を得る(第1
図(b))。なお超伝導線の形態としては断面円形に限らず、リボン状等種々の
形態が考えられる。 次に第3の工程である。この工程では第2の工程で所望の線径に減面加工がな
された部材に加熱処理を施し、シース材内部に充填された原料を連続した化合物
超伝導体とする(第1図(c))。この加熱処理温度は酸化物超伝導体が形成で
きるように適宜設定できるが、シース材の融点が実質的な上限温度となる。また
下限は特に設定しないが、酸化物超伝導体を形成するためには、実用上500℃
以上が必要である。 以上安定化材となるシース材内部に一つの超伝導体を含む単芯線に付いて説明
したが、シース材内部に複数の穴を設けて夫々に原料を埋め込んでも良いし、単
芯線を更に複数本束ねて再度安定化材に組み込んで多芯線を構成しても良い。 さて第3の工程の加熱処理による酸化物超伝導体の生成であるが、シース材と
原料との間に構成元素、例えばCu、O等の拡散が生じると所定の化学量論比か
らのズレが生じてしまい、超伝導特性を劣化させてしまう恐れがある。また、安
定化材としての役割を果たすシース材にしても原料側からの酸素等の拡散が顕著
となると、電気抵抗の上昇、熱伝導性の低下等の問題が生じる。従ってこの様な
問題が生じる恐れがある場合は、シース材と原料の間に拡散を防止するバリヤ材
を介在させることにより、この拡散による悪影響を防止することができる。 このバリヤ材としては例えばステンレス、銀、金、白、金等があげられる。特
にシース材として銅又は銅合金を用いた場合、La−Ba−Cu−O系等の銅含
有酸化物超伝導体の酸素、銅の拡散による超伝導体側の化学量論比からのズレ、
及びシース材中への酸素の拡散による熱伝導率の低下を防止する効果が顕著であ
る。 この様なバリヤ材を用いる場合は、第1の工程で原料をバリヤ材で囲む、又は
、 シース材の内面をバリヤ材で構成するなどの手法を取れば良い。この様子を第2
図に示す。 また原料の調合具合、加熱処理条件等によっては酸化物超伝導体が所定の超伝
導特性を発揮するのに必要な化学量論比から、酸素が不足した形となる場合があ
る。この様な場合は原料に十分な酸素を供給できるように、シース材の一部を線
材の長手方向に沿って削除し、原料が加熱処理時に外部の酸化性雰囲気と接触で
きるようにすることが好ましい(第3図(a))。また前述の如くバリヤ材を設
けた場合は、このバリヤ材の一部も除去して加熱処理を行なう。(第3図(b))。 なおシース材としてAg又はAg合金を用いた場合は、Agが酸素を拡散し易
く、かつAg自体は酸化しにくいため、加熱処理時に外部から原料に十分な酸素
を供給できるため上述のような問題が生じにくい。このようにAgシースを用い
た場合は、酸素雰囲気、大気中等の酸化性雰囲気中、500〜940℃程度で前
記加熱処理を行うことが好ましい。あまり加熱処理温度が低いと酸素の拡散が遅
く、あまり高温の加熱処理では素材が変形し易くなる。 (実施例) 以下に本発明の実施例を説明する。実施例−1 La2O3,SrO,CuOをCuO 1モルに対してLa2O3 0.9モル、
SrO 0.2モルの割合でボールミルを用いて混合した。この混合物を900
℃で仮焼した後、再度粉砕・混合を行ない、化合物超伝導体の原料としての粉末
を得た。この原料を銅製の管状のシース材内部に酸素ガス含有雰囲気中で詰め込
む。その後シース材の両端開口部を閉塞し、一体化する。この一体化された部材
を断面減少比が約100以上になるまで、押し出し,スェージング,線引き等の減
面加工を施して細線化した後、900℃,15Hの加熱処理を施す。 この加熱処理によりシース材内部の原料が反応して(La0.9Sr0.1)2Cu
O4の組成式で表される層状ペロブスカイト型の酸化物超伝導体の連続体が生成
し、化合物超伝導線を得ることができる。この化合物超伝導線を用いて超伝導特
性を調べたところ、臨界温度は35K、臨界電流は10Aと良好な特性を示した
。なお銅製シース材の代わりにCu−Ni合金製シース材を用いても同様の結 果を得た。実施例−2 La2O3,BaO,CuOを用い実施例−1と同様に(La0.925Ba0.075)
