JP2650588B2 - イオン水生成器及びその作動方法 - Google Patents

イオン水生成器及びその作動方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は種々のイオンを含む水を
陽陰極間に連続的に供給しながら電解してアルカリ性水
と酸性水とを生成する装置に係り、主として、飲用水と
して有効なアルカリ性水を得るためのイオン水生成器と
その作動方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】イオン水生成器によって生成されるアル
カリ性の陰極水が慢性下痢、消化不良、胃腸内異常発
酵、制酸、胃酸過多等に有効であり、酸性の陽極水がア
ストリンゼントとして美容水に用いられることは、周知
のところである。
【0003】従来、イオン水生成器の性能は厚生省の認
可基準を目標とする場合が多く、pH9以上のアルカリ
性水を製造できることが必要条件となっていた。しか
し、pHの上限は定められていないために、pHを限密
に測定したり制御したりする機能を備えている装置はま
れであり、単に印可電圧・電流を加減してpH強度を大
ざっぱに変化させる程度の単純なものであった。そのた
め、pH強度が強すぎることもしばしばであった。これ
よりやや改良された装置として、流量計を用いて間接的
にpHを制御しようとするものもあったが、水質、特に
水中に溶存する炭酸ガス(以下、慣例に習って遊離炭酸
と称す)の影響を無視したタイプのものであった。
【0004】イオン水生成器で得られるアルカリ性水の
pHに影響を与える要因は種々あり、例えば、水の組成
や水温、あるいは、流量(水圧に依存する)や印可電圧
等は重要な要因と考えられていた。ところが、従来のイ
オン水生成器では、これら種々のpH変動要因を同一に
設定して電解するにも拘らず、アルカリ水のpH制御が
依然として困難であった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】従来のpH制御方法に
よれば、供給される水が大都市圏の水道水によく用いら
れるような河川水(表流水)ならば比較的簡単に目的の
アルカリ水が得られたが、地方自治体(水道局)などで
上水道水源としてとして使用されている地下水(伏流
水)ではアルカリ水を得るのは非常に難しかった。種々
の調査の結果、この原因が遊離炭酸にあることが分かっ
てきた。ところが、遊離炭酸をも考慮して合理的な電解
条件で運転できるイオン水生成器は従来には無かったの
である。
【0006】一般的に、表流水は炭酸ガス濃度の薄い大
気と平衡状態にあるから、その溶存濃度も低く、数pp
m以下である。これに対して、地下水、わき水、ダムな
どの伏流水の採水場所では、植物の根やその他有機分解
物が多く存在したり平衡水圧が高かったりするので、炭
酸ガスは高濃度で溶存している。この度合は取水地域や
深度により異なり、また、取水日、特に季節や天候の影
響をかなり受けることが知られている。
【0007】遊離炭酸を含む水のpHはほぼ中性であ
り、pH値からはその含有量が分からないにもかかわら
ず、中和反応に対しては酸と同じ能力を有しているの
で、このような水を使用する場合は特別な配慮がいる。
すなわち、遊離炭酸が多量に含有されていると、折角電
解で生成したアルカリ成分が遊離炭酸と中和反応を起こ
してアルカリ性水のpH値が低下してしまうのである。
つまり、電解で生成した水酸基イオンの一部が遊離炭酸
の中和に消費されても、水酸基イオンが残っておればア
ルカリ性になるのであるが、通電電流の電気化学当量よ
り遊離炭酸含有量の方が多すぎて、水酸基イオンが全て
消費されてもまだ遊離炭酸が残留していると、陰極水は
アルカリ性にならないと言う状況が発生する。従って、
遊離炭酸を無視した画一的な従来の作動方法ではアルカ
リ水が得られないケースが出てくる、と言う大きな欠点
があったのである。
【0008】従来のように単純な作動方法であっても、
陰極水を何とかアルカリ性にするだけなら、電源容量を
無制限に大きくしておけばその目的は果たせる。しか
し、過大な電流を想定して電源容量を必要以上に大きく
することは、装置の大型化や消費電力の浪費をもたらす
ので無意味だし不経済である。
【0009】従来のイオン生成器は、pH強度ボタンを
適宜選択することにより供給電力量を可変するタイプが
ほとんどである。この場合、適当な判断基準が無かった
ので、どの様に選択すれば最適条件で運転できるかの見
当が付かなかった。前にも述べたように供給水中の遊離
炭酸濃度は水源の場所や季節によってさまざまなので、
遊離炭酸含有量も電解条件設定のためのデータの一つと
して取り扱わない限り目的とするpH値のアルカリ水は
得られない。
【0010】次に、pHを知る手段として水素イオンセ
ンサを用い、生成後のアルカリ性水のpHを測定しなが
ら通電電流をフィードバック制御する方法も考えられ
る。しかし、一般的にこの種センサの応答性は数10秒
とかなり遅いので、通水電解後のpHを測定してから制
御していたのでは間に合わなくなる。実使用時では、や
かんとかコップ等小さい容器に水を汲むケースが多く、
