JP2659560B2 - 同位体濃縮方法,同位体濃縮装置,同位体分離方法及び同位体分離装置 - Google Patents

同位体濃縮方法,同位体濃縮装置,同位体分離方法及び同位体分離装置

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JP2659560B2 JP63195578A JP19557888A JP2659560B2 JP 2659560 B2 JP2659560 B2 JP 2659560B2 JP 63195578 A JP63195578 A JP 63195578A JP 19557888 A JP19557888 A JP 19557888A JP 2659560 B2 JP2659560 B2 JP 2659560B2
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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は、同位体濃縮方法と、当該同位体濃縮方法を
用いた同位体濃縮装置と、前記同位体濃縮方法を用いた
同位体分離方法及び該同位体分離装置とに関し、特にレ
ーザを用いて極めて簡単に同位体分離ターゲット物質か
ら当該ターゲット中での同位体存在比とは異なる存在比
を有した、すなわち質量数あるいは原子量の異なる同位
体イオンあるいは同位体中性原子の濃縮された状態を発
生させる同位体濃縮方法及び装置と、さらには質量分離
手段又は速度分離手段を用いて、前記濃縮された同位体
イオンまたは同位体中性原子のうち所望の同位体を分離
し、あるいはこれを回収する同位体分離方法及び装置と
に関するものである。
[従来の技術] ターゲット物質から質量数の異なる同位体イオンある
いは同位体中性原子を分離させ、天然に存在するこれら
の同位体比率と異なる人工的な存在比率を得ることは各
種の質量分析、濃縮その他において有用である。
これらの同位体の濃縮や分離に対し従来よりレーザを
利用する手法が知られており、実用性を有する。
通常、このような同位体の濃縮又は分離はターゲット
物質の原子状態に外部からエネルギを与えてターゲット
物質から原子蒸気を発生させ、次にこの原子蒸気中の所
望の同位体を励起させ、更にこのようにして得られた同
位体イオンあるいは同位体中性原子を電離させる工程に
よって行われる。
従来において、前記各工程に対してはそれぞれ別個の
エネルギ源が用いられている。すなわち、前記ターゲッ
ト物質から原子蒸気を発生するためには、ターゲット物
質に対して電子ビームあるいはイオンビーム等の比較的
高エネルギのビーム照射が行われ、あるいはターゲット
物質を高温度に加熱することによって行われる。
そして、このようにして得られた原子蒸気に対して
は、特定の同位体原子に対する選択的な励起作用を行う
ために、所望の光吸収帯(同位体シフト)の波長を有す
るレーザ照射が行われる。
そして、次にこの励起された同位体イオンあるいは同
位体中性原子を電離させるためには更に紫外線あるいは
X線などの照射が行われ、これによって、質量数の異な
る同位体の濃縮又は分離回収を行うことが可能となる。
[発明が解決しようとする課題] しかしながら、前述したごとく、従来の手法によれ
ば、ターゲット物質に対して複数の分離工程を必要と
し、またレーザは特定の選択された同位体原子のみに固
有の光吸収帯波長で発振するレーザ源から得られなけれ
ばならず、必要な同位体ごとにこのような固有波長のレ
ーザ源を別個に用意しなければならないという問題があ
った。
特に、それぞれの同位体に定まる光吸収帯(同位体シ
フト)は比較的その周波数領域が狭いので、前記レーザ
の発振波長は精密に調整されなければならないという問
題があった。
さらに、従来のレーザを用いた発生方法及び装置とし
ては、ターゲットでのレーザ強度が1014W/cm2以上と遥
かに高く高レーザパワー密度で生成する不加熱冷プラズ
マを利用するものがある(特公昭58−46340号公報)。
しかし、これは加熱プラズマを利用していなく、冷プラ
ズマ中の非線形電磁力を利用した同位体分離手法であ
り、レーザ照射により生ずるプラズマを直接、濃縮状態
にすることができないといった実用上解決すべき問題を