2CuO4の組成式で表される層状ペロブスカイト型の酸化物超伝導体の化合物超
伝導線を得た。 臨界温度は31K、臨界電流は8Aと良好な特性を示した。実施例−3 La2O3,BaO,CuOを用い実施例−1と同様に(La0.9Ca0.1)2C
uO4の組成式で表される層状ペロブスカイト型の酸化物超伝導体の化合物超伝
導線を得た。 臨界温度は29K、臨界電流は5Aと良好な特性を示した。実施例−4 Y2O3,BaO,CuOを用い実施例−1と同様に(Y0.7Ba0.3)2CuO4
の組成式で表される多相の酸化物超伝導体の化合物超伝導線を得た。 臨界温度は90K、臨界電流は10Aと良好な特性を示した。 なおYをScに代えてもほぼ同様の結果を得た。実施例−5 実施例−1〜4の加熱処理前の部材にシース材の一部を長手方向にHNO3で
除去した後(第3図)、各実施例と同様の加熱処理を施したところ、各実施例の
臨界温度は約5K上昇し、臨界電流は約倍増した。実施例−6 Ag製のシース材に、La,Sr,Cuを(La0.9Sr0.1)2CuO4の組成
式で表される層状ペロブスカイト型の酸化物超伝導体となるような比率で混合し
た原料を充填して、シース材の両端を閉塞した。その後、減面加工により細線化
した後、700℃大気中7日間の酸化熱処理を行った結果(La0.9Sr0.1)2
CuO4の組成式で表される層状のペロブスカイト型の酸化物伝導体の連続体が
シース材の内部に生成された。 臨界温度は35K、臨界電流は10Aと良好な特性を示した。実施例−7 実施例−6におけるSrの代わりにBaを用いて同様に超伝導線を製造した。 臨界温度は29K、臨界電流は5Aと良好な特性を示した。実施例−8 実施例−6におけるSrの代わりにCaを用いて同様に超伝導線を製造した。 臨界温度は29K、臨界電流は5Aと良好な特性を示した。実施例−9 実施例−6のLa,Sr,Cuの代わりにY,Ba,Cuを用い(Y0.4Ba0
.6)CuO3の比率となるように混合し、同様に超伝導線を製造した。 臨界温度は96K、臨界電流は10Aと良好な特性を示した。実施例−10 実施例−6のLa,Sr,Cuの代わりに(Y0.9Ba0.1)CuO3の比率と
なるようにY2O3,BaO,CuOを用い混合し、同様に超伝導線を製造した。 臨界温度は80K、臨界電流は12Aと良好な特性を示した。実施例−11 La2O3,SrO,CuO 1モルに対してLa2O3 0.92モル、SrO
0.2モルの割合でボールミルを用いて混合した。この化合物を900℃,2
Hの条件で仮焼した後、再度粉砕・混合を行ない、化合物超伝導体の原料として
の粉末を得た。この原料を銀製のシート(バリヤ材)で棒状に包み込んだ。この
バリヤ材で包まれた複合体を直径10mm,内径8mmの銅製の管状のシース材
の内部に挿入した。その後シース材の両端開口部を閉塞し、一体化した。次いで
この一体化された部材を断面減少比が約100以上になるまで、押し出し,スェ
ージング,線引き等の減面加工を施して直径1mmの線材を得た。この後、真空
中900℃,15Hの加熱処理を施す。この加熱処理によりシース材内部に(l
a0.9Sr0.1)2CuO4の組成式で表される層状ペロブスカイト型の酸化物超伝
導体の連続体が生成していることがX線解析で確認された。 このようにして製造された超伝導線を用いて実測した結果、臨界温度40K、
臨界電流10Aの良好な超伝導特性を示すことが確認された。また安定化材であ
るシース材の銅の熱伝導率をみるために、RRR(室温抵抗を臨界温度直上の抵
抗で割った値;RRRが大きいほど熱伝導率大)を測定したところ、約50であ った。この値は従来一般に使用されているNb3Sn超伝導線のRRRに比べて
も充分大きな値であり、本実施例の方法により安定化材としての銅が原料の酸素
により汚染されていないことが明らかとなった。 従ってこの様な方法によって得られた超伝導線は良好な超伝導特性を有し、か
つ、安定化材の熱伝導率も高いため、超電導マグネットへ応用した場合に有効で
ある。実施例−12 La2O3,BaO,CuOを用い実施例−10と同様に(La0.925Ba0.075
