JP2661704B2 - ブレーキ摩擦材 - Google Patents

ブレーキ摩擦材

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Description

【発明の詳細な説明】 「産業上の利用分野」 この発明は、自動車等に使用されるブレーキ摩擦材に
係り、特に、摩擦性能、耐摩耗性能に優れたブレーキパ
ッドに関するものである。
「従来の技術」 従来、自動車等のブレーキ摩擦材としては、アスベス
トを基材としたアスベスト系摩擦材と、スチール繊維を
基材とする非アスベスト系摩擦材とが知られている。
これらブレーキ摩擦材の内で、非アスベスト系摩擦材
は、基材としてのスチール繊維に、潤滑材としての黒
鉛、充填材としての硫酸バリウム等を添加、結合材とし
てのフェノール樹脂を添加して、各成分が均一となるよ
うに充分に混合撹拌した後、これを常温下で圧縮成形
し、更に焼成することにより作製されるようになってい
る。
なお、以下の説明において、上記工程によって得られ
たブレーキ摩擦材が、ブレーキに装填されたものを特に
パッドということにする。
「発明が解決しようとする課題」 ところで、上述したブレーキ摩擦材は、パッドの耐摩
耗性を向上させるために潤滑材としての黒鉛を多量に添
加するようにしているが、この黒鉛の多量添加はパッド
の断熱性を低下させるように作用し、これによってベー
パロック現象を発生させる原因となる。
このような問題を解決するために、前記潤滑材の一部
に黒鉛に比較して断熱性の優れた三硫化アンチモンを添
加すると良いが、この三硫化アンチモンは融点が550℃
と低いために、パッドが高温となったときに溶融してパ
ッドとディスクとの間に入り込む恐れがあり、これによ
って、摩擦係数μが低下するフェード現象を発生させる
原因となる。
そして、このような問題を解決するために、パッドの
気孔率を大きくして、この気孔内に前記溶融した三硫化
アンチモンを取り込むようにすれば良いが、一方で、パ
ッドの気孔率を大きくすると、該パッドの機械的強度が
弱まり、耐摩耗性の悪化を招くことになる。
また、前記結合材として用いられているフェノール樹
脂は、前記三硫化アンチモンと同様に耐熱性の低いもの
であるので、パッドが高温となったときには一部がガス
化する。そして、このようなガス化が起こった場合に
は、通常、前記気孔内にフェノール樹脂のガスが収蔵さ
れることから、結果として、このガスがパッドとディス
クとの間に入り込み、摩擦係数μの低下を招来するフェ
ード現象が回避されるのであるが、ここで、前記潤滑材
に三硫化アンチモンが使用されていた場合には、この気
孔内に同時に、溶融した三硫化アンチモンと、ガス化し
たフェノール樹脂との双方が入り込むことになり、回避
されるはずのフェード現象が発生してしまうという不具
合が生じることになる。
「課題を解決するための手段」 この発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであっ
て、(1)断熱性能向上(ベーパロック現象防止)のた
めに潤滑材の一部に三硫化アンチモンを用いる、(2)
耐摩耗性を維持するために特に気孔率を大きくしない、
(3)前記(1)・(2)を満足させ、かつフェード現
象防止のためにフェノール樹脂に代わる耐熱性の良い結
合材樹脂を選択する、以上の観点に立って、以下に示す
ような配合によってブレーキ摩擦材を作製した。
すなわち、基材に、、結合材、潤滑材、充填材等を配
合して得られるブレーキ摩擦材において、前記結合材と
して、縮合多環芳香族炭化水素(Condensed Polynuecle
ar Aromatic Hydrocarbon;COPNA樹脂と略記する)から
なる樹脂を用い、かつ潤滑材の一部に三硫化アンチモン
を5〜20wt%の割合で含有させるようにした。
なお、前記結合材にCOPNA樹脂を使用したのは、フェ
ノール樹脂と比較して耐熱性が良いからであり、車両制
動時の高温状態における分解ガスの発生が少ないことか
ら、パッド内に該分解ガスを収蔵するための気孔を特に
多く設けるといった必要がなく、これによって、余剰の
気孔に三硫化アンチモンの溶融物を多く取り込むことが
できるからである。また、パッドの気孔率を特に高めず
に済むことから、これに伴う機械的強度が劣化、つまり
耐摩耗性能の低下を防止することができるからである。
また、前記潤滑材としての三硫化アンチモンの添加量
を5〜20wt%としたのは、5wt%より少ないと、パッド
の耐摩耗性向上の効果がなく、また、20wt%より大きい
と、溶融した三硫化アンチモンが前述した気孔内に収蔵
できなくなり、フェード現象が発生してしまうからであ
る。
一方、前記結合材に使用されるCOPNA樹脂としては、
コールタールピッチを原料としたピッチ系COPNA樹脂、
ピレン/フェナントレンを原料としたCOPNA樹脂などが
使用される。また、前記三硫化アンチモンとともに含有
される潤滑材としては、黒鉛の他、銅、すず等の軟金属
を結合材とした固体潤滑材(WS2、MoS2)等を用いるこ
ともできる。
「実施例」 本発明に係るブレーキ摩擦材を作製してその効果を確