有する。
本発明は上記従来の課題に鑑み為されたものであり、
その目的は、ターゲットにレーザを照射し高密度加熱プ
ラズマを形成させることで極めて簡単にターゲット物質
から該ターゲット物質の同位体存在比と異なる比率を有
する同位体濃縮されたイオンまたは中性原子を発生させ
ることを特徴とする同位体濃縮方法とその装置、さらに
は従来よりの質量分離手段または速度分離手段を用いな
がらも、上述したようにイオンまたは中性原子が既に同
位体濃縮されていることによって、より効率良く分離回
収することができる改良された同位体分離方法及び装置
を提供することにある。
[課題を解決するための手段] 上記目的を達成するために、本発明に係る方法は真空
排気された減圧状態にターゲット物質をおき、このター
ゲット物質に高出力レーザを照射して前記ターゲット物
質から高密度加熱プラズマを発生させることを特徴とす
る。
すなわち、本発明は、ターゲット物質にレーザを照射
し、ターゲット物質の少なくとも一部をプラズマ化させ
る。本発明で発生されるプラズマは高密度加熱プラズマ
であり、当該プラズマ中に生成される電子、イオン及び
中性原子は加熱されかつその粒子密度が極めて高いの
で、これら電子、イオン、中性原子同士は互いに多数回
衝突する。このときイオン化率が同位体種別間で異なる
ため、多数回衝突した後の同位体イオンの各同位体種別
間での比率またはイオンが電子と再結合したプラズマ中
の同位体中性原子の各同位体種別間での比率は、ターゲ
ット中の同位体存在比率とは異なるものとなる。つま
り、ターゲット中に含まれる同位体間のイオン化率の差
異が微小であったとしても、それはプラズマ中の多数回
衝突によって、顕著な差として現れてくる。
したがって、本発明では、加熱プラズマ中で電子、イ
オン、中性原子同士の相互の多数回衝突により、ターゲ
ット中での同位体存在比率より大きな同位体イオン比を
既に有している同位体イオンが生じる、つまり同位体イ
オン濃縮状態が実現され、また、同位体イオンがプラズ
マ中で電子と再結合した中性原子についてもターゲット
中での同位体存在比率より大きな中性同位体存在比を既
に有している同位体中性原子が生じる、つまり同位体中
性原子濃縮状態が実現される。
さらに、上記の方法で発生させた濃縮同位体イオンま
たは濃縮同位体中性原子を公知の質量分析手段(後述の
実施例1〜4)あるいは速度分離手段(後述の実施例
5)で回収しさえすればターゲット中の同位体存在比と
は異なった比率でターゲット物質中の同位体を回収でき
(同位体濃縮)、さらには質量数あるいは原子量の異な
る同位体のうち所望の同位体のみを回収する同位体分離
が可能となる。ここで、既に上述のように同位体イオン
または同位体中性原子の濃縮状態が実現されているの
で、極めて効率よく分離回収を行うことができる。
本発明に係る同位体濃縮装置は、ターゲット物質を内
部に収納し、低圧保持手段によって真空排気される気密
容器と、この気密容器内に前記ターゲット物質を所定位
置で載置固定するホルダと、所定圧力に減圧された気密
容器内のターゲット物質に高出力のレーザビームを照射
するレーザ源と、この時のレーザビームをターゲット物
質に導く光学手段とを含み、前記ホルダによってターゲ
ット物質は高出力レーザの照射によって発生した加熱プ
ラズマの内部で電子、同位体イオン及び同位体中性原子
が互いに衝突できる位置に保持される。
従って、本発明装置によれば、前記発生した高密度プ
ラズマ中で気密容器内での電子、イオン及び中性原子間
の相互衝突が複数回繰り返されることで濃縮同位体イオ
ンまたは濃縮同位体中性原子の状態が実現できる。そし
て、これによって、質量数あるいは原子量の異なる同位
体を容易に濃縮することができる。
更に、本発明の他の装置によれば、前記減圧された気
密容器内には前述のごとく同位体濃縮されたイオンまた
は中性原子から同位体を分離回収するための質量分離手
段あるいは速度分離手段を用いた分離回収部が設けら
れ、質量数あるいは原子量の異なる同位体の分離回収を
容易に行うことが可能となる。
第1図には本発明に係る同位体分離が行われる分離装
置が示され、以下に第1図に基づいて本発明の方法及び
装置を詳細に説明する。
本発明において、気密容器10は耐圧密閉容器から成
