JP2641201B2 - 2,6―ジメチルナフタレンの分離方法 - Google Patents

2,6―ジメチルナフタレンの分離方法

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【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、ジメチルナフタレン異性体の混合物を含む
原料油から、2,6−ジメチルナフタレンを分離する方法
に関する。さらに詳しくは、本発明は、特定の吸着剤お
よび脱離剤を使用して、2,6−ジメチルナフタレンと少
くとも2種の他のジメチルナフタレン異性体とを含む原
料油から2,6−ジメチルナフタレンを分離する2,6−ジメ
チルナフタレンの分離方法に関するものである。
〔従来の技術〕
交換可能なカチオンサイトに或る種のカチオンを含有
するX型またはY型ゼオライトがジメチルナフタレン異
性体を含有する混合物から、特定のジメチルナフタレン
を分離することができることは従来技術でも認められて
いる。例えば米国特許3,133,126及び米国特許3,114,782
では、交換可能なカチオンサイトにナトリウムまたはカ
ルシウムを含有しているX型ゼオライトがジメチルナフ
タレン異性体間の選択的吸着剤として有用であることを
指摘している。
特公昭52−945にはY型ゼオライトを使用し、脱離剤
としてベンゼン、トルエン、オルトキシレンを使用して
2,6/2,7−ジメチルナフタレン共晶混合物から選択的に
2,7−ジメチルナフタレンを分離することができると述
べられている。
特公昭49−27578にはY型ゼオライトを使用し、2,6−
ジメチルナフタレンが分離できることが記載されてい
る。更にオランダ特許7,307,794、米国特許3,772,399、
米国特許3,840,610、米国特許3,895,080、米国特許4,01
4,949等には、いずれもY型ゼオライトが環状炭化水素
類の分離に際しての吸着剤として有用であることが記載
されている。
〔発明が解決しようとする問題点〕
しかしながら、米国特許3,133,126および米国特許3,1
14,782では、ジメチルナフタレン異性体間の吸着選択制
を観測するに際して、実際には吸着に強くは関与しない
パラフインの存在下でジメチルナフタレン異性体混合物
の希薄溶液について、静置回分法にて吸着選択性を論じ
ているにすぎず、実際工業的に運転する場合、例えば疑
似移動床等を使用した連続分離を行なう場合、必要不可
欠である脱離剤の関与についての記載が見られない。
工業的に必須な脱離剤について、記載がないことは、
先に挙げた特公昭49−27578、米国特許3,772,399、米国
特許3,895,080、米国特許4,014,949、オランダ特許7307
794についても同様である。一般に吸着分離操作におい
て優れた吸着分離系とは、まず吸着剤については平衡状
態に達した時の分離係数及び吸着容量が大きいこと、被
分離物質に変質が見られないこと、更には、被分離物質
の吸着および脱着の速度が速いことなどが要求され、ま
た脱離剤については、被分離物質の中で、最も弱い吸着
力をもつものと最も強い吸着力をもつものとの中間程度
の吸着力をもつもので、被分離物質のうち、特に目的物
質の吸着及び脱着を促進させる物質が要求される。この
ような要求を満たさない場合、例えば被分離物質のテー
リングが大きくなる等の問題が生じ目的物質を効率よく
分離することができない。
〔問題点を解決するための手段〕
本発明者らは2,6−ジメチルナフタレンと少くとも2
種の他のジメチルナフタレン異性体を含む原料油から、
2,6−ジメチルナフタレンを吸着分離するにあたり、吸
着剤としてそのカチオンサイトが亜鉛、鉄、コバルトお
よびニツケルから選ばれる少くとも1種のカチオンでイ
オン交換されたY型ゼオライトを用い、脱離剤として炭
素数7〜10の芳香族炭化水素を用いる2,6−ジメチルナ
フタレンの分離方法である。
以下、本発明を更に詳細に説明する。
ゼオライトは天然に産するもの、および人工的に合成
されるものが多種知られている。しかし、これらゼオラ
イトの全てが本発明方法による、2,6−ジメチルナフタ
レンの分離用吸着剤として有効であるわけではなく、本
発明においては、Y型ゼオライトを用いる。フオージヤ
サイト型ゼオライトに属するY型ゼオライトは、その酸