)2CuO4の組成式で表される層状ペロブスカイト型の酸化物超伝導体の化合物
超伝導線を得た。 臨界温度は35K、臨界電流は8Aと良好な特性を示した。実施例−13 La2O3,CaO,CuOを用い実施例−10と同様に(La0.9Ca0.1)2
CuO4の組成式で表される層状ペロブスカイト型の酸化物超伝導体の化合物超
伝導線を得た。 臨界温度は18K、臨界電流は3Aと良好な特性を示した。実施例−14 Y2O3,BaO,CuOを用い実施例−10と同様にY0.4Ba0.6CuO3の
組成比の酸化物超伝導体の化合物超伝導線を得た。 臨界温度は96K、臨界電流は10Aと良好な特性を示した。 [発明の効果] 以上説明したように本発明によれば、臨界温度が高い層状ペロブスカイト型等
の酸化物超伝導体を用いた化合物超電導線を得ることができ、超電導マグネット
等への応用に寄与するところ大である。
の製造方法及び酸化物超伝導体を用いた場合に好適な化合物超伝導線の構造に関
する。 (従来の技術) 化合物超伝導遺体としては金属系のA15型、B1型、シェブレル型、ラーベ
ス型、また酸化物セラミック系のペロブスカイト型、層状ペロブスカイト型等の
結晶構造に属するものが知られている。これらの中でもLa−Ba−Cu−O系
に代表される層状ペロブスカイト型等の酸化物超伝導体では臨界温度が30K以
上、またY−Ba−Cu−O系のようなペロブスカイト,層状ペロブスカイト等
の多相からなる酸化物超伝導体では臨界温度が90Kを超えるものが得られるた
め非常に有望な材料である。しかしながらこれらの酸化物超伝導体は従来、焼結
によるペレット状のものしかできなかった。また超電導マグネット等の応用を考
慮した場合は超伝導体の線材化が必要である。 (発明が解決しようとする問題点) このように酸化物超伝導体は非常に有望な材料であるが、線材への加工ができ
なかったために超電導マグネット等への応用が困難であった。 そこで本発明は、酸化物超伝導体を用いた超伝導線を提供することを目的とす
る。 [発明の構成] (問題点を解決するための手段及び作用) 第1の発明の化合物超伝導線の製造方法にあっては、 銀あるいは金、またはこれらの少なくともいずれか一種を主成分とする合金か
ら構成される金属シース材内部に酸化物超伝導体を形成するための原料を充填し
た部材を作成する第1の工程と、 前記部材を減面加工する第2の工程と、 前記減面加工された部材に酸化性雰囲気中で加熱処理を施し、前記金属シース
材内部に酸化物超伝導体を生成する第3の工程とを具備したことを特徴としてい
る。 また、第2の発明の化合物超伝導線にあっては、 銀あるいは金、またはこれらの少なくともいずれか一種を主成分とする合金か
ら構成される金属シース材内部に酸化物超伝導体を成形するための原料を充填し
た部材を作成する第1の工程と、前記部材を減面加工する第2の工程と、前記減
面加工された部材に酸化性雰囲気中で加熱処理を施し、前記金属シース材内部に
酸化物超伝導体を生成する第3の工程とにより製造された化合物超伝導線である
ことを特徴としている。 各工程について第1図を用いて詳細に説明する。 第1図は各工程を示す線材の断面図である。 第1の工程で用いる原料としては第3の工程で、例えばLa−Sr−Cu−O
,La−Ba−Cu−O系に代表される層状のペロブスカイト型(La1-xM)2
CuO4(M;Ba,Sr,Ca)の他、Y−Ba−Cu−O系,Sc−Ba−
Cu−O系等の連続した酸化物超伝導体が形成できればどのようなものでも良い
。例えば、La、Y、Sc、M、Cu単体若しくは酸化物、さらには加熱により
酸化物に転じる炭酸塩、硝酸塩、水酸化物等を用い、これらを化学量論比に合う
ように混合したしたものを原料として用いることができる。またこの化合物を仮
焼し粉砕したものを原料として用いても良い。 この原料をシース材内部に埋め込む(第1図(a))。シース材としては、電
気抵抗が低く、熱伝導性に優れたものが好適であり、例えば銀、金およびこれら を主体とした合金があげられる。このシース材は超伝導線を形成した場合の安定
