JP2507929B2 - Cu系合金製変速機用同期リング - Google Patents

Cu系合金製変速機用同期リング

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JP2507929B2 JP62069881A JP6988187A JP2507929B2 JP 2507929 B2 JP2507929 B2 JP 2507929B2 JP 62069881 A JP62069881 A JP 62069881A JP 6988187 A JP6988187 A JP 6988187A JP 2507929 B2 JP2507929 B2 JP 2507929B2
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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 この発明は、特に相手部材との当り面の初期なじみ性
にすぐれ、かつ耐摩耗性にもすぐれたCu系合金製変速機
用同期リングに関するものである。
〔従来の技術〕
従来、一般に、変速機用同期リングは、第1図に斜視
図で例示されるように、内面1が回転するテーパーコー
ンとの当り面となり、この当り面に相手部材たるテーパ
ーコーンが高面圧下で断続的に面接触し、一方外周面に
はキーが嵌合するキー溝3が形成され、さらに、その外
縁にそつて所定間隔おきに設けたチヤンフア2が同じく
相手部材たるハブスリーブのチヤンフアとかみ合う機能
をもつことから、強度、耐摩耗性、および相手部材との
なじみ性を具備することが要求され、したがつてその製
造には、これらの特性をもつた高力黄銅が多用されてい
る。なお、同期リングには、この他にネジが外周側につ
き、この外周側で相手部材であるテーパーコーンと摩擦
する、通常ピンタイプのものがある。
〔発明が解決しようとする問題点〕
しかし、近年の変速機の高出力化に伴い、上記の従来
高力黄銅製同期リングにおいては、特に上記のテーパー
コーンやキー、さらにハブスリーブのチヤンフアのうち
の少なくともいずれかの相手部材との当り面は高面圧を
受けるようになるため、初期なじみ性が低下し、これに
よつて輝面摩耗や凝着摩耗などによる異常摩耗が多発す
るようになり、使用寿命短命化の原因となつている。
〔問題点を解決するための手段〕
そこで、本発明者等は、上記のような従来高力黄銅製
変速機用同期リングのもつ問題点を解決すべく研究を行
なつた結果、重量%で(以下%は重量%を示す)、 Zn:20〜40%、Al:2〜8%、 TiおよびZrのうちの1種または2種:0.1〜3%、 Fe、Ni、およびCoのうちの1種または2種以上:0.1〜4
%、 を含有し、さらに必要に応じて Mn:0.1〜5%、およびSn:0.1〜3%、 のうちの1種または2種を含有し、残りがCuと不可避不
純物からなる組成を有するCu系合金で構成し、かつ相手
部材との当り面の所要個所、すなわちテーパーコーンや
キー、さらにハブスリーブのチヤンフアのうちの少なく
ともいずれかの相手部材との当り面に、酸化アルミニウ
ム(Al2O3)を主体とする加熱酸化膜層(以下、酸化膜
層という)を0.1〜10μmの平均層厚で形成したCu合金
製変速機用同期リングにおいては、変速機の高出力化に
伴う高圧面下での使用条件でも、すぐれた初期なじみ性
を示し、使用初期における異常摩耗の発生が抑制される
ようになるという知見を得たのである。
この発明は、上記知見にもとづいてなされたものであ
つて、成分組成および酸化膜層の平均層厚を上記の通り
に限定した理由を説明する。
(a) ZnおよびAl これらの成分は、合金の素地組織を決定する成分であ
つて、素地の耐摩耗性を向上させると共に、同期リング
に必要な強度と靭性を付与し、さらに初期なじみ性が良
好で、かつ金属同志の摩耗による輝面摩耗や凝着による
焼付き現象を防止する酸化膜層、すなわちAl2O3を主体
としたAl2O3−ZnO2系やAl2O3−ZnO2−CuO系の酸化膜層
