JP2655939B2 - 触媒燃焼装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 ＜産業上の利用分野＞ 本発明は、遠赤外線放射効率に優れた酸化触媒を応用
し、暖房，乾燥等に用いられる触媒燃焼装置に関するも
のである。

＜従来の技術＞ 気体燃焼及び気化された液体燃焼を空気と混合させた
後に触媒層へ送って触媒と接触させ、その表面上で無炎
燃焼させる触媒燃焼装置は、窒素酸化物の放出がなく、
触媒層から放射される遠赤外線の効果でマイルドな輻射
暖房を実現する等の優れた特徴を有するため、従来より
種々提案され、一部は実用化されている。

従来より、このような触媒燃焼装置のうち、担体に耐
熱無機材料を用いて触媒層から生じる輻射熱を利用する
ものの一例として、出願人が提案した第２図（ａ），
（ｂ）に示すような構造の触媒燃焼装置がある。

第２図（ａ），（ｂ）によって説明すると、1aは触媒
層、10aは１次空気調整孔、11bは予熱用バーナ、12bは
気化器、13aは２次空気孔、15bは送風機、23は点火用ヒ
ータ、25は温度センサーである。このように比較的広い
面積の触媒層１の一枚板を垂直方向に立て、送風機15b
を運転すると同時に触媒層の背面から予熱用バーナ11b
に点火用ヒータ23で点火して火炎燃焼を行い、この燃焼
熱で触媒層１を加熱し、触媒層が着火温度（活性化温
度）以上に達した時点で予熱用バーナの火炎を消化し、
直ちに気化灯油と１次空気調整孔10aからの１次空気及
び２次空気孔13aからの２次空気を混合してなる予混合
ガスを触媒層１へ供給して触媒燃焼を開始する構造とな
っている。この場合、一定の触媒負荷体積において燃焼
用空気量は一定のまま燃焼量のみを変化させて暖房能力
を調整している。また、燃焼量とともに燃焼用空気量も
制御して常に一定空気比のまま暖房能力を調整する方法
も考えられている。しかし、いずれも予混合ガスの流れ
方向に対して触媒層は１段である。

＜発明が解決しようとする課題＞ 上記した従来構成の触媒燃焼装置に於いては、下記の
ごとく欠点があった。

通常、同一体積の触媒層について、一定の空気比のま
まで燃焼量を絞り、触媒単位面積当たりの燃焼負荷量で
ある面負荷を低下させると触媒層の燃焼温度が低下す
る。また、燃焼用空気量を一定のまま燃焼量のみを絞る
と触媒層の燃焼温度はさらに急激に低下する。つまり、
最高燃焼量時に触媒層が赤熱状態で燃焼するのに対して
最低燃焼量時に触媒層は赤熱状態に達せず、常温状態と
同等の外観で燃焼する。このような最低燃焼量時におい
ては、ユーザーが燃焼状態にあるか否かを目視により簡
便に認識し難いために不安感を抱かせやすく、また視覚
効果も乏しい。また、予熱動作時には大面積の触媒層全
体を着火温度以上に加熱する必要があるため、ブンゼン
バーナ等の高負荷予熱手段を必要として装置が複雑とな
ったり、または予熱動作に長時間を必要としたり、予熱
動作時の触媒層温度の均熱化が困難であった。

従来より最低燃焼量時においても触媒層を赤熱状態と
するためには、触媒層の負荷面積を小さくすると同時に
予混合ガスの流れ方向の厚みを増して面負荷を大きくし
たり、空気比を１に近付ける必要があった。しかし、こ
のような方法の場合、負荷面積が小さいために輻射熱量
が小さくなったり、触媒層の圧力損失が大きくなった
り、また逆火を起こしやすくなるという弊害が生じる。

＜課題を解決するための手段＞ 本発明に係る触媒燃焼装置は、上記の課題を解決する
ためになされたものであり、気化燃料或いは気化した液
体燃料と燃焼用空気とを混合させて予混合ガスとする混
合室と、前記混合室の下流に配設された上流触媒層と、
前記上流触媒層の下流に配設された下流触媒層と、前記
上流触媒層の輻射面に対向して配設された透過窓とを備
え、前記予混合ガスを前記両触媒層へ送って無炎燃焼さ
せる触媒燃焼装置において、前記上流触媒層の体積は最
低燃焼量時に完全燃焼し得るだけの体積を有し、前記上
流触媒層と下流触媒層との合計体積は最高燃焼量時に完
全燃焼し得る体積を有してなることを特徴とするもので
ある。

また、前記上流触媒層のみを加熱する予熱手段を設
け、触媒予熱動作時には前記予熱手段にて前記上流触媒
層のみを加熱し、前記上流触媒層が着火温度に達した時
点で前記上流触媒層での最低燃焼量による触媒燃焼を行
い、この燃焼熱により前記下流触媒層が着火温度に達し
た時点で前記両触媒層での高燃焼量による触媒燃焼へ移
行し得ることを特徴とするものである。