化材となる。また埋め込む原料形態であるが、粉体でも良いし線状でも良い。例
えばLa,Ba,Cuの夫々の金属線を同時に埋め込むこともできる。 次に第2の工程である。ここでは第1の工程で得られた部材に、押し出し、ス
ェージング、線引き等の手法で減面加工を施し、所望の線径の線材を得る(第1
図(b))。なお超伝導線の形態としては断面円形に限らず、リボン状等種々の
形態が考えられる。 次に第3の工程である。この工程では第2の工程で所望の線径に減面加工がな
された部材に加熱処理を施し、シース材内部に充填された原料を連続した化合物
超伝導体とする(第1図(c))。この加熱処理温度は酸化物超伝導体が形成で
きるように適宜設定できるが、シース材の融点が実質的な上限温度となる。また
下限は特に設定しないが、酸化物超伝導体を形成するためには、実用上500℃
以上が必要である。 以上安定化材となるシース材内部に一つの超伝導体を含む単芯線に付いて説明
したが、シース材内部に複数の穴を設けて夫々に原料を埋め込んでも良いし、単
芯線を更に複数本束ねて再度安定化材に組み込んで多芯線を構成しても良い。 さて第3の工程の加熱処理による酸化物超伝導体の生成であるが、シース材と
原料との間に構成元素、例えばCu、O等の拡散が生じると所定の化学量論比か
らのズレが生じてしまい、超伝導特性を劣化させてしまう恐れがある。また、安
定化材としての役割を果たすシース材にしても原料側からの酸素等の拡散が顕著
となると、電気抵抗の上昇、熱伝導性の低下等の問題が生じる。従ってこの様な
問題が生じる恐れがある場合は、シース材と原料の間に拡散を防止するバリヤ材
を介在させることにより、この拡散による悪影響を防止することができる。 このバリヤ材としては例えばステンレス、銀、金、白、金等があげられる。特
にシース材として銅又は銅合金を用いた場合、La−Ba−Cu−O系等の銅含
有酸化物超伝導体の酸素、銅の拡散による超伝導体側の化学量論比からのズレ、
及びシース材中への酸素の拡散による熱伝導率の低下を防止する効果が顕著であ
る。 この様なバリヤ材を用いる場合は、第1の工程で原料をバリヤ材で囲む、又は
、 シース材の内面をバリヤ材で構成するなどの手法を取れば良い。この様子を第2
図に示す。 また原料の調合具合、加熱処理条件等によっては酸化物超伝導体が所定の超伝
導特性を発揮するのに必要な化学量論比から、酸素が不足した形となる場合があ
る。この様な場合は原料に十分な酸素を供給できるように、シース材の一部を線
材の長手方向に沿って削除し、原料が加熱処理時に外部の酸化性雰囲気と接触で
きるようにすることが好ましい(第3図(a))。また前述の如くバリヤ材を設
けた場合は、このバリヤ材の一部も除去して加熱処理を行なう。(第3図(b))。 なおシース材としてAg又はAg合金を用いた場合は、Agが酸素を拡散し易
く、かつAg自体は酸化しにくいため、加熱処理時に外部から原料に十分な酸素
を供給できるため上述のような問題が生じにくい。このようにAgシースを用い
た場合は、酸素雰囲気、大気中等の酸化性雰囲気中、500〜940℃程度で前
記加熱処理を行うことが好ましい。あまり加熱処理温度が低いと酸素の拡散が遅
く、あまり高温の加熱処理では素材が変形し易くなる。 (実施例) 以下に本発明の実施例を説明する。実施例−1 La2O3,SrO,CuOをCuO 1モルに対してLa2O3 0.9モル、
SrO 0.2モルの割合でボールミルを用いて混合した。この混合物を900
℃で仮焼した後、再度粉砕・混合を行ない、化合物超伝導体の原料としての粉末
を得た。この原料を銅製の管状のシース材内部に酸素ガス含有雰囲気中で詰め込
む。その後シース材の両端開口部を閉塞し、一体化する。この一体化された部材
を断面減少比が約100以上になるまで、押し出し,スェージング,線引き等の減
面加工を施して細線化した後、900℃,15Hの加熱処理を施す。 この加熱処理によりシース材内部の原料が反応して(La0.9Sr0.1)2Cu
O4の組成式で表される層状ペロブスカイト型の酸化物超伝導体の連続体が生成
し、化合物超伝導線を得ることができる。この化合物超伝導線を用いて超伝導特
