JP2665786B2 - 保冷剤 - Google Patents

保冷剤

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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は魚介類、ハム、野菜等の生鮮食品及びジュー
ス、ワイン、血液等の流通時の鮮度保持及び保冷の目的
に供される保冷剤に関するものである。
(従来技術) 従来より魚介類は、氷と共に箱詰めされて流通されて
いた。しかし、氷は融けた水のため保冷時間が短かく、
融けた水が食品等に触れて汚損したり、外部へ漏れる等
の問題点があった。
これらの欠点を補なうため、近年ポリエチレン等の袋
又はプラスチック容器に液体又はゲル状物を充填し、こ
れを凍結させたものが保冷剤として多用されるようにな
った。
このうち液体を充填させたものは、破袋により内容物
が流出して食品等を汚損するおそれがあるため、ゲル状
物が主に使用されるようになっている。
保冷袋又はプラスチック容器に充填されるゲル状組成
物として、グアーガム、ポリビニルアルコール、ポリア
クリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミド、カルボキシ
メチルセルロースナトリウム、アルギン酸ナトリウム、
澱粉、澱粉にアクリル酸又はアクリルアミドをグラフト
重合させたもの等の水溶性高分子の高粘度水溶液、もし
くはそれらの水溶性高分子をホウ酸塩等の無機塩又は有
機系架橋剤で架橋した含水ゲル状物が使用されている。
しかし、水溶性高分子の高粘度水溶液は、保冷袋の破
袋又はプラスチック容器の破損時に徐々に流出し、しか
も粘着性を有するため、食品等に付着して汚損する欠点
があった。
一方、グアーガム、ポリビニルアルコールをホウ酸塩
で錯体を形成させてゲル化させたものは、粘着性を有し
ないが未だ流動性を有している。そのため破袋等により
内容物が流出したり、破袋等が起らなくても流動して形
状が変化するため、異形のまま凍結されることがあり、
断熱材中へ包装するとき梱包ができない等の欠点を有し
ていた。更にグアーガムは、その成分中に蛋白質、脂肪
等を含有しており、微生物の栄養源となるため、調製時
又は流通時に腐敗を生じ易い等の欠点も有している。
また、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリ
ウム、ポリアクリルアミドの架橋物及び澱粉にアクリロ
ニトリル又はアクリル酸をグラフト重合させて架橋物と
したものは、粘着性が無く、かつ流動性も少ないが、袋
等に充填したものを手で触れたり、輸送時の振動等によ
り壊れ易く、さらにゲル状物を袋に封入したものが太陽
光線にさらされると、架橋が外れて著しく低粘化した
り、ゲル状物から液体物質が離水する欠点がある。ま
た、破袋時に離水した液体が流出して食品等を汚損する
おそれもある。
これらの水溶性高分子や架橋高分子は通常水に対し4
〜15%濃度で使用されており、それらの多量の添加によ
り保冷剤とした場合融解潜熱が低下し、本来の機能であ
る保冷時間を短かくする欠点も有している。
(発明が解決しようとする課題) 本発明では、保冷剤が流通時に破袋等が生じてもゲル
状物が流出したり、食品等に接触しても付着しない、流
動性及び粘着性を有しないゲル状物であって、腐敗又は
光等により低粘化又は離水等を生じない安定なゲル状物
からなる保冷剤を提供するものである。さらに、本来の
保冷能力を高めるため、極力低濃度でゲル状物を形成す
る保冷剤を提供するものである。
(課題を解決するための手段) 本発明は、カルボキシメチルセルロース多価金属塩の
水性ゲルよりなる保冷剤である。すなわち、カルボキシ
メチルセルロースナトリウムを多価金属イオンでゲル化
させたカルボキシメチルセルロース多価金属塩の水性ゲ
ルよりなる保冷剤である。
本発明に使用するカルボキシメチルセルロースナトリ
ウム(以下CMCと略称する)には、市販のCMCが用いられ
る。そのカルボキシメチル基の平均置換度(以下DSと略
称する)は0.30〜2.50好ましくは0.50〜1.50のものであ
る。DSが0.30以下では水に溶解しにくく、DSが0.50以上
のCMCは水に完溶して、見掛上美しいゲル状物を形成す
る。一方、DSが2.50以上のCMCは多価金属イオンでゲル
化させた場合、分子内にカルボキシメチル基が多く存在
するため分子内架橋が優位に進行し、分子間の三次元架
橋によるゲル化が起りにくく、弱いゲル状となる。この
傾向はDSが2.50以下でも起こると考えられるが、2.50以
下であれば本発明の目的を達成し得る。しかしDS1.50以
下とした場合の方がより堅いゲルを得ることができるの
で更に望ましい。
また、CMCの1%水溶液の粘度(25℃、60rpm)は10〜
10,000cpsの範囲が好ましい。10cps以下では、分子鎖が
短いため三次元構造を生成しにくく、高濃度にしないと
所望の堅さの水性ゲルが得られないためである。10,000
cps以上のCMCでは、それ自体が高粘度を有しており、架
橋剤との均一混合が困難であり均一な水性ゲルを得るこ
とが難しく、架橋剤との混合を容易とするため、濃度を
