JP2673956B2 - Cu系合金製変速機用同期リング - Google Patents

Cu系合金製変速機用同期リング

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 この発明は、特に相手部材との当り面の初期なじみ性
にすぐれ、かつ耐摩耗性にもすぐれたCu系合金製変速機
用同期リングに関するものである。 〔従来の技術〕 従来、一般に、変速機用同期リングは、第1図に斜視
図で例示されるように、内面1が回転するテーパーコー
ンとの当り面となり、この当り面に相手部材たるテーパ
ーコーンが高面圧下で断続的に面接触し、一方外周面に
はキーが嵌合するキー溝3が形成され、さらにその外縁
にそって所定間隔おきに設けたチャンファ2が同じく相
手部材たるハブスリーブのチャンファとかみ合う機能も
もつことから、強度、耐摩耗性、および相手部材とのな
じみ性を具備することが要求され、したがってその製造
には、これらの特性をもった高力黄銅が多用されてい
る。なお、同期リングには、この他にネジが外周側につ
き、この外周側で相手部材であるテーパーコーンと摩擦
する、通称ピンタイプのものがある。 〔発明が解決しようとする問題点〕 しかし、近年の変速機の高出力化に伴い、上記の従来
高力黄銅製同期リングにおいては、特に上記のテーパー
コーンやキー、さらにハブスリーブのチャンファのうち
の少なくともいずれかの相手部材との当り面は高面圧を
受けるようになるため、初期なじみ性が低下し、これに
よって輝面摩耗や凝着摩耗などによる異常摩耗が多発す
るようになり、使用寿命短命化の原因となっている。 〔問題点を解決するための手段〕 そこで、本発明者等は、上記のような従来高力黄銅製
変速機用同期リングのもつ問題点を解決すべく研究を行
なった結果、重量%で(以下%、は重量%を示す)、 Zn:20〜40%、Al:2〜8%、 Si:0.2、Co:0.1〜6%、 を含有し、さらに必要に応じて、 (a) Mn:0.〜5%、 (b) Tiおよび/またはZr:0.8〜1.5%、 以上(a)および(b)のいずれか、または両方を含
有し、残りがCuと不可避不純物からなる組成を有するCu
系合金で構成し、かつ相手部材との当り面の所要個所、
すなわちテーパーコーンやキー、さらにハブスリーブの
チャンファのうちの少なくともいずれかの相手部材との
当り面に、ショットブラスト加工や冷間プレスを用いる
押付け加工などにより平均層厚で5〜300μmの加工硬
化層を形成したCu合金製変速機用同期リングにおいて
は、変速機の高出力化に伴う高面圧下での使用条件で
も、すぐれた初期なじみ性を示し、使用初期における異
常摩耗の発生が抑制されるようになるという知見を得た
のである。 この発明は、上記知見にもとづいてなされたものであ
って、成分組成および加工硬化層の平均層厚を上記の通
りに限定した理由を説明する。 (a) ZnおよびAl これらの成分は、合金の素地組織を決定する成分であ
って、素地の耐摩耗性を向上させると共に、同期リング
に必要な強度と靭性を付与し、さらに、疲労強度と耐力
にすぐれ、局部的高温加熱に伴う塑性流動による凝着
(焼付き)を防止し、もって初期異常摩耗を防止して、
初期なじみ性を向上させる加工硬化層をリング表面に形
成するのに不可欠な成分であるが、その含有量がZn:20
%未満およびAl:2%未満では、前記特性を確保すること
ができないばかりでなく、前記の特性を具備した加工硬
化層を形成するのが困難になり、一方その含有量がZn:4
0%およびAl:8%を越えると、靭性が低下ようになるこ
とから、その含有量をZn:20〜40%、Al:2〜8%と定め
た。 (b) SiおよびCo SiおよびCoは、素地に微細に分散する金属間化合物を
形成して、リングの強度と耐摩耗性を向上させ、かつこ
の金属間化合物は加工硬化層にあっては、これの耐焼付
け性を向上させる作用があるが、その含有量が、それぞ
れSi:0.2%未満、Co:0.1%未満では前記作用に所望の効
果が得られず、一方その含有量が、Siにあっては2%を
越えると溶解時にスラブの発生が多くなり、またCoにあ
っては6%を越えると靭性が低下するようになることか
ら、Siの含有量を0.2〜2%、Coの含有量を0.1〜6%と
定めた。 (c) Mn Mn成分には、素地に固溶して、強度を向上させると共
に、金属間化合物を微細化し、かつ自体もSiと結合して
金属間化合物を形成して、特に加工硬化層の耐摩耗性を
一段と向上させる作用があるので、必要に応じて含有さ
れるが、その含有量が0.1%未満では前記作用に所望の
効果が得られず、一方その含有量が5%越えると、溶解
時にスラグの発生が多くなることから、その含有量を0.
1〜5%と定めた。 (d) TiおよびZr これらの成分には、組織を微細化すると共に、粒界を
強化して耐摩耗性を向上させるほか、自らもCoと結合し
て微細な金属間化合物を形成し、特に加工硬化層の耐摩
耗性および耐焼付け性を一段と向上させる作用があるの
で、必要に応じて含有されるが、その含有量が0.8%未
満では前記作用に所望のすぐれた向上効果が得られず、
一方その含有量が1.5%を越えると、溶解鋳造時に湯流
れが悪くなることから、その含有量を0.8〜1.5%と定め
た。 (e) 加工硬化層 加工硬化層は、上記のようにショットブラストやサン
ドブラスト加工、さらに例えばリングのテーパーコーン
摩擦面だけに設ける場合には、鋼製ダイスを用いて、冷
間プレスにて押付け加工を行なうことなどにより形成で
き、このように形成した加工硬化層は、これのもつ成分
組成と合まって、すぐれた疲労強度と耐力をもつように
なることから、局部的高温加熱に対してすぐれた耐塑性
流動性を示し、この結果焼付けなどが抑制されることか
ら初期異常摩耗が防止され、すぐれた初期なじみ性を示
すようになるが、その平均層厚が5μm未満では所望の
効果が得られず、一方300μmを越えた平均層厚にして
もすぐれた効果を確保することができないことから、そ
の平均層厚を5〜300μmと定めた。 〔実施例〕 つぎに、この発明の同期リングを実施例により具体的
に説明する。 通常の高周波炉を用い、それぞれ第1,2表に示される
成分組成をもったCu系合金溶湯を調製し、金型鋳造に
て、直径:200mmφ×長さ:400mmのビレットを形成し、こ
のビレットを押出しプレスにて直径:60mmφの丸棒に押
出し、この丸棒を所定の長さに切断した後、切断片に60
0〜750℃の範囲内の温度にて熱間鍛造を施し、さらに切
削加工を施し、引続いて大気中で、直径:10〜300μmの
SiC製ビーズと鋼製ビーズの混合ビーズ(SiC:50容量
%)を用いて、ショットブラスト加工を施して、同じく
第1,2表に示される平均層厚の加工硬化層を表面全体に
形成することによって、内径:58mmφ×厚さ:4mmの寸法
をもち、かつチャンファ数:36個の本発明同期リング1
〜16および比較同期リング1〜7をそれぞれ製造した。 なお、比較同期リング1〜7は、成分組成および加工
硬化層の平均層厚のうちのいずれかの条件(第2表に※
印を付したもの)がこの発明の範囲から外れたものであ
る。 つぎに、この結果得られた各種の同期リングについ
て、 相手部材たるテーパーコーンの回転数:1200r.p.m.、 押付け荷重:57kg、 油:80番ミッションオイル、 油温:80℃、 テーパーコーンの作動:0.3〜0.35秒の同期時間で20000
回、 の条件でシンクロ耐久試験を行ない、リング内面におけ
る落ち込み量(摩耗量)、凝着摩耗の有無、初期(500
回まで)および後期(安定期)の摩擦係数をそれぞれ測
定および観察し、さらに、 相手部材たるテーパーコーンの回転数:2000r.p.m.、 押付け荷重:90kg、 油:80番ミッションオイル、 油温:70℃ テーパーコーンの作動:0.25〜0.3秒の同期時間で5000
回、 の条件でシンクロ耐久試験を行ない、リングにおけるワ
レおよび変形の有無を観察した。これらの効果を第3,4
表に示した。 〔発明の効果〕 第1〜4表に示される結果から、本発明同期リング1
〜16は、いずれも高強度および高靭性を有し、特に高面
圧条件にもかかわらず、実用初期におけるなじみ性にす
ぐれ、異常摩耗の発生もなく、すぐれた耐摩耗性を示す
のに対して、比較同期リング1〜7に見られるように、
構成要件のうちのいずれかの要件でもこの発明の範囲か
ら外れると、前記特性のうち少なくともいずれかの特性
が劣ったものになることが明らかである。なお、ピンタ
イプの同期リングでも同様な結果が得られることは勿論
である。 上述のように、この発明のCu系合金製変速機用同期リ
ングは、高強度と高靭性を有し、特に初期なじみ性にす
ぐれ、変速機の高出力化に伴う苛酷な条件下で実用に際
しても、輝面摩耗や凝着摩耗などの異常摩耗の発生がな
く、すぐれた耐摩耗性を著しく長期に亘って発揮するの
である。
【図面の簡単な説明】 第1図は変速機用同期リングを例示する斜視図である。 1……テーパーコーン摩擦面(内面)、 2……チャンファ、 3……キー溝。

