JP2647245B2 - 超電導素子およびその作製方法 - Google Patents

超電導素子およびその作製方法

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JP2647245B2 JP2257859A JP25785990A JP2647245B2 JP 2647245 B2 JP2647245 B2 JP 2647245B2 JP 2257859 A JP2257859 A JP 2257859A JP 25785990 A JP25785990 A JP 25785990A JP 2647245 B2 JP2647245 B2 JP 2647245B2
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Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明は、超電導素子およびその作製方法に関する。
より詳細には、本発明は、実効的な膜厚の変化する酸化
物超電導薄膜により形成された弱結合を含む超電導素子
であって、特にその表面が平坦な新規な構成を有する超
電導素子と、それを実現するための新規な作製方法とに
関する。
従来の技術 従来知られていた超電導材料は、一般に液体ヘリウム
温度以下の極低温でしか超電導体にならなかったので、
これを実用的に利用することはあまり考えられていなか
った。しかしながら、〔La,Ba〕2CuO4あるいは〔La,S
r〕2CuO4等の複合酸化物焼結体が高い臨界温度を有する
超電導材料であることが1986年に見出されて以来、Y−
Ba−Cu−O系あるいはBi−Ca−Sr−Cu−O系等の複合酸
化物が極めて高い温度で超電導特性を示すことが次々に
確認された。このような高い温度で超電導特性を示す材
料は廉価な液体窒素を冷却媒体として使用することがで
きるので、超電導技術の応用が俄かに現実的な課題とし
て検討されるようになった。
超電導現象を利用した基本的な電子デバイスのひとつ
としてジョセフソン素子が知られている。ジョセフソン
素子は、所謂弱結合により結合された1対の超電導電極
により形成されており、クーパー対のトンネル効果であ
ると言われている直流ジョセフソン効果や、離散的な電
圧/電流特性を示す交流ジョセフソン効果等の特異な特
性を有している。
一方、一連の酸化物超電導材料は、当初粉末冶金法に
より焼結体として得られていたが、焼結体材料では特に
臨界電流密度等の特性について好ましい特性が得られ
ず、最近では薄膜として作製する方法が広く研究される
ようになっている。このような酸化物超電導薄膜を加工
して作製されるプレーナ型ジョセフソン素子の構造とし
ては、膜厚一定型と膜厚変化型とに大別することができ
る。
第3図(a)および(b)は、プレーナ型ジョセフソ
ン素子の典型的な構造を示す図である。
第3図(a)は、膜厚一定型のジョセフソン素子の構
造を示す図であり、同図に示すように、基板11上に形成
された膜厚の一定な酸化物超電導薄膜21をパターニング
することによって、充分な線幅を有する1対の超電導電
極領域11a、21cと、線幅wが非常に細い弱結合領域21a
とが形成されている。
一方、第3図(b)は、膜厚変化型のジョセフソン素
子の構造を示す図であり、基板11上に形成された酸化物
超電導薄膜21の特定の領域を薄化することによって、充
分な厚さを有する1対の超電導電極領域21b、21cと、膜
厚tの非常に薄い弱結合領域21aとが形成されている。
以上のような構成の各種プレーナ型ジョセフソン素子
においては、その弱結合領域21aの膜幅wまたは膜厚t
が素子の特性に密接に関係しており、所望の特性を再現
性良く実現するためにはサブミクロンレベルの高い加工
精度が要求される。
発明が解決しようとする課題 上述のような従来のプレーナ型ジョセフソン素子に
は、それぞれ以下のような問題点がある。
即ち、膜厚一定型のジョセフソン素子は、素子の表面
が比較的平坦で集積回路素子としては好ましい構造であ
る。しかしながら、その弱結合領域21aを形成するため
には、膜厚0.5〜1.0μm程度の酸化物超電導薄膜21を幅
0.2μm以下までパターニングする必要がある。このよ
うな超微細加工を再現性良く実施することは実際には非
常に困難である。
一方、膜厚変化型のジョセフソン素子は、弱結合領域
21aのパターニング自体には極端な微細加工技術は必要
ないが、弱結合領域21aの残留膜厚tを均一に制御する
ことが極めて難しい。また、素子表面の平坦性に劣り、
集積回路を構成する素子として使用する場合には不利で
ある。
そこで、本発明は、上記従来技術の問題点を解決し、
既に確立されている加工技術によって再現性良く作製す
ることができ、且つ、素子表面の平坦化が容易な新規な
ジョセフソン素子の構成と、その構成を実現するための
新規な作製方法とを併せて提供することをその目的とし
ている。
課題を解決するための手段 即ち、本発明に従うと、酸化物超電導薄膜により形成