＜作 用＞ 上記の構成に於いて、触媒層の予熱動作時には上流触
媒層のみを加熱し、上流触媒層全体で着火温度に達した
時点で上流触媒層において最低燃焼量による触媒燃焼を
開始し、さらに上流触媒燃焼熱により下流触媒層が着火
温度に達した時点において両触媒層における高燃焼量触
媒燃焼へ移行可能とするため、予熱動作時に加熱する触
媒層体積は上流触媒層のみとなり従来のように全触媒層
を加熱する必要がなく、小さな発熱量の予熱手段を用い
ることができる。また、燃焼用空気量を燃焼量に応じて
適切に送ることにより最高燃焼量時には両触媒層におい
て触媒燃焼を行い、最低燃焼量時には上流触媒層のみで
触媒燃焼を行うことで輻射面積を低減することなく最低
燃焼量時の負荷面積を小さくすることができ、すなわち
最低燃焼量時においても上流触媒層を赤熱状態に保持す
ることができ、いかなる燃焼量においてもユーザーが燃
焼状態を目視により簡便に確認することができる。

＜実施例＞ 本発明の一実施例を第１図に基づいて説明すれば以下
の通りである。

本発明に係る触媒燃焼装置において、第１図に示すよ
うに、熱透過窓５背後の前部ガス流量３を隔てた対面壁
の下段開口部には遠赤外線放射効率に優れた上流触媒層
１が、また上流触媒層１の直上開口部には遠赤外線放射
効率に優れた下流触媒層２が配設されている。この上流
触媒層１及び下流触媒層２は、コージュライトなどから
なる耐熱性無機材料をハニカム状或いは連続発泡体構造
等の通気性に優れた構造に成形したものを担体として用
い、この表面に白金族金属等の酸化触媒を担持させてい
る。また、前記上流触媒層１の体積は最低燃焼量時に完
全燃焼し得るだけの体積を有し、前記上流触媒層１と下
流触媒層２との合計体積は最高燃焼量時に完全燃焼し得
る体積を有してなる。上流触媒層１の背後にはディフュ
ーザー室６が配設されており、その上流は予混合ダクト
9,送風ダクト12へと接続されており、送風ダクト12の入
り口には燃焼用空気を送風するためのファン13が配設さ
れている。ディフューザー室６内部の上流触媒層１の直
前に予熱手段としてシーズヒータ８が取り付けられてお
り、シーズヒータ８のリード線は図示しないコントロー
ルユニットに接続されている。ディフューザー室６の入
り口付近及び中間部には整流のための金属メッシュ７が
取り付けられている。予混合ダクト９の中間部には灯油
を気化するための気化器10が配設され、気化器10の燃料
噴出口11が予混合ダクト９内に開口しており、気化灯油
と燃焼用空気を混合して予混合ガスをつくる。下流触媒
層２の背後には燃焼ガスを排気口15へ導くための後部ガ
ス流路４が配設されている。前部ガス流路３の底部から
は上流触媒層１の表面から放射される輻射熱を感知する
ための温度感知素子14が挿入されている。この温度感知
素子14の端子部は図示しないコントロールユニットに接
続されている。コントロールユニットは、温度感知素子
13の出力に基づいて下流触媒層３の表面温度を検知する
他、前記の気化器10,ファン12,及び図示しない送油ポン
プ等に対する自動制御を行うようになっている。

上記構成を有する触媒燃焼装置の動作は、触媒燃焼に
先立って触媒層を着火温度以上に加熱する予熱動作と、
着火温度に達した触媒層に一定燃焼量の予混合ガスを送
って触媒燃焼を開始しさらに安定化させる強制安定化動
作と、任意の燃焼量の予混合ガスを触媒層内で無炎燃焼
させる定常燃焼動作とから構成される。

予熱動作においては、まず、シーズヒータ８に通電を
行うと同時に気化器10内部に埋設された気化ヒータに通
電を行い、気化器10の灯油気化部の温度を200〜300℃に
加熱・保持する。通電により上流触媒層１の加熱が進行
し、その温度が着火温度（例えば300℃）に達したと前
記の温度感知素子14の出力に基づいてコントロールユニ
ットが判断したら、シーズヒータ８への通電を停止し、
同時にファン13により弱送風を開始すると共に送油ポン
プを作動させて最低燃焼量の送油を開始する。即ち、予
熱動作を終了し、強制安定化動作へと移行する。