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 1.Zn:20〜40%、Al:2〜8%、 Si:0.2〜2%、Co:0.1〜6%、 を含有し、残りがCuと不可避不純物からなる組成(以上
    重量%)を有するCu系合金で構成され、かつ相手部材と
    の当り面の所要個所に、加工硬化層を5〜300μmの平
    均層厚で形成してなるCu系合金製変速機用同期リング。 2.Zn:20〜40%、Al:2〜8%、 Si:0.2〜2%、Co:0.1〜6%、 を含有し、さらに、 Mn:0.1〜5%、 を含有し、残りがCuと不可避不純物からなる組成(以上
    重量%)を有するCu系合金で構成され、かつ相手部材と
    の当り面の所要個所に、加工硬化層を5〜300μmの平
    均層厚で形成してなるCu系合金製変速機用同期リング。 3.Zn:20〜40%、Al:2〜8%、 Si:0.2〜2%、Co:0.1〜6%、 を含有し、さらに、 Tiおよび/またはZr:0.8〜1.5%、 を含有し、残りがCuと不可避不純物からなる組成(以上
    重量%)を有するCu系合金で構成され、かつ相手部材と
    の当り面の所要個所に、加工硬化層を5〜300μmの平
    均層厚で形成してなるCu系合金製変速機用同期リング。 4.Zn:20〜40%、Al:2〜8%、 Si:0.2〜2%、Co:0.1〜6%、 を含有し、さらに、 Mn:0.1〜5%、Tiおよび/またはZr:0.8〜1.5%、 を含有し、残りがCuと不可避不純物からなる組成(以上
    重量%)を有するCu系合金で構成され、かつ相手部材と
    の当り面の所要個所に、加工硬化層を5〜300μmの平
    均層厚で形成してなるCu系合金製変速機用同期リング。
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