された1対の超電導電極領域と、該1対の超電導電極領
域を相互に結合する弱結合領域とを基板の同一面上に搭
載してなる超電導素子を製造する方法であって、酸素イ
オンを注入することにより酸化物超電導体化することが
できる化合物の薄膜を基板上に被着させる工程と、少な
くとも該弱結合領域を覆うマスクを該化合物薄膜上に装
荷する工程と、該弱結合領域の側部において、該化合物
の薄膜の側方端面が露出するような溝または段差を該化
合物薄膜の表面に形成する工程と、該化合物薄膜の該溝
または段差を含む面から酸素注入を行う工程と、該酸素
注入された基板を酸素雰囲気下で加熱して、該マスクが
装荷されていた領域の下方の領域まで該基板内で酸素を
拡散させる工程とを含むことを特徴とする方法が提供さ
れる。
作用 本発明に係る超電導素子は、酸素イオンを注入して形
成された酸化物超電導体により形成された超電導電極
と、酸素を導入して形成された酸化物超電導体により形
成された弱結合とを併せて具備することをその主要な特
徴としている。
即ち、従来の超電導素子は、一旦形成した超電導薄膜
を、特にその弱結合領域を物理的に加工して薄化または
細化することにより弱結合を形成していた。しかしなが
ら、弱結合を実現し得る膜幅または膜厚は極めて小さ
く、所望の特性を発揮するジョセフソン素子を作製する
ためには極端に高い加工精度が要求された。
これに対して、本発明に係る超電導素子は、酸化物超
電導体から酸素を除いたまたは酸素を不足させた化合物
の薄膜を基板上に形成した後、この化合物薄膜に対して
適切な条件で酸素イオンを注入することにより超電導電
極を形成している。また、酸素雰囲気中で加熱すること
により酸素が水平方向に移動し易いことを利用して、酸
素の導入により弱結合領域を結合している。従って、微
細な物理加工が不要であり、特性の制御性ならびに再現
性に優れている。また、この超電導素子の表面は、完成
した時点で既に表面が平坦になっているので、集積回路
素子として好適である。
以上のような本発明に係る超電導素子において酸化物
超電導薄膜を形成する材料としては、Y−Ba−Cu−O
系、Bi−Sr−Ca−Cu−O系、Tl−Ba−Ca−Cu−O系等の
複合酸化物超電導材料を例示することができる。
また、上記酸化物超電導材料薄膜を成膜する際の好ま
しい下地基板材料としては、MgO、SrTiO3、CdNdAlO4
の酸化物単結晶基板を例示することができる。これらの
基板上では、配向性の高い結晶を成長させることが可能
である。また、適切なバッファ層を搭載したSi基板等の
半導体基板も下地基板として使用することができる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する
が、以下の開示は本発明の一実施例に過ぎず、本発明の
技術的範囲を何ら限定するものではない。
実施例 第1図は、本発明に係る超電導素子の具体的な構成を
示す図である。
同図に示すように、この素子は、基板10上とその基板
10上に形成された化合物薄膜20とから主に構成されてお
り、化合物薄膜20中の特定の領域は、酸素導入領域30と
なっている。即ち、酸素導入領域30は、超電導電極領域
30b、30cでは、酸素イオンを注入された注入領域を形成
しており、弱結合極領域30aでは、酸素を導入されて薄
い超電導領域を形成している。
ここで、この素子における化合物薄膜20は、それ自体
は超電導体ではないが、酸素イオンを注入することによ
って酸化物超電導体となるような化合物により形成され
ている。従って、この化合物薄膜20に対して、適切な量
の酸素を導入することにより形成された酸素導入領域30
は超電導体となっている。尚、このような化合物として
は、意図的に酸素含有量を不足させた酸化物超電導材料
を使用すればよい。
第2図(a)〜(f)は、本発明に係る超電導素子の
作製過程を工程毎に示す図である。尚、本実施例では、
酸化物超電導材料としてY−Ba−Cu系の複合酸化物超電
導材料を使用するものとする。
第2図(a)に示すような平坦な基板1を用意する。
本実施例では、基板1としてMgO(100)基板を使用した
が、他にもCdNdAlO4(001)基板等を好ましく使用する
ことができる。このような基板を使用することにより、
基板1の表面と平行な方向に臨界電流密度が大きい、c
軸配向とした酸化物超電導薄膜を基板上に成長させるこ
とができる。
上述のような基板1に対して、第2図(b)に示すよ
うに、化合物薄膜2を成膜する。ここで成膜される化合
物薄膜2は、Y−Ba−Cu−O系複合酸化物であるが、意
図的に酸素含有量が不足させられており、それ自体は冷
却しても超電導体にはならない。尚、このような化合物
薄膜2は、例えばオフアクシススパッタリング法や反応
性蒸着法により成膜することができる。本実施例では、
10PaのArベースのガス雰囲気の下で、オフアクシススパ
ッタリング法により成膜した。基板温度は700℃とし
た。
次に、第2図(c)に示すように、化合物薄膜2上
に、所定のパターンでレジスト層4を形成する。このレ
