JP2680653B2 - 気相法ダイヤモンドコーティング方法 - Google Patents

気相法ダイヤモンドコーティング方法

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は耐摩耗性、耐蝕性、高熱伝導性、高比弾性等
の特性を有し、研摩材、研削材、光学材料、超硬工具
材、摺動材、耐蝕材、音響振動材、刃先材用部材等に有
用な大面積の気相法ダイヤモンドコーティング方法に関
する。
〔従来の技術〕
ダイヤモンドの合成法としては超高圧条件下での鉄、
ニッケル系等の触媒による合成法や爆薬法による黒鉛の
直接変換法が従来より実施されている。
近年低圧CVD法として、炭化水素又は窒素、酸素等を
含む有機化合物と水素との混合ガスを熱フィラメント、
マイクロ波プラズマ、高周波プラズマ、直流放電プラズ
マ、直流アーク放電等により励起状態としてダイヤモン
ドを合成する方法が開発されている。
〔発明が解決しようとする課題〕
従来の前記CVD法においては原料ガスをダイヤモンド
が合成可能に励起するために特殊な装置を必要とした。
しかもいずれの励起源を用いてもダイヤモンド析出面積
の増大は困難である。
又、本発明者らは特願昭63−71758号で燃焼炎法のダ
イヤモンド合成を出願しているが、大面積被覆技術は析
出速度が低かったり、面積、付着強度が十分でなかっ
た。
本発明の目的はダイヤモンドのコーティングを大面積
化し、付着強度が高く、高速度で実現することにあり、
あわせて本願の発明である移動により生ずるダイヤモン
ド析出膜の完全燃焼領域の通過による消耗の問題を解決
することにある。
〔課題を解決するための手段〕
本発明者らは従来法に比し、簡便な手段でしかも大面
積の膜状ダイヤモンドをも生成しうる気相合成方法を開
発する目的で鋭意研究した結果、燃焼炎に於いて基材と
燃焼炎装置のいずれか一方を移動させることによって大
面積のダイヤモンドコーティングが得られ、しかも付着
強度も高いことを見出し本件発明を完成するに至った。
すなわち本件発明の要旨はダイヤモンド析出用原料化
合物を不完全燃焼領域を有するように燃焼させ、該不完
全燃焼領域中、又は該領域の近傍の非酸化性雰囲気中
に、基材の部分を設置し、基材又は燃焼装置を連続又は
断続的に移動させながら、基材に大面積のダイヤモンド
を析出させることを特徴とする気相法ダイヤモンドコー
ティング方法にある。なお、本発明の方法により合成さ
れるダイヤモンドにはダイヤモンド様炭素を含む。
本発明においてはダイヤモンド合成用原料ガスを不完
全燃焼領域が存在するように燃焼させて燃焼炎を形成さ
せ、該不完全燃焼領域中又は該領域近傍の非酸化性雰囲
気であるダイヤモンド析出可能に励起された領域中にダ
イヤモンド析出用基材を移動させることが肝要である。
又、基材は板状、棒状等のみでなく、小面積を有する
基材が多数並べられるものでもよく、この場合端面の角
などに面状と均一にダイヤモンドがコーティングされ
る。
基材又は燃焼装置を移動させ、大面積のコーティング
膜を形成させる方法としては燃焼炎の酸化エッチングを
防ぐため完全燃焼領域又は酸素過剰領域が基材に接触す
る際、基材の温度は800℃以下が好ましく、より好まし
くは600〜700℃である。
このことは酸素雰囲気中における各種炭素の同素体の
温度と重量減少率の第1図のようなためである。この図
より600〜700℃ではダイヤモンドは殆んど酸化されず、
黒鉛、炭素等の非ダイヤモンド相が酸化されて除去され
る。
完全燃焼領域の基材に接する時の基材の温度を800℃
以下にするには炎の直接接触を妨げる方法をとるのが一
番簡単な方法である。例えば第2図に示すように支持及
び熱放散板7に設置した基材5を図の矢印の方向へ移動
させ、下からバーナー1より燃焼炎をおこさせる。燃焼
炎は例えばアセチレン−酸素炎の場合、白心2、内炎
3、外炎4からなる。この場合不完全燃焼領域は白心
2、内炎3である。完全燃焼領域である外炎の一部は未
だ高温のため直接基材に接することは好ましくない。こ
のため網状物質6を障害物として設けることが好まし
く、こうすることによって基材の酸化雰囲気中での温度
を低下させることができる。
又、第3図に示すようにすることもできる。図に示す
符号は第2図に示す符号と同じであるので省略するが、
第2図と異なり網状物質ではなく遮蔽板8を設けて、外
炎が直接基材に接するのを防いでいる。
発明者の試験によるとバーナーの火口と遮蔽板の距離
が10mm、遮蔽板と基材の距離が10mm、遮蔽板は水冷の銅
板で3mmの厚さで内径がバーナーの内炎と一致する8mmφ
の穴明板としたところ、基材の中心温度は1000℃であっ
たのに対し、中心より15mmのところは700℃であり良質
のダイヤモンド膜が得られた。
これに対し遮蔽板を除去すると基材の中心温度は1050
℃であり、中心より15mmのところは980℃であり、生成
ダイヤモンドのエッチングが見られた。
ダイヤモンドが主として生成する不完全燃焼領域では
還元又は非酸化性雰囲気であるため、ダイヤモンドの析
出に適した温度は600〜1200℃であり、基材の水冷等適
当な温度制御方法を用いることにより不完全燃焼領域通
過時と、完全燃焼領域通過時の基材の温度を制御するこ
とは可能である。
又、本発明の移動析出法を用いることによりダイヤモ
ンドコーティング膜の徐冷効果がおこり、ダイヤモンド
コーティング膜と基材の接着力が向上する。
次に実施例により本発明をさらに詳しく説明する。
〔実施例1〕 酸素−アセチレンバーナー(千代田製)にNo.6のノズ
ルを装着しアセチレンガス8.5/min、酸素7.2/min
(酸素/アセチレン比0.85)を導入し燃焼炎を形成し
た。その時の不完全燃焼部(アセチレンフェザー)の長
さは約50mmであった。
コーティング基材としてシャー切断用刃先(5mm×10m
m×50mmLWC−Co合金製)を銅製熱拡散板上に固定し、燃
焼炎フェザー内に入れた。(火口より刃先表面の距離を
20mmとした。)バーナーを基材の刃先表面に平行に端部
より20cm/hrの速度で15分間移動させダイヤモンドコー
ティングを行った。生成したダイヤモンド膜の厚さは約
5.3μmであった。
コーティング完了後目視及び実体顕微鏡による200倍
の観察により刃先上部3面が均一性の高いダイヤモンド
の自形をもった結晶の緻密な膜で被覆されている事を確
認した。さらにX線回折を測定したところダイヤモンド
ピークと下地WCのピークのみを認めた。それを第4図に
示す。図中○印はダイヤモンド結晶面(hkl)のピーク
でありその他はWCのピークである。
〔実施例2〕 基材を10mm×3mmのWC−Co板を使用して速度20cm/hr
で3分間燃焼炎を移動させた他は実施例1と同一条件で
ダイヤモンドコーティングを行った。得られたダイヤモ
ンド膜の厚さは4.4μmで付着力は5.75kgfmm/mm2であっ
た。
〔比較例〕
実施例2において燃焼炎を移動せずに静止状態3分間
とした以外は実施例2と同一条件でダイヤモンドコーテ
ィングを行った。得られたダイヤモンド膜の厚さは4.2
μmで付着力は4.78kgfmm/mm2であった。
〔発明の効果〕
本発明の方法により大面積のダイヤモンドコーティン
グが付着力の強い状態で得られるので、せん断機刃先、
紙せん断刃、セラミックグリーンシート、打抜刃、引抜
ダイス、切削工具、ドリル、カッター、メス、各種ドク
ターブレード、ベアリング、化学ポンプ用シール、ロー
ター、放熱用基板等に好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
第1図は炭素同素体の温度と重量減少率を示すグラフで
ある。第2図、第3図とも本発明の実施態様を示す正面
図である。第4図は実施例1のX線回折図である。 1……バーナー、2……白心、3……内炎、 4……外炎、5……基材、6……網状物質、 7……支持及び熱放射板、8……遮蔽板
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 広瀬 洋一 埼玉県北葛飾郡庄和町米島358―225 (72)発明者 加村 邦夫 東京都港区芝大門2―10―12 昭和電工 株式会社内 (72)発明者 小巻 邦雄 東京都大田区多摩川2―24―25 昭和電 工株式会社総合技術研究所内 (72)発明者 清 興至 埼玉県秩父市大字下影森1505 昭和電工 株式会社秩父工場内