化物表示として 0.9±0.2Na2O:Al2O3:4.5±1.5SiO2:YH2O (ここでYは9以下の0を含む任意の値) で表わされるようにナトリウム体に関して酸化物のモル
比で示すことができる。Y型のゼオライトのナトリウム
体は、そのカチオンサイトにあるナトリウムを公知の方
法に従つて他のカチオンにイオン交換することが可能で
ある。本発明ではこのようにイオン交換したY型ゼオラ
イトを吸着剤として使用する。
交換カチオンとしては、遷移金属のなかから少くとも
1種のカチオンを選ぶことができる。具体的には、亜
鉛、鉄、コバルトおよびニツケルのいずれかのカチオン
を用いる。特に好ましいのは亜鉛およびコバルトであ
る。
本発明方法により2,6−ジメチルナフタレンを分離す
るにあたつては、ジメチルナフタレン異性体の混合物を
含む原料油の供給流を、カチオンサイトに上記のカチオ
ンを少くとも1種有するY型ゼオライトを単一床として
クロマトカラムに充填したものに接触させ、続いてこの
床上に2,6−ジメチルナフタレンを選択的に脱着する脱
離剤物質を通す溶離型クロマトグラフイ法または疑似移
動床方式等の連続分離技術を利用することができる。吸
着剤としてのゼオライトは、粉末状に限らず、ペレツ
ト、押し出し品、顆粒品等に成形してもよく、その場合
は、バインダーとしてシリカ、アルミナ、クレーなどが
用いられるが、いずれのバインダー材料を使用すること
もできる。また、カラムに充填する際に、該ゼオライト
の形状は、球状、破砕した状態等いずれも用いることが
できるが、ゼオライトの平均粒径をd、充填するカラム
の内径をDとしたとき、その比D/dが15以上、好ましく
は20以上であるような大きさをもつものが好ましい。
2,6−ジメチルナフタレンの吸着分離を効率的に行な
うには、脱離剤の選択が重要である。即ち、脱離剤は、
遷移金属交換Y型ゼオライトから2,6−ジメチルナフタ
レンをそれ以外の原料油成分とは別に、選択的にかつ容
易に脱離させることができ、さらにその後蒸留その他の
方法によつて、2,6−ジメチルナフタレンから容易に除
去できるものでなければならない。そのためには、該ゼ
オライトへの吸着力が、ジメチルナフタレン異性体の混
合物を含む原料油に存在する2,6−ジメチルナフタレン
と最も吸着力の強い成分との中間にある脱離剤が好まし
い。本発明において、2,6−ジメチルナフタレンの脱着
に用いる脱離剤は、炭素数7から10までの芳香族炭化水
素である。具体的には、トルエン、o−キシレン、m−
キシレン、p−キシレン、エチルベンゼン、n−プロピ
ルベンゼン、イソプロピルベンゼン、4−エチルトルエ
ン、3−エチルトルエン、2−エチルトルエン、1,2,4
−トリメチルベンゼン、1,3,5−トリメチルベンゼン、
1,2,3−トリメチルベンゼン、o−シメン、m−シメ
ン、p−シメン、o−ジエチルベンゼン、m−ジエチル
ベンゼン、p−ジエチルベンゼン、o−プロピルトルエ
ン、m−プロピルトルエン、p−プロピルトルエン、n
−ブチルベンゼン、sec−ブチルベンゼン、tert−ブチ
ルベンゼン、1,2,3,4−テトラメチルベンゼン、1,2,3,5
−テトラメチルベンゼン、1,2,4,5−テトラメチルベン
ゼン、テトラリンが挙げられるが、これらを2種以上混
合して使用することもできる。また上記脱離剤のなかで
もトルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレ
ン、エチルベンゼン、n−プロピルベンゼン、イソプロ
ピルベンゼン、4−エチルトルエン、1,2,4−トリメチ
ルベンゼン、p−ジエチルベンゼン、p−シメン、テト
ラリンが好ましく、最も好ましいのはトルエン、o−キ
シレン、m−キシレン、p−キシレン、エチルベンゼ
ン、イソプロルベンゼン、4−エチルトルエンおよびテ
トラリンである。
さらに上記脱離剤は不活性希釈剤との混合物として使
うことも可能であり、その場合には希釈剤としてアルキ
ル置換基を有していてもよい炭素数6〜20の飽和環状炭
化水素であるナフテン類等が使用できる。
本発明方法において原料であるジメチルナフタレン異
性体混合物を含む原料油とは、ジメチルナフタレン分と
して、2,6−ジメチルナフタレン、2,7−ジメチルナフタ
レン、2,3−ジメチルナフタレン、1,2−ジメチルナフタ
レン、1,3−ジメチルナフタレン、1,4−ジメチルナフタ
レン、1,5−ジメチルナフタレン、1,6−ジメチルナフタ
