JP2662048B2 - Mg含有A▲l▼合金の気相ろう付法 - Google Patents

Mg含有A▲l▼合金の気相ろう付法

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【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明はMg含有Al合金の気相ろう付方法に関するもの
であり、例えば自動車の熱交換器の製造において、その
ろう付された部材の性能を向上させるとともに製造コス
トを安価にするものである。
〔従来の技術〕
通常Al又はAl合金のろう付は、接合しようとするAl又
はAl合金部材をこれらAl等よりも融点の低いろう材を介
して固定して組立物とし、このろう材の融点よりも高
く、接合しようとするAl又はAl合金部材の融点よりも低
い温度に加熱することにより行なっている。そしてろう
材としては一般にAl−Si系合金が使用され、その形状と
しては板状,線状,粉末状としたろう材、あるいはAl又
はAl合金からなる芯材に、このろう材を被覆した合わせ
材(以下ブレージングシートと記す)として用いられて
いる。
従来のろう付方法としては、ろう付をする部材表面の
酸化皮膜を除去するためのフラックスを用いるフラック
スろう付法と、これを用いない真空ろう付法が通常使用
されている。上記フラックスろう付法としては、溶融し
た塩化物系フラックス中に接合しようとする組立物を浸
漬してろう付加熱する炉中ろう付法等がある。ところが
この塩化物系フラックスは、Alに対しては腐食性である
のでろう付後洗浄して完全に除去しなければならず、製
造工程が非常に煩雑である。
これに対して真空中に接合しようとする組立物を置い
てろう付加熱する真空ろう付法によれば、後工程として
洗浄も不要であり、またろう付後の部材表面も良好であ
るが、高真空が必要であること、および材料的に制約が
ある等の問題がある。
更に最近上記不具合を解消するろう付法として、弗化
物系フラックスを用いて炉中でろう付する方法が広く用
いられるようになってきた。この方法は特公昭58−2703
7号公報に記載されているようにフラックスとして非吸
湿性でAlに対して非腐食性のKAlF4とK3AlF6の混合物を
用い、これを水に懸濁させ、接合しようとする組立物表
面に塗布してろう付するものであり、その特徴としては
非腐食性フラックスを用いるためにフラックス除去の後
処理が不要なことが上げられる。
〔発明が解決しようとする課題〕
しかしながら上記特公昭58−27037号公報に記載の方
法においては、必然的にフラックスを組立物表面に付着
させるための塗布,乾燥工程が必要であり、さらに塗布
されたフラックスはその組立物を次工程へ運ぶ途中で組
立物から脱落するものが多く、このため有効に使用され
るフラックスの歩留りは低くなる。またろう付後の接合
部材の表面には、不均一にフラックス残渣が残るので従
来の真空ろう付法に比較して表面が汚れ商品価値が劣る
と共に、耐食性を向上させるために次工程で行うクロメ
ート処理や黒色塗装処理等が不均一となってしまい、そ
の効果が十分に発揮されなくなる等の欠点があった。さ
らにはフラックス残渣は非導電性であるため、例えば熱
交換器において犠牲フィンにより管体を保護する防食法
を採用する場合には防食電流の流れが阻害されてしまい
防食効果が十分得られない場合がある。またMg含有Al合
金を弗化物系フラックスを用いて炉中ろう付する場合
は、従来に比べてろう付性が劣っているため、工業的に
安定したろう付性を得るためにはMgの含有量は0.3wt%
(以下wt%を単に%と略記する)未満でなければならな
い。
そしてこれ以上のMgを含有するAl合金では、フラック
ス塗布量を多くしてもろう付は難しくなってしまう。こ
の原因はAl合金中のMgとフラックスとがろう付加熱中に
反応するためであり、その結果フラックスの組成が変化
してフラックスとしての効果が失われること、Al合金中
のMgが表面層に拡散して表面層のMg濃度が高くなるこ
と、およびフラックスがAl合金の表面層に入り込む等の
現象が発生してろうの流れを阻害すること等が起こるか
らである。このようにMg含有量の多いAl合金が熱交換器
用材料として使用できないことは、熱交換器の耐久性や
軽量化の面で大きな障害となっていた。
〔課題を解決するための手段〕
本発明はこれに鑑み種々検討の結果、接合しようとす