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ダイヤモンド析出用原料化合物を不完全燃
    焼領域を有するように燃焼させ、該不完全燃焼領域中、
    又は該領域の近傍の非酸化性雰囲気中に、基材の部分を
    設置し、基材を連続又は断続的に移動させながら、基材
    に大面積のダイヤモンドを析出させることを特徴とする
    気相法ダイヤモンドコーティング方法。
  2. 【請求項2】ダイヤモンド析出用原料化合物を不完全燃
    焼領域を有するように燃焼させ、該不完全燃焼領域中、
    又は該領域近傍の非酸化性雰囲気中に、基材の部分を設
    置し、燃焼装置を連続又は断続的に移動させ基材に大面
    積のダイヤモンドを析出させることを特徴とする気相法
    ダイヤモンドコーティング方法。
  3. 【請求項3】気相が小面積を有するものを多数並べたも
    のである請求項1又は2記載の気相法ダイヤモンドコー
    ティング方法。
  4. 【請求項4】基材又は燃焼装置を移動させることにより
    析出したダイヤモンドが燃焼炎の完全燃焼領域、又は酸
    素過剰領域を通過する際に800℃以下の温度にし析出非
    ダイヤモンド相を除去することを特徴とする請求項1〜
    3項のいずれかに記載の気相法ダイヤモンドコーティン
    グ方法。
  5. 【請求項5】燃焼炎の完全燃焼領域又は酸素過剰領域を
    障害物により基材から隔てるか、又は到達する量を削減
    することを特徴とする請求項4記載の気相法ダイヤモン
    ドコーティング方法。
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