り、低圧保持手段を備えている。図において、この低圧
保持手段は真空ポンプ12と圧力調整器14とから成る。
従って、本発明における気密容器10はその内部を所望
圧力に真空排気しこの減圧状態を維持することができ
る。
前記気密容器10内には回転テーブル16が設けられてお
り、更にこの回転テーブル16には二次モータ18が固定さ
れており、このモータ18の主軸にはターゲットホルダ20
が固定されている。従って、前記回転テーブル16及び二
次モータ18のそれぞれ方向の異なる回転作用によって、
前記ターゲットホルダ20は気密容器10内において任意に
その位置及び方向を調整することが可能となる。
前記ターゲットホルダ20の前面には本発明におけるタ
ーゲット物質100が載置固定される。
本発明において、前記ターゲット物質100からは後述
するごとく高密度加熱プラズマが発生し、この高密度加
熱プラズマ中における電子、イオン及び中性原子の相互
の衝突の繰り返しによって本発明において所望の質量数
あるいは原子量の異なる同位体が濃縮されるので、前記
ターゲットホルダ20は気密容器10内の一方側に偏った位
置に設けられ、高密度加熱プラズマが十分に気密容器10
内において展開できるスペースを確保している。
前記気密容器10にはレーザ入射窓22が形成されてお
り、このレーザ入射窓22に向かってレーザ源24が設けら
れている。
そして、前記レーザ源24から生じたレーザビームLBは
光学系手段26を通ってビームが集束され、前記ターゲッ
ト物質100に向かって高出力のレーザを照射する。この
ようにしてターゲット物質100に照射されるレーザの密
度は前記光学系手段26の光軸位置調整により任意に制御
することができる。
本発明において、前記気密容器10内には、更に、前記
高出力レーザの照射によってターゲット物質100から生
じた高密度加熱プラズマ200の領域に伸張した質量分離
手段あるいは速度分離手段を用いた分離回収部28を設け
ることが可能であり、この分離回収部28によって高密度
加熱プラズマ200内における電子、イオン及び中性原子
の相互間の複数回の繰り返し衝突によって生じたターゲ
ット中の同位体存在比と異なる比率を有する濃縮同位体
イオンあるいは前記イオンがプラズマ中で電子と再結合
して生じたターゲット中の同位体存在比と異なる比率を
有する濃縮同位体中性原子から所望の原子量を有する同
位体を分離回収できる。
[作用] 従って、本発明によれば、ターゲット物質100に対し
て高出力レーザが照射される。この結果、ターゲット物
質100からは高密度加熱プラズマ200が発生し、この高密
度加熱プラズマ200内において、電子、イオン及び中性
原子が複数回相互間の衝突を繰り返す。この結果、高密
度加熱プラズマ200内では同位体濃縮されたイオン及び
前記イオンが電子と再結合した中性原子が発生する。こ
のようにして、本発明は、単にターゲット物質100への
高出力レーザの照射とそれに伴う高密度加熱プラズマの
形成のみでターゲット中での同位体比率と異なる人工的
な比率を有するイオンまたは中性原子を形成させること
ができ、同位体イオンまたは同位体中性原子の濃縮状態
が極めて簡単に表現できる。また、前記同位体濃縮され
たイオンまたは中性原子から質量分離手段または速度分
離手段を用い、簡単に質量数あるいは原子量の異なる同
位体を分離することが可能となる。
[発明の効果] 以上のようにして、本発明によれば、同位体の分離に
対して、高出力レーザの照射のみで、気密容器内にて同
位体分離に必要な同位体濃縮されたイオンまたは中性原
子を発生させることが可能となり、装置及び手順を極め
て簡略化することが可能となる。
また、本発明におけるレーザ照射は、従来のような分
離が必要な同位体の光吸収帯領域に拘わらずレーザビー
ムの波長を定めることができるので、従来のような精密
な波長調整を必要としないという利点がある。
また、本発明の装置は、気密容器とレーザ源及び光学
系手段そしてターゲット物質を気密容器内に固定保持す
るためのホルダを設ければよく、従来のような原子蒸気
の発生、選択励起及び電離の各工程に対して必要な装置
を除去することができるという利点を有し、更にターゲ
ット物質に制約がない。
更に、本発明において、前記気密容器内に濃縮された