る組立物に直接フラックスを塗布する工程を必要としな
いMg含有Al合金の気相ろう付法を開発したものである。
即ち本発明の一つは、重量%にて0.3%以上かつ1.2%
未満のMgを含有するAl合金をろう材を介してろう付する
方法において、ろう付をする部材を塩化物系あるいは弗
化物系フラックスの蒸気が分圧として0.005mmHg以上か
つ3.5mmHg未満存在する非酸化雰囲気中でろう付するこ
とを特徴とするものである。
また本発明の他の一つは重量%にて1.2%以上かつ2.3
%未満のMgを含有するAl合金をろう材を介してろう付す
る方法において、ろう付をする部材を塩化物系あるいは
弗化物系フラックスの蒸気が分圧として0.1mmHg以上か
つ250mmHg未満存在する非酸化雰囲気中でろう付するこ
とを特徴とするものである。
〔作 用〕
このように塩化物系あるいは弗化物系フラックスの上
記が存在する非酸化性雰囲気中に、接合しようとする部
材としての組立物をおくことにより、この上記は極微量
かつ均一に組立物に付着して、その表面のAlの酸化皮膜
を破壊するのでろうの濡れを促進し、ろうが一様に流
れ、組立物の接合箇所に均一なフィレットが形成される
特徴を有する。さらにこの上記は雰囲気中の水分および
酸素と結合して雰囲気をより非酸化性なものとし、材料
表面の酸化を防ぐ効果を持つ。ここで利用できるフラッ
クスはAlの酸化膜を破壊し得る塩化物系あるいは弗化物
系化合物さらに蒸発後上記化合物が形成され得る金属錯
体を含む化合物、あるいは単体である。具体的には塩化
亜鉛,塩化錫などや、フルオロアルミン酸金属錯体の蒸
気が含まれ、さらにKAlF4+K2AlF5・H2Oのような混合物
から発生の蒸気も含まれる。そしてこのような蒸気を発
生させるには蒸気混合物等をろう付を実施する炉中に予
め入れておき、炉を昇温したときにその熱で同時に蒸発
させても良いし、またこの蒸気を炉外で発生させて窒素
ガス等をキャリアーとして炉内に供給する等の方法も可
能である。さらに非酸化性雰囲気中にこのようなフラッ
クスの蒸気を存在させることにより、組立物は完全に蒸
気で覆うことができるので、蒸気密度は少なくてすみ、
フラックス消費量を低減することができる。
フラックス蒸気は材料中のMg元素と反応し、通常のフ
ラックスろう付ができない。そこで本発明ろう付方法に
おいて、フラックス蒸気とMgとの反応を鋭意検討した結
果、良好なるろう付を行うためには0.6%以上1.2%未満
のMg含有合金ではフラックス蒸気分圧は0.005mmHg以
上、また1.2%以上2.3%未満のMg含有合金では0.1mmHg
以上確保する必要があることを見いだした。本発明によ
ればMgを0.6%を超えて含有するAl−Mg系合金であって
もろう付が可能となる。これはフラックスの蒸気が極微
量でありしかも均一に組立物に付着するからである。そ
してこのためフラックスとしての作用を行う蒸気と材料
中のMgとの反応が非常に少なくなり、従って該蒸気のフ
ラックスとしての効果は阻害されず、またMg含有材料内
でMgが表面層に拡散して材料内でMgの濃度差が生ずるこ
ともなく、さらにフラックス成分が該材料の表面層へ侵
入する量も僅かであるためにろうの流れが阻害されるこ
とはないからである。
一方フラックス分圧が高濃度となると、成形品表面に
未反応で付着するフラックス量が多くなり、耐食性が劣
化するとともにろう付面外観が悪くなる。しかしMg含有
合金の場合はMg元素とフラックスとが反応するため3.5m
mHg未満まで耐食性や表面外観が良好に維持されること
が分かった。さらに反応可能なMg量が多い高Mg含有Al合
金の場合、フラックス分圧が250mmHg未満まで表面状態
は良好に維持される。本発明を実施するには密閉度の高
い炉の使用が好ましいが、密閉度の劣る炉であっても接
合しようとする組立物をステンレス等からなる容器内に
蒸気発生物と共に入れてろう付加熱すれば容易に所定濃
度のフラックス雰囲気を形成し、ろう付することができ
る。非酸化性雰囲気としては例えば窒素,アルゴン,一
酸化炭素などの雰囲気とともに真空状態においても利用
可能である。
〔実施例〕
次に本発明の実施例について説明する。
第1図に示すように、常法により管状に熱間押出し成
形したJISA1050(Al99.5%以上)製の管材(1)を蛇行
状に曲げ、この蛇行状管材(1)の間にAl−1%Mn−1
%Zn合金を基本組成としこれに各濃度のMgを添加した合
金試料を芯材とし、その両面にAl−10%Si−1%Zn合金