送油ポンプによって灯油は気化器10へ送出され、この
気化器10内の200〜300℃に加熱・保持された気化部を通
過する間に灯油は気化し燃料噴出口11より予混合ダクト
９の中へ噴霧される。噴霧された気化灯油は、ファン13
により送風ダクト12を通って圧送される燃焼用空気と混
合されて予混合ガスを成し、予混合ダクト９からディフ
ューザー室７を通過して行く間に予混合ガスは、金属メ
ッシュ７の作用によりほぼ均一な流速に整流され、上流
触媒層１へと供給される。この時、上流触媒層１は、予
熱動作によりその温度を均一に着火温度（例えば300
℃）以上に予熱されており、また最低燃焼量の予混合ガ
スが完全燃焼するのに十分な空間速度を与える寸法に設
計されているため、CO,HC等の臭気ガスを排出すること
なく着火→昇温→定常弱燃焼へと移行し、赤熱状態（70
0〜800℃）で温度が安定状態に達する。また、送油開始
後４〜５分で、上流触媒層１における燃焼熱により下流
触媒層２も着火温度以上に達して安定化し、強制安定化
動作を終え、定常燃焼動作に移行する。定常燃焼時に
は、灯油の送出量及びファン13の送風量を制御し、常に
予混合ガスの理論空気量に対する燃焼用供給空気量の体
積比（即ち空気比）を２〜４程度とし、かつ上流触媒層
１の最高温度が850℃を越えないように送風量を制御す
ることにより、予混合ガスの逆火及び不完全燃焼を防止
しつつ燃焼量を増減させることができる。一方、何らか
の系内異常により予混合ガスの前記空気比が設定範囲よ
り外れたり、触媒劣化等で逆火や不完全燃焼が生じた場
合は、前記温度感知素子14の出力に基づいてコントロー
ルユニットが異常燃焼を判断するので、速やかに燃焼が
停止され、CO,HC等の有害ガスの排出は防止される。完
全燃焼した排気ガスは、上流触媒層１及び下流触媒層２
から排出した後、後部ガス流路４を通り、排気口15より
温風として放出される。一方、両触媒層からは熱透過窓
５を介して赤外線が放射される。従って前記の温風によ
る対流暖房と赤外線による輻射暖房とが同時に行われる
ことになる。

消化時には、ファン13を除く他の機器への通電を遮断
し、ファン13のみを数十秒間作動させて送風を行い、両
触媒層を主とするシステムの冷却を行う。このとき、両
触媒層は比較的大きな熱容量を持つため、予混合ガスの
供給を急に遮断しても通常の火炎を伴う燃焼のように消
化後しばらくCO,HC等の臭気ガスを排出することなく、
触媒層上において完全に酸化される。

＜発明の効果＞ 本発明に係る触媒燃焼装置は、以上のように、上流触
媒層の体積が最低燃焼量時に完全燃焼し得るだけの体積
を有し、上流触媒層と下流触媒層との合計体積が最高燃
焼量時に完全燃焼し得る体積を有してなる構成なので、
触媒燃焼装置としての燃焼量の強弱にかかわらず、前記
上流触媒層を常に赤熱状態に保持可能となり、ユーザー
にとって燃焼状態を透過窓を介して目視により簡便に確
認できるため、運転時の不安感を抱かせることがない。

また、前記上流触媒層のみを加熱する予熱手段を設
け、触媒予熱動作時には前記予熱手段にて前記上流触媒
層のみを加熱し、前記上流触媒層が着火温度に達した時
点で前記上流触媒層での最低燃焼量による触媒燃焼を行
い、この燃焼熱により前記下流触媒層が着火温度に達し
た時点で前記両触媒層での高燃焼量による触媒燃焼へ移
行し得る構成としたので、触媒予熱動作時に、従来のよ
うに全触媒層を加熱する必要がなく、上流触媒層のみを
予熱手段にて加熱するだけで、両触媒層での触媒燃焼を
させることができる。したがって、触媒予熱動作時には
上流触媒層のみを加熱すればよいため、小さな発熱量の
予熱手段を用いることが可能となり予熱装置が簡素化さ
れたり、予熱動作時間が短縮できる。また、予熱する触
媒層の面積が小さいため、予熱時の均熱化が促進され
る。

【図面の簡単な説明】 第１図は本発明の一実施例を示すものであり、第２図
（ａ），（ｂ）は従来例を示すものである。 １は上流触媒層、２は下流触媒層、５は熱透過窓、８は
予熱用シースヒータ、10は気化器、13はファン、14は温
度検知素子、15は排気口である。

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】気化燃料或いは気化した液体燃料と燃焼用
   空気とを混合させて予混合ガスとする混合室と、前記混
   合室の下流に配設された上流触媒層と、前記上流触媒層
   の下流に配設された下流触媒層と、前記上流触媒層の輻
   射面に対向して配設された透過窓とを備え、前記予混合
   ガスを前記両触媒層へ送って無炎燃焼させる触媒燃焼装
   置において、 前記上流触媒層の体積は最低燃焼量時に完全燃焼し得る
   だけの体積を有し、前記上流触媒層と下流触媒層との合
   計体積は最高燃焼量時に完全燃焼し得る体積を有してな
   ることを特徴とする触媒燃焼装置。
2. 【請求項２】前記上流触媒層のみを加熱する予熱手段を
   設け、触媒予熱動作時には前記予熱手段にて前記上流触
   媒層のみを加熱し、前記上流触媒層が着火温度に達した
   時点で前記上流触媒層での最低燃焼量による触媒燃焼を
   行い、この燃焼熱により前記下流触媒層が着火温度に達
   した時点で前記両触媒層での高燃焼量による触媒燃焼へ
   移行し得ることを特徴とする請求項１記載の触媒燃焼装
   置。