同位体の分離回収部を設けることによって、極めて簡単
に濃縮された同位体の回収ができると共に必要な同位体
比率その他を測定することも可能となる。
[実施例] 以下、本発明の好適な実施例を説明する。
実施例1 第1図において、レーザ24としてNd:YAG Qスイッチ
レーザを用い、波長として第2高周波532nm(パルス幅1
0ナノ秒)を用い、照射レーザパワー密度を109〜1011W/
cm2とし、容器10の内圧を10-6〜10-7Torrと真空排気し
ながら、ターゲット物質100としてNiを用いた実施例を
表1に示した(Ni+で測定)。
なお、第1図に示す分離回収部28は、本発明の濃縮方
法のみの効果を示すため、公知の四重極質量分析器を用
い、そのイオン化装置を動作させない状態で、プラズマ
から放出される1価のイオンのみを測定した。
表1から、本発明の濃縮方法の効果が理解される。す
なわち、ターゲットへのレーザ照射により、高密度加熱
プラズマが発生し、その中で電子、イオン、中性原子同
士が互いに多数回衝突することによって、イオン化率の
異なる同位体間での存在比率が、ターゲット中での天然
存在比と異なる値となる。例えば、本実施例では、四重
極質量分析器の信号強度の比から測定した質量数58のNi
イオンに対する質量数60のNiイオンの存在比は、表1に
示すように、天然存在比の1.6倍となった。また、同様
に質量数58のNiイオンに対する質量数62のNiイオンの存
在比は、天然存在比の1.8倍となった。つまり本実施例
により60N,62Niの濃縮が起こっていることが理解され
る。
この結果は、本発明の原理である“多数回衝突した後
の各同位体イオンの存在比率は、ターゲット中での天然
の存在比率と異なること”、さらに“それら同位体間の
イオン化率の差が微小であったとしても、プラズマ中で
の多数回の衝突によって、その差が増幅され存在比の顕
著な差として現れてくること”を示すものである。
この同位体濃縮を起こす新現象は同位体分離に応用で
きる。つまり、本発明の条件により発生させられたプラ
ズマ中では、イオン、中性原子はそれぞれ既に、天然存
在比と異なる存在比を有しており、あとはこの濃縮同位
体イオン、または濃縮同位体中性原子を何らかの方法で
回収しさえすれば、ターゲット中の同位体存在比とは異
なった比率で同位体を回収できるのである。そのような
同位体分離装置の回収手段としては、従来の手段を用い
ることができるが、そのことは、本発明の同位体濃縮の
効果を応用し極めて効率的に分離回収を行うことができ
る同位体分離装置の価値を何ら低めるものではない。
実施例2 第1図において、レーザ24としてKr Fエキシマレーザ
を用い、波長として248nm(パルス幅15ナノ秒)を用
い、照射レーザパワー密度を109〜1010W/cm2とし、容器
10の内圧を10-5〜10-7Torrと真空排気しながら、ターゲ
ット物質100としてNiを用いた実施例を表2に示した(N
i+で測定)。すなわち、本実施例は、実施例1とレーザ
の波長を異ならせた例である。
なお、この実施例においても第1図に示す分離回収部
28は、本発明の濃縮方法のみの効果を示すため、公知の
四重極質量分析器を用い、そのイオン化装置を動作させ
ない状態で、プラズマから放出される1価のイオンのみ
を測定した。
表2から、本発明の濃縮方法の効果が理解される。す
なわち、ターゲットへのレーザ照射により、高密度加熱
プラズマが発生し、その中で電子、イオン、中性原子同
士が互いに多数回衝突することによって、イオン化率の
異なる同位体間での存在比率が、ターゲット中での天然
存在比と異なる値となる。本実施例では、四重極質量分
析器の信号強度の比から測定した質量数58のNiイオンに
対する質量数60のNiイオンの存在比は、表2に示すよう
に、天然存在比の1.6倍となった。また、同様に質量数5
8のNiイオンに対する質量数62のNiイオンの存在比は、
天然存在比の2.2倍となった。つまり本実施例により
60N,62Niの濃縮が起こっていることが理解される。
この結果は、本発明の原理である“多数回衝突した後
の各同位体イオンの存在比率は、ターゲット中での天然
の存在比率と異なること”、さらに“それら同位体間の