皮材をクラッドした厚さ0.16mmのブレージングシートか
らなるコルゲートフィン(2)を挟み、さらにAl−4%
Zn−1%Mg合金からなるコネクター(3)を取り付けて
この接合部にJISA4047(Al−11〜13%Si)からなる線径
1.6mmの線材を巻き、サーペンタインタイプをコンデン
サーを組立てた。
この組立物を有機溶剤で脱脂して内容積1立方メータ
ーのステンレス製の細い口を有する容器に所定量のKAlF
4とともに挿入した。その後容器内を窒素ガスにて置換
し、610℃に保持された電気炉内にこのトレーを挿入
し、上記組立物を610℃で5分間加熱してろう付を実施
した。このろう付処理中に容器から排出されるガス中の
フラックス濃度分析を行った。このときKAlF4は炉に挿
入されてからろう付温度まで昇温される間に溶融して蒸
発するとともにその濃度が上昇し、ろう付時には雰囲気
として組立物を覆うことになる。
上記ろう付後のコンデンサーを炉外へ取り出して表面
の外観観察を行い、またろう付状況を調べてこれらの結
果を第1表に示した。その後常法によりクロメート処
理,黒色塗装を行いこれらの付着性をクロメート性,塗
装性として第1表に併記した。またこの塗装後のコンデ
ンサーの耐食性を評価するためにJISH8681に基づくCASS
試験を500時間実施して貫通孔食の有無を調べその結果
を第1表に併記した。
比較のため上記第1図に示すコンデンサーの組立物を
従来法でろう付したものについて、その特性を調査し
た。即ち第1図に示す組立物を有機溶剤により脱脂した
のち10%濃度のKAlF4懸濁液を塗布し、200℃で10分間の
乾燥を行った。その後窒素ガス雰囲気で置換され、610
℃に保持された電気炉内にこの組立物を挿入して610℃
で5分間加熱してろう付を行った。その後の工程は上記
と同様に行い、かつこのろう付されたコンデンサーにつ
いて上記と同様な評価試験を行ってそれらの結果につい
て第1表に示した。
第1表より明らかなように本発明によるろう付後のコ
ンデンサーの表面はきれいであり、ろう付状況もフィン
と管材との接合部であるフィン部,コネクターと管材と
の接合部であるコネクター部共に優れていた。さらにク
ロメート性,塗装性も良好で、耐食性も良好であった。
これに対し従来法によるコンデンサーは、表面にフラ
ックス残渣が全面に濃く不均一に付着しており、外観上
好ましくない。またろう付状況はフィン部は良好であっ
たが、コネクター部はろう付できなかった。さらにろう
付後のクロメート処理および塗装は不均一であり、耐食
性については特に第1図の管材(1)の曲げ部(4)で
貫通孔食が発生した。
[発明の効果] このように本発明によれば、従来のろう付法に比べて
例えば自動車等の熱交換器の製造工程が短縮できるので
製造コストが安価になり、またろう付後の表面がきれい
であるためクロメート処理等の後処理での表面処理性が
良好で耐食性が優れる等の品質が向上し、さらにMgを多
く含有する合金のろう付も可でもある等工業上顕著な効
果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
第1図はエアコン用熱交換器であるサーペンタインタイ
プのコンデンサーの一例を示す斜視図,第2図は管材と
フィン部の接合部を拡大して示す側面図である。 1……管材 2……フィン 3……コネクター 4……曲げ部

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量%にて0.3%以上かつ1.2%未満のMgを
    含有するAl合金をろう材を介してろう付する方法におい
    て、ろう付をする部材を塩化物系あるいは弗化物系フラ
    ックスの蒸気が分圧として0.005mmHg以上かつ3.5mmHg未
    満存在する非酸化雰囲気中でろう付することを特徴とす
    るMg含有Al合金の気相ろう付方法。
  2. 【請求項2】重量%にて1.2%以上かつ2.3%未満のMgを
    含有するAl合金をろう材を介してろう付する方法におい
    て、ろう付をする部材を塩化物系あるいは弗化物系フラ
    ックスの蒸気が分圧として0.1mmHg以上かつ250mmHg未満
    存在する非酸化雰囲気中でろう付することを特徴とする
    Mg含有Al合金の気相ろう付方法。
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