レン、1,7−ジメチルナフタレン、1,8−ジメチルナフタ
レンのうち、2,6−ジメチルナフタレンとその他のジメ
イルナフタレン異性体の2種以上異性体を含有してお
り、更に沸点範囲220〜270℃の炭化水素化合物例えば、
α−メチルナフタレン、β−メチルナフタレン、α−エ
チルナフタレン、β−エチルナフタレン、ビフエニル、
アルカン、シクロアルカン、アルケン、シクロアルケン
等を含有しうるものである。
本発明方法は、気相、液相のいずれでも実施すること
ができるが、液相のほうが好ましい。被分離物質及び脱
離剤をゼオライト吸着剤に接触させる際の操作条件は、
ゼオライトの種類、被分離物質及び脱離剤の物性、例え
ば融点、沸点、粘度等を考慮して適当に選ばなければな
らないが、液相状態を保つためには、0〜300℃の範囲
の温度、ほぼ大気圧〜50気圧の範囲の圧力が好ましい。
更に好ましくは、60〜200℃の温度範囲、ほぼ大気圧〜2
0気圧の範囲の圧力から選択される。
一般に吸着剤の分離能を挙合わす指標として、原料供
給物中の特定の2成分間の吸着平衡状態における未吸着
相の2成分の比率に対する吸着相の同じ2成分の比率と
して規定される分離係数Kを用いる。すなわち、成分
A、Bの未吸着相の容積%をそれぞれXA、XB、吸着相の
容積%をそれぞれYA、YBとしたとき、 で定義される成分AとBの分離係数▲KB A▼が用いられ
る。ここで吸着平衡状態とは、未吸着相と吸着相の間で
正味の物質移動が起こらない状態である。吸着力の強い
成分をB、吸着力の弱い成分をAとした場合、▲KB A
の値が大きい程吸着剤の分離能が優れていることにな
る。つまり、2成分A、Bの▲KB A▼の値が1.0に近い
場合、成分Aに対して吸着剤が成分Bを優先的に吸着す
るということが起らず、両者は互いにほぼ同じ程度に吸
着される。また、▲KB A▼の値が1.0より大きいという
ことは、成分Bが成分Aに比べて優先的に吸着されるこ
とを意味する。ジメチルナフタレン異性体の混合物を含
む原料供給物について、各種の吸着剤と脱離剤を用いて
吸着容量、選択性および脱離速度等の特性を測定するた
めには、動的試験装置を使用する。この装置は、内径8m
m、長さ1mのステンレス製カラムで外側に保温用のジヤ
ケツトを有している。
カラム入口部には、液分散用デイストリビユーターを
有し、偏流が生じないようにしてある。この装置を用い
て、次に述べる一般的手順に従つてパルス試験を行な
い、各種の吸着剤/脱離剤系について選択性等のデータ
を測定する。吸着剤をカラムに充填し、脱離剤を通して
コンデイシヨニングを行なう。次いでジメチルナフタレ
ン異性体混合物を含む原料をパルスで数分間注入し、所
定量をカラムに導入した後再び脱離剤流に切換えて、プ
ラグフローが保たれ逆混合拡散を起こらない流量範囲で
脱離剤を流し、カラム内に原料供給物を展開する。カラ
ム出口にサンプリング口を設けここから定期的に一定量
の流出液を採取し、ガスクロマトグラフを用いて分析す
ることにより、そのフラクシヨン中の各成分を定量す
る。各々の成分濃度を対応する流出時間に対して点綴す
ると、各成分に対応するピークの包絡線を得ることがで
きる。
選択した吸着剤並びに脱離剤の適否は、一般に目的と
する被脱離物質の容量指数、目的物質と原料中に含まれ
るそれ以外の各々の成分との分離係数、およびその目的
物質の脱離速度等によつて判断される。容量指数は、吸
着された任意の成分のピーク包絡線の中心と、吸着に関
与しないトレーサー成分のピーク包絡線の中心(既知参
照点)との間の時間内にポンプによつて送り込まれた脱
離剤の容量として表わされる。ところで、吸着に関与し
ないトレーサー成分が流れる体積とは、カラム内の吸着
剤粒子間の空隙体積と同義であり、この値は吸着剤の真
密度、ポア体積等の吸着剤物性とカラムに充填した時の
充填密度を測定することによつて求められる。したがつ
て、上記既知参照点とは、換言すればこの空隙体積を脱
離剤流量で除して求まる時間となる。一方、原料中の成
分Aと成分Bの分離係数▲KA B▼は、両者の容量指数KA
とKBの比KA/KBで表わすこともできる。以上のことか
ら、本発明においては、2,6−ジメチルナフタレンに対
する他のジメチルナフタレン異性体成分iの分離係数▲
i 2,6▼を、成分iのピーク包絡線の中心と既知参照点
のの間隔と、2,6−ジメチルナフタレンのピーク包絡線
の中心と既知参照点の間の間隔の比から算出する。