イオン化率の差が微小であったとしても、プラズマ中で
の多数回の衝突によって、その差が増幅され存在比の顕
著な差として現れてくること”という実施例1同様の事
実を示すものである。
同時にこの結果は、レーザの波長を変化させても本発
明の効果には影響がないことをも示すものである。
実施例3 第1図において、レーザ24としてNd:YAG Qスイッチ
レーザを用い、波長として第2高周波532nm(パルス幅1
0ナノ秒)を用い、照射レーザパワー密度を109〜1011W/
cm2とし、容器10の内圧を10-5〜10-7Torrと真空排気し
ながら、ターゲット物質100として炭素(C)を用いた
実施例を表3に示した(C+で測定)。すなわち本実施例
は、前記実施例1においてターゲット物質を炭素にした
場合である。
なお、この実施例においても第1図に示す分離回収部
28は、本発明の濃縮方法のみの効果を示すため、公知の
四重極質量分析器を用い、そのイオン化装置を動作させ
ない状態で、プラズマから放出される一価のイオンのみ
を測定した。
表3から、本発明の濃縮方法の効果が理解される。す
なわち、ターゲットへのレーザ照射により、高密度加熱
プラズマが発生し、その中で電子、イオン、中性原子同
士が互いに多数回衝突することによって、イオン化率の
異なる同位体間での存在比率が、ターゲット中での天然
存在比と異なる値となる。本実施例では、四重極質量分
析器の信号強度の比から測定した質量数12のCイオンに
対する質量数13のCイオンの存在比は、表3に示すよう
に、天然存在比の22.0倍となる。すなわち、本発明の同
位体濃縮の効果は、ターゲットが炭素である場合に、極
めて顕著であることが示されている。
また、繰り返しになるが、この結果は、本発明の原理
である“多数回衝突した後の各同位体イオンの存在比率
は、ターゲット中での天然の存在比率と異なること”、
さらに“それら同位体間のイオン化率の差が微小であっ
たとしても、プラズマ中での多数回の衝突によって、そ
の差が増幅され存在比の顕著な差として現れてくるこ
と”という上記実施例同様の事実をも示すものである。
本発明はこの新現象を同位体の濃縮・分離に応用したも
のである。
実施例4 第2図には本発明に係る分離装置の他の具体例が示さ
れ、第1図と同一部材には同一符号を付して説明を省略
する。
本実施例において特徴的なことは、前記分離回収部28
が詳細に示されていることであり、この分離回収部28は
イオントラップ電極30、イオンと中性原子の分離用電磁
石32、イオンコレクタ34そして中性原子トラップ36を含
む。前述したごとく、ターゲット物質100に高出力レー
ザLBが照射されると、ターゲット物質100から高密度加
熱プラズマ200が発生し、この高密度加熱プラズマ200内
において電子、イオン及び中性原子が相互に複数回衝突
を繰り返す。そして、この高密度加熱プラズマ200内に
は前記イオンと中性原子とが混合されており、第2図の
実施例においては、前記各部において分離回収が行われ
る。
すなわち、静電型イオントラップ電極30には直流電界
が与えられており、この中をイオンi及び中性粒子nが
通過するときに、イオンiに対してはその進行方向に偏
位を与え、一方中性粒子nに対しては何らの影響も与え
ない。
実施例において、更に前記イオントラップ電極30の後
段に分離電磁石32が配置されており、この電磁石32で生
じる磁界によって更にイオンiには偏位が与えられる。
従って、イオンiは前記トラップ30と電磁石32によっ
てその進行方向が規制され、イオンコレクタ34に集電さ
れる。イオンは高密度プラズマ200中で電子、イオン中
性原子同士互いの多数回衝突により、ターゲットとは異
なる同位体比率を既に有しているため(同位体濃縮が実
現されているため)、分離回収部28によるイオンと中性
原子の分離のみで、イオンコレクタ34上では同位体濃縮
が行われていることとなる。
また集電が必要な特定の同位体に対して定められた位
置にスリット38を設けることで特定の同位体のみの分離
をも可能とする。
このようにしてイオンiが分離された中性粒子、特に
中性原子は分離回収部28をほぼ直進し、中性原子トラッ
プ36にて捕捉される。
以上のようにして、本実施例によれば、前記イオンコ