その採水時間は数10秒以内の短時間である。従って、
pHが測定され制御可能になったころには、すでに水は
満配となり止水される。つまり、pH制御ができる前の
水を汲むことになる。そればかりか、この種センサは寿
命や取扱の煩雑さなどの面でも多くの問題があり実用的
ではなかった。
【0011】供給水中の遊離炭酸を除去するための別法
として、吸着、吸収、中和できるような薬剤、例えば、
生石灰や水酸化物などを備え、それに水を接触もしくは
通過させて遊離炭酸を除去してから電解する方法が考え
られたが、適当な薬剤の選択や中和処理の適正化及び保
守交換等が大変であり、これらも実用的ではなかった。
【0012】この発明は常軌のような課題を解決するた
めに成されたものであり、その目的とするところは、供
給水中の遊離炭酸考慮して効果的に所望のpH値を有す
るアルカリ水を得ることができるイオン水生成器及びそ
の作動方法を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】この発明は、ある種の水
ではアルカリ性のpHが出にくいと言う従来のイオン水
生成器の欠点の原因が遊離炭酸に起因することに着眼し
て成されたものである。すなわち、本発明のイオン水生
成器は、イオン水生成器での電解に供される水に含まれ
る遊離炭酸を測定し、その濃度に応じて最適電解電流値
を算出して電解することにより、所望するアルカリ水を
効率よく得んとするものである。
【0014】
【作用】イオン水生成器の水電解反応においては、次式
に示すごとく陽極で水素イオン、陰極で水酸基イオンが
できる。 陽極反応 H2 O → 1/2 O2 +2H+ +2e- …(1) 陰極反応 2H2 O+2e- → H2 +2OH- …(2) 供給水中に含まれていたNa+ ,K+ ,Ca2+,Mg2+
などの陽イオンは陰極に、一方、Cl- ,SO4 2-,N
3 - などの陰イオンは陽極側に引き寄せられ、アルカ
リ性水と酸性水とになる。
【0015】給水中に遊離炭酸が存在する場合は、
(2)式で生成した水酸基イオンは中和反応に消費され
る。pHが強アルカリ領域なら炭酸イオン(CO3 2-
まで中和が進むが、弱酸,弱アルカリあるいは中性に近
い領では重炭酸イオンが安定に存在し次式が起こる。 中和反応 OH- +CO2 → HCO3 - …(3) この遊離炭酸の中和に消費される水酸基イオンの電気化
学当量以上で通電すると過剰の水酸基イオンが残留しア
ルカリ性を示すこととなる。
【0016】そこで、水を電解して酸性水とアルカリ性
水と得るイオン水生成器への供給水に含まれる炭酸ガス
濃度を検出するための炭酸ガスセンサと、遊離炭酸の濃
度の値から電解電流を算出して電力供給手段を制御する
ための制御手段と、を備えてなるイオン水生成器を用
い、炭酸ガスセンサに接続された制御手段で最適電解電
流を算出して電解したり、炭酸ガスセンサで検出した遊
離炭酸の濃度値を手動で入力し、これをもとに制御手段
で最適電解電流を算出して電解したりすることにより、
所望のアルカリ性水を得ることをができる。
【0017】
【実施例】次に本発明の実施例を説明する。図1に、本
発明のイオン水生成器を構成する主要部品としての電解
槽1、炭酸ガスセンサ9、演算制御回路10、電源回路
11を示す。電解槽1内の電解容器5には、陽極2と陰
極3とがセパレータ4をはさんで平行に配置されてい
る。水は、矢印で示すように、電解容器5の下部から導
入され、酸性の陽極水7とアルカリ性の陰極水8とに分
離されて上部から取り出される。炭酸ガスセンサ9は、
図面で示すように、供給水6中に存在する遊離炭酸濃度
を測定するために、水の入口通路内に設置される。使用
する炭酸ガスセンサ9は測定原理や形式に特別な制限は
ないが、本実施例としてはビールや炭酸飲料水工業など
でよく使用されている市販の隔膜式炭酸ガス電極が用い
られている。これは検水中の炭酸ガスを透過させる隔膜
と重炭酸ナトリウムを主成分とした内部液とで構成され
ている。この電極では隔膜を透過した炭酸ガスがその分
圧に比例して内部液のpH値を変化させるので電極の電
位差を測定すればよい。
【0018】上記実施例とは別に、供給水中の遊離炭酸
の濃度を本体外で別途測定するか、もしくは、他の分析
方法で明かにし、この値をイオン水生成器に入力するよ
うに構成してもよい。例えば、供給水の遊離炭酸濃度設
定ボタンなどを設け、この入力信号と連動した演算制御
回路と電源回路とから構成されていれば、上記実施例の
趣旨と同じになり、陰極水のアルカリ化が確実に達成さ
れることは容易に類推される。
【0019】図2に、本発明のイオン水生成器を用いた
実験結果と実使用に際して設定された動作点の箇所を示
す。この図は電流値がpHに与える影響を実測値で示し
ており、印可電圧を実験的に変えることにより得られた
結果である。曲線Aは遊離炭酸濃度が100mg/L、
曲線Bは50mg/L、それぞれ含有された水を電解し
たときのpH変化を代表例として示す。このときの流量
は陰極側約4L/分、陽極側約2L/分、水温は25℃
であった。
【0020】酸性水のpHを決定する要因としては、遊
離炭酸の含有量C(mg/L)、陰極水流量Vc (L/