本発明方法によれば、2,6−ジメチルナフタレンに対
する他のジメチルナフタレン異性体の分離係数▲Ki 2,6
▼は良好であり、2,6−ジメチルナフタレンが選択的に
分離できることが明らかである。
〔実施例〕
次に本発明を実施例により更に具体的に説明するが、
本発明はその要旨を越えない限り以下の実施例に限定さ
れるものではない。
実施例1 カチオンサイトが亜鉛であるY型ゼオライトの顆粒品
(粒度分布250〜420μm)を内径8mm、長さ1mの保温用
ジヤケツト付ステンレス製カラムに充填した。カラム入
口部には、液分散用のデイストリビユーターを付設して
偏流が起こらない構造とした。カラム温度を100℃に保
持し、カラムの一端より脱離剤として、パラキシレンを
毎分5mlの割合で送入し、カラムを脱離剤で満たすコン
デイシヨニングの操作を行なつた。次いで、ジメチルナ
フタレン異性体混合物を含む原料を塔頂へ3mlパルスと
して送入した後、再び脱離剤流に切換えて毎分0.4mlの
割合で脱離剤を送入し、原料供給物をカラム内に展開し
た。脱離剤で展開を開始した時点を0として、一定時間
毎に出口流をサンプリングし、ガスクロマトグラフを用
いて各々のフラクシヨン中に含まれる成分を定量し、流
出時間の経過に伴う出口流中の原料成分の濃度変化を測
定した。流出液の各フラクシヨンの分析値を点綴する
と、ピーク包絡線が得られる。これに基づいて得られる
2,6−ジメチルナフタレンに対する他の原料成分の分離
係数を第1表に示す。
実施例2〜4 交換可能なカチオンサイトを各々鉄、コバルト、ニツ
ケルで置換したY型ゼオライトの顆粒品(粒度分布250
〜420μm)を吸着剤として使用したこと以外は実施例
1と同様にして行なつた。この結果得られた2,6−ジメ
チルナフタレンに対する他の原料成分の分離係数を第2
表に示す。
実施例5〜7 交換可能なカチオンサイトが亜鉛であるY型ゼオライ
トの顆粒品(粒度分布250〜420μm)を吸着剤とし、脱
離剤として各々トルエン、イソプロピルベンゼン、テト
ラリンを用いたこと以外は実施例1と同様にして行なつ
た。この結果得られた2,6−ジメチルナフタレンに対す
る他の原料成分の分離係数を第3表に示す。
比較例1 吸着剤として交換可能なカチオンサイトがナトリウム
であるY型ゼオライトの顆粒品(250〜420μm)を用
い、脱離剤としてトルエンを用いたこと以外は実施例1
と同様にして行なつた。得られた2,6−ジメチルナフタ
レンに対する他の原料成分の分離係数を第4表に示す。
この表から、2,6−ジメチルナフタレンと2,7−ジメチル
ナフタレン以外は、2,6−ジメチルナフタレンとそれ以
外のジメチルナフタレンとの分離が良好でないことが明
らかである。
〔発明の効果〕 本発明によれば、ジメチルナフタレン異性体混合物を
含む原料油から2,6−ジメチルナフタレンを効率よく選
択的に分離することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 中西 章夫 横浜市緑区鴨志田町1000番地 三菱化成 工業株式会社総合研究所内 (56)参考文献 特公 昭52−945(JP,B2) 特公 昭49−27578(JP,B2)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】2,6−ジメチルナフタレンと少なくとも2
    種の他のジメチルナフタレン異性体とを含む原料油か
    ら、吸着分離法により2,6−ジメチルナフタレンを分離
    するにあたり、吸着剤として、そのカチオンサイトが亜
    鉛、鉄、コバルトおよびニッケルから選ばれる少くとも
    1種のカチオンでイオン交換されたY型ゼオライトを用
    い、脱離剤として炭素数7〜10の芳香族炭化水素を用い
    て、2,6−ジメチルナフタレンを吸着力の最も弱いジメ
    チルナフタレン留分として取得することを特徴とする2,
    6−ジメチルナフタレンの分離方法。
  2. 【請求項2】脱離剤が、トルエン、o−キシレン、m−
    キシレン、p−キシレン、エチルベンゼン、イソプロピ
    ルベンゼン、4−エチルトルエンおよびテトラリンから
    選ばれる少くとも1種の化合物である特許請求の範囲第
    1項記載の方法。
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