レクタ34にてターゲット中の同位体存在比とは異なる比
率を有するイオンすなわち濃縮同位体イオンのみが回収
され、さらにはスリット38を設けることで特定の同位体
が回収され、この結果同位体濃縮または分離が行われる
ことが理解される。
本発明において、前記プラズマ200の中ではそのイオ
ンiの存在比率がターゲット中での存在比率と異なり、
このようにして同位体の分離回収による同位体濃縮が行
われることとなる。
実施例4は、同位体濃縮/分離に応用するための具体
的装置である。すでに述べたように、本実施例の本質
は、ターゲット物質にレーザを照射し、ターゲット物質
の少なくとも1部をプラズマ化させ、電子、イオン、中
性原子同士が互いに多数回衝突させる。その際イオン化
率がターゲット中の同位体間で異なるため、多数回衝突
した後にプラズマ中の同位体イオンの比率は、ターゲッ
ト中の同位体比率とは異なることである。したがってこ
の方法で発生させたイオンのみを何らかの方法で回収し
さえすれば、天然存在比とは異なった比率でターゲット
物質中の同位体を回収できるのである。実施例4はその
具体的方法を提供している。
実施例5 第3図には、更に本発明に係る同位体分離装置の更に
他の実施例が示されており、前述した各図と同一の部材
には同一符号を付して説明を省略する。
この実施例において特徴的なことは、分離回収部28が
本発明のレーザ照射によってターゲット物質100から生
じた同位体濃縮されたイオン、中性原子とターゲット物
質100から熱的に放出された中性原子とを分離するため
に各成分の保有する速度成分の差を利用したものであ
る。
すなわち、前述したごとく、本発明によれば、ターゲ
ット物質100に対して高出力レーザLBの照射により高密
度加熱プラズマ200が生じ、このとき、高密度加熱プラ
ズマ200内において、中性原子は一度イオン化される
が、高密度加熱プラズマ200中に存在する高濃度の電子
と再結合して直ぐに中性化される。
一方、ターゲット物質100からは熱的に中性原子も同
時に放出され、このような熱的に放出された中性原子は
本発明における分離回収に対してはノイズ成分を生じさ
せ、これを除去することが望ましい。
本実施例では、前記高密度加熱プラズマ中の所望のイ
オン、中性原子と熱的な中性原子とがその保有する速度
成分が異なるので、この点に着目した分離作用を行うこ
とができる。
すなわち、本実施例において、分離回収部28は高速シ
ャッタ40を有し、この高速シャッタ40をレーザLBにより
誘起される高密度加熱プラズマ200の発生と同期させて
その開閉を制御し、この結果、高密度加熱プラズマ200
中の特定の速度成分を有する同位体イオン及び同位体中
性原子のみを通過させる。従って、高速シャッタ40を通
過した後のイオン及び中性原子は本発明において必要な
分離された同位体濃縮成分のみであり、これを詳細には
説明していないが、第2図の実施例などで示されたコレ
クタ42で回収することが可能となる。
本実施例において、高速シャッタ40の前後にはアパー
チャを設けることが可能であり、実施例によれば高速シ
ャッタ40の前面にアパーチャ44が設けられている。
実施例5は、実施例4とは別の方法である。すでに述
べたように、本発明の本質は、ターゲット物質にレーザ
を照射し、ターゲット物質の少なくとも一部をプラズマ
化させ、電子、イオン、中性原子同士を互いに多数回衝
突させる。その際イオン化率が同位体間で異なるため、
多数回衝突した後にプラズマ中の同位体イオン化率は、
ターゲット中の同位体比率とは異なることである。従っ
て上述の方法で発生させたイオンのみを何らかの方法で
回収しさえすれば、天然存在比とは異なった比率でター
ゲット物質中の同位体を回収できるものである。従って
本発明の基本は、イオン回収である。ところが、プラズ
マ中では、一旦イオン化したイオンは、電子との再結合
によって中性原子にもなる。この中性原子もイオン化過
程を一旦通過するため、イオンと同様に天然存在比とは
異なった比率でターゲット物質中の同位体が存在してい
る。実施例5はイオンに加えて、前記中性原子を積極的
に回収する方法を提供している。この方法では、レーザ
照射によるプラズマ中でイオンが電子と再結合して放出
される中性原子のみの回収が目的である。この際、レー