ジスト層4は、後述する酸素イオン注入工程において、
弱結合領域に対する酸素イオン注入量を抑制する目的で
使用する。
続いて、第2図(d)に示すように、反応性イオンエ
ッチングまたはアルゴンガスによるイオンミリング等の
異方性エッチング加工により、化合物薄膜2の表面に僅
かな溝2aを形成する。尚、ここで化合物薄膜2に溝2aを
形成するのは、後述するように、弱結合部の形状をシャ
ープにするためである。従って、エッチングにより浅い
段差を制御性よく形成することができるのならば、弱結
合部のみを残して一様にエッチングしてもよい。
以上のような前工程の後に、第2図(e)に示すよう
に、中央のレジスト層4aを残してレジスト層4を除去し
た後、化合物薄膜2の上方から深く酸素イオン注入を行
う。このとき形成される酸素イオン注入領域3は、同図
に示すように、後に超電導電極領域となる両側部では、
化合物薄膜2の厚さの略全部に形成される。一方、レジ
スト層4aによってマスクされた中央部には、酸素イオン
注入領域は形成されない。
次に、第2図(f)に示すように、レジスト層4aを除
去した後に酸素雰囲気中でアニール処理することによ
り、酸素イオン注入領域3が拡大すると共に、前の工程
ではレジスト層4aにマスクされていた領域に対して、雰
囲気中の酸素が導入される。このとき、化合物薄膜2内
では、酸素は水平方向に拡散し易いので、前工程でエッ
チングにより形成された溝2aの側面から取り込まれた酸
素が水平に拡散し、やがて、この拡散領域が両酸素イオ
ン注入領域3を結合して弱結合を形成する。
このような処理により、同図に示すように、酸素イオ
ンが深く注入された1対の超電導電極領域3b、3cと、酸
素が導入されて水平に拡散した弱結合領域3aとが形成さ
れる。尚、この熱処理は、400℃で行い、最終的に得ら
れた超電導素子の弱結合領域3aにおける超電導層の実効
的な厚さは5〜10nm程度となっていた。
以上のようにして、第1図に示したような本発明に係
る超電導素子が完成する。
発明の効果 以上説明したように、本発明に係る超電導素子は、超
電導薄膜の一部分を物理的に加工して弱結合を形成する
のではなく、酸素の取り込みにより形成される所望の厚
さの超電導体により構成されている。従って、その作製
には、特定領域に対する超微細加工が不要であると同時
に、工数も少なく生産性が高い。
また、本発明に係る超電導素子は、その独特の構成に
より、作製時に既に素子の表面が平坦化されているので
集積回路素子として扱い易い。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明に係る超電導素子の具体的な構成例を
示す図であり、 第2図(a)〜(f)は、本発明に係る超電導素子の作
製過程を工程毎に示す図であり、 第3図(a)および(b)は、従来のプレーナ型ジョセ
フソン素子の典型的な構成を示す図である。 〔主な参照番号〕 1、10、11……基板、 2、20……化合物薄膜(非超電導体)、 2a……溝、 3……酸素イオン注入領域(超電導体)、 4……レジスト層、 21……酸化物超電導薄膜、 3a、21a、30a……弱結合領域、 3b、3c、21b、21c、30……酸素導入領域(超電導体)、 30b、30c……超電導電極領域
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平2−234479(JP,A) 特開 平2−72685(JP,A) 特開 昭64−65886(JP,A)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】酸化物超電導薄膜により形成された1対の
    超電導電極領域と、該1対の超電導電極領域を相互に結
    合する弱結合領域とを基板の同一面上に搭載してなる超
    電導素子を製造する方法であって、 酸素イオンを注入することにより酸化物超電導体化する
    ことができる化合物の薄膜を基板上に被着させる工程
    と、 少なくとも該弱結合領域を覆うマスクを該化合物薄膜上
    に装荷する工程と、 該弱結合領域の側部において、該化合物薄膜の側方端面
    が露出するような溝または段差を該化合物薄膜の表面に
    形成する工程と、 該化合物薄膜の該溝または段差を含む面から酸素注入を
    行う工程と、 該酸素注入された基板を酸素雰囲気下で加熱して、該マ
    スクが装荷されていた領域の下方の領域まで該基板内で
    酸素を拡散させる工程と を含むことを特徴とする方法。
  2. 【請求項2】請求項1に記載された方法により作製され
    た超電導素子であって、 前記電極領域は酸化物超電導薄膜により形成されてお
    り、前記弱結合領域はその厚さ方向の一部分が酸化物超
    電導薄膜により形成されており、該電極領域および該弱
    結合領域が全体として一体の化合物薄膜であることを特
    徴とする超電導素子。
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