低くして1.5%以下とすると、所望の堅さの水性ゲルを
得ることが困難となるためである。
CMCのゲル化剤として用いる金属塩は、アルミニウム
化合物、鉄化合物、クロム化合物等三次元の架橋構造を
形成する多価金属塩であれば使用可能であるが、金属塩
特有の着色が認められること及び経済性等から判断し
て、無色透明のゲルを形成し、経済的に入手し得るアル
ミニウム化合物の使用が好ましい。アルミニウム化合物
としては、カリミョウバン、酢酸アルミニウム、硫酸ア
ルミニウム、硝酸アルミニウム等が使用できる。
なお、本発明の保冷剤組成物の調製に際し、防腐剤、
着色剤及び凍結温度(保冷温度)の調節のためのエチレ
ングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ソ
ルビトール等の多価アルコール、塩化ナトリウム、塩化
カリウム、硝酸ナトリウム、硫酸ナトリウム等塩類を添
加することも本発明の範囲に含まれる。
また、他の水溶性高分子、例えばグアーガム、ポリビ
ニルアルコール、アクリル酸ナトリウム等をCMCと併用
することも可能である。
(発明の効果) これらのCMC多価金属塩の水性ゲルは、蛋白及び脂肪
等の腐敗の源となる物質を含んでいないため腐敗しにく
い。また、イオン反応による三次元の強固な構造を有し
ているため、流動性を殆ど有せず、光等により架橋が外
れることによる著しい低粘化または離水等を起こさない
安定な保冷剤を形成することができる。
また、CMC多価金属塩の水性ゲルは他の水溶性高分子
の場合の4〜15%より低濃度の1.5〜5%で調製可能で
あるため、水の大きな融解熱を最大限に活用できるの
で、保冷剤として最も重要な機能である保冷時間を長く
保持できる特長を有している。これはCMCが棒状の高分
子であるため、溶液中での分子の拡がりが大きく、大き
な三次元構造を形成し易いためと考えられる。
(実施例) 以下、実施例により本発明を説明する。ここで部は重
量部、%は重量%を示す。
実施例 1 DS0.65、1%水溶液粘度420cpsのCMCを3%水溶液と
して100部を300mlのビーカーに仕込む。この水溶液にカ
リミョウバンAlK(SO4・12H2Oの5%水溶液10.8部
を撹拌しながら少量づつ仕込み、引き続き1〜2分撹拌
を続ける。その後ただちにビニール袋に充填して3〜6
時間静置し保冷剤を調整した。調製した保冷剤の物性を
表に記載する。
比較例1〜3 CMCのDS及び粘度が異なるものを用いて実施例1と同
じ方法で保冷剤を調製した。調製した保冷剤の物性を表
に記載する。
実施例2〜6 CMCのDS、粘度及び使用量、さらにカリミョウバンの
添加量を変えて実施例1と同じ方法で保冷剤を調製し
た。得られた保冷剤の物性を表に記載する。
比較例5〜7 市販の保冷剤の物性を比較例として示した。
保冷剤の物性評価方法 (1)堅さ ゲル状物を2cm立方体に切断し、そのゲル状物に接触
面積が1cm2の円柱状の棒を中心部に立て、その棒の上に
所定重量の重さの分銅を乗せてゆき、ゲル状物にその円
筒が貫入又は破壊した時の円筒及び分銅の重量の合計重
量[g]で堅さを測定した。
保冷剤としてはこの重量が30g/cm2以上必要と思われ
る。
(2)流動性 ゲル状物100gを縦10cm、横9cm、厚さ0.07m/mのポリプ
ロピレン製の袋に充填してヒートシールを行ない、その
ビニール袋の一面をクリップで固定して4時間つるす。
この時の形状変化を下記の基準で評価した。
○:形状変化なし △:若干形状変化した ×:著しく形状変化した (3)付着性 2cm立方体のゲル状物を乾いたタオルでよく拭いた人
指し指で押さえた後、指にゲル状物の付着の程度を下記
の基準で評価した。
○:指に全く付着しない △:指に若干付着する ×:指に著しく付着する (4)保冷時間 ゲル状物20gをポリプロピレンに製の袋につめ、−20
℃の冷凍庫に20時間放置し完全凍結した後、温度25℃の
恒温器内に放置し、時々テフロン製丸棒(5mm直径)で
解凍の有無を判定し、保冷時間(分)を測定した。
(5)離水 ゲル状物20gをポリプロピレン製の袋につめ、−20℃
で20時間の凍結、25℃で4時間の解凍を5回繰り返えし
た後の離水状態を下記の基準で評価した。
○:全く離水なし △:僅かに離水 ×:著しく離水 (6)腐敗 ゲル状物20gをポリプロピレン製の袋に充填して、室
温下30日間放置して腐敗の有無を確認した。腐敗すると
カビの発生及び粘度低下離水が認められる。
○:腐敗しない ×:腐敗が認められる (7)光安定性 ゲル状物をポリプロピレン製の袋に充填し、太陽光線
下に8時間3回放置した。その後の状態変化を下記の基
準で評価した。
○:変化なし △:僅かに離し柔かくなった ×:著しく離水し粘度低下した

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】エーテル化度が0.5以上、1.5以下で且つそ
    の1%水溶液粘度が400〜10,000cpsであるカルボキシメ
    チルセルロース多価金属塩の水性ゲルよりなる保冷剤。
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