ザ照射によってターゲットからは熱的に放出される中性
原子を除去する必要がある。すなわち、熱的に放出され
る中性原子はプラズマによるイオン化過程を介しないた
めターゲット中の同位体比率と同比率で同位体原子が放
出される。従って本発明の目的である同位体濃縮/分離
にはノイズ成分として働き、除去されるべき成分であ
る。実施例5は、レーザ照射によってプラズマ中でイオ
ンが電子と再結合して放出される中性原子のみを回収
し、レーザ照射によってターゲットから熱的に放出され
る中性原子を除去する方法及び装置を提供している。
前述した各実施例において、ターゲット物質は固体と
して示されているが、本発明において、このようなター
ゲット物質は気体あるいは液体を他の固体表面に吸着さ
せて用いることも可能であり、またもちろんこれらの気
体、液体、固体から成るターゲット物質は化合物とする
ことも可能である。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明に係る方法が適用された本発明装置の概
略説明図、 第2図は本発明における分離回収部が設けられた実施例
装置の説明図、 第3図は本発明における更に他の分離回収部が設けられ
た本発明装置の概略説明図である。 10……気密容器 12……真空ポンプ 14……圧力調整器 20……ターゲットホルダ 24……レーザ源 26……光学系手段 28……分離回収部 100……ターゲット物質 200……高密度加熱プラズマ LB……レーザビーム

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ターゲット物質を減圧容器内に載置し、こ
    のターゲット物質に高出力レーザを照射し、ターゲット
    物質の少なくとも一部を高密度加熱プラズマ化して、こ
    の加熱プラズマ中に発生した電子、イオン、中性原子同
    士を互いに多数回衝突させることによって、前記ターゲ
    ット物質に含まれる同位体間でのイオン化率に差異があ
    るために前記ターゲット物質中の同位体存在比より大き
    な同位体イオン存在比を有する濃縮同位体イオンと、同
    位体イオンが前記加熱プラズマ中で電子と再結合し前記
    ターゲット物質中の同位体存在比より大きな中性同位体
    存在比を有する濃縮同位体中性原子とを発生させること
    を特徴とする同位体濃縮方法。
  2. 【請求項2】内圧を所定の減圧状態に保持する低圧保持
    手段を備えた気密容器と、該気密容器内にターゲット物
    質を載置し気密容器内で当該ターゲット物質から発生す
    る高密度加熱プラズマ中で電子、イオン、中性原子を互
    いに多数回衝突できるように前記気密容器内に設けられ
    たターゲットホルダと、高出力レーザ源と、該レーザを
    前記ターゲット物質に照射する光学系手段と、を含み、
    前記加熱プラズマ中に発生した電子、イオン、中性原子
    同士を互いに多数回衝突させることによって、前記ター
    ゲット物質に含まれる同位体間でのイオン化率に差異が
    あるために前記ターゲット物質中の同位体存在比より大
    きな同位体イオン存在比を有する濃縮同位体イオンと、
    同位体イオンが前記加熱プラズマ中で電子と再結合して
    前記ターゲット物質中の同位体存在比より大きな中性同
    位体存在比を有する濃縮同位体中性原子とを発生させる
    ことを特徴とする同位体濃縮装置。
  3. 【請求項3】特許請求の範囲(1)記載の同位体濃縮方
    法を用いて、前記加熱プラズマ中から、それぞれ濃縮さ
    れた存在比を有する前記濃縮同位体イオンまたは前記濃
    縮同位体中性原子の少なくともいずれかを分離回収する
    ことを特徴とする同位体分離方法。
  4. 【請求項4】特許請求の範囲(2)記載の同位体濃縮装
    置に、さらに前記加熱プラズマ中から、それぞれ濃縮さ
    れた前記濃縮同位体イオンまたは前記濃縮同位体中性原
    子の少なくともいずれかを分離回収する手段を備えたこ
    とを特徴とする同位体分離装置。
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