性を調べたところ、臨界温度は35K、臨界電流は10Aと良好な特性を示した
。なお銅製シース材の代わりにCu−Ni合金製シース材を用いても同様の結 果を得た。実施例−2 La2O3,BaO,CuOを用い実施例−1と同様に(La0.925Ba0.075)
2CuO4の組成式で表される層状ペロブスカイト型の酸化物超伝導体の化合物超
伝導線を得た。 臨界温度は31K、臨界電流は8Aと良好な特性を示した。実施例−3 La2O3,BaO,CuOを用い実施例−1と同様に(La0.9Ca0.1)2C
uO4の組成式で表される層状ペロブスカイト型の酸化物超伝導体の化合物超伝
導線を得た。 臨界温度は29K、臨界電流は5Aと良好な特性を示した。実施例−4 Y2O3,BaO,CuOを用い実施例−1と同様に(Y0.7Ba0.3)2CuO4
の組成式で表される多相の酸化物超伝導体の化合物超伝導線を得た。 臨界温度は90K、臨界電流は10Aと良好な特性を示した。 なおYをScに代えてもほぼ同様の結果を得た。実施例−5 実施例−1〜4の加熱処理前の部材にシース材の一部を長手方向にHNO3で
除去した後(第3図)、各実施例と同様の加熱処理を施したところ、各実施例の
臨界温度は約5K上昇し、臨界電流は約倍増した。実施例−6 Ag製のシース材に、La,Sr,Cuを(La0.9Sr0.1)2CuO4の組成
式で表される層状ペロブスカイト型の酸化物超伝導体となるような比率で混合し
た原料を充填して、シース材の両端を閉塞した。その後、減面加工により細線化
した後、700℃大気中7日間の酸化熱処理を行った結果(La0.9Sr0.1)2
CuO4の組成式で表される層状のペロブスカイト型の酸化物伝導体の連続体が
シース材の内部に生成された。 臨界温度は35K、臨界電流は10Aと良好な特性を示した。実施例−7 実施例−6におけるSrの代わりにBaを用いて同様に超伝導線を製造した。 臨界温度は29K、臨界電流は5Aと良好な特性を示した。実施例−8 実施例−6におけるSrの代わりにCaを用いて同様に超伝導線を製造した。 臨界温度は29K、臨界電流は5Aと良好な特性を示した。実施例−9 実施例−6のLa,Sr,Cuの代わりにY,Ba,Cuを用い(Y0.4Ba0
.6)CuO3の比率となるように混合し、同様に超伝導線を製造した。 臨界温度は96K、臨界電流は10Aと良好な特性を示した。実施例−10 実施例−6のLa,Sr,Cuの代わりに(Y0.9Ba0.1)CuO3の比率と
なるようにY2O3,BaO,CuOを用い混合し、同様に超伝導線を製造した。 臨界温度は80K、臨界電流は12Aと良好な特性を示した。実施例−11 La2O3,SrO,CuO 1モルに対してLa2O3 0.92モル、SrO
0.2モルの割合でボールミルを用いて混合した。この化合物を900℃,2
Hの条件で仮焼した後、再度粉砕・混合を行ない、化合物超伝導体の原料として
の粉末を得た。この原料を銀製のシート(バリヤ材)で棒状に包み込んだ。この
バリヤ材で包まれた複合体を直径10mm,内径8mmの銅製の管状のシース材
の内部に挿入した。その後シース材の両端開口部を閉塞し、一体化した。次いで
この一体化された部材を断面減少比が約100以上になるまで、押し出し,スェ
ージング,線引き等の減面加工を施して直径1mmの線材を得た。この後、真空
中900℃,15Hの加熱処理を施す。この加熱処理によりシース材内部に(l
a0.9Sr0.1)2CuO4の組成式で表される層状ペロブスカイト型の酸化物超伝
導体の連続体が生成していることがX線解析で確認された。 このようにして製造された超伝導線を用いて実測した結果、臨界温度40K、
臨界電流10Aの良好な超伝導特性を示すことが確認された。また安定化材であ
るシース材の銅の熱伝導率をみるために、RRR(室温抵抗を臨界温度直上の抵
抗で割った値;RRRが大きいほど熱伝導率大)を測定したところ、約50であ った。この値は従来一般に使用されているNb3Sn超伝導線のRRRに比べて
も充分大きな値であり、本実施例の方法により安定化材としての銅が原料の酸素