認した。
まず、その製造工程を以下に示す。
(1) 基材としてのスチール繊維、結合材としてのピ
レン/フェナントレン系COPNA樹脂、潤滑材としての黒
鉛及び三硫化アンチモン、充填材としての硫酸バリウ
ム、その他の添加材、例えばシリカアルミナ粉末などを
用意した。
(2) 前記材料を、第1図の「実施例」の欄に示す表
の通りに配合し、更に、これをヘンシェルミキサにより
混合撹拌した後、この混合物を常温下、約300〔kgf/c
m2〕で加圧して予備成形した。そして、この予備成形し
た試料を更に160〔℃〕、500〔kgf/cm2〕で加熱圧縮成
形した後、常圧下、約200〔℃〕で1時間加熱して硬化
させ、その結果、符号〜で示すブレーキ摩擦材を得
た。
そして、上記のように作製したブレーキ摩擦材〜
の摩擦性及び耐摩耗性を、「乗用車ブレーキ装置ダイナ
モメータ試験(社団法人、自動車技術会規格JASO.C−40
6)」に従って試験し、その試験結果を、第2図の表に
下段にまとめた。なお、表2に記載した摩擦係数μは数
回の試験を行った中で最小のものを採用し、また、摩耗
量及びブレーキ液温は、試験を行った中で最大のものを
採用した。一方、第1図に示す表の右の欄に記載した気
孔率は、「JASO.C−444」に従って試験した。
また、前記ブレーキ摩擦材〜と比較するために、
これらブレーキ摩擦材〜と同様の条件でそれぞれブ
レーキ摩擦材〜(「比較例」として示す)を作製す
るとともに、ブレーキ摩擦材〜と同様の試験を行い
その性能を比較した。
ここでブレーキ摩擦材〜の分類について説明する
と、ブレーキ摩擦材〜はブレーキ摩擦材〜にお
いて使用されたCOPNA樹脂に替えて、フェノール樹脂が
使用されたものであり、ブレーキ摩擦材〜はブレー
キ摩擦材〜において使用されたCOPNA樹脂に替え
て、フェノール樹脂が使用され、かつ気孔率を5%アッ
プさせたものである。
また、ブレーキ摩擦材〜はCOPNA樹脂を使用し、
かつ潤滑材である黒鉛と三硫化アンチモンの重量%を種
々設定したものである。つまり、ブレーキ摩擦材は三
硫化アンチモンを全く含有させないものであり、ブレー
キ摩擦材は黒鉛の重量%を多くしたものであり、ブレ
ーキ摩擦材は三硫化アンチモンの重量%が請求項に示
す5〜20wt%の範囲から外れたものである。
第2図を参照してその試験結果を説明する。
結合材にフェノール樹脂が使用されたブレーキ摩擦材
〜は、摩擦係数μが低く、その摩擦性能に問題があ
り、また、フェノール樹脂を用い、かつ気孔率を高くし
たブレーキ摩擦材〜は、摩擦性能の改善は思うほど
図られない割りに、その一方で摩耗量が大きくなって、
その耐摩耗性能が悪くなり、また、三硫化アンチモンを
添加しないブレーキ摩擦材は、摩擦性能は良いが、耐
摩耗性能が悪くなり、また、黒鉛を多量に添加したブレ
ーキ摩擦材は、摩擦性能、耐摩耗性能共に問題はない
が、ブレーキ液温が高くなってベーパロック現象が発生
する危険性がある。
また、三硫化アンチモンを少量添加したブレーキ摩擦
材は、ブレーキ摩擦材と同様に耐摩耗性能に問題が
あり、最後に三硫化アンチモンを多量添加したブレーキ
摩擦材は、耐摩耗性能には問題はないが、ブレーキ摩
擦材〜と同様に摩擦性能に問題のあることが明らか
となった。
これとは反対に、「実施例」の〜に示すブレーキ
摩擦材は、摩擦性能、耐摩耗性能、ブレーキ液温の一定
温度維持(断熱性能)といった全てが良く、かつこれら
性能が安定したものとなった。
つまり、結合材としてCOPNA樹脂を用い、かつ潤滑材
の一部に三硫化アンチモンを5〜20wt%の割合で含有さ
せることによって、摩擦性能、耐摩耗性能、断熱性能の
全てが良好なブレーキ摩擦材の得られることが明らかと
なった。
「発明の効果」 以上詳細に説明したように、この発明によれば、基材
に、結合材、潤滑材、充填材等を配合して得られるブレ
ーキ摩擦材において、前記結合材として、縮合多環芳香
族炭化水素からなる樹脂を用い、かつ潤滑材の一部に三
硫化アンチモンを5〜20wt%の割合で含有させることに
よって、摩擦性能、耐摩耗性能、断熱性能の全てを向上
させてなるブレーキ摩擦材を得ることができ、そのブレ
ーキ性能の向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
第1図及び第2図は本発明の一実施例を示す図であっ
て、第1図は本発明に係るブレーキ摩擦材の成分と本発
明のブレーキ摩擦材と比較する比較例としてのブレーキ
摩擦材の成分とをそれぞれ示す表、第2図は第1図に示
すブレーキ摩擦材の摩擦性能、耐摩耗性能、断熱性能を
試験した結果を示す表である。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】基材に、結合材、潤滑材、充填材等を配合
    して得られるブレーキ摩擦材において、 前記結合材として、縮合多環芳香族炭化水素からなる樹
    脂を用い、かつ潤滑材の一部に三硫化アンチモンを5〜
    20wt%の割合で含有させたことを特徴とするブレーキ摩
    擦材。
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