分)、電解電流I(A)、電流効率ηc が考えられ、そ
の関は次式で示される。 PH=14+log {10-7+ (ηc*I*60 /(96500* Vc))- C/(44.01*1000*Vc)} …(4)
【0021】水の組成や水温などの要因は電導率変化に
よる電解電流の変動として現れるから、間接的にpH値
に反映される。また、電流効率ηc は電極や隔膜の性能
とか両極水の流量比率などによっても変化する。
【0022】さて、(4)式の意味するところは、{
}内の第1項は供給される中性水の水酸基イオン濃度
(mol/L)であり、第2項で表される基イオンが電
解によって生成されるが、第3項で表される遊離炭酸の
当量分だけ水酸基イオンは重炭酸イオンの生成に消費さ
れており、それらの合計が陰極水のpH値を左右するも
のと考えられる。ただし、logの{ }内は正の値、
すなわちアルカリ性を前提条件としているから、近似的
には第2項≧第3項を考えればよい。この逆に電流が小
さ過ぎて第2項<第3項となる場合はPH=7とみなし
てよい。第2項=第3項の場合は、通電電流の全てが遊
離炭酸の中和に消費され、水酸基イオンが残留しはじめ
る直前の状態である。この時の電流値は次式のように流
量と関係なく濃度Cに比例する。
【0023】 I= (1/ηc )* (96500/60)* (1/44.01 )* (C/1000 ) …(5)
【0024】例えば、実際的な遊離炭酸濃度としてC=
100mg/L、ηc =0.4を代入するとI=9.1
4Aとなる。さらに、C=50mg/L、つまり、遊離
炭酸濃度を1/2にするとI=4.57Aとなり、電流
値も半減する。これら最低限必要な電流値は図2のそれ
ぞれの破線で示される。もちろん、この値は(4)式を
計算することによっても得られる。この場合は各濃度に
おける電流とpHの関係が連続的に求められ、およそ図
2の実験結果(曲線A,B)によく似た曲線となる(図
示せず)。
【0025】実際に電解操作する場合は、(5)式の計
算値よりさらに1Aほど余分に流せば十分であり、これ
を図2の動作点A,Bで示してある。これ以上で通電し
ても支障ないがpHは差ほど変わらない。最少の電流で
十分なる効果(アルカリ性のpH)を得ることの方が重
要である。図中には動作点は二つしか示していないが、
実際の運転では水の組成(遊離炭酸濃度)が変化する度
にそれに対応した動作点が設定され、その結果、ほとん
どの地下水で実用可能な強度のアルカリ性水が得られ
た。
【0026】ただし、遊離炭酸濃度が実施例以上の高濃
度におよぶ場合がごくまれにあるが、必要電流量が実用
的な範囲を大幅に超えてしまうので、かような原水での
アルカリ性水の製造は困難である。このような時は、エ
アーバブリングやシャワーリングなど一度大気にさらし
て溶存炭酸ガスを除去してから使用すればよい。
【0027】尚、本発明のイオン水生成器は主としてア
ルカリ性水を作ることを目的としているが、酸性水も従
来通りに利用できることは言うまでもない。また、付加
的な利用方法としては、遊離炭酸濃度の測定値やある程
度のpH予想値などの情報に関して、適当な表示機能と
手段を本体内に備えて使用者に知らせるような利用も可
能である。
【0028】
【発明の効果】以上述べたように、本発明にかかるイオ
ン水生成器及びその作動方法によれば、遊離炭酸濃度の
高い水を供給した場合でも、アルカリ性水製造の最適条
件を自動的に判断して運転できるから、最少限の電力で
好適なpH値のアルカリ水を得ることができる。従っ
て、この発明の価値は極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の1実施例に係るイオン水生成器の主要
構成部品を示す。
【図2】本発明のイオン水生成器を用いた実験結果と設
定動作点との関係を示す。
【符号の説明】 電解槽 2 陽極 3 陰極 9 炭酸ガスセンサ 10 演算制御回路 11 電源回路

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 水を電解して酸性水とアルカリ性水と得
    るイオン水生成器への供給水に含まれる炭酸ガス濃度を
    検出するための炭酸ガスセンサと、 遊離炭酸の濃度の値から電解電流を算出して電力供給手
    段を制御するための制御手段と、 を備えてなるイオン水生成器。
  2. 【請求項2】 炭酸ガスセンサに接続された制御手段で
    最適電解電流を算出して電解することにより所望のアル
    カリ性水を得ることを特徴とする、 請求項1記載のイオン水生成器の作動方法。
  3. 【請求項3】 炭酸ガスセンサで検出した遊離炭酸の濃
    度値を手動で入力し、これをもとに制御手段で最適電解
    電流を算出して電解することにより所望のアルカリ性水
    を得ることを特徴とする、 請求項1記載のイオン水生成器の作動方法。
JP30955692A 1992-10-23 1992-10-23 イオン水生成器及びその作動方法 Expired - Lifetime JP2650588B2 (ja)

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