により汚染されていないことが明らかとなった。 従ってこの様な方法によって得られた超伝導線は良好な超伝導特性を有し、か
つ、安定化材の熱伝導率も高いため、超電導マグネットへ応用した場合に有効で
ある。実施例−12 La2O3,BaO,CuOを用い実施例−10と同様に(La0.925Ba0.075
)2CuO4の組成式で表される層状ペロブスカイト型の酸化物超伝導体の化合物
超伝導線を得た。 臨界温度は35K、臨界電流は8Aと良好な特性を示した。実施例−13 La2O3,CaO,CuOを用い実施例−10と同様に(La0.9Ca0.1)2
CuO4の組成式で表される層状ペロブスカイト型の酸化物超伝導体の化合物超
伝導線を得た。 臨界温度は18K、臨界電流は3Aと良好な特性を示した。実施例−14 Y2O3,BaO,CuOを用い実施例−10と同様にY0.4Ba0.6CuO3の
組成比の酸化物超伝導体の化合物超伝導線を得た。 臨界温度は96K、臨界電流は10Aと良好な特性を示した。 [発明の効果] 以上説明したように本発明によれば、臨界温度が高い層状ペロブスカイト型等
の酸化物超伝導体を用いた化合物超電導線を得ることができ、超電導マグネット
等への応用に寄与するところ大である。
【図面の簡単な説明】
第1図、第2図及び第3図は本発明超伝導線の断面図。
1・・・・超伝導体、 2・・・・原料
3・・・・シース材、 4・・・・バリヤ材
Claims (1)
- 【特許請求の範囲】 (1)銀あるいは金、またはこれらの少なくともいずれか一種を主成分とする合
金から構成される金属シース材内部に酸化物超伝導体を形成するための原料を充
填した部材を作成する第1の工程と、 前記部材を減面加工する第2工程と、 前記減面加工された部材に酸化性雰囲気中で加熱処理を施し、前記金属シース
材内部に酸化物超伝導体を生成する第3の工程とを具備したことを特徴とする化
合物超伝導線の製造方法。 (2)前記酸化物超伝導体はLa,Y及びScの少なくとも一種と,Ba,Sr
及びCaの少なくとも一種と、Cu及びOとを構成元素とすることを特徴とする
特許請求の範囲第1項記載の化合物超伝導線の製造方法。 (3)前記酸化物超伝導体は、層状ペロブスカイト型の結晶構造を有することを
特徴とする特許請求の範囲第1項記載の化合物超伝導線の製造方法。 (4)前記第3の工程の加熱処理は、500℃以上でかつ前記シース材の融点未
満の温度で行うことを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の化合物超伝導線の
製造方法。 (5)前記第2の工程の減面加工は、断面減少比がほぼ100以上となるように
行うことを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の化合物超伝導線の製造方法。 (6)前記金属シース材として銀または銀を主成分とした合金を用い、前記第3
の工程の加熱処理は、500℃乃至940℃の温度範囲で行うことを特徴とする
特許請求の範囲第1項記載の化合物超伝導線の製造方法。 (7)前記第3の工程の加熱処理前に、前記金属シース材の一部を除去すること
を特徴とする特許請求の範囲第1項記載の化合物超伝導線の製造方法。 (8)銀あるいは金、またはこれらの少なくともいずれか一種を主成分とする合
金から構成される金属シース材内部に酸化物超伝導体を形成するための原料を充
填した部材を作成する第1工程と、前記部材を減面加工する第2の工程と、前記 減面加工された部材に酸化性雰囲気中で加熱処理を施し、前記金属シース材内部
に酸化物超伝導体を生成する第3の工程とにより製造されたことを特徴とする化
合物超伝導線。 (9)前記酸化物超伝導体はLa,Y及びScの少なくとも一種と、Ba,Sr
及びCaの少なくとも一種と、Cu及びOとを構成元素とすることを特徴とする
特許請求の範囲第8項記載の化合物超伝導線。 (10)前記酸化物超伝導体は、層状ペロブスカイト型の結晶構造を有すること
を特徴とする特許請求の範囲第8項記載の化合物超伝導線。
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