をリング表面に形成するのに不可欠な成分であるが、そ
の含有量がZn:20%未満およびAl:2%未満では、所望の
特性および酸化膜層を確保することができず、一方その
含有量がZn:40%およびAl:8%を越えると、靭性が低下
するようになることから、その含有量を、それぞれZn:2
0〜40%、Al:2〜8%と定めた。
(b) TiおよびZrと、Fe、Ni、およびCo Tiおよび/またはZrとFe、Ni、およびCoのうちの1種
または2種以上とは、素地に微細に分散する金属間化合
物を形成して、強度および靭性を向上させ、さらに耐摩
耗性を向上させ、また酸化膜層中にも分散含有して、こ
れの耐摩耗性を向上させる作用があるが、その含有量
が、それぞれ0.1%未満では前記作用に所望の効果が得
られず、一方その含有量がそれぞれ3%および4を越え
ると、金属間化合物の量が多くなりすぎて、切削性が低
下するようになることから、その含有量を、Ti、ZZrに
ついては0.1〜3%、Fe、Ni、Coについては、0.1〜4%
と定めた。
(c) Mn Mn成分には、素地に固溶して、これを強化すると共
に、金属間化合物を微細球状化し、もつて耐摩耗性を向
上させる作用があるので、必要に応じて含有されるが、
その含有量が0.1%未満では前記作用に所望の向上効果
が得られず、一方その含有量が5%を越えてもより一層
の向上効果が現われず、むしろ溶解時にスラグの発生が
多くなることから、その含有量を0.1〜5%と定めた。
(d) Sn Sn成分には、特に凝着摩耗を防止し、もつてすぐれた
耐焼付け性を確保する作用があるので、必要に応じて含
有されるが、その含有量が0.1%未満では、前記作用に
所望の向上効果が得られず、一方その含有量が3%を越
えると、熱間加工性が低下するようになることから、そ
の含有量を0.1〜3%と定めた。
なお、不可避不純物として、PやPb、さらにMgなどを
含有する場合があるが、これらの不可避不純物では合量
で1%以下であれば、特性に何らの影響を及ぼすもので
はないので、合量で1%以下の範囲で含有が許容され
る。
(e) 酸化膜層 酸化膜層には、ミクロ的に小さなポアが多数存在し、
このポアが実用時に油溜りとなつて初期なじみ性を向上
させる作用があるほか、同期時にリングは摩擦接触する
ために高温となるが、この酸化膜層は熱伝導性の低いも
のであることから、リング本体内部まで温度が上昇する
のを抑制する作用があり、さらにこの酸化膜層には、輝
面摩耗や凝集摩耗などの異常摩耗が起らず、正常摩耗を
進行させる作用があるが、その平均層厚が0.1μm未満
では前記作用に所望の効果が得られず、一方その平均層
厚が10μmを越えると、欠けや剥離が発生し易くなるこ
とから、その平均層厚を0.1〜10μmと定めた。
〔実施例〕
つぎに、この発明の同期リングを実施例により具体的
に説明する。
通常の高周波炉を用い、それぞれ第1表に示される成
分組成をもつたCu系合金溶湯を調製し、金型鋳造にて、
直径:200mmφ×長さ:400mmのビレツトを形成し、このビ
レツトを押出しプレスにて直径:60mmφの丸棒に押出
し、この丸棒を所定の長さに切断した後、切断片に600
〜750℃の範囲内の温度にて熱間鍛造を施し、さらに切
削加工を施し、引続いて大気中、100〜350℃の範囲内の
所定温度に、15分〜6時間の範囲内の所定時間加熱し
て、同じく第1表に示される平均層厚の酸化膜層を表面
全体に形成することによつて、内径:58mmφ×厚さ:4mm
の寸法をもち、かつチヤンフア数:36個の本発明同期リ
ング1〜21および比較同期リング1〜8をそれぞれ製造
した。
なお、比較同期リング1〜8は、成分組成および酸化
膜層の平均層厚のうちのいずれかの条件(第1表に※印
を付したもの)がこの発明の範囲 から外れたものである。
つぎに、この結果得られた各種の同期リングについ
て、 相手部材たるテーパーコーンの回転数:1100r.p.m.、 押付け荷重:55kg、 油:80番ミツシヨンオイル、 油温:70℃、 テーパーコーンの作動:0.3〜0.35秒の同期時間で20000
回、 の条件でシンクロ耐久試験を行ない、リング内面におけ
る落ち込み量(摩耗量)、凝着摩耗の有無、初期(500
回まで)および後期(安定期)の摩擦係数をそれぞれ測
定および観察し、さらに、 相手部材たるテーパーコーンの回転数:2000r.p.m.、 押付け荷重:90kg、 油:80番ミツシヨンオイル、 油温:70℃、 テーパーコーンの作動:0.25〜0.3秒の同期時間で5000
回、 の条件でシンクロ耐久試験を行ない、リングにおけるワ
レおよび変形の有無を観察した。これらの結果を第1表
に示した。
〔発明の効果〕
第1表に示される結果から、本発明同期リング1〜21
は、いずれも高強度および高靭性を有し、特に高面圧条
件にもかかわらず、実用初期におけるなじみ性にすぐ
れ、異常摩耗の発生もなく、すぐれた耐摩耗性を示すの
に対して、比較同期リング1〜8に見られるように、構
成要素の条件のうちのいずれかの要件でもこの発明の範
囲から外れると、前記特性のうち少なくともいずれかの
特性が劣つたものになることが明らかである。なお、ピ
ンタイプの同期リングでも同様な結果が得られることは
勿論である。
上述のように、この発明のCu系合金製変速機用同期リ
ングは、高強度と高靭性を有し、特に初期なじみ性にす
ぐれ、変速機の高出力化に伴う苛酷な条件下での実用に
際しても、輝面摩耗や凝着摩耗などの異常摩耗の発生が
なく、すぐれた耐摩耗性を著しく長期に亘つて発揮する
のである。
【図面の簡単な説明】
第1図は変速機用同期リングを例示する斜視図である。 1……テーパーコーン摩擦面(内面)、 2……チヤンフア、 3……キー溝。

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】Zn:20〜40%、Al:2〜8%、 Tiおよび/またはZr:0.1〜3%、 Fe、Ni、およびCoのうちの1種または2種以上:0.1〜4
    %、 を含有し、残りがCuと不可避不純物からなる組成(以上
    重量%)を有するCu系合金で構成され、かつ相手部材と
    の当り面の所要箇所に、酸化アルミニウムを主体とした
    加熱酸化膜層を0.1〜10μmの平均層厚で形成してなるC
    u系合金製変速機用同期リング。
  2. 【請求項2】Zn:20〜40%、Al:2〜8%、 Tiおよび/またはZr:0.1〜3%、 Fe、Ni、およびCoのうちの1種または2種以上:0.1〜4
    %、 を含有し、さらに、 Mn:0.1〜5%、 を含有し、残りがCuと不可避不純物からなる組成(以上
    重量%)を有するCu系合金で構成され、かつ相手部材と
    の当り面の所要箇所に、酸化アルミニウムを主体とした
    加熱酸化膜層を0.1〜10μmの平均層厚で形成してなるC
    u系合金製変速機用同期リング。
  3. 【請求項3】Zn:20〜40%、Al:2〜8%、 Tiおよび/またはZr:0.1〜3%、 Fe、Ni、およびCoのうちの1種または2種以上:0.1〜4
    %、 を含有し、さらに、 Sn:0.1〜3%、 を含有し、残りがCuと不可避不純物からなる組成(以上
    重量%)を有するCu系合金で構成され、かつ相手部材と
    の当り面の所要箇所に、酸化アルミニウムを主体とした
    加熱酸化膜層を0.1〜10μmの平均層厚で形成してなるC
    u系合金製変速機用同期リング。
  4. 【請求項4】Zn:20〜40%、Al:2〜8%、 Tiおよび/またはZr:0.1〜3%、 Fe、Ni、およびCoのうちの1種または2種以上:0.1〜4
    %、 を含有し、さらに、 Mn:0.1〜5%、Sn:0.1〜3%、 を含有し、残りがCuと不可避不純物からなる組成(以上
    重量%)を有するCu系合金で構成され、かつ相手部材と
    の当り面の所要箇所に、酸化アルミニウムを主体とした
    加熱酸化膜層を0.1〜10μmの平均層厚で形成してなるC
    u系合金製